SCP-1905-JP

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SCP-1905-JP - (2017/05/09 (火) 12:40:49) のソース

&font(#6495ED){登録日}:2017/05/09 Tue 00:16:47
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 13 分で読めます

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#center(){&bold(){人類は叡智の歩みを止めてはならない。-O5-1}}


SCP-1905-JPとは、シェアード・ワールド[[The SCP Foundation]]に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(The SCP Foundation)]](SCiP)。
[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(The SCP Foundation)]]は堂々の&bold(){Keter}。
項目名は「神はサイコロを…」

JPのコードが示す通り、日本支部で生まれたSCPである。
……が、このオブジェクト、はっきり言って途中の段階では何を言っているのか素人ではさっぱり理解不能である。



*特別収容プロトコル
まずは収容の手順。

>SCP-1905-JPは現在収容出来ていません。存在の隠匿のため、財団情報部門は各国天文観測機関を常に監視し、SCP-1905-JP発見に繋がる研究を阻止してください。各国宇宙機関における宇宙探査計画も同様に監視し、SCP-1905-JPを通過する計画に対する監査を行います。SCP-1905-JPの範囲の観測のため、ストロンチウム光格子時計を搭載し、GPS衛星に偽装した準同期軌道衛星 SCPSat-1905-JP"ヴェルナー"から送信される時刻信号を常時記録します。この観測結果に基づき、各国の管轄機関を通じて全ての人工衛星の時刻を補正し続けてください。

文面からわかるように、宇宙に存在する何かであることがわかる。
財団世界にはままあることだが、基本的に財団の力は基底現実の地上にしか働かないので、海の中・空の上・宇宙の彼方のオブジェクトは総じて収容不能である。


*概要
コイツが何かというと、アメリカ合衆国はニュージャージー州、プリンストンの上空2万以上kmに存在する、球形の異常空間である。
地球の自転に同期して動いているため、相対的にその位置がずれたことはない。
で、何が問題なのかと言えば、ずばりコイツは拡大する。報告書執筆の時点で半径がすでに1万kmを突破しており、1日に数kmという速さでなおも拡大しつつある。
このまま膨張が進めば、2020年代には地表に到達してしまうとみられている。当初、膨張を阻止する試みはすべて失敗に終わっていたが、ある事象をヒントに立案された「プリンストン計画」が進行している。

さて、このSCP-1905-JPはどんな空間なのか?
実はこの球状空間、西経74度40分██秒と地球の自転面を通るラインを境界に、きっかり二つに分かれており、それぞれに違う現象、というか法則が働いている。

まずは、西半球のSCP-1905-JP-A。
なんとこれは、この中では相対性理論が働かない、純ユークリッド空間なのだ。この空間においては、重力は「物体同士が引きあう力」として働き、空間歪曲などを起こさない。当然時間の遅延も起きないため、ここを通過する人工衛星が影響を受けており、財団はこれの修正をプロトコルに組み込んでいる。

続けて、東半球のSCP-1905-JP-B。
こっちは量子力学における不確定性原理が働かず、当然それに依拠するもろもろの現象も発生しない。
ゆえに、それらを前提とした各種装置も機能しない。

要は、西半球はアインシュタイン以前の、東半球はシュレディンガー以前の、それぞれ常識とされていた物理法則がそのまんま適用されているのだ。

何を言っているのか理解できないのであれば、「&bold(){この球体空間の中では、現在常識となっている物理法則、およびその前提となる理論が機能せず、それ以前の古い解釈による理論と法則が働いている}」と覚えてもらえればよい。

で、興味深いことに、それぞれの空間表面では、相方の空間に関連する事象が働いている。
即ち、西半球では仮想粒子の大量発生、東半球では重力波の拡大である。何でこんなことになっているのかは定かではないが、研究者は「トンネル効果を利用してそれぞれの領域を拡大させようとしているのでは?」と読んでいる。
しかし、いずれにしても、現在では境界面でそれぞれの現象が打ち消されているため、拡大は起きていない。
その代わりに、球体自体の大きさはどんどん増えているわけだが。


