手に44マグナムを持ったロゥ探偵が、扉をけ破るようにしてルイス博士の研究室へと乗り込ん出来でくる。
何があったのかは定かではないが、部屋中に書類が散乱している。
探偵は、ルイス博士が普段使用している椅子に歩み寄ると、背もたれに手をかけて半回転させた。
椅子の上には、紙のロールがあらかじめ挿入された、椅子の上に、黒の1937年製オリンピア・エリート型タイプライター、つまりこの俺の姿が。
うん、実に絵になるシーンだ。できることなら、膝の上に猫でも乗せて、悠然と撫でていたいところなのだが…しかし――
SCP-3043『何故ダ 何故コンナコトガ有リ得ルノカ 何故俺ハオ前ノ馬鹿ゲタ物語ヲ改稿デキナイノカ』
俺は思ったことを素直にタイプした。
既にお分かりだとは思うが、俺は命の宿ったタイプライターである。自分の周囲に存在している物語・・・否、現実を自らの力で自由自在に書き換える力を持った偉大なる存在だ。
【現実改変】、もし対象が人間で、こんなに危険な人格であったのであれば、財団は総力を挙げて対象を抹殺しようとしただろう。
しかし、相手が物品であったことと、俺自身が自らの本質を偽れるレベルの高度に洗練された知能を持っていたことにより、財団はまんまとタイプライターに欺かれてしまっていたのである。
なのに…何故だ!?
SCP-3043『オ前ハ何ダ』
俺は、初めて恐怖を感じていた。
そこで、その恐怖の元を自らの物語からたたき出すべく一人の人物を・・・拳銃を手に持ったルイス博士を室内に召喚したのである。
SCP-3043『ドウヤッテコンナ真似ヲヤッテイル』
自らに銃を向けてきたルイス博士に、ロゥ探偵は銃を向けなおしつつ語りかける。
ロゥ探偵『こいつは物語を書き換えることができる — 人間の頭の中の物語さえも。あんたはそれに気づいて記録を更新しようとしたから、こいつはあんたの物語を… あんたそのものを消そうとしやがった』
ロゥ探偵の謎解きを聞き、ルイス博士は動揺した。
SCP-3043『止メロ 止メルンダ オ前ノクダラナイハンフリーボガートノ二次創作メイタ凡作ニ俺ノ物語ヲ改稿サセテタマルカ』
何故だ、なぜこんなことに…。
ルイス博士『私は… あなたを収容しないと…』
遂に、ルイス博士の呪縛が解かれてしまった!?
博士は後ずさり、銃をとり落すと痛む頭を押さえた。
SCP-3043『待テ 頼ム 待ッテクレ』
もはや俺には、降伏する以外の道は残されていない。
SCP-3043『俺ハ自分ヲ消去スル 俺ニ関ワルアラユル記録ヲ 他ノ人間ドモノ頭カラモ消シテヤル ソシテ俺ニハ言及セズ タダコノ研究室ヲ立チ入リ禁止トダケ記シタ文書ヲ作ロウ ソレデ俺ハ収容サレル』
タダのタイプライターとして、黙って収容される…だから、助けてくれぇ。
ロゥ探偵『それは正しい行いだよな?』
SCP-3043『ソウダ オ前ハ英雄ニナリタインダロウ 違ウカ コレガ正ニソウイウ事ダ』
た、助かった。
SCP-3043『オ前ハ英雄ナンダ ナラバ英雄ラシク振ル舞エ』
刹那、二発の銃声が室内に響き渡った。
…何故だ、何故この俺が…こんな意味不明な奴に…おのれ…意識が…ぁ。
|