殺人劇の夜(ゴルゴ13)

登録日:2021/10/24 (日曜日) 16:28:13
更新日:2021/11/12 Fri 18:52:39
所要時間:約 8 分で読めます







それで矛盾が無いなら……
それが"真相"の可能性もあるだろうな……




概要

殺人劇の夜とは、ゴルゴ13の145巻に収録されたエピソード。
依頼人の要望により、標的は近いながらも、いつもの遠距離狙撃とはまた違った困難な狙撃にゴルゴが挑む。
テレビアニメでは第34話として放送された。


あらすじ


今回の依頼人、不動産業を営むジャンセンは、ゴルゴ13に同業者であるクランプの狙撃を依頼する。
ジャンセンとクランプは10年前、ダウンタウンの再開発というビッグ・プロジェクトを巡ってバッティングしていた。
2人は車の中で話し合うが、当然どちらもまたとないチャンスを譲る気はなく、このままでは入札…すなわち、安値での請け合いになってしまう。
しかし、入札ではどちらが落札するにしても利益が少なくなってしまうということで、ジャンセンは賭けで決めようじゃないかと持ち掛ける。

クランプは承諾し、近くに競馬場があるので1着の馬の番号が偶数か奇数かを賭けようと提案する。
競馬場に着いたクランプは、ジャンセンに偶数か奇数かを紙に書いてポケットに入れるよう指示をする。
1着馬の番号がジャンセンの選んだ方ならジャンセンの勝ち、そうでなければクランプの勝ちというわけだ。
ジャンセンは奇数を選んだが、結果として1着の馬は4番であった。
賭けに勝利したクランプはこの事業をきっかけに、不動産王と呼ばれるほどの大物へとのし上がったのだった。

一方、ジャンセンもビッグ・プロジェクトは逃したものの商売そのものは順調で、当時のことについては、賭けは元々自分が言い出したことだと潔く諦めていた。
しかし、最近競走馬を購入したところ、預けた調教師からその賭けがイカサマだったことを知らされる。
クランプはジャンセンが賭けを言い出すことを見越しており、事前に騎手や調教師を買収していたのだ。
競馬場でジャンセン達が座った席は2階のスタンドから覗けるようになっており、クランプの手下がジャンセンの選択を盗み見て、勝敗を操作したというトリックである。
当然買収にそれなりの出費はかかっただろうが、プロジェクトで得た利益に比べれば微々たるものである。

そのことを知ったジャンセンは、クランプに落とし前をつけされるため、ゴルゴにクランプの狙撃を依頼したのだった。
依頼に際しての条件はふたつ。

・ジャンセンの目の前でクランプを殺すこと
・クランプ以外の人間には一切危害を加えないこと

依頼人の条件を満たすため、ゴルゴは様々な仕掛けを打つのだった。


主な登場人物


■ジャンセン
CV:藤城裕士
不動産業で財を成した老紳士で、今回の依頼人。
前述の通りターゲットのクランプとは因縁がある。
クランプに賭けの提案を読まれるあたり、元々賭け事好きで有名だったのかもしれない。


■ダニー
CV:安井邦彦
ジャンセンの専属ボディガード。
優秀だがカタブツなところがあり、ジャンセンが依頼のためゴルゴと2人だけになろうとした時も、なかなか席を外さなかった。
ジャンセンからは少しめんどくさがられているが、ゴルゴはダニーの態度をむしろ「仕事に忠実な男は信用できる」と評価した。
なお、今回の依頼についてジャンセンは「自分自身の問題だ」として、ダニーに詳しいことは一切話していない。


■ロナウド・クランプ
CV:金尾哲夫
今回のターゲットで不動産王。
前述の通り、イカサマの賭けでジャンセンを嵌めた過去があり、命を狙われることになる。
芝居やミュージカルを観るのが趣味。
日が昇っているうちから執務室で女性とおっぱじめ、行為の真っ最中にも構わず部下を入室させるなど、なかなかアレな人物。
性格も傲慢で、ジャンセンのことはロートル(年寄り)と見下している。

本話は2001年7月作品なので、同じく不動産王で非常によく似た名前の元アメリカ大統領とは一切関係がない
クランプタワーという、自分のビルの最上階に居を構えているが全然関係はない。イイネ?



説明不要の主人公。
今回は狙撃自体は(ゴルゴにしては)難しくないものの、依頼人の要望により様々なトリックを仕掛ける。
また、依頼人に同行する際は、秘書という名目で行動している。
ちなみにネットでたまに見かける、ゴルゴがクラッカーを鳴らすシーンはこの話のワンシーン。三角帽はコラ。
三角帽を抜きにしてもシュールな一コマには違いないが


■デイブ・マッカートニー

ご存知、ゴルゴ御用達の一流ガンスミス。
今回は特殊な組み立て式の銃の設計・製作を依頼された。
いつも通りなかなか難しい依頼だったと思われるが、珍しく嫌そうな顔はしていない。
納期に余裕があったのだろうか。


結末(ネタバレ注意!)


依頼人の条件を満たすため、ゴルゴはまずターゲットのスケジュールを調査する。
それによると、翌月の13日にクランプは劇場を借り切って芝居を観るのだという。
ゴルゴはその日を決行日と定め、準備を進めていく。


仕掛けその①劇場への来訪
ゴルゴの指示により、ジャンセンはクランプに対して劇場を訪ねたいと持ち掛ける。名目は以下の通り。

13日に劇場を借り切ったと聞いたが、実はその日は自分の60歳の誕生日だ。
話したいこともあるので、当日劇場を訪ねてもよいか?