*調査
このオブジェクトは、財団では役に立たないことに定評のあるGPSのテストをしている際に発見された。
1980年代のある時、合衆国とともにGPSのテストをしていた財団は、搭載されていたセシウム原子時計の中に、一般相対性理論では説明できないズレが周期的に起きていることを感知。
天体観測部門のカウフマン博士の協力のもと観測を行った結果、軌道上に謎の空間を発見。調査のために2名のエージェントが送り込まれた。

このチームは、SRAパネルによる現実改変の防御や、別のオブジェクトに由来する重力制御技術など、財団の持つ最新鋭のテクノロジーを用いた安全策を取っていた。
ところが、内部で観測やテストを行った結果、西半球は問題なく通過したものの、量子理論が無効になる東半球に踏み込んでしまったことで事態が暗転。
カント計測器どころかSRAパネルすら機能しなくなり、宇宙服の核融合炉も再起動できなくなった。

この時点で生還が不可能となったエージェントたちだが、遺言などを残したのち、安楽死の直前に片方のエージェントがこう言い残した。

>&bold(){多分ここでは、神はサイコロを振らないんですね。}

かくして調査隊は生還できなかったわけだが、回収されたデータなどを分析した結果、この空間の大まかな異常性が判明。
Keterクラスオブジェクトとして分類され、SCP-1905-JPのナンバーが割り当てられた。


常に拡大し続けるという性質上、いつかは必ず地球を飲み込む。これについて、O5の一人がこんなお言葉を述べられている。

>SCP-1905-JPが地球を飲み込んだとしても、日常生活レベルでの異常性を感じることは難しいだろう。SCP-1905-JP-B領域内での半導体技術の飛躍的な発展が見られるようになったところで、その程度の異常性を収容するのは容易い。
>しかし常に人類を先導し、現代科学の遥か先を行く異常存在たちと対峙してきた我々財団にとっては違う。我々の機密情報が人類が持ちうる究極の機密であるのは量子暗号技術に保証されており、量子コンピュータ技術によって解読した暗号を元に秘匿された異常物品を見つけることが出来る。量子力学における[編集済]の原理により、nPDN装置により霊体的な異常存在を現実に固着できる。SCP-███-JP由来の重力場制御技術は、幾つもの時空間異常の封じ込めに寄与している。多くの現実改変能力者たちを抑えこむことができるSRAの基礎技術は、[編集済]による重力場[編集済]及び、仮想粒子生成における[編集済]理論によって成り立っている。
>これらの技術による異常性の封じ込めが不可能となったとき、代替手段を持たぬ我々は多くのオブジェクトの収容違反を許すだろう。これによって予想され得る損害は、対象となる多くのオブジェクトの危険性も相まって、もはや強制的な無力化を辞さない手段を取ってしても我々の手に負えるものではないとの見積りがなされている。
>そしてこれは収容違反が更なる収容違反を呼ぶようなXK-クラス:世界終焉シナリオの発生を意味しており、SCP-1905-JPの無力化、あるいは拡大阻止のためのあらゆる手段を講じる必要がある。

SCP-1905-JPの内部では、現在の社会を支える物理的法則が通じない。
それらの影響を最も強く受けるのは、異常な存在に対処している財団である。だが、数数多のオブジェクトの収容を曲がりなりにも維持している多くの秘匿技術、それらの根幹である法則自体が無効となってしまったら?
待っているのは収容違反の嵐、そして[[K-クラスシナリオ>K-クラスシナリオ(The SCP Foundation)]]の到来である。

この現象は一種の[[現実改変>現実改変(The SCP Foundation)]]であるためSRAが有効だが、範囲が広すぎるためにカバーしきれず、加えてこれでも遅延にしかならなかったためこの方法は否決されている。

