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悪龍窟秘譚(工事中)
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悪龍窟秘譚
山本周五郎
山本周五郎
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)天目山《てんもくざん》
(例)天目山《てんもくざん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)児|狗真《くしん》
(例)児|狗真《くしん》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定]
(数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1-92-56]
(数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1-92-56]
[#3字下げ]天目山《てんもくざん》の落武者[#「天目山の落武者」は中見出し]
四人の鎧武者《よろいむしゃ》が、甲斐国《かいのくに》天目山の峰つづきを、八岳《やつがたけ》へ向って逃げていた。
天正十年三月二十日のことである。
天正十年三月二十日のことである。
たつき21検査
たつき21完成
亀ヶ谷という所までくると、二十騎あまりの追手が、蹄の音を地に轟かせて追いついてきた。すでにあたりは黄昏のいろが濃かった。「与四郎、貢蔵、待て!」
落武者四名のうち老武者が、そう呼んで足をとめた。はっと振返った若武者二名。老武者は抱えていた秘物二巻を両名にわたして、「これを守護して、目的の御場所へまいらせよ、金太とは追手を防いでここに斬死する、早く行け!」「はっ」秘物二巻をうけとった二人は、去ろうとしたが老武者と朋友四方太の顔を見まもって、これが今生の別れかと思うと頓には去り難いようすだった。「行け、遅れては追手が近づく、行け、ええ早うゆけと申すに!」
よもた
きりじに
ほうゆう
とみ
はよ
ふる
かつひめおんみのうえ
悪龍窟秘譚
「しからば」与区部が涙を持っていった。「これにてご免」「御武運を」と貢蔵も声を顕わせた。「褐姫の御身上、頼んだぞ!」老武士の声も涙にしめっていた。与四郎、貢蔵の二人は、秘物を抱えて西に走った。「四方太、近づいたようだな」「先頭が見えます」四方太は大太刀をひき抜いた。間募集要ら「足場にきをつけい」
の「老武者は帯刀を抜きながら注意をした。そこへ林草をそよがせて、追手の二十騎が殺到してきた。夏
はいい人「甲斐の党の侍大将武田五左衛門これにあり、雑兵ばらは退け、名ある者と勝負しょうぞ!」老武者は立はだかって叫んだ。「我こそは筑前の家人、佐田大隅と申す、見参!」
先頭の武者が叫び進んだ。国人です。「四方太、追わすな」
せんじんだんがいーM「はっ!」一方は高い巌、一方は千切の断崖だ。亀ケ谷の瞼を通ずる五尺余りの桟
たち
おおすみ
oki
いわ」?________________
落武者四名のうち老武者が、そう呼んで足をとめた。はっと振返った若武者二名。老武者は抱えていた秘物二巻を両名にわたして、「これを守護して、目的の御場所へまいらせよ、金太とは追手を防いでここに斬死する、早く行け!」「はっ」秘物二巻をうけとった二人は、去ろうとしたが老武者と朋友四方太の顔を見まもって、これが今生の別れかと思うと頓には去り難いようすだった。「行け、遅れては追手が近づく、行け、ええ早うゆけと申すに!」
よもた
きりじに
ほうゆう
とみ
はよ
ふる
かつひめおんみのうえ
悪龍窟秘譚
「しからば」与区部が涙を持っていった。「これにてご免」「御武運を」と貢蔵も声を顕わせた。「褐姫の御身上、頼んだぞ!」老武士の声も涙にしめっていた。与四郎、貢蔵の二人は、秘物を抱えて西に走った。「四方太、近づいたようだな」「先頭が見えます」四方太は大太刀をひき抜いた。間募集要ら「足場にきをつけい」
の「老武者は帯刀を抜きながら注意をした。そこへ林草をそよがせて、追手の二十騎が殺到してきた。夏
はいい人「甲斐の党の侍大将武田五左衛門これにあり、雑兵ばらは退け、名ある者と勝負しょうぞ!」老武者は立はだかって叫んだ。「我こそは筑前の家人、佐田大隅と申す、見参!」
先頭の武者が叫び進んだ。国人です。「四方太、追わすな」
せんじんだんがいーM「はっ!」一方は高い巌、一方は千切の断崖だ。亀ケ谷の瞼を通ずる五尺余りの桟
たち
おおすみ
oki
いわ」?________________
やり一
ちふぶき一
たどざか
さんれい
臆病一番首
|道にたって、五左衛門と四方太の両名が必死の陣を構えた。すい武気いて
「かかれ!」佐田大隅は、五左衛門に槍をつけながら、四方太へ部下をかからせた。「こい、地獄の道はここだぞ」四方太も詰よった。
たちまち、横道には血吹雪がとんだ。-この間に二人の落武者は足にまかせて逃げた。夜のうちに多度坂を越し、米山をぬけ、平戸をとおり、朝まだきねぶか平まできた。
90員)「おお八岳がみえた」貢蔵が叫んで指さす方に、山嶺を暁のいろに染めた八岳がみえていた。頭
を撃ーー「おお」与四郎は両手をあげて叫んだ。「八岳だ、あの下に武田家の血脈を継ぎ、信玄公の御遺業を回復すべき御方がおわすのだ、急ごう!」(
海「行こう!」二人は秘物をしかと抱えて、ふたたび走りだした。しかしものの半里も行ったかと思うころ、遥かに自分達を追ってくる蹄の音を聞いた。賃類、「追手だ」足をとめてみると、まさに追手の者七騎あまり、馬をあおって追ってくる。「だいぶ減ったな、二十騎はたしかにいた、武田殿と四方太がよく闘ったと見え
はる」
さいご
ひきう
?龍窟秘譚
る」与四郎はそう呟きながら、「貢蔵、最期の一人となるとも、秘物を褐姫に伝えて、武田家再興を謀るべしとはかねての定めだ、ここは拙者が踏とどまって追手を防ぐから、これを持って逃げてくれ」
そういって秘物をわたした。危急の場合、辞退している暇などはないから、貢蔵はそれを受とった。「よし、たしかに引受けた、後を頼む」
の
が
、「待て」与四郎は呼とめた。
みよしただかってほしなぎだゅう「この先の大仏と申す村に、三好忠勝、保科義太夫という二郷士がある、いずれも武田家恩顧の家柄だから、これへいって助力を乞うがよい」を開
設い。「わかった、ではさらばだ」貢蔵はいいすてるとともに走りだした。ゴ、、-与四郎は刀を抜いて道のまん中に踏止まった。りゅうこ)
ス
ちふぶき一
たどざか
さんれい
臆病一番首
|道にたって、五左衛門と四方太の両名が必死の陣を構えた。すい武気いて
「かかれ!」佐田大隅は、五左衛門に槍をつけながら、四方太へ部下をかからせた。「こい、地獄の道はここだぞ」四方太も詰よった。
たちまち、横道には血吹雪がとんだ。-この間に二人の落武者は足にまかせて逃げた。夜のうちに多度坂を越し、米山をぬけ、平戸をとおり、朝まだきねぶか平まできた。
90員)「おお八岳がみえた」貢蔵が叫んで指さす方に、山嶺を暁のいろに染めた八岳がみえていた。頭
を撃ーー「おお」与四郎は両手をあげて叫んだ。「八岳だ、あの下に武田家の血脈を継ぎ、信玄公の御遺業を回復すべき御方がおわすのだ、急ごう!」(
海「行こう!」二人は秘物をしかと抱えて、ふたたび走りだした。しかしものの半里も行ったかと思うころ、遥かに自分達を追ってくる蹄の音を聞いた。賃類、「追手だ」足をとめてみると、まさに追手の者七騎あまり、馬をあおって追ってくる。「だいぶ減ったな、二十騎はたしかにいた、武田殿と四方太がよく闘ったと見え
はる」
さいご
ひきう
?龍窟秘譚
る」与四郎はそう呟きながら、「貢蔵、最期の一人となるとも、秘物を褐姫に伝えて、武田家再興を謀るべしとはかねての定めだ、ここは拙者が踏とどまって追手を防ぐから、これを持って逃げてくれ」
そういって秘物をわたした。危急の場合、辞退している暇などはないから、貢蔵はそれを受とった。「よし、たしかに引受けた、後を頼む」
の
が
、「待て」与四郎は呼とめた。
みよしただかってほしなぎだゅう「この先の大仏と申す村に、三好忠勝、保科義太夫という二郷士がある、いずれも武田家恩顧の家柄だから、これへいって助力を乞うがよい」を開
設い。「わかった、ではさらばだ」貢蔵はいいすてるとともに走りだした。ゴ、、-与四郎は刀を抜いて道のまん中に踏止まった。りゅうこ)
ス
[#3字下げ]龍虎《りゅうこ》二少傑[#「龍虎二少傑」は中見出し]
夜はすっかり明けた。
甲斐国八岳の高原、大仏という僻村《へきそん》の後丘を、短袴《たんこ》に筒袖《つつそで》という凜々《りり》しい姿で、
甲斐国八岳の高原、大仏という僻村《へきそん》の後丘を、短袴《たんこ》に筒袖《つつそで》という凜々《りり》しい姿で、
たくま
やせがた一
らいすけ
うわさ
こも
かねふさ
おうぎえとく
臆病一番首
やせがた一
らいすけ
うわさ
こも
かねふさ
おうぎえとく
臆病一番首
図二人の少年が歩いていた。「一は色浅黒く骨逞しく、一は色白で痩形、どこかに優しさのみえる少年だ。浅黒
ほしなおにゆきい方は姓を三好、名を球助と呼び、色白の少年は保科鬼之と云う、二人とも所の郷士の一粒種で、近郷きって、「あれは大仏の龍虎だ」と噂されるほど、剣をとっては無双の腕をもっていた。
それもそのはず、鬼之、珠助の二人は、かつて八岳に籠って修業をしていた剣聖、吉岡兼房に手を取って教えられ、すでに早く小太刀の奥義を会得していたのである。しかもこうしてまい朝かかさず、二人は未明に山へ登って剣道修業を怠らないのだ。「待て」ふと鬼之が足をとめた。「剣戟の音が聞える」、
す
なお「え?」いわれて珠助も耳をかたむけた。
その時である、ねぶか平の方から、全身血にまみれた一人の落武者が、鋸のようになった刀を杖に、よろめきょろめき登ってきた。「あ、あれを見ろ」と鬼之が逸早くみつけて指さした時、落武者の後二十歩ばかり離れて、二人の追手が駈けてくるのが見えた。
)「あっ!」思わず球助が叫んだ。
けんげき
のこぎり
いちはや
ふとももな
くさずり
きりはな
せつな
ほしなおにゆきい方は姓を三好、名を球助と呼び、色白の少年は保科鬼之と云う、二人とも所の郷士の一粒種で、近郷きって、「あれは大仏の龍虎だ」と噂されるほど、剣をとっては無双の腕をもっていた。
それもそのはず、鬼之、珠助の二人は、かつて八岳に籠って修業をしていた剣聖、吉岡兼房に手を取って教えられ、すでに早く小太刀の奥義を会得していたのである。しかもこうしてまい朝かかさず、二人は未明に山へ登って剣道修業を怠らないのだ。「待て」ふと鬼之が足をとめた。「剣戟の音が聞える」、
す
なお「え?」いわれて珠助も耳をかたむけた。
その時である、ねぶか平の方から、全身血にまみれた一人の落武者が、鋸のようになった刀を杖に、よろめきょろめき登ってきた。「あ、あれを見ろ」と鬼之が逸早くみつけて指さした時、落武者の後二十歩ばかり離れて、二人の追手が駈けてくるのが見えた。
)「あっ!」思わず球助が叫んだ。
けんげき
のこぎり
いちはや
ふとももな
くさずり
きりはな
せつな
- ひばらおさ
悪龍窟秘譚
「追いついた武者が、なにか嘆声で喚きながら、いきなり大太刀をふるって動つけたのだ。落武者は体をかわして、左にくぐると共によろめきでた相手の脇へ、ぐいと刀を刺とおした。とたんに残る一人が、落武者の肩へばっと斬つけた。しかし鎧にあたってはね返されたから、返しざまに太股を薙いだ。「えい、くそ!」-
台草摺はずれを見事に切放されて、がくんと横にのめりながら、落武者がいた。譜「死ね!死ねい!」相手は続けて突きよった、刹那、落武者の刀が横に走った。
血しぶきがぱっとたって、相手の武者は脾腹を押えながら、横っとびに二三間よろめきざま、叢の中へうち倒れた。「できるな!」鬼之が呻くようにいった。「行ってみよ!」珠助は走りだしながら答えた。あらいの、
鬼之と球助が駈つけてみると、落武者は全身の傷に太腿を切放され、おびただしい出血で、もうほとんど死ぬばかりだった。「気をたしかに、追手はみな斃れましたぞ、ご安心あれ!」鬼之が耳もとで叫んだ。「落武者は顔をあげた、そして静かに二人の顔を見上げながら、ようやくいった。「貴殿がたは、大仏村の仁か?」
くさむら
たお?________________
「追いついた武者が、なにか嘆声で喚きながら、いきなり大太刀をふるって動つけたのだ。落武者は体をかわして、左にくぐると共によろめきでた相手の脇へ、ぐいと刀を刺とおした。とたんに残る一人が、落武者の肩へばっと斬つけた。しかし鎧にあたってはね返されたから、返しざまに太股を薙いだ。「えい、くそ!」-
台草摺はずれを見事に切放されて、がくんと横にのめりながら、落武者がいた。譜「死ね!死ねい!」相手は続けて突きよった、刹那、落武者の刀が横に走った。
血しぶきがぱっとたって、相手の武者は脾腹を押えながら、横っとびに二三間よろめきざま、叢の中へうち倒れた。「できるな!」鬼之が呻くようにいった。「行ってみよ!」珠助は走りだしながら答えた。あらいの、
鬼之と球助が駈つけてみると、落武者は全身の傷に太腿を切放され、おびただしい出血で、もうほとんど死ぬばかりだった。「気をたしかに、追手はみな斃れましたぞ、ご安心あれ!」鬼之が耳もとで叫んだ。「落武者は顔をあげた、そして静かに二人の顔を見上げながら、ようやくいった。「貴殿がたは、大仏村の仁か?」
くさむら
たお?________________
136
すみだに一
いんせい
一「いかにも、三好、保科の党の者でござる!」
「天の助けじゃ」落武者はにっこと笑って、「三好、保科の党とあれば、定めて墨谷におわす褐姫君のこと、ご存知であろうな?」鬼之が進みでた。自
民らん「信玄公の御遺孫にて、八岳の奥、墨谷に隠棲あそばされる方でございましょ首う!」「なう
「さよう!」落武者は苦しげに、
「拙者はこの重傷、もはや一歩もかなわぬ、ここにあるこの秘物二巻、貴殿がた二臆人で、褐姫君にご伝達くだされい、武田家の秘宝でござる――」
それだけいうと、落武者はばったり倒れた。珠助は武者を抱起して、、、、「しっかりなされ!」と叫んだ、すると落武者は喘ぎながら、
おいでしょうがい「武田家再興を頼みます、勝頼公は、天目山に於て御生害あそばされましたぞ!」といい終って、絶息した。大き「なに、勝頼公御生害とな?」の
小手の「あっ!」鬼之、珠助の顔色が変った。
臆病一番首
だきおこ
あえ
かつより
むせ
?龍窟秘譚
「徳川家康の軍柏尾に迫るとは聞いていたが、まさかこうなろうとは思わなかった、天目山に於て御生害とあれば、御一族はこれで滅亡であろう」鬼之が暗然としていった。(
1)「それ故秘宝二巻を褐姫君に伝えて、武田家再興を望まれたのだな!」珠助も悲憤の涙に咽びながら答えた。鬼之は、つと手を伸ばして珠助の手を握った。。「三好!約束しよう、この秘宝二巻を褐姫に伝達することは、われ等二人だけの仕事だ、父母にもいうまい、よいか?」「よしわかった。三好、保科は武田家恩顧の家柄と知られているから、かならず近いうちに信長の手先が廻されるだろう、そうなると面倒だ、われ等はこれからすぐに支度をして、墨谷へでかけよう!」で大人観・室、
りんぜん珠助は浅黒い顔をかして叫んだ。鬼之も勇気凜然として、軍人「そうだ、褐姫君にお眼にかかって、武田家再興の謀をたてよう!」「鬼之!」のコーデ1日中、日葉「珠助!」適用条東軍、
き目で「やろうぞ!」二少年は腰の刀をさっと抜いて、氏神狗走明神の方へ、高く掲げた。
かがや
はかりごと
いぬばしり?________________
すみだに一
いんせい
一「いかにも、三好、保科の党の者でござる!」
「天の助けじゃ」落武者はにっこと笑って、「三好、保科の党とあれば、定めて墨谷におわす褐姫君のこと、ご存知であろうな?」鬼之が進みでた。自
民らん「信玄公の御遺孫にて、八岳の奥、墨谷に隠棲あそばされる方でございましょ首う!」「なう
「さよう!」落武者は苦しげに、
「拙者はこの重傷、もはや一歩もかなわぬ、ここにあるこの秘物二巻、貴殿がた二臆人で、褐姫君にご伝達くだされい、武田家の秘宝でござる――」
それだけいうと、落武者はばったり倒れた。珠助は武者を抱起して、、、、「しっかりなされ!」と叫んだ、すると落武者は喘ぎながら、
おいでしょうがい「武田家再興を頼みます、勝頼公は、天目山に於て御生害あそばされましたぞ!」といい終って、絶息した。大き「なに、勝頼公御生害とな?」の
小手の「あっ!」鬼之、珠助の顔色が変った。
臆病一番首
だきおこ
あえ
かつより
むせ
?龍窟秘譚
「徳川家康の軍柏尾に迫るとは聞いていたが、まさかこうなろうとは思わなかった、天目山に於て御生害とあれば、御一族はこれで滅亡であろう」鬼之が暗然としていった。(
1)「それ故秘宝二巻を褐姫君に伝えて、武田家再興を望まれたのだな!」珠助も悲憤の涙に咽びながら答えた。鬼之は、つと手を伸ばして珠助の手を握った。。「三好!約束しよう、この秘宝二巻を褐姫に伝達することは、われ等二人だけの仕事だ、父母にもいうまい、よいか?」「よしわかった。三好、保科は武田家恩顧の家柄と知られているから、かならず近いうちに信長の手先が廻されるだろう、そうなると面倒だ、われ等はこれからすぐに支度をして、墨谷へでかけよう!」で大人観・室、
りんぜん珠助は浅黒い顔をかして叫んだ。鬼之も勇気凜然として、軍人「そうだ、褐姫君にお眼にかかって、武田家再興の謀をたてよう!」「鬼之!」のコーデ1日中、日葉「珠助!」適用条東軍、
き目で「やろうぞ!」二少年は腰の刀をさっと抜いて、氏神狗走明神の方へ、高く掲げた。
かがや
はかりごと
いぬばしり?________________
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きょうげき」
すなわ
きょうげき」
すなわ
[#3字下げ]魔の谿谷《けいこく》[#「魔の谿谷」は中見出し]
織田信長、徳川家康二軍の挟撃にあって、武田勝頼は一族とともに天目山へ登って自刃した。時に天正十年三月、甲斐の名門武田家は、かくてついに滅亡するにいたったのである。
しかし、ここに不思議なことは、武田家に代々秘宝として伝わる軍書の紛失であった。この軍書は甲州流軍学の根源であって、天・地・人・時・空の五巻にわかれ、しかも、この五巻には隠し言葉、即ち「秘文」があって、これを判読すれば、かつ
て信玄公が諏訪湖に沈めた、「法性の兜」と黄金十万枚のはいっている石棺の沈め臆場所がわかると伝えられているのである。
軍書五巻!これこそ信長も家康も、必死になって求めていた秘宝であった。。しかし勝頼一族の自害した場所には、何一つそれらしい物は残っていなかった。それもそのはず、五巻のうち三巻は、疾くに遺孫褐姫が持って墨谷に逃れていたし、残る二巻は滅亡の日、侍臣五名に持たせて墨谷へ落してやったのである。
そしてその秘宝二巻はいまふしぎな縁で、大仏の龍虎と呼ばれる二少年の手にわたったのだ。
臆病-番首
ほっしょうかぶと
す
きこり
おもんぱ
NH
?龍窟秘譚
褐姫の隠れた墨谷。これぞ八岳七難所の一つで、ま昼といえども日光がとどかず、谷底は密林に蔽われて、暗きこと墨を流したごとし、というところから呼ばれた名だ。悪獣毒蛇が棲んで害をするから樵夫もかよわず、奥底ははかりしれぬほど深い。その墨谷の極まるところに、悪鬼洞という洞窟があって、褐姫はそこに七人の侍女と共に隠れ棲んでいると、伝えられるのである。
これは早くから武田家の永く無事でないことを察した信玄が、万一の場合を慮か「ってしたことで、もし甲府が亡びるような場合には、五巻の軍書の秘文を読み、諏
訪湖の底から「法性の兜」と共に黄金十万枚の軍資金を取だして、褐姫をもって武田家を再興させようという遠謀であったのだ。
です
(「三巻の軍書、褐姫!」
この二つを探ねあてるべく、保科鬼之、三好珠助の二人は、いよいよ墨谷に向って出発した。三月二十三日の朝――。「雨かな」「怪しい雲行だな」「すこし休もう」場
前鬼之はそういって、つかつかと傍の辻堂へ歩みよった。
くもゆき。
つじどう)?________________
