ウクラマト : ウゥ……もう限界……
クルル : 大丈夫……じゃないわよね……。
アルフィノ : 無理もない。
私たちですら、だいぶ体力を消耗したくらいだ。
エレンヴィル : この近くに、簡易的な山小屋がある。
「翼なき姉弟の大階段」を上ってきた連中が休む場所だが、
俺たちが使っても問題ないはずだ。
アルフィノ : では、そこを目指して歩こうか。
アルフィノ : ウクラマト、もう少し頑張れるかい?
無理なようなら、ここで休憩を挟んでもいいが……
ウクラマト : ちくしょう……。
ウクラマト : 王女として、民を引っ張らなきゃいけねぇアタシが、
何度もこんな醜態を晒して……情けねぇ……!
クルル : ウクラマトさん……。
ウクラマト : ……悪い、弱音を吐いちまって。
アタシなら、もう大丈夫だ。
ゆっくりあとを追いかけるから、先に行っててくれ。
クルル : わかった。
でもこれだけは言わせて。
クルル : 王女だからって、次代の王を目指す立場だからって、
つらいことや苦しいこと全部、ひとりで抱える必要なんてない。
私たちでよければ、いつでも聞くからね。
ウクラマト : クルル……だけどよ……。
▼継承の儀を勝つためにも吐き出しておけ
ウクラマト : お前まで……。
ウクラマト : いいのか……?
ずっと誰にも知られないように、抱えてきたってのに……。
ウクラマト : 少し、時間をくれねぇか……。
聞いてもらいてぇ話があるんだ。
クルル : ええ、もちろん。
エレンヴィル : 準備ができたら、追いついてこい。
この先の山小屋で待ってる。
ウクラマト : ずっと、誰にも言えなかったんだ。
迷ったときも、苦しいときも……。
それがオヤジの名に恥じぬ生き方だと思ってたから。
ウクラマト : だけどお前らが、聞いてくれるって言うなら……
アタシ、話したい。
『みんなのために』
アルフィノ : 今日はここで休むとしよう。
アルフィノ : 先を急ぎたくなる気持ちもわかるが、
過酷な船旅で疲れているのは、皆同じさ。
エレンヴィル : なら、泊まる支度をしよう。
火起こしから食料の調達まで、やることは多い。
分担して取りかかるぞ。
アリゼー : 気になってたんだけど……
ウクラマトはどういう経緯で連王の養子に?
ウクラマト : 小さかったころのことだから、全然覚えてねぇんだ。
物心ついたときにはもう、連王宮で暮らしててさ。
ウクラマト : ただ、生まれはイクブラーシャ……
ヤクテル樹海にあるシュバラール族の集落だって聞いてる。
一度も訪ねたことはねぇんだけどな。
ウクラマト : アタシにとっちゃ、親はオヤジただひとりだけだしよ。
クルル : その気持ち、わかるわ。
私も本当の両親のことは覚えてないから。
クルル : 知りたいと思ってたころもあったけれど、
いつからか、そんな気持ちも忘れちゃった。
私には、ガラフおじいちゃんがいてくれたし。
ウクラマト : へぇー!
クルルも、アタシと似たような境遇だったんだな。
ウクラマト : オヤジは、アタシやコーナ兄さんを実の子みたいに愛してくれた。
ゾラージャ兄さんっていう、血の繋がった子どももいたのに……。
ウクラマト : 昔、アタシが獣の棲む森に入りこんじまったときも、
オヤジが真っ先に探しにきてくれてさ。
ウクラマト : ビビって泣いてるアタシのことを、叱ったってよかったんだ。
なのに武のオヤジときたら、
「よく生きてたな」なんて褒めるんだぜ?
ウクラマト : まあ、結局そのあと、
今は眠ってる理のオヤジに説教されたけどな!
森の危険性について、何時間も延々と……。
ウクラマト : 普段は優しいオヤジだけど、鍛錬のときは厳しくてさぁ……。
今思えば、アタシが王女として立派に生きていけるように、
本気で向き合ってくれてたんだよな。
ウクラマト : なのに、アタシは全然その期待に応えられてねぇ……。
ウクラマト : 自分の国なのに、知らねぇことばっかりだしよ……。
アルパカのことだって、イヒーハナ祭のことだって、
何ひとつ知らなかった!
