Barefoot Girl.(シンデレラガールズ)

登録日:2016/01/15 Fri 00:38:27
更新日:2018/09/11 Tue 21:28:26
所要時間:約 27 分で読めます




Barefoot Girl.」は、アニメ版『アイドルマスターシンデレラガールズ』の第24話のサブタイトルである。
シンデレラガールズの看板ユニット「ニュージェネレーション(ズ)」の一人であり、その中でももっとも主人公に近いポジションと言える島村卯月の集大成ともいえる回。
これまでの話の中で積み上げられてきた卯月の描写の締めくくりにあたる。
脚本担当は綾奈ゆにこ。

23話にて自分の中のキラキラしたものが見えなくなり、笑顔を失ってしまった卯月と、それを取り巻く周囲の行動を描く。
2ndシーズンのテーマである「自分らしさ」、「新たな自分に会いに行くこと」を、島村卯月というキャラクターを通して締める回である。


物語を通してのテーマの、最終回と並んでもう一つの終着点の回であるため、見所となるシーンは数多い。
ニュージェネレーションズは勿論、プロデューサーや美城常務、シンデレラプロジェクトのメンバー、そして「とある一人のアイドル」それぞれの行動に注目してもらいたい。
かなり鬱っぽかった前回と比べ、優しさに溢れた演出が特徴。

この話が放送される前週には特別編が放送されたが、恐らくこの話にリソースを割くためだった思われる。
放送前の生放送にて、製作スタッフは渾身の回だと語った。

エンディングテーマは……後述。


あらすじ

自分を見失い、笑顔を失くした卯月。だが未央と凛は彼女を信じ待つことに。
一方、二人の思いに応えなんとか346プロに顔を出した卯月だが、未だ自分の中の迷いに答えを出せずにいた。
そんな卯月を見守ると決めた未央と凛。卯月は迷いのまま事務所でレッスンすることに。
そこで他のメンバーたちに会った卯月は、仲間として、友達として、そしてアイドルとしての様々な思いに触れていく。
みんなにあって、今自分に無いものとは。そしてクリスマスライブ当日。迎えに来たPと共に会場に向かう卯月。
その途中「とある場所」に二人は立ち寄ることに……。

※公式サイトより※


登場人物

『ニュージェネレーションズ』
島村卯月
ガラスの靴を失った普通の女の子。
前回で自分の中でキラキラしたものを見失ったことを涙ながらに吐露した。
凛に叱られ、未央に励まされ少し持ち直したが、未だに自信を持てないでいる裸足の灰被り。

渋谷凛
普段はクールな女子高生……だが、卯月がライブで共演できないかも知れない事態になっていることで彼女もかなり動揺している。
大声で叫んだり、号泣したりと感情を爆発させる姿はいつもの彼女の姿からは考えられないだろう。

本田未央
ニュージェネレーションズリーダー。
凛とは打って変わって卯月を信じて待つスタンス。
皆へのクリスマスプレゼントという名目で、星型のメッセージカードを周囲に配り願い事を書いてもらうことを提案する。
様々な苦難を超えた彼女の器はもはや高校一年生のそれではなく、正しく「リーダー」。

『凸レーション』
諸星きらり
赤城みりあ
城ヶ崎莉嘉

『アスタリスク』
前川みく
多田李衣菜

『キャンディアイランド』
双葉杏
三村かな子
緒方智絵里

『ローゼンブルクエンゲル』
神崎蘭子

『ラブライカ』
新田美波
アナスタシア

シンデレラプロジェクトメンバー。
今までの話の中で新しい自分の姿を見つけて輝かしい活躍を見せてくれたが、それが何だったのかを卯月に語る。
尚、セカンドシーズン以降にいくつかのユニットに新メンバーが加入したが今回は背景程度の出演となる。

小日向美穂
卯月と共に新ユニットを立ち上げたが、卯月の崩壊で宙ぶらりんになってしまった先輩アイドル。
フォローとして今はかな子と組んでいる。
立場上もっとも卯月爆弾の影響を受けてしまったCP外のアイドルだが……。