しかし、ここに不思議なことは、武田家に代々秘宝として伝わる軍書の紛失であった。この軍書は甲州流軍学の根源であって、天・地・人・時・空の五巻にわかれ、しかも、この五巻には隠し言葉、即ち「秘文」があって、これを判読すれば、かつ
て信玄公が諏訪湖に沈めた、「法性の兜」と黄金十万枚のはいっている石棺の沈め臆場所がわかると伝えられているのである。
軍書五巻!これこそ信長も家康も、必死になって求めていた秘宝であった。。しかし勝頼一族の自害した場所には、何一つそれらしい物は残っていなかった。それもそのはず、五巻のうち三巻は、疾くに遺孫褐姫が持って墨谷に逃れていたし、残る二巻は滅亡の日、侍臣五名に持たせて墨谷へ落してやったのである。
そしてその秘宝二巻はいまふしぎな縁で、大仏の龍虎と呼ばれる二少年の手にわたったのだ。
臆病-番首
ほっしょうかぶと
す
きこり
おもんぱ
NH
?龍窟秘譚
褐姫の隠れた墨谷。これぞ八岳七難所の一つで、ま昼といえども日光がとどかず、谷底は密林に蔽われて、暗きこと墨を流したごとし、というところから呼ばれた名だ。悪獣毒蛇が棲んで害をするから樵夫もかよわず、奥底ははかりしれぬほど深い。その墨谷の極まるところに、悪鬼洞という洞窟があって、褐姫はそこに七人の侍女と共に隠れ棲んでいると、伝えられるのである。
これは早くから武田家の永く無事でないことを察した信玄が、万一の場合を慮か「ってしたことで、もし甲府が亡びるような場合には、五巻の軍書の秘文を読み、諏
訪湖の底から「法性の兜」と共に黄金十万枚の軍資金を取だして、褐姫をもって武田家を再興させようという遠謀であったのだ。
です
(「三巻の軍書、褐姫!」
この二つを探ねあてるべく、保科鬼之、三好珠助の二人は、いよいよ墨谷に向って出発した。三月二十三日の朝――。「雨かな」「怪しい雲行だな」「すこし休もう」場
前鬼之はそういって、つかつかと傍の辻堂へ歩みよった。
くもゆき。
つじどう)?________________
なかやっ
ふり
臆病一番首
みつえだ
ふり
臆病一番首
みつえだ
朝、大仏をたって北へ、三岐を越し、中ノ谷をぬけて、墨谷へはいる第一の難所、扇返しの峠へさしかかった。朝はからりと晴れていたのがいつしか曇って、この峠下にさしかかると、いまにも降だしそうな空模様になった。「喉が渇いた、ちょっとしめしてくる」
う
するにい「珠助は辻堂へ腰を下ろすとすぐ、そういって立っていった。「遠くへ行くな」
は、三人
回め「うん!」
辻堂の後ろに崖があるので、多分清水が湧いているだろうと、球助はその方へまわって行った。
鬼之は辻堂の縁に腰を下ろして待つことしばらく、まもなくぽつんと雨が落ちてきた。それが見るまに烈しくなって、たちまちのうちにざあっと本降りになってきた。「どうしたのだ、濡れるだろうに」
は、鬼之は球助の事が気がかりになってきたので、立上って裏手へ廻ってみた。しかしお堂の裏はすぐ崖で、球助の姿は見えない。「三好―!」鬼之は大声に呼んだ。
国道
3日13
「おーい、三好」しかし返事はなかった、雨はざっざと降りつのるばかりである。どうしたんだろう、と思ってもう一ど呼ぼうとした時、そばの藪の中でずるずると、不気味な物の動く気配がした。そしてぷんと青臭い、胸の悪くなるような匂いが、鼻いっぱいに襲いかかった。一年の変「うむ、臭い」
無職できる(EV)呻いて身を引く、とたんに藪の中から、なんとも得体の知れぬ、ひと抱えもある丸太のようなものが、にゅっ!と鬼之の面前に首を突だした。「やっ!」鬼之は二三間後ろへ跳んで身構えた。
」(雨は滝のように降る。球助はどうした。魔の谿谷、悪鬼洞の怪はいよいよ展開する。またのか、はたし
ていしんでいてもらう
う
するにい「珠助は辻堂へ腰を下ろすとすぐ、そういって立っていった。「遠くへ行くな」
は、三人
回め「うん!」
辻堂の後ろに崖があるので、多分清水が湧いているだろうと、球助はその方へまわって行った。
鬼之は辻堂の縁に腰を下ろして待つことしばらく、まもなくぽつんと雨が落ちてきた。それが見るまに烈しくなって、たちまちのうちにざあっと本降りになってきた。「どうしたのだ、濡れるだろうに」
は、鬼之は球助の事が気がかりになってきたので、立上って裏手へ廻ってみた。しかしお堂の裏はすぐ崖で、球助の姿は見えない。「三好―!」鬼之は大声に呼んだ。
国道
3日13
「おーい、三好」しかし返事はなかった、雨はざっざと降りつのるばかりである。どうしたんだろう、と思ってもう一ど呼ぼうとした時、そばの藪の中でずるずると、不気味な物の動く気配がした。そしてぷんと青臭い、胸の悪くなるような匂いが、鼻いっぱいに襲いかかった。一年の変「うむ、臭い」
無職できる(EV)呻いて身を引く、とたんに藪の中から、なんとも得体の知れぬ、ひと抱えもある丸太のようなものが、にゅっ!と鬼之の面前に首を突だした。「やっ!」鬼之は二三間後ろへ跳んで身構えた。
」(雨は滝のように降る。球助はどうした。魔の谿谷、悪鬼洞の怪はいよいよ展開する。またのか、はたし
ていしんでいてもらう
[#3字下げ]怪童児|狗真《くしん》[#「怪童児狗真」は中見出し]
っき
?龍窟秘譚
っか
?龍窟秘譚
っか
鬼之は刀の柄《つか》に手をかけて、きっと怪物に眼をやった。
よくよく見ると、藪の中から現われたのは、身丈《みのたけ》およそ八尺あまり、全身|赭黒《あかぐろ》い
よくよく見ると、藪の中から現われたのは、身丈《みのたけ》およそ八尺あまり、全身|赭黒《あかぐろ》い
、みのたけー
あかぐろ
★?________________
あかぐろ
★?________________
き
かねきよ」
とびの
むし
番
毛に蔽われた稀代の猿だ。いまでいうゴリラという奴、それを見た鬼之、「うぬ、猿か!」と喚きざま、大和包清の一刀抜くより疾く、大猿の脇下を狙ってさっと斬りつけた。」「うるる」叩いて跳退く猿、つけ入る鬼之を左に避けて、ひらり傍にさしでている松の枝にとびあがった。
「待て!」鬼之は地を蹴って、樹上の猿に突きをくれる。くるり猿は枝の上で身を首かわすと、いつか片手で搾りとっていた松葉を、ぱっと鬼之の面上へ叩きつけた。
ふいのつぶてだ、あっと顔をそむける鬼之。「うるる」呻いた猿、風のように疾く木からとびおりざまぱっと鬼之に襲いかかった。避けもどうもならぬ、万死を覚悟で鬼之は、い
つぶす「くそっ、死んでやれ!」と猿のふところへ跳こんだ。無謀な逆襲がかえって功を奏した。意表にでた相手の突撃に驚いて、ふたたび猿はさっと松の上へ逃げた。ほっとしたけれど全身ぐっしょり汗である、吉岡兼房直伝の小太刀の極意も、ゴリラ相手ではいささか拍子はずれの気味だ。「うるる、うるる!」樹上の猿は、爛々たる眼を剥いて、隙があらばとびつかんと身構えている。雨はざんざと降るし、球助の行方も気掛りだし、さすがの鬼之もた
かねきよ」
とびの
むし
番
毛に蔽われた稀代の猿だ。いまでいうゴリラという奴、それを見た鬼之、「うぬ、猿か!」と喚きざま、大和包清の一刀抜くより疾く、大猿の脇下を狙ってさっと斬りつけた。」「うるる」叩いて跳退く猿、つけ入る鬼之を左に避けて、ひらり傍にさしでている松の枝にとびあがった。
「待て!」鬼之は地を蹴って、樹上の猿に突きをくれる。くるり猿は枝の上で身を首かわすと、いつか片手で搾りとっていた松葉を、ぱっと鬼之の面上へ叩きつけた。
ふいのつぶてだ、あっと顔をそむける鬼之。「うるる」呻いた猿、風のように疾く木からとびおりざまぱっと鬼之に襲いかかった。避けもどうもならぬ、万死を覚悟で鬼之は、い
つぶす「くそっ、死んでやれ!」と猿のふところへ跳こんだ。無謀な逆襲がかえって功を奏した。意表にでた相手の突撃に驚いて、ふたたび猿はさっと松の上へ逃げた。ほっとしたけれど全身ぐっしょり汗である、吉岡兼房直伝の小太刀の極意も、ゴリラ相手ではいささか拍子はずれの気味だ。「うるる、うるる!」樹上の猿は、爛々たる眼を剥いて、隙があらばとびつかんと身構えている。雨はざんざと降るし、球助の行方も気掛りだし、さすがの鬼之もた
病
らんらん」
まなこむ
すき
ひだりひざ
めくらめっぽう|
じたじのかたちだ。片手に刀をかまえたまま、「おーい、三好!」と呼ぶ、刹那!「がっ!」咆えると飛ぶのと同時だ、大猿はびゅっと松の木から鬼之の上へ襲いかかった。(
引用しないので、「あっ」叫んで左膝をついた鬼之、包清の一刀を盲滅法につき上げながら身を伏せた。同時にふっと生温い猿の息が顔をかすめたから、「だめだ、噛まれる」と観念した。その時ふいにそばの藪の中で、「八郎、待たぬか!」と呼ぶ者があった。すると鬼之の上に襲いかかった猿が、その手をやめてひょいとうしろへ跳び退き、
もしラー「うるる、うるる」とさも口惜しそうに呻いた。鬼之はとっさにはね起きて二三間うしろへ退った。見ると藪の中に怪しげな童児が一人たっている。身にはぼろぼろの単衣を着け、髪の毛は蓬のように茫々と伸び、はだしで右手に鞭を一本持っているばかりだ。
大
人「怪我はしなかったか?」とにやにや笑いながら訊く。鬼之もしかたなく苦笑しながら刀を納めて、
下りる☆「怪我はしないが驚いた」。
?、龍窟秘譚
さが
ひとえ
よもぎ」
ぼうぼう
むち」?________________
らんらん」
まなこむ
すき
ひだりひざ
めくらめっぽう|
じたじのかたちだ。片手に刀をかまえたまま、「おーい、三好!」と呼ぶ、刹那!「がっ!」咆えると飛ぶのと同時だ、大猿はびゅっと松の木から鬼之の上へ襲いかかった。(
引用しないので、「あっ」叫んで左膝をついた鬼之、包清の一刀を盲滅法につき上げながら身を伏せた。同時にふっと生温い猿の息が顔をかすめたから、「だめだ、噛まれる」と観念した。その時ふいにそばの藪の中で、「八郎、待たぬか!」と呼ぶ者があった。すると鬼之の上に襲いかかった猿が、その手をやめてひょいとうしろへ跳び退き、
もしラー「うるる、うるる」とさも口惜しそうに呻いた。鬼之はとっさにはね起きて二三間うしろへ退った。見ると藪の中に怪しげな童児が一人たっている。身にはぼろぼろの単衣を着け、髪の毛は蓬のように茫々と伸び、はだしで右手に鞭を一本持っているばかりだ。
大
人「怪我はしなかったか?」とにやにや笑いながら訊く。鬼之もしかたなく苦笑しながら刀を納めて、
下りる☆「怪我はしないが驚いた」。
?、龍窟秘譚
さが
ひとえ
よもぎ」
ぼうぼう
むち」?________________
おれ
144
あるじ
うずくま
臆病一番首
144
あるじ
うずくま
臆病一番首
「此奴は己の命令がなければ、決して人に害をしないのだが、きょうは余程どうかしている、しかしよく無事だった。八郎と戦って怪我一つせぬとは、おそらく世に聞えた武芸者にちがいない」
というのはリスト「それほどでもないが」鬼之は操ったそうにまた苦笑した。大猿は、自分の主人が打とけているのを見て安心したか、おとなしく童児のそばに蹲っている。「そこでは雨に濡れるだろう、こっちへきて話さないか?」
で舌くよいか?」鬼之はそういって辻堂の軒下へはいる。怪童児もいわれるままに近よってきた。近くよって見ると、童児とはいっても形だけのことで、歳はもうそこそこ十五六、鬼之と同じくらいにはなっているだろう、手足の骨の逞しい、眼光の鋭い、みるからにひと癖ありげな面魂だ。「まず名乗ろう、私は大仏の者で保科鬼之という甲斐の党の者だ!」「そうか、それは意外だ」怪童児はにっこり笑って、「己はまた信玄公の七賢と呼ばれた、長谷仲林の忘れ遺児で狗真という者だ」「ではおなじ甲斐の党だな」人気もの
本「もちろんだ」
の除機「しかし、仲林どのの御子息が、どうしてこんな魔の谷の中にいられるのか?」
つらだましい
「おれ一
はせちゅうり
がたみ
にらさき」
はやぶさ」
「実は父が信玄公の御意気を蒙って、甲斐を立退く折、こを下男の左源次に預けられたのだ、左源次の親元は韮崎の猟師だったので、己はそこで成長するうち、いつか佐源次と二人で、この谷の奥にきて棲むようになったのだ」「その佐源次というのは」「去年死んでしまったよ。いまではこの八郎と、それから五郎という隼が一羽、このふたつを友達に、山野をかけめぐって体を鍛えているのだ」譚「そうか、それで仔細は分った。それでは狗真どのに頼みがある」
「頼みとは?」型「武田家の為に、命を投出してくれぬか」武
ものが「それはまたどういう訳だ」「実は、勝頼公は天目山で御生害、徳川、織田の二軍のために、武田家は滅亡した!」「え?」驚く狗真に、鬼之はあらましの話をした。勝頼の自刃、秘物二巻の事、信玄公の遺孫褐姫の事、諏訪湖の底に沈められてある法性ノ鬼と十万枚の黄金、それから源家秘伝の白旗一流を納めた石棺のこと――。「そして、己と三好珠助の二人で、その秘物二巻を持ってこれから墨谷の奥へ、褐
?龍窟秘譚
つなげだ
ため。
『いちりゅう
おれ?________________
というのはリスト「それほどでもないが」鬼之は操ったそうにまた苦笑した。大猿は、自分の主人が打とけているのを見て安心したか、おとなしく童児のそばに蹲っている。「そこでは雨に濡れるだろう、こっちへきて話さないか?」
で舌くよいか?」鬼之はそういって辻堂の軒下へはいる。怪童児もいわれるままに近よってきた。近くよって見ると、童児とはいっても形だけのことで、歳はもうそこそこ十五六、鬼之と同じくらいにはなっているだろう、手足の骨の逞しい、眼光の鋭い、みるからにひと癖ありげな面魂だ。「まず名乗ろう、私は大仏の者で保科鬼之という甲斐の党の者だ!」「そうか、それは意外だ」怪童児はにっこり笑って、「己はまた信玄公の七賢と呼ばれた、長谷仲林の忘れ遺児で狗真という者だ」「ではおなじ甲斐の党だな」人気もの
本「もちろんだ」
の除機「しかし、仲林どのの御子息が、どうしてこんな魔の谷の中にいられるのか?」
つらだましい
「おれ一
はせちゅうり
がたみ
にらさき」
はやぶさ」
「実は父が信玄公の御意気を蒙って、甲斐を立退く折、こを下男の左源次に預けられたのだ、左源次の親元は韮崎の猟師だったので、己はそこで成長するうち、いつか佐源次と二人で、この谷の奥にきて棲むようになったのだ」「その佐源次というのは」「去年死んでしまったよ。いまではこの八郎と、それから五郎という隼が一羽、このふたつを友達に、山野をかけめぐって体を鍛えているのだ」譚「そうか、それで仔細は分った。それでは狗真どのに頼みがある」
「頼みとは?」型「武田家の為に、命を投出してくれぬか」武
ものが「それはまたどういう訳だ」「実は、勝頼公は天目山で御生害、徳川、織田の二軍のために、武田家は滅亡した!」「え?」驚く狗真に、鬼之はあらましの話をした。勝頼の自刃、秘物二巻の事、信玄公の遺孫褐姫の事、諏訪湖の底に沈められてある法性ノ鬼と十万枚の黄金、それから源家秘伝の白旗一流を納めた石棺のこと――。「そして、己と三好珠助の二人で、その秘物二巻を持ってこれから墨谷の奥へ、褐
?龍窟秘譚
つなげだ
ため。
『いちりゅう
おれ?________________
↑
姫君をたずねて行くところだったのだ!」
話を聴きおわった長谷狗真、
「よし、狗真も武田家恩顧の者だ、褐姫君をたずね出し、いかにも武田家再興のために働こう!」と語
り「やってくれるか、有難い!」
の「それにしても三好珠助どのを先に探さねばならぬが、それには己に宜い考えもあ首るから、ひと先ず己の岩屋へ行こうではないか」
そういって狗真は鬼之を促し立て、自分の岩屋へと導いていった。
鬼之、珠助の一味に加わった、信玄公七賢の一、長谷仲林の遺児、怪童狗真はどんな活躍をしようとするか、物語はもう一変転する。
話を聴きおわった長谷狗真、
「よし、狗真も武田家恩顧の者だ、褐姫君をたずね出し、いかにも武田家再興のために働こう!」と語
り「やってくれるか、有難い!」
の「それにしても三好珠助どのを先に探さねばならぬが、それには己に宜い考えもあ首るから、ひと先ず己の岩屋へ行こうではないか」
そういって狗真は鬼之を促し立て、自分の岩屋へと導いていった。
鬼之、珠助の一味に加わった、信玄公七賢の一、長谷仲林の遺児、怪童狗真はどんな活躍をしようとするか、物語はもう一変転する。
[#3字下げ]河の魔神[#「河の魔神」は中見出し]
(でき
おれ
ま
臆病一番首
すれがたみ
(
河の魔神」
電機)それにしても、珠助は何処にいるだろう。
喉の渇きを覚えて水を飲みに、辻堂の裏へ廻ったが水がない、しかし近くに流れの音がするようだから、それを頼りにして、低い崖を登り、藪を押分けていった。進むこと二三町、ふしぎゃつい十二三間先に聞えていた水の音が、幾らいっても
めのまえ
かえる
みずごけ」
同じ選きた。妙なことがあるものだと思って足を早めると、本の音はくんくん遠ざかる。「これはおかしいぞ!」と呟いて足を止めると、こんどは水の音が後に聞える、はっと思って振向くと、また水の音は反対になった。
きちねたぬき「狐か狸か悪さをするな」と呟きながら刀の柄に手をおく、とたんに眼前の叢からひょこりと異形の者が躍りだして、ぴたぴた手を拍ちながら、本替、着「わっはっは」と笑った。
身丈は三尺あまり、全身蛙のような肌で、一面にぬるぬると水苔が生えている、手足の指には壁があって、頭には鉢形に毛が生え天辺には皿のようなものがついている、正しく話に聞いた河童だ。「妖怪!」叫びざま抜討に斬った。
す「けあっ!」ひらり、もんどり打って刃を避ける、踏込んでもう一刀、しかし、河童はぬるりと潜って、「わっはっは」と笑う。珠助いまは嚇として、、、W
「己れ、咆えるな!」罵りざま、無二無三に斬こんだ。小太刀の奥義を極た剣、見叫事にすっ!と河童に届くが、厚く生えた水苔とぬめりで、刃先は空しく滑るばか
みずかき」
「てっぺん
?龍窟秘譚
かっぱ
ようかい」
ぬきうち
やいば
かっ
おの
ののし
きわめつるぎ
むな?________________
おれ
ま
臆病一番首
すれがたみ
(
河の魔神」
電機)それにしても、珠助は何処にいるだろう。
喉の渇きを覚えて水を飲みに、辻堂の裏へ廻ったが水がない、しかし近くに流れの音がするようだから、それを頼りにして、低い崖を登り、藪を押分けていった。進むこと二三町、ふしぎゃつい十二三間先に聞えていた水の音が、幾らいっても
めのまえ
かえる
みずごけ」
同じ選きた。妙なことがあるものだと思って足を早めると、本の音はくんくん遠ざかる。「これはおかしいぞ!」と呟いて足を止めると、こんどは水の音が後に聞える、はっと思って振向くと、また水の音は反対になった。
きちねたぬき「狐か狸か悪さをするな」と呟きながら刀の柄に手をおく、とたんに眼前の叢からひょこりと異形の者が躍りだして、ぴたぴた手を拍ちながら、本替、着「わっはっは」と笑った。
身丈は三尺あまり、全身蛙のような肌で、一面にぬるぬると水苔が生えている、手足の指には壁があって、頭には鉢形に毛が生え天辺には皿のようなものがついている、正しく話に聞いた河童だ。「妖怪!」叫びざま抜討に斬った。
す「けあっ!」ひらり、もんどり打って刃を避ける、踏込んでもう一刀、しかし、河童はぬるりと潜って、「わっはっは」と笑う。珠助いまは嚇として、、、W
「己れ、咆えるな!」罵りざま、無二無三に斬こんだ。小太刀の奥義を極た剣、見叫事にすっ!と河童に届くが、厚く生えた水苔とぬめりで、刃先は空しく滑るばか
みずかき」
「てっぺん
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かっぱ
ようかい」
ぬきうち
やいば
かっ
おの
ののし
きわめつるぎ
むな?________________
あざわら
つまず
ふかいり
たにがわ
がが
いわ
しぶき
臆病一番
&りだ。
《水言うまーンの「くわっ、けあっ、わっはっは!」河童はひらりひらりともんどりを打っては、赤い口を大きくあけて珠助を冷笑いつつ、だんだん奥の方へ行く。珠助は口惜しさに、思わず前後を忘れて河童のあとを追った。
およそ七八丁、夢中で追ったが、石に蹴いてとんとんとのめった時、はっ!と気附いて球助は足を止めた。河童はどこへ隠れたかもう姿が見えぬ。「しまった、思わず深入した」そう思って見廻すと、いつか自分は谿川の傍にきていた。両岸は峨々たる岩山で、水は厳を噛み飛沫をあげながら、矢のように流れている。「はてここはどこだろう」球助が思わず呟くと、すぐ傍で、
すみか」「七河の魔神の棲家だ!」という者がある。珠助はつと振返ると、体に水苔の着物を着、右手に自然木の杖をついた老人が立っている。6、
