だんのこまち@wiki
二部
最終更新:
dannocomachi
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第二部 準決勝
知られていなかった実力
準決勝が始まる前。
二年二組の応援席では、つきみさんの話が続いていました。
「つきみさん、あんなに強かったんだ」
「去年も出ればよかったのに」
「授業で本気を出してなかったの?」
シロさんが、少し呆れたように答えます。
「つきみ、必要な時は普通にやってるよ」
「でも、学校であんなに動くところ見たことないって」
「ああいう競技へ出なかっただけじゃん」
同じクラスの男子生徒が、キャラメルさんへ尋ねました。
「キャラメルたちは知ってたの?」
「FoFで一緒に遊んでいるからね」
「ゲームと学校のデュエル、同じじゃないだろ?」
「同じではないよ」
コレットさんが答えます。
「でも、相手を見る癖や、焦らないところは同じ」
フェタさんも、投影された待機表示を見上げました。
「つきみ、自分から実力の話なんてしないから。知らなかった人が多いのも仕方ないよ」
「次、チョコチップさんなんだよね」
「どっちが勝つと思う?」
誰も、簡単には答えられませんでした。
一方。
午前のリレーを終えたマロンさんは、アッサムさんと一緒に来場者席から決闘場を見ています。
「つきみさん、すごかったね!」
「追いかけずに、相手の動ける場所を減らしていた」
アッサムさんが答えます。
「私、ああいうの考えてる間に走って近づいちゃいそう」
「マロンは走る方が得意だからね」
「私は見る側でよかったかも。デュエル、考えること多すぎるよ!」
マロンさんは、戦う選手ではなく。
純粋に、これから始まる試合を楽しみにしていました。
現実側の反応を詳しく知らないつきみさんは。
転送位置で、静かに木刀を持っています。
「皆さん、驚いているようですね」
私が言うと、つきみさんは少しだけ首を傾けました。
「参加しないと思われてたんだろうね」
「気になりますか?」
「少しだけ」
つきみさんは木刀を両手へ持ち替えます。
「でも、戦えばわかるから」
静かな声でした。
その言葉どおり。
目の前の試合だけを見ています。
「よろしくお願いします、つきみさん」
「うん。よろしく、チョコ」
「手加減はしません」
「私も」
二人で一礼しました。
二年二組の応援席では、つきみさんの話が続いていました。
「つきみさん、あんなに強かったんだ」
「去年も出ればよかったのに」
「授業で本気を出してなかったの?」
シロさんが、少し呆れたように答えます。
「つきみ、必要な時は普通にやってるよ」
「でも、学校であんなに動くところ見たことないって」
「ああいう競技へ出なかっただけじゃん」
同じクラスの男子生徒が、キャラメルさんへ尋ねました。
「キャラメルたちは知ってたの?」
「FoFで一緒に遊んでいるからね」
「ゲームと学校のデュエル、同じじゃないだろ?」
「同じではないよ」
コレットさんが答えます。
「でも、相手を見る癖や、焦らないところは同じ」
フェタさんも、投影された待機表示を見上げました。
「つきみ、自分から実力の話なんてしないから。知らなかった人が多いのも仕方ないよ」
「次、チョコチップさんなんだよね」
「どっちが勝つと思う?」
誰も、簡単には答えられませんでした。
一方。
午前のリレーを終えたマロンさんは、アッサムさんと一緒に来場者席から決闘場を見ています。
「つきみさん、すごかったね!」
「追いかけずに、相手の動ける場所を減らしていた」
アッサムさんが答えます。
「私、ああいうの考えてる間に走って近づいちゃいそう」
「マロンは走る方が得意だからね」
「私は見る側でよかったかも。デュエル、考えること多すぎるよ!」
マロンさんは、戦う選手ではなく。
純粋に、これから始まる試合を楽しみにしていました。
現実側の反応を詳しく知らないつきみさんは。
転送位置で、静かに木刀を持っています。
「皆さん、驚いているようですね」
私が言うと、つきみさんは少しだけ首を傾けました。
「参加しないと思われてたんだろうね」
「気になりますか?」
「少しだけ」
つきみさんは木刀を両手へ持ち替えます。
「でも、戦えばわかるから」
静かな声でした。
その言葉どおり。
目の前の試合だけを見ています。
「よろしくお願いします、つきみさん」
「うん。よろしく、チョコ」
「手加減はしません」
「私も」
二人で一礼しました。
チョコチップ対つきみ
<チョコチップ 200>
<つきみ 200>
同じ中型木刀。
同じ威力三十。
必要な有効打の数も同じです。
違うのは。
その使い方だけ。
現実側から、大きな声が届きました。
「チョコちゃーん!」
レンちゃん。
「お姉ちゃん、頑張ってー!」
