登録日:2016/09/13 Tue 22:27:35
更新日:2025/01/23 Thu 03:21:06
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『君の名は。』とは、2016年8月26日に公開されたアニメ映画。
原作、脚本、監督は、自主製作アニメ出身で、『
秒速5センチメートル』をはじめとして高い芸術性を評価される作品を生み出してきた
新海誠。
新海誠が得意とする、「遠く離れた二人の男女の恋愛劇」を題材とし、観客の心に突き刺さるようなモノローグや写実的な背景、美術は本作も健在。
総作画監督に
スタジオジブリ作品の安藤雅司、キャラクターデザインとして『
あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『
あの夏で待ってる』の田中将賀が採用され、絵柄としても従来のアニメに近く、万人にも入り込みやすい作風となっている。
劇中の使用曲には、バンドのRADWIMPSが書き下ろした。ハイライトシーンで流れるBGMは感情を揺さぶること請け合いである。
ストーリーについては、是非とも一度劇場で確認してほしい。
新海誠本人による小説版と、加納新太によるスピンオフ小説『君の名は。 Another Side:Earthbound』が発売中なのでそちらも映画に併せて読むとより世界観を知ることができるだろう。
なお、下記に示す通り本作は『転校生』などの入れ替わり作品の系譜に連なる。
「こういう万人受けしている作品は
性転換(TS)ネタが薄そう」という理由で敬遠しがちな人もいるかもしれないが、
全然そんな事はないので安心して観賞しよう。
ちなみに昭和時代のラジオドラマで映画・
ドラマ化された大ヒット作『君の名は』なんてのがあり、恐らくそっちから「タイトル」・「中々出会えない主役2人」
・「同時期にゴジラ上映、売り上げがゴジラを上回る」という要素を参考にしたと思われる。
「朝、目が覚めると、なぜか泣いている。こういう事が私には、時々ある。」
飛騨の山間の湖のほとりにある田舎、糸守町に住む女子高生、三葉。
友人や祖母と妹の家族にも恵まれ、それなりに楽しい日々を過ごしていた彼女だが、
ロクにおしゃれな店もなく、不仲な町長の父のせいで白い目で見られる生活にうんざりしていた。
ある朝、三葉は目覚めると、東京に住む男子高校生になっていた…?
東京で父と二人暮らししている普通の男子高校生、瀧。
友人に恵まれ、バイト三昧の毎日。
片想いの先輩もいて、告白する勇気も持てずにいた。
ある朝、瀧は目覚めると、ド田舎に住む女子高生になっていた…?
豊満な女体に見蕩れつつ、周囲を困惑させながら一日を終える瀧。
だがそれは夢だった?しかし彼の携帯には、女子力たっぷりの一日の記録が…。
それが何日も続き、瀧は気付く。
「おれたちは、夢の中であのオンナと」
そして始まる、週に2、3回訪れる二人だけの秘密の「入れ替わりの日」。
(※以降は中身が瀧の三葉を「ミツハ」、中身が三葉の瀧を「タキ」と記載します)
「タキ」として生活する三葉は、東京生活を楽しみ、女子力の高さで瀧の憧れの奥寺先輩と急接近させる。
「ミツハ」として生活する瀧は、イケメンな言動で周囲の憧れの的。
二人の会話は携帯に残された文章だけ。しかし彼らはいつしか互いを想い合える仲となる。
だが… その日々は突然終わりを告げてしまう。
そしてその日は、三葉がセッティングした瀧と奥寺先輩のデートの日。
そして、三葉にとっては、千年に一度の彗星が最接近する秋祭りの日だった。
失意の中、三葉は秋祭りの会場へと向かい、彗星が夜空に煌めき…。
…その日以来、瀧は三葉としての夢を見なくなってしまう。
やっと自分の気持ちに気付いた彼は、入れ替わった時の記憶を頼りに、三葉の住む町を探す旅に出る。
しかし、辿り着いた飛騨の山奥で、彼は信じられないものを目の当たりにした…。
そして、瀧は「夢」の残酷な真実と、自分に課せられた「使命」に気付く…
二人は何故入れ替わったのか?
