80-ラヴィリンソス

学術都市の地下深く
そこには 偽りの空がある

あふれた資料を床に積む者は どんな時代にも存在したが
この施設の考案者も 確実にそのクチだろう

積めなくなれば 別の場所へ
空きもなければ 作ってしまえというわけだ

恐らく最初はそれだけのこと
それだけのことが──すり替えられた

知識は黙々と積まれていく
まるで抜け出すことのできない 迷宮を築くかのように


『謎多きラヴィリンソス』





実験農場の植物学者 : おや、その花が気になるかね?
実験農場の植物学者 : とても綺麗な花だろう。
私たちは、「人の心を映す花」と呼んでいるんだ。
実験農場の植物学者 : はは、胡散臭いと思ってるだろう。
だが本当なのさ。
実験農場の植物学者 : 今は灰色か……。
ここで働くみんなの、急な命令に対する不安や焦り……
そういったものが表れている色なのかもしれないね。
実験農場の植物学者 : そんな風に、周囲の人がいい気分なら明るい色に輝くし、
苛立ったり落ち込んだりしていると、暗い色を帯びるんだよ。

『ミディアルサーキット』


クルル : これを、あなたに……。
魔法をかけたから、当分枯れないわ。
クルル : 「彼女」から、そうしてほしいと頼まれたの。
あなたの旅には必要なものなんですって。
クルル : それじゃあ、しばらく「彼女」に代わるわね。
ミンフィリアほどは、うまくできる自信がないけど……。
クルル : ……ありがとう。
ハイデリン : 驚かせてごめんなさい。
大丈夫、この子の身体はすぐに返します。
ハイデリン : 第一世界を「光の氾濫」から救えなかったように、
私だけで物質界に干渉するのは難しい……。
ハイデリン : 先のような幻体では、言葉を交わせはしても、
花に魔法をかけることすら叶わないのです。
ハイデリン : けれど、命の還る場所……星海のことならば。
思うがままとはいきませんが、多少は手が届きます。
ハイデリン : 第一世界ですべての力を託し終えたミンフィリアの魂も、
掬いあげ、今はここ原初の海に……。
優しいあの子には、故郷で穏やかに眠ってほしかったのです。
ハイデリン : そして、もうひとり……。
その者に行き着くかどうかは、これからのあなた次第。
ハイデリン : 花を携え、歩みなさい。
願う場所へ……望むままに……信じて。
ハイデリン : それは道標であり、あなたを、人を試すもの。
ハイデリン : 暗闇のうちに、歓びを探すのです。
絶望に目を凝らし、哀しみを掻き分け、
前へと歩み続けた者だけが、その真なる輝きを得る……。
ハイデリン : どうか、みんなと、結末を照らして。

『幽けき道標』
最終更新:2023年10月01日 15:22