&font(#6495ED){登録日}:2023/01/15 Sun 21:22:38 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 18 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- #center(){&sizex(6){&bold(){&color(whitesmoke,#274a78){もう一人の天才、現る。}}}} &bold(){『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム(原:Sherlock Holmes: A Game of Shadows)』}は、2011年に公開された[[イギリス]]・[[アメリカ合衆国]]合作のアクション・ミステリー映画。 配給はワーナー・ブラザース映画。[[日本>日本国]]公開は2012年3月10日。 *【概要】 2009年(日本では2010年)に公開されて大ヒットを記録した『[[シャーロック・ホームズ>シャーロック・ホームズ(09年の映画)]]』の続編で、監督は前作と同じくガイ・リッチー。 前作が大ヒットを記録した事からワーナーがすぐに続編の企画をスタートさせ、その為に監督や出演陣が予定されていた別作品への参加をキャンセルしたという逸話がある。 本作は原作の『最後の事件』を下敷きとしているものの、前作を踏まえた情報が引き継がれている為に基本的にはオリジナルストーリーとなっている。 一応は今作から見ても一本の映画として楽しめる……とはワーナーの弁なのだが、後述のように実際には前作を見ていないと情報が理解し切れないであろう部分も多い。 今回の脚本は映画プロデューサー・脚本家のミシェル・マローニーと、彼女の夫で俳優・脚本家のキーラン・マローニーによって纏め上げられた。 一応、原作から考えても決して逸脱した設定ではなかったとはいえ&font(l){[[日本人以外には前例のなかった>シャーロック・ホームズ 伯爵令嬢誘拐事件]]}超武闘派のホームズ&ワトソン像を演じて人気を博した[[ロバート・ダウニーJr]]とジュード・ロウを始め、前作からの主要キャストも軒並み続投。 &font(l){そのせいでチョイ役に終わったり、早期退場してしまったキャラクターもいるが。} また、本作からの出演者として『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』3部作のノオミ・ラパスや、『スモーク』『オーシャンズ12』『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』のジャレッド・ハリス、 『ゴズフォード・パーク』『[[Vフォー・ヴェンデッタ>Vフォー・ヴェンデッタ(映画)]]』『[[アリス・イン・ワンダーランド>アリス・イン・ワンダーランド(映画)]]』のスティーヴン・フライらが新たに加わった。 何よりも続編である本作の見所となったのが前作から布石が張られていたホームズ最大の宿敵、ジェームズ・モリアーティ教授の満を持しての本格的な登場であり、 本作では全編に渡って広範囲に張り巡らされたモリアーティの犯罪帝国による計画をホームズとその仲間達が如何に切り崩していくのかが描かれている。 モリアーティ教授に実兄マイクロフトと、原作ファンが映像化と聞いた時点で待ち望んでいたホームズを超える設定を盛られる事も少なくない人気キャラクターの登場となったわけだが、 前述のようにストーリーの基本は映画オリジナルで、原作要素は節々にキーワードや小物として挿入される程度となっているものの、知っている人間ならば見ただけ、聞いただけで思わず口元が緩んでしまうことだろう。 一方、期待通りの犯罪帝国の総帥として描かれた悪の天才モリアーティ教授や、前作以上にスケールアップした世界観とアクションなど見所も多い反面、 映画全編を通して一つの大きな事件を追う展開となっている事もあってか、要所にクライマックスが設けられていた前作に比べると、エンターテインメントを打ち出した娯楽作品としては若干複雑なストーリー構成になってしまっており、 そういう意味では視聴を重ねる事で本当の理解と面白さが増していくタイプの作品であり、やや難解な印象の映画となってしまっている点は否めない。 *【物語】 時は1891年。ドイツ、フランス、そしてここ大英帝国───。 世紀の変わり目を目前にして、欧州は各地で連続する爆破事件による混乱に晒され、特にドイツとフランスの関係は疑心暗鬼により悪化していた。 多くの人々が目的の見えない爆破テロ事件に混しているのを後目に、シャーロック・ホームズは此度の事件の裏側にいるのが悪の天才と呼ぶに相応しい物理学者・モリアーティ教授だと確信して独自に調査を進めていたが、教授に辿り着く手段は見つけられないでいた。 そんなわけでホームズは宿敵にして最愛の女性───そして、モリアーティの間謀として働かされているアイリーン・アドラーにリスクを背負って接触し、情報を得ようと試みる。 アイリーンが着けられていると思い、颯爽と助けるつもりでいたのが実際にはアイリーンの護衛であり、当然のように彼らと戦う羽目になったりと、 苦労の末に次に繋がる情報=アイリーンがオークション会場にて外科医のホフマンスタールに教授からの報酬を渡そうとする場面に追い付き、彼女が大事に持っていた手紙を奪う事に成功するも、 報酬に仕掛けられていた時限爆弾が作動してしまった事で&font(l){自らカーテンに火を点けて起こした}起きた混乱の中でアイリーンにはディナーの[[約束]]こそしたものの逃げられ、無事に逃がしたと思ったホフマンスタールの方は爆弾の処理をしている間に[[暗殺]]されてしまうのだった。 ……そして、アイリーンと約束したはずのディナーには待ちぼうけを食わされてしまう羽目になったホームズは侘びしく一人食事をする事に。 ……というわけで、事件の大きさと犯罪帝国の得体の知れなさに流石に手を余して悩んでいたホームズだったのだが、それと同じくらいにホームズを悩ませているのが親友にして相棒であるジョン・ワトソンの目前にまで差し迫った結婚式の事。 ……なんだかんだで付添人をイヤイヤながらも引き受けていたホームズだったのだが、ちゃっかりと前祝いの酒宴をアイリーンから奪った手紙の指し示していた相手であるジプシーの占い師マダム・シムザ=ヘロン、通称「シム」へと面会する機会にしており、 さらには勝手にワトソンから頼まれていたラグビー時代と医学生時代と軍隊時代の友人達には連絡を取らず、むしろ確実にプレッシャーを与えるであろう、ワトソンとは初対面となる自身の実兄にして英国政府内の重要ポストにあるマイクロフト・ホームズとの邂逅の場としていたのだ。 祝いの場を潰された事に腹を立てはしたものの、憂さ晴らしに始めた[[ポーカー]]で運がつきまくりのワトソンが能天気に喜んでいる陰で、面会したシムの命を狙ったコサックの暗殺者と激闘を繰り広げるホームズ。 予想外にたくましかったシムや悪酔いしたワトソンによって、思い描いていた結果は得られないながらも、何とかコサックを撃退する事には成功したホームズは気持ちを切り替えて泥酔状態のワトソンを式場へ。 未だに複雑な思いを抱えながらも付添人の役目を終えて一足先に式場を出たホームズだったが、そこにモリアーティ教授の使いであるセバスチャン・モランが接触してくるのであった。 果たして、ホームズは雲のようなモリアーティ教授の影を追って実体を掴み取ることが出来るのか……!? #center(){&bold(){&color(red){※以下、ネタバレ注意。}}} *【登場人物】 -&bold(){シャーロック・ホームズ} 演:[[ロバート・ダウニーJr]] / 日本語吹替:[[藤原啓治]] 大英帝国にその人ありと&ruby(・・・・・・・){自他共に認める}世界的名[[探偵]]。 自らの信念からなのか、あるいはマイクロフトからのさりげない依頼もあったからなのか&font(l){はたまたアイリーンの呪縛を解くためだったのか}、 物語の開始当初からモリアーティ教授の手の者によると思われる欧州各地での連続爆破事件を単独で追っており、事実上の各国を股に架けた諜報員として八面六臂の活躍を見せる。 &font(l){今作での唯一の[[弱点]]は大きな[[馬]]に乗れない事。} 事件が事件なためか、今作では警察とも連携を取っておらず、モリアーティの社会的地位の高さから表立ってはマイクロフトからの支援も受けられていないものの、直接対決が始まるまでは大して困った様子を見せていなかったのは流石と言うべきか。 