高垣楓
城ヶ崎美嘉
346でもトップアイドルの歌姫と、それに匹敵する活躍を見せるカリスマJK。どちらもCPに関わりが深い存在。

北条加蓮
神谷奈緒
凛とのユニット『トライアドプリムス』のメンバー。
ニュージェネは二人にとっても大切な目標だと語る。

その他、多数のアイドルがCPメンバーから星を受け取ってメッセージを書いている。
こんな状況でもぶれない幸子と小梅は流石。

プロデューサー
目つきの悪い不器用な男。
卯月を切れと常務に言われて真っ向から反発する、卯月に道を示すなど燻し銀の活躍。
彼は車輪から馬車に、そしてようやくガラスの靴を贈る魔法使いになれたのだろうか。

美城常務
プロデューサーとは別の形でアイドルを輝かせる方針を打ち立てたもう一人の魔法使い。
普段は冷徹とも言えるほど感情を出さないが、卯月に直接声をかけたりプロデューサーに卯月を切り捨てろと言ったりと卯月関連の話題についてはムキになっているような描写をされる。
未だに卯月の光が見えていない。

今西部長
常務を古くから知る部長。
珍しく感情的になっている常務を叱り付ける様な口調でニュージェネのライブを見に行くよう言う。


ストーリー

以下、ネタバレ注意。



















346のエントランスホールにて、12時を指した時計を見上げる卯月。
その横を美城常務が通り過ぎ、卯月は慌てて頭を下げる。

君の輝きはどこにある?君は灰被りのままだ。輝けない者は城の階段を上がれはしない

常務は卯月にそう言い残して去った。



CPの部署がある地下室の扉前、卯月が一人で椅子に腰掛けていたところに凛と未央が現れる。
しまむー!来てくれたんだ!
未央は涙を堪えた後出社してきた卯月に向かってけ寄って抱きしめた。凛は卯月と目が合うと、複雑そうな表情をする。声を聞いたのか、プロデューサーが中から扉を開いた。


地下室のテーブルを囲んで座る四人。プロデューサーは卯月に体調はどうかと尋ねる。
あ、はい!前よりは……
「調子の方は……」
えっと……前よりは

「明日はクリスマスライブです。出演できますか」
プロデューサーの問いかけに言いよどむ卯月。

嫌だ!

そんな卯月を見て、凛が立ち上がる。
三人で……三人で出たい……」「……しぶりん
未央に呼びかけられ、座る凛。未央は卯月に向き直ると、来てくれて嬉しい、ありがとうと言い、卯月の手を握った。

二人が去った後、プロデューサーはレッスンしていくかと卯月に聞いた。

エレベータを待つ凛と未央。凛は未央に謝罪する。
私……かっこ悪い。でも、今のままじゃって思うと辛くて……
未央は俯いた凛の頬を突く。
三人でライブ出るんでしょ?しまむー信じて待ってよう!私達が下向いたらダメだよ!
凛はそんな未央に感嘆する。
……未央、凄いね
にひひ、もう下向かないって決めたから!
……ありがとう


ジャージを着た卯月は、意を決してレッスンルームの扉を開く。
そこには、凸レーションとアスタリスクの5人がいた。
あ、卯月ちゃん!
莉嘉とみりあが真っ先に気がつき、もう大丈夫か、心配した、と口々に言う。
あ……えっと
卯月チャン
困惑する卯月に向かって、みくが強い口調で歩み寄る。
どんな理由があっても、仕事をほっぽり出すのはプロ失格だと思う
……はい。本当に、ごめんなさい
卯月は全員に向かって頭を下げる。李衣菜に宥められたみくはため息をつくと、卯月の頭に自分の猫耳を乗せた。
一転して、みくは明るい口調で励ますように言う。
さあ、うづにゃん!にっこり笑顔で皆に会いに行こう!

笑顔……

卯月の表情が暗くなる。
卯月チャン……
それにつられて不安げな顔になったみくの肩を、きらりは笑顔で掴む。
卯月ちゃん、皆来るまで、一緒にレッスンしよぉ?

卯月はきらりと莉嘉に挟まれる形でレッスンをする。

何で私も基礎レッスンなのー?
ダンスに一区切りつくと、莉嘉はしゃがみ込んでそんな愚痴を言う。
みくは莉嘉に指を指して基礎は大事だと指摘する。
前は基礎ばっかで嫌だって言ってた、と李衣菜に茶化されてみくは昔の話だと苦し紛れに反論した。
そのやり取りを聞いて皆は346に来た当初のことを思い出す。
みくが卯月達と勝負したこと。その件で一悶着あったこと。