ウクラマト : たいした経験もないくせに、トライヨラの中で生きてるだけで、
トラル大陸のことをわかった気になってたんだ!
ウクラマト : アタシには、コーナ兄さんのような知恵も、
ゾラージャ兄さんのような力もない。
虚勢を張っているだけで、王女として未熟だ……。
▼何のために王を目指している?
ウクラマト : そんなの、この国のみんなのために決まってるだろ。
オヤジが作った平和なトライヨラを護りたい。
だからアタシは、王に……。
ウクラマト : そう、か……。
そうなんだよな……。
ウクラマト : 王を目指す気持ちに、兄さんたちは関係ないんだ。
ウクラマト : アタシが頑張る理由は、最初から、
「みんなのため」だったんだから……!
クルル : 自分で言ってたでしょう?
「知る」ってことが大事だって……。
クルル : 聞いて、感じて、考えて……
そうして積み重ねていけば、明日のあなたは今日のあなたより、
理想に近づけているんじゃないかしら。
ウクラマト : みんな、わりぃ。
情けねぇところを見せちまったな。
ウクラマト : トライヨラの王女だとかって、虚勢を張るのはもうやめだ!
知らねぇことだらけなら、これからひとつずつ知っていく!
ウクラマト : それから、もっと好きになるんだ。
アタシが護りたいこの国や、みんなのことを!
ウクラマト : アタシはアタシらしく、この路(みち)を突き進んでいくぜ!!
ウクラマト : そんで、絶対に黄金郷を見つけてやるんだ!
クルルのじいちゃんのことを知るためにもな!
クルル : ありがとう、ウクラマトさん。
でも、おじいちゃんのことまで背負わなくていいのよ。
クルル : ガラフ・バルデシオンは、
未知の危機から人々を救うために、活動していた人……。
クルル : その孫娘として、誰かを傷つけたり、
つらい目に遭わせたりしてまで調査を進めたいわけじゃないの。
クルル : 一緒に進みましょう、できれば楽しみながら!
みんなで思いきりやって、気持ちよく勝つの。
そのために、私も全力で手を貸すわ!
アルフィノ : ああ、そうだね。
我々は同じ路を進む仲間だ。
皆で力を合わせて、黄金郷へとたどり着こう!
ウクラマト : お前ら……ありがとよ!
頼りにしてるからな!
一方 第二王子コーナ陣営――
サンクレッド : 何やら盛り上がってるみたいだが、
兄として妹にひと声かけなくていいのか?
コーナ : その必要はありませんよ。
コーナ : おふたりこそ、よろしいのですか?
ラマチに協力している方々は、お仲間なのでしょう。
だというのに、敵対するような状況になってしまって。
サンクレッド : 俺たちはお前に協力しちゃいるが、
あいつらと敵対してるつもりはないさ。
サンクレッド : 無論、お前を王にするために必要なら、
正々堂々やり合ってやるがな。
ウリエンジェ : 何のしがらみもなく、彼らと競い合う機会など、
これまでありませんでしたから。
少しばかり、私の心も躍っているようです。
コーナ : それにしても、魔法大学の首席卒業者や、
バルデシオン委員会の代表までが、ラマチに協力しているとは。
厄介な方々が現れたものです。
コーナ : 加えて、あの冒険者……
あなた方の言うとおりの人物ならば、
手ごわいどころの話ではありません。
コーナ : だからと言って、
継承の儀を諦めるつもりは毛頭ありませんが。
コーナ : オルコ・パチャへ行って、あらためて気づきました。
アルパカ頼りの物流では、大嵐などの天災で容易に寸断され、
民の暮らしが危険に晒されてしまう。
コーナ : だから、僕がシャーレアンで学んだ技術を活かして、
もっと豊かに、安全な生活を実現しなければならない。
コーナ : この国は……もっと変えていける。
僕が、やってみせますよ。
サンクレッド : ……ま、今はそれでいいさ。
サンクレッド : この旅は、お前にいろいろなものを、
聞いて、感じて、考えさせるだろうからな。
サンクレッド : ところで、俺はこの継承の儀で引っかかってることがある。
黄金郷に至るための条件について、な。
サンクレッド : 扉にかけられた封印を解いて王となるのは、
7つの試練を超えた者じゃあない。
ウリエンジェ : 勝者は、7つの秘石を手に入れた者……
コーナ : ええ。
おそらく、この先はもっと荒れるでしょうね。
一方 第一王子ゾラージャ陣営――
サレージャ : ほかの皆さんはまだ到着しておらぬようですな。
サレージャ : 手練れの協力者を連れていても、コーナ様とウクラマト様では、
ゾラージャ様には一歩及びますまい。
サレージャ : なぜならあなた様こそ、
双頭の血を引く唯一無二の存在、奇跡の子!