既に前作での事件を経てモリアーティの素性は掴んでいたようで、直接の誘いを受けた時にも動揺はしていなかったが、実際にモリアーティの犯罪帝国との戦いが始まった後は流石にホームズ個人の武力を越える圧倒的な組織力の前に窮地を迎える事に。 前作の時点でホームズ自身のキャラクターが完成していたためか、今作でもさらに磨きをかけた所謂「ホームズ・ビジョン」による先読みやエキセントリックな行動なども描かれているものの、特に解説されるような場面は存在していない。 そういう意味ではアイリーンへの想いも含めてホームズのパーソナリティや技能を理解したい人はやはり前作から続けて見るべし。 また、今作では全編を通して[[変装]]のスキルを発揮している場面が多く、見返す際のお楽しみポイントとなっている。 ワトソンに「結婚祝い」と称して[[ヤギ]]の副腎から抽出した強烈な気付け薬となるホルモン注射を皮肉を込めてプレゼントしていたが、結局は回り回って自らを救う事になった。 -&bold(){ジョン・H・ワトソン} 演:ジュード・ロウ / 日本語吹替:[[森川智之]] 元軍属の優秀な外科医にして、ホームズの&ruby(・){元}相棒。 前作を経て表向きはホームズとコンビを解消してベイカー街221Bのハドスン夫人の下宿から出ているものの、相変わらずホームズの動向を自主的にうかがいに来ては今や奇行(実験)に付き合わされるようになったハドソン夫人からも頼りにされている。 それはホームズも同じで、ワトソン当人は全くの部外者というスタンスでいながらホームズからモリアーティ教授の存在はもちろん、その手の者達によると思われる一連の犯罪の記録の詳細を唯一人だけ聞かされていた。 遂にメアリーと結婚式を迎えるにあたり、捜査にかまけて付添人の仕事を忘れていたのではないかと思っていたホームズを迎えに来たものの、翌日には反対に泥酔してしまっていた事から結婚式にはホームズによって送り届けられる事に。 式の後は能天気にも新婚旅行に出かけようとしていたのだが、モリアーティの配下の襲撃によりオジャンにされ、それをホームズに救われると共に否が応にも事件の渦中に巻き込まれる事に。 基本的に当人としては部外者というスタンスでいるのだが、特に説明されていなくても実戦となると自然に体が動くのは場数の違いか。 なので、本作では何気に前作以上に活躍する場面が多く、特に射撃の名手としてのスキルを遺憾なく発揮している。 その戦闘面での活躍ぶりには「本当に外科医か」とツッコみたくなってしまう程だが、重傷から心肺停止に陥ったホームズを前述の「結婚祝い」で救うなど、外科医としての見せ場もしっかり用意されている。 ……このシーンではホームズの危うい実験内容を何だかんだで医者として理解していたのがうかがえ、そういう意味でも何故にワトソンが唯一無二の“ホームズの相棒”であるのかを見る者に理解させてくれる。 -&bold(){マダム・シムザ=ヘロン} 演:ノオミ・ラパス / 日本語吹替:東條加那子 ジプシーの女占い師で、愛称は&bold(){「シム」}。 アイリーンに託されていた手紙の本来の受け取り主だが、その手紙は行方が知れなくなっていた彼女の兄・レネイからの物であり、手紙の内容からモリアーティの犯罪帝国の関係者と思われるレネイへの接触を目標にしたホームズの訪問を受ける事になった。 彼女自身は何も知らない事からホームズを追い出そうとしたものの、直後にモリアーティの息のかかったコサック兵による襲撃を受ける事態になり、結果ホームズに命を救われる事に。 その時は泥酔したワトソンの乱入によりうやむやとなったものの、その後に手がかりを求めてキャラバンにやって来たホームズ達を迎え入れる。 その中で、かつて兄と共に反政府的革命組織「緑のうさぎ」に所属していた事、兄が連続爆破事件に関わっているのならば「緑のうさぎ」へ戻っている可能性が高くなった事から、身内としてもレネイの身柄を確保するべく、ジプシーの仲間達と共にホームズとワトソンに協力する。 -&bold(){メアリー・モースタン・ワトソン} 演:ケリー・ライリー / 日本語吹替:[[園崎未恵]] ワトソンの妻で、遂に今作にて結婚式を迎える事になった。 前作では偲ぶ女といった立ち位置であったが、今作では夫とは違い全く修羅場を経験していないにもかかわらず、ワトソンが取り押さえたモリアーティの配下に銃を突き付けて脅すなど、彼に選ばれた女性なだけはある一面を見せる。 