そっか……もう半年前なんだね。こんなことになってるなんて思いもしなかったな
李衣菜は虚空を見上げてそんなことをぼやいた。

みりあは、半年前に346に一人で来たことを語る。怖かったけど、着いた時は本物の城のようで凄く嬉しかった、と。
莉嘉は思っていたのと違っていたと言う。アイドルは楽しいことばかりで、姉の美嘉とあまり会えず、メンバーが揃うまでレッスンばかりの日だったからだと。卯月達三人を待っていたのだと。
みくは、全員がライバルだと思っていたと吐露する。埋もれないようにと焦っていて空回りしていたと回想する。
李衣菜はぶつかりながらも、みくと組むことで自分が目指すロックなアイドルになれることに気づけたと語った。
まあたまには主張を譲って欲しい時もあるけど……」「お互い様にゃ」「何をー!

卯月ちゃんもオーディションを受けて入ったんだよねぇ?
いつも通り揉め始めるアスタリスクを横目に、きらりは卯月にそう聞いた。
は、はい……補欠合格で
合格は合格だにぃ!……きらりね、受かると思わなかったから
きらりはどこか遠くを見つめる。
きらりみたいな子でも、可愛いアイドルになれるんだ、なってもいいんだって、じーんってなったのぉ

場所と時間が変わって、ボイストレーニング場。休憩を取っていた卯月とキャンディアイランドの三人。
私も、こんな私でも、アイドルになれるんだって、嬉しかったなぁ……
かな子は笑顔でアイドルになれた喜びを語る。
はぁー。あの頃はこんなに働くなんて、思ってもなかったよ
そうぼやく杏を、かな子と智絵里は微笑んで見つめる。
でも、ちょっと変われたところとそのままのところと……どっちも大事にしたいなぁ
かな子は卯月にお菓子の箱を差し出した。

場面はまた変わり噴水広場。卯月はラブライカと蘭子に出会った。
蘭子とアナスタシアは、冒険して見えてくるもの、新しい世界はドキドキすると言った。仲間が出来て、一人じゃないと思えるとアナスタシアは続ける。

場面が戻り再びキャンディアイランド。
失敗ばっかりで、焦ってた時もあったけど……それでも、やってみて良かったって今は思う
智絵里は四葉のクローバーの栞を卯月に手渡す。
ま、自分のペースが一番だよ
いつも通りの調子ながら、杏の表情はどこか生き生きとしていた。

勿論不安だってあるわ。冒険の先に何があるのかは、誰にも分からないから
噴水広場にて、CPのリーダーの美波は前を見つめる。

でも、不安は分かち合えるって、一緒に立ち向かえるって分かったから……だから、前に進もうって思えるの



卯月は、かつてCPのメンバーが出入りし、今は空き部屋となった以前の事務室に来ていた。何も無くなった部屋を卯月は悲しげな顔で見つめる。

しまむー!ここにいたんだ!
そこに、未央と凛が卯月を探してやってきた。
三人はがらんとしてしまったかつての城を覗き込む。
……何にもなくなっちゃったね
あ……はい

一時の沈黙。

あ、そうだ。これ……
それを破った未央が、卯月に向かって星型のメッセージカードを差し出す。
皆で夢とかお願い事とか書いてるんだ
夢?
未央サンタとしぶサンタが願いを叶えてしんぜよーう。ね?
うん
凛は頷く。
卯月は礼を言いつつ受け取るも、その表情はどこか物悲しげだった。


やはり待つだけ無駄だったな。君が切らないのならば、こちらが手を下しても構わないのだが?
常務の部屋で、常務は窓の景色を見つめながら背後のプロデューサーにそう言い放つ。彼女の事務机の上には卯月の書類が置かれていた。
「待ってください!彼女は今帰ってきました!」
プロデューサーの言葉を遮りつつ、常務は続ける。
彼女の時間はもうない……それに、これはある意味君の部署の存続に繋がる助言だ。分からないか?私は君のここまでの成果を損なうのは惜しいと言っている
常務はプロデューサーに横目だけを向ける。
君がその、"Power of Smile"などという幻想を捨て、島村卯月を切り捨てればいい。早く目を覚ますことだ


「……方針は変えません」
何?

