この世界の片隅に

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この世界の片隅に - (2017/01/14 (土) 22:58:20) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2016/11/21 (月) 07:38:00
更新日:2024/03/06 Wed 11:29:51
所要時間:約 5 分で読めます




この世界の片隅に うちを見つけてくれてありがとう



『この世界の片隅に』は、こうの史代による漫画作品である。
『漫画アクション』(双葉社)にて2007年1月23日号 - 2009年1月20日号まで連載。単行本は同社より上・中・下巻が発売。
2011年に実写ドラマが放送、2016年11月からはアニメ映画が公開されている。



【概要】


昭和9年1月。広島の漁師町、江波ののり養殖業者の娘で8歳になる浦野すずは、絵心のある、すこしぼぉ~っとした女の子だった。
中島本町(今の平和記念公園)の繁華街で人攫いのばけもんにさらわれ、名も知らぬ12歳の少年と共に逃げ出したり、
夏に親戚の家を訪れた時には、屋根裏から現れたざしきわらしにスイカを勧めたり。

10年の月日が流れた昭和19年。初恋、小学校卒業も経験したすずは、絵を描くことと海苔漉きだけがとりえの夢見がちな18歳の娘に成長していた。
そんなある日、すずに広島県呉市の北條家から突如縁談話が舞い込む。
周囲に言われるがまま、北條家の長男である周作の妻となり、20kmはなれた軍港の町、広島県呉市に嫁いだすず。
見知らぬ家、見知らぬ人々、見知らぬ街。裕福でいられない時勢の中、それでもしなやかに明るく生活していく彼女。

静かにすずと仲を深めていく周作、すずの気性に呆れ、口うるさく彼女を見守る義姉・径子、
キツイは母と対照的にすずになつく径子の娘・晴美、かつて想いを寄せた人・水原哲、運命的な親友・白木リン、広島に残してきた最愛の妹・すみ。
さまざまな人々の運命は、昭和20年8月に向けて加速していくのであった……。


という内容の日常系ほんわかギャグ漫画。

嘘ではない。 物語前半部分に関しては。
『戦時中』を舞台にした日常漫画なので時折ヘビーな描写も存在している。
しかし序盤から中盤にかけては、ほぼすずさんのかわいいドジっぷり天然ぶりをめでる漫画である。

作者・こうの史代は『さんさん録』などのゆるゆるとしたコメディを得意としている作家であり、
さんさん録』同様ゆるい日常の上に成り立つくすっと笑えるギャグがそこここにちりばめられている。

かわいらしい絵柄でありながら、当時の生活や時代背景に関しては徹底的に調べつくされており、当時の風俗、文化に関してある程度の知識がないとわかりづらい描写もある。
そしてちょっぴりエロい場面も。

さらに、この作品を語る上で欠かせないのが、作者の神業的な伏線回収能力と挑戦的な画風である。
コマのすみに描かれている小さなものや小道具が後に伏線として回収され、あるいは暗示的な意味を持って立ち上がってくる。
さらに、場面や描写によって画材を変える(たとえばすずが羽ペンで描いた絵は実際に羽ペンで描かれている)などの試みを行っており、これが終盤で非常に大きな意味を持ってくる。
二度三度読み返すうちに気づく仕掛けも多い。



【登場人物】
()内はアニメ版・ドラマ版配役


●北條(旧姓 浦野)すず(CV:のん 演:北川景子)
漁村江波でそだった少女。家は比較的貧しく、のり作りの手伝いをしながら絵を描くのを趣味にして育った。
やや丸顔で、口元に目立つほくろがある。
のんびりおっとりした性格。
18歳で呉に嫁いでからは相変わらずのんびりと家事をこなしながら生活していく。
かなりのドジで天然であり、着物のリメイクに失敗して原形をとどめない残骸に変えたり、こけた兄を上から踏んづけて殴られたりしている。
周作やリンとは幼少期に会っているのだが、まったく覚えていない。

●北條 周作(CV:細谷佳正 演:小出恵介)
すずの夫。
海軍の軍法会議所の録事(書記。定時が6時なのでロクジと呼ばれている……わけではない)。
12歳のときに出会ったすずを10年後に探し出し娶った愛妻家のイケメン。
とにかく嫁愛がすごく、哲がらみでは結構嫉妬深い面も。

まじめな性格だが陰気だといわれるのと、運動神経が鈍いのがコンプレックスのようだ。

●北條 円太郎(CV:牛山茂 演:篠田三郎)北條 サン(CV:新谷真弓 演:市毛良枝)
周作の両親。すずと同居している。
円太郎は広工廠で兵器製造に取り組んでる。
アニメ版では紫電改の製造にかかわっている設定らしく、
空襲の最中に紫電改のドッグファイトを見物しながらエンジン音を聞いてうっとりしていたりする。
筋金入りの理系オタクであり、一般人には理解できない話がとにかく長い。
サンは足が悪く、寝たきりのことが多い。
すずの失敗の埋め合わせになけなしのヘソクリを出してくれた。
夫婦そろって温和であり、すずがドジをふんでものんびりやり過ごしている。