ミントちゃん。
反対側からは。
「つきみー!」
シロさんの声。
さらに。
これまでつきみさんの実力を知らなかった生徒たちも、今度は名前を呼んでいました。
「つきみさん、頑張れ!」
「もう一回、さっきの見せて!」
「チョコチップさんも負けるな!」
<DUEL START>
最初に中央へ出たのは、つきみさんでした。
走りません。
ゆっくりとフィールドの中心へ立ちます。
相手を追わず。
自分から境界線へ近づかず。
一番多くの方向へ動ける場所を、最初に取っています。
私は正面から近づきました。
間合いの外。
つきみさんの木刀が、わずかに上がります。
もう半歩。
私は踏み込み。
すぐに止まりました。
反応はありません。
見せるだけの動きでは、動いてくれないようです。
「先ほどと同じですね」
「何が?」
「相手が来るまで、中央で待つことです」
「追いかけるのは、あまり得意じゃないから」
「では、動かします」
本当に踏み込みました。
右肩へ木刀を振ります。
つきみさんは正面から受けず。
自分の木刀を斜めに当て、私の攻撃を下へ流しました。
そのまま反撃。
私は、さらに前へ入ります。
つきみさんの木刀が、肩の後ろを通り過ぎました。
空いた胴へ一撃。
<HIT -30>
<つきみ 170>
現実側から歓声が上がります。
「チョコチップさん、先に入った!」
「つきみさんの中心、崩したぞ!」
「今のは上手い」
つきみさんが言いました。
「ありがとうございます」
「でも、近いよ」
離れようとする前。
木刀の柄に近い部分が、私の腕へ触れました。
<HIT -30>
<チョコチップ 170>
さらに。
体を入れ替えるように回り込まれ、背中へ一撃。
<チョコチップ 140>
一度の攻撃を当てた代わりに。
二回受けました。
距離を取ります。
「近い方が動きやすいんですね」
「チョコが入ってきてくれたから」
「次は、すぐに離れます」
「できるかな」
つきみさんは、再び中心へ戻りました。
観客席から声が上がります。
「一回当てられたのに、二回返した」
「つきみさん、近距離の方が強いのか」
「木刀の先だけじゃなくて、根元まで使ってる」
私は木刀を片手へ持ち替えました。
少しだけ、攻撃の届く位置が伸びます。
左からの横薙ぎ。
つきみさんが受ける。
今度は押し込まず。
木刀が触れた瞬間に、自分から離しました。
つきみさんの反撃。
その木刀へ、もう一度自分の木刀を当てます。
防御判定。
二度目の接触で、相手の腕が外へ開きました。
肩へ一撃。
<つきみ 140>
すぐに後ろへ。
「今度は離れたね」
「先ほど教えていただきましたから」
「一回で変えるんだ」
「同じように入れば、また二回受けますので」
つきみさんが、少しだけ笑いました。
今度は向こうから来ます。
一歩目は遅く。
二歩目で、一気に距離が縮まりました。
木刀が下から上へ。
受ける。
続けて上から。
もう一度防御。
三撃目。
来ると思いました。
ですが。
つきみさんは振りません。
二回受けた私が、木刀を上げたままになるのを待ち。
足元へ一撃。
<チョコチップ 110>
「二回続けたので、三回目も来ると思いました」
「うん。そう思ってもらった」
観客席から、感心したような声が広がります。
「今の、途中で止めたのか」
「チョコチップさんが防御した位置を見てた」
「さっきの試合と戦い方が違うぞ」
「相手に合わせてるんじゃない?」
私は呼吸を整えました。
木刀だけを見ない。
足。
肩。
視線。
つきみさんも、私を同じように見ています。
右へ動きます。
つきみさんも。
左へ。
同じだけ。
追われてはいません。
ですが、中心へ入る道を塞がれています。
境界線へ近づく前に、正面へ踏み込みました。
木刀同士がぶつかります。
押し合い。
力には、大きな差はありません。
私は一度力を抜きました。
つきみさんの木刀が前へ流れたところで、肩へ一撃。
<つきみ 110>
しかし。
つきみさんも、崩れた姿勢のまま木刀を返します。
<チョコチップ 80>
互いに離れました。
<チョコチップ 80>
<つきみ 110>
私の方が、一撃分少ない。
つきみさんは、もう一度中心へ戻ろうとしました。
その前へ。
今度は私が入りました。
右へ。
つきみさんも右へ。
左へ。
同じだけ。
先ほどの動きを、そのまま返します。
「今度は、チョコが待つんだ」
「追いかけてばかりでは、つきみさんの動きになってしまいますから」
「よく見てたね」
つきみさんが、先に木刀を振りました。
受ける。
二撃目。
受ける。
三撃目。
今度は来ない。
わかっています。
木刀を上げたままにはせず、すぐに横へ下げました。
足元へ向かってきた一撃を外し。
胴へ。
<つきみ 80>
「同じのは、もう使えないね」