瀧と三葉に与えられた使命とは?
二人は「運命」を変えることができるのか?
そして、出会うことのない二人は再会できるのか…?
≪東京≫
□立花瀧(たちばな たき)
「言おうと思ってたんだ…!! お前が世界のどこにいても、おれが必ずもう一度逢いに行くって…!!」
主人公。
東京・四谷に住む男子高校生。
明るく社交的な性格だが、短気で喧嘩早いのが玉に瑕。右手首に赤いリストバンドをしている。(「タキ」の時にはしていない)
喧嘩は弱い方らしいが、、本編開始直前に大人のチンピラヤクザ二人と喧嘩して頬の傷だけで済んでるので、そこそこ実力はあるのかもしれない。
性欲も人並みで、おっぱいにはこだわりアリ。
絵を描くのが趣味で、将来は建築関係の仕事を目指している。(画家としてもやってけそうな気も…)
ある日突然、田舎町に住む三葉と夢の中で入れ替わり、「ミツハ」として人の目を気にすることなく振る舞い不良を黙らせただけでなく男女共にモテモテになる。
一方で三葉のおかげで憧れの奥寺先輩と急接近するが、彼女への気持ちに違和感を持ち、やがて自分の三葉への想いに気付く。
そこで、三葉に会うために飛騨へと探索に向かうが、そこで彼女の「正体」と、あまりにも残酷な「真実」を知る。
そして彼女の記憶が徐々に薄れていき…!!
「ミツハ」として過ごしていくうちに、糸守にも「第二の故郷」的な愛着を持つようになっており、終盤の三葉を含めた糸守の人々を救うために「運命」と戦う姿はまさに漢。その時は「ミツハ」だけど
実は同い年ではなく、三葉の三つ年下。
瀧のしているリストバンドは、三葉がリボンにしている組み紐。
「三年前」のタイムラグに気付かない三葉が、瀧に会いに来て渡したものだった。
□奥寺ミキ(おくでら みき)
CV:長澤まさみ
瀧のバイト先のレストランで働く女子大生。
美人で優しい性格で、瀧の憧れの人。
瀧とはあくまで先輩後輩の仲だったが、三葉が入れ替わって以来、彼女のアピールによって瀧に好意を寄せ始める。
しかしそれは「(三葉が入った)タキ」であり、(三葉がセッティングした)初デート当日の瀧の様子にそれまで自分と一緒にいた「タキ」とは違うものを感じとり…
高嶺の花と思われがちだが、お茶目でゆるキャラ好きな普通の女の子。
遠く離れているという瀧のガールフレンド探しの旅にも付き合ってくれる凄くいい子。
「失恋」を自覚した際に、やめていたタバコを一本だけふかしていた姿は少し切ない…
古舘伊知郎氏の一番のお気に入りキャラ。「こんな(いい)先輩いますか!?」…全くもってその通りです。
実は三葉と同年代。(同い年の可能性もあり)
旅の中で司といい感じになっており、公式ガイドブックによると、終盤で婚約した相手は司であることが確定した。(よく見ると二人の指輪のデザインが同じ)
□藤井司(ふじい つかさ)
CV:島崎信長
瀧の親友の一人。
眼鏡をかけた知性派で、何かと苦労する瀧に真摯に向き合っている。
入れ替わり事件以来挙動不審な瀧にも誠実に対応し、飛騨への旅にも同行し、彼を応援した。
ちょっぴりアレ疑惑アリ。まぁ、中身は三葉の「タキ」だが。そして後に奥寺先輩と結ばれた勝ち組。
□高木真太(たかぎ しんた)
瀧の親友の一人。
大柄な体育会系で、よく瀧をおちょくっている。
お弁当を持ってきていなかった瀧(に入った三葉)の為に司と共に快く昼食を譲ったり、バイトの代役を快く引き受けたりと、瀧の良き親友の一人。
