&font(#6495ED){登録日}:2016/03/28 Mon 18:09:47 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 6 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){ &color(red){&bold(){からくり、 からくり、}} &color(red){&bold(){浮世の糸は}} &color(red){&bold(){天下を舞わして、 人を舞わす}} &color(red){&bold(){糸をたぐれば、 ひとめぐり}} &color(red){&bold(){鬼が出るか 蛇が出るか}} } #center(){ カトーがくるぞ! カトーがくるぞ! &bold(){カ・トー・が・くるぞ!} &big(){&bold(){カトーがくるぞォ――!}} } 帝都物語外伝 &ruby(からくり){機関}童子とは荒俣宏の長編伝奇小説「[[帝都物語]]」の外伝作品である。 出版元は[[角川文庫レーベル>角川書店/KADOKAWA]]。「[[帝都物語]] 合本版」の発売に合わせて刊行された。 「帝都物語」に関してはカドカワノベルズ版、文庫版、文庫合本版と多様な形式で出版されているがこちらは文庫のみの発売。 しかも既に絶版されているので微妙に手に入り難い。 *■概要 帝都物語本編終了後、実に五年の時を開けて刊行された帝都物語初の外伝小説。 後に執筆される続編・外伝がことごとく&bold(){過去}を描くのに対し、唯一の&bold(){現代/未来}を描いた作品である(”正統な”未来ではないが)。 本編の帝都物語が全十二巻の大長編だったのに対し、こちらは外伝という事も有り一巻完結。 しかもそこまで分量がある訳でもないので読める人なら一日で読めるだろう。 また帝都物語本編が、東京とそれを破壊せんと画策する加藤保憲による&color(red){&bold(){壮大な魔術合戦}}を主軸に描かれたのに対し、 こちらは基本的に派手なアクションや魔術の行使は無く、かなり毛色の違う作品に仕上がっている。 然し、作者の知識に支えられた膨大な魔術薀蓄や本編全体を貫く幻惑的な雰囲気は本外伝にも受け継がれており、これもまた「帝都物語の一つ」として楽しむ事が出来るであろう。 また、帝都物語の&color(red){&bold(){ラストがアレ(ネタバレの為自重)}}なため、 「帝都物語本編の世界」と同じ時間軸の話ではなく、帝都物語本編のある時点から分岐した世界の話を描く。&del(){云わばギャルゲのルート分岐みたいなモンである。} その為(本編に於いても登場人物の入れ替わりが激しかったが)本編に登場するキャラクターは&color(red){ほぼ全く}登場しない。 本編の「帝都物語」が(我々の)現実世界同様に出版された世界の出来事を描き、 更にそれが物語の本筋に大きく食い込んでくる為、所謂&color(red){メタフィクション}的な構造になっている。 それ故当然ながら本編読了は必須。 因みにコレも帝都物語同様に「帝都物語 外伝」として映像化されているが正直内容は……。 *■物語 暗澹たる時代へと変質していく世紀末、一九九八年――。 闇の東京郊外で夜毎、「からくり芝居」を催す奇怪な一団が現れる。 「まぼろし座」を自称する彼ら四人は、国際精神医療センターに入院する精神患者であり、「 その奇行」は精神の錯乱が生み出す無意味な妄想の具現だと思われていた。 だが彼らの行動は「帝都物語」の魔人・加藤保憲を現世に復活させんとする秘術の一環であったのだ。 彼らの行動を調査/治療する役目を負った精神科医・高山利郎はある切掛から、 彼らの行動が秘術の儀式であること、そして彼らの妄想だと思われた魔人・加藤保憲が「帝都物語」の中の登場人物であることを知る。 更に「帝都物語」の世界と現実の世界の奇妙な類似を発見した高山は、 「帝都物語」の登場人物である魔人・加藤保憲が実在したのではないかと疑い始めるのであるが……。 *■登場人物 **・高山利郎 国立精神医療センターに務める医師。 「まぼろし座」を主催する四人の精神病患者を担当する精神科医。 