アルフィノ : ときに、ユルス殿。
幼いときにこの公園に遊びにきていたということは、
君はガレマルドで生まれ育ったのかい?
ユルス : ……ユルスでいい。
軍属でもないお前に「殿」なんて言われると、
かえってからかわれてる気分になるからな。
ユルス : お前の言うとおり、俺は帝都出身だ。
父が若いころに功績を立てて、街の片隅に土地をもらった……
そこで家族そろって暮らしてきたんだ。
アリゼー : ガレマルドは、どんな街だったの……?
ユルス : ……ガレアン人の誇りだった。
ユルス : この土地の冬は長くて厳しい。
そんな中で暮らしていくために造り上げられた帝都は、
強くて、とてもあたたかかった。
ユルス : 息まで凍てつくような日でも、
家に入ればコートなんていらないんだ。
ユルス : あたたかい食事と飲み物、甘い菓子をつまみながらの団欒……
そういうのが、どこの家にもあった。
親類だけじゃなく、友人や同僚も同じように迎えたんだ。
ユルス : 通りを歩いていても、窓明かりや扉が開くのを見るたびに、
自分が帰る場所のこと……その温度や匂いを思い出すから、
寒くはならない。
ユルス : そうしているうちに、短い夏が来るんだ。
今は氷に覆われてる大地が、青々とした草原になる。
ユルス : とても気持ちがいいんだ……。
高い建物のさらに上、遥かな空から日差しと風が注いでいた。
ユルス : ……あの帝都を取り戻すためには、
俺たちでテロフォロイを打倒する必要がある。
ユルス : そのために辛抱するんだ……何だって……。
『あたたかな日々は遠く』
アリゼー : もちろん、理不尽な暴力とか、
誰かを虐げるための武力には賛成しないわよ。
アリゼー : でも、私たちは、
本当に大切なもののために命を懸けた人たちを……
彼らの戦いを、愚かだったなんて思ってない。
アリゼー : そして自分も、叶えたい未来のために戦いたがってる。
これは必ずしも剣や魔法を振るうってことじゃなくて……
ええと……そうね……。
アルフィノ : かけがえのないものを、大切にして生きること……かな?
アリゼー : ……ええ、きっとそうだわ。
アリゼー : アルフィノが世界を良くしたいって想いとともに生きるなら、
武器を置いたり、置いてもらえるように努力すると思う。
アリゼー : けど、今テロフォロイを追っているみたいに、
力を手に、血を流しながら進むこともあるはずよ。
アリゼー : どっちも間違いなく、アルフィノの戦いだわ。
アルフィノ : ……戦い抜けるだろうか、私に。
アリゼー : できないとか、愚かだとか、意味がないとか、
たくさん否定されるでしょうね。
アリゼー : そういう言葉って強くて、
誰かが出した答えに「違う」って言った人の方が、
真理に近く見えちゃうものよ。
アリゼー : なのに掲げたものを肯定し続けてきた兄のこと、
私は、強いなって思ってたわよ。
アリゼー : だから貫けばいいんじゃない?
また変な方にズレはじめたら、
今度は私が、ブン殴って目を覚まさせてあげるわ。
アルフィノ : ……ありがとう、アリゼー。
『かけがえのないもの』
クイントゥス : ……ヴァリス陛下、あなたもさぞ口惜しいでしょうな。
クイントゥス : ともに国父のもとで駆け、
辺境で身を縮めていた我らが覇者となる夢を見た。
クイントゥス : 民のため、ただただ強い帝国であらんとした。
クイントゥス : しかし……我らはもはや、亡霊らしい……。
クイントゥス : 赤き鎖は、縛るや、繋ぐや……。
『かけがえのないもの』
ゼノス・イェー・ガルヴァス : お前は、すでに狩ったことのある獲物に興味があるか?
ゼノス・イェー・ガルヴァス : ……ないだろう。
精々、毛皮や肉ほしさに、淡々と屠るだけだ。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 俺に対しても同じこと。
あの庭園で勝敗を決したときから、
取るに足らぬものと感じているのだろう?
ゼノス・イェー・ガルヴァス : それは構わぬ。
しかし、お前に気がなければ、
前回を超える一戦など、到底果たせまい……。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 俺は牙を研ぐと同時に、
再びお前を「その気」にさせる必要があったのだ。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 英雄……。
それは、絶望と悲嘆が渦巻く場所に現れ、
命を賭して戦う者だという。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : ゆえにあれこれと壊してみたのだが……どうだ?
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 強さというものは、魂に宿るのか、肉体に宿るのか……
それを問う機会を、お前にも贈ろう。
アリゼー : おかえりなさい!
急にいなくなって、みんな心配してたのよ。
グ・ラハ・ティア : とりあえず、無事でよかった。
何かあったのか?
アリゼー : どうしたの……?
グ・ラハ・ティア : …………あんた、誰だ?
▼ふたりから離れろ……!
ファダニエル : アニマの力で集めたエーテルが、じき必要量に達します。
そうすれば、やっと幕開けとなる……
ファダニエル : 最古で最強の蛮神を使った、終末の災厄がッ!
