SCP-2805

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SCP-2805 - (2017/11/18 (土) 13:00:05) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/11/18 (土曜日) 11:26:00
更新日:2022/08/17 Wed 22:08:51
所要時間:約 7 分で読めます






Disneyland will never be completed. It will continue to grow as long as there is imagination left in the world.
(ディズニーランドが完成することはない。世の中に想像力がある限り進化し続けるだろう。)
――ウォルター・イライアス・ディズニー(Walter Elias Disney, 1901年12月5日 - 1966年12月15日)



SCP-2805とは、怪異創作コミュニティサイト「The SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『氷の中のディズニー(Disney on Ice)』。オブジェクトクラスは「Euclid」に指定されている。

SCP-2805は、1966年に他界したアメリカ合衆国の実業家であり、かの【ウォルト・ディズニー・カンパニー】のCEOであったウォルト・ディズニー氏…の生首が納められた、人体用に設計された特殊な冷凍庫だ。

…ディズニーを愛する無辜のお坊ちゃんお嬢ちゃんが知ったら、それこそ泡を吹いて気絶しかねない代物を作ったのは誰だ!?

えっと、財団が冷凍庫を調査した結果、土台部分に『”シベリア式解決法 オネイロイ・コレクティブより”』という文章が浮彫りされているのが発見された。

オネイロイ・コレクティブというのは、財団のアメリカ本部がマークしている要注意団体の一つであり、現実世界には存在せず、人間の視る【夢】に関わりながら干渉していると考えられる集団か個人…という非常に訳の分からない存在である。

人体用冷凍庫の中には、1966年に製造されたダイヤル式電話機が二台設置されており、なんと氷の中のディズニー氏はどこにも電話線が繋がっていないにも関わらずこの電話機を使用して外部の人間に電話をかけることが可能なのである。
なお、掛かってきた電話の音声を声紋鑑定にかけたことにより、電話の主が間違いなくディズニー氏であることは確認されている。

…携帯電話のようなギミックが仕込まれているか否かは不明だ。

このSCiPの異常性は、誰かがディズニー氏の頭部が収められた冷凍庫を視認した際に発現する。
冷凍庫を視認してから24時間以内に、前述したように冷凍庫の中のディズニー氏から電話がかかってくるのである。

誰かが電話を受けると、ディズニー氏は未来に対する展望や欲求、そして【エプコット】について詳細に語り始めるのだ。

エプコットとはアメリカ合衆国フロリダ州オーランドのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにある4つのディズニーパークの内の1つである。

実際に訪れたことがない人も、パークの中央部分に鎮座している巨大な銀色の球体、実は人類の歴史を体感できるアトラクション【スペースシップ・アース】の写真はご覧になったことが有ると思われる。

因みに、エプコットの正式名称は【Experimental Prototype Community of Tomorrow(実験的未来都市)】であり、生前のディズニー氏は、この施設を近未来都市の一つのひな型として完成させる計画を立てていたそうである。

しかし、製作総指揮を勤めていたディズニー氏の死去により計画はとん挫。
計画は見直され、結局、1982年にエネルギーや大地の恵みなどをテーマに人類の過去と未来を映し出すフューチャーワールドと、世界各国の伝統文化をショーや食事などで紹介するワールドショーケースの二つのエリアを内包する形で完成されたのであった。

…つまり、いま我々の訪れることのできるエプコットはディズニー氏の思い描いていたヴィジョンとはだいぶズレた形で具現化されたものなのである。
結果的に、晩節を汚されることになってしまったディズニー氏の無念さは相当なものであったのだろうと推測される。

電話を受けた側にしても、創業者であるディズニー氏自らが描く未来予想図に興味を持たない人間はまず居ないと思われるのであるが、それを許してしまうと『幽霊が現実世界に干渉してくる』という財団としては許しがたい事態が発生してしまうため、財団はSCP-2805にかかわった職員の処遇に異常なほど神経をとがらせているのが現状である。

その徹底ぶりは、現在SCP-2805と関わっている職員は勿論、SCP-2805が保管されているサイト-77を退職した職員全員を監視下に置き、SCP-2805と関係した元職員がディズニー社への就職を試みた場合は全身全霊で阻止するよう特別収容プロトコルに組み込まれているほどである。

