イセゴイ/ターポン

登録日:2025/7/26 (土) 22:24:00
更新日:2025/07/27 Sun 06:56:06NEW!
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イセゴイ/ターポンとはカライワシ目イセゴイ科に属する魚である。
学名は Megalops、英語ではtarponと呼ぶが後述するアトランティックターポンの方に関しては
釣り人の俗称としてsilver kingとも呼ばれている。

実は厳密に言えば単に「ターポン」というとアメリカ大陸沿岸からアフリカ大陸沿岸といった大西洋に生息しているアトランティックターポンのみを指す。
しかし日本にも生息し、近縁種でもあるイセゴイを英語での呼称からパシフィックターポンと呼ぶこともあるので当項目では二種とも説明、
本家の方をアトランティックターポン、パシフィックターポンは和名であるイセゴイの呼称で統一する。

概要

銀色に光り輝く鱗を持ち、アロワナのように上向きかつ大きな口を持っている魚で
一見するとイワシやニシンの仲間に似ているがこれらの魚との類縁関係は全くと言っていいほどなく、
見た目からは想像しにくいのだが分類学上最も近縁なのは実はウナギの仲間という不思議な魚である。
その証拠にレプトケファルスという形態を経て成長する生態であり、尾鰭を除けばウナギの稚魚に酷似した姿なのだ。

あまり知られていないが実は硬骨魚の仲間でもかなり原始的な所謂古代魚であり、現生種である二種以外にも多くの化石種が発見されている。
イセゴイの名前の由来に関しては伊勢の海に生息している鯉に似た魚であるから…とされているが諸説ある。
また、古い呼び方として「ハイレン」という名前も存在している。
アトランティックターポンに関してもその生息域に由来してタイセイヨウイセゴイという和名が付けられている。

主な種類


  • アトランティック・ターポン(タイセイヨウイセゴイ)
アメリカ大陸沿岸からアフリカ大陸沿岸といった大西洋に面した国の海域に生息しているで
単にターポンと言った場合はこちらの種を指す。
環境としては特に浅海域や河川の河口域に好んで生息、
餌は主に小魚であり、その大きな口で捕食する。
平均して1mを超え、最大で2.5mとかなり大型化する。

  • イセゴイ(パシフィックターポン)
南アジア、東南アジア、オセアニアの沿岸
日本でも九州や沖縄県に生息しているが黒潮等に乗ってきたのか稀に静岡県や神奈川県で発見された記録が存在する。
こちらもターポン同様に浅海域や河川の河口域を好んでいるとされているが、
淡水への適応力及び、依存度は上のようで環境によっては海や河口から離れたかなり上流の方で発見される事も。
食性もアトランティックターポンに準じるが、そちら程大きくならず、50cmいけば大きい位。


人間との関係


食用

向かない。特にターポンは。
何故なら肉がかなり臭いからである。
実際に食べた人によれば何故か金属のような匂いがするようで
生は勿論だが文字通り煮ようが焼こうがそれが落ちず、とても食べられたものではなかったという報告があるようだ。
一方でパシフィックターポンこと、イセゴイに関しても同じように臭くて食べられたものではないという声があるが、
こちらは身そのものは美味であり、その気になれば食べられない事もないようで
南方の国々では干物などに加工されて実際に食用にされる事もある。


ペット

アトランティックターポン・イセゴイどちらもペットとして流通、飼育される事がある。
多くの熱帯魚のような派手な模様はないし煌びやかな種でもないが、眩しいほどに光り輝く
銀の鱗はそれはそれで美しいし、何よりカッコイイのは忘れてはいけない。
しかしアトランティックターポンは古代魚としてはかなり成長が早い上に遊泳力も高いので最低でも
120㎝水槽を用意しなければいけないことは留意しておくべきである。
餌はどちらも生き餌を好むが、浮上性の人工飼料も慣らせば食べてくれる。

塩分の必要性に関しては諸説あるようでアトランティックは純淡水で飼育可能だがイセゴイは無理という声がある一方、
逆にイセゴイは淡水でも飼えるがアトランティックは一時的になら問題はないものの、
長期的には急死するリスクが上がるといった声も挙がっており、最近では後者の説が有力視されている。
また、多くの古代魚に共通して空気呼吸に依存している生態なので水を一杯にしてしまうと呼吸できずに溺死してしまう為、そこも注意である。

釣り

アトランティックターポンはその巨体もさることながら力が非常に強い…即ち引きが強い為、
釣りでも人気であり、当項目の冒頭で書いたsilver kingという俗称もここから付けられたとされている。

その他

アトランティックターポンが生息している国では餌やりが可能な所もあり、
それを観光の目玉にしている国もあるようだ。


展示している(していた)水族館

アトランティックターポンはかつて飼育していた所も含めれば四か所と意外と少ない。
一方でイセゴイに関しては一応は日本に生息している種である事も関係してか11か所と多い。
中でも神奈川県の新江ノ島水族館で飼育されているイセゴイは1984年に釣り人から見かけない魚を釣ったと持ち込まれており、それ以降なんと40年も生きているという。
当時は10cm程度しかなかったようだが現在は50㎝もの大きな体格に成長しているとの事である。

余談

台湾ではサバヒーという魚を食用に養殖しており、それが食文化として根付くほどポピュラーな食材なのだが
イセゴイはその養殖場に侵入して稚魚や幼魚を食い荒らしてしまう為、害魚扱いされて嫌われている。

日本においてはかつて静岡県に『浄ノ池』なる池があり、そこには当時はかなり珍しく、
尚且つ本来は海に生息している魚が多数生息していた不思議な池であった。
そんな池に生息する不思議な魚の一種としてイセゴイもいたという。*1

イギリスやアメリカの軍はかつてターポンという名前の潜水艦を保有していたことがある。
名前は勿論魚のターポン(アトランティックターポン)から。


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最終更新:2025年07月27日 06:56

*1 当時はハイレンという表記がされていた。