≪飛騨≫
□宮水三葉(みやみず みつは)
CV:上白石萌音
もう一人の主人公。
飛騨の山奥の町、糸守町に代々伝わる神社の長女。
一緒に暮らしている祖母と妹との仲はいいが、母が死んで以来父との確執が深く、疎ましく思っている。
それも相まって、将来は村を出て東京で働く野望を抱いている。
バストと運動神経はそこそこある方。興奮したり悩んだりする時にもみあげをいじる癖がある。
素直で人懐っこい性格で二人の幼馴染とはいつも仲良し。だが、父親と名家のコンプレックスから、
学校ではなるべく目立たないように振舞っている。
ある日、東京に住む瀧と夢の中で入れ替わり、「タキ」として念願の東京ライフを満喫し、女子力の高さで奥寺先輩の関心を引き付けることに成功。
瀧には入れ替わる度おっぱいを揉まれて常にセクハラされたり、知らぬ間に学校で人気者になったりして困惑する羽目に。
…まぁ彼女も彼女で、「タキ」として瀧の小遣いでスイーツ食べまくったり、瀧のお宝を触りまくってるのでどっこいどっこいだが。(そのせいで瀧はバイトを増やすハメになった)
その日々の中で、瀧への想いを自覚した彼女は、失恋を覚悟する。
だが、秋祭りの日…。
実は瀧が介入しなかった未来に於いて、祖母・妹と共に糸守町隕石大災害にて死亡している。
しかもまるで「預言者」の宮水の血筋を抹殺するかのように、彼女にピンポイントに落ちて遺体さえ残らず消滅してしまう…!
改変後の未来に於いては宮水神社は潰れたものの、上京して服飾デザイナーとして働いている。
そして実はドケチという裏設定があり、テッシーやサヤちんは彼女に奢ってもらった事すらないとの事。
終盤で「ミツハ」の警告をすんなり聞いたのは「三葉が奢るなんてただ事ではないと思ったから」である。三葉ェ…
□宮水一葉(みやみず ひとは)
CV:市原悦子
三葉の祖母。
宮水神社の神主でもあり、代々伝わる糸守神社や組紐の伝統を重んじ、三葉に何度も言い聞かせている。
宮水家に与えられた糸守神社と祀られた神についても詳しく、それを孫に教えることになる。
だが、それ故に俊樹とは対立してしまい、一家離散の原因を作ってしまう事に…
瀧も彼女には結構懐いており、小説では「まんが日本昔話ばあちゃん」と中の人ネタを言ったこともある。
□宮水四葉(みやみず よつは)
CV:谷花音
三葉の妹。小学生。短めのツインテールがチャームポイント。
しっかり者で、何かと頼りない姉を支える。
口噛み酒を商品化することを考えるなど、けっこうしたたかな面もあるがいい子。
入れ替わり以来、挙動不審な姉の言動を本気で心配する。
小説版にて明らかになるが、四葉もまた、本編開始前に「入れ替わり」を経験している。
しかも入れ替わっていた人物は1000年以上前の宮水家の祖先と思われる人物であり、巫女としての素質は姉以上と言える。
□宮水俊樹(みやみず としき)
CV:てらそままさき
「僕が愛したのは二葉です! 宮水神社じゃない!!」
糸守町の現町長。
娘たちの名前から察せられるだろうが、元々宮水の人間ではなく婿養子。
かつては家族を愛するよき父親だったが、妻の二葉が死んでからは神職を捨て姑の一葉と関係が決裂し別居。
現在は娘を顧みることなく公務に取り組んでいる。