サレージャ : 連王の座を継ぐために生まれてきたと言っても、
過言ではありません!
ゾラージャ : そのような肩書に、意味などない。
サレージャ : そういえば……
継承の儀に黄金郷が関係するという噂を聞いてから、
グルージャジャ様に近しい者を、探ってみたのですがね。
サレージャ : 彼らは、こんなことを口にしていたのです。
サレージャ : 黄金郷に至ることができた者は、
未来を変えるほどの力を得られるらしい、と……。
サレージャ : 本当にそんな力があるなら、ぜひとも私もあやかりたいもの。
サレージャ : ですから、そろそろ動こうかと。
利用価値があると示せなければ、放り出されてしまいますから。
サレージャ : 先に確認しておきますが、私の策が誰に向こうと、
あなた様を王にするためならば、問題ありませんな?
ゾラージャ : 戦では、誰もが平等に血を流しうる。
王族とて例外ではない。
ゾラージャ : 故に、人は戦の愚かさを知ることができるのだ。
しばらく前 バクージャジャ陣営――
戦のバクージャジャ : 少しは楽しませてくれるかと思ったが、
所詮、ただのでくの坊だったな。
魔のバクージャジャ : メスネコちゃんは、あのあとどうなっただろうねェ。
戦のバクージャジャ : 簡単に死なれちゃつまらねェが……
それならそれで、まだ遊び相手はふたりもいる。
フビゴ族の剣勇士 : お頭は、継承の儀に勝って王になったら、
どんな国にしたいとか考えてるんで?
戦のバクージャジャ : んなこと、オレサマにはどうでもいい。
魔のバクージャジャ : オイラたちはただ、
双頭こそが優れた種だって、証明するだけさ。
戦のバクージャジャ : そうなれば、父上と母上は喜ぶだろうぜ。
魔のバクージャジャ : うん。
それにオイラたちが王サマになれば、劣等種どもを追い出して、
血族みんなでトライヨラで暮らすことができる。
戦のバクージャジャ : それ最高じゃねェか。
さっさとあんな辛気臭ぇ森から出してやらねェとな!
戦のバクージャジャ : そうと決まれば、出発だ!
先行して調子に乗ってるヒトツアタマの王子サマに、
ここらで、種の違いをわからせてやるぜェ!
フビゴ族の槍勇士 : お、お待ちくだせぇ……!
戦のバクージャジャ : ひとり足りねェと思ったら……どこで道草食ってやがった。
フビゴ族の槍勇士 : 船から落ちたときは死を覚悟しやしたが、
なんとかここまで……。
フビゴ族の槍勇士 : でも、ちょっと腕をやっちまいやしてね。
少しばかり、治療と休息を……。
魔のバクージャジャ : 従者ごときが、オイラたちの足を引っ張る気?
ついてこられないなら、置いていくだけだよ。
戦のバクージャジャ : わりィな、弟がこう言ってるんだ。
獣の餌になりたくなけりゃ、
足がちぎれてでも必死についてこいや。
フビゴ族の槍勇士 : そんな……俺は「双血の教え」を……
祝福の兄弟を信じて、必死についてきたんですよ!
フビゴ族の槍勇士 : まって、頼みます……置いていかないで……!
『みんなのために』
最終更新:2024年08月12日 18:59