トラルの古き詩人は謳う
大地が海に沈もうとも 決して没さぬ山がある
げに偉大なる 高き峰
我らはそれを時の山 オルコ・パチャと呼ぶのだと
事実 草原たる巨峰を揺るがし得るものがあるとすれば
幻獣ヴァリガルマンダくらいのもの
その「生ける天災」すら連王が封じた今
時代の王とならんとする者たちは 何を成すのか――
『オルコ・パチャ』
クルル : ねえ、見て……!
ウクラマト : ホントに、準備もなしに捕まえてきちまったのかよ……。
アリゼー : しかも、あのアルパカ……なんだか光ってない?
エレンヴィル : そういえば、むかし聞いたことがある。
人里離れた谷の奥に、黄金のアルパカがいると。
人はおろか同族すら寄せ付けぬ孤高の存在だとか……。
ウクラマト : そんなすげぇアルパカを、どうやって……。
サレージャ : 獣は素直ですからね。
圧倒的な力の前に逆らうようなことはしません。
これが、ゾラージャ様とウクラマト様の力量の差でしょう。
ウクラマト : オヤジの後を継ぐのは、一番強え奴じゃねぇ……
アタシは黄金郷を見つけて、この平和を護っていくんだ!
ゾラージャ : 平和を願う心は、戦(いくさ)なくして生まれはせん。
ゾラージャ : 世界をひとつにするためには、人々に教える必要がある。
戦の愚かさをな。
サレージャ : 80年前、多くの部族がトライヨラの建国に参加し得たのは、
長引く争いに疲弊し、戦いの無情さを実感していたからです。
サレージャ : この村の若者たちを見てごらんなさい。
生まれてこのかた平和を享受してきた彼らの多くが、
戦を恐ろしいものではなく、商機と捉えている。
サレージャ : だからこそ、ゾラージャ様は教えて差し上げようと言うのです。
戦の恐怖を、平和の価値を……。
アルフィノ : 戦いの痛みが平和を願う心を生む。
それ自体は、ひとつの事実でしょう。
アルフィノ : ですが、私たちはこの目で見てきました。
あなたのように、武力による統一を掲げて反発を生み、
やがて斃れることになった大国を。
ゾラージャ : ガレマール帝国は所詮、愚者の集まりに過ぎなかった。
ゾラージャ : ガレアンが支配種族として君臨し、
他の種族を弾圧すれば、反乱も起きよう。
ゾラージャ : 人は獣とは違う。
力だけですべてを支配せんとするのは、愚者のやることだ。
サレージャ : グルージャジャ様が、マムージャ族による支配を行わず、
すべての種族を平等に扱ったのは、そのためでしょう。
サレージャ : で・す・が!
サレージャ : ゾラージャ様が見据えてらっしゃるのは、さらにその先!
そう……トライヨラがこの世界をひとつにするのです!
ウクラマト : 何のためにそんなこと……。
ゾラージャ : それをお前に話す必要はない。
トーブリ : お見事、実に!
ゾラージャ王子はペルペル族の「金の試練」を超えてみせた!
約束どおり差し上げましょう、秘石を!
ウクラマト : いつもそうだ……。
あんたは、アタシやコーナ兄さんにさえ、
心の内を見せてくれねぇ。
ウクラマト : 家族じゃねぇのかよ、アタシたち……。
『ウクラマトとアルパカ』
マーブル : 頑張って、王女様!
ウクラマト : ありがとよ!
ウクラマト : 正直言って、アタシはまだアルパカが苦手だ。
できることなら、近づきたくはねぇ。
ウクラマト : だけど、王位を目指す奴がそれじゃダメなんだ。
アルパカだって、アタシらと同じこの国に生きる命。
今度こそちゃんと、正面から向き合ってくる。
ウクラマト : それじゃ、行ってくるぜ!
『ウクラマトとアルパカ』
マーブル : キミって、サカ・トラルのシャトナ族だよね?
どうして、海向こうで働いてるの?
エレンヴィル : 俺だって昔は、
トラル大陸を出ていくことなんて考えてなかったさ。
エレンヴィル : だが何年も前、師匠から、
あるものを探してみせろって課題を出されてな。
そのとき、こう言われたんだ。
エレンヴィル : 「それは、狭い世界に閉じこもってるだけじゃ見つからない。
海の外にだって、どんどん出ていくといい。
たとえばシャーレアンには、グリーナーという職がある」
エレンヴィル : 「世界中を巡り、様々な文化、風習、自然に触れるんだ。
そうした学びの過程で大切なものを得られたとき、
きっと、それは見つかるだろう」
エレンヴィル : 当時の俺はその言葉を鵜呑みにして、
グリーナーになったってわけだ。
マーブル : お師匠さんの一言で、見知らぬ土地で働くなんて……
その人をとっても尊敬してるんだね、エレンヴィルは!
エレンヴィル : そうは言っても、グリーナーの仕事自体が楽しくなって、
課題の方は棚上げしてたんだけどな……。
エレンヴィル : どういう巡り合わせか、ついに向き合うときがきたらしい。
クルル : まさか、探せと言われたあるものって、
黄金郷のこと……?