もはやどうしようもないかと思われていたが、ここに来て意外な事実が判明した。
領域の拡大が一気に遅延する事態が発生したのだ。
財団が調査を行ったところ、この遅延現象は量子物理学における新たな理論が、一般の学会に発表されるたびに起きていたことが発覚。
ここに来て、SCP-1905-JPの特性はこのようにまとめられた。

・アメリカ上空に存在する球状の空間
・西半球では相対性理論が通じない
・東半球では不確定性理論が通じない
・この領域はどんどん拡大しており、いずれ地球を飲み込む
・量子重力理論についての革新的な研究が発表される毎に膨張速度が低下していく
・量子重力理論が完全に完成し、それが公開されたときに無力化される

この結果を受けたO5評議会のゴーサインを受け、財団はSCP-1905-JPに対処するための計画「&bold(){プリンストン計画}」を発動。
一部の上席研究員が携わるこの計画は、大雑把にいえば財団の総力を挙げて量子重力理論の完成を目指す研究プロジェクトであり、この中には外部機関も含まれる。
当然機密事項であるため、外部機関の論文や資料を監査する専門のチームが配備されている。


物理法則。
あまりにも当たり前に存在し、しかしだからこそ、わずかにでも狂えばすべてが破滅するもの。
それを無効化し、古き時代の誤った認識によって存在するこの空間は、一体何のために生まれたのだろうか。


#openclose(show=メッセージが届いています。){
>まずは君が人類最高の頭脳を持つ一人として、新たな上席研究員に選ばれたことを祝福しよう。君には財団基礎物理学部門が持つすべての情報を知る権利が与えられる。これは同時に、SCP-1905-JPという脅威に対して本当の意味で向き合うということに他ならない。君は真実を知る必要があるのだ。
>
>気づいていると思うが、プリンストン計画は単純な研究促進計画ではない。あらゆる研究に監査を入れるのは、その研究結果を取捨選択し、財団の下で情報を管理する必要があるからだ。なぜそのような事をしなければならないのか、それを理解するにはこの報告書を読む必要がある。これから計画を運営する君には、既にその権限が与えられている。




実は、プリンストン計画の目的は&bold(){半分嘘である。}
量子重力理論の完成……財団は、すでにそれを成し遂げていた。全くの偶然、とあるオブジェクトの実験中にたまたま判明した事実をとっかかりに。

計画の目的は、ずばり情報の徹底的な統制。
SCP-1905-JPに対処するためには情報の公開が必要であり、そのための答えが手元にあるにもかかわらず、なぜそんなことをしなければならないのか?

実は、この「答え」こそがその理由である。
「答え」の正体は、財団における最高機密の一つ……ずばりThaumielクラスオブジェクトである。


&bold(){SCP-9999-JP-EX。}((ナンバーは元記事では伏せられているが、ここでは便宜上9999を振る。))
オブジェクトクラスは&bold(){Explained/Thaumiel}。
異常性のからくりが判明した、異常ではなくなったExplainedクラスでありながら、財団の切り札たるThaumielクラスが同時に与えられている。

これが何かというと、量子重力理論と一般相対性理論をまとめて記述することが出来る物理法則である。
量子重力理論は、簡潔に言えば「ミクロな世界では量子は波のように空間に広がっており、観測することで1点に収束する。そのため量子よ位置とエネルギーは絶対的な予測はできず、確率的にしか予測できない」という理論。
相対性理論は「時間とは絶対的なものではなく、物体の速度・空間の重力により変化する相対的なものである」という理論。

これらが両方正しい場合、両方を同時に説明できる理論が存在するとされる。それが統一理論だ。
現実の世界ではまだ証明されていないが、財団世界にはあった。それがSCP-9999-JP-EXなのである。

