ガラムマサラ(香辛料)

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ガラムマサラ(香辛料) - (2014/03/26 (水) 12:27:30) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2010/01/26 (火) 17:45:20
更新日:2024/03/23 Sat 09:20:56
所要時間:約 5 分で読めます




※読み飛ばしOK※


男は今夜の取引にいつもより緊張していた。
なんてことない取引、いつもの相手、いつもの商品、いつもの量、ただ珍しく取引場所を指定された。
10年以上の付き合いがある取引相手の珍しい我儘、受け入れるのも商売と今回は男が折れた。
場所は中立地帯の繁華街、違和感は消えないが、俺ならいつも通り大丈夫だと自分に言い聞かせる。
ガチャ
ドアの開く音が聞こえる、続く足音、約束通り一人のようだ。
「ダンナ、待たせちまった様で悪いね」
相手はいつもの笑顔で男の正面に立つ。
「約束の2分前だ、待っちゃいない」
「今回はコッチの我儘を受けてもらっ……」
「御託はいい、仕事をはじめようぜ」
相手の感謝の言葉を無視して取引を促す。
「へへ、分かってますよ」
相手がアタッシェケースを開けると、中から小分けされた茶色の粉袋が顔を出す。
「確認するぞ。」
「どうぞどうぞ。」
右下の袋に穴を開け、中指の腹で触る、右下と中指、男のラッキージンクスだ。
「どれ」
香りを確かめ、味をみる。
「確かにエスビーの上物だ。」
「へへ、取引成立ですかね?」
説明出来ない違和感、この世界で長く生きた男の嗅覚が反応する。
「待て、……もう一ついいか?」
「えっ」
「何か不都合でもあるのか?」
「いっいえ、どうぞどうぞ」
相手の一瞬の動揺、見逃すほどお人好しではない、一つ隣の袋を同じ手順で確認する。
「おいおい、ブツはブツだがコイツは百均の安物だぞ」
「そっそうですかい? ダンナの思い違いじゃないですか?」
相手の動揺が伝わってくる。
「俺が間違えると思うか?」
「へへ、流石ですね」
一時の沈黙……


カチャ

微かな物音、男の経験と本能がレッドシグナルを告げる。
「ダ、ダンナ逃げてくださ……」
ズキュン、ズキュン
2発の銃声、腹をおさえ倒れる取引相手、そして響く嫌な笑い声。
「ハッハッハッ、久しぶりですね」
「この筋書きを考えたのは貴様か? ゲス野郎。」
笑い声の主とその部下、登場人物がいっきに6人も増えた。
出来れば一生会いたくない最低野郎だ。
しかし男はそれ以上相手にせず凶弾に倒れた取引相手を見る。
「ダンナ、すっすまねぇ、脅されたとはいえアンタを裏切っちまった」
助からないな、男には分かる。
「よくある事だ、気にするな」
相手もプロだ、自分が助からないことは理解出来ているだろう。それでも血を吐きながら途切れ途切れの謝罪を繰り返した、すぐにそれも消えた。
「まったく、役に立たないドブネズミですね」
死者に鞭打つゲスの言葉。
「ちょっと娘さんの話をしたら、お前のことをベラベラと話してくれましたよ。ハッハッハッ」
嫌な笑い。
「ドブネズミの娘はどうしました?」
ゲスのクエスチョンに部下が答える。
「俺達の暇つぶしに付き合ってもらいました、そして今頃アッチで感動のさいか……」

パスッ

セリフをいい終える前に、サービスで頭の風通しを良くしてやった。

パスッ

ついでにもう1人強制退場、冴えないサイレンサーの音は嫌いだが、コレもラッキージンクスなので仕方ない。
「こっ殺せぇ! 蜂の巣にしちまえ!!」
ゲスの言葉使いが雑になる。
『三流三下のゲス野郎が』
逆に男は冷静になり、銃撃をくぐり抜け柱の影に移動する。
「クソックソックソッ」
ゲスが取引相手の死体に八つ当たりの無駄な発砲を繰り返す、本物のゲス野郎だ。
「出てこいよ!チキン野郎」
『1日で取引相手と親友、2つも無くしちまった、ついてないな』
男はプロだ、落とし前はつけるが、復讐はしない、だが。
『熱いスパイスみたいな夜だな……。仕方ない、あの世を賑やかにしてやるか!』
柱の影から男が飛び出す、敵の照準よりも速く。

パスッ、パスッ、パスッ、パスッ

サイレンサーの冴えない銃声。













※ココから本文※


ガラムマサラとは、カレー等のインド料理によく使われる「ミックススパイス」の一種で、その中でも比較的ポピュラーな一品。
ヒンディー語でガラムは「熱い」等の意味があり、マサラは「ミックススパイス」の意味がある、二つ合わせて「熱いミックススパイス」
よくガラムの「熱い」は辛さからくる「熱い」だと勘違いされるが、実際はガラムマサラを作る際に、香辛料を炒める工程があるから。
インドでは家庭ごとにオリジナルの調合があり、インド人のおふくろの味的なモノらしい。
香辛料を炒めてすり潰せば完成なので、自主制作するのも面白いかもしれない、しかし日本は香辛料が結構高いのでオススメはできない。

イギリスがカレーを作る際にもとにしたスパイスの調合はこのガラムマサラ。
それを日本人がアレンジし、昨今のカレーライスが誕生した。

主な材料(エスビーガラムマサラ)
胡椒・コリアンダー・赤唐辛子・カルダモン・クミン・クローブ・シナモン

使用法
カレー作る際の、肉を炒める時や、ルーを入れる時、完成時等に適当にパッパッとふりかけよう。
皿に持って食べる前にふりかけてもOK。
またカレー味の物なら大体相性が良いので、カレーうどん、カレー焼きそばやカレーピラフ、タンドリー風チキンの隠し味等も面白い。

注意点
香辛料は風味が大切なので、できるだけ早い消費を心がけよう。
ガラムマサラは入れただけでカレーが美味しくなる魔法の粉ではなく、カレーに風味をプラスするモノと覚えておこう。


普通のカレーに飽きた方はぜひ食べてみて下さい。



因みにマサラの調合に使われるスパイスの大半は、漢方として使われたりする








「おじさん、大丈夫?」
俺に金を恵んで貰おうと声をかけてきた少女が、心配した様子で顔をのぞき込む、黒いコートには赤黒いシミが滲んでいる。
「お嬢ちゃん、ヤッカイ事にかかわるなって教わらなかったのかい?」
「でも……」
幸い弾丸は掠っただけで致命傷ではない、困惑する少女の頭を撫でまた歩み始める、数歩歩いて立ち止まりコートのポケットから思い出した様に小袋を取り出し、振り返って少女に向けて放り投げる。
「コレで美味いカレーでも食ってきな」
「スゴイ本物のガラムマサラだ!」
「あぁ、百均の安物だが本物だ、香りが無くなる前に食えよ」
背を向け手を振りながら応える。
形見のつもりで持ってきたが、俺やアイツにそんな物は似合わない。
「おじさん、ガラムマサラをありがとう。」

~終~


追記、修正は感情的に音読してからお願いします。

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  • この厨二臭さ‥嫌いじゃないw -- 名無しさん (2013-10-10 12:11:58)
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