FC題「うぬ妖怪、また出たな」水、「待て」珠助の寄ろうとするのを制して、、
、「ここは八岳の七谷から流れ出る谷川がひとつに合するところで、墨谷の水族の棲む魔所なのだ、僕は水族の長七河の魔神だ。お前が魔の谷を恐れずに入込んでき
ななかわ
まさ」
おどか
も、
たから、こらしめのためにここまで引寄せたのだ。すぐに谷を下りて行けばまし。さもない時は七谿の水族を呼集めて、水底の藻屑にするが、よいか?」「黙れ妖怪!」珠助は喚きたてた。「主家のために命を賭して、墨谷の奥をさぐりにきた三好珠助、汝ら変化などに嚇されて、おめおめ帰って行くと思うか!」「では、この谷を去らぬというのじゃな」のス
を着た年が「知れたことだ!」麻生画
のいい
、議(JC「では不憫ながら命は貰うぞ」云うかと思うと怪しい老人は、持っていた杖で岩を三度まで打った。とたんに谷川の水が騒ぎはじめて、流の中からさっきと同じ河童が、ひょこりひょこりと数限りなく岸の上へとび上ってきた。「出たな、吉岡流小太刀の腕を見せてくれようぞ、さあ来い!」珠助は凜然と構えた。
そのとき沛然として雨がやってきた。谷の上には低く雲が立ちこめ、四辺は急に暗くなって、河童どもの蛙肌が、ぶきみにぬらめき光っている。【本気まる「掛れ!」怪老人が叫ぶ、同時に河童ども、
「けあっ、くわっ!」☆「けろけろ、くう!」三脚でいるので
?龍窟秘譚
はいぜん
あたり?________________
つまず
ふかいり
たにがわ
がが
いわ
しぶき
臆病一番
&りだ。
《水言うまーンの「くわっ、けあっ、わっはっは!」河童はひらりひらりともんどりを打っては、赤い口を大きくあけて珠助を冷笑いつつ、だんだん奥の方へ行く。珠助は口惜しさに、思わず前後を忘れて河童のあとを追った。
およそ七八丁、夢中で追ったが、石に蹴いてとんとんとのめった時、はっ!と気附いて球助は足を止めた。河童はどこへ隠れたかもう姿が見えぬ。「しまった、思わず深入した」そう思って見廻すと、いつか自分は谿川の傍にきていた。両岸は峨々たる岩山で、水は厳を噛み飛沫をあげながら、矢のように流れている。「はてここはどこだろう」球助が思わず呟くと、すぐ傍で、
すみか」「七河の魔神の棲家だ!」という者がある。珠助はつと振返ると、体に水苔の着物を着、右手に自然木の杖をついた老人が立っている。6、
FC題「うぬ妖怪、また出たな」水、「待て」珠助の寄ろうとするのを制して、、
、「ここは八岳の七谷から流れ出る谷川がひとつに合するところで、墨谷の水族の棲む魔所なのだ、僕は水族の長七河の魔神だ。お前が魔の谷を恐れずに入込んでき
ななかわ
まさ」
おどか
も、
たから、こらしめのためにここまで引寄せたのだ。すぐに谷を下りて行けばまし。さもない時は七谿の水族を呼集めて、水底の藻屑にするが、よいか?」「黙れ妖怪!」珠助は喚きたてた。「主家のために命を賭して、墨谷の奥をさぐりにきた三好珠助、汝ら変化などに嚇されて、おめおめ帰って行くと思うか!」「では、この谷を去らぬというのじゃな」のス
を着た年が「知れたことだ!」麻生画
のいい
、議(JC「では不憫ながら命は貰うぞ」云うかと思うと怪しい老人は、持っていた杖で岩を三度まで打った。とたんに谷川の水が騒ぎはじめて、流の中からさっきと同じ河童が、ひょこりひょこりと数限りなく岸の上へとび上ってきた。「出たな、吉岡流小太刀の腕を見せてくれようぞ、さあ来い!」珠助は凜然と構えた。
そのとき沛然として雨がやってきた。谷の上には低く雲が立ちこめ、四辺は急に暗くなって、河童どもの蛙肌が、ぶきみにぬらめき光っている。【本気まる「掛れ!」怪老人が叫ぶ、同時に河童ども、
「けあっ、くわっ!」☆「けろけろ、くう!」三脚でいるので
?龍窟秘譚
はいぜん
あたり?________________
さもんじよしはる
あざけ|
い
あざけ|
い
てんでに真赤な口をあけて叫びながら、前後左右から一時に、珠助の顔をめがけて襲いかかった。
「うぬ、来い!」体を沈めた珠助、左文字吉晴の一刀を、触れるに任せて前後に薙ぎ左右に斬った。しかし、いくら斬っても河童には傷がつかなかった、水底に生きるためにと水苔に蔽われた体は、ぬるりぬるりと刃を滑らせるばかりだ。「どうじゃな小僧、もうそろそろ我慢も折れただろう、水族は強いぞ!」怪老人は嘲るように傍から声をかける、珠助は耳にもかけず、飛鳥のように体をかわして斬りに斬った。「けろけろ!くわっ!」ひと際高く叫んだ奴が、横ざまに飛びかかったのを、ぐいとかわそうとしたはずみに、珠助の足がつと滑った。
大
の大き「しまった!」と思った刹那、正面からばっと飛びかかった奴が、珠助の顔へしっかり獅噛ついた。への「うぬ!」振放そうとしたが恐ろしい力で、濡紙が貼ついたように、蛙肌をぴったり顔に吸つけて放さばこそ。もがくうちに体中、手といわず、足といわず、たちまち冷たくてぬるぬるする河童の肌で包まれてしまった。
人の「だめだ、鬼之残念だ!」珠助はそう思ったまま気を喪《うしな》ってしまった。
「うぬ、来い!」体を沈めた珠助、左文字吉晴の一刀を、触れるに任せて前後に薙ぎ左右に斬った。しかし、いくら斬っても河童には傷がつかなかった、水底に生きるためにと水苔に蔽われた体は、ぬるりぬるりと刃を滑らせるばかりだ。「どうじゃな小僧、もうそろそろ我慢も折れただろう、水族は強いぞ!」怪老人は嘲るように傍から声をかける、珠助は耳にもかけず、飛鳥のように体をかわして斬りに斬った。「けろけろ!くわっ!」ひと際高く叫んだ奴が、横ざまに飛びかかったのを、ぐいとかわそうとしたはずみに、珠助の足がつと滑った。
大
の大き「しまった!」と思った刹那、正面からばっと飛びかかった奴が、珠助の顔へしっかり獅噛ついた。への「うぬ!」振放そうとしたが恐ろしい力で、濡紙が貼ついたように、蛙肌をぴったり顔に吸つけて放さばこそ。もがくうちに体中、手といわず、足といわず、たちまち冷たくてぬるぬるする河童の肌で包まれてしまった。
人の「だめだ、鬼之残念だ!」珠助はそう思ったまま気を喪《うしな》ってしまった。
[#3字下げ]魔神の子|魚房《うおふさ》[#「魔神の子魚房」は中見出し]
臆病一番首
きわ
しがみ
ぬれがみはり
うしな
魔神の子魚房
ねりぎぬ一
すいかん|
にしきしとね」
きわ
しがみ
ぬれがみはり
うしな
魔神の子魚房
ねりぎぬ一
すいかん|
にしきしとね」
それからどれ程|経《た》ったか知らぬ。
「おいおい、確《しっか》りしろ!」耳元で呼ぶ声に、珠助はだんだんと息をふきかえして、やがて我にかえった。ふと眼をあげると、練絹の美々しい水干を着た少年が立って
いる。譚「や、これは?」珠助は驚いて身を起し、よくよく見るとそこは立派に飾られた神
殿のような室で、自分は眼覚めるような錦の褥の上に寝ていたことを知った。う「これは――全体どう云う訳だ」
、人、人、「しっ、お静かに!」少年は珠助の声を抑えて、場
合、「あなたはいま、水族の犠牲にあげられようとしているところです!」「え?」、「魔神は毎年一度、八岳の七谿の荒神を鎮めるために、人間の生胆を捧げることになっているのです!」「では私を殺して?」「そうです、しかし安心なさい、私があなたをお救いします
から」西
武道回「え、あなたが?」珠助は怪しむように訊いた。
悪龍窟秘譚
いけにえ
いきぎも
ささ?________________
「おいおい、確《しっか》りしろ!」耳元で呼ぶ声に、珠助はだんだんと息をふきかえして、やがて我にかえった。ふと眼をあげると、練絹の美々しい水干を着た少年が立って
いる。譚「や、これは?」珠助は驚いて身を起し、よくよく見るとそこは立派に飾られた神
殿のような室で、自分は眼覚めるような錦の褥の上に寝ていたことを知った。う「これは――全体どう云う訳だ」
、人、人、「しっ、お静かに!」少年は珠助の声を抑えて、場
合、「あなたはいま、水族の犠牲にあげられようとしているところです!」「え?」、「魔神は毎年一度、八岳の七谿の荒神を鎮めるために、人間の生胆を捧げることになっているのです!」「では私を殺して?」「そうです、しかし安心なさい、私があなたをお救いします
から」西
武道回「え、あなたが?」珠助は怪しむように訊いた。
悪龍窟秘譚
いけにえ
いきぎも
ささ?________________
おもてむき
とうりょうとさひでもり
あわせ
まどわ
のりだ」
臆病一番首
邸
とうりょうとさひでもり
あわせ
まどわ
のりだ」
臆病一番首
邸
「あなたは誰です」「私は魔神の子で魚房という者です。しかし、それは表向で、
実は私は甲斐七党の頭梁、土佐秀盛の子です。五歳の夏掠われてきて生胆を抜かれようとしたのを、魔神に助けられて子供にされたのです。それ以来ずっとこの水底に生きてきました!」「うむ、それはふしぎなめぐり合だなあ」珠助は深くうなずいた。「実は私も甲斐の党、大仏の郷士三好珠助という者です。仔細あって墨谷の奥へ人を尋ねて行く途首中、河童の惑しに会って不覚をとり、こんな所へ引込まれたのだが」「墨谷の奥へ
人を尋ねに?」魚房は膝を乗出した。「甲斐の党の人で墨谷の奥へ行かれるとあるからは、褐姫君を探すのでしょう?」そういった魚房の顔色は、にわかに蒼白めてきた。珠助は膝をすすめて、「どうなされた、何か姫の身上に変ったことでもござったのか?」「否や!」魚房は強く頭を振る。、
、、本、書式、平「では何故そんなに怖しそうな顔をなさる?」
小「そ、それは云えませぬ。いってはならぬことです」魚房は固く口を閉じた。「そうか、ではもう何も訊くまい、そのかわり私のいう事を聞いて下さい。じつは私が褐姫君を探しに行くのは、武田家再興を計るためなんです」「再興?では勝
あおざ
みのうえ、
おそろ一
いけにえ
?龍窟秘譚
類は?」「一族もろとも、天目山で自害なされた、武田家は滅亡したのです。残るはただ褐姫君お一人になったのです!」(2
)「そうだったかー」魚房は吐きだすようにいった。そして、やがてきっと顔をあげていった。
「では思い切って申上げましょう。あなたの尋ねる褐姫君は、最早人間ではありま譚せんぞ。八岳の七谿を支配する荒神、水族の魔神が年に一度、人間の生胆を犠牲に捧げる、怖ろしい荒神こそ、墨谷の奥悪龍窟に棲まれる褐姫さまです」
聞くより珠助はあっとのけ反った。「えっ、褐姫君が生胆を召す荒神とな?」業、き、真部本気「しっ!声が高うございます」魚房は慌てて制して、
議所「ともかく、なにかの話はここを脱出てからのことにしましょう、さあここにあなたの刀があります!」そう云って刀をわたした。そして懐中から妙な草の葉を取出して、「これは鳥兜という毒草の葉です。この葉の汁を刃へ塗っておいてください、そうすれば河童のぬめ皮を斬ることができますから」聞いて珠助は勇みたち、左文字吉
めけで、
とりかぶと?________________
実は私は甲斐七党の頭梁、土佐秀盛の子です。五歳の夏掠われてきて生胆を抜かれようとしたのを、魔神に助けられて子供にされたのです。それ以来ずっとこの水底に生きてきました!」「うむ、それはふしぎなめぐり合だなあ」珠助は深くうなずいた。「実は私も甲斐の党、大仏の郷士三好珠助という者です。仔細あって墨谷の奥へ人を尋ねて行く途首中、河童の惑しに会って不覚をとり、こんな所へ引込まれたのだが」「墨谷の奥へ
人を尋ねに?」魚房は膝を乗出した。「甲斐の党の人で墨谷の奥へ行かれるとあるからは、褐姫君を探すのでしょう?」そういった魚房の顔色は、にわかに蒼白めてきた。珠助は膝をすすめて、「どうなされた、何か姫の身上に変ったことでもござったのか?」「否や!」魚房は強く頭を振る。、
、、本、書式、平「では何故そんなに怖しそうな顔をなさる?」
小「そ、それは云えませぬ。いってはならぬことです」魚房は固く口を閉じた。「そうか、ではもう何も訊くまい、そのかわり私のいう事を聞いて下さい。じつは私が褐姫君を探しに行くのは、武田家再興を計るためなんです」「再興?では勝
あおざ
みのうえ、
おそろ一
いけにえ
?龍窟秘譚
類は?」「一族もろとも、天目山で自害なされた、武田家は滅亡したのです。残るはただ褐姫君お一人になったのです!」(2
)「そうだったかー」魚房は吐きだすようにいった。そして、やがてきっと顔をあげていった。
「では思い切って申上げましょう。あなたの尋ねる褐姫君は、最早人間ではありま譚せんぞ。八岳の七谿を支配する荒神、水族の魔神が年に一度、人間の生胆を犠牲に捧げる、怖ろしい荒神こそ、墨谷の奥悪龍窟に棲まれる褐姫さまです」
聞くより珠助はあっとのけ反った。「えっ、褐姫君が生胆を召す荒神とな?」業、き、真部本気「しっ!声が高うございます」魚房は慌てて制して、
議所「ともかく、なにかの話はここを脱出てからのことにしましょう、さあここにあなたの刀があります!」そう云って刀をわたした。そして懐中から妙な草の葉を取出して、「これは鳥兜という毒草の葉です。この葉の汁を刃へ塗っておいてください、そうすれば河童のぬめ皮を斬ることができますから」聞いて珠助は勇みたち、左文字吉
めけで、
とりかぶと?________________
駅
晴を引抜いて、手早く毒草の葉汁を刃の裏表へ塗りつけた。もうこうなれば千人力
だ。「さ、用意ができたらこちらへ!」そういって魚房が立上った時、ふいに神壇がばりばりと破れて、さっきの魔神がぬっと顔を出して嗤うように罵った。「無題「ばか共、?けられるなら、脱けてみよ。魔神の力は変通自在じゃ、それ!」
いきおい言葉が終るやいなや、片側の石壁がずしりと落ちて、恐ろしい勢で水が崩れこんできた。珠助も魚房も、大渦に巻かれる木葉のように、たちまち真暗な水底に呑まれてしまった。
る珠助は如何に?荒神になったと云われる褐姫は如何に?
入部の時間、[
だ。「さ、用意ができたらこちらへ!」そういって魚房が立上った時、ふいに神壇がばりばりと破れて、さっきの魔神がぬっと顔を出して嗤うように罵った。「無題「ばか共、?けられるなら、脱けてみよ。魔神の力は変通自在じゃ、それ!」
いきおい言葉が終るやいなや、片側の石壁がずしりと落ちて、恐ろしい勢で水が崩れこんできた。珠助も魚房も、大渦に巻かれる木葉のように、たちまち真暗な水底に呑まれてしまった。
る珠助は如何に?荒神になったと云われる褐姫は如何に?
入部の時間、[
[#3字下げ]怪鳥五郎は飛ぶ[#「怪鳥五郎は飛ぶ」は中見出し]
このは
まっくら。
臆病一番首
まっくら。
臆病一番首
- 世れでこ球て
くりぬ
くっきょう
あしだまり一
くっきょう
あしだまり一
「これが己の岩屋だ!」先に立っていた狗真は、断崖にのぞんだ、岩を抜いて造ったかなり大きい岩屋の前に立って、そういった。「これは屈竟な場所だ、ここを我らの足溜にしよう、ここなら里には近いし、墨谷の関門にもなるし一挙両得だな」鬼之がいった。「うん、それは良い思案だ、それに岩屋の上の大巌に登ると、峠道が手にとるよう
に見下ろせる、見張場としても絶好だ!」狗真も乗気になって答えた。「うるる」大猿の八郎が傍から、それや賛成だといいたげに、頷きながらしきりに喉を鳴らしてみせた。「とにかく中へ入ろう」狗真は先に立って岩屋へ入った。
岩屋の内部は五十畳敷あまり、荒木で床を組上げ、粗末ながら荒畳も敷いてある。壁には弓、鉄砲、槍、刀などがたてかけてあり、その中にはかつて見たことのない、ふしぎな機械がおいてあった。・
留にとり、「あれは何だ?」と訊くと、狗真はにこにこしながら、
(「知らぬか、あれは父仲林が秘蔵していた武器で、明国から伝来した大弩だ!」」「大徴とは?」「弩とは、弓の大仕掛のような物で、あれがあれば、五十斤ぐらいの巌石をかけて、十七八町先まで飛ばすことができる!」・『合「本当か?」鬼之は舌を巻いた。「そればかりではない、これを見ろ!」狗真はそういってずらりと壁に立かけてある鉄棒のような物を指さした。働いてい「これはこの弩に使う矢だ、重さは二十斤ある、この先に丸く筒になっているだろ
みんこく
おおいしゆみ
惡龍窟秘譚?________________
に見下ろせる、見張場としても絶好だ!」狗真も乗気になって答えた。「うるる」大猿の八郎が傍から、それや賛成だといいたげに、頷きながらしきりに喉を鳴らしてみせた。「とにかく中へ入ろう」狗真は先に立って岩屋へ入った。
岩屋の内部は五十畳敷あまり、荒木で床を組上げ、粗末ながら荒畳も敷いてある。壁には弓、鉄砲、槍、刀などがたてかけてあり、その中にはかつて見たことのない、ふしぎな機械がおいてあった。・
留にとり、「あれは何だ?」と訊くと、狗真はにこにこしながら、
(「知らぬか、あれは父仲林が秘蔵していた武器で、明国から伝来した大弩だ!」」「大徴とは?」「弩とは、弓の大仕掛のような物で、あれがあれば、五十斤ぐらいの巌石をかけて、十七八町先まで飛ばすことができる!」・『合「本当か?」鬼之は舌を巻いた。「そればかりではない、これを見ろ!」狗真はそういってずらりと壁に立かけてある鉄棒のような物を指さした。働いてい「これはこの弩に使う矢だ、重さは二十斤ある、この先に丸く筒になっているだろ
みんこく
おおいしゆみ
惡龍窟秘譚?________________
「とりで
いしびや
臆病一番首
いしびや
臆病一番首
う、この中へ火薬を填めるのだ。そしてこれを脅へかけて射放つと、飛んで行って当ったところで火薬が爆発し、城でも塞でも粉砕するのだ!」「恐ろしい道具だな、では話に聞いた石火箭というのはこれだな?」「そうだ」「こういう武器があるなら、織田、徳川を相手にひと合戦するのも本当に面白いぞ、はははは」「あはははは」狗真も腹の底から笑ったが、「ところで三好珠助どのを探す手段だが、我らが探しまわったところで迷宮のような谷の中、一日や半日で知れるはずはない、そこで己の良い方法というのは――」そういって、ずかずかと岩屋を出た狗真、空へ向って鋭く、ぴい!ぴいっ!と口笛を三度吹いた。
すると間もなく、青空の一点から黒いものが、雷光のような速さで、つつーと下りてきたかと思うと、凄じい羽叩きに風を巻起しながら、ばたばたと狗真の肩へきて止まった。それは一羽の素晴しく大きな隼であった。「五郎か、早かったぞ」-つの日に「くう」隼は嬉しそうに、狗真の頬へ頭をすりつけて喉を鳴らした。「保科、おひき合せしよう、これが己の友達の五郎だ!」
おれ
いなずま」
すさまはばた
まきおこ
おれ
?龍窟秘譚
狗真はそういって笑った。「五郎、谷の中へこの保科どのと同じような人が迷いこんでいる、すぐに行って探し出してこい、分ったか?」「くう!」隼はばっと羽叩きをした。、、、のるのが、「よし、分ったら行け」(
本
間、日時「くう、くう!」ふた声鳴くと共に、隼は再び凄じい羽叩きに風を巻起したと思う間もなく、つつ――と青空へかけ昇っていった。大猿といい隼といい、余りによく
真に馴れているので、鬼之は感に耐えぬ様子だった。(外人のうち「狗真、全体どうして五郎と八郎は、あんなにそなたに馴れているのか?」「なあにそれには訳があるのだ」狗真は腰を下ろして、「八郎の奴は佐源次に赤児の時分から乳の世話までして育てられ、口癖のように(狗真さまを護れ、命に代えて護れ)といいつけられていたので、今でもそれを固く守っているのだ!」「いじらしい奴だな」「五郎の方は雛鳥の頃、巣から転げ墜ちてまさに鷲に?まれようとしているところを、己が助けてやった。それから岩屋で飼育てているうちにすっかり馴れて、いうことはなんでも聴分けるようになったのだ、この間も谷合で大きな熊
あかご」
まも
ひなどり」
わしつか
啄ろのろ頭己をまて
ききわ
「たにあい
157?________________
すると間もなく、青空の一点から黒いものが、雷光のような速さで、つつーと下りてきたかと思うと、凄じい羽叩きに風を巻起しながら、ばたばたと狗真の肩へきて止まった。それは一羽の素晴しく大きな隼であった。「五郎か、早かったぞ」-つの日に「くう」隼は嬉しそうに、狗真の頬へ頭をすりつけて喉を鳴らした。「保科、おひき合せしよう、これが己の友達の五郎だ!」
おれ
いなずま」
すさまはばた
まきおこ
おれ
?龍窟秘譚
狗真はそういって笑った。「五郎、谷の中へこの保科どのと同じような人が迷いこんでいる、すぐに行って探し出してこい、分ったか?」「くう!」隼はばっと羽叩きをした。、、、のるのが、「よし、分ったら行け」(
