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梅原淳 ライターと編集者の妄想コラボレーション その2 - (2011/11/30 (水) 09:52:21) の編集履歴(バックアップ)


梅原淳 ライターと編集者の妄想コラボレーション その2


さて、梅原氏最新作「鉄道の未来学」(角川oneテーマ21角川書店20119月刊)は、もちろん冒頭より「プロローグ」と称する怪しげな現状分析が、ダラダラと内表紙も含め全210余頁の内50頁ほど続くのですが、65頁に至ってようやく始まる「第一章 新幹線の未来」この内容が、前稿で取り上げた「大都市の鉄道の未来」を凌ぐものすごさ。その73頁~81頁「莫大な総工事費」の中盤から見ていくことにしましょう。


        「鉄道の未来学」75
         結局のところ、北海道新幹線と北陸新幹線の建設工事費は国と沿線の地方自治体とで分
        担して支払っている。2010(平成22)年度の実績では年間に2627億円の費用を要
        したうち、国が3分の2に当たる1760億円を、残る3分の1867億円を地方自治
        体が負担した。
         財政難の折、国も地方自治体もそう簡単に費用を批出できるものではないが、新幹線が
        開業すれば地域が発展するし、政治家にとっては有権者が喜ぶからやめられない。反面、
        新潟県のように北陸新幹線の建設工事費の負担割合が大きすぎると、鉄道・運輸機構から
        の請求を一時突っぱねたケースも生じた。それも道理だろう。何しろ高い買い物だから納
        得のいくまで交渉するのは民間企業では当然のこと。いまや個人レベルでも一般的な手段
        だからである。

  この項の結論、「将来JRが新幹線の建設費負担で破綻する」と言う妄想を合理化するための枕として地方自治体の負担の大きさを説明したいにしても、意味不明な記述です。 
新潟県が支払を拒否したのは、鉄道・運輸機構が建設費が増加したことを理由に、当年度の負担分102億円に上積みで22億円の追加支出を請求してきたが、それが新潟県に係わる工事について建設費が増加したことによる上積みなのか、疑義が有ったからではないのでしょうか。富山県のトンネル工事で足が出た分を新潟県が払ういわれはないとの考えから、その点について新潟県は鉄道・運輸機構に説明を求めたのですがまともな回答が帰ってこなかったから、上積み分を含め新潟県は現在も予算計上しない措置を取っているのではないのでしょうか。
 もちろん鉄道・運輸機構や富山県には、「新潟県域以外の建設がなければ、北陸新幹線意味ないじゃん。だから新潟以外の建設費でも応能分出せよ。」と言う理屈があるのかもしれませんが。
 つまり、単純に「負担割合が大きすぎると」請求を突っぱねた訳ではない。そもそも地方自治体の負担額を本稿では問題にしているわけではないので、トピックスとしても不正確な記事をと言うより自己の見解の補強に資する様に事実を歪曲したような記述をすることには問題があります。 


         ここで問題としたいのはJR各社の負担額だ。北海道新幹線や北陸新幹線をはじめ、す
        でに開業した東北新幹線盛岡-八戸間や長野新幹線(正式にはこの新幹線も北陸新幹線と
        いう)、九州新幹線といった整備新幹線はJR各社の負担なしに建設工事が行われ、開業
        後は新幹線建設の受益に伴う範囲を限度とした貸付料を鉄道・運輸機構に支払うことと定
        められている。さらには、新幹線の開業で利用者が減り、収益が落ち込む並行在来線を切
        り離してもよいという条件も付け加えられた。つまり、開業した新幹線が仮に赤字になっ
        たとしても、JR自体は損をしないという割のよい条件で鉄道事業を展開できるという次
        第だ。

   「ここで問題としたいのはJR各社の負担額だ。」

  なんと不思議な日本語でしょうか?前段で、

  「結局のところ、北海道新幹線と北陸新幹線の建設工事費は国と沿線の地方自治体とで分担して支払っている。

と書かれ、「ここで問題と…」に続く文でも直接な建設費負担はないと書いておられる。にもかかわらず「ここで問題としたいのはJR各社の負担額だ。」と言われる「負担額」はないのに何故?「負担額」なのでしょうか?結論を見るに「負担」なら少しは意図が通るかもしれませんが。「額」にしたのは妄想を意味ありげに書くためとしか言いようがありません。
まぁ、隠れた負担があるのだよとでも言いたいのでしょうが、ならばそのような言い回しで書くべきではないでしょうか?