宮水を中心に糸守に根付く旧態依然とした価値観などを一掃しようとしているが、住民からはそのやり口を癒着・ばら撒き・政治腐敗と揶揄されることも。
瀧介入前の糸守町隕石大災害では、偶然被害範囲外の町役場にいたため助かったが、家族全員を失ってしまう悲劇に遭うことに…。
改変後では一時期は英雄として扱われたが、住民への補償や数々の疑惑などいろんな問題が重なったほか、糸守町が無くなった事で結局は辞職。町役場総辞職メテオ
だが家族をいっぺんに失った改変前よりは遥かにマシと言えるだろう。
□勅使河原克彦(てしがわら かつひこ)
CV:成田凌
三葉の幼馴染の同級生の少年。愛称「テッシー」。坊主頭がチャームポイント。
三葉に密かに憧れている。
土建屋の息子であり、町長と組んで村の開発業に取り組む父に嫌気が差している。
故郷への愛着は人一倍あるが、それは同時に一生をここで過ごさねばならないかもしれない事への諦めも兼ねている。
大のオカルトマニアで、三葉の最近の挙動不審を「前世の記憶」ではないかと推測する。
見た目は体育会系だが、実家の職業柄パソコンや発破にも詳しく、爆弾も自作できるなど、結構インテリ。
その知識を活かし、終盤では重大な役割を果たす。彼がいなかったら「ミツハ」(瀧)の計画は完全に詰んでいた。
□名取早耶香(なとり さやか)
三葉の幼馴染の同級生。愛称「サヤちん」。
おさげ頭が特徴の大人しい女の子。
テッシーに想いを寄せているが、本人には気付かれていない。
終盤では半信半疑ながらも町を救うために協力することになる。
テッシーと早耶香もまた、瀧が介入しなかった未来に於いて、糸守町隕石大災害にて死亡している。
犠牲者名簿では名前の漢字を「沙耶香」と間違って書かれている。カワイソス…
改変後の未来では晴れてテッシーと結ばれ、上京して働いている。(ただし、三葉との職場とはかなり離れている模様)そして、学生時代に憧れたカフェにて…
□ヤンキートリオ
松本「町長と土建屋は、その子供も仲エエな」
桜「恥ずかしv」
花「ちょっとカワイソ」
三葉の同級生の男一人、女二人のヤンキー三人組。
トサカっぽい髪形の少年が「松本」、シュシュの女の子が「桜」、ストレートロングの女の子が「花」。
いつも三葉に陰口を言うが、暴力は決して振るわず、感性は比較的まとも。
後に「ミツハ」にブチ切れられて以降、三人とも大人しくなるなど、所詮はちょっと不良ぶってるだけの田舎の少年少女と言ったところである。
だが、彼らもまた、瀧が介入しなかった未来に於いては糸守町隕石大災害にて全員死んでいる。
改変後の未来に於いては、三人とも上京して元気に働いているようである。
ちなみに、「ミツハ」の乳揺れを鼻を伸ばしてガン見していた事から、どうやら松本は三葉に密かに惚れていたようである。(所謂「好きな子をいじめたくなるタイプ」?)
□ユキちゃん先生
三葉の高校の古文教師。
「黄昏時」について、授業で説明していた。
元は前作「言の葉の庭」のヒロイン。
東京で生徒にいじめられ四国の実家に帰ったのでは…?
一応、彼女が何故糸守に赴任したのかは「見た人の解釈に任せる」との事。
誰も知り合いがいない土地で一からやり直そうと思った…と言ったところだろうか。
東京と違って生徒には慕われていた模様。
だが瀧が介入しなかった未来に於いては、糸守町隕石大災害に巻き込まれ、目の前で教え子と同僚を失うという最悪の悲劇に見舞われることに…!!