「はい」
互いに一撃ずつ入ります。
<チョコチップ 50>
<つきみ 50>
現実側の歓声が、さらに大きくなりました。
「あと二回ずつ!」
「どっちも同じだ!」
「つきみさん、本当に優勝候補だったんじゃないか?」
「チョコチップさんも、一年でここまで来てるのすごいぞ!」
つきみさんは、構えを低くしました。
長い攻防をやめ。
一度の接触から、次の一撃までつなぐ形です。
私も木刀を両手へ戻しました。
踏み込み。
つきみさんの木刀が肩へ向かいます。
受ける。
流そうとした瞬間。
つきみさんは、自分から木刀を離しました。
私の木刀だけが前へ流れます。
空いた脇腹へ。
<HIT -30>
<チョコチップ 20>
あと一回。
つきみさんは追ってきません。
焦っている私を待っています。
私は一度、息を吐きました。
勝ちたい。
決勝へ行きたい。
先輩のところまで。
ですが。
そのために急げば。
今、目の前にいるつきみさんへ負けます。
「チョコ」
「はい?」
「先に来る?」
つきみさんが尋ねました。
私は首を横へ振ります。
「待ちます」
「そっか」
つきみさんが、少しだけ笑いました。
今度は。
つきみさんが先に動きます。
一歩。
二歩。
木刀が上から来ました。
受ける。
二撃目。
右。
左。
連続攻撃。
防御。
防御。
三撃目。
今度は本当に来ます。
後ろへ避けました。
木刀の先が胸元の前を通り過ぎます。
つきみさんは、そのまま追ってきました。
一歩。
私は、さらに下がるように見せ。
前へ戻ります。
つきみさんの木刀が戻りきる前。
胴へ一撃。
<HIT -30>
<つきみ 20>
互いに、残り二十。
一撃で終わります。
観客席の声が、一度遠くなったように感じました。
近距離で木刀がぶつかります。
右。
左。
受ける。
外す。
互いに相手の木刀を身体へ届かせません。
つきみさんが、一度だけ大きく木刀を引きました。
強い一撃。
そう見えます。
私は反撃を急ぎませんでした。
木刀を正面へ置き。
攻撃を受けます。
武器同士の接触。
つきみさんは、すぐに次へつなげようとしました。
ですが。
一撃目へ力を乗せた分。
木刀が戻るまで、ほんの少しだけ時間があります。
私は、その間を待っていました。
一歩。
木刀の内側へ入り。
肩へ木刀の先を触れさせます。
青い光。
<HIT -30>
<つきみ 0>
<WINNER チョコチップ>
決闘場全体を包むような歓声が上がりました。
「チョコチップさん、勝った!」
「最後まで待った!」
「つきみさんも、あと一発だったぞ!」
「知らなかった……あの人、本当に強いじゃん」
「二年二組に、あんな選手いたんだな」
私は木刀を下ろし、深く息を吐きました。
つきみさんも、木刀を消します。
「負けた」
「はい」
「最後、待ったね」
「先輩から、勝ち急がないように教えていただきました」
「みたの教え方が残ってるんだ」
「それだけではありません」
私は、つきみさんを見ました。
「つきみさんが何度も中央で待っていたので。最後は私も、先に動かない方がよいと思いました」
「私の動きも見てたんだ」
「はい。たくさん勉強させていただきました」
つきみさんは一瞬だけ目を丸くし。
穏やかに笑いました。
「なら、ちゃんと負けたね」
差し出された手を握ります。
「決勝、行ってきて」
「はい」
「みたに負けないでね」
「つきみさんも、先輩を応援するのでは?」
「二年二組としては、みた」
つきみさんは、私の手を軽く握り返しました。
「でも今は、私に勝ったチョコを応援する」
「ありがとうございます」
二人で一礼しました。
現実側から。
勝った私だけではなく。
つきみさんにも、長い拍手が送られていました。
<つきみ 200>
同じ中型木刀。
同じ威力三十。
必要な有効打の数も同じです。
違うのは。
その使い方だけ。
現実側から、大きな声が届きました。
「チョコちゃーん!」
レンちゃん。
「お姉ちゃん、頑張ってー!」
ミントちゃん。
反対側からは。
「つきみー!」
シロさんの声。
さらに。
これまでつきみさんの実力を知らなかった生徒たちも、今度は名前を呼んでいました。
「つきみさん、頑張れ!」
「もう一回、さっきの見せて!」
「チョコチップさんも負けるな!」
<DUEL START>
最初に中央へ出たのは、つきみさんでした。
走りません。
ゆっくりとフィールドの中心へ立ちます。
相手を追わず。
自分から境界線へ近づかず。
一番多くの方向へ動ける場所を、最初に取っています。
私は正面から近づきました。
間合いの外。
つきみさんの木刀が、わずかに上がります。
もう半歩。
私は踏み込み。
すぐに止まりました。
反応はありません。
見せるだけの動きでは、動いてくれないようです。
「先ほどと同じですね」