前作を経てホームズの人となり(主に[[ツンデレ]])をそれなりに理解出来るようになっていたものの、自分達を助けにきたホームズがバッチリと(?)[[女装]]していたのには流石に呆れていた。 如何に[[勇気]]があるとはいえ、一般人なので((ちなみにワトソンに関しては最初から花嫁から取り上げて自分で連れ回すつもりだった。汚いな流石名探偵汚い。))モリアーティとの対決に連れていくわけには行かないため、襲撃を退けた直後にホームズの手で川に突き落とされ、抜群のタイミングで迎えに来たマイクロフトの元で匿われる事になったが、 マイクロフトの自己紹介を聞いて「まさか兄弟!? 信じられない、ホントにもう最悪!!」と言っていた通りの体験をする羽目に…… -&bold(){ハドスン夫人} 演:ジェラルディン・ジェームズ / 日本語吹替:野村須磨子 お馴染みベイカー街221Bのホームズの下宿屋の家主。 前作にてワトソンが去った後は食事の世話のみならず、数々の実験の助手をイヤイヤながらも出来る範囲でやらされる羽目になっていたようで、訪れたワトソンに「あの人を(精神)療養所に入れて」と訴えていた。 その後はワトソンの結婚式にも出席していた。 -&bold(){レストレード警部} 演:エディ・マーサン / 日本語吹替:後藤哲夫 お馴染みスコットランドヤードのホームズ&ワトソンの協力者。 今回は登場しないかと思いきや…… -&bold(){マイクロフト・ホームズ} 演:スティーヴン・フライ / 日本語吹替:[[銀河万丈]] ホームズの実兄で、英国政府の中枢に食い込んでいる役人((原作では表向きは下級の会計検査だが複数の官庁を跨ぎ、また卓越した頭脳で「政府そのもの」と呼べる人物とされている。))。 もう一人のホームズであり、頭脳や推理力は弟以上とも呼ばれる&font(l){変人}天才で、実家(ホームズ家)は彼が引き継いでいる模様。 現在、具体的に言うと&ruby(・・・・・・・・・・・・・・・・・・){フランス語を話す国と[[ドイツ語]]を話す国}の関係が悪化している事から、ライヘンバッハでそれ以外の国も巻き込んでの和平交渉を開催しなければならなくなっている事に頭を悩ませている。 弟のホームズ(シャーロック)とは幼少期からの癖で&bold(){「マイキー」「シャーリー」}と呼び合う場面も。 モリアーティが政府からも意見を求められる程の権威で現首相の学友でもある事から、両手を開いて協力……するわけにはいかないとしつつも何だかんだで世話を焼いてくれており、間違いなくマイクロフトがいなければホームズ達は打つ手が無くなっていた程。 自宅では[[全裸>裸]]派、今で言うところの裸族(俗称)らしく、匿ったメアリーに悲鳴を挙げさせていた。 また、彼女に明かしたところによれば「天才兄弟は子供の頃から2人にしか通じない暗号で書かれた手紙を出し合っては遊ぶようなイヤな子供達だった」らしい。 -&bold(){アイリーン・アドラー} 演:レイチェル・マクアダムス / 日本語吹替:佐古真弓 稀代の女山師にして、美しくも天才的な犯罪者。 ホームズとは過去の事件を通じて敵対しながらも惹かれ合う相手としてお互いに認め合っていた仲だったが、前作の時点でモリアーティの腹心として働かされており、ホームズに自分の雇い主の名も伝えていた。 その事はモリアーティも周知しつつも大目に見られていたのだが、ホームズがホフマンスタールの件でいよいよ自分達の眼前に迫って来ているとあっては看過されずに抹殺される羽目に…… ホームズがその事を知ったのはずっと後のことで、船上でホームズがアイリーンのハンカチーフを捨てる場面では、それに気付いたワトソンも黙ってホームズが最愛の女性に別れをするのを見守っていた。 -&bold(){クロード・ラヴァシュ} 演:ティエリー・ヌーヴィック / 日本語吹替:相沢まさき かつてレネイ・シム兄妹が所属していた反政府的革命組織「緑のうさぎ」のリーダー。 実は家族を[[人質]]に取られる形で組織ごとモリアーティの犯罪帝国の手に落ちて時限爆弾の製作をさせられており、ホームズ達の訪問を受けた時には既に最後の仕事を終えた後だった。 