本
間、日時「くう、くう!」ふた声鳴くと共に、隼は再び凄じい羽叩きに風を巻起したと思う間もなく、つつ――と青空へかけ昇っていった。大猿といい隼といい、余りによく
真に馴れているので、鬼之は感に耐えぬ様子だった。(外人のうち「狗真、全体どうして五郎と八郎は、あんなにそなたに馴れているのか?」「なあにそれには訳があるのだ」狗真は腰を下ろして、「八郎の奴は佐源次に赤児の時分から乳の世話までして育てられ、口癖のように(狗真さまを護れ、命に代えて護れ)といいつけられていたので、今でもそれを固く守っているのだ!」「いじらしい奴だな」「五郎の方は雛鳥の頃、巣から転げ墜ちてまさに鷲に?まれようとしているところを、己が助けてやった。それから岩屋で飼育てているうちにすっかり馴れて、いうことはなんでも聴分けるようになったのだ、この間も谷合で大きな熊
あかご」
まも
ひなどり」
わしつか
啄ろのろ頭己をまて
ききわ
「たにあい
157?________________
くちばし
かな
邸
かな
邸
き殺してしまったよ!」れて
るうち「えっ、隼が熊を?」劇
的
にうまく「そうとも、隼という奴は嘲の力が非常に強くて、大きな奴になると人間でさえ敵わぬようなのがある」「重ねがさね驚くなあ」「待て、五郎が帰ってきた!」狗真はつと立上った。(真、
カメ
るうち「えっ、隼が熊を?」劇
的
にうまく「そうとも、隼という奴は嘲の力が非常に強くて、大きな奴になると人間でさえ敵わぬようなのがある」「重ねがさね驚くなあ」「待て、五郎が帰ってきた!」狗真はつと立上った。(真、
カメ
[#3字下げ]四少傑の会逅《かいこう》[#「四少傑の会逅」は中見出し]
臆病一番首
「なるほどその時、荒々しい羽音を立てて五郎が岩屋の口へ飛入ってきた。人間「五郎、わかったか?」で、「くう」鳴きながら隼は狗真の前に下りた。何か?んでいるから、狗真は弱んで拾いあげた、それはぐっしょり水に濡れた着物の片袖だ。、「あっ、それは珠助の着物だ」見るなり鬼之が叫んだ。「そうか、この袖に水苔が着いているところをみると、水に溺れたかどうかしているに違いない、直ぐに行こう、五郎、道案内だ!」「くう一隼はさっと岩屋を出た。
はざま
「よし!」狗真と鬼之は急いで外へ出た。
隼は低く舞いながら二人の先に立って西へ西へと進んだ。それは扇返しの難所と、かえらずだけ不帰岳との峡間になっているところで、八岳の七谿谷から流れ出る谷川の水が、ひとつに合する魔所、七河へ通う茨の道だ。、「待てよ」それと見た狗真は足を止めた。「なんだ」「分った、三好どのは七河の魔神に掠われたのだ!」
1137「魔神とは」「八岳七谿谷に棲む水族の頭だ、多くの河童を自由に使って、自ら七河の魔神と呼んでいる悪い奴だ、きっと其奴のために危害を受けたのだろう」。「では、もう助ける望みはないのか」
です
。「否や、こうして五郎が片袖を持ってくる位だから、助けられぬことはあるまい、しかし」と狗真は声をひそめて、「魔神は己達の近づくのを知って、必ず妨害をす
るだろう。なにしろ魔神の手下の河童というのが、火に焼けず刀で斬れずという厄邸介な奴だから、余程要慎をしてかからぬと危いのだ」
。
?龍窟秘譚
そゃっ
おれ
ようじん?________________
はざま
「よし!」狗真と鬼之は急いで外へ出た。
隼は低く舞いながら二人の先に立って西へ西へと進んだ。それは扇返しの難所と、かえらずだけ不帰岳との峡間になっているところで、八岳の七谿谷から流れ出る谷川の水が、ひとつに合する魔所、七河へ通う茨の道だ。、「待てよ」それと見た狗真は足を止めた。「なんだ」「分った、三好どのは七河の魔神に掠われたのだ!」
1137「魔神とは」「八岳七谿谷に棲む水族の頭だ、多くの河童を自由に使って、自ら七河の魔神と呼んでいる悪い奴だ、きっと其奴のために危害を受けたのだろう」。「では、もう助ける望みはないのか」
です
。「否や、こうして五郎が片袖を持ってくる位だから、助けられぬことはあるまい、しかし」と狗真は声をひそめて、「魔神は己達の近づくのを知って、必ず妨害をす
るだろう。なにしろ魔神の手下の河童というのが、火に焼けず刀で斬れずという厄邸介な奴だから、余程要慎をしてかからぬと危いのだ」
。
?龍窟秘譚
そゃっ
おれ
ようじん?________________
NUNG
じひびき」
臆病一番首
w
じひびき」
臆病一番首
w
「そうか、しかし、相手はたかが河童だ、我ら両人が揃っていれば恐れることはあるまい」の
で、「とにかく、やれるだけやってみよう!」そう答えて、狗真はふたたび五郎の後を追って、藪や雑草を踏分けながら進んだ。でも、
行くことしばし、下り下って十四五丁あまりすると、かすかにどうどうと急流の地響が聞えてきた。五郎は空で輪を描きながら、早くこいというように、「くう!くう!」と鳴いている。(国産、自由
自d、「静かに!」そう注意しながら狗真は急いだ。「間もなく七河の岸へ出た。すると五郎が一声高く叫びながら、二丁ほど河下の蘆の中へさっと下りた。「あそこだ、要心して行け!」「心得た!」注意を交わしながら就つけてみると、水際に打上げられている惨めな人の姿だ、ひと眼見るより鬼之は、パ
パの谷本「おっ、三好珠助ではないか」、
です。と叫んで肛寄りざま抱起した。「水を呑んでいる、先ず土かせてからだ!」
ようじん
ぎわ
おびただ一
びっくり
第員なって現を自分の角度を立ててその上に使使た。そして左手をくいと珠助の口の中に差こんで舌を脳み出すと、鬼之に背を逆に撫でさせた。
夥しく水を吐いて、二人の熱心な介抱を受けた珠助は、やがて苦しそうに、「うーむ」と呻きだしたから、しめたと鬼之が耳に口を当てがって、「三好!珠助!気をたしかにもて!」と繰返し呼んだ。するとそれが通じたか、珠助はふっと眼をあいて、吃驚したように、「や、ほ、保科か?」「気がついたか?鬼之だ!」(国人、事業主である。
「鬼之!本当にお前か、己は助かったのか有難い」そういって珠助は強く鬼之の悪手を握ったが、すぐに振返って、
「頼む、この近くに水干を着た少年がもう一人溺れているはずだ、我らの同志だから探しだしてくれ!」舞った
珠助がそういった時、すぐ十二三間河下の蘆の中で、隼の五郎が、、、「くう!くう!」と鳴いた。
「あそこだ!」といって狗真が駈けていったが、すぐに一人の少年を肩に担いで連mれてきた。いうまでもなく、珠助と共に水族の神殿を脱出しようとして、魔神のた
?龍窟秘譚
おれ
かつ?________________
で、「とにかく、やれるだけやってみよう!」そう答えて、狗真はふたたび五郎の後を追って、藪や雑草を踏分けながら進んだ。でも、
行くことしばし、下り下って十四五丁あまりすると、かすかにどうどうと急流の地響が聞えてきた。五郎は空で輪を描きながら、早くこいというように、「くう!くう!」と鳴いている。(国産、自由
自d、「静かに!」そう注意しながら狗真は急いだ。「間もなく七河の岸へ出た。すると五郎が一声高く叫びながら、二丁ほど河下の蘆の中へさっと下りた。「あそこだ、要心して行け!」「心得た!」注意を交わしながら就つけてみると、水際に打上げられている惨めな人の姿だ、ひと眼見るより鬼之は、パ
パの谷本「おっ、三好珠助ではないか」、
です。と叫んで肛寄りざま抱起した。「水を呑んでいる、先ず土かせてからだ!」
ようじん
ぎわ
おびただ一
びっくり
第員なって現を自分の角度を立ててその上に使使た。そして左手をくいと珠助の口の中に差こんで舌を脳み出すと、鬼之に背を逆に撫でさせた。
夥しく水を吐いて、二人の熱心な介抱を受けた珠助は、やがて苦しそうに、「うーむ」と呻きだしたから、しめたと鬼之が耳に口を当てがって、「三好!珠助!気をたしかにもて!」と繰返し呼んだ。するとそれが通じたか、珠助はふっと眼をあいて、吃驚したように、「や、ほ、保科か?」「気がついたか?鬼之だ!」(国人、事業主である。
「鬼之!本当にお前か、己は助かったのか有難い」そういって珠助は強く鬼之の悪手を握ったが、すぐに振返って、
「頼む、この近くに水干を着た少年がもう一人溺れているはずだ、我らの同志だから探しだしてくれ!」舞った
珠助がそういった時、すぐ十二三間河下の蘆の中で、隼の五郎が、、、「くう!くう!」と鳴いた。
「あそこだ!」といって狗真が駈けていったが、すぐに一人の少年を肩に担いで連mれてきた。いうまでもなく、珠助と共に水族の神殿を脱出しようとして、魔神のた
?龍窟秘譚
おれ
かつ?________________
&
めに水で襲われた甲斐七党の頭梁、土佐秀盛の子魚房である。
魚房は気絶していなかったので、水を吐かせて薬を与えるとすぐ元気になった。そこで改めて四人は名乗りあった。「私は保科鬼之」高いのが
、1、嵐の中、「私は三好珠助」す
ると、
どう「私は土佐魚房」外人
(「己は長谷狗真」、、狗真は相変らず横柄だ。過去の議
題無いかくてここに、武田家再興を誓って、四人の少年傑士が揃ったのである。-
臆病一番首
魚房は気絶していなかったので、水を吐かせて薬を与えるとすぐ元気になった。そこで改めて四人は名乗りあった。「私は保科鬼之」高いのが
、1、嵐の中、「私は三好珠助」す
ると、
どう「私は土佐魚房」外人
(「己は長谷狗真」、、狗真は相変らず横柄だ。過去の議
題無いかくてここに、武田家再興を誓って、四人の少年傑士が揃ったのである。-
臆病一番首
[#3字下げ]七河畔青血の雨[#「七河畔青血の雨」は中見出し]
たらうれして、
ひき
ひき
「や、気付かれた!」鬼之が叫んで振向いたところに、異形の河童が四五疋、嘲るようにとんぼがえりをうっていた。、、、「早く」魚房が喚いた。人文
し「鳥兜の葉の汁を刃へ塗附けるのだ、そうすれば河童を斬ることができる!」。「よし」真はとっさに、傍の嚢の中に生えている毒草鳥鬼の葉をしごき取って
ぬりっ
いけにえ」
むきだ
?龍窟秘譚
「小僧ども揃ったな」と呻きながら、七河の魔神が現われた。「生胆四つ、今年の犠牲はたっぷりあるぞ、掛れ!」白い歯を剥出して叫ぶと、声に応じて水の中から、ひょこりひょこりと数限りなく河童が躍り出て来た。「覚悟は宜いか」鬼之が喚いた、鳥兜の毒汁を塗った刀を手に手に抜いて、四少傑は不破の陣を構えた。0
6月「さあ来い!」珠助が叫んだ。
08月「七河畔に河童の死骸を山と積もうぞ!」「ぴい!ぴっ!」狗真は口笛を吹いた、隼の五郎はさっときて狗真の肩へ止まった。「五郎、河童どもの眼玉を頂戴しろ、千里先の鯰を竦ませるというぞ、それ!」「くう!」五郎はつーと舞上った。
魔神は杖をとんと突いた。とたんに群りたった河童どもぶきみな声で叫びながら、わっと四人に襲いかかった。
「うぬ来い!」陣先を受持った鬼之、珠助の二人、秘術をつくして斬りに斬った。&毒汁の力はふしぎ、飛掛ってくる奴を下から払うと、胴体ふたつに切れて散った。
すると
ちょうだい
むらが
とびかか?________________
し「鳥兜の葉の汁を刃へ塗附けるのだ、そうすれば河童を斬ることができる!」。「よし」真はとっさに、傍の嚢の中に生えている毒草鳥鬼の葉をしごき取って
ぬりっ
いけにえ」
むきだ
?龍窟秘譚
「小僧ども揃ったな」と呻きながら、七河の魔神が現われた。「生胆四つ、今年の犠牲はたっぷりあるぞ、掛れ!」白い歯を剥出して叫ぶと、声に応じて水の中から、ひょこりひょこりと数限りなく河童が躍り出て来た。「覚悟は宜いか」鬼之が喚いた、鳥兜の毒汁を塗った刀を手に手に抜いて、四少傑は不破の陣を構えた。0
6月「さあ来い!」珠助が叫んだ。
08月「七河畔に河童の死骸を山と積もうぞ!」「ぴい!ぴっ!」狗真は口笛を吹いた、隼の五郎はさっときて狗真の肩へ止まった。「五郎、河童どもの眼玉を頂戴しろ、千里先の鯰を竦ませるというぞ、それ!」「くう!」五郎はつーと舞上った。
魔神は杖をとんと突いた。とたんに群りたった河童どもぶきみな声で叫びながら、わっと四人に襲いかかった。
「うぬ来い!」陣先を受持った鬼之、珠助の二人、秘術をつくして斬りに斬った。&毒汁の力はふしぎ、飛掛ってくる奴を下から払うと、胴体ふたつに切れて散った。
すると
ちょうだい
むらが
とびかか?________________
から
はくじん
かばね。
やごえ
くちばし
臆病一番首
cm
はくじん
かばね。
やごえ
くちばし
臆病一番首
cm
体へ絡みつく奴を躱わして斬下ろすと、竹割りになって、右と左に飛んだ。「えい!」「やっ、おっ!」気象職登
矢声のたつところ、白刃の閃めくところ、ばったばったと河童の屍だ。その間を縫って五郎が、凄じい羽叩きに敵の意気ばなを挫きながら、鋭い啄で当るに任せて河童の眼を襲った。「終「けあっ!くわっ!」真嬢』
、城からで、パー「があっ!」前後の敵だ、さすがの水族も斬崩されてばらばらと退る、見るより魔神は歯噛みをして、人気の職場
の事。「うぬ、推参な子僧どもよ、この上は魔神の秘法受けて死ねや!」る。
そういいざま、かの杖を突立てて九字を切り印を結んだ。すると見る見る七河の急流が沸騰して、さながら龍の昇天する如く、ざわざわざっと泡立ちながら、大波の氾濫するように四人をめがけて渦巻き寄せた。(
国「四人とも固まれ!」魚房が叫んだ。声に応じて鬼之、珠助、狗真の三人は、魚房を中に一団となった。すると押寄せてきた水は、周囲一尺あまりのところまできて円を描くが、どうしても四人の体に迫ることができない。(
3)魚房はにこにこ笑って、
こぞう
ふっとう|
はんらん
「せんじょう
?龍窟秘譚
私のいるところは水族の秘法は届かない!」「そうか、これは面白い!」
国人
。「魔神め、今は自分の護符に自分が苦んでいるという訳だな」創真たので「笑ってやれ、あははは」口ぐちに声高く笑った。早く終変業部
この有様を見た魔神はじだんだ踏んで口惜しがり、仙杖で地を叩き空を撃って狂いまわったが、やがてなんと思ったか、つと立って秘法を解いた。するとたちまちあたりに氾濫していた水は煙のように消え失せて、河童の屍も今はない。。「小僧ども、この勝負は儂の負けだ」
魔神は岩上に突たち上って、嘲るように笑いながら、鉄のごとく冷酷な声でいった。「だが、まだ戦は終ってはいないぞ、儂には悪龍窟に在す八岳七谿谷の荒神がついてござるのだ、四つの骸骨を、いずれは墨谷の底に沈めてみせようぞ!」
そしてとんと杖で大地を叩くとひとしく、七河の水に身を躍らせて姿を消した。「あっ!」激論魚房はさっと顔色を変えた。た
たたかい
おわ
ななたに?________________
矢声のたつところ、白刃の閃めくところ、ばったばったと河童の屍だ。その間を縫って五郎が、凄じい羽叩きに敵の意気ばなを挫きながら、鋭い啄で当るに任せて河童の眼を襲った。「終「けあっ!くわっ!」真嬢』
、城からで、パー「があっ!」前後の敵だ、さすがの水族も斬崩されてばらばらと退る、見るより魔神は歯噛みをして、人気の職場
の事。「うぬ、推参な子僧どもよ、この上は魔神の秘法受けて死ねや!」る。
そういいざま、かの杖を突立てて九字を切り印を結んだ。すると見る見る七河の急流が沸騰して、さながら龍の昇天する如く、ざわざわざっと泡立ちながら、大波の氾濫するように四人をめがけて渦巻き寄せた。(
国「四人とも固まれ!」魚房が叫んだ。声に応じて鬼之、珠助、狗真の三人は、魚房を中に一団となった。すると押寄せてきた水は、周囲一尺あまりのところまできて円を描くが、どうしても四人の体に迫ることができない。(
3)魚房はにこにこ笑って、
こぞう
ふっとう|
はんらん
「せんじょう
?龍窟秘譚
私のいるところは水族の秘法は届かない!」「そうか、これは面白い!」
国人
。「魔神め、今は自分の護符に自分が苦んでいるという訳だな」創真たので「笑ってやれ、あははは」口ぐちに声高く笑った。早く終変業部
この有様を見た魔神はじだんだ踏んで口惜しがり、仙杖で地を叩き空を撃って狂いまわったが、やがてなんと思ったか、つと立って秘法を解いた。するとたちまちあたりに氾濫していた水は煙のように消え失せて、河童の屍も今はない。。「小僧ども、この勝負は儂の負けだ」
魔神は岩上に突たち上って、嘲るように笑いながら、鉄のごとく冷酷な声でいった。「だが、まだ戦は終ってはいないぞ、儂には悪龍窟に在す八岳七谿谷の荒神がついてござるのだ、四つの骸骨を、いずれは墨谷の底に沈めてみせようぞ!」
そしてとんと杖で大地を叩くとひとしく、七河の水に身を躍らせて姿を消した。「あっ!」激論魚房はさっと顔色を変えた。た
たたかい
おわ
ななたに?________________
たちどころ」
≫
≫
「何だ、どうした」
「みなが気遺わしげに訊くと、魚房は身を鎖わせながら、怖ろしそうに呟くのだった。「七谿谷の荒神。ああ怖ろしい、荒神に見込まれたら、人も魔も立所に死なねばならぬ、ああ怖ろしい!」魚房の言葉はさすが強胆な狗真をさえ、ぞっとさせずには置かなかった。
読者諸君は、既に魚房の口から、褐姫君が七谿谷の荒神となって、年々人の生胆を召すということを聞かれたはずである。褐姫!褐姫!ああこの秘潭の洞窟に棲む美わしき姫の正体は何者ぞ!
(無
「みなが気遺わしげに訊くと、魚房は身を鎖わせながら、怖ろしそうに呟くのだった。「七谿谷の荒神。ああ怖ろしい、荒神に見込まれたら、人も魔も立所に死なねばならぬ、ああ怖ろしい!」魚房の言葉はさすが強胆な狗真をさえ、ぞっとさせずには置かなかった。
読者諸君は、既に魚房の口から、褐姫君が七谿谷の荒神となって、年々人の生胆を召すということを聞かれたはずである。褐姫!褐姫!ああこの秘潭の洞窟に棲む美わしき姫の正体は何者ぞ!
(無
[#3字下げ]迎え討つ夜襲戦[#「迎え討つ夜襲戦」は中見出し]
臆病-番首
ひたん
ひき
まくら
ひたん
ひき
まくら
七河河畔において、みごと、水族の魔神にうち勝った甲斐党四少傑は、やがて狗真の岩屋へと引あげてきた。大戸「ともかくも今宵は英気を養ってー」と、四人は枕を並べて寝た。昼の疲れがあるから皆ぐっすり眠る。夜半過ぎるころだ。隼の五郎がふいに頭をもたげて、「くう、くうくう」と警するよう噂をたてた。
なきごえ、
なにやつ
しのびよ
?龍窟秘譚
「よし、五郎わかったぞ」ぱっと眼をさました狗真、五郎を制しておいて耳を澄ませると、岩屋の外でひそひそと人の声がする。「夜中といい、こんな山奥へ人が来るとはふしぎだ!」と思った狗真、声をひそめて二人を、でき「おい、起きろ!」と起してまわった。
い
ろ試真理「どうした?」鬼之が刀を引寄せながら訊く。「何奴かしらぬが、この岩屋の外へ忍寄っている、万一の事があってはいけない、みんな仕度をしよう!」「よし」四人は手早く武装をととのえた。(
意で
す。「八郎も来い!」狗真は、隅に丸くなって寝ていた大猿の八郎を連れてきた。隼の五郎も泊木の上から、鋭い眼を光らせている――。主警部
岩屋の外の人声は間もなくやんだ。それからしばらくして、憂々たる蹄の音が近づいてきたと思うと、誰か岩屋の前へとび下りる気配がした。そして何やら二三話し合っているようだったが、間もなく大音に、
林政w「岩屋の主に物申そう!」と声をかけた。
とまりぎ
かつかつ一
「ひづめ)?________________
なきごえ、
なにやつ
しのびよ
?龍窟秘譚
「よし、五郎わかったぞ」ぱっと眼をさました狗真、五郎を制しておいて耳を澄ませると、岩屋の外でひそひそと人の声がする。「夜中といい、こんな山奥へ人が来るとはふしぎだ!」と思った狗真、声をひそめて二人を、でき「おい、起きろ!」と起してまわった。
い
ろ試真理「どうした?」鬼之が刀を引寄せながら訊く。「何奴かしらぬが、この岩屋の外へ忍寄っている、万一の事があってはいけない、みんな仕度をしよう!」「よし」四人は手早く武装をととのえた。(
意で
す。「八郎も来い!」狗真は、隅に丸くなって寝ていた大猿の八郎を連れてきた。隼の五郎も泊木の上から、鋭い眼を光らせている――。主警部
岩屋の外の人声は間もなくやんだ。それからしばらくして、憂々たる蹄の音が近づいてきたと思うと、誰か岩屋の前へとび下りる気配がした。そして何やら二三話し合っているようだったが、間もなく大音に、
林政w「岩屋の主に物申そう!」と声をかけた。
とまりぎ
かつかつ一
「ひづめ)?________________
ごうぜん
ふりかえ
臆病一番首
ふりかえ
臆病一番首