「何が?」
「相手が来るまで、中央で待つことです」
「追いかけるのは、あまり得意じゃないから」
「では、動かします」
本当に踏み込みました。
右肩へ木刀を振ります。
つきみさんは正面から受けず。
自分の木刀を斜めに当て、私の攻撃を下へ流しました。
そのまま反撃。
私は、さらに前へ入ります。
つきみさんの木刀が、肩の後ろを通り過ぎました。
空いた胴へ一撃。
<HIT -30>
<つきみ 170>
現実側から歓声が上がります。
「チョコチップさん、先に入った!」
「つきみさんの中心、崩したぞ!」
「今のは上手い」
つきみさんが言いました。
「ありがとうございます」
「でも、近いよ」
離れようとする前。
木刀の柄に近い部分が、私の腕へ触れました。
<HIT -30>
<チョコチップ 170>
さらに。
体を入れ替えるように回り込まれ、背中へ一撃。
<チョコチップ 140>
一度の攻撃を当てた代わりに。
二回受けました。
距離を取ります。
「近い方が動きやすいんですね」
「チョコが入ってきてくれたから」
「次は、すぐに離れます」
「できるかな」
つきみさんは、再び中心へ戻りました。
観客席から声が上がります。
「一回当てられたのに、二回返した」
「つきみさん、近距離の方が強いのか」
「木刀の先だけじゃなくて、根元まで使ってる」
私は木刀を片手へ持ち替えました。
少しだけ、攻撃の届く位置が伸びます。
左からの横薙ぎ。
つきみさんが受ける。
今度は押し込まず。
木刀が触れた瞬間に、自分から離しました。
つきみさんの反撃。
その木刀へ、もう一度自分の木刀を当てます。
防御判定。
二度目の接触で、相手の腕が外へ開きました。
肩へ一撃。
<つきみ 140>
すぐに後ろへ。
「今度は離れたね」
「先ほど教えていただきましたから」
「一回で変えるんだ」
「同じように入れば、また二回受けますので」
つきみさんが、少しだけ笑いました。
今度は向こうから来ます。
一歩目は遅く。
二歩目で、一気に距離が縮まりました。
木刀が下から上へ。
受ける。
続けて上から。
もう一度防御。
三撃目。
来ると思いました。
ですが。
つきみさんは振りません。
二回受けた私が、木刀を上げたままになるのを待ち。
足元へ一撃。
<チョコチップ 110>
「二回続けたので、三回目も来ると思いました」
「うん。そう思ってもらった」
観客席から、感心したような声が広がります。
「今の、途中で止めたのか」
「チョコチップさんが防御した位置を見てた」
「さっきの試合と戦い方が違うぞ」
「相手に合わせてるんじゃない?」
私は呼吸を整えました。
木刀だけを見ない。
足。
肩。
視線。
つきみさんも、私を同じように見ています。
右へ動きます。
つきみさんも。
左へ。
同じだけ。
追われてはいません。
ですが、中心へ入る道を塞がれています。
境界線へ近づく前に、正面へ踏み込みました。
木刀同士がぶつかります。
押し合い。
力には、大きな差はありません。
私は一度力を抜きました。
つきみさんの木刀が前へ流れたところで、肩へ一撃。
<つきみ 110>
しかし。
つきみさんも、崩れた姿勢のまま木刀を返します。
<チョコチップ 80>
互いに離れました。
<チョコチップ 80>
<つきみ 110>
私の方が、一撃分少ない。
つきみさんは、もう一度中心へ戻ろうとしました。
その前へ。
今度は私が入りました。
右へ。
つきみさんも右へ。
左へ。
同じだけ。
先ほどの動きを、そのまま返します。
「今度は、チョコが待つんだ」
「追いかけてばかりでは、つきみさんの動きになってしまいますから」
「よく見てたね」
つきみさんが、先に木刀を振りました。
受ける。
二撃目。
受ける。
三撃目。
今度は来ない。
わかっています。
木刀を上げたままにはせず、すぐに横へ下げました。
足元へ向かってきた一撃を外し。
胴へ。
<つきみ 80>
「同じのは、もう使えないね」
「はい」
互いに一撃ずつ入ります。
<チョコチップ 50>
<つきみ 50>
現実側の歓声が、さらに大きくなりました。
「あと二回ずつ!」
「どっちも同じだ!」
「つきみさん、本当に優勝候補だったんじゃないか?」
「チョコチップさんも、一年でここまで来てるのすごいぞ!」
つきみさんは、構えを低くしました。
長い攻防をやめ。
一度の接触から、次の一撃までつなぐ形です。
私も木刀を両手へ戻しました。
踏み込み。
つきみさんの木刀が肩へ向かいます。
受ける。
流そうとした瞬間。
つきみさんは、自分から木刀を離しました。
私の木刀だけが前へ流れます。
空いた脇腹へ。
<HIT -30>
<チョコチップ 20>
あと一回。
つきみさんは追ってきません。
焦っている私を待っています。