ここで暗めだったBGMが転調する。

"光"はそこにあります。今の貴女には、見えていないだけで


トライアドプリムスとして秋のライブに出ると凛が覚悟を決め、卯月が後押ししたいつかの歩道橋。
卯月は階段の半ば、一人メッセージカードを見つめる。見上げた夜空には厚い雲が掛かり、星はその姿を見せていない。


346社内。凛は加蓮と奈緒からメッセージカードを受け取る。凛は二人に迷惑を掛け続けていることを謝罪した。二人はユニットのメンバーだから放っておけないと笑った。

そこに寒さに打ちひしがれた未央が駆け寄ってくる。
集まってきた?
うん!皆頑張って声かけてくれてるから
未央が持っていた紙袋の中には、たくさんのメッセージカードが入っていた。

とときら学園のメンバー。CPの協力者であるバラエティ班と瑞樹、藍子と茜、菜々とみく、夏樹と涼と李衣菜。KBYDとキャンディアイランド、星子と小梅と、蘭子とまゆ。
きらりと美波とちひろとプロデューサーはカードを貼り付けるためのポスターを作る。アナスタシアにクローネのメンバーであるありす、文香、唯は星を渡す。

そして、かな子と……小日向美穂。

また、卯月ちゃんと一緒に全力で仕事がしたいです

美穂が書いたメッセージカードには、そんな文字が躍っていた。


おーい!
トライアドと未央のもとに、楓と美嘉が近寄ってきた。
星、受け取って欲しいな
……そんなことを言う楓からカードを受け取りながら礼を言う未央と凛。
どう?様子は
……できることをやるしかない、かな
美嘉に聞かれ、そう答える未央。
ふふっ、頑張りな★
美嘉はウィンクをすると、自分のメッセージカードを差し出した。


待ってやれないのかね?
今西部長は机に置かれたニュージェネのライブチケットと白紙のメッセージカードを見ながら常務に言う。
ええ。充分に待ちました
……それだけかな?
……何です?
心配なだけだよ。彼の理想が成果を挙げ始めている。君にとっては面白くないことだろう

常務は反論しない。

だが、感情に囚われて"光"を見失ってはいけない。……必ず見に行きなさい。見てからでも、遅くは無いはずだよ




卯月は自分の部屋で、メッセージカードを見つめる。そこにはまだ何も書かれていない。
ふと、近くのフォトボードが目に入る。
夏のフェスでのCP集合写真、CDデビュー祝いで食べたケーキ、宣材写真撮影の時に撮った集合写真。アネモネの花束。一年前の冬の先輩アイドルが映った写真。……そして、養成所時代の集合写真。

卯月は机の引き出しを開ける。そこには、春に貰ったオーディションの合格通知証が仕舞われていた。通知証を見ながら、卯月は指で口の端を吊り上げて笑顔を作った。



翌日、ライブ当日。

帰宅時間となった学校の下駄箱で、卯月は自分の靴を見下ろす。靴を履いて校門から出ると、何やら人ごみができていて騒がしい。

「おかしいでしょ。身分証出して」
「いえ、私は仕事で……」
プ、プロデューサーさん!?
そこにはある意味恒例となった職質されるプロデューサーの姿があった。

「すみません……」
卯月によって助け出されたプロデューサーは彼女に謝罪する。
い、いえ……あ、あの、未央ちゃん達は?
「先に会場入りしています」
……

車を走らせるプロデューサーと、後部座席に座る卯月。未だに何も書かれていないメッセージカードの上でペンを揺らすが、やはり何も書けない。

あ……
雪が降る街中、卯月はふと前方の建物に気がつく。
「?」
あ、いえ……前もここで、ライブのスタッフやったことがあって……楓さん達、とっても素敵でした
彼女にとって、先輩アイドルの輝かしい活躍を見た思い出の場所。
「……寄っていきましょうか」
え?……いいんですか?
プロデューサーの提案に驚く卯月。
「時間はまだ、ありますので」


一年前の冬、346プロのアイドルがライブを行った会場に足を踏み入れた二人。


不思議です。実はそのライブに、凛ちゃんと未央ちゃんも来てたって……
プロデューサーが先行し階段を上る二人。
「私も、手伝いでいました」
プロデューサーは立ち止まって卯月を見下ろす。
え?

