80-サベネア

ラザハンの都を有するサベネア島

豊穣海の南東に浮かぶ、その豊かな島では
異種族同士の戦いと衝突が繰り返されてきた

その度に文化は混ざり合い 独自の発展を遂げている
さながら 彼等の用いる錬金術のようだ

ひとつの国として安定してからは
中立を宣言し 侵略者を寄せ付けずにいるが――さて

極彩色の島を 悪意が塗りつぶし始めている
お前たちはそれを――

それを――――

――本当にどうにかできるのか?


『ぐらりサベネア旅情』





カンガ : おいらたちの神様たちについて知りたいって?
へぇ、珍しいお客さんもおったもんだなぁ。
カンガ : あんたらの故郷ではどうか知らんけど、
サベネア島には、そりゃあ多くの神様たちがおわすのさ。
カンガ : その神様たちは、大きくふたつにわけられててなぁ……。
知恵に優れ、ヒトの姿をした「マヌシャ神群」と、
力に優れ、獣の姿をした「ムリガ神群」さ。
カンガ : それらをあわせて「神獣」っていうのさ。
うちのばあちゃんも、神様を「神獣さん」なんて呼んでたよ。
カンガ : 「神獣」は容姿も性格もバラバラで、
荒事が好きな神様もおれば、穏やかな神様もおるんだよ。
まるで、今のおいらたちみたいにさ!
カンガ : そして、自分たちの知識や経験を、
「訓え」として島の住民にわけてくださったんだ。
おいらたちは、今も「訓え」を大事に暮らしてるよ。

『神々が住まう館』


ハズヴェーダ : 島に伝わる神話を知りたいと?
ええ心がけじゃ、わしがなんでも話してやろう。
ハズヴェーダ : 昔々、この島では、人の姿をした「マヌシャ神群」と、
獣の姿をした「ムリガ神群」が争い続けていた……。
ハズヴェーダ : やがて、ムリガの神々はマヌシャの神が持つ知恵を求めて、
自身の頭を、彼らの頭にすげかえたのじゃ。
ハズヴェーダ : 一方、マヌシャの神々も、ムリガの神の絶大な力を欲した。
そうしてやはり、頭をすげかえてしまったのよ。
ハズヴェーダ : こうして、知恵と力を兼ね備えた神々が誕生し、
彼らによって、長きにわたる戦いが収められたのだという。
ハズヴェーダ : 以来、マヌシャ神群は獣の面をつけ、
ムリガ神群は人の手足を模した似姿をとることで、
互いを称え合うようになったのじゃよ。

『神々が住まう館』





サベネア島に鎮座する巨大な岩
ラザハンの都は 奇妙にもそこにへばりついている
入り口に掲げられた「真眼」の国章は
彼らの神話を彩る神々の眼───
あらゆる真理を見抜くものとされている
その視線を浴びながら門をくぐれば
島の暑さにも劣らぬ熱気を感じたものだ

商人たちが客を引く声 踊り子の舞踏とともに響く音楽
香と窯からのぼる煙が 空気までも染め上げる
溢れる色に目を回した旅人を
継ぎ接ぎの路が 誘い込んで帰さない

───そんな風景も今は沈み
真眼は果たして いかなる真理を見ていることか

『太守の判断』
最終更新:2023年10月01日 14:48