私は一度、息を吐きました。
勝ちたい。
決勝へ行きたい。
先輩のところまで。
ですが。
そのために急げば。
今、目の前にいるつきみさんへ負けます。
「チョコ」
「はい?」
「先に来る?」
つきみさんが尋ねました。
私は首を横へ振ります。
「待ちます」
「そっか」
つきみさんが、少しだけ笑いました。
今度は。
つきみさんが先に動きます。
一歩。
二歩。
木刀が上から来ました。
受ける。
二撃目。
右。
左。
連続攻撃。
防御。
防御。
三撃目。
今度は本当に来ます。
後ろへ避けました。
木刀の先が胸元の前を通り過ぎます。
つきみさんは、そのまま追ってきました。
一歩。
私は、さらに下がるように見せ。
前へ戻ります。
つきみさんの木刀が戻りきる前。
胴へ一撃。
<HIT -30>
<つきみ 20>
互いに、残り二十。
一撃で終わります。
観客席の声が、一度遠くなったように感じました。
近距離で木刀がぶつかります。
右。
左。
受ける。
外す。
互いに相手の木刀を身体へ届かせません。
つきみさんが、一度だけ大きく木刀を引きました。
強い一撃。
そう見えます。
私は反撃を急ぎませんでした。
木刀を正面へ置き。
攻撃を受けます。
武器同士の接触。
つきみさんは、すぐに次へつなげようとしました。
ですが。
一撃目へ力を乗せた分。
木刀が戻るまで、ほんの少しだけ時間があります。
私は、その間を待っていました。
一歩。
木刀の内側へ入り。
肩へ木刀の先を触れさせます。
青い光。
<HIT -30>
<つきみ 0>
<WINNER チョコチップ>
決闘場全体を包むような歓声が上がりました。
「チョコチップさん、勝った!」
「最後まで待った!」
「つきみさんも、あと一発だったぞ!」
「知らなかった……あの人、本当に強いじゃん」
「二年二組に、あんな選手いたんだな」
私は木刀を下ろし、深く息を吐きました。
つきみさんも、木刀を消します。
「負けた」
「はい」
「最後、待ったね」
「先輩から、勝ち急がないように教えていただきました」
「みたの教え方が残ってるんだ」
「それだけではありません」
私は、つきみさんを見ました。
「つきみさんが何度も中央で待っていたので。最後は私も、先に動かない方がよいと思いました」
「私の動きも見てたんだ」
「はい。たくさん勉強させていただきました」
つきみさんは一瞬だけ目を丸くし。
穏やかに笑いました。
「なら、ちゃんと負けたね」
差し出された手を握ります。
「決勝、行ってきて」
「はい」
「みたに負けないでね」
「つきみさんも、先輩を応援するのでは?」
「二年二組としては、みた」
つきみさんは、私の手を軽く握り返しました。
「でも今は、私に勝ったチョコを応援する」
「ありがとうございます」
二人で一礼しました。
現実側から。
勝った私だけではなく。
つきみさんにも、長い拍手が送られていました。
もう一度見られた人
接続を終えたつきみさんが現実側へ戻ると、二年二組の応援席から何人ものクラスメイトが近づきました。
普段、つきみさんとあまり話していない生徒たちです。
「つきみさん、お疲れ!」
「すごかったよ!」
「ごめん。正直、あんなに強いと思ってなかった」
「私も。こういう大会に出るタイプじゃないと思ってた」
つきみさんは、少しだけ戸惑ったように皆を見ました。
「普段、出てないからね」
「どうして今年は出たの?」
「本戦資格が来たから」
「それだけ?」
「一度くらい、出てみてもいいかなと思った」
シロさんが、すぐに隣へ来ます。
「来年も出よう!」
「まだ終わったばかりなんだけど」
「でも三位以上だよ?」
「来年は、来年考える」
一人の女子生徒が、少し申し訳なさそうに言いました。
「私、つきみさんって運動とか苦手なんだと思ってた」
「別に。私も何も言ってなかったし」
「次のデュエル授業で、少し教えてくれる?」
「先生に聞いた方がいいと思う」
「そこは教えてくれないんだ」
「授業なら、一緒にやるよ」
完全に断ったわけではありません。
その返事に、周囲の生徒たちが笑いました。
キャラメルさんが、つきみさんへ飲み物を渡します。
「お疲れさま、つきみちゃん」
「ありがとう」
「今日は、みんなにつきみちゃんのことが少し伝わったね」
「知られなくても困ってなかったけど」
「でも、応援されるのも悪くなかったでしょう?」
つきみさんは、少しだけ校庭へ目を向けました。
自分の名前を呼んでいた生徒たち。
負けたあとにも送られた拍手。
「……悪くはなかった」
小さな返事でした。
ですが、近くにいた人たちには、きちんと聞こえていました。
普段、つきみさんとあまり話していない生徒たちです。
「つきみさん、お疲れ!」
「すごかったよ!」
「ごめん。正直、あんなに強いと思ってなかった」
