彼らを心より愛していると、胸を張って言えるのだから

発言者:スィリオス

己の真実の覇道を取り戻したスィリオスの限りなき祈りであり、今はもうこの世にいない大切な人達へ送る誓いの言葉。

本来、スィリオス……聖王の戒律は死した義者を覚える必要はない。
あくまでかの戒律は『聖王領(ワフマン・ヤシュト)に生きる全義者(アシャワン)を記憶する』だけで想像を絶するという言葉さえ相応しくない負担が掛かり、そこに死した義者の記憶まで覚える等自殺行為で義者の『黒を討つ』という正義に基づけばスィリオスのやっている事は義者の法から確かに逸脱をしているだろう。

「アータル、ロスタム、ラシュヌ、エラム、イスファン、ザイード、アズライール」

だが、スィリオスは『恥知らず』だからそうしたのではない。
何故なら彼らはもうこの世にはいなくても、スィリオスと夢を同じくした同志たちである。

その喪失に執着していたことを、かつての彼は弱さと断じてしまった。
終わらぬ闘争が吹き荒れる非情な世界で過去に囚われる己の無様を恥じて嘆き、無慙無愧となれば痛みは消えるだろう……

「ラヴァン、ジャイラル、カユーマルス、ドゥルグ、ブルハン、クオレイン」

忘れられない、忘れられるものか。
絶望にのた打ち回っていた暗闇の中でさえ、彼らの記憶だけはどうしても消せなかった。

何故なら――彼らと共に誰も泣かずに済む世界を創りたいと、希望を胸に走ったあの日々は紛れもなく輝けるもの。
死者を済んだ話と割り切れず、悲劇に大小を設けて取り捌けない凡庸さが、たとえどれほどの遠回りを課すとしても無駄ではない。
今、スィリオスが成そうとする物がどのような結果を辿るとしても……無意味でも――まして無価値な事だけは決してない。

だから、今は無慙無愧を願わない。彼らを捨てられなかったこと。些細な思い出の一欠片さえ手放せない在り方が、誇らしく思える。

「クイン、妻よ――」

彼らを心より愛していると、胸を張って言えるのだから。

「私は鈍間(のろま)でくだらん男だ。何一つとして特別な力は持たぬが、それでいい

そうでなければ成せぬことがあるとスィリオスは信じている。
彼の愚かしいとさえ言える情の顕れが、ここに奇跡を紡ぎ始めた。


  • やはり名前挙げてる連中は、義者からズレたモノなのかな? -- 名無しさん (2022-07-28 22:46:28)
  • 普通に全員分け隔てなくだと思うけどな。宇宙を身体とする覇道神となれる器だもの。 -- 名無しさん (2022-07-29 02:18:46)
  • 死んだ旧クイン自体も、マグサリオン(善)は愛すけどフレデリカ(悪)はこの身を持って殺す、っていう典型的な義者やからズレたものとかではないやろうね。 -- 名無しさん (2022-07-30 11:57:32)
  • スィリオスがフレデリカを認知しなかったのは悪だからとか無慙無愧ごっこがしたいからじゃなくて、妻の決意を真我に踊らされただけの愚行に貶めたくないと無意識で考えていたからかな -- 名無しさん (2022-07-30 14:47:10)
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最終更新:2022年07月30日 14:47
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