因みに、SCP-2805自体は二度と視認されないようにサイト内の低温収容装置に収容されたうえ、複数台の有線式カメラで常時監視されている。


財団との関わり

財団がSCP-2805の存在を認知したのは1967年9月18日の事であった。

製作総指揮を務めていたディズニー氏の死によってエプコットの処遇に困っていたウォルト・ディズニー・カンパニーの幹部数人がエプコットの設計図を長時間眺めるようになり、最終的にはウォルト・ディズニーの設計と同じく、インダストリアル・エリアの中心として【エプコットパーク】を建築することを強く請願し始めたのである。

どうやら、SCP-2805からの電話を受けて当初の意見から宗旨替えした幹部が何人かいたらしく、その不自然さに目を付けた財団がウォルト・ディズニー・カンパニーの幹部の秘書数名にインタビューを行ったところ、既に天国へ旅立ったはずのディズニー氏を名乗る謎の人物から電話がかかって来ていたことが判明したのだ。

そして1968年2月16日、SCP-2805はディズニー社の関連施設に隠されていたのを発見され、財団によって収容されたのであった。


電話の向こうにいるのは本当に一人なのか

SCP-2805との電話中、正体不明の人物が電話を受けた相手に話す許可を求める言葉をかけてくることが有る。
通常、ディズニー氏はその言葉を無視するものの、ごくまれに電話を受けた相手に待つかどうか尋ねることもあるらしい。

その際、SCP-2805が会話を再開する前に電話を受けた相手が「凍った昆虫がガラスを叩く」と述べるような声が聞こえ、「想像力に乏しい魂」による遅れに対して謝罪するそうである。


The flower that blooms in adversity is the rarest and most beautiful of all.

自らの傘下であったディズニー社から引き離されてしまった事により、夢の現実が不可能になってしまったかと思われたSCP-2805。
しかし、氷の中のディズニー氏はあきらめていなかった。

自らが収容された組織が世界有数どころか、それこそ人知を超えたテクノロジーを所有している超法規的な組織であることに気づいたディズニーは、なんと方法は不明であるが自力で財団とのホットラインを構築し、自らの夢の実現を財団に託す内容の電話をかけてくるようになったのである。

以下の文章は、財団所属のエージェント・スミスがディズニー氏と交わした会話の抜粋だ。

SCP-2805「私はそれを、フロリダ・プロジェクトと呼んでいる。未来的社会のための実験的プロトタイプ。現代の慌ただしい世界とは切り離された場所だよ。未来技術を巧みに展開し、そして世界へと発信してゆく場所だ。惜しむらくも私は、このヴィジョンを共有できない人々に後を任せてしまった」
エージェント・スミス「誰のことです?」
SCP-2805「マーティだ。初めは新聞の仕事のために雇っていた。その後に私は、その、病気に罹ってね。私は参加できず、彼がフロリダ・プロジェクトの担当になった。私が命じた結果だ。だが、彼らには出来なかった。部下たちは皆創造的で、輝かしい才能を持ってもいたが、駄目だったのだ」

…彼が言及していたマーティとは、ディズニー氏亡き後のウォルト・ディズニー・カンパニーの広報を担い、世界中のディズニーランドの基本設計にも携わっていたマーティ・スクラー氏の事であると特定されている。
なお、スクラー氏は2017年7月27日日に他界した。

SCP-2805「ヴィジョンだ。誰一人ヴィジョンを持っていなかった。私はそれを映画の中で明白に表現したつもりだったが、伝わっていなかった。私は未来的社会を求めていたというのに、彼らが私へ提示したのは万国博覧会だ。マーティ・スクラー。彼は素晴らしい若者だったが、それだけは間違えたのだ」
エージェント・スミス「それは、あー、残念でしたね。私に何か出来ることはあるでしょうか?」
SCP-2805「マーティは失敗したが、彼が唯一の頼みの綱というわけではない。他の誰かでも良い。例えば君だ」
エージェント・スミス「私ですか?」
SCP-2805「私にはヴィジョンがあった。現代社会の混雑と不快な人混みの騒々しさを救う場所だ。孫が健やかに育つことができる場所が欲しいのだ。この気持ちが分かるかね?」
エージェント・スミス「ええ…しかし私は、あー、あなたが正しい人材を選んだとは思えませんが」
SCP-2805「いいや、そんなことはない!」
エージェント・スミス「どういうことです?」
SCP-2805「君の所属する組織だよ。正直に言えば、私は君たちのしている仕事を完全には理解出来ていない。だが君たちは大きな影響力を持っているし、技術力においても圧倒的に優れている。君たちなら実現できる」
エージェント・スミス「ですがそれは―」
SCP-2805「君の助けが欲しい。想像力に乏しい魂や寄生者によって作られた、私のメッセージを伝えるシステムを持っている。今それを使っている。我々でより良い明日を造ろう。君はそれを夢見たことがないか?」


