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ヴリトラ : 私がまだ幼かった、遠い昔のことではあるが……
一度だけ「なぜこの星を選んだのか」と、
父に問うたことがあったのだ。
ヴリトラ : 父は言った。
ここが「最後に残った希望」であったのだ、と。
ヴリトラ : ハイデリンが屈さぬかぎり、
ここでなら竜の未来も拓けるやも知れぬ……
そう考えたのだと。

『竜騎士は迷い、竜は語る』



ヴリトラ : 君は私が知りうるかぎりでも、
運命と力を、引き寄せすぎている。
良きものも、悪しきものもだ。
ヴリトラ : それらは君を安寧の内に留まらせてはくれない。
困難な試練となって、次々と襲い来るだろう。
ヴリトラ : しかしもっとも恐ろしいのは、
君を中心に渦巻く熱が、君のそばにいる者を、
燃やし尽くしてしまうことなのだ。
ヴリトラ : ……進むのなら、護り抜け。
それこそがいつか必ず、君自身の力となり、希望になる。

『竜騎士は迷い、竜は語る』



ニッダーナ : それは……?
ニッダーナ : 人の心を映す花……。
珍しいね、「アーカーシャ」に呼応してるのかな。
クルル : どういうことかしら?
ニッダーナ : ああ、えっと……
アーカーシャは、ラザハン式の錬金術に存在する概念で、
目には見えない力のひとつよ。
ニッダーナ : 想いが動かす力、なんて言われてるんだ。
アルフィノ : エーテルとは違うのかい?
ニッダーナ : そうだね、外国の人には混同されやすいんだけど、
アタシたちは区別してる。
ニッダーナ : エーテルは、地に満ちる力。
あらゆる生物や物体、そこに触れる大気の中にさえあって、
状態を変えながら巡っていくもの。
ニッダーナ : 対してアーカーシャは、
アタシたちの手が届かない領分にある力……
天より下りし力なの。
ニッダーナ : その在り方を、アタシたちの行いで変えることはできない。
増やすことも、消すことも、何ひとつとしてね。
ニッダーナ : けれど唯一、想いによってのみ、
アーカーシャを動かすことができるんだ。
ニッダーナ : 歴戦の猛者であるキミなら、
窮地に陥ったときや、高揚が極まったときに、
限界を超えたことがあるんじゃない?
ニッダーナ : あれこそ、強い意志によって、
キミの底力にアーカーシャが乗っかった状態ってこと!
ヤ・シュトラ : とても興味深いわ……!
エーテルを唯一の力の根源とする私たちの学問にはない考えよ!
ニッダーナ : そう言ってもらえると、なんだか嬉しいな。
ニッダーナ : だけど、アーカーシャはアタシたちにとっても、
古典の概念にすぎないというか……
実用性がないから、研究らしい研究もされてないの。

『君が抱く歓びの色』
最終更新:2023年10月01日 22:00