        しかし、現実にはJR北海道、JR東日本、JR西日本の3社とも表情はさえない。あ
        るJR関係者は「新幹線をつくってもらいたいと考えている会社はどこにもない」と言い
        切っているほどだ。
         いま挙げた条件だけならば、このJR関係者の発言は不可解に聞こえる。「それならば
        私が」と声を上げる法人、個人が現れそうだ。ところが、整備新幹線の建設工事費のうち、
        国が負担する部分には大きなからくりがあり、だれでも二の足を踏まざるを得ない状況と
        なっているからだ。

  大嘘です、「整備新幹線の建設工事費のうち、国が負担する部分には大きなからくり」はありません。多分JR3社の「表情」も関係者の「言い切」りも梅原氏は取材せずに書いておられるのではないかと思われます。何故そう考えるのかと言えば、それは以下の理由が支離滅裂な妄想だからです。


         先ほど記したように、2010年度に国は1760億円分の建設工事費を支払った。そ
        の内訳はまず733億円が国の予算でこれは特に差し障りとはならない。問題は残る10
        27億円だ。このうち724億円は「既設新幹線譲渡収入の一部」との名目で、303
        円は「借入金等(既設新幹線譲渡収入の前倒し活用)」との名目の資金となっている。
         既設新幹線譲渡収入とは何かというと、国鉄が建設した東海道・山陽・東北(東京-盛
        岡間)の各新幹線を1991(平成)年10月1日にJR各社に売り渡した金額を指す。
         譲渡価格の総額は9兆1767億円で、うち55・5パーセントに当たる5兆957億円は
        東海道新幹線を譲り受けたJR東海が、10・6パーセントに当たる9741億円は山陽新
        幹線を譲り受けたJR西日本が、33・9パーセントに当たる3兆1070億円は東北・上
        越新幹線を譲り受けたJR東日本がそれぞれ支払うこととなった。
         いくらJR3社といえどもこれだけの金額を一括で支払うことはできない。そこで、3
        社にそれぞれ三つの「ローン」が設定された。一つは総額約19000億円、金利は固
        定で年利・35パーセント、返済期間は2017(平成29)年3月31日までの25カ月
        間で半年ごとの支払い。二つ目は総額約兆2000億円、金利は変動で当初は年利
        66パーセント、返済期間は2017(平成29)年3月31日までの25年6カ月間で半年ごと
        の元利均等払いで、三つ目は総額約1兆1000億円、金利は固定で年利6・55パーセン
        ト、返済期間は2051(平成63)年9月30日までの60年間で半年ごとの元利均等払いだ。
        借り入れ当初のJR3社の年間返済額は7300億円。内訳はJR東海が4064億円、
        JR西日本が778億円、JR東日本が2478億円。2017年4月1日以降は724
        億円となり、JR東海が402億円、JR西日本が77億円、JR東日本が245億円とい
        う返済割合となる。
         余談だが、いま住宅ローンを借りておられる方ならば目が飛び出すほど驚かれるであろ
        う。2011年の状況では住宅ローンの金利は変動金利で年利1パーセントを切る金融機
        関もあり、固定金利でも年利パーセント程度だからだ。一般の企業や個人ならば借り換
        えが当然だろうが、新幹線鉄道に係る鉄道施設の譲渡等に関する法律によって定められた
        国との返済契約なので容易には変えられない。
         金利が高く、返済期間も長いので必然的に返済総額は211600億円と、2倍以上に
        膨れ上がる。数字ばかり羅列して恐縮だが、各社の返済総額JR東海が117500
        円、JR西日本が2兆2500億円、JR東日本が7兆1600億円だ。金利がゼロパー
        セントと仮定すると、年間に7300億円ずつ返済すれば9兆1767億円という譲渡価
        格の支払いは13年で終わる。つまり、2004(平成16)年9月いっぱいで元本は返した
        ことになり、いかに金利というものが巨額に上り、金融機関をはじめとして儲かるように
        できているのかが理解できるだろう。
         それはさておき、JR3社の3本目のローンの年間724億円という金額はもうおわか
        りのとおり、全額がそっくり整備新幹線の建設工事費に充当される。したがって、北陸新
        幹線の建設工事費が無料とはいえ、JR東日本は245億円、JR西日本は77億円を毎年
        支払わなくてはならない。2011年4月1日現在、両社の支払期間は19年6カ月だから、
        累計額はJR東日本が4778億円、JR西日本が1502億円だ。何のことはない。北
        陸新幹線がただでもらえるとはいえ、実際には建設工事費に相当する額、いや下手をする
        とそれよりも多い金額を国に返済し続けなくてはならないのだ。