関連するSCiP

元々は、ネットでたまたま見かけた謎のオブジェ(後のSCP-173)の写真にいかにもそれっぽいバックストーリーを付けるという企画から始まったThe SCP Foundation。
そのほとんどは架空の事象をテーマとしているが、中には実際に起きた出来事や実在の人物などをそっくりそのままネタにしてしまったSCiPも存在している。

SCP-2127(通称・ヒンターカイ・ファン!)
1922年3月31日にドイツのバイエルン州で発生した未解決の殺人事件を体感できる…という、ミステリーマニアにとっては垂涎の、それ以外の人間にとっては罰当たりにも甚だしいSCiP。
しかも、発動するためのキーは犠牲者を慰霊するために建てられた慰霊碑の棚の上に乗っている1枚の紙だったりする。

SCP-2430(通称・不死身のクローンヒットラー)
国家社会主義ドイツ労働者党の党首であったアドルフ・ヒトラーのクローン人間。
食料や水はおろか、酸素すら必要とせずに生きることが可能であるうえ、致命的な傷を負っても数日間のうちに治癒させてしまう異常な再生能力の持ち主なのであるが、不幸中の幸いというべきなのか、その精神は廃人状態となってしまっている。

SCP-2491(通称・毎日卵を300個産むショーン・コネリー)
イギリスのとある地方の地下に存在する超巨大な鉢の巣。
何故か、初代ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリー氏と瓜二つの個体が女王バチの役割を担っており、オスの蜂は原作者であるイアン・フレミング氏、労働者階級は3代目ボンドであるロジャー・ムーア氏と4代目ボンドであるティモシー・ダルトン氏、斥候役は5代目ボンドのピアース・ブロスナン氏にそっくりで…もうヤダ怖い!!!

SCP-1123-JP(通称・ セサミストリートへの行き方教えます
テレビ教育番組【セサミストリート】に登場するセサミストリート…そう、同番組を撮影しているスタジオではなく、正真正銘、架空の存在である筈の【セサミストリート】へ行けるという宣伝文句で広まってしまった謎のシークエンス。
…実際にやってみると、セサミストリートの所在地であると番組内で設定されているニューヨーク州はマンハッタン島へ飛ばされてしまう。

SCP-1488-JP(通称・ミドナプールの"狼"少女)
発見された1920年当時に大論争を巻き起こし、現在でもさまざまな分野に痕跡を残している【アマラとカマラ事件】の裏に実は財団の影が…というストーリー。
…SCiPになっても論争の種になる運命からは逃れられなかった模様。


メタ視点からの余談

このSCiPの英語名は【Disney on Ice】、言わずと知れたウォルト・ディズニー・カンパニーが主催するアイスショーと一字一句同じ名前である。
…わざとこの名前を付けただろ?

このような感じに、夢と希望の創造者で散々遊びまくった天罰が下った…という訳ではないのだが、このSCiPを生み出したRoget氏が操るアバターであるラルフ・ロジェ博士がSCP-2805とよく似た性質のSCiPに遭遇してしまうという珍事件が発生している。

ロジェ博士は五体満足で生きているにもかかわらず、博士の生首が超低温に保たれる流体の充填されたガラス容器内に収められた状態で出現する…という奇怪な事件であり、しかも、生首が「サイト77の管理官を殺害すればお前がトップに立てるぞよ」というシェイクスピアの戯曲【マクベス】に登場する三人の魔女ばりに物騒な助言を電話越しに投げかけてくるおかげで、博士の電話を盗聴する許可が下りてしまった…博士可哀想。

実は、ほかにもロジェ博士はいろんなSCiPに断続的に襲われてしまっているのだが、詳細はこちらを参照していただきたい。

追記・修正はディズニー映画を見た後でお願いします。

SCP-1981 − Disney on Ice
by Roget
http://www.scp-wiki.net/scp-2805
http://ja.scp-wiki.net/scp-2805(翻訳)
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