彼女自身は、たまたま宿直で高校に泊まり込んでいたので、改変有無関係なく助かっている。
が、介入前はさらに荒んだ日々を送っていたに違いないだろう。
□吉野さん
「高山ラーメン 吉野」の店主のオヤジさん。
実は序盤の俊樹の選挙演説にもチラッと登場している。
糸守の人間では唯一、ある事をきっかけに「ミツハ」ではない瀧と深く関わることになる。
ほとんど見ず知らずの瀧達に泊まる宿を紹介してくれたり、瀧に弁当を渡してくれたりとすごくいい人。
ちなみに奥さんの声を担当したかとう有花氏は岐阜県出身者で、本作の映画・小説・漫画における方言監修にも携わっている。
実は糸守町隕石大災害の生き残りである。
瀧にやたら親切にしてくれたのも、滅んだ故郷に何も出来なかった罪悪感と、「彼なら何かをしてくれる」と直感的に思ったからだったのかもしれない。
【用語】
瀧と三葉がある日突然経験した謎の現象。
週に二、三度ぐらいの周期で遠く隔てた二人の魂が何故か入れ替わっていた。
記憶などは持ち越されないため、情報を共有するためにはその日の出来事などを紙なり日記なりで書いて取っておく必要がある。
最初は戸惑いながらも二人はそれぞれの生活をエンジョイしていたが、ある日突然「入れ替わり」が起きなくなり…?
その正体は隕石の大災害を防ぐために宮水の巫女に代々受け継がれる特殊能力。
思春期のときに遠く隔てた「誰か」と魂が入れ替わる。
入れ替わる「誰か」は完全ランダムのようだが、三葉の母二葉、祖母の一葉も若い頃に「入れ替わり」を経験しており、「誰か」は二葉は夫の俊樹、一葉は亡くなった彼女の夫であることが示唆されている。
ただし、入れ替わった時の記憶は徐々に薄れてしまうため、彼女(彼)らに自覚は殆ど無く、文献も焼失したため、「不思議な夢」として扱われた程度で伝承として伝わってはいなかった。
もしかしたら、瀧や俊樹の遠い祖先も、宮水の血を引いていたのかもしれない。
実は瀧と三葉の「入れ替わり」には3年のタイムラグが存在していた。
つまり、「三年後」の人物である瀧が「三年前」の三葉と入れ替わって隕石の危機を伝え、「三年前」の三葉が「三年後」の糸守を知る事で真実を確信させ、「三年前」の大災害を防ぐ…というものである。
糸守町に伝わる伝統工芸品。
三葉の髪飾りもこれ。
モデルは三重県に実在する伝統工芸品『伊賀組紐』。
「黄昏=誰そ彼」時の、糸守での方言。
恐らく同じ意味の「彼は誰(かわたれ)時」が訛ったもの。
宮水神社に代々伝わる、神と人間を繋ぐための、「人間の半分」としての供え物。
巫女の口で噛み、吐き出した米を自然発酵させ、天然の酒を造る。
実は物語上の最重要アイテム。
三葉も知らないが、宮水の巫女の神通力が宿っている。
劇中の描写から推測するに、飲んだ者に一度だけ宮水の巫女の力を与えるものと思われる。
そして地元・岐阜県飛騨市の酒造店で実際に商品化された。
(流石に中身は普通の日本酒とはいえ)何やってんですか…!!四葉、まさか開発に関わっていたのではあるまいな?
糸守で土地の氏神様を表す言葉。
糸と人、魂と人、時間と時間の繋がりもこれにあたる。
1200年周期で地球に接近する彗星。この映画のキービジュアルであり、顔でもある。
月よりも近くを通過し、その姿は数日に渡って肉眼でも観測できる。
世紀の天体ショーとして連日ニュースでとりあげられているが…?