「おう」狗真が傲然と答える。「それにおられるは故信玄公七賢の一、長谷仲林の御子息狗真殿と存ずるがいかがでござる」
で、「いかにも己は長谷狗真だが、そういう貴殿は誰で、何用あってこられたのか?」「拙者は織田信長の家臣、堀尾山城守と申す者でござる、主君信長の命令にて、狗真殿をお迎えに参上いたした。ここをおあけ下されい!」人参、「待て!」狗真は三人を振返って、にやりと意味ありげに笑ってから、ずかずかと入口に近寄って、あざけるように叫んだ。「信長より迎えにきたとはふしぎな、わが父仲林と信長とは武田家以来の敵だ。何の用があって仲林の子を迎えにきたのか」、「されば、甲斐の七賢とまでいわれた名家の跡を絶つが残念さに、狗真殿を迎えて長谷家を再興させようとの思召でござる」「笑止な浅智恵よ、堀尾山城とか、そんな甘言をやみやみ信ずる狗真と思うか」狗真は罵りたてた。「真は諏訪湖の底に沈めてある信玄公の秘宝、法性の御兜と黄金十万枚、並に源家去来)ヨ真一売を的うる言の秘文を作りださんたち、この狗真を手先に使って
おぼしめし」
あさぢえ
ほっしょう。
ならび
まこと
いちりゅう
しった一
ときのこえ」
?龍窟秘譚
「うぬ!見破りおったな小体!」堀尾山城の口惜しそうな呻きが聞えた。「ばか者め、長谷狗真は武田家恩顧の者だ、城の十や二十貰ったとて恩義は売らぬぞ、出直せ出直せ、わはははは」「よし、さらば腕ずくでまいるぞ」に「おう望むところだ」「それ、掛れ!」山城守の叱咤と共に、わっという鬨声が岩屋の外に起った。狗真は振返って、お会い
、「用意はよいか!」「無論だ」と珠助、鬼之も愛蔵の小太刀を抜いて、3年、機大きる
。「河童はずいぶん斬ったが、人を斬るのは初めてだ、吉岡兼房先生直伝の小太刀の法を、いよいよ試す時がきたぞ!」・土佐魚房も手頃の槍をとって立上った。その時岩屋の外にあたって、
鼻、「わあっ、わあっ!」と多勢の喚く声が起ったと思うと、厳丈な丸太を組んで造った入口の戸へ、ずしん!と何かを打つける響きがした。もう一度。
。
たちあが
うち一?________________
で、「いかにも己は長谷狗真だが、そういう貴殿は誰で、何用あってこられたのか?」「拙者は織田信長の家臣、堀尾山城守と申す者でござる、主君信長の命令にて、狗真殿をお迎えに参上いたした。ここをおあけ下されい!」人参、「待て!」狗真は三人を振返って、にやりと意味ありげに笑ってから、ずかずかと入口に近寄って、あざけるように叫んだ。「信長より迎えにきたとはふしぎな、わが父仲林と信長とは武田家以来の敵だ。何の用があって仲林の子を迎えにきたのか」、「されば、甲斐の七賢とまでいわれた名家の跡を絶つが残念さに、狗真殿を迎えて長谷家を再興させようとの思召でござる」「笑止な浅智恵よ、堀尾山城とか、そんな甘言をやみやみ信ずる狗真と思うか」狗真は罵りたてた。「真は諏訪湖の底に沈めてある信玄公の秘宝、法性の御兜と黄金十万枚、並に源家去来)ヨ真一売を的うる言の秘文を作りださんたち、この狗真を手先に使って
おぼしめし」
あさぢえ
ほっしょう。
ならび
まこと
いちりゅう
しった一
ときのこえ」
?龍窟秘譚
「うぬ!見破りおったな小体!」堀尾山城の口惜しそうな呻きが聞えた。「ばか者め、長谷狗真は武田家恩顧の者だ、城の十や二十貰ったとて恩義は売らぬぞ、出直せ出直せ、わはははは」「よし、さらば腕ずくでまいるぞ」に「おう望むところだ」「それ、掛れ!」山城守の叱咤と共に、わっという鬨声が岩屋の外に起った。狗真は振返って、お会い
、「用意はよいか!」「無論だ」と珠助、鬼之も愛蔵の小太刀を抜いて、3年、機大きる
。「河童はずいぶん斬ったが、人を斬るのは初めてだ、吉岡兼房先生直伝の小太刀の法を、いよいよ試す時がきたぞ!」・土佐魚房も手頃の槍をとって立上った。その時岩屋の外にあたって、
鼻、「わあっ、わあっ!」と多勢の喚く声が起ったと思うと、厳丈な丸太を組んで造った入口の戸へ、ずしん!と何かを打つける響きがした。もう一度。
。
たちあが
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m
「わあっ!」ずしん!二度、三度。さしもの丸太造りも、めりめり、めりめりとゆるみがきた。
。。
ぼんぼりふきけ「灯を消そう」狗真がいって紙燭を吹消した。とたんに最後の一撃が、ずしーんときたと思うと、ばりばりばっと戸が押破られた。
おしゃぶ
臆病一番首
おそい
「
。。
ぼんぼりふきけ「灯を消そう」狗真がいって紙燭を吹消した。とたんに最後の一撃が、ずしーんときたと思うと、ばりばりばっと戸が押破られた。
おしゃぶ
臆病一番首
おそい
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[#3字下げ]月下の死闘[#「月下の死闘」は中見出し]
調の為高岡園、小、
戸を押破った織田の軍勢、「それ斬込め!」と先を争って踏込もうとする。その鼻先へ闇の中から、「ぎゃぎゃ、ぎゃー!」ぶきみな声と共に大きな怪鳥が一羽、羽叩き凄じく襲かかったとみる間に、鋭い啄で、先頭にいる二人の武士の眼を、避けるひまもなく突き潰した。「あっ!」「うっ!」苦痛の呻きをあげて退る二人。それと見た次の一人が、「怪しの術を使うぞ、気をつけろ!」
するのにと呼ぶのへ、ぱっと飛かかった隼の五郎。無CI員(美しい「ぎゃぎゃ!」叫びながら、これまた眼玉を啄き出してしまった。この有様を見て、勢こんだ軍兵共がここだと後へさがる。折こそ良しと、狗真は抑えていた大猿の
っっ
もどりで
どな
にわか
もりかえ
おしか
?龍窟秘譚
「うるる!うるる!」暴れることの悦しさに、喉を鳴らしながら岩屋から躍出た。怪鳥だけでも驚いているところへ、雲衝くばかりの大猿が現われでたので、軍兵共はわあっと逃げ出す。「やあ腰抜け共、何故逃げる」山城守は怒り狂って吸鳴る。四人はそれを見るより腹を抱えて、CM
、「わっはっは!」と嗤った。一度は逃げだした奴等も、たかが四人の少年に喰われたと知るや、俄に勢を盛返して、
間前後です。「掛れ!掛れ!」と喚きたてる山城守の声の下に、再びどっと押返えしてきた。狗真は大刀引抜いて、「長谷狗真これにあり、来れやっ!」おめき叫んで斬込んだ。つづいて三好珠助、保科鬼之、土佐魚房の三名、名乗りかけ名乗りかけ、面もふらずに斬って入った。「斬るな」堀尾山城は必死に叫んだ。
風夏ら「ただ詰寄せて捕れ、大事の狗真を殺すな」の
体
の「わっ!」韓々とつめよる織田家名代の堀尾勢だ。3、
『売m_鬼之は狗真と並び、山城守をめがけて斬り進む。魚房と珠助は八郎をしたがえて
きた
おもて
つめよ
ひしひし|?________________
するのにと呼ぶのへ、ぱっと飛かかった隼の五郎。無CI員(美しい「ぎゃぎゃ!」叫びながら、これまた眼玉を啄き出してしまった。この有様を見て、勢こんだ軍兵共がここだと後へさがる。折こそ良しと、狗真は抑えていた大猿の
っっ
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どな
にわか
もりかえ
おしか
?龍窟秘譚
「うるる!うるる!」暴れることの悦しさに、喉を鳴らしながら岩屋から躍出た。怪鳥だけでも驚いているところへ、雲衝くばかりの大猿が現われでたので、軍兵共はわあっと逃げ出す。「やあ腰抜け共、何故逃げる」山城守は怒り狂って吸鳴る。四人はそれを見るより腹を抱えて、CM
、「わっはっは!」と嗤った。一度は逃げだした奴等も、たかが四人の少年に喰われたと知るや、俄に勢を盛返して、
間前後です。「掛れ!掛れ!」と喚きたてる山城守の声の下に、再びどっと押返えしてきた。狗真は大刀引抜いて、「長谷狗真これにあり、来れやっ!」おめき叫んで斬込んだ。つづいて三好珠助、保科鬼之、土佐魚房の三名、名乗りかけ名乗りかけ、面もふらずに斬って入った。「斬るな」堀尾山城は必死に叫んだ。
風夏ら「ただ詰寄せて捕れ、大事の狗真を殺すな」の
体
の「わっ!」韓々とつめよる織田家名代の堀尾勢だ。3、
『売m_鬼之は狗真と並び、山城守をめがけて斬り進む。魚房と珠助は八郎をしたがえて
きた
おもて
つめよ
ひしひし|?________________
ごづめ
たけなわ|
たけなわ|
- こうこうてりかがや
あた
%
%
後詰となり、寄る者当る者を、ばったばったと斬り倒し突き伏せた。
乱闘いまや部と見る折しも、いままで皓々と照輝いていた月の面へ、にわかに黒雲がまき起った。四辺は一時に暗々たる闇だ。「ぎゃぎゃ、ぎゃ!」と隼の五郎が異様に叫ぶ。それを聞いた狗真がぎょっとして空を振仰ぐと、怪しの雲がむらむらと漂いみなぎっているから、「魚房!怪異ではないか?」と声をかける。魚房もきづいて空を仰いだが、さっと恐怖の色をあらわして、
を
と「荒神の怒りだ!」と叫んだ。ふ山県西1時ですら。「退け!怪異があるぞ!」狗真は鬼之と球助に呼びかけた。「捕れ、押詰めて捕れやっ」山城守は必死に叫んでいる。二人の大武者が声に応じて狗真に詰寄った。狗真は右へかわして、やっという掛声、左の奴を胴払い、倒れるのを見向きもせず飛びしさって、のめってきた右のへ、真向からぱっ!頭蓋骨を鼻まで斬割った。「三好!保科も退け、怪異だ、怪異だ!」
大、
軍真「おっ!」珠助と鬼之が三五人を斬倒して血路をひらくと、狗真は魚房を促してさっと退いた。
臆病一番首
かけごえ」
まっこう
ここに
すすみで一
ぞうひょう
をする事のなうに建てるとたんに置を募して青い電光が飛んだ。「あっ!」といずれも眼が眩んで踏止まる。同時に山々谷谿をふるわせて、がらがらがらっ!という恐ろしい雷鳴だ。
(
その「妖術を使うぞ、逃がすな!」山城守が狂ったように吸鳴る。怯んだ軍兵共が勢を得て進出ようとする刹那、ふたたび闇を八方に乱れ飛ぶ電光、地軸も裂けるかと思われる雷鳴だ。「岩屋へ、早く岩屋へ!」狗真は近寄る雑兵を斬払いながら、鬼之へ、珠助へ、魚房へ、叫びつつ必死になって岩を登った。「その時である。一際凄じく電光が闇を切ったと思うと、虚空高く一団の怪しい光物が飛んできて、この乱闘の上に漂いとまった。、「あっ、あれを見ろ!」魚房が顕えながら指さすのを、振仰いで見ると、光物の中には、眼も眩むばかり美しく着飾った七人の女に取巻かれて、天人かと見紛うばかり光輝く乙女が端然と立って見下している――。「やや、あれは?」「あっ!」山城守はじめ寄手の軍勢も、四少年傑士も、余りのふしぎ、意外の美しい有様に、思わず呆れて声をのんだ。
こくう
?龍窟秘譚
よせて?________________
乱闘いまや部と見る折しも、いままで皓々と照輝いていた月の面へ、にわかに黒雲がまき起った。四辺は一時に暗々たる闇だ。「ぎゃぎゃ、ぎゃ!」と隼の五郎が異様に叫ぶ。それを聞いた狗真がぎょっとして空を振仰ぐと、怪しの雲がむらむらと漂いみなぎっているから、「魚房!怪異ではないか?」と声をかける。魚房もきづいて空を仰いだが、さっと恐怖の色をあらわして、
を
と「荒神の怒りだ!」と叫んだ。ふ山県西1時ですら。「退け!怪異があるぞ!」狗真は鬼之と球助に呼びかけた。「捕れ、押詰めて捕れやっ」山城守は必死に叫んでいる。二人の大武者が声に応じて狗真に詰寄った。狗真は右へかわして、やっという掛声、左の奴を胴払い、倒れるのを見向きもせず飛びしさって、のめってきた右のへ、真向からぱっ!頭蓋骨を鼻まで斬割った。「三好!保科も退け、怪異だ、怪異だ!」
大、
軍真「おっ!」珠助と鬼之が三五人を斬倒して血路をひらくと、狗真は魚房を促してさっと退いた。
臆病一番首
かけごえ」
まっこう
ここに
すすみで一
ぞうひょう
をする事のなうに建てるとたんに置を募して青い電光が飛んだ。「あっ!」といずれも眼が眩んで踏止まる。同時に山々谷谿をふるわせて、がらがらがらっ!という恐ろしい雷鳴だ。
(
その「妖術を使うぞ、逃がすな!」山城守が狂ったように吸鳴る。怯んだ軍兵共が勢を得て進出ようとする刹那、ふたたび闇を八方に乱れ飛ぶ電光、地軸も裂けるかと思われる雷鳴だ。「岩屋へ、早く岩屋へ!」狗真は近寄る雑兵を斬払いながら、鬼之へ、珠助へ、魚房へ、叫びつつ必死になって岩を登った。「その時である。一際凄じく電光が闇を切ったと思うと、虚空高く一団の怪しい光物が飛んできて、この乱闘の上に漂いとまった。、「あっ、あれを見ろ!」魚房が顕えながら指さすのを、振仰いで見ると、光物の中には、眼も眩むばかり美しく着飾った七人の女に取巻かれて、天人かと見紛うばかり光輝く乙女が端然と立って見下している――。「やや、あれは?」「あっ!」山城守はじめ寄手の軍勢も、四少年傑士も、余りのふしぎ、意外の美しい有様に、思わず呆れて声をのんだ。
こくう
?龍窟秘譚
よせて?________________
[#3字下げ]悪龍窟に入る[#「悪龍窟に入る」は中見出し]
うけたまわ
きゅうごう
とりこ
臆病一番首
つったちあが
きゅうごう
とりこ
臆病一番首
つったちあが
虚空にある美しき姫は、しばらくの間ひややかに見下していたが、やがて――
「不浄の下人どもよく承れ」と金鈴を振るような声でいいはじめた。「ここは墨谷と呼ばれるわが魔界の領地、みだりに踏入る者は生きながら胆を抜取り、九劫の地獄へ堕とす掟なるぞ、早ばや里へくだればよし、さもなき時は火を降らし、山を崩して取籠めようぞ!」編31声は天楽のように優しく妙なる響きであったが、言葉は骨を刺すように凄じかった。堀尾山城守はこの時馬上に突立上り、「おお、あれこそ武田信玄公の遺孫褐姫なるぞ、妖術を使ってたばかるに相違ない、ひっ捕えて手柄にせよ!」と喚きたてた。つう
のを岩上に立っていた魚房は顔色変えて、きの項
目「荒神、八岳の荒神!」と戦き叫んでいる。(
いたハ車、、-山城守の叱咤を受けて、五六人の荒武者が岩の上へ駈けあがろうとする、刹那、「おのれ去らぬか、後悔すな」怪しの姫が叫ぶとひとしく虚空を誘う黒雲がさっと乱れて、矢を射るように降って来る怪しの火だ。
やつがたけ
おのの
ごうぜん
「やあ人だ」「火が降ってきたぞ」目前の怪異に、さすがの荒武者達も胆をつぶして、さっとうしろへ退く。狗真はその間に、三人を促して、岩屋の内へ入ろうとした。しかしそれと見た虚空の妖姫は、右手に持っていた金色の手毬を、岩屋めがけてはっし!とばかり投
轟然たる音と共に、渦巻く煙が谷いっぱいにひろがったと見ると、がら!がら譚がらっ!と耳も聾せんばかりの大音響、狗真の岩屋のあたりから、扇返しの断崖
へかけて、物すごい山崩れが始まった。家。「危い、こっちへ寄れ!」と魚房が、岩の上から草地へ飛退く、それを聞いた三名、土佐魚房の体には七河の魔神の護符が附いている、魚房の傍にいれば魔神の邪法も届かぬということに気がついて、ぱっと岩からとび下りようとした。その時遅し、「荒神の威力を知れや」三度、妖しの姫が呼ぶよと見るや、雨と降る怪火は、一瞬のうちに天と地を灰にするかと思われるばかり、今はもう進みも退きもできぬ。鬼之、珠助、狗真の三人は、互に名を呼び交わしながら、県外)「こっちだ、こっちへ来い!」と山崩れの下敷になるまいと、彼方此方を避けまわっていたが、いつしか火と土煙の間にはなればなれになってしまった。(「薬
?龍窟秘譚
みたびあや
したじき
かなたこなた?________________
「不浄の下人どもよく承れ」と金鈴を振るような声でいいはじめた。「ここは墨谷と呼ばれるわが魔界の領地、みだりに踏入る者は生きながら胆を抜取り、九劫の地獄へ堕とす掟なるぞ、早ばや里へくだればよし、さもなき時は火を降らし、山を崩して取籠めようぞ!」編31声は天楽のように優しく妙なる響きであったが、言葉は骨を刺すように凄じかった。堀尾山城守はこの時馬上に突立上り、「おお、あれこそ武田信玄公の遺孫褐姫なるぞ、妖術を使ってたばかるに相違ない、ひっ捕えて手柄にせよ!」と喚きたてた。つう
のを岩上に立っていた魚房は顔色変えて、きの項
目「荒神、八岳の荒神!」と戦き叫んでいる。(
いたハ車、、-山城守の叱咤を受けて、五六人の荒武者が岩の上へ駈けあがろうとする、刹那、「おのれ去らぬか、後悔すな」怪しの姫が叫ぶとひとしく虚空を誘う黒雲がさっと乱れて、矢を射るように降って来る怪しの火だ。
やつがたけ
おのの
ごうぜん
「やあ人だ」「火が降ってきたぞ」目前の怪異に、さすがの荒武者達も胆をつぶして、さっとうしろへ退く。狗真はその間に、三人を促して、岩屋の内へ入ろうとした。しかしそれと見た虚空の妖姫は、右手に持っていた金色の手毬を、岩屋めがけてはっし!とばかり投
轟然たる音と共に、渦巻く煙が谷いっぱいにひろがったと見ると、がら!がら譚がらっ!と耳も聾せんばかりの大音響、狗真の岩屋のあたりから、扇返しの断崖
へかけて、物すごい山崩れが始まった。家。「危い、こっちへ寄れ!」と魚房が、岩の上から草地へ飛退く、それを聞いた三名、土佐魚房の体には七河の魔神の護符が附いている、魚房の傍にいれば魔神の邪法も届かぬということに気がついて、ぱっと岩からとび下りようとした。その時遅し、「荒神の威力を知れや」三度、妖しの姫が呼ぶよと見るや、雨と降る怪火は、一瞬のうちに天と地を灰にするかと思われるばかり、今はもう進みも退きもできぬ。鬼之、珠助、狗真の三人は、互に名を呼び交わしながら、県外)「こっちだ、こっちへ来い!」と山崩れの下敷になるまいと、彼方此方を避けまわっていたが、いつしか火と土煙の間にはなればなれになってしまった。(「薬
?龍窟秘譚
みたびあや
したじき
かなたこなた?________________
ふり
飛び散り、降しきる火だ。怪火だ!この世の終りかとばかり山々岳々の崩壊だ!轟然爆然、八大地獄の有様もか程ではあるまい、「三好!珠助!」鬼之は必死に呼び叫びながら、ふと見るといつか岩屋の入口に来ている。「おお、この内には武田家の秘宝軍書二巻が置いてあったはずだ、あれだけは持って逃げなければ!」と気がついたから、崩れつつある岩屋の中へ猛然と躍りこんだ。首湊々と立つ土煙をかい潜って行くと、心覚えの置棚に、錦の袋に入れた二巻の秘宝があった。
し「おお無事だった!」と取って小脇へ、そのまま外へ出ようと踵をかえすとたん、臆ずずずん!と大音響をあげて岩屋の四壁が崩壊してきた。
「しまった!」と思ったがあとはもう夢中、崩れ落ちる岩石のひびきの中に鬼之は気絶してしまった。
(
もうもう
おきだな
きびす
作ります、
つん、金でくくりレイライラでうんちからの紹CR語
「どこかで小鳥の鳴く声が聞えた。それから冷めたい風が頬を吹いた。遠くの方で誰かが歌をうたっているようだ。「そう思いながら、夢から覚めるように、だんだんと我にかえった保科鬼之、
ぬりごめ
「はっ」と気がついてを起すと、いつの間にか素晴しく立派な部屋の中で、見事な褥の上に寝かされているのに気がついた。
その「やあ、これはどうしたことだ」呟きながら立上った。「教えましょう」突然あらぬ方に声がした。ぎょっとして鬼之が振返ると、塗籠の奥からしみ出てくるような声がして、「ここは墨谷の奥、一度入れば再び出ることのできぬ魔所――、悪龍窟じゃ!」「え?」鬼之はのけぞるばかりに仰天した。走りの嗚呼、遂に保科鬼之は悪龍窟に入った。しかし三少傑の行衛は?
ああ、つい
ゆくえ
秘讀悪龍窟
し「おお無事だった!」と取って小脇へ、そのまま外へ出ようと踵をかえすとたん、臆ずずずん!と大音響をあげて岩屋の四壁が崩壊してきた。
「しまった!」と思ったがあとはもう夢中、崩れ落ちる岩石のひびきの中に鬼之は気絶してしまった。
(
もうもう
おきだな
きびす
作ります、
つん、金でくくりレイライラでうんちからの紹CR語
「どこかで小鳥の鳴く声が聞えた。それから冷めたい風が頬を吹いた。遠くの方で誰かが歌をうたっているようだ。「そう思いながら、夢から覚めるように、だんだんと我にかえった保科鬼之、
ぬりごめ
「はっ」と気がついてを起すと、いつの間にか素晴しく立派な部屋の中で、見事な褥の上に寝かされているのに気がついた。
その「やあ、これはどうしたことだ」呟きながら立上った。「教えましょう」突然あらぬ方に声がした。ぎょっとして鬼之が振返ると、塗籠の奥からしみ出てくるような声がして、「ここは墨谷の奥、一度入れば再び出ることのできぬ魔所――、悪龍窟じゃ!」「え?」鬼之はのけぞるばかりに仰天した。走りの嗚呼、遂に保科鬼之は悪龍窟に入った。しかし三少傑の行衛は?