仕事の完遂と共に家族を解放するとの連絡は受けていたものの、屈辱と責任からホームズ達の眼前で[[自らの命を断った>自殺]]。 組織に戻っていたと思われたレネイの存在については「ここにはいない」と言っていたものの……? -&bold(){ホフマンスタール医師} 演:ヴォルフ・カーラー / 日本語吹替:池田ヒトシ 物語序盤のオークション会場にて、アイリーンより教授からの報酬を受け取ろうとしていたドイツ人医師。 当人は呑気な様子だったが、ワトソン曰く「医学界においては開拓者だ。まさにパイオニアだった」とのこと。 その後のホームズの乱入からのゴタゴタで当人もモランに暗殺されてしまい、何を以てモリアーティから報酬を受け取っていたのかなどもあやふやになっていたが、終盤にてとある形で犯罪計画に加担していた事が明らかに。 -&bold(){セバスチャン・モラン} 演:ポール・アンダーソン / 日本語吹替:横島亘 原作同様にモリアーティ教授の最大の腹心で、元陸軍大佐。 かつてはアフガニスタンにも派遣されていた屈指の射撃の名手だったが、不名誉除隊を受けており、その後に英国に戻ると共に教授の子飼いとなった模様。 卓越した射撃の腕はもちろん、数々の暗殺もお手の物とする手練れ。 グラナダ版を踏まえたのか、同じく軍属で射撃の名手であるワトソンからも存在を知られており、実際に顔を突きつけて対決したわけではなかったものの、劇中ではホームズよりもワトソンにしてやられる場面が多かった。 -&bold(){ジェームズ・モリアーティ} 演:ジャレッド・ハリス / 日本語吹替:森田順平 著名な天才的数学者、作家、講師にして、現英国首相の学友として政府にも意見する事の出来る社会的地位の高い人物でありながら、セバスチャン・モランやアイリーン・アドラーといった超一流の犯罪的志向を持つ人物をも道具として扱える規格外の大悪党。 さらには当時の英国紳士らしく拳闘の学生チャンピオンだった過去もあり、肉体的な能力でも決してホームズにすら引けを取らない。 自らの思い描いた通りの犯罪計画を実行出来る巨大組織、謂わばモリアーティ教授を頂点とした犯罪帝国とも呼ぶべきものを作り上げており、自らは手を汚しこそしないものの、現在はある計画の為に大規模にして周到な計画を実行しており、ヨーロッパで頻発する爆破事件もその一つであった。 ホームズには前作の事件で名前を知られて以来の敵同士ではあったものの、今作にて明確に計画の中枢にまで到達してくるまでは本気で相手にしていたとは思えない程だった。 その証拠に、ホームズが鼻先に迫ってきたと思った段階にて自らホームズを招いて宣戦布告。 ホームズにダメージを負わせるためだけに大規模な人員を使ってワトソンを始末しようとするなど容赦のない報復を行っており、同じ理由から腹心であったはずのアイリーンをも容赦なく始末している。 その計画の主たる目的はドイツとフランスの間に決定的な不和を起こさせて世界大戦の引き金を引かせる事であり、それによる需要の発生が確実な革新的兵器産業、その他を独占してしまう事だった。 計画が進行し過ぎていた事もあり、それを知ったところで計画を止められるはずもなく、世界大戦回避の希望へと繋がる道の一つであった経済通商会議もホームズの読みの誤りから、ラヴァシュ最後の爆弾により文字通りに破壊されてしまう。 こうして、世界大戦を回避する最後の希望となったのが各国首脳によるスイスのライヘンバッハでの和平会議のみ……ここで行われるであろう教授の最後の仕掛けを阻止するべくマイクロフトにより会場に招かれたホームズ、ワトソン、シムは教授との最後の対決に挑むが…… 意外にして完全に個人の趣味として、公園にて野生の鳩に餌をやる時間を大事にしており、差し迫った状況でもこの時間の確保だけは出来るようにと念を押してモランを困らせていた。 #openclose(show=ホームズ「もしあなたをこの手で破滅させられるのなら、命など惜しくはない」){ ホームズは世界大戦開幕の為のモリアーティの最後の大仕掛けが暗殺……それもモリアーティの兵器工場での追手の姿からホフマンスタールの整形技術を利用した、どこかの国の偽大使によるいずれかの国の首相の暗殺だと推理した。 しかも、手紙の内容からも実行犯となったのがレネイだと予想された事からワトソンとシムに暗殺者の正体の看破と暗殺の阻止を託して、自らは教授との直接対決に向かう。 