「どこかで、すれ違っていたのかも知れません」

赤い敷物は、階段から下の階の床を彩っていた。

プロデューサーが客席の扉を開く。
客席には誰もおらず、しかしステージだけはほんのりとライトアップされていた。卯月は思わずその光景に息を呑む。
ステージ……キラキラして、まぶしいです



プロデューサーはステージへと続く暗い階段を照らすためのペンライトのスイッチを入れる。

私……ずっとアイドルに……キラキラした何かになれるといいなって思ってて……

二人は暗い階段を下へと降りて行く。

だから、プロデューサーさんが見つけてくれた時は、嬉しかったです

静かな階段では二人の足音が良く響く。

なんだか魔法に掛かったみたいで……ずーっとこのままだったらいいなって……
階段を降り切り、卯月はそこで立ち止まってしまう。
プロデューサーは振り向いて卯月を見つめる。
でも、魔法は解けてしまって……舞踏会でもし成果が出なかったら解散だから……だから、私も頑張ってたつもりだったんですけど……
卯月は大きく息を吸って、軽く吐き出す。

でも、いつの間にか……"嘘"になっていて

「……"嘘"?」


未央ちゃんのソロ活動も、凛ちゃんのトライアドプリムスも、私と美穂ちゃんとの活動も……一人ひとりが力をつけて、舞踏会を成功させるために必要なことだって、私分かってる"つもり"でした
一緒に頑張ってる"つもり"でした

でも……皆がキラキラしてるのに、私だけできてなくて……!できないんじゃないかって、怖くて……!

卯月は公園での出来事を思い出す。

でも、凛ちゃん怒ってくれるんです。『何にもなくない』って。未央ちゃんも『友達になろう』って笑ってくれて……皆も待ってくれてて……

ベンチで座る卯月の手のひらには、何も無い。

『傍に行きたい』……
養成所のレッスンルーム。鏡に映る卯月の手のひらには、やはり何も無い。
なのに……なのに私!今も怖いんです!もう一度、頑張って探してそれで……何も無かったらどうしようって……

頑張っても、もう駄目なんじゃないかって……自分のこと、怖いんです

プロデューサーは卯月の告白を黙って聞いていた。彼は何かを決したように、手のペンライトを握り締める。

「春に出会った時、私は貴女に選考理由を質問されました。私は、"笑顔"だと答えました」

「私は、今、もう一度同じことを質問されても、やはりそう答えます。"貴女だけの、笑顔"だと」
卯月は顔を上げない。
今、貴女が信じられなくても私は信じています。貴女の笑顔が無ければ、ニュージェネレーションズは、"私達"はここまで、来られなかったからです

卯月の笑顔は、これまで幾度となく周囲を救ってきた。
過去のトラウマに囚われて動けなくなったプロデューサー、責任感から逃げてしまった未央、不信感から去りかけた凛。卯月が養成所に引っ込んだことで不安そうな顔になったCPのメンバー達も、気がつかないうちに卯月の笑顔に救われていたのだろう。

春に凛がアイドルの道を選んだのも、卯月の笑顔に打ち抜かれたからだった。
そして何より、プロデューサーが卯月を選んだ理由も、彼女自身の笑顔だった。

……そうだったら、嬉しいです。でも、""は……どうやって笑っていたんでしょう……?

卯月は未だ、顔を上げない。

でも、私……凛ちゃんと未央ちゃんと進みたいから……

彼女は両手の指で自分の口元を吊り上げ、力なく笑う。
プロデューサーは決意を込めた表情で、卯月に手を差し出した。

「島村さん、選んでください。このまま、ここに留まるのか。それとも、可能性を信じて前に進むのか」

「どちらを選ぶかは、島村さんが決めてください」


クリスマスライブ会場。すでに大勢の観客が入り、会場は大いに賑わっていた。

控え室、暗い表情の凛の手を未央が握る。
その時、息を切らして階段を駆け上がってきた一人の女の子が現れた。

卯月……!

卯月は息を切らしながらも、二人に向かって言葉を紡ぎ始める。


あの……私、まだ……まだ怖くて、私だけの笑顔になれるか分からなくて……でも、見て欲しい……
一歩だけ、彼女は踏み出す。
私、確かめたいんです!もし、何かあるかも知れないなら……あるか分からないけど、でも……

信じたいから!私も、キラキラできるって信じたいから!!このままは、嫌だから……
溢れる涙を隠そうともせず、卯月は大きな声で自分の思いを叫ぶ。


うん……!待ってた……!
涙声で卯月を抱きしめる未央。未央に誘われ、凛も卯月を抱きしめる。
卯月……!