ああ、つい
ゆくえ
秘讀悪龍窟
[#3字下げ]褐姫見参[#「褐姫見参」は中見出し]
鬼之は、とっさに刀をとって身構えた。
「ここは悪龍窟だ!」塗籠の中から聞えたのは、まさに扇返しの難所で堀尾山城と乱戦の折、中空にあらわれたあの美しき妖姫の声である。
い
つ「そういう其方は何者だ?」。
ステパ、「わが名を知りたければ、まず自分より名乗るがよい」、m_鬼之は油断なく身構えながら、
この
そのほう?________________
「ここは悪龍窟だ!」塗籠の中から聞えたのは、まさに扇返しの難所で堀尾山城と乱戦の折、中空にあらわれたあの美しき妖姫の声である。
い
つ「そういう其方は何者だ?」。
ステパ、「わが名を知りたければ、まず自分より名乗るがよい」、m_鬼之は油断なく身構えながら、
この
そのほう?________________
わらわ
臆病一番首
'「己は甲斐の党、保科鬼之と申す者だ!」「大仏の郷士保科の者か」です
。「如何にも!」答えるのを聞いて、塗籠の中からすっと一人の姫が出てきた。案にたがわず、妖術を使ったかの美姫である。さてこそと鬼之は刀の柄に手をかけて詰よった。「妖しき女め、名乗れ!」「下にいやれ」姫は厳とおさえた。人の「妾は信玄公の遺孫、墨谷の褐姫じゃ」「や!」思わず鬼之はさがる。
い
かと「墨谷は我が隠れが、保科の者が何用あってまいったのか?」「姫君に見参仕り、勝頼公よりお預りの秘宝を相伝え申上げるため、万難承知で推参いたしました」。「なに、妾に伝える秘宝?」姫は懐しげに進みよった。「して勝頼公には御健かにおわすか?」「恐れながら織田徳川二軍と戦い、御武運拙く天目山において―」「天目山にて如何なされた一
つかまつ
「わらわ
なつか
おすこや
つたなてんもくざん
いかが
神社
わらわ
みなしご
?龍窟秘譚
しっか
「やや!」姫はあっと驚きの声をあげた。姫の声と同時にさっと四方の襖をあけて、美しい御殿女中七人がばらばらと出てきた。「姫様、いかになされました」と進みよるのへ、姫はわっと泣きだし、「勝頼公も、御生害とのことじゃ、妾は、褐姫はこれで、天にも地にも一人きり、全くの孤児となってしもうた―」譚「年かさの女中の膝へうち伏してしまった。
「お泣き遊ばしても詮なきこと、かくなる上は武田家のために、一そう大切なお体でございまするぞ、気を確りとお持ちなさらぬばなりませぬ!」「してそなたは」と一人が鬼之を振返った。3人中津要なく「勝頼公御生害の様を見やったのか?」
な
の「いや私は大仏村に住む者でござりますが、その朝――」と、それから手短かにはじめの日の出来事を話した。珠助と共に落武者をみつけた事、落武者から秘宝二巻をわたされ、珠助と共に二巻を持って、その足で墨谷へ入ってきた事、それから七河の魔神と争った事、土佐魚房、長谷狗真と同志の約を結んだ事、織田信長の命を受けてきた堀尾山城との血戦、つづいて褐姫の出現から、妖術七釜谷の崩壊まで
ななた)
」?________________
臆病一番首
'「己は甲斐の党、保科鬼之と申す者だ!」「大仏の郷士保科の者か」です
。「如何にも!」答えるのを聞いて、塗籠の中からすっと一人の姫が出てきた。案にたがわず、妖術を使ったかの美姫である。さてこそと鬼之は刀の柄に手をかけて詰よった。「妖しき女め、名乗れ!」「下にいやれ」姫は厳とおさえた。人の「妾は信玄公の遺孫、墨谷の褐姫じゃ」「や!」思わず鬼之はさがる。
い
かと「墨谷は我が隠れが、保科の者が何用あってまいったのか?」「姫君に見参仕り、勝頼公よりお預りの秘宝を相伝え申上げるため、万難承知で推参いたしました」。「なに、妾に伝える秘宝?」姫は懐しげに進みよった。「して勝頼公には御健かにおわすか?」「恐れながら織田徳川二軍と戦い、御武運拙く天目山において―」「天目山にて如何なされた一
つかまつ
「わらわ
なつか
おすこや
つたなてんもくざん
いかが
神社
わらわ
みなしご
?龍窟秘譚
しっか
「やや!」姫はあっと驚きの声をあげた。姫の声と同時にさっと四方の襖をあけて、美しい御殿女中七人がばらばらと出てきた。「姫様、いかになされました」と進みよるのへ、姫はわっと泣きだし、「勝頼公も、御生害とのことじゃ、妾は、褐姫はこれで、天にも地にも一人きり、全くの孤児となってしもうた―」譚「年かさの女中の膝へうち伏してしまった。
「お泣き遊ばしても詮なきこと、かくなる上は武田家のために、一そう大切なお体でございまするぞ、気を確りとお持ちなさらぬばなりませぬ!」「してそなたは」と一人が鬼之を振返った。3人中津要なく「勝頼公御生害の様を見やったのか?」
な
の「いや私は大仏村に住む者でござりますが、その朝――」と、それから手短かにはじめの日の出来事を話した。珠助と共に落武者をみつけた事、落武者から秘宝二巻をわたされ、珠助と共に二巻を持って、その足で墨谷へ入ってきた事、それから七河の魔神と争った事、土佐魚房、長谷狗真と同志の約を結んだ事、織田信長の命を受けてきた堀尾山城との血戦、つづいて褐姫の出現から、妖術七釜谷の崩壊まで
ななた)
」?________________
うしな
臆病一番首
S
臆病一番首
S
――ことごとく聴きおわった褐姫、やがて顔をあげた。
隣合、原選手「して、その秘宝二巻は持ってまいったか」国志の3部、田園の家「はっ」鬼之は悲しげに、
(大人を「先刻、扇返しの崩壊の折、岩石に組敷かれて気を喪い、いつかしらぬうちここへ連れられてきましたが、ただ今改めましたところ不思議や、二巻の秘宝が一巻紛失しております」「なに、一巻紛失したと?」褐姫はもちろん、七人の女中まで、色を喪って詰寄った。
す。「ご覧下さい」鬼之は手早く金襴の袋をとって、褐姫の前へさし出した。姫は袋の中から一巻の軍書を取出したが、女中をかえり見て、「正に空の一巻」と呟いた。「秘宝の軍書は天地人時空の五巻、我が手許には地人時三巻がある、されば天の一巻が紛失したわけじゃ」「保科殿とやら」年かさの女中が膝をすすめた。「秘宝一巻、どこで取失ったか覚えませぬか」「失神した間のこと故、たしかには分りませぬが、もしや堀尾山城の軍兵共にでも、
きんらん
もと
?龍窟秘譚
「如何にも」褐姫は頷いた。。
。「それでは鬼之には、これよりすぐに下山して、秘宝天の一巻が、信長の手に入っているかどうかを確め、ぜひ取戻してまいるよう」。「はっ!」鬼之は手をつかえた。と、前日からの心身の疲労で、思わずくらくらと眼まいがして、そのままそこへ倒れてしまった。「余程疲れているようじゃ」褐姫は立上って鬼之を見下しながら、
人
間の「今宵はここで眠らせてやるがよい」「そういって奥へ入って行った。「この妖術を使う美姫!はたして信玄公の遺孫褐姫であろうか。話は珠助の身上にかわる。
みのうえ
隣合、原選手「して、その秘宝二巻は持ってまいったか」国志の3部、田園の家「はっ」鬼之は悲しげに、
(大人を「先刻、扇返しの崩壊の折、岩石に組敷かれて気を喪い、いつかしらぬうちここへ連れられてきましたが、ただ今改めましたところ不思議や、二巻の秘宝が一巻紛失しております」「なに、一巻紛失したと?」褐姫はもちろん、七人の女中まで、色を喪って詰寄った。
す。「ご覧下さい」鬼之は手早く金襴の袋をとって、褐姫の前へさし出した。姫は袋の中から一巻の軍書を取出したが、女中をかえり見て、「正に空の一巻」と呟いた。「秘宝の軍書は天地人時空の五巻、我が手許には地人時三巻がある、されば天の一巻が紛失したわけじゃ」「保科殿とやら」年かさの女中が膝をすすめた。「秘宝一巻、どこで取失ったか覚えませぬか」「失神した間のこと故、たしかには分りませぬが、もしや堀尾山城の軍兵共にでも、
きんらん
もと
?龍窟秘譚
「如何にも」褐姫は頷いた。。
。「それでは鬼之には、これよりすぐに下山して、秘宝天の一巻が、信長の手に入っているかどうかを確め、ぜひ取戻してまいるよう」。「はっ!」鬼之は手をつかえた。と、前日からの心身の疲労で、思わずくらくらと眼まいがして、そのままそこへ倒れてしまった。「余程疲れているようじゃ」褐姫は立上って鬼之を見下しながら、
人
間の「今宵はここで眠らせてやるがよい」「そういって奥へ入って行った。「この妖術を使う美姫!はたして信玄公の遺孫褐姫であろうか。話は珠助の身上にかわる。
みのうえ
[#3字下げ]秘宝天の一巻[#「秘宝天の一巻」は中見出し]
「三好――珠助――」鬼之の呼ぶ声を聞きながら、雨と降る怪火の中に、七谿谷の辺大崩壊につれて、溢れ出た七河の水にのまれて、三好珠助は、?________________
さ
のぞ
臆病一番首
&「保科!」とひと言叫んだのを最後に、まったく気を失ってしまった。
どの位時がたったかしらぬ、長い長い眠りから醒めて、力なく眼をあけると、、「お気がつかしゃっただかね」
静かにそばで声がする、はっと振返るとそこには、破れ布子に監むしゃの男が一人、気遣わしそうに覗きこんでいる。「ここは、どこでござるか?」)の
は
、1「新府のはずれ、鳥山という所でごぜえますだ」
まで「どうしてここへ参りました」「わしは樵夫の六兵衛と申しますだがの、二三日前和田山というのへ仕事に出ていると、八岳の方にえらい山崩れがあってー」と樵夫六兵衛は話しだした。
八岳の大山崩れを知っていそいで下りてくると、谷口まで泥水で押出されて、その中に大勢の鎧武者が沈みつ浮きつ流れてきた。助けようと思ったが流れの勢が凄じいのと、一人の手には負いかねる大勢なので、気の毒ながらどうする事もできず、空しく帰ろうと道を急いでくると、ふとある岩角に一人の少年が流れついているので、せめて一人でもと助けて連れ戻ったのである。「さようでございますか、お蔭で命を拾いました。しかし―-珠助は身を起して、
きこり
きずつ
?龍窟秘譚
「その発送になくらいの年頃の者三人いたはずですが、それはご存知ございませんか」「さあ、何しろ泥水のことだでー」六兵衛の言葉に、珠助は暗然と涙をのんだ。土佐魚房は、狗真は、親友保科鬼之は――、生きているか、それとも死んだか。「武田家再興を誓って起ちながら、中途においてこの大難、我らの壮途空しくこのまま終ってしまうことか――」そう呟くと、熱い熱い涙が頬をつたって流れるのだった。
とにかくひどく体を傷けているので、大仏へ帰るにしても、三人の友を探すにしても、まず自分の体の健康を取戻さなければならぬ。それ
は「どうか遠慮なく養生して」という樵夫六兵衛の親切を頼みに、珠助は三日五日と日を暮らした。、、
、七日めの朝、
J、
国「今日は気分も良いから」と球助、六兵衛が山へ行ったあとで、ぶらりと樵夫の家を出た。晴れた空には初秋の風が、白雲を追って西へ西へと流れていた。芒、尾花の咲みだれた草原を、あてどもなく歩いてくると、いつか鎌梨河の畔にでた。&「よく澄んだ水だな、こんな時鬼之が一緒であったらさぞ楽しかろうな」淋しげに
すすき
さき
かまなしがわほとり?________________
のぞ
臆病一番首
&「保科!」とひと言叫んだのを最後に、まったく気を失ってしまった。
どの位時がたったかしらぬ、長い長い眠りから醒めて、力なく眼をあけると、、「お気がつかしゃっただかね」
静かにそばで声がする、はっと振返るとそこには、破れ布子に監むしゃの男が一人、気遣わしそうに覗きこんでいる。「ここは、どこでござるか?」)の
は
、1「新府のはずれ、鳥山という所でごぜえますだ」
まで「どうしてここへ参りました」「わしは樵夫の六兵衛と申しますだがの、二三日前和田山というのへ仕事に出ていると、八岳の方にえらい山崩れがあってー」と樵夫六兵衛は話しだした。
八岳の大山崩れを知っていそいで下りてくると、谷口まで泥水で押出されて、その中に大勢の鎧武者が沈みつ浮きつ流れてきた。助けようと思ったが流れの勢が凄じいのと、一人の手には負いかねる大勢なので、気の毒ながらどうする事もできず、空しく帰ろうと道を急いでくると、ふとある岩角に一人の少年が流れついているので、せめて一人でもと助けて連れ戻ったのである。「さようでございますか、お蔭で命を拾いました。しかし―-珠助は身を起して、
きこり
きずつ
?龍窟秘譚
「その発送になくらいの年頃の者三人いたはずですが、それはご存知ございませんか」「さあ、何しろ泥水のことだでー」六兵衛の言葉に、珠助は暗然と涙をのんだ。土佐魚房は、狗真は、親友保科鬼之は――、生きているか、それとも死んだか。「武田家再興を誓って起ちながら、中途においてこの大難、我らの壮途空しくこのまま終ってしまうことか――」そう呟くと、熱い熱い涙が頬をつたって流れるのだった。
とにかくひどく体を傷けているので、大仏へ帰るにしても、三人の友を探すにしても、まず自分の体の健康を取戻さなければならぬ。それ
は「どうか遠慮なく養生して」という樵夫六兵衛の親切を頼みに、珠助は三日五日と日を暮らした。、、
、七日めの朝、
J、
国「今日は気分も良いから」と球助、六兵衛が山へ行ったあとで、ぶらりと樵夫の家を出た。晴れた空には初秋の風が、白雲を追って西へ西へと流れていた。芒、尾花の咲みだれた草原を、あてどもなく歩いてくると、いつか鎌梨河の畔にでた。&「よく澄んだ水だな、こんな時鬼之が一緒であったらさぞ楽しかろうな」淋しげに
すすき
さき
かまなしがわほとり?________________
おら
おら一
なにがしたいなら
&
おら一
なにがしたいなら
&
呟いていると、
「己《おら》のだ」。「うんにゃ己が先にめっけたのだ」と、西へ西へ。「めっけのは己だ」。「嘘つけ、己のだ」と何か騒がしく争う声がした。振返って見ると、河原で四五人の子供が、一つの物を中にして奪い合の喧嘩をしている。「これこれ、喧嘩をするではない」珠助は大声に叱りながら、近寄って行った。ふいに叱られた子供たちは驚いて振返ったが、一人が何か片手に持って振かざしなが
うそ
あいけんか|
臆病一番首
おら一
こいつ
18」
「おら、
おら
「己がこれを河の中から拾っただ、すんと此奴らがふんだくるべえとするんだよ」「ちがうだ、己が先にめっけただ」「己の方が先だ、向うから流れてくるのをめっけたのは己だ」「まあ待て!」珠助はがやがやと騒ぐのを制して、先の子供の持っている物を見た。それは古びた金襴仕立の巻物である。「私が見てやるからこっちへかしてみろ」「うん」子供の差出すのを受取った珠助、巻物の表に天という一字の書いてあるの
を見る。思わず頭を盛って。「あっ!」と叫んだ。「これは武田家秘宝、軍書五巻の筆頭天の一巻だ、勝頼公より褐姫へ伝えるため、鬼之と二人して持って行った二巻の一に相違ない」。
珠助は子供に向っていった。ですが「坊や、これは大変な宝物だ、子供達の持つ物ではないから私が預かっておくよ」「厭だい、己の物だ、よこせ!」喚いたと思うと、つと珠助の手から巻物を抜取った子供の一人、職。「あ、何をする」と珠助が捉まえようとする手を、巧みにすり抜けると、ばらばらと野鼠のような素早さで、色の中へ走りこんだ。「待て、待たぬか」珠助は必死に後を追った。
た
、
おれ
譚
つか
?、龍窟
のねずみ
ことはなんとかけにランドとしないのがうれしいのは
みのたけ
「己《おら》のだ」。「うんにゃ己が先にめっけたのだ」と、西へ西へ。「めっけのは己だ」。「嘘つけ、己のだ」と何か騒がしく争う声がした。振返って見ると、河原で四五人の子供が、一つの物を中にして奪い合の喧嘩をしている。「これこれ、喧嘩をするではない」珠助は大声に叱りながら、近寄って行った。ふいに叱られた子供たちは驚いて振返ったが、一人が何か片手に持って振かざしなが
うそ
あいけんか|
臆病一番首
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こいつ
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おら
「己がこれを河の中から拾っただ、すんと此奴らがふんだくるべえとするんだよ」「ちがうだ、己が先にめっけただ」「己の方が先だ、向うから流れてくるのをめっけたのは己だ」「まあ待て!」珠助はがやがやと騒ぐのを制して、先の子供の持っている物を見た。それは古びた金襴仕立の巻物である。「私が見てやるからこっちへかしてみろ」「うん」子供の差出すのを受取った珠助、巻物の表に天という一字の書いてあるの
を見る。思わず頭を盛って。「あっ!」と叫んだ。「これは武田家秘宝、軍書五巻の筆頭天の一巻だ、勝頼公より褐姫へ伝えるため、鬼之と二人して持って行った二巻の一に相違ない」。
珠助は子供に向っていった。ですが「坊や、これは大変な宝物だ、子供達の持つ物ではないから私が預かっておくよ」「厭だい、己の物だ、よこせ!」喚いたと思うと、つと珠助の手から巻物を抜取った子供の一人、職。「あ、何をする」と珠助が捉まえようとする手を、巧みにすり抜けると、ばらばらと野鼠のような素早さで、色の中へ走りこんだ。「待て、待たぬか」珠助は必死に後を追った。
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おれ
譚
つか
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のねずみ
ことはなんとかけにランドとしないのがうれしいのは
みのたけ
[#3字下げ]曳《ひ》かれゆく狗真[#「曳かれゆく狗真」は中見出し]
野育ちの子供、しかも馴れている河原道だ、身丈ほども伸びた色の中を、左に右に、抜けつ隠れつ、隠れつ跳びつその早いこと、足場の悪いところへまだ体が充分恢復していないので、ばあせるほど分が悪い、ついに珠助は子供を取逃がし
185?________________
185?________________
こわらべ
臆病一番首
sてしまった。の
で
、
、、。
臆病一番首
sてしまった。の
で
、
、、。
「残念だ」どっかり草の上へ腰をおとして、、、
、「せっかく手に入れながら、小童ごときに取って逃げられ、主家の秘宝を失うとは――かえすがえすも無念だ!この上はあの子供の家をつきとめて、例えどんな苦心をしても取戻さねばならぬ」そう気がつくと、ぐずぐずしてはいられない、急いで立上って、もとの場所へ戻ってきた。そこには幸い、まださっきの子供達が残っていて、何やらがやがや話していた。「これこれ、いま巻物を持って逃げたのはどこの子か知っている者はないか?」訊かれて子供達は顔見合せた。「何も恐がることはない、誰が教えたともいわぬから、知っていたら聞かせてくれ」といい、
関ン「知っているだよ」一番小さな子供がおずおずと、「あれは、熊三郎ん家の源だよ。お宮のそばのー」・お宮といえば鳥山には八幡神社がひとつしかないはず、その附近で訊けばわかるに相違ない、珠助はその子の頭を撫でて、「坊やありがとうよ」とひと言、さっさと河原を去り、その足ですぐに村へ入った。八幡神社の傍ら、二度と訊くまでもな
くまさぶ
「ご免、ご免下さい」
荒れ放題に荒れた家の表、声高におとずれると内から、「おう」と咆えて出てきたのは、身丈六尺余り、全身赤黒い毛がもじゃもじゃと生えている、まるで熊のような男、ぎょろぎょろ眼をかっと剥いて珠助をねめつけな
みのたけ
ひぐま
まなこ
いんぎん
こちら。
?龍窟秘譚
くまさぶ
「何か用か?」と吸鳴った。珠助は慇懃に、上空間での
思、「此方に七歳ほどの御子息がおられるはず、その御子息にちと用があってまいりました」『介
知(ト「作に用だ?」熊三郎は歯を剥出しながら、「何の用か知らねえが、俺が聞くべえ、作はまだ前後もわからねえ悪たれだ、用があったら俺にいえ!」すい人国
外類「それでは申上げよう」珠助は二三歩進んだ。なるので、きっと「御子息が今しがた、河原から巻物を一巻持って帰られたはずだが、ご存知でござるか?」「巻物だ?ふん、もし持ってきていたらばどうするだ」?________________
、「せっかく手に入れながら、小童ごときに取って逃げられ、主家の秘宝を失うとは――かえすがえすも無念だ!この上はあの子供の家をつきとめて、例えどんな苦心をしても取戻さねばならぬ」そう気がつくと、ぐずぐずしてはいられない、急いで立上って、もとの場所へ戻ってきた。そこには幸い、まださっきの子供達が残っていて、何やらがやがや話していた。「これこれ、いま巻物を持って逃げたのはどこの子か知っている者はないか?」訊かれて子供達は顔見合せた。「何も恐がることはない、誰が教えたともいわぬから、知っていたら聞かせてくれ」といい、
関ン「知っているだよ」一番小さな子供がおずおずと、「あれは、熊三郎ん家の源だよ。お宮のそばのー」・お宮といえば鳥山には八幡神社がひとつしかないはず、その附近で訊けばわかるに相違ない、珠助はその子の頭を撫でて、「坊やありがとうよ」とひと言、さっさと河原を去り、その足ですぐに村へ入った。八幡神社の傍ら、二度と訊くまでもな
くまさぶ
「ご免、ご免下さい」
荒れ放題に荒れた家の表、声高におとずれると内から、「おう」と咆えて出てきたのは、身丈六尺余り、全身赤黒い毛がもじゃもじゃと生えている、まるで熊のような男、ぎょろぎょろ眼をかっと剥いて珠助をねめつけな
みのたけ
ひぐま
まなこ
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くまさぶ
「何か用か?」と吸鳴った。珠助は慇懃に、上空間での
思、「此方に七歳ほどの御子息がおられるはず、その御子息にちと用があってまいりました」『介
知(ト「作に用だ?」熊三郎は歯を剥出しながら、「何の用か知らねえが、俺が聞くべえ、作はまだ前後もわからねえ悪たれだ、用があったら俺にいえ!」すい人国
外類「それでは申上げよう」珠助は二三歩進んだ。なるので、きっと「御子息が今しがた、河原から巻物を一巻持って帰られたはずだが、ご存知でござるか?」「巻物だ?ふん、もし持ってきていたらばどうするだ」?________________
ニーとっ
くまさぶ一
くまさぶ
うそぶ
ろう
こん
むち
臆病-番首
「私に返して頂きたいのだ」珠助はきっとしていった。「あれは当地武田家の秘宝でござる、故あって勝頼公より托された大切の品、ぜひも私に返していただきたい」
(
7)だ!」熊三郎は叩きつけるように叫んだ。をタッ「厭だ?これはけしからぬ、当甲斐の主人武田家の秘宝を、それと承知で取隠すとは、貴公恩も義も知らぬ人か?」(
た
ぶ線が「へへん」熊三郎は憎さげに嘯いた。「武田の武士は俺を牢へぶち込だ、俺を牛の皮の鞭で殴った。俺は武田をやっつけるためなら、たった一人の仲を殺しても構わねえが、武田のためになる事なら舌を出すのも真平だ、帰れ!」あまりの無法、理非を聞かせてもわからぬ奴と思ったから、珠助は刀の柄に手をかけた。「やあ刀を抜く気か」で意思の通り、思い「うぬ」珠助が踏出ようとした時、わっわっという人声が大通りの方に起った。何事かと思って躊っていると、熊三郎がせせら笑って、
なる熊三郎様は不死身だぞ、へたに騒ぐと縛りあげて徳川様の御陣屋へ突出すばかりだ、そら聞け向うにわあわあ騒いでいる、あれっ甲斐党の者で、貴
まっぴら」
ためら
くまさぶ
くまさぶ
おれ
もののぐ
様くらいの年頃だが、障日俺が後えて運屋へ置したのよ。今日は河屋で打音だ。あっははははは」
を更になる「己程の年ごろ?」と聞いた珠助、つと踵をかえすと、ばたばた、足にまかせて大通りの方へ走り出て行った。-通りは河原まで黒山のような人、押分けて前へでると、物具つけた徳川方の軍兵
が、見る影もない一人の少年を縛って聞いて行くところだ。珠助はひと眼見るなり、譚「あっ、は、長谷、狗真ではないか?」
と叫んだ。ああ狗真はまさに斬られに行く、この難関をどうして珠助は打開するか。秘宝五巻を中心に、火花を散らす争いは、ますます佳境に入ってきた。無
?龍窟秘譚