クランプは特に怪しむこともなく了承する。


仕掛けその②デリバリー
クランプへの恭順の意思表示も含め、軽食のデリバリーを用意する。
なお、後方の座席を取り払って、休憩中に中で飲み食いができるようにしたいと、ジャンセンからクランプに要望している。(もちろんゴルゴの指示)


仕掛けその③銃
デイブの工房で注文していた、上述の組み立て式の銃を受け取る。
20の部品と万年筆のキャップで構成されており、1発しか撃てないという今回のための特注品。


仕掛けその④小道具
当日、ジャンセンとダニー、そしてゴルゴは車で劇場に向かっていた。
ゴルゴは車中でジャンセンとダニーに数々の小道具を渡す。


1.防弾チョッキ
特に危険が予想されるわけでもない、ただの小道具。
ゴルゴも含めて3人とも着用する。

2.都市の模型
何か聞かれたら「今手掛けている都市再開発地区の模型」と答えるようにとのこと。
結構よくできてる。

3.クラッカー
なんの仕掛けもない市販品。
ジャンセンの誕生日を祝うという名目で、その場にいる全員に使わせる。
ただし、ジャンセンは祝われる側なので使わない。

4.使い捨てカイロ
「ホットカイロ」とカタカナで書かれているMade in JAPAN。
ジャンセンはとても寒がりなので、持ち歩いているという設定。


決行


劇場に着いたジャンセンとクランプは、旧交を温める。
また、トラブルがあってはいけないとのことで、ジャンセン達はクランプの護衛達からボディチェックを受け銃を預ける。
上述の小道具たちは特に怪しまれることもなく、ジャンセン以外のメンバーは誕生日を祝いクラッカーを鳴らす。
もちろんゴルゴもいつもの仏頂面でクラッカーを鳴らすのだった。

芝居が始まってしばらく経ち休憩に入ると、ゴルゴの指示によりデリバリーが劇場内に運び込まれる。
各々食事をとり、芝居が再開されるとゴルゴはトイレに向かう。
そして芝居の山場、主人公の男が両親の仇を射殺するシーンの銃撃の効果音に合わせ、ゴルゴは劇場の後方からクランプを射殺するのであった。


やがて警察が来て捜査を開始する。
不審者が侵入した形跡はなく、デリバリーや芝居のスタッフにもアリバイがあり、状況から言って犯人はゴルゴ、ダニー、ジャンセンの3名に絞られるとクランプの護衛達は警察に証言する。
ただし、ジャンセンは被害者と並んで座っていたため、後頭部に銃弾を撃ち込むのは不可能だとゴルゴは否定する。
硝煙反応を調べようにも、全員クラッカーを鳴らした時の硝煙反応が出てしまい、犯人の特定には至らない。


とにかく凶器の銃が発見されないことにはどうにもならないが、劇場内を隅々まで捜索しても凶器の銃は見つからない。
ジャンセン達が持参した銃は金庫に保管され、発射された形跡はない。
あらかじめ現場に銃が隠されていたという線も、事前にクランプの護衛達が徹底的にチェックしていたため消えてしまう。
果たして凶器の銃はどこから来て、どこへ消えてしまったのか……。



ダニーの推理


警察が躍起になって凶器を捜索する中、ロビーでタバコを吸うゴルゴにダニーが声をかける。
状況から言って犯人は俺かあんただけだが、俺は犯人じゃあないから犯人はあんただ…と。
その上で銃をどこから捻り出してどうやって隠したか、ダニーはゴルゴに自分の推理を聞かせる。


・消えた防弾チョッキと使い捨てカイロ

シャツの隙間からちらりと見えたが、ゴルゴの防弾チョッキが事件の後で消えていたという。使い捨てカイロもケースから消えていた。
防弾チョッキは融点の低い特殊な金属を持ち込むための口実であり、使い捨てカイロの中身は生石灰に詰め替えられていた。
生石灰は水に混ぜると発熱する性質を持ち、有名なところでは紐を引っ張ると熱くなる駅弁などで使われている。


・都市模型の正体

都市模型はビルの部分が空洞になっており、ひっくり返すと鋳型になる仕掛けだ。
ゴルゴはトイレに立った際、使い捨てカイロで防弾チョッキを溶かし、鋳型に流し込んで銃パーツを作ったのだ


・銃の始末

クランプを射殺した後、ゴルゴはデリバリーのコンソメスープに銃を沈めた。
スープは芝居の間も固形燃料でずっと温められていたので、特殊金属でできた銃は溶けてしまい証拠隠滅…というわけである。
もちろん鍋を詳しく調べればバレてしまうが、透明なコンソメスープの鍋に何も入っていなければ、それ以上は疑わないという心理トリックでもある。


ダニーは上述の推理をゴルゴに聞かせるが、警察に話すつもりはないという。
雇い主であるジャンセンの意思に反することだし、自分はただ真相を推理したかっただけだ…と。
それに対しゴルゴは肯定も否定もせず冒頭のセリフを返し、ダニーはゴルゴの銃の腕と、それに対する絶対の自信に戦慄するのであった。


融点が二〇〇℃以下の金属を"易融合金"というが、中でも"ウッド合金"なんていうのは融点が六五℃と低い……
そんな金属で銃を作っても、一度でも発射すれば、発射の熱で歪み、もう使えなくなるだろう
……とすればこの男は、その状況下で、一発必中の自信があったと、いうのか…
……な、なんて男だ!……



一方その頃、警察から解放されたデリバリースタッフの1人が、コンソメスープの鍋を川に放り込んでいた。


……ンなもんを捨てさせるのにあんな大金をくれるなんて……
どういう事かな……?



追記・修正は一発しか撃てない銃でも、必中させる自身のある方がお願いします。

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最終更新:2021年11月12日 18:52