その正体は糸守に災厄をもたらす
悪魔の彗星。
実は核の内部には巨大な岩塊が潜んでおり、地球に接近すると(
ティアマトが切り分けられるがごとく)彗星は分裂し、その岩塊は地球に隕石として飛来するという天然のミサイルであった。
理屈は不明だが隕石は糸守周辺にピンポイントで落下するという特徴があり、糸守湖も1200年前の災害で生まれた隕石湖である。
そしてそれから1200年たった現代、再び糸守の地に落下し、当日の祭り参加者を中心とした死者500人以上の大災害をもたらした。
残る1000人の住民と住宅、商店街の大半は無事ではあったものの、大量の死者が出た町に留まる者は居らず、大災害から1年後に
糸守町は地図から消滅した。
だが、「三年後」の存在である瀧が介入した事により…
瀧介入後の未来では、ケガ人こそ大勢出たが、奇跡的に死者はゼロで済んだ。
作中で明言はされていないが、宮水神社の御神体がある場所も地形的に隕石で出来たクレーターであると思われる。
宮水の神事はこの彗星落下にまつわるものであり、本来は隕石の危機を子孫たちに伝え、被害を未然に防ぐためのものであったが、
200年前の「繭五郎の大火」によって文献が焼失してしまい、その伝承が途絶えてしまった。
御神体のある場所にも彗星の絵が描かれている。
そして見返すと、冒頭の巫女神楽も実は伏線だらけである事がわかる筈である。
余談(軽いネタバレ注意)
天文ファンやSFファンの間では、「作中に出てくる彗星の軌道が明らかにおかしい」という指摘がある。
もちろんフィクションなのだから完全に正確である必要は無いし、演出である可能性もあるのだが、これについては彗星の知識があればすぐに気が付くほど目立つ上に、ストーリー上必要な改変・演出とも考えにくく、
おまけに別のシーンではちゃんと正しい軌道図が出てくる(つまりシーンによって彗星の軌道が違うという矛盾が発生している)ため、物議を醸している。
後に出たDVDやBlu-rayでは修正されているため、「単純なミス」もしくは「人工物であるという伏線のつもりが全然伏せてなかった」と見て良いだろう。
ただ、件の軌道図は作中のニュース番組の中に出てくるものなので、「ニュース番組のスタッフが間違えた」と考えれば問題ないかもしれない。
なお、厳密に言えば「彗星の尾が必ず進行方向と逆に伸びている」「かなりの質量を失った後もほとんど軌道が変化していない」という点もおかしいのだが、
これらについては正確性よりも絵的な美しさを優先した結果と考えるべきだろうか。
影響
実はこの映画、公開前はそこまで大々的な宣伝が行われていたわけではなく、注目度が高いとは言えなかった。
- 公開日が夏休みを外した8月最終週(26日)だった
- 製作委員会に社会的影響力の高いテレビ局や電通をはじめとした三大広告代理店が全く関わっていない
- 著名な俳優やジャニーズなどの売れ込める要素が少ない(せいぜい瀧役の神木隆之介氏や奥寺先輩役の長澤まさみ氏ぐらいであり、三葉役の上白石萌音氏もまだデビューして5年の新人女優である)
- 新海誠監督や主題歌を歌うRADWIMPSも「知る人ぞ知る」監督やバンドで、ネームバリューや知名度も殆どない
…などという
『半沢直樹』にも似た「ないない尽くし」の作品であり、東宝の関係者も
「15億円稼げれば上出来」という程度の認識だったとの事。
しかし、いざ公開されるや否や、そんな下馬評を大きく覆し、本作の徹底した秘密主義の宣伝により10~20代の若者を中心に多くの人々の興味を引き付けることに成功。
完成度の高い感動的なストーリーや、主演声優を務めた神木隆之介氏と上白石萌音氏の本職声優にも劣らない熱演、安易なCGに頼らない非常に美しい映像などで注目を浴び、SNSや口コミなどで瞬く間に評判が広がり、爆発的大ヒット。
若い世代やカップルはもちろんの事、シニア世代にも好評であり老若男女問わずの支持を得ている。
各メディアでも人気ぶりを紹介する報道が増え、人気に拍車をかけることになった。
公開3日目の時点で観客動員数は95万人、興行収入は12.7億円をそれぞれ突破し、週末動員・興収ランキングで堂々の1位を獲得。
初週で興行収入10億円を突破。
これだけでも、アニメ映画としては記憶に新しい『
ガールズ&パンツァー 劇場版』にも劣らぬ大ヒットを記録したと言えた。