「私も。こういう大会に出るタイプじゃないと思ってた」
つきみさんは、少しだけ戸惑ったように皆を見ました。
「普段、出てないからね」
「どうして今年は出たの?」
「本戦資格が来たから」
「それだけ?」
「一度くらい、出てみてもいいかなと思った」
シロさんが、すぐに隣へ来ます。
「来年も出よう!」
「まだ終わったばかりなんだけど」
「でも三位以上だよ?」
「来年は、来年考える」
一人の女子生徒が、少し申し訳なさそうに言いました。
「私、つきみさんって運動とか苦手なんだと思ってた」
「別に。私も何も言ってなかったし」
「次のデュエル授業で、少し教えてくれる?」
「先生に聞いた方がいいと思う」
「そこは教えてくれないんだ」
「授業なら、一緒にやるよ」
完全に断ったわけではありません。
その返事に、周囲の生徒たちが笑いました。
キャラメルさんが、つきみさんへ飲み物を渡します。
「お疲れさま、つきみちゃん」
「ありがとう」
「今日は、みんなにつきみちゃんのことが少し伝わったね」
「知られなくても困ってなかったけど」
「でも、応援されるのも悪くなかったでしょう?」
つきみさんは、少しだけ校庭へ目を向けました。
自分の名前を呼んでいた生徒たち。
負けたあとにも送られた拍手。
「……悪くはなかった」
小さな返事でした。
ですが、近くにいた人たちには、きちんと聞こえていました。
昨年度優勝者
準決勝第二試合。
先輩の向かいに立つのは、昨年度優勝者のヴィクトルロシェさんです。
大型トイガン。
威力四十。
一発を受けるだけで、ライフの五分の一が消えます。
対する先輩は。
威力二十の軽量木刀。
勝つためには、十回の有効打が必要です。
現実側の観客席では、ロシェさんの勝利を予想する声が多く聞こえました。
「ロシェ先輩、去年の優勝者だぞ」
「射程へ入る前に終わるんじゃない?」
「相手の二年、去年途中で攻めなくなった人だよね?」
「今年は一回戦、最後まで動いてたけど」
「でもロシェ先輩は別格だろ」
二年二組の応援席では、シロさんがその声へ負けないほど大きく叫びました。
「みたー! 去年とは違うところ見せろー!」
フェタさんも、決闘場を見上げます。
「みた、今度は止まらないって約束したからね」
つきみさんは飲み物を持ったまま、静かに言いました。
「止まる理由は、もうないと思う」
私は待機ロビーから、先輩の姿を見ていました。
先輩は短い木刀を構えます。
ロシェさんが言いました。
「昨年も出場していたな」
「はい」
「途中までは、悪くない動きだった」
何を言われているのか。
先輩には、すぐにわかったはずです。
昨年。
勝てる可能性の残った試合で。
自分から前へ出るのをやめました。
「今年は?」
ロシェさんが尋ねます。
先輩は、短い木刀を軽く握り直しました。
「最後までやります」
「なら、楽しみにしている」
<DUEL START>
最初の判定光が、フィールドを横切りました。
先輩は右へ避けます。
ロシェさんは、すでに次に移動する方向へ銃口を向けていました。
二発目。
肩へ命中。
<みたらしっぽ 160>
一発が重い。
ロシェさんは無理に連射しません。
大型トイガンの操作を終え。
一発ずつ。
確実に狙っています。
先輩は、まっすぐ距離を詰めるのをやめました。
右。
止まる。
左。
また止まる。
一定の速度で動けば、次の位置へ判定光を置かれます。
なら。
速度を一定にしない。
一歩だけ速く。
次は遅く。
途中で止まり。
一度戻る。
三発目が外れました。
「狙いづらそうだ」
「でも、一発当たっただけでも大きいぞ」
「剣の人、十回当てないといけないんだろ?」
距離が縮まります。
四発目。
先輩は避けるのではなく、先に床へ身体を沈めました。
判定光が頭上を通ります。
そのまま間合いへ。
一撃。
<ヴィクトルロシェ 180>
手首。
<ヴィクトルロシェ 160>
肩。
<ヴィクトルロシェ 140>
三回。
軽量木刀の戻りの速さを使い、一気に削ります。
ロシェさんが大型トイガンの銃身を横へ振りました。
銃身そのものが、先輩の木刀を外へ弾きます。
防御判定。
すぐに距離を取られました。
「近づかれても守れるのか」
「やっぱりロシェ先輩、隙ないな」
「でも三回入れたぞ!」
ロシェさんが銃口を構え直します。
五発目。
胸へ命中。
<みたらしっぽ 120>
それでも。
先輩は足を止めませんでした。
右へ。
左へ。
前へ。
一度下がり。
ロシェさんが遠くへ照準を合わせた瞬間、もう一度前へ。
判定光が外れます。
木刀の間合い。
<ヴィクトルロシェ 120>
<ヴィクトルロシェ 100>
銃身で防がれます。
離れる。
次の射撃。
<みたらしっぽ 80>
あと二発で負けます。
ロシェさんは百。
こちらは、まだ五回当てなければなりません。