褐姫の秘密あらわる
めんえつ
こんこん)
「もし、もし」かすかに呼ぶ声がする。職
質悪龍窟に入って、褐姫君に面謁した保科鬼之、重なる疲労が出て、いつか昏々と眠っていたが、耳もとでしきりに、「もしもし」と低くよぶ声、ようやく我にかえって、、
、&「は」と答えながら身を起す。?________________
くまさぶ一
くまさぶ
うそぶ
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むち
臆病-番首
「私に返して頂きたいのだ」珠助はきっとしていった。「あれは当地武田家の秘宝でござる、故あって勝頼公より托された大切の品、ぜひも私に返していただきたい」
(
7)だ!」熊三郎は叩きつけるように叫んだ。をタッ「厭だ?これはけしからぬ、当甲斐の主人武田家の秘宝を、それと承知で取隠すとは、貴公恩も義も知らぬ人か?」(
た
ぶ線が「へへん」熊三郎は憎さげに嘯いた。「武田の武士は俺を牢へぶち込だ、俺を牛の皮の鞭で殴った。俺は武田をやっつけるためなら、たった一人の仲を殺しても構わねえが、武田のためになる事なら舌を出すのも真平だ、帰れ!」あまりの無法、理非を聞かせてもわからぬ奴と思ったから、珠助は刀の柄に手をかけた。「やあ刀を抜く気か」で意思の通り、思い「うぬ」珠助が踏出ようとした時、わっわっという人声が大通りの方に起った。何事かと思って躊っていると、熊三郎がせせら笑って、
なる熊三郎様は不死身だぞ、へたに騒ぐと縛りあげて徳川様の御陣屋へ突出すばかりだ、そら聞け向うにわあわあ騒いでいる、あれっ甲斐党の者で、貴
まっぴら」
ためら
くまさぶ
くまさぶ
おれ
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様くらいの年頃だが、障日俺が後えて運屋へ置したのよ。今日は河屋で打音だ。あっははははは」
を更になる「己程の年ごろ?」と聞いた珠助、つと踵をかえすと、ばたばた、足にまかせて大通りの方へ走り出て行った。-通りは河原まで黒山のような人、押分けて前へでると、物具つけた徳川方の軍兵
が、見る影もない一人の少年を縛って聞いて行くところだ。珠助はひと眼見るなり、譚「あっ、は、長谷、狗真ではないか?」
と叫んだ。ああ狗真はまさに斬られに行く、この難関をどうして珠助は打開するか。秘宝五巻を中心に、火花を散らす争いは、ますます佳境に入ってきた。無
?龍窟秘譚
褐姫の秘密あらわる
めんえつ
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「もし、もし」かすかに呼ぶ声がする。職
質悪龍窟に入って、褐姫君に面謁した保科鬼之、重なる疲労が出て、いつか昏々と眠っていたが、耳もとでしきりに、「もしもし」と低くよぶ声、ようやく我にかえって、、
、&「は」と答えながら身を起す。?________________
ぼんぼり
「あおじろ
あなた
にょ」
しょう
臆病一番首
M「しっ、お静かに」とおさえる声、
「どなた?」見返ると、ほのかな紙燭の蔭に、侍女のみなりをした十五六の乙女がいる。色は蒼白いが眼鼻だちそろった美しい風俗だ。「なにかご用か」は関連無言の「秘密をお知らせにあがりました。人に知れると大変です、どうぞお静かに!」「秘密?」「はい」乙女はさらに声をひそめて、「貴方がお逢いなされた姫様、褐姫様といっていたあの女性は、じつは褐姫君ではありませぬ―」する
。「え?褐姫君ではない!」鬼之は、愕然として身を乗出した。「はい、あれは八岳七谿谷の魔神に仕える巫女で、褐姫に成代り、武田家を横領しようと企んでいる、悪者でございます」一所具
の軍「し、して褐姫君は?」。「姫君はあの巫女のために墨谷を追われ、二年前に行方知れず、いまでは京三条のあたりに世を忍んでおられると、風の便りに聞きましたが――、それも嘘やら真や
がくぜん)
なりかわ
たくら一
もとより
こしつ
「之はと手をつななた万難を排してたなあてた後姫は偽者、当の姫君は悪婦のために墨谷を追われ、いまは遠く京に隠れて在すという。同志の球助はじめ、狗真、魚房らとは別れ別れ、今またこの秘報を聞いては、さすがの鬼之もまったく手の出しようがない。高
い気も「して――」やがて気を取直した鬼之、「お手許にあった三巻の秘巻は?」とつぶる
よりも前の「秘巻は無事でございます」と乙女は膝をすすめて、した。「元来あの三巻には、別に同じ拵えの偽物があったのです。褐姫君はその偽物三巻
を巫女にわたし、ほんとうの秘巻のうち二巻を肌につけて、京へお落ちなさりまし悪た」
ら、一巻
、うち30「して残る一巻は?」鬼之が急きこんで訊くと、
ふくさづつみ「これにございます」乙女はそういって、内懐中から帛紗包を取出して、手早くひらいてみると「人」の一巻だ。「これをどうして貴女が?」
気にな
る「はい、姫君が万一途中で追手に捉まった時、三巻全部を奪われてはならぬという駅心配から、一巻だけ私にお預けなされたのでございます」
?龍窟秘譚
せ
うちぶところ
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臆病一番首
M「しっ、お静かに」とおさえる声、
「どなた?」見返ると、ほのかな紙燭の蔭に、侍女のみなりをした十五六の乙女がいる。色は蒼白いが眼鼻だちそろった美しい風俗だ。「なにかご用か」は関連無言の「秘密をお知らせにあがりました。人に知れると大変です、どうぞお静かに!」「秘密?」「はい」乙女はさらに声をひそめて、「貴方がお逢いなされた姫様、褐姫様といっていたあの女性は、じつは褐姫君ではありませぬ―」する
。「え?褐姫君ではない!」鬼之は、愕然として身を乗出した。「はい、あれは八岳七谿谷の魔神に仕える巫女で、褐姫に成代り、武田家を横領しようと企んでいる、悪者でございます」一所具
の軍「し、して褐姫君は?」。「姫君はあの巫女のために墨谷を追われ、二年前に行方知れず、いまでは京三条のあたりに世を忍んでおられると、風の便りに聞きましたが――、それも嘘やら真や
がくぜん)
なりかわ
たくら一
もとより
こしつ
「之はと手をつななた万難を排してたなあてた後姫は偽者、当の姫君は悪婦のために墨谷を追われ、いまは遠く京に隠れて在すという。同志の球助はじめ、狗真、魚房らとは別れ別れ、今またこの秘報を聞いては、さすがの鬼之もまったく手の出しようがない。高
い気も「して――」やがて気を取直した鬼之、「お手許にあった三巻の秘巻は?」とつぶる
よりも前の「秘巻は無事でございます」と乙女は膝をすすめて、した。「元来あの三巻には、別に同じ拵えの偽物があったのです。褐姫君はその偽物三巻
を巫女にわたし、ほんとうの秘巻のうち二巻を肌につけて、京へお落ちなさりまし悪た」
ら、一巻
、うち30「して残る一巻は?」鬼之が急きこんで訊くと、
ふくさづつみ「これにございます」乙女はそういって、内懐中から帛紗包を取出して、手早くひらいてみると「人」の一巻だ。「これをどうして貴女が?」
気にな
る「はい、姫君が万一途中で追手に捉まった時、三巻全部を奪われてはならぬという駅心配から、一巻だけ私にお預けなされたのでございます」
?龍窟秘譚
せ
うちぶところ
あなた?________________
%「よし!」鬼之は決然と顔をあげた。(C)
「それではさっき巫女にわたした『空』の一巻を奪いかえし、この一巻と共に京へ持参して、褐姫君を探ねいだし、改めて武田家再興を計ることにしよう!」
乙女はそれを聞くと共に、「ああ、それで私がお預りした甲斐もありました。実は」といってさらに一巻を取出し、さ
い
。首「貴方が巫女にお渡しなさった『空』の一巻も、ここへ盗み出してきてあるので
臆病一番首
みずのあわ
「や!これは」と重ねがさね驚く鬼之、乙女は手早く、その二巻を錦の袋に納めて、「それではすぐに御出発なされませ、これを盗み出したことが知れては、何もかも水泡となりまする、早く!」「恭ない。しかし貴女も一緒にまいられてはどうか、かような魔所に長居は危険であろう」長い合、期購間の3
人「否いえ、私にはまだここに役目がございます、貴方こそ早く!」
。「さようか、ではこれにて一鬼之はさそくに身仕度をととのえる、乙女は急し灯を
かたじけ
あかり」
みち
「こなたへ!」といって部屋を出る、まもなく窟の壁を抜けて秘密の抜穴、そこはまだ巫女たちの知らぬ、外への通路だ。「この道をまっ直にゆかれますと、扇返しの下へ抜けまする」「ではここで失礼」「御武運めでたく」、「
会いた
い礼をして行こうとした鬼之、ふと足を止めて乙女の方へ振返った。「貴方のお名はー?」「かなえと申しまする」乙女は灯をよけて頬を染めた。
?龍窟秘譚
ずたま」
馬を奪って
で
、1人幾人、・抜穴の中は闇だった。意
鬼之は足にまかせて走った。石塊で足を踏すべらせたり岩間洩る水溜りにはまったり、闇を飛ぶ不気味な蝙蝠に追手かと驚いたりしながら、一刻(二時間程)あま
りも行ったと思うころ、ひんやりと寒い外の風が吹いてきて裾をはらった。*「しめた、外へ出た」勇気百倍して急ぐと、まもなくぼんやり明りがさしてきた。
こうもり」
いっとき?________________
「それではさっき巫女にわたした『空』の一巻を奪いかえし、この一巻と共に京へ持参して、褐姫君を探ねいだし、改めて武田家再興を計ることにしよう!」
乙女はそれを聞くと共に、「ああ、それで私がお預りした甲斐もありました。実は」といってさらに一巻を取出し、さ
い
。首「貴方が巫女にお渡しなさった『空』の一巻も、ここへ盗み出してきてあるので
臆病一番首
みずのあわ
「や!これは」と重ねがさね驚く鬼之、乙女は手早く、その二巻を錦の袋に納めて、「それではすぐに御出発なされませ、これを盗み出したことが知れては、何もかも水泡となりまする、早く!」「恭ない。しかし貴女も一緒にまいられてはどうか、かような魔所に長居は危険であろう」長い合、期購間の3
人「否いえ、私にはまだここに役目がございます、貴方こそ早く!」
。「さようか、ではこれにて一鬼之はさそくに身仕度をととのえる、乙女は急し灯を
かたじけ
あかり」
みち
「こなたへ!」といって部屋を出る、まもなく窟の壁を抜けて秘密の抜穴、そこはまだ巫女たちの知らぬ、外への通路だ。「この道をまっ直にゆかれますと、扇返しの下へ抜けまする」「ではここで失礼」「御武運めでたく」、「
会いた
い礼をして行こうとした鬼之、ふと足を止めて乙女の方へ振返った。「貴方のお名はー?」「かなえと申しまする」乙女は灯をよけて頬を染めた。
?龍窟秘譚
ずたま」
馬を奪って
で
、1人幾人、・抜穴の中は闇だった。意
鬼之は足にまかせて走った。石塊で足を踏すべらせたり岩間洩る水溜りにはまったり、闇を飛ぶ不気味な蝙蝠に追手かと驚いたりしながら、一刻(二時間程)あま
りも行ったと思うころ、ひんやりと寒い外の風が吹いてきて裾をはらった。*「しめた、外へ出た」勇気百倍して急ぐと、まもなくぼんやり明りがさしてきた。
こうもり」
いっとき?________________
きりぎし
ちゅうちょ
臆病一番首
5抜穴の出口である。走りよってみると断崖に面していて、地上まで二十尺あまりの
高さ。「やっ!」躊躇もせずに、身をおどらせて飛下りると、そこは見覚えのある扇返しの難所だ。もうそこからは道も知れている。大山崩れのあとで足場は悪いが、岩をとび、茨をわけて、里へ里へと下っていった。。
峠を越して大和田という小さな村へさしかかった時だ。道の上に大勢人が集って、何かわいわい騒いでいる。.「かわいそうに、まだ年若な子供だそうなが」「なにしろ相手が徳川では」
の「甲斐党の人達も気の毒なことだ」きれぎれに聞えた言葉。「甲斐党の人々――」という声にぎっくりした鬼之、つかつかと一人のそばへ歩み寄って、「何事でございます?」と訊いた。なのです
。「なあに、罪人が斬られますので」、「罪人?」
国のバラ「と申しても、それがただ甲斐の残党に縁のあるというだけ、まだ十五六の子供で、
ゆかり
3
かまなしがわらはりつけ。
たが
?龍窟秘譚
殺すほどのこともござりますまいに、軍の後とかいわれて今日、新席の町はずれ、鎌梨河原で磔になるという話でござります」
実直らしく農夫の話すのを聞いて、鬼之ははっと胸をうたれる思いがした。もしや同志の一人ではあるまいか?「その者の名をご存知か」、「
い「ええ、何とかいったが、はてな」しばらく考えていたが「おおそれよ、亡なった譚長谷仲林様の御子息で、狗真とかいわっしゃるはず――」-
、気合いわれた鬼之、聞きもはてずにばっと走りだした。案に違わず正に同志であった。救わねばならぬ。天を地にかえても救出さねばならぬ。鬼之は走った、夢中で走った。しかし新府は三里にあまる道程、人の足で走ったとてまに合う筈がない。ふと見ると傍の畑で土を勸くに使っている馬。、、、、、入会「よし馬で!」と思ったからぱっと走寄って、「人の命に係わることだ、馬を借りるぞ」叫びざま、鞭の紐をはずした。す「これはまあ何をさっしゃるだ」驚く百姓。「詫は後に、借りたぞ?」鋤からはずした馬。
国語る。明「わあ、馬泥棒だあ」喚き叫ぶ百姓には見向きもせず、裸馬の背へぱっととびのっ
すくいだ。
ちゅうちょ
臆病一番首
5抜穴の出口である。走りよってみると断崖に面していて、地上まで二十尺あまりの
高さ。「やっ!」躊躇もせずに、身をおどらせて飛下りると、そこは見覚えのある扇返しの難所だ。もうそこからは道も知れている。大山崩れのあとで足場は悪いが、岩をとび、茨をわけて、里へ里へと下っていった。。
峠を越して大和田という小さな村へさしかかった時だ。道の上に大勢人が集って、何かわいわい騒いでいる。.「かわいそうに、まだ年若な子供だそうなが」「なにしろ相手が徳川では」
の「甲斐党の人達も気の毒なことだ」きれぎれに聞えた言葉。「甲斐党の人々――」という声にぎっくりした鬼之、つかつかと一人のそばへ歩み寄って、「何事でございます?」と訊いた。なのです
。「なあに、罪人が斬られますので」、「罪人?」
国のバラ「と申しても、それがただ甲斐の残党に縁のあるというだけ、まだ十五六の子供で、
ゆかり
3
かまなしがわらはりつけ。
たが
?龍窟秘譚
殺すほどのこともござりますまいに、軍の後とかいわれて今日、新席の町はずれ、鎌梨河原で磔になるという話でござります」
実直らしく農夫の話すのを聞いて、鬼之ははっと胸をうたれる思いがした。もしや同志の一人ではあるまいか?「その者の名をご存知か」、「
い「ええ、何とかいったが、はてな」しばらく考えていたが「おおそれよ、亡なった譚長谷仲林様の御子息で、狗真とかいわっしゃるはず――」-
、気合いわれた鬼之、聞きもはてずにばっと走りだした。案に違わず正に同志であった。救わねばならぬ。天を地にかえても救出さねばならぬ。鬼之は走った、夢中で走った。しかし新府は三里にあまる道程、人の足で走ったとてまに合う筈がない。ふと見ると傍の畑で土を勸くに使っている馬。、、、、、入会「よし馬で!」と思ったからぱっと走寄って、「人の命に係わることだ、馬を借りるぞ」叫びざま、鞭の紐をはずした。す「これはまあ何をさっしゃるだ」驚く百姓。「詫は後に、借りたぞ?」鋤からはずした馬。
国語る。明「わあ、馬泥棒だあ」喚き叫ぶ百姓には見向きもせず、裸馬の背へぱっととびのっ
すくいだ。
- みちのり
はしりょ
touchion
ながえひも
すき?________________
touchion
ながえひも
すき?________________
まっすぐ」
はやて
うまのせ
まっしぐら
ぬすっと一
もうもう
臆病一番首
た保科鬼之、馬腹をけりながらさっと往来へ乗出した。質「走れ、真直に新府へ、風のように飛んで行け!」叫ぶ。同時に馬は、鬼之をのせたまま疾風のように走りだした。故郷大仏村では、裸馬を乗こなすことで名を得ていた鬼之だ。ぴったり馬背に身を伏せると、平首に顔をつけてのびを打たせながら、驀地に西へ西へとはしりたてた。「馬盗人だあ、そ奴を捉えてくれろ」百姓の喚く声もいつか遠のいて、土埃を燦々と蹴たてながら、馬は村から村へ丘を下り、林を抜け、川を跳んで走りに走った。同じ頃―。
新府の町はずれ、鎌梨川の河原には、竹矢来を広く結廻して、朝来徳川方の軍兵が三十名あまり詰めていた。いうまでもない、甲斐の残党として捕えられた長谷狗真を、そこで磔刑にしようというのである――。
午ノ下刻(午後一時)ごろ、新府の屋形から縄付の狗真を引出した。徒士頭斎藤辰巳之助は、軍兵二十名に前後を警戒させて、町を引廻しの上、河原へ向った。「かわいそうに、まだ子供ではないか」を「磔とは虐いことをする」「誰か助けてやる者はないのか」
ゆいまわ
はりつけ
うま
かちがしら」
ひど、
いさか
見る人達は口々に履きかわしている。その人々の産にかくれて、そっと発真のあとをつけて行く少年、三好珠助のいることを読者諸君はお忘れではあるまい。
樵夫六兵衛に救われて体を養ううち、鎌梨河原に童達が奪い合っていた武田家の秘宝「天」の一巻を発見したことから、無法者の熊三郎と諍い、それから狗真斬らると聞いて駐つけてきた珠助は、折あらば助出そうと、群衆の後から狗真の後をつけているのであった。
車の行列はまもなく、刑場へ到着した。
限ら、
?龍窟秘譚
乱闘三士の勇
もうしのこ
たっちゅう。
ほほえみ
にら
「なにか申遺すことはないか」狗真を磔柱に縛りつけると、斎藤辰巳之助は進み寄って、憎々しく叫んだ。「無い」狗真はびくともせず、静かな頻笑さえたたえていたが、やがてきっと天を睨むと見るや、地も裂けよとばかり、「織田信長、徳川家康、武田家に仇したこの二人を、死霊となって、憑殺してくれるぞ」-「
西そう叫んだ。」
と
あだ」
しりょう
とりころ?________________
はやて
うまのせ
まっしぐら
ぬすっと一
もうもう
臆病一番首
た保科鬼之、馬腹をけりながらさっと往来へ乗出した。質「走れ、真直に新府へ、風のように飛んで行け!」叫ぶ。同時に馬は、鬼之をのせたまま疾風のように走りだした。故郷大仏村では、裸馬を乗こなすことで名を得ていた鬼之だ。ぴったり馬背に身を伏せると、平首に顔をつけてのびを打たせながら、驀地に西へ西へとはしりたてた。「馬盗人だあ、そ奴を捉えてくれろ」百姓の喚く声もいつか遠のいて、土埃を燦々と蹴たてながら、馬は村から村へ丘を下り、林を抜け、川を跳んで走りに走った。同じ頃―。
新府の町はずれ、鎌梨川の河原には、竹矢来を広く結廻して、朝来徳川方の軍兵が三十名あまり詰めていた。いうまでもない、甲斐の残党として捕えられた長谷狗真を、そこで磔刑にしようというのである――。
午ノ下刻(午後一時)ごろ、新府の屋形から縄付の狗真を引出した。徒士頭斎藤辰巳之助は、軍兵二十名に前後を警戒させて、町を引廻しの上、河原へ向った。「かわいそうに、まだ子供ではないか」を「磔とは虐いことをする」「誰か助けてやる者はないのか」
ゆいまわ
はりつけ
うま
かちがしら」
ひど、
いさか
見る人達は口々に履きかわしている。その人々の産にかくれて、そっと発真のあとをつけて行く少年、三好珠助のいることを読者諸君はお忘れではあるまい。
樵夫六兵衛に救われて体を養ううち、鎌梨河原に童達が奪い合っていた武田家の秘宝「天」の一巻を発見したことから、無法者の熊三郎と諍い、それから狗真斬らると聞いて駐つけてきた珠助は、折あらば助出そうと、群衆の後から狗真の後をつけているのであった。
車の行列はまもなく、刑場へ到着した。
限ら、
?龍窟秘譚
乱闘三士の勇
もうしのこ
たっちゅう。
ほほえみ
にら
「なにか申遺すことはないか」狗真を磔柱に縛りつけると、斎藤辰巳之助は進み寄って、憎々しく叫んだ。「無い」狗真はびくともせず、静かな頻笑さえたたえていたが、やがてきっと天を睨むと見るや、地も裂けよとばかり、「織田信長、徳川家康、武田家に仇したこの二人を、死霊となって、憑殺してくれるぞ」-「
西そう叫んだ。」
と
あだ」
しりょう
とりころ?________________
ささほ
めのまえ
ろうぜきもの
首
番
~「うぬ、曳かれ者の小唄」辰巳之助は怒って、
「それ!」と合図。声に応じて軍卒両名、長柄の槍を持ってつかつかと柱の下へ進み寄った。ときどき光る笹穂の槍をかちり、狗真の眼前で合せるとさっと引いた。「ああ、殺られる」と群衆が思わず息をのんだ刹那。「その仕置させぬ!」と叫んで竹矢来の一部を踏破り、刑場へおどり出した者がある。三好珠助だ!「あっ、狼藉者!」と辰巳之助が立上った時、珠助は隼のように跳んで、すでに槍をとった軍卒二人をその場に斬伏せ、磔柱を背にきっと身構えていた。早業である。
「おお三好」柱の上から狗真が叫ぶ。臆「長谷、もう大丈夫だ」
なのとしてられた長崎「猫ない」言葉をかわす、眼は涙だ。「ええ何をぼんやりいたしている。斬れ、狼藉者共を、斬ってしまえ!」、「辰巳之助が喚く。「それ掛れ!」
で最葉、軍事の合での田楽、「わあっ!」四五十人の軍兵手に手に白刃を振かざして、詰寄った。近寄る者を二三人、草を
めのまえ
ろうぜきもの
首
番
~「うぬ、曳かれ者の小唄」辰巳之助は怒って、
「それ!」と合図。声に応じて軍卒両名、長柄の槍を持ってつかつかと柱の下へ進み寄った。ときどき光る笹穂の槍をかちり、狗真の眼前で合せるとさっと引いた。「ああ、殺られる」と群衆が思わず息をのんだ刹那。「その仕置させぬ!」と叫んで竹矢来の一部を踏破り、刑場へおどり出した者がある。三好珠助だ!「あっ、狼藉者!」と辰巳之助が立上った時、珠助は隼のように跳んで、すでに槍をとった軍卒二人をその場に斬伏せ、磔柱を背にきっと身構えていた。早業である。
「おお三好」柱の上から狗真が叫ぶ。臆「長谷、もう大丈夫だ」
なのとしてられた長崎「猫ない」言葉をかわす、眼は涙だ。「ええ何をぼんやりいたしている。斬れ、狼藉者共を、斬ってしまえ!」、「辰巳之助が喚く。「それ掛れ!」
で最葉、軍事の合での田楽、「わあっ!」四五十人の軍兵手に手に白刃を振かざして、詰寄った。近寄る者を二三人、草を
病
やいば
かけ
蓮くように戦った見方をかえして有真の成んを放っ。きっと柱をとび下りた狗真、「虫けら共逃げるな」
叫びざま、倒れている奴の刃を拾いとると、悪鬼のごとく髪ふり乱して、面もふらず軍兵の中へ斬って行った。
同城県思うその時だ。竹矢来の外でわっわっと騒ぐ人声、何事と見れば馬を駆って駈つけてきた一少年、群衆を押分けて馬のまま、ばりばりばっと竹矢来を踏破りながら、乱闘の刑場へさっと乗入れてきた。「やっ、狗真無事だったか」馬上で叫んだのはいうまでもない、百姓馬を煽って駈つけた保科鬼之だ。「珠助もいるな!」「やあ鬼之か!」と珠助、狗真の二人は勇気百倍。鬼之は馬からとび下りると、小太刀を抜きざま、「助けるぞ!」
と喚いて斬入ってきた。辰巳之助は思わぬ曲者二人まであらわれ、しかも少年な%がら三人が三人腕がたつ、もし罪人を逃しでもしては一大事と声を喰らせて、画
あお
?龍窟秘譚
くせもの?________________
やいば
かけ
蓮くように戦った見方をかえして有真の成んを放っ。きっと柱をとび下りた狗真、「虫けら共逃げるな」
叫びざま、倒れている奴の刃を拾いとると、悪鬼のごとく髪ふり乱して、面もふらず軍兵の中へ斬って行った。
同城県思うその時だ。竹矢来の外でわっわっと騒ぐ人声、何事と見れば馬を駆って駈つけてきた一少年、群衆を押分けて馬のまま、ばりばりばっと竹矢来を踏破りながら、乱闘の刑場へさっと乗入れてきた。「やっ、狗真無事だったか」馬上で叫んだのはいうまでもない、百姓馬を煽って駈つけた保科鬼之だ。「珠助もいるな!」「やあ鬼之か!」と珠助、狗真の二人は勇気百倍。鬼之は馬からとび下りると、小太刀を抜きざま、「助けるぞ!」