が…
影響はそれだけに収まらず、新海監督すらも予想だにしていなかった、とんでもない事態に発展していく。
続く2週目でも週末1位を保持し、公開10日間での動員数は299万4670人、興収は38億円を記録。
更に3週目でも週末1位をキープし、累計動員は481万人、興収は62億円を突破。『
スーサイド・スクワッド』等の新作を寄せ付けない圧勝ぶり。
4週目でも週末1位をキープし、9月22日までの累計動員数は774万人を記録。
そして遂に、スタジオジブリ作品以外のアニメ作品では史上初となる興収100億円の大台を突破してしまった。
あの『
アナと雪の女王』が
公開から37日で興収100億に達したのに対し、本作は
28日で100億のハイペース。
その後も『
聲の形』、『ハドソン川の奇跡』、『アングリーバード』、『ジェイソン・ボーン』…等の話題の新作を抑え込んで週末1位をキープし続け、
10月4日にはついに累計動員数も1000万人を突破。
10週目こそ『
DEATH NOTE Light up the NEW world』に譲ったものの、『
千と千尋の神隠し』以来となるV9を達成。
翌週には首位の座をあっさりと奪還し、連続ではないがV10を達成した。
(その後も『
ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などと並びながらも上位をキープし続けている)
人気は映画だけに留まらず、小説版も映画の人気に合わせ120万部を超えるベストセラーに、外伝小説もAmazonの文庫売り上げランキングでトップ(2位は新海監督自身が執筆した『君の名は。』の小説版)。
RADWIMPSによるサウンドトラックおよびそこに収録された劇中歌も、オリコンチャートやビルボードランキング等の各種ランキングでトップ10入りを果たすなど、アニメ関連楽曲としては2年前に社会現象にもなった『アナ雪』以来となる快進撃を見せている。
作品のモデルとなった岐阜県飛騨市などの土地や建物を訪れる聖地巡礼も起こっており、方々で対応に追われている。
これに伴い、公式サイトでは巡礼を楽しむ人達に向けて、マナーを求める注意喚起を出した。
またtwitter上で違法アップロードされた本編映像動画へ外部サイトにリンクするTLの拡散が確認され、東宝は注意喚起用のアカウントを作って視聴しないよう異例の対応をしている。
興行通信社のまとめによると2016年公開の邦画中、興行収入はダントツの1位。
そして年の暮には、
観客動員数は約1500万人超、
歴代総合興収は200億円を突破。
日本映画史を塗り替えた超怪物作となった。
2017年には、さすがに前年より勢いは落ちたものの、それまで上位を譲っていた『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などの正月映画を抜き返し、2週間限定でIMAX上映を実施。IMAX上映中の22週目の週末には9週ぶり13回目の動員ランキング1位に返り咲く、最終的に29週連続で動員ランキング10位以内に入る等の記録を残す。
東宝の宣伝により春休み期間中までもロングラン上映を行った結果、2017年5月7日現在には国内興行収入は249.4億円に達した。
ただし、3月の途中から動員ランキング10位圏外になる、週間興行収入1億円を割るなど終息も見え始め(なお、春休み期間中も300館以上で上映していたものの、ほとんどの劇場が1日1回のみで客の入りにくい早朝やレイトの時間帯であった。さすがに新作を優先せざるを得なかったのだろう。)、4月15日以降は上映終了する劇場が多くなっている。
興行収入はしばらくの間249.4億円で止まっていたが、7月24日に東宝が250.3億円に達したと発表(おそらく未使用の前売り券が加算されたと思われる)。その後もごくわずかな劇場で公開が続けられていたが、8月25日を最後に国内で365日間続いた上映は終了。
こうした人気を受け、合計92の国と地域での配給が決定した他、スペインで開催される第64回サンセバスチャン国際映画祭での上映、韓国の第21回釜山国際映画祭ガラプレゼンテーション部門やロンドン国際映画祭への出品も行われた。
