登録日:2010/08/05(木) 04:45:44
更新日:2021/10/27 Wed 18:58:37
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役割語とは、文を読むだけ、もしくは台詞を聞くだけで、その動作の主がどんな人であるかが、すぐわかるような…そんな働きを持つ言葉のこと。 性別、職業、性格とか。 ここではちょっとだけ意味を拡げて説明してくね。
例えば、明言は避けるけど、何かを「しよう?」と勧誘する場合では、
- 「しよう?」
- 「しない?」
- 「しません?」
- 「しましょう?」
- 「しちゃいなよ」
- 「日本は反省しる!」
- 「姉、ちゃんとしようよ」
- 「今日は大丈夫な日なんだよ…」
と、ぱっと思いつくだけでも、これだけあるわけ。 加えて、「しないの?」とか「しませんか?」などのように、語尾を加えることでさらに変化のバリエーションが増えるときた。(※1) 日本語の多様性だとか、可能性を感じるよね。
これだけ種類があっても、英語に訳すと全部が全部「Let's fuck」になるんだから、悲しいことだよ。(※2)
それで、その…ここまで読んでくれたのなら、もう予想はついてるでしょうけど、語尾が鍵になってるのね。
例を挙げると、「〜だよっ」なら健康的に日に焼けた活発な少女を私達は想像し、「〜ですわ」なら白いワンピースのよく似合う世間知らずなお嬢様、でもそこがまた可愛いんだよな、などと妄想の翼をはためかせ、「〜ニョ」とか馬鹿にされてるのかしら、「〜ニダ」はキモイ。(※3)
語尾 of 役割語は、人間のみにとどまりません。 猫の「〜だニャー」、犬の「〜だワン」、なんかよくわからないキモイピンクの「ギエピー」がいい例ですね。 他にも「〜だレンジ」「〜だツリー」とかがあります。 自由ですね。
別に、知らなくったって何か困るわけじゃない。 だいたい、改めて習うまでもなく、刷り込まれてることだし。
ただ、文章…小説とかね。 レポートはおすすめしないわ。 それを書きたいのなら覚えておいて損はないと思うわ。 「え。 ツンデレの言葉遣い? 役割語? そんなの使う機会ないって、いらないいらない」とか言ってた過去を後悔している人も、いるかもしれないじゃない。
特に括弧小説では重要ね。 「」がたくさんあって、それでいて「」しかないから、どの「」が誰の台詞かってのをはっきりさせなきゃいけないもの。
なかには、
Q 「じゃあさ、問題。 口からクソ垂らす前と後ろに sir をつけるのはなんの役割語だー?」
A 「福原愛ちゃんのこと?」
みたいに、「」の前に名前を入れる方法をとってる人もいるけど、甘え、よね。
「今日もいい天気じゃのう」 「わしもまだまだ元気じゃよ」
さて、あなたはどんな人を思い浮かべただろうか。 おそらく多くの人が、老人を想像したのではないかと思われる。 私もそうだ。少数派は広島弁だろう。
少子高齢化が声高に叫ばれている現代日本、言い換えれば、街中で石を投げれば半分は老人に当たり傷害致死罪で逮捕される時代である。 自然と年を召した方達と接する機会も増えようというものだ。
けれども、私はいまだ、かような話し方をする老人に遭遇したことはない。 これは私が引き篭もりであることも関与しているのかもしれないが、その影響は微々たるものであろう。 このような話し方をするのは広島県民だけではないのか。 疑念が私の胸の内で鈍く燻り、かくして私は今日も引き篭もる。
結論から言うと、実際に居ようと居まいと、役割語には関係がない。 もちろん、全国津々浦々草の根を分けて根掘り葉掘り探せば上記のような話し方をする老人の百や二百、いとも容易く見つかるだろう。
しかし、役割語は老人に限った話ではなかったはずだ。 飼い猫に「たまにはうまい餌が食べたいにゃー」と言われたことがあるだろうか。 ツンデレに「べっべべっべべー別に、あんたなんか好きじゃないわよっ」と言われたことがあるだろうか。 娘に「将来パパのお嫁さんになるー」と言われたい。
結論に立ち返るが、役割語は現実とリンクしていなくとも良いのだ。 現実に期待すると手痛いしっぺ返しを食らうのは世の常だ。 そもそも猫はしゃべらないし、娘はクチをきいてくれない。
言葉遣いによるキャラの特徴づけはゲーム、特にノベルゲームにおいて強く発現してると思います。 格闘ゲームやシューティングゲームにはない、なんて言うつもりはないです。 結城小夜の式神になりたいくらいです。 でもやっぱり、文章量の差は大きいわけで。
それで、例えば『ひぐらし』なんかは上手ですよね。 「」だけで誰がどの台詞かすぐわかるから、二次創作なんかもしやすいのだと思います。
ただ、良い所ばかりというわけでもなくて、あまりに極端な表現を使ってしまうと、「現実離れしすぎてて、ちょっと」ということが起こるかもしれません。(※5) 現実じゃないのはわかっています。 でも、シャーロックホームズが推理中に「実はここに監視カメラが…」とか、興ざめじゃないですか。
そういう理由からなのかどうか知りませんが、「」内の強気な表現を避けて、地の文で勝負しようとしているライターさんもいます。 声つきなら、どうとでもなるそうなのですが、声なしだとかなりの技量が求められるみたいです。
なんの項目でしたっけ、これ。 でも安心してください、こういう時に役立つ役割語を私は知っていますから。
「はわわ〜、話が脱線しちゃいましたぁ☆」
金水敏さんに、敬意をこめて。
追修願
(※1) もちろん、「やろう?」とかも当てはまるんだけど、元の動詞から変わってるから、とりあえず省いとくね。
(※2) 強弁が過ぎたね。 「Shall we fuck?」など、他にも言い様はあると思うよ。
(※3) 「気持ちいい」の略語です。
(※5) ひぐらし好きです。