この理論によって導き出された「南方-ハルトマン時空方程式」によって、それまで未知であった時空間における重力と量子の振る舞いが判明したのだ。
その成果によって、SRAやスクラントン現実錨を初めとする、現在の財団が扱うスーパーテクノロジーの基礎が完成し、それまでよりも遥かに多くのオブジェクトに対応できるようになった。
つまりこの理論は、現在の財団の能力の根幹をなしているのだ。

さらに注目すべき事実として、このSCP-9999-JP-EXに由来する理論と技術に基づいた装置は、リバース・エンジニアリングによる理論の再証明が不可能であるという驚くべき特徴がある。
これにより、SCP-9999-JP-EXは財団のみが保有する理論にして技術の元であり、特別収容プロトコルの多くが長期維持できる大きな要因となっているのである。

ここからもわかるように、これは本来、自然界に存在する、財団の研究者がたまたま発見した物理的法則、この世を象る要素の一つに過ぎない。ただ誰も知らなかった、証明できなかっただけの、自然の一部でしかない。異常ではないのだ。
これを、1960年代のあるオブジェクトの実験中にたまたま発見した南方研究員は、基礎物理学部門の上席研究員であったハルトマン研究員の協力を得て理論を確立。
だが、発表の直前、その有用性に気付いたO5からストップがかけられ、結果この理論は秘匿。

そして、自然界に存在していた法則でありながら、財団によって有効に利用できると判断されたこの理論は、SCP-9999-JP-EXのナンバーを割り当てられたのである。
&bold(){最初からExplainedであったが、その有用性ゆえにThaumielと分類された、恐らく史上唯一の事例だといえよう。}



SCP-1905-JP……既存の物理法則を無効化するあの空間がなぜ生まれたのかはわからない。
だが、その特性は一つの事実を示している。財団が独占するSCP-9999-JP-EX、あの理論を公開せよ、という脅迫だ。
確かにそうすれば、SCP-1905-JPの拡大は止まる。しかしそれは、財団の技術の根幹を暴露することに等しい。
そのあとに待っているのは、[[要注意団体>要注意団体(The SCP Foundation)]]による攻勢の嵐とそれによる収容違反の連鎖。最後にはK-クラスシナリオだ、これではどう考えても詰んでいる。

そのため、財団はSCP-9999-JP-EXに関する理論や技術を少しずつ公開してSCP-1905-JPの拡大を抑制しつつ、別のアプローチによる収容維持の手段を急ピッチで模索している。
それを示すO5のお言葉がこちら。

>これまで偶発的に得られたSCP-9999-JP-EXというジョーカーを用いて世界を守ってきたが、その安寧に現を抜かしていた我々は進歩を怠った故このような岐路に立たされたといえる。
>我々は常に人類が未知に立ち向かう為の先導者として、それを解き明かす光明を生み出さなければならないのだ。

ジョーカーは多く、切り札の比喩として用いられる。
しかしそれは、ババ抜きにおいては引いてはならないババとして扱われる。

切り札に頼りすぎた財団を戒めるかのように出現し、地上に迫りつつあるSCP-1905-JP。それが到達したその時、SCP-9999-JP-EXは無力化される。

代替手段の構築が間に合えばそれでいい。
だが、もしも間に合わなかったら?



>&bold(){人類は叡智の歩みを止めてはならない。-O5-1}



財団はきっと、手段を択ばないだろう。

}


何か間違いや気づきがありましたら、追記・修正をお願いします。
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#right(){
SCP-1905-JP - 神はサイコロを…
by physicslikephysicslike
http://ja.scp-wiki.net/scp-1905-jp

この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。
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- なんとなく開示マニアを思い出したけど、流石にこんなイヤらしいやり口は取らんか  -- 名無しさん  (2017-05-09 02:03:39)
- 切り札はいつだって悪手なんだよ  -- 名無しさん  (2017-05-09 10:57:06)
- 例のプラモデルで財団の事が世間に知られていたり例の星が地球に来る前にはるか彼方に逃げていたり 、この先の近い未来公表されるのは確かだな   -- 名無しさん  (2017-05-09 12:40:49)
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