最初の上映国となった台湾でも爆発的大ヒットを飛ばし、最初は上映館がたったの三館だったにもかかわらず初週興収3位、翌週は上映館を増やされ、ぶっちぎりの1位をキープしている。映画館によっては一日33回も上映している所もあるらしい。
その後はタイ、香港、イギリス、中国でも公開した途端大ヒット。特に中国では公開してたった三日で興収は日本円で約60億円に達した(中国では規制により外国映画の本数が制限されてるため、公開できただけでも大変な事である)。
フランスでも12月下旬、アメリカ・韓国でも2017年1月より順次公開など、全世界125カ国で上映される予定が決まっており、総興収はすでに千と千尋を抜いて邦画歴代トップの大偉業を成し遂げ、未だに快進撃は続いている(2017年1月18日時点で2億8100万ドル、千と千尋は同2億7500万ドル、ちなみに全映画全ての歴代興収トップは『アバター』の27億8800万ドル)。
北米公開は2017年4月7日に開始。約300スクリーンと北米にしては小規模な上映であるが、7月4日現在500万ドル以上を稼ぎ、日本アニメでは歴代11位となっている(なお、より上位はジブリやポケモンが多くを占めている)。
あまりにロングラン上映が続くため、ファンからは「円盤を早く発売してほしい」という声が挙がっている模様であるが、
東宝が2017年4月17日付で自社ウェブサイトに掲載した中期経営戦略には、2017年の注力TOPICSとして、
と記載されており、多くの売り上げを期待したいところである。
受賞歴も凄まじく、アニメ作品プロモーションでは世界最高級権威を持つ、スペインのシッチェス・カタロニア国際映画祭アニメ部門で最優秀長編作品賞を受賞。
韓国・富川(プチョン)で行われたプチョン国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門にて優秀賞と観客賞を受賞。
アメリカで開催されたアメリカ国際映画批評家協会賞にてアニメ映画賞を受賞。
第89回アカデミー賞長編アニメ映画部門のノミネートは残念ながら逃した。審査期間中の北米では11月に審査対象に乗せるための限定公開が行われただけだったので、知名度の低さは如何ともしがたかったのだろう。
…が、アメリカの目の肥えた著名人はこの宝石を逃すわけがなかった。
後に2017年9月に、アメリカ・ハリウッドにて実写映画化することが発表。
製作は米パラマウント・ピクチャーズと映画『スター・ウォーズ』シリーズを手掛ける名プロデューサーJ・J・エイブラムス氏の制作会社バッド・ロボット。
しかも
エイブラムス氏直々の実写化オファーなのだと言うのだから、この映画の怪物ぶりが見て取れる。
ハリウッドでの
実写化は「
DRAGONBALL EVOLUTION」などの前例もあるので不安な声もある一方、アメリカ版としてどんなアレンジをされるのか楽しみという肯定的な意見もある。
もはや名実共に日本の、否、世界の映画史に残るであろう作品として不動の地位を築いてしまったと言える。
もうこうなったらどこまで記録を塗り替えていくのかにも大きな注目が集まっている。
余談だが、本作とほぼ同時期に発売された「
イースVIII -Lacrimosa of DANA-」とは、設定等に類似点がいくつかあるのだが、これは新海氏が元日本ファルコム社員だっただけではなく、
イースVIIIのシナリオライターの中心人物である、日本ファルコム三代目社長の近藤季洋氏とは元同僚だったから。
近藤氏は、共に仕事をしていた時に、「
イース」から受けた心象風景的なものがお互い似てるって話をしたことを
電ファミのインタビュー
で
ビールを飲みながら明かしており、その後近藤氏は、センスの根底にあるのが同じだからなのではないかと推察している。
双方のトップが影響を受けた作品が同じであれば、そりゃ似てくるわけである。
なお社長曰く「本人とは気持ち悪いからそんな話は絶対しないんですけど(笑)」だそうな。
そして本人はその動画を見て、
とても懐かしい話です
、と返していたりする。
ずっとなにかの項目を、誰かの項目を、追記修正している。
そう言う気持ちに取り憑かれたのは、たぶんあの日から。
あの日、アニヲタWikiに星が降った日。それはまるで、
最終更新:2025年01月23日 03:21