階段下でそれを見て微笑むプロデューサーは、先ほどの出来事を思い出していた。

島村さん。選んだその先で、あなたは一人ではありません
プロデューサーが差し出した手を掴む卯月。プロデューサーのペンライトを持った手が上へと上がる。
顔を上げた卯月の視線の先には、その指で不器用ながらも笑顔を作る魔法使いの姿があった。

私達が……皆がいます
未央と凛が集めた星は、しっかりと控え室の一角で輝いていた。

たくさんの観客とCPの面々と、美穂。今西部長と常務が見守る中、開場のアナウンスが入る。

なんか不思議な感じ
やっぱり、変でしょうか?
ううん、しまむーらしいよ!
舞台袖で腰掛けるニュージェネレーションズ。
凛と未央が衣装を着ているのに対して、卯月だけは学校の制服のままだった。
卯月はポケットから星のメッセージカードを取り出す。
結局、書けなくて……
凛はその星を手にとって、卯月のポケットに戻す。
卯月が持ってて
未央はそれに同意するように微笑んだ。

プロデューサーに出るよう言われ、手を繋いで並ぶ三人。

大丈夫」「一人じゃないよ」「キラキラしに行こうよ!
はい……行って来ます!
卯月は一人、ステージに向かって走り出した。

歓声があがる中、卯月は客席に向かって挨拶する。
こんにちは!今日は来て下さってありがとうございます!あ、あの……えっと
言いよどむ卯月に困惑する観客。常務はそれを見てつまらなそうに鼻を鳴らす。
未央と凛はお互いの手を握り締め、プロデューサーも拳をきつく握り締める。
プロンプを出すかというスタッフの提案に首を振り、彼はステージの卯月をしっかりと見つめた。

ひそかに指で笑顔を作る卯月。ふと彼女は客席を見上げる。
その耳に、自分を応援する声が聞こえてきた。

客席の一角、ピンク色のサイリウムを振っているCPのメンバー、そして小日向美穂からだった。

卯月はポケットに手を置く。
意を決して、彼女はいつものあの台詞を叫ぶのだった。

島村卯月、頑張ります!!

パチンと無個性な色の照明が落ちる。

一瞬の暗闇が、すぐに桜色の照明で彩られる。
流れてきた音楽は、かつて島村卯月というキャラクターが始めて喋った時に発表された曲だった。



第24話エンディングテーマ『S(mile)ING!



凛と未央、そしてプロデューサーが見守る中、卯月は手でリズムを取って歌い出す。

"憧れてた場所を ただ遠くから見ていた"
"隣に並ぶ皆は まぶしくきらめくダイヤモンド"


『私らしさってなんだろう?』
歌が流れる中、いつか見たステージ。
CPと見たサマフェス、決して良い思い出ではなかったCD発売イベント、美嘉のバックダンサーを務めたライブ。そこで桜色の幻影が踊っているのを、卯月はただ客席から見ている。

『お姫様にあこがれる』
養成所、汗だくになった卯月は鏡の向こうの自分を見る。

『普通の女の子』

"さあクヨクヨに 今サヨナラ"