●黒村 径子(CV:尾身美詞 演:りょう)
周作の姉。アニメ映画版ではある意味もう一人のヒロイン。
黒村時計店に嫁いで久夫、晴美の二児をもうけるが夫は若くして病死。
久夫を舅姑に連れて行かれてしまい、建物疎開で店も失い、晴美とともに北條家に出戻ってくる。
元モガで華やかな美貌の持ち主であるが、性格は厳しいためどんくさいすずに嫌味を言うことが多く、とにかく説教が長い。
(漫画ではクドクドという手書きレタリング文字、アニメでは高速早回しで長い説教が描かれる)
しかし天然のすずには通じず、いびりが空回ることも多い。
空襲で焼け出された一家に娘のために買った学用品をあげてしまうなど、本質的にはお人よしのツンデレである。
というか、終盤でとる行動の数々を見る限り、ある意味作中屈指のぐう聖と呼べなくもない。

●黒村 晴美(CV:稲葉菜月 演:小西舞優)
径子の娘。5歳。
顔にそばかすのあるかわいい女の子。
「晴美ね……」とおっとりしたしゃべり方をする。
母親よりもすずとペースがあうらしく、すずの横にくっついていることが多い。
そしてすずのドジの被害にあったり、いっしょになってやらかすことも多い。
久夫の影響でミリオタ気味であり、船影を見ただけで軍艦の名前を判別できる特技がある。

●小林夫妻
円太郎の姉夫妻。
空襲で焼け出され、北條家の居候になる。

●白木 リン(CV:岩井七世 演:優香)
すずが闇市の帰りに迷子になったところを助けた妓楼勤めの美女。
すずの描くお菓子の絵を気に入り、以後はすずの秘密のともだちとしてこっそり会っておしゃべりに興じるように。
もの馴れないすずに姉のように接し、愚痴を聞いてあげることも多い。
漫画では実はある重大な秘密が・・。
アニメ版では登場シーンが大分カットされている。エンドロール見よう。

●浦野一家
すずの実家の家族。
のり養殖業を営んでおり、北條家より若干荒っぽい家風である。
両親(十郎・キセノ)は江波の開発で職を失い、工場で働くようになる。
兄の要一は哲が避けて通るレベルの乱暴者らしく、浦野家の『鬼いちゃん』として近所で知られている。すずも度々ゲンコツをくらっている。
すず作の劇中内ギャグ漫画、『鬼いちゃん』ではかなり人間離れして描かれている。
妹すみは、姉とは反対にしっかり者の美少女であり、姉とは大の仲良し。
陸軍の将校といい仲らしい。空襲の激しい呉に住む姉を心配し、連れ戻そうとするが……。

●水原 哲(CV:小野大輔 演:速水もこみち)
すずの小学校時代の同級生で、乱暴者のガキ大将。
すずの鉛筆をとりあげるなど粗暴な行動が目立ったが、あるときを境にすずと心を通わすように。
海軍兵学校に通っていた兄が海難事故でなくなり、荒れた家庭に居場所を見出せずにいるらしい。
すずが18歳の時には水兵になっており、重巡洋艦青葉に搭乗している。
すずの嫁入り先である北條家にある日突然訪問してくるが……。


ちなみに登場人物の名前は全員元素名のもじりである。
読むときは周期表を片手にどうぞ。


■実写版
2011年8月5日に日本テレビ系列にて放送される。


■アニメ版
『名犬ラッシー』『BLACK LAGOON』『マイマイ新子と千年の魔法』の片淵須直監督によりアニメ映画化されている。2016年11月19日より公開。
原作に惚れ込んだ片渕監督が作者自身に手紙を出して映画化の直談判をした。
監督の作品である『名犬ラッシー』のファンであった作者は歓喜して、その手紙を枕の下に敷いて寝たというエピソードがある。
製作スポンサーを募るためのパイロット版作成資金はクラウドファンディングで募集されたが、国内のファンディングでは最高額クラスの支援額が集まった。
この反響を受け、日本テアトルが配給元に名乗りを上げている。

尺の関係で、リン絡みのエピソードが大幅にカットされているが、基本的に原作に忠実。
原作の時点で相当な考証がされているが、監督の趣味で映画は更に史実と近づいたものとなっている。
冒頭の中島本町のシーンは、存命の方への聞き取りで建物やモブの商店主にいたるまでが史実どおりに再現されており、
オープニングの数分間だけでも見る価値があるほどのこだわりっぷりである。
映画全体で占める時間の割には軍事考証にも異様に力が入っており、紫電改がドッグファイトを繰り広げたり、
機銃掃射や爆弾投下のシーンなどの動きや音がリアルに再現されている。特に音響は生活音から爆撃音まで再現への執着ぶりが半端ではない。

君の名は。」「聲の形」など一般層向けの劇場アニメが注目を集めたこともあって、公開後は普段アニメを見ない中年層や高齢層を含む幅広い層に支持を集め、批評家やSNSを中心に高い評価を獲得。
初回公開は全国で70館足らずの小規模公開であったが、都心部のミニシアターでは満席立ち見が続出。1月からは公開劇場を約2倍に増やすことになった。日本テアトルの直営館である東京テアトルに至っては同館開館以来の最高収益を記録している。
そして、第90回キネマ旬報ベスト・テンでは邦画第1位と監督賞をダブル受賞するという快挙を成し遂げる。
アニメ映画で一位に選出されるのはとなりのトトロ以来28年ぶり、監督賞に至ってはアニメ監督としては初である。




追記修正せい! 今すぐ!(クドクド)

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