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 強き神を喰らって、お前の仲間も、世界も、
すべてを引き裂こう……。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 今度こそ、殺したいほど、俺を憎めよ。
『寒夜のこと』
赤き月ダラガブに神が封じられるより 遥か昔――
白き月にもまた
星の意思になるはずだった神が封じられた
古き人の魂を呑んだその神は 今なお
完全な形になる日を夢見て眠っている
どこまでも荒涼とした光景は
揺り籠と言うよりも 墓碑のない墓場のようで
聞こえるはずのない 嘆きの声と祈りの歌が
青き星に昇っていく気がしたものだ
『月という檻』
想いを囁く幻影 : 終末が振りまいた「絶望」というものは、
あまりに理不尽だった。
唐突だった……乱暴だった……。
想いを囁く幻影 : あんなものが在ってはならない。
だから私たちは、命を捧げてゾディアークを創ったのだ。
祈りを囁く幻影 : ゾディアークが……私たちが世界を救う……。
願いを囁く幻影 : 取り戻すのだ、楽園を……。
憂いを囁く幻影 : 星と愛しあっていた、あのころを……。
誓いを囁く幻影 : そして人は再び、星の意志となる……。
想いを囁く幻影 : 命を紡ぎ、天地を満たし、
一切の絶望なき世を創るだろう……。
???? : やあやあ。
盛り上がっているところ悪いんだけど、
ちょっとどいてくれるかな?
懐かしい雰囲気の幻影 : ……ああ、やっぱりアゼムの色だ。
懐かしい雰囲気の幻影 : その魂を持つ、けれどもアゼムではないキミがここにいる。
いることを認められている。
懐かしい雰囲気の幻影 : うん、そっか……エメトセルクは託せたんだね。
懐かしい雰囲気の幻影 : おや、どうしたんだい?
ワタシ、驚かれるようなことをしたかな。
▼もしかして、ヒュトロダエウス……?
ヒュトロダエウス : いかにも、ヒュトロダエウスだけど……
どうしてキミが知ってるの?
ヒュトロダエウス : エメトセルクがワタシの幻影を創った……
それも、アーモロートごと……。
ヒュトロダエウス : フフ……エメトセルクがねぇ……フフフ……。
ヒュトロダエウス : でも本当に、ずいぶん時が経ったんだね。
彼が、失くすことを、そんな風に悼むようになるなんて。
ヒュトロダエウス : 残念ながら、ワタシはキミが出会った幻影とは別物だよ。
別物というか……本物(オリジナル)というか……。
ヒュトロダエウス : ゾディアークを成す、贄となった魂のひとつなのさ。
ヒュトロダエウス : 「ワタシたち」は、
ハイデリンに封印されるまでのことは、
しっかり把握できているんだ。
ヒュトロダエウス : だから、自分たちを復活させる計画があったのは知ってるし、
ハイデリンによってそれが阻止され、
世界とゾディアークが分かたれたことも理解してる。
ヒュトロダエウス : そのあとのことは、夢うつつだったんだけど……
うん、おかげではっきりした。
ヒュトロダエウス : キミたちが、ゾディアークやあの星を、
どこに導いていくのかはわからない。
ヒュトロダエウス : ……でも、ワタシは信じるよ。
エメトセルクと出会って、そしてここにいるキミを。
ヒュトロダエウス : だからキミも……キミを信じて、進むといい。
ヒュトロダエウス : おや、「剣」がひとつ壊されたね。
近くにいるのは……ああ、この色だと、今のファダニエルかな。
ヒュトロダエウス : もう片方は誰だかわからないけれど……
なんだかすごいのが来たみたいだ。
ヒュトロダエウス : 急いでいたのに、ごめんね。
お詫びに、残りの「剣」にたかっている思念は、
ワタシがなだめておくよ。
ヒュトロダエウス : キミは、最後の「剣」に向かうといい。
ヒュトロダエウス : では、良い結末を。
懐かしく、新しいキミ…………
『泡沫は嘆きて』
懐かしい雰囲気の青年 : そう、信じて前に進むんだ。
その魂は、それでこそ輝くというものさ。
懐かしい雰囲気の青年 : キミが望んでくれた結末とは、違うのだろうけど……
これはこれで、ワタシたちに似合っているんじゃないかな。
懐かしい雰囲気の青年 : キミも少し、そう思ったんじゃない?
ねえ、ハーデス……。
『星を救った英雄』
ゼノスらしき声 : ……いいや、違う。
今のお前と戦ったところで、俺の望むすべては手に入らない。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 新たな獣が、お前の縄張りに踏み込もうとしているのだろう。
その目も、耳も、牙も、もはやこの身に向けられてはいまい。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : また、探さねば……
かつて神龍にそうしたように、お前が闘志を注ぐものを。
ゼノス・イェー・ガルヴァス : 古き神などというものも、期待外れだった。
必要なのは、さらなる悪……さらなる絶望か……?
▼絶望でどうにかできると思うな
『星を救った英雄』
最終更新:2023年10月06日 21:36