現実側から、大きな応援が届きました。
「みたー!」
シロさん。
「先輩!」
私の声も。
自分でも驚くほど大きく出ました。
先輩は一度だけ、口元を緩めます。
「余裕があるのか?」
ロシェさんが尋ねました。
「ありません」
「なら、なぜ笑う?」
「待っている人がいるので」
ロシェさんが引き金へ指を置きました。
先輩は走り出します。
正面。
銃口が動く。
右へ避ける。
そう見せて。
そのまま正面へ。
判定光が右側を通りました。
ロシェさんの目が、わずかに見開かれます。
木刀。
<ヴィクトルロシェ 80>
二撃目。
<ヴィクトルロシェ 60>
三撃目は銃身で防がれました。
ですが。
先輩は離れません。
大型トイガンは、近すぎれば銃口を向け直しにくい。
ロシェさんが銃身を押しつけ、距離を作ろうとします。
先輩は、その力へ逆らいませんでした。
押される方向へ半歩下がり。
すぐに戻る。
手首へ。
<ヴィクトルロシェ 40>
「まだ前へ出る!」
「去年と全然違うぞ!」
「残り八十なのに、止まらない!」
ロシェさんが強引に銃口を向けます。
近距離からの射撃。
先輩は避けきれません。
<HIT -40>
<みたらしっぽ 40>
次で終わります。
同時に。
ロシェさんも、あと二回。
互いに距離を取り直しました。
昨年なら。
ここで満足していたのかもしれません。
強い相手へ、十分に戦えた。
あと少しだった。
そう言えるところまで来た。
自分から終わる理由を作ったかもしれません。
ですが。
今年は。
決勝で待つと約束しました。
私も待っています。
「まだ来るか?」
ロシェさんが聞きました。
「はい」
「残り四十だぞ」
「ロシェさんも」
先輩は木刀を持つ手を入れ替えました。
右から左。
ロシェさんの照準が、わずかに遅れます。
一歩。
射撃。
左へ避ける。
もう一歩。
ロシェさんが次の操作へ入ります。
木刀が届きました。
<ヴィクトルロシェ 20>
最後の一撃を狙う。
ロシェさんは銃身を横へ。
防御。
木刀が弾かれました。
先輩は、弾かれた方向へ身体を回します。
止めません。
一回転。
反対の手へ木刀を戻し。
背中側から、ロシェさんの肩へ触れさせます。
<HIT -20>
<ヴィクトルロシェ 0>
<WINNER みたらしっぽ>
歓声が、校庭全体へ広がりました。
「勝った!」
「昨年度優勝者に!」
「最後まで、一回も止まらなかった!」
「決勝、本当に一年生との対戦だぞ!」
先輩は木刀を構えたまま、数秒動きませんでした。
試合が終わったからではなく。
本当に最後まで戦えたことを、確かめるように。
それから木刀を消し、息を吐きました。
ロシェさんも大型トイガンを消します。
「昨年より、ずっと楽しそうに戦うな」
「今年は、最後まで見てほしい人がいるので」
「そうか」
ロシェさんは手を差し出しました。
「いい決勝にしろ」
「はい。ありがとうございます」
握手。
頭上のトーナメント表が更新されます。
<決勝戦>
<みたらしっぽ 対 チョコチップ>
約束した二つの名前が。
同じ場所へ並びました。
先輩の向かいに立つのは、昨年度優勝者のヴィクトルロシェさんです。
大型トイガン。
威力四十。
一発を受けるだけで、ライフの五分の一が消えます。
対する先輩は。
威力二十の軽量木刀。
勝つためには、十回の有効打が必要です。
現実側の観客席では、ロシェさんの勝利を予想する声が多く聞こえました。
「ロシェ先輩、去年の優勝者だぞ」
「射程へ入る前に終わるんじゃない?」
「相手の二年、去年途中で攻めなくなった人だよね?」
「今年は一回戦、最後まで動いてたけど」
「でもロシェ先輩は別格だろ」
二年二組の応援席では、シロさんがその声へ負けないほど大きく叫びました。
「みたー! 去年とは違うところ見せろー!」
フェタさんも、決闘場を見上げます。
「みた、今度は止まらないって約束したからね」
つきみさんは飲み物を持ったまま、静かに言いました。
「止まる理由は、もうないと思う」
私は待機ロビーから、先輩の姿を見ていました。
先輩は短い木刀を構えます。
ロシェさんが言いました。
「昨年も出場していたな」
「はい」
「途中までは、悪くない動きだった」
何を言われているのか。
先輩には、すぐにわかったはずです。
昨年。
勝てる可能性の残った試合で。
自分から前へ出るのをやめました。
「今年は?」
ロシェさんが尋ねます。
先輩は、短い木刀を軽く握り直しました。
「最後までやります」
「なら、楽しみにしている」
<DUEL START>
最初の判定光が、フィールドを横切りました。
先輩は右へ避けます。
ロシェさんは、すでに次に移動する方向へ銃口を向けていました。
二発目。
肩へ命中。
<みたらしっぽ 160>