エレンヴィル : ああ。
継承の儀に乗っかる形にはなるが、俺もそこへたどり着きたい。
クルル : そう……そうなのね……!
みんな、それぞれの目的があって黄金郷を目指している……。
クルル : これは、なんとしても見つけ出さないとね!
エレンヴィル : そうだな。
『ウクラマトとアルパカ』
クルル : アルパカには慣れたみたいね。
ウクラマト : ……こいつを捕まえるために、つかず離れず観察してたらさ、
食べる草や果実、嫌いな音、それにちょっとした癖まで、
少しずつアルパカのことがわかってきたんだ。
ウクラマト : そしたら、なんか好きになっちまった!
『ウクラマトとアルパカ』
トーブリ : あなたは「金の試練」のみならず、
商売を通じて多くの者を幸福にしてみせた、マーブルとともに。
それは、あなただからこそ成し得たことでしょう、ええ。
トーブリ : 故に、胸を張って受け取るべきです。
試練を超えた証である「金の秘石」を。
ウクラマト : これが、秘石……。
アリゼー : さっそく、石板に嵌めてみましょ!
ウクラマト : ピッタリだな!
残るはあと6つだ!
マーブル : よかったね、王女様!
ウクラマト : ああ、マーブルがいてくれてよかったよ。
お前のおかげで、ペルペル族のことを知ることができた。
ウクラマト : 今さらだけどよ、「知る」ってすげぇ大事なんだな。
アタシがアルパカのことを苦手に思ってたのは、
よく知らなかったせいなんだって、わかったぜ。
マーブル : こっちこそ感謝してるよ。
王女様のおかげで、もらえたからさ。
自分の想いを打ち明ける、勇気をね!
マーブル : トーブリ、私……行商人になりたい!
マーブル : 育ててくれたことは感謝してるし、
アルパカの世話だって好きだよ。
マーブル : だけど私、ずっと憧れてた!
自分の力で生きていってみたいんだ、行商人として!
トーブリ : ……ひとつだけ言わせてください、あなたの親として。
トーブリ : 私はあなたたちに、
少しでも多くの幸せを与えたいと思いながら育ててきました。
しかし、押しつけたいと思ったことはありませんよ、一度も。
トーブリ : マーブルには、マーブルの生き方がある。
それが見つかったことが、親として嬉しいのです。
あなたならなれるでしょう、立派な行商人に、ええ。
マーブル : トーブリ……ありがとう。
ウクラマト : へへっ、よかったなマーブル!
マーブル : お礼ってわけじゃないけどさ。
みんなは黄金郷を探してるんだよね?
ウクラマト : ああ、そうだけど……。
マーブル : それなら、ヨカフイ族に会うといいよ。
マーブル : ヨカフイ族が支配してたのは、ペルペル族だけじゃない。
千年の昔、彼らはヨカ・トラルに生きるすべての部族を制して、
大陸の覇者となったんだ。
マーブル : その頃ね、ペルペル族は彼らに命じられて、
探してたらしいよ、黄金郷……。
マーブル : 結局、トラル大陸中を探しても、
見つからなかったらしいけどね、そんな街。
ウクラマト : 見つからなかったんなら、
ヨカフイ族に聞いても意味ないんじゃねぇのか?
クルル : そう決めつけるのは早計じゃないかしら。
なぜ、彼らは「黄金郷を探す」という発想に至ったのか……
伝説の出処を知る価値はあるんじゃない?
エレンヴィル : ま、本人たちに聞くのが早いだろうさ。
これがトライヨラ叙事詩をなぞる旅なら、
いずれは行くことになるんだ。
エレンヴィル : ヨカフイ族の根拠地でもある、あの高地にな。
マーブル : あっ、そういえば……
落ち着いたら聞こうと思ってたんだけど、
クルルはどうしてつけてるの、その耳飾り?
クルル : これを知っているの?
マーブル : 20年くらい前にヨカ・トラルで流行った耳飾りだよ。
今では、旅のお守りとして定番になってるんだ!
クルル : ちょうどおじいちゃんがこっちに来ていた時期だわ。
連王は、これが黄金郷に関係してると言っていた……
単なる流行品とは思えないけれど……。
マーブル : ん~、よくわからないけど、
それの発祥が気になるなら、調べとくよ!
行商人として知りたいしね、定番商品が生まれたキッカケを!
クルル : ありがとう、お言葉に甘えさせてもらうわね。
ウクラマト : さっそく、行商人らしくなってきたな。
ウクラマト : さて、トライヨラに戻って、
ふたりめの選者探しの準備をするか!
ウクラマト : ありがとよ、ふたりとも!
絶対、オヤジの跡をついで王になるからよ。
そのときは、美味いメスカルでも飲ませてくれな!
トーブリ : しかし、ゾラージャ王子は強敵ですね。
従えるほどですから、あの黄金のアルパカを。
マーブル : でもさ、外征派のみんなだって思ってるんじゃない?
拡大政策は支持してるけど、
ゾラージャ王子本人は怖くて嫌だって。
マーブル : だけど私は大好きになったよ、ウクラマト王女たちが!
だからきっとなれるよ、王様に!
トーブリ : そうかもしれませんね、ええ。
『ペルペル族を知る』
最終更新:2024年08月10日 14:41