         これは一種の両建預金とも言える。融資した見返りに金融機関が借り主に預金を依頼す
        ることを両建預金という。金利を比べれば預金よりも融資のほうが高いから、借り主は融
        資された金額を全額使うことができないうえ、余分な金利を支払わなくてはならない。両
        建預金は金融庁が厳しく監督していて悪質なものは取り締まりの対象となるが、新幹線の
        譲渡金額と整備新幹線の建設工事費とが「両建て」となってもだれもJRを守ってはくれ
        ないのだ。先述のJR関係者のぼやきもうなずける。
         JR北海道は国鉄が建設した新幹線を継承していないので返済の必要はない。したがっ
        て、新幹線をつくつてもらってありがたいと考えているはずと思いがちだ。しかし、問題
        はそう簡単ではなく、あまり喜ばしくもないらしい。
         その謎を解くカギは青函トンネルにある。JR北海道は確かに新幹線を譲り受けてはい
        ないが、青函トンネルを保有する鉄道・運輸機構に毎年およそ3億5000万円を貸付料
        として支払わなくてはならない。赤字を計上しているにもかかわらずだ。トンネルを借用
        して鉄道事業を営む経費はJR北海道もちで、トンネル内にしみ込んだ海水を排出するた
        めには年間約3億円の電力代を要し、絶えず塩害にさらされる排水ポンプの更新には今後
        1000億円ほどが必要となるという。
         このような状況で北海道新幹線が開業してもJR北海道にはあまり得にはならない。新
        幹線自体は利用客が少なくても損はしないが、青函トンネル部分の貸付料分だけ赤字にな
        る可能性が高い。現在は青函トンネルに在来線の旅客列車が運行されているので、ここで
        得られた黒字で貸付料や諸経費をまかなう算段も立てられる。しかし、新幹線が開業すれ
        ば利益は根こそぎ鉄道・運輸機構に持って行かれるので、後に残るは青函トンネル関係の
        支払いばかりだ。
         本州と四国との間を結ぶ整備新幹線をJR四国の営業エリアに建設したとすると同様の
        問題が起きる。本四備讃線の瀬戸大橋部分は本州四国連絡高速道路に毎年貸付料を支払っ
        ているからだ。
         唯一の例外はJR九州である。同社は国鉄が建設した新幹線を譲り受けてはいないうえ、
        青函トンネルや瀬戸大橋に相当するリース物件も存在しないからだ。したがって、JR
        州は九州新幹線の建設に積極的な姿勢を見せる。地域やインフラの違いと国の政策によっ
        て生じたアンバランスが生み出したとはいえ、JR九州以外のJR各社にとっては不平等
        だし、非難されるJR九州も困惑するほかないだろう。
        「202X年○月×日、新幹線を所有するJR旅客会社が民事再生法の適用を申請した。
        国鉄時代に建設された○○新幹線の買い取り額の負担に耐えきれず、いっぽうで国の政策
        で開業した△△新幹線の利用者数が思うように伸びなかったため。今後は国と協議のうえ、
        毎年××億円にも上る新幹線の買い取り額の減免措置を求めていく」
         このまま無尽蔵に新幹線を建設したとすると、近い将来このような新聞記事を読まなく
        てはならない日もあるいは訪れるかもしれない。

 
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