一発が重い。
ロシェさんは無理に連射しません。
大型トイガンの操作を終え。
一発ずつ。
確実に狙っています。
先輩は、まっすぐ距離を詰めるのをやめました。
右。
止まる。
左。
また止まる。
一定の速度で動けば、次の位置へ判定光を置かれます。
なら。
速度を一定にしない。
一歩だけ速く。
次は遅く。
途中で止まり。
一度戻る。
三発目が外れました。
「狙いづらそうだ」
「でも、一発当たっただけでも大きいぞ」
「剣の人、十回当てないといけないんだろ?」
距離が縮まります。
四発目。
先輩は避けるのではなく、先に床へ身体を沈めました。
判定光が頭上を通ります。
そのまま間合いへ。
一撃。
<ヴィクトルロシェ 180>
手首。
<ヴィクトルロシェ 160>
肩。
<ヴィクトルロシェ 140>
三回。
軽量木刀の戻りの速さを使い、一気に削ります。
ロシェさんが大型トイガンの銃身を横へ振りました。
銃身そのものが、先輩の木刀を外へ弾きます。
防御判定。
すぐに距離を取られました。
「近づかれても守れるのか」
「やっぱりロシェ先輩、隙ないな」
「でも三回入れたぞ!」
ロシェさんが銃口を構え直します。
五発目。
胸へ命中。
<みたらしっぽ 120>
それでも。
先輩は足を止めませんでした。
右へ。
左へ。
前へ。
一度下がり。
ロシェさんが遠くへ照準を合わせた瞬間、もう一度前へ。
判定光が外れます。
木刀の間合い。
<ヴィクトルロシェ 120>
<ヴィクトルロシェ 100>
銃身で防がれます。
離れる。
次の射撃。
<みたらしっぽ 80>
あと二発で負けます。
ロシェさんは百。
こちらは、まだ五回当てなければなりません。
現実側から、大きな応援が届きました。
「みたー!」
シロさん。
「先輩!」
私の声も。
自分でも驚くほど大きく出ました。
先輩は一度だけ、口元を緩めます。
「余裕があるのか?」
ロシェさんが尋ねました。
「ありません」
「なら、なぜ笑う?」
「待っている人がいるので」
ロシェさんが引き金へ指を置きました。
先輩は走り出します。
正面。
銃口が動く。
右へ避ける。
そう見せて。
そのまま正面へ。
判定光が右側を通りました。
ロシェさんの目が、わずかに見開かれます。
木刀。
<ヴィクトルロシェ 80>
二撃目。
<ヴィクトルロシェ 60>
三撃目は銃身で防がれました。
ですが。
先輩は離れません。
大型トイガンは、近すぎれば銃口を向け直しにくい。
ロシェさんが銃身を押しつけ、距離を作ろうとします。
先輩は、その力へ逆らいませんでした。
押される方向へ半歩下がり。
すぐに戻る。
手首へ。
<ヴィクトルロシェ 40>
「まだ前へ出る!」
「去年と全然違うぞ!」
「残り八十なのに、止まらない!」
ロシェさんが強引に銃口を向けます。
近距離からの射撃。
先輩は避けきれません。
<HIT -40>
<みたらしっぽ 40>
次で終わります。
同時に。
ロシェさんも、あと二回。
互いに距離を取り直しました。
昨年なら。
ここで満足していたのかもしれません。
強い相手へ、十分に戦えた。
あと少しだった。
そう言えるところまで来た。
自分から終わる理由を作ったかもしれません。
ですが。
今年は。
決勝で待つと約束しました。
私も待っています。
「まだ来るか?」
ロシェさんが聞きました。
「はい」
「残り四十だぞ」
「ロシェさんも」
先輩は木刀を持つ手を入れ替えました。
右から左。
ロシェさんの照準が、わずかに遅れます。
一歩。
射撃。
左へ避ける。
もう一歩。
ロシェさんが次の操作へ入ります。
木刀が届きました。
<ヴィクトルロシェ 20>
最後の一撃を狙う。
ロシェさんは銃身を横へ。
防御。
木刀が弾かれました。
先輩は、弾かれた方向へ身体を回します。
止めません。
一回転。
反対の手へ木刀を戻し。
背中側から、ロシェさんの肩へ触れさせます。
<HIT -20>
<ヴィクトルロシェ 0>
<WINNER みたらしっぽ>
歓声が、校庭全体へ広がりました。
「勝った!」
「昨年度優勝者に!」
「最後まで、一回も止まらなかった!」
「決勝、本当に一年生との対戦だぞ!」
先輩は木刀を構えたまま、数秒動きませんでした。
試合が終わったからではなく。
本当に最後まで戦えたことを、確かめるように。
それから木刀を消し、息を吐きました。
ロシェさんも大型トイガンを消します。
「昨年より、ずっと楽しそうに戦うな」
「今年は、最後まで見てほしい人がいるので」
「そうか」
ロシェさんは手を差し出しました。
「いい決勝にしろ」
「はい。ありがとうございます」
握手。
頭上のトーナメント表が更新されます。
<決勝戦>
<みたらしっぽ 対 チョコチップ>
約束した二つの名前が。
同じ場所へ並びました。