当初は「まぼろし座」のからくり芝居を対し単なる精神病患者の狂言だと思っていたが、 知り合いの英文学者、慶間泰子が発見した小説「帝都物語」の存在を知り、 彼らの「まぼろし座」の構成員達が口にする「加藤保憲」なる人物の根を探り当てようと調査に乗り出す。 医師であるが、同僚の看護師に手を出した結果のっぴきならない状況に陥っている最中であり、色々と鬱憤を溜めている様子。 **・石原敏彦 医師。高山の同僚。 高山と同じく国際精神医療センターに務めるが、高山と担当は別。 高山から「帝都物語」の世界観と「まぼろし座」の世界観の共通点、更に「帝都物語」と現実の世界の 共通点を聞き、高山の調査に協力する事になる。 **・慶間泰子 私立大学講師。 高山の古くからの友人の英文学者。 高山から精神病患者たちの譫妄の内容を聞き、小説「帝都物語」との類似性にいち早く気付く。 直接的な登場シーンは少ないものの、各所各所で高山に対し、 「まぼろし座」の行動に隠された魔術的な意味を紐解いた手紙を送る。今作における魔術薀蓄の担当。 高山自身は慶間を(恋愛的なものが絡まない関係だから)気が楽と話すが実は……。 **・潮永洋周 国立精神医療センターに入院する精神病患者。 「まぼろし座」の構成員の一人。夜な夜な「まぼろし座」の一員として国防色の軍服にドーマンセーマンの白手袋をした状態で街を練り歩く。 自身が徐々に魔人・加藤保憲に変化していくという妄想に取り付かれているが……。 **・熊谷杏子 国立精神医療センターに入院する精神病患者。 「まぼろし座」の構成員の一人。潮永同様「まぼろし座」の一員として街を練り歩く。 潮永が加藤に変化するように、彼女もまた「帝都物語」の登場人物、目方恵子に変化していくという妄想に取り付かれている。 **・福田孝 国立精神医療センターに入院する精神病患者。 「まぼろし座」の構成員の一人。「まぼろし座」の一員として街を練り歩く。 僧侶のような雰囲気の寡黙な男。彼は上記二人のように「誰かに変化していく」という妄想は抱いていないが「まぼろし座」に連なる。 「まぼろし座」においてはある重要なものを運ぶ行李を持ち歩く。 **・中尾進三 国立精神医療センターに入院する精神病患者。傀儡師。 「まぼろし座」の構成員の一人。「まぼろし座」の一員として街を練り歩く。 精神病患者でありながら精巧な「からくり人形」を作成する傀儡師。 「まぼろし座」に連なるが彼も「誰かに変化する」妄想は抱いていない。 自主的に「からくり座」に属している訳ではなく、そのからくり人形の腕を買われ、加藤保憲に自らの 依童([[降霊術]]の際に霊が入るための受け皿)となるからくり人形を作るよう脅されていると話すが……。 **・黒田龍人 風水師。 少しだけ登場。著者の別作品「シム・フースイ」の主人公。「帝都物語」本編に登場する風水師・黒田茂丸の孫。 高山に対し「帝都物語」の一部が現実にあった事件である事を語る。 **・加藤保憲 **・目方恵子 小説「帝都物語」の登場人物。 「まぼろし座」の行動は彼らの復活を望む秘術の一環であるとされる。 人物詳細は「[[帝都物語]]」の項を参照の事。 **■その他/余談 ・前述した通り実写映像化されているが評価は芳しくない。&br()大きな批判としては「重要なガジェットが共通しているだけで小説とは全く別モノ」「無駄にセクシーなシーンを追加」等が挙げられている。 ・これまた前述しているが、同作者の別作品「シム・フースイ」から黒田龍人がゲスト参加している。 ・「帝都物語」を読了した人向けに書いておくと……、&br()黒田龍人曰く小説「帝都物語」の内容は「忘れ去られた事件記録からでっち上げたのだろう」との事で、虚構と現実が入り混じっている様子。&br()その為「帝都物語」の世界と現実の世界がどこで分岐したか明確に言うことは難しいが、&br()恐らく三島由紀夫の自害(楯の会事件)のあたりで決定的に分岐したものと思われる。 追記・修正よろしくお願いします。 #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,2) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() #comment #areaedit(end) }