針のない時計。鏡の向こうの卯月は、自分に向かって光る何かを手渡しながら語りかける。
『信じよう』
それは、星型のメッセージカードだった。

『キラキラできるって』
星を胸に走り出す卯月の表情は、笑顔。

『笑っていよう!!』

桜の木の下、CPのメンバーとプロデューサーがこちらを見て微笑んでいた。

"愛をこめてずっと歌うよ!"
声高らかに、卯月はその曲の歌い上げた。

凛と未央は喜びで大粒の涙を流す。
プロデューサーは小さく、しかしはっきりとガッツポーズを決めた。

ありがとうございました!!
大歓声の中、卯月は汗と涙で顔をくしゃくしゃにしながらも、取り戻した笑顔で客席に向かって礼を言うのだった。



余談:こぼれ話もろもろ

  • これまで積み上げられてきた卯月の鬱フラグ、通称「卯月爆弾」が炸裂した22、23話に続く、卯月復活回。集大成だけあって様々な逸話が語られている。 
  • 卯月が凛と未央に自分を信じたいと語るシーンは声優の演技を受け一から作画しなおしたシーン。6話の未央、13話の美波、23話の卯月など執念といえるほど表情に気合が入った本作だがこのシーンの作画はその中でも作画班の拘りを強く感じるだろう。
  • またこのシーンでは一期のED『夕映えプレゼント』がインストアレンジで流れる。この夕映えインストは1話で卯月がアイドルへの憧れを語るシーン、7話でアイドルの仕事に対する意気込みを語るシーン、そしてここなど、卯月にとって重要な場面で流れる。ある意味もう一つの卯月のテーマ。
  • 歌う卯月が見た、桜の木の下でこちらを見るCPの皆とプロデューサーの姿。分かりやすいが、1話で流れた卯月とプロデューサーの一枚絵の対比であり、今回は卯月の位置に凛が立っている。
  • プロデューサーが最後にしたガッツポーズを見て、前作アニマスの千早復活シーンを思い出した諸兄も多いのではないだろうか?「やった!!」
  • 歌いきった卯月を見た常務の表情にも注目。プロデューサー的に言わせれば、そこにあった光が見えた、というところだろうか。
  • ライブに制服で出ることについて学校バレなどを考える視聴者も多いだろうが、宣材は制服であったし、以前に紗枝が制服でテレビに出ているため大した問題ではないと思われる。
  • 警察のお世話になるプロデューサー、という構図は一種の逆転フラグである。アイドルを突っぱねていた凛、会うことを拒否していた未央、もっと人々の関心を集める方法に思い悩んだ凸レーション、そして今回の件である。例外は早苗に手錠を掛けられた件だが、彼女は今は警察ではないのでこの法則から外れる……のか?
  • タイトルは「裸足の女の子」の意。裸足はこの作品のテーマの一つであり、あちこちでその意匠が見られる。一番印象に残るのは13話の凛だろうか。
  • 2ndシーズンのキービジュアルは質素な服のCPメンバーが手を繋いで一列に並んでいる、というものであるが、それぞれ穏やかな表情だったり、満面の笑みだったりする中卯月のみ呆けたような表情だった。この24話放送後卯月が笑顔になったものに差し替えられ、晴れてキービジュアルは完成となったのである。
  • 常務にまで星のメッセージカードが行き渡っている。参考までに、未央は常務に対して一切物怖じせず接することが出来ることが判明している。


笑顔の歌への道のり、『S(mile)ING!』

24話エンディングテーマ『S(mile)ING!』は、アニメが始まる以前から卯月の持ち歌として世に出ていた曲である。

この曲に触れる前に、少しシンデレラガールズと島村卯月の歴史を記述しておく。
そもそもシンデレラガールズのアイドルは声優が決まっていない状態で登場し、順次声優が決定し同時期にそのアイドルをイメージしたCDが発売される方式を取っていた。
声優が決まれば曲が出る。つまりドラマCDやライブなどの露出が増えるため、声優が決まっていることは大きな活躍の第一ステップなのである。
しかし、卯月はシンデレラガールズの看板でありながら同じ立ち位置だった凛や、同じキュート属性でも当時から圧倒的な存在感を放っていた杏やかな子に先を越されてしまうという不遇な立場になってしまう。
さらにゲーム的なレアリティで言っても凛はSRが出てるのに卯月は最弱のNのまま……おまけに同じキュート低コスアイドルの水本ゆかり、中野有香が先にR化するなど不憫を極めた。
キャラクターとして見ても、アイドルへの意気込みを語るだけで私生活が見えてこないことから「普通」「無個性」「感情の無いロボット」など散々な言われようだった。
サービス開始して初めての誕生日にも特に何も無い(名前は誤字られた)というオチ。ボイス(シンデレラガールズ)の項目も参照のこと。
そもそもシンデレラガールズは当初は765のアイドルの人気から始まったゲームで、オリジナルアイドル達の中でも特徴や存在価値が薄かった卯月は先輩達の育成の餌として使われてしまうことも多かった。

サービス開始から不憫不憫と言われ続け約半年、CD第二弾の発売が発表され無事卯月にも声優がつき曲が発売されることに。
その曲こそ『S(mile)ING!』である。スマイリング、と読む。
発売された時の反応は「普通のアイドルソング」「普通な島村さんらしい曲」とまあ、良曲と評価されてはいたがこういう反応が多かった(作曲家は割りと凹んだらしい)。
特徴的な曲名だが「Sing(歌)」「Smile(笑顔)」「Mile(道のり)」の三つの意味が込められており、下積みが長かった笑顔が特徴の彼女にとってこれ以上の曲名はないだろう。
なお同時期にSR化も果たしたのだが、様々な伝説を残した一枚となっており現在でも語り草になっているがここで言及するのは趣旨から外れるため避ける。
卯月によくマッチした歌詞と曲と中の人の好演や、声優が決定したことによりドラマCDなどで人となりが描かれるようになっていったため、卯月の印象は「無個性で不憫」だったのが「普通の女の子」へと変化していった。