ホームズとモリアーティはライヘンバッハの滝を臨むバルコニーにて[[チェス]]の早指し勝負をしながらこれまでの一連の対決を振り返り、さらには暗殺の成功までをも占うが…… ホームズの推理を信じて決断的な行動を取ったワトソンとシムにより、レネイを見分けて見事に暗殺は阻止。 ひとまずの敗北を認めたモリアーティは痛み分けとして勝負を預けて去ろうとするが、ホームズがなおも対局を終わらせようとしない事を訝しみつつも応じる。 ……実は既に正体を知られていた事が仇となり、ホームズは幾度もモリアーティの懐に飛び込んでは動向を探っており、 強大なモリアーティに対して自分を小さく見せるような行動を取っていたのも、全ては教授が肌身話さず持ち歩き、完全にプライベートな時間である鳩の餌やりの時にだけ開く赤い手帳……犯罪帝国の資産の全てが記されている教授の生命線ともなる愛用の手帳を奪うための一芝居であったのだ。 マイクロフトに兵器工場の所在地を教える電報を送った……というのは[[拷問]]された際に既に伝えていた事だったが、ついでに本物の手帳をも&bold(){自分と同等レベルの暗号解読能力を持つマイクロフトに既に送付済みという意味((特に説明はされていないものの、手帳は内容からも高度な暗号により記されていたようなのだが、幼少期よりホームズ兄弟は暗号に慣れ親しんできた=マイクロフトに解かれたであろう事が示唆されている。))}であり、 解読された手帳を持ってロンドンに戻ったメアリーより提供されたその情報を元に、既にレストレード率いるスコットランドヤードが組織の全資産を調査、全て引き出してしまうと共に慈善事業として戦災家族への莫大な義援金として配られた後…… つまりは、ここに来るまでに既にモリアーティが敗北していた事を対局でも勝利しつつ、ホームズは宣告したのだった。 自らの犯罪帝国が瓦解させられていた事実を知り、[[怒り>怒り(感情)]]に震える教授は冷静さを装いながらも、せめてもの報復としてホームズをこの場で始末すると宣言。 ホームズもこれに応えて最後の対決となるが、ホームズ・ビジョンでのシミュレーションでも先んじて負っていた肩の傷が仇となり、勝ちが見出だせない。 ……そして、ホームズと同等以上の頭脳を持つモリアーティもまたビジョンの使い手であり&bold(){“&ruby(シャドウ ゲーム){影の戦い}”}を制し、勝利を確定させた上で殴り合いをしようと言うのだ。 教授と同じ結果を導き出した結果、絶対的な敗北を悟ったホームズだったが、彼には教授には取れない最後の手段があった。 時を同じくして、暗殺こそ阻止したものの、レネイをモランに殺されてしまったワトソンがホームズの姿を探してバルコニーへとやってきた。 見事に役目を果たした親友の姿を見ながら、ホームズはモリアーティの動きを封じるように抱き着くと音も立てずにライヘンバッハの滝に飛び込む……そうして、滝の中に稀代の名探偵と天才的犯罪者は共に消えていった。 ……場面は物語の冒頭へと戻り、ワトソンがホームズの『最後の事件』の記録を記述し終えようとしていた。 [[自らの命で祖国と、その他の国に降りかかろうとしていた災厄を阻止した>自己犠牲]]偉大なる友の最後の記録……。 そこへ、メアリーが今まさに引っ越ししようとしているワトソンの元へと荷物が届けられた事を告げてくる。 開けてみると、それはホームズがマイクロフトの家で妙に気に入っていた新型の酸素吸引器だった。 ……何かを悟ったワトソンはメアリーに郵便配達がどんな姿だったかを聞きに席を立つが、ワトソンの目の前の一人掛けソファーから一つの人影が立ち上がると、満足気に親友の記述に目を通した後で終わりの一文に一文字を加えるのだった。 #center(){ \カシャカシャ/ &bold(){the End“?”}} } *【余談】 -本作にて本格的な登場となったモリアーティ教授だが、前作を知っている人はご存知の通り、顔こそ出ないものの既に印象的な登場はしていた。&br()それに対し、ガイ・リッチー監督は頑なに誰が演じているのか(誰が声を発しているのか)を公表していなかった事から、既に前作の時点でキャストは決まっていたものと思われていた。&br()……が、流石に前作の時点でジャレッド・ハリスがキャスティングされていたわけではなく、後に前作のモリアーティ教授の“声”は、前作でダウニーJrにイギリス[[英語]]を指導したアンドリュー・ジャックが担当していたとを明かしている。&br()そして、改めて続編となる今作公開後より、TV放映版やホームメディア版にてジャレッド・ハリスの声に差し替えられているとのこと。 -本作の日本での地上波放映は2014年に『[[金曜ロードSHOW!>金曜ロードショー]]』内にて行われたが、大幅なシーンカットとミステリー映画であるにもかかわらず、先の展開や黒幕をテロップ表示し続けるといった過剰な演出により、多くの批判に晒されてしまった。 #center(){ &bold(){&italic(){教授は定石通り上段から追記・修正を始める……}} &bold(){&italic(){元拳闘王者の修正は速い……ダメだ、先に追記・修正しようにも肩の傷が仇となって間に合わない。}} &bold(){&italic(){結論……負けは濃厚だ。}} &bold(){&italic(){結末は代えがたい。ただし……}} } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,3) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 執事のヘンリーの演出とホームズの反応が笑えたが、滝に墜ちるときに最後の別れになるかもしれない親友を眼に刻んでいるシーンが印象的 -- 名無しさん (2023-01-15 21:33:28) - 「影の戦いをしてるのは君だけではない」って言ったときに「お前もやってたんかい!」って笑ってしまった -- 名無しさん (2023-01-15 21:36:20) - そして兄のワトソンをみる目が「(こいつか…人の弟を誑し込んだのは)」という感じで、ワトソン夫人にもそれとなく協調しているところにとんでもない勘違いを感じる -- 名無しさん (2023-01-15 21:36:48) - この作品は演出も展開もアクションも冴え渡ってた。モリアーティ&モラン大佐という素材と前作で打ち出したキャラクター性をこのうえなく上手く調理した傑作だと思う -- 名無しさん (2023-01-15 23:20:50) - 天井のロシア人を料理に例えてボコるとこ好き -- 名無しさん (2023-01-16 00:17:11) - アイリーンが序盤で死んだのが驚きだったわ -- 名無しさん (2023-01-16 05:13:56) - ストーリー、アクション、オチまで完璧な個人的に大好きな映画。3作目やるみたいだけど否応にも期待しちゃうわ。 -- 名無しさん (2023-01-16 11:10:33) - ↑2 でも見返すと死体は確認してないから続編に出せなくもない気もするのよね。モランは確実に次も出るかな。 -- 名無しさん (2023-01-16 11:33:17) - 3作目のボスはやっぱりミルヴァートンだろうか -- 名無しさん (2023-01-16 14:26:18) - ホームズビジョン来た!これで勝つる!!と思ってたらモリアーティが返してきて駄目だ勝てねぇってなったのには笑った -- 名無しさん (2023-01-16 16:57:22) - ホームズと同じかそれ以上に頭が良くて拳闘の元チャンピオンならホームズと同じ事がモリアーティに出来るのは不自然では無い。 -- 名無しさん (2023-01-16 22:58:25) - ↑ましてやホームズは手負いだしね -- 名無しさん (2023-01-16 23:47:25) - ところどころにある伏線の回収が見事なのよ。アクションに重心を置いて薄まってしまった謎解き要素を補う感じで、なかなか良い映画だった。3作目も期待。 -- 名無しさん (2023-01-22 14:52:57) - マイクロフトを変人として描写するのは割と珍しい部類。弟(変人)と対比させるためか常識人として描かれやすい -- 名無しさん (2023-02-13 17:32:49) - ↑聖典もとい原作ではあきらかにシャーロックよりも変人の部類にはいる描写がされているから、そこを活かしたのだとおもう -- 名無しさん (2023-02-13 17:54:07) #comment(striction) #areaedit(end) }