そして始まったのがアニメ。序盤から卯月の笑顔がキーワードとされ、更に詳細な私生活が描かれた。意外と普通だと強調する描写は少なく、結構お嬢様だったり、鬱な状況でも笑顔を失わない天使など今までに無かった魅力を見せてくれた。
しかし2期に入ってから周囲が成長していくのを見て輝けない自分に焦りを感じ始める。
その焦りが悲しみに変わった23話では自分の最大の武器である笑顔を誰でもできると叫んでしまう。

周囲の成長についていけない自分、自分の武器がなんなのか分からなくなる。そんな感性は、あまりにも「普通」ではないだろうか?
ひたむきに頑張ると言い続けていた「ガンバリマスロボ」は弱い自分に活を入れるための手段で、本当はロボットでもなんでもなく、ただの女の子だったというところだろうか。

だが、一つ忘れてはいけない事実がある。


かのアイドルが証明したこの事実が、この24話でも『S(mile)ING!』を通して卯月によって再び証明されたのではないだろうか。

普通のアイドルソングだったこの曲が24話を通してアイマスでも指折りの「泣ける曲」に成長したのは、一種のシンデレラストーリーと言えるだろう。

振り返ってみればこの曲に集約するような脚本だったが、あくまでそれは偶然であるようで、卯月の成長の話を作ると自然とこの曲に集約していくというのが真相らしい。

『S(mile)ING!』はすでに世に出ていたのは前述の通りだが、24話で使われたのはこの話のための新録。
ハンドマイクで軽くフリを行いながら収録したという逸話が中の人から語られている。

なお、作中設定的にはこの曲はサマフェス後に発売されたCPメンバーのアルバムのうちの一曲として収録されていると考えられる。
(Nomake14話にて各メンバーのソロ曲が収録されたアルバムが発売されたことが描写されている)
またこの24話が放送された後、卯月のCDは品切れが続出した。この現象は3話の『TOKIMEKIエスカレート』、3rdライブ後の『Hotel Moonside』などでも見られた。

もう一人の仲間、小日向美穂

美穂はゲームではピンキーキュート、ピンクチェックスクール、C5などといったユニットで組んでいたり、年齢も同じでお互いが正統派キュートであったりという卯月との関わりが深いアイドルだった。
アニメではCPより先にデビューし、先輩アイドルとして活躍。
CPメンバーではないためアニメでの活躍は序盤では薄めだったが卯月成長の一環としてアニメでもユニットを組むこととなる。
しかしすでに崩壊が始まっていた卯月にとって自然な笑顔が出せる美穂は眩しく、卯月が養成所に引っ込んでしまうきっかけになってしまう。
当然美穂には一切非は無く、彼女の仕事に大きな影響が出ることになってしまう。(勘違いが出る前に言及しておくが、原因はもっと以前からのものなのでユニット結成を提案したプロデューサーにも非はない)
かな子がフォローでユニット結成したが、卯月の影響を直接的に受けてしまった立場になる。
美穂は養成所にいた卯月に連絡を取ろうとしたが、全て電話を取ってもらえなかったと語っている。悪い言い方をすると、ユニットの仲間を心配してかけた電話を全て無視された、という形である。
勿論卯月にとっては連絡を取ることを恐れた(ニュージェネ二人が会おうと言っても拒否していた)ということなのだろうが……。

しかし美穂はそれでも卯月のことは大好きで、一緒に仕事がしたいと笑顔で語っている。卯月が養成所に引っ込んだのも、詳しく事情は聞かずともなんとなく理由を察し理解を示していた。
美穂以上にニュージェネとの関係が深い美嘉や加蓮や奈緒が、恐らく仕事で来られなかったクリスマスライブにも応援に駆けつけ、
誰よりもライトを振って応援し、復活した卯月を見て静かに涙を流すなどその良い子っぷりはとどまることを知らない。
最終話にて、卯月にライブへの意気込みを語られ、目に涙を浮かべて喜ぶなど、卯月にとってニュージェネ以外でも、最高のパートナーに出来たのではないだろうか。。

なお、美穂は卯月にとって数少ない敬語をほぼ使わずに会話できるアイドルである。
ピンチェ最後のメンバーである五十嵐響子も声がついたため、これからの展開に期待したい。


愛を込めてずっと追記、修正するよ!

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