と喚いて斬入ってきた。辰巳之助は思わぬ曲者二人まであらわれ、しかも少年な%がら三人が三人腕がたつ、もし罪人を逃しでもしては一大事と声を喰らせて、画
あお
?龍窟秘譚
くせもの?________________
やつばら
うちと
とき
くりだ
うしお一
臆病一番首
%「斬れ、容赦すな、三人とも斬れやっ」と必死に下知する。しかし三好、保科の両人だけでも、吉岡兼房直伝の小太刀の名手、それに狗真の達者が揃っているのだから、たちまち二十人ばかりは斬伏せられてしまった。「ええ不甲斐なき奴原、この上は辰巳之助が討取ってくれようぞ」足ずりした斎藤、九尺柄の大長巻を取直すと、水車のように振廻しながら狗真に迫ってきた。その時、またも竹矢来の外にわあっ!と鬨の声が聞えたと思うと、誰か早くも変事を知らせたとみえて、新府の屋形から繰出してきた四五十の軍兵、潮のよせるように、槍陣刀を振かざしながら詰寄せてきた。主
題「長く戦っては不利だ」珠助がこれを見て叫んだ。「血路を開いて川へ、鎌梨川へ!」、「おう」、業、
同車。「心得た!」鬼之、狗真の二人が答える。同時に猛然と一方の血路を斬開いて、河原を北へ、茫、蓬を踏しだきながら、急流泡をかんで流れる鎌梨川の方へとはしりだした。「それ逃がすな」「追討ちに斬れやっ!」喚きわめき、砂利を蹴散しながら追迫る軍兵だ。珠助は一
すすきよもぎ」
着験をとって、這える着を動さながら二丁あまりくる。「鉄砲組、撃て!」という声が聞えたから、
人に「三好、長谷!敵は鉄砲を持っている。構わぬから川へ飛こめ!」と叫んだ。その時遅し空をゆすって、ドドドドドドド!と響く銃砲の轟き、同時に三人は身を躍らせて鎌梨川の急流へとびこんだ。3
、書人、食「追え!追え!」と辰巳之助を先頭に徳川方の軍勢が川畔へ駈つけた時は、最早三名の姿は水底深く流れ沈んでどこを探してよいやら見当もつかなかった。一方――。急流の中へ沈んだ珠助。。
(画「うっかり浮上ると殺られる」と思ったから流れのままに身を任せて、水底を川下へ、ぐんぐんと流されていった。川は船山という小さな中島の下で淵になっている。両側から木が生かぶさって、昼なお暗い場所だ。ここまでくれば大丈夫と、球助は水面に浮いて、静かに岸へ泳ぎ着いた。「狗真は、鬼之はどうした」
そう思って川の上下を見わたしたが、滔々と流れる水の上には、それらしい姿も見えぬ。まさか溺れもしまいが、と心の中に呟きながら淵を這上ろうとすると、ふ如いに後で、
うきあが
?龍窟秘譚
ふち。
とうとう一
うち一
はいあが?________________
うちと
とき
くりだ
うしお一
臆病一番首
%「斬れ、容赦すな、三人とも斬れやっ」と必死に下知する。しかし三好、保科の両人だけでも、吉岡兼房直伝の小太刀の名手、それに狗真の達者が揃っているのだから、たちまち二十人ばかりは斬伏せられてしまった。「ええ不甲斐なき奴原、この上は辰巳之助が討取ってくれようぞ」足ずりした斎藤、九尺柄の大長巻を取直すと、水車のように振廻しながら狗真に迫ってきた。その時、またも竹矢来の外にわあっ!と鬨の声が聞えたと思うと、誰か早くも変事を知らせたとみえて、新府の屋形から繰出してきた四五十の軍兵、潮のよせるように、槍陣刀を振かざしながら詰寄せてきた。主
題「長く戦っては不利だ」珠助がこれを見て叫んだ。「血路を開いて川へ、鎌梨川へ!」、「おう」、業、
同車。「心得た!」鬼之、狗真の二人が答える。同時に猛然と一方の血路を斬開いて、河原を北へ、茫、蓬を踏しだきながら、急流泡をかんで流れる鎌梨川の方へとはしりだした。「それ逃がすな」「追討ちに斬れやっ!」喚きわめき、砂利を蹴散しながら追迫る軍兵だ。珠助は一
すすきよもぎ」
着験をとって、這える着を動さながら二丁あまりくる。「鉄砲組、撃て!」という声が聞えたから、
人に「三好、長谷!敵は鉄砲を持っている。構わぬから川へ飛こめ!」と叫んだ。その時遅し空をゆすって、ドドドドドドド!と響く銃砲の轟き、同時に三人は身を躍らせて鎌梨川の急流へとびこんだ。3
、書人、食「追え!追え!」と辰巳之助を先頭に徳川方の軍勢が川畔へ駈つけた時は、最早三名の姿は水底深く流れ沈んでどこを探してよいやら見当もつかなかった。一方――。急流の中へ沈んだ珠助。。
(画「うっかり浮上ると殺られる」と思ったから流れのままに身を任せて、水底を川下へ、ぐんぐんと流されていった。川は船山という小さな中島の下で淵になっている。両側から木が生かぶさって、昼なお暗い場所だ。ここまでくれば大丈夫と、球助は水面に浮いて、静かに岸へ泳ぎ着いた。「狗真は、鬼之はどうした」
そう思って川の上下を見わたしたが、滔々と流れる水の上には、それらしい姿も見えぬ。まさか溺れもしまいが、と心の中に呟きながら淵を這上ろうとすると、ふ如いに後で、
うきあが
?龍窟秘譚
ふち。
とうとう一
うち一
はいあが?________________
くちき」
「脱走人だな!」という声がした。「え?」ぎょっとして珠助が振返ると、淵にのぞんだ朽木のうしろから、怪しい一人の老人がこっちを見下していた。
(13
)みよしじげんさい
三好自激斎
ぬきみ
とりなお
きも、
つりざお
臆病一番首
まっぷた
珠助は足場を定めると、抜刀を右手に取直して、きっと怪老人の方へ身構えをたてた。。「すこしは胆のありそうな小体だの」老人は釣棹を右手に「きょう、この川上に於て甲斐残党の少年が刑死されると噂に聞いたが、察するところお前であろう」にやりと笑う刹那、珠助は右足で岩を蹴りざま飛鳥のように老人へ斬りつけた。「ほう!」真二つと思いのほか、軽く体をかわされて二三歩のめる珠助、第「うぬ老態!」と喚きざま片手なぐりにひっ払った。必殺の剣、老人は軽く身をひねって避けながら、持っていた釣棹でぴしり打った、その気合の鋭いこと、剣を伝わって珠助の全身へびりびりと響きわたるよう。《ポー
。「あっ!」と叫ぶと脆くも剣をとり落した。あわてて拾おうとする手、老人は釣棹でぴったり来助の肩をおさえた。磐石で押えられたよう。身動きのできぬ様を見や
おいぼれ
びっくり
なんじ
いんとん
わし
そのほう
?龍窟秘譚
「逸るまい三好珠助、我を忘れたるか」「えっ?」ふいに我名を呼ばれて、珠助は吃驚ふり仰いだ、白髪の怪老人は静かに笑っている、しばらく見まもっていたが思い出せぬから、「失礼ながら覚えませぬ」「あはははさもあろう、汝三歳の折に大仏を去って隠遁しゃ、これは覚えておらぬが道理であろう」
を合
京「あなた様は?」間
目の戦「其方の祖父、三好自源斎じゃ」
の書「やっ!」珠助は釣棹の下に両手を下した。
噂に聞く、武田七賢の頭梁、信玄の智恵袋とまでいわれた三好自源斎、珠助にとっては祖父にあたる人で、十有余年前世を遁れて山中に入り、専ら仙術自得にはげんでいると聞いたのはこの人であったのか。「では貴方がお祖父様」「珠助!よう成人した、あっぱれ骨柄じゃ、ものの役に立つべきぞ」「はっ!」
、
うわさ
とうりょう
のが
もっぱ
「じいさま。
S?________________
「脱走人だな!」という声がした。「え?」ぎょっとして珠助が振返ると、淵にのぞんだ朽木のうしろから、怪しい一人の老人がこっちを見下していた。
(13
)みよしじげんさい
三好自激斎
ぬきみ
とりなお
きも、
つりざお
臆病一番首
まっぷた
珠助は足場を定めると、抜刀を右手に取直して、きっと怪老人の方へ身構えをたてた。。「すこしは胆のありそうな小体だの」老人は釣棹を右手に「きょう、この川上に於て甲斐残党の少年が刑死されると噂に聞いたが、察するところお前であろう」にやりと笑う刹那、珠助は右足で岩を蹴りざま飛鳥のように老人へ斬りつけた。「ほう!」真二つと思いのほか、軽く体をかわされて二三歩のめる珠助、第「うぬ老態!」と喚きざま片手なぐりにひっ払った。必殺の剣、老人は軽く身をひねって避けながら、持っていた釣棹でぴしり打った、その気合の鋭いこと、剣を伝わって珠助の全身へびりびりと響きわたるよう。《ポー
。「あっ!」と叫ぶと脆くも剣をとり落した。あわてて拾おうとする手、老人は釣棹でぴったり来助の肩をおさえた。磐石で押えられたよう。身動きのできぬ様を見や
おいぼれ
びっくり
なんじ
いんとん
わし
そのほう
?龍窟秘譚
「逸るまい三好珠助、我を忘れたるか」「えっ?」ふいに我名を呼ばれて、珠助は吃驚ふり仰いだ、白髪の怪老人は静かに笑っている、しばらく見まもっていたが思い出せぬから、「失礼ながら覚えませぬ」「あはははさもあろう、汝三歳の折に大仏を去って隠遁しゃ、これは覚えておらぬが道理であろう」
を合
京「あなた様は?」間
目の戦「其方の祖父、三好自源斎じゃ」
の書「やっ!」珠助は釣棹の下に両手を下した。
噂に聞く、武田七賢の頭梁、信玄の智恵袋とまでいわれた三好自源斎、珠助にとっては祖父にあたる人で、十有余年前世を遁れて山中に入り、専ら仙術自得にはげんでいると聞いたのはこの人であったのか。「では貴方がお祖父様」「珠助!よう成人した、あっぱれ骨柄じゃ、ものの役に立つべきぞ」「はっ!」
、
うわさ
とうりょう
のが
もっぱ
「じいさま。
S?________________
すみだに一
- いちりゅう
臆病-番首
cm「ま、すわれ、その後の事を聞きたい」
珠助の手をとってかたわらの木の根に腰をかけさせ、自分も向い合って座をとった。「勝頼公御生害のことは――」「知っておる」
本中
山7日「天目山御生害の折」と珠助は今日までのことを手短かに語った。褐姫君のこと、墨谷のこと、天地人時空五巻の軍書に秘められた秘文、そして諏訪湖底に沈められた石棺の中にある十万枚の黄金と、源氏の白旗一流。それから軍書五巻の散逸してしまったことなど、聞くにつれて自源斎の鋭い眸は輝きをましていった。「そうか、五巻の秘宝はすでに散ぢりばらばらか、褐姫君も墨谷におわさず、京あたりに落魄してか、よし!」3人
の教員)自源斎はずいと立った。手くりの人を「助!」
の「はっ」外
国
人も韓「儂は山を下る、武田家再興のために、儂はもう一ど界に下りて働こう、諏訪湖底に石棺を沈めたのも、その場所を軍書五巻の中に秘文としたのも、湯短君を墨谷
ひとみ
は
せんじょう
やせうで、
あた
?龍窟秘譚
にお入れしたのも、僕と長谷神様はじめ、武田七賞と呼ばれた者の職業からであった」自源斎は感慨深げにいった。「それがすべて空となり、軍書は散逸し、姫は行方不明とあっては、その責我に無き能わずだ、起とう、僕も今日から仙杖を折って、いま一度痩腕に剣をとろう」
珠助は思わず声をあげた。「お祖父様!貴方がお起ち下されば、武田家再興は疑いなしです」「勝敗は時の運だ。人事を尽して天命をまつのみ、珠助、こい」「はっ」自源斎老人は、先に立って森の奥へはいっていった。飲食いー仙老自源斎、はたして何を策するか、その夜珠助は黒装束して馬に乗り、闇を駆ること三里、古府にある徳川家康の陣を窺った。話時間です
。家康襲わる
うかが
こうこうぼんぼり
古府の陣中深く、家康の屋形には宵のうちから煌々と紙燭が輝いていた。屋形の内には家康、信忠をはじめ、徳川家にその人ありと知られた勇士豪傑の面々、灯をかこんで酒宴を張っていた。?________________
cm「ま、すわれ、その後の事を聞きたい」
珠助の手をとってかたわらの木の根に腰をかけさせ、自分も向い合って座をとった。「勝頼公御生害のことは――」「知っておる」
本中
山7日「天目山御生害の折」と珠助は今日までのことを手短かに語った。褐姫君のこと、墨谷のこと、天地人時空五巻の軍書に秘められた秘文、そして諏訪湖底に沈められた石棺の中にある十万枚の黄金と、源氏の白旗一流。それから軍書五巻の散逸してしまったことなど、聞くにつれて自源斎の鋭い眸は輝きをましていった。「そうか、五巻の秘宝はすでに散ぢりばらばらか、褐姫君も墨谷におわさず、京あたりに落魄してか、よし!」3人
の教員)自源斎はずいと立った。手くりの人を「助!」
の「はっ」外
国
人も韓「儂は山を下る、武田家再興のために、儂はもう一ど界に下りて働こう、諏訪湖底に石棺を沈めたのも、その場所を軍書五巻の中に秘文としたのも、湯短君を墨谷
ひとみ
は
せんじょう
やせうで、
あた
?龍窟秘譚
にお入れしたのも、僕と長谷神様はじめ、武田七賞と呼ばれた者の職業からであった」自源斎は感慨深げにいった。「それがすべて空となり、軍書は散逸し、姫は行方不明とあっては、その責我に無き能わずだ、起とう、僕も今日から仙杖を折って、いま一度痩腕に剣をとろう」
珠助は思わず声をあげた。「お祖父様!貴方がお起ち下されば、武田家再興は疑いなしです」「勝敗は時の運だ。人事を尽して天命をまつのみ、珠助、こい」「はっ」自源斎老人は、先に立って森の奥へはいっていった。飲食いー仙老自源斎、はたして何を策するか、その夜珠助は黒装束して馬に乗り、闇を駆ること三里、古府にある徳川家康の陣を窺った。話時間です
。家康襲わる
うかが
こうこうぼんぼり
古府の陣中深く、家康の屋形には宵のうちから煌々と紙燭が輝いていた。屋形の内には家康、信忠をはじめ、徳川家にその人ありと知られた勇士豪傑の面々、灯をかこんで酒宴を張っていた。?________________
つかいばん)
初夜すぐる頃、使番の士が、「新府より斎藤辰巳之助が仕向いたしました」と伝えてきた。0
人「よし、ここへ!」
育てるのがいいの「はっ」使番はすり出て行ったが、すぐに斎藤辰巳之助を連れて出てきた。「酒宴これまで!」家康の一声に、酒宴の面々はすぐさま退出してしまった。席を
改めて後は家康と本多忠勝、斎藤辰巳之助の三人きり。首「辰巳之助これへ」
「はっ」膝ですりよった辰巳之助、これぞその日鎌梨河原で狗真を刑場に取逃した男だ。
し「首尾はどうじゃ」「仰せのままにいたしてございます」「逃げたか」です。「三人共に河より!」3日間「忍びの者はいかがいたした」
と
いうもの無「甲賀者一人は、まさに三好珠助めの跡をつきとめ、船形山において、自源斎入道と会見せしところまで見とどけましてござります」
病一番
おお
ありいっきとめ
自湯系め、まだ生きておったな、ううう。それは手続であった」咄!咄!狗真、鬼之、珠助の三人が刑場から逃げたのは、家康の計略であったのだ。三人を放っておけば、必ず軍書の在かを突止るに相違ない、そこで三人をわざと逃し、甲賀者二人、伊賀者一人に命じて、それぞれ三人の跡をつけさせていたのだ。「狗真、鬼之の両名は」と家康が膝をすすめた。「船形山の下、西条村というのへ上り、村の郷士の家に隠れておりまする」「よしよし」家康は頻笑みつつうなずいて、
で
、真「なおこの後とも見張りを怠るな、いずれは褐姫の行衛を探ねだすであろう、その時までは忍びの者を気づかせるでないぞ」いう。「は、よくよく注意仕ります」辰巳之助は声を低めて、、「恐れながらこれを」といって、そっと取出した古金襴の袋に入った一物。「なんじゃ」「御披見くださりませ」12
家康とってひらくと、中から出た軍書一巻、正しく鎌梨河原で珠助が取りそこなwった「天」の一巻である。
ゆくえ
?龍窟秘譚?________________
初夜すぐる頃、使番の士が、「新府より斎藤辰巳之助が仕向いたしました」と伝えてきた。0
人「よし、ここへ!」
育てるのがいいの「はっ」使番はすり出て行ったが、すぐに斎藤辰巳之助を連れて出てきた。「酒宴これまで!」家康の一声に、酒宴の面々はすぐさま退出してしまった。席を
改めて後は家康と本多忠勝、斎藤辰巳之助の三人きり。首「辰巳之助これへ」
「はっ」膝ですりよった辰巳之助、これぞその日鎌梨河原で狗真を刑場に取逃した男だ。
し「首尾はどうじゃ」「仰せのままにいたしてございます」「逃げたか」です。「三人共に河より!」3日間「忍びの者はいかがいたした」
と
いうもの無「甲賀者一人は、まさに三好珠助めの跡をつきとめ、船形山において、自源斎入道と会見せしところまで見とどけましてござります」
病一番
おお
ありいっきとめ
自湯系め、まだ生きておったな、ううう。それは手続であった」咄!咄!狗真、鬼之、珠助の三人が刑場から逃げたのは、家康の計略であったのだ。三人を放っておけば、必ず軍書の在かを突止るに相違ない、そこで三人をわざと逃し、甲賀者二人、伊賀者一人に命じて、それぞれ三人の跡をつけさせていたのだ。「狗真、鬼之の両名は」と家康が膝をすすめた。「船形山の下、西条村というのへ上り、村の郷士の家に隠れておりまする」「よしよし」家康は頻笑みつつうなずいて、
で
、真「なおこの後とも見張りを怠るな、いずれは褐姫の行衛を探ねだすであろう、その時までは忍びの者を気づかせるでないぞ」いう。「は、よくよく注意仕ります」辰巳之助は声を低めて、、「恐れながらこれを」といって、そっと取出した古金襴の袋に入った一物。「なんじゃ」「御披見くださりませ」12
家康とってひらくと、中から出た軍書一巻、正しく鎌梨河原で珠助が取りそこなwった「天」の一巻である。
ゆくえ
?龍窟秘譚?________________
うち一
いかが
ならずもの
ほうび、
さしつか
ひもと
臆病一番首
S「や、これは?」と驚く家康。
服用
したと「信玄秘蔵の軍書、その中『天』の一巻に相違ござりませぬ」「正に違いない、如何いたしてこれを?」「新府の町に住む破落戸、熊三郎と申す者よりの献上にござります、褒美として銀二貫目差遣わしてございます」
金「うむ」家康にこっと笑ってうなずくと、しずかに一巻の紐をといた。
武田家の秘文、みだりに綺けば眼がつぶれるとまでいわれた「巻物」が、今まさに家康の手によってひらかれようとしている。
しょくだいひきょ「紙燭を!」といわれて本多忠勝が燭台を引寄せる、刹那対立の陰から躍りでた真黒装束の曲者一人、と
い
う。「家康!」と喚きざま燭台を蹴かえして、家康に斬つけた。たおれて消える灯、仰天した忠勝が、「出合え方々、曲者でござる」音一人の
人間である。「曲者曲者!」辰巳之助も必死に叫びながら、差添を抜いて家康を庇おうとよった。しかしその時、すでに曲者はこの室の外へ逃れていた。
CE「庭だ、追え、忠勝」家康が絶叫した。
ついたて
まっ
くろしょうぞく
US
さしぞえ」
とざ
かがり、
おい
ののし
「秘巻を奪って逃げたぞ。」「庭だ!」忠勝も喚きながら庭へ。車、駅「門を閉せ」「木戸を固めろ」「篝を、灯を」ののの
。口々に罵る声、陣中は湧かえる騒ぎ。そのまに忠勝は、曲者を庭隅の木戸へ追詰めていた。「子供だな」忠勝は曲者の体をみつめながらいった。「さりとは健気な奴、名乗れ、拙者は徳川の家人、本多忠勝だ」「平八郎か」曲者は不敵に笑った。「相手にとって不足なしだ、己は甲斐党三好珠助という、さ、こい!」はたして珠助であった。・平八郎忠勝と珠助の一騎討は如何に、秘宝「天」の一巻は無事に珠助の物となるか?知際、
、、
。
けなげ
けにん-
おれ一
?龍窟秘譚
伊賀者討たれ
時を同じゅうして!
しな
とS船形山下流、西条村に泳ぎついた鬼之、狗真の二人は、村の郷士坂本信兵衛に救?________________
いかが
ならずもの
ほうび、
さしつか
ひもと
臆病一番首
S「や、これは?」と驚く家康。
服用
したと「信玄秘蔵の軍書、その中『天』の一巻に相違ござりませぬ」「正に違いない、如何いたしてこれを?」「新府の町に住む破落戸、熊三郎と申す者よりの献上にござります、褒美として銀二貫目差遣わしてございます」
金「うむ」家康にこっと笑ってうなずくと、しずかに一巻の紐をといた。
武田家の秘文、みだりに綺けば眼がつぶれるとまでいわれた「巻物」が、今まさに家康の手によってひらかれようとしている。
しょくだいひきょ「紙燭を!」といわれて本多忠勝が燭台を引寄せる、刹那対立の陰から躍りでた真黒装束の曲者一人、と
い
う。「家康!」と喚きざま燭台を蹴かえして、家康に斬つけた。たおれて消える灯、仰天した忠勝が、「出合え方々、曲者でござる」音一人の
人間である。「曲者曲者!」辰巳之助も必死に叫びながら、差添を抜いて家康を庇おうとよった。しかしその時、すでに曲者はこの室の外へ逃れていた。
CE「庭だ、追え、忠勝」家康が絶叫した。
ついたて
まっ
くろしょうぞく
US
さしぞえ」
とざ
かがり、
おい
ののし
「秘巻を奪って逃げたぞ。」「庭だ!」忠勝も喚きながら庭へ。車、駅「門を閉せ」「木戸を固めろ」「篝を、灯を」ののの
。口々に罵る声、陣中は湧かえる騒ぎ。そのまに忠勝は、曲者を庭隅の木戸へ追詰めていた。「子供だな」忠勝は曲者の体をみつめながらいった。「さりとは健気な奴、名乗れ、拙者は徳川の家人、本多忠勝だ」「平八郎か」曲者は不敵に笑った。「相手にとって不足なしだ、己は甲斐党三好珠助という、さ、こい!」はたして珠助であった。・平八郎忠勝と珠助の一騎討は如何に、秘宝「天」の一巻は無事に珠助の物となるか?知際、
、、
。
けなげ
けにん-
おれ一
?龍窟秘譚
伊賀者討たれ
時を同じゅうして!
しな
とS船形山下流、西条村に泳ぎついた鬼之、狗真の二人は、村の郷士坂本信兵衛に救?________________
あるじ
ささや
いぶか
うらな
臆病一番首
%われてその家に招かれたが、夕食にかかる前のこと、主人信兵衛がそっと二人の部
屋へやってきて囁くように、「御出立の用意をなさいませ」といった。「何故?」審るように狗真がきく。「二名の怪しき奴が、先程から裏納屋のあたりに忍んで、この家の様子を伺っております。かならず徳川方の廻し者に相違ありませぬ」「そうか」うなずいた狗真。.「どうする、保科?」
なら
、もう「この家に迷惑がかかってはならぬ、すぐさま脱出よう!」「行く先は?」「珠助の身上も気遣われるが、一刻を争う場合だ、何よりも先に京へ上って、褐姫君をお探し申さねばなるまい」「よし、京へいくときまった!」ち
、血管、本、狗真は頷いて主人に振返り、「それでは申し兼ねるがいそいで食事の馳走にあずかりたい」「よろしゅうござる、仕度はできております」
ぬけで
みのうえ」
ちそう
「きんすなにがし一
まれ
おりがみ
おしいただ
いとま
たちあが
?龍窟秘譚
すぐに食事に運ばせる。之、発真の二人は手早くすませて任度、主人信兵衛はやがて金子若干を取出して、「はばかりながら御旅用に」と、さし出し、別に二刀の銘刀を持ってきて、「いずれも家重代のもの、斬味は古今に稀なりと折紙がござる、御差料に」とすすめた。
でも、辞退すべき場合でない。狗真は二つとも拝頂いて受け、銘刀は二人して腰に着けて、やがて暇を告げて立上った。「さらば御主人」「御武運長久を祈りまする」
主人信兵衛に送られて、脇門からそっと外へ出た二人、闇を伝って栗林の中へ走りこむと、足にまかせて走りだした。への
めざすは鰍沢、そこから市川をぬけ、富士川を下山へわたって蒲原へでる、そこで東海道を一路京へといく順路である。・二刻あまりも走りつづけた狗真、鬼之の両名、とある谷間の破寺をみつけたので、少し足を休めようと、縁先へ廻って中を窺った。久しく廃寺になっていたものとみ
ぼうぼうおいしげ。え、軒は傾き床は落ち、草は茫々と生茂って、狐狸の棲家かと疑われるばかり、も
あるじ
くりばやし
かじかざわ
かんばら」
ふたとき。
やれでら
あれでら
こり、すみカー、?________________
ささや
いぶか
うらな
臆病一番首
%われてその家に招かれたが、夕食にかかる前のこと、主人信兵衛がそっと二人の部
屋へやってきて囁くように、「御出立の用意をなさいませ」といった。「何故?」審るように狗真がきく。「二名の怪しき奴が、先程から裏納屋のあたりに忍んで、この家の様子を伺っております。かならず徳川方の廻し者に相違ありませぬ」「そうか」うなずいた狗真。.「どうする、保科?」
なら
、もう「この家に迷惑がかかってはならぬ、すぐさま脱出よう!」「行く先は?」「珠助の身上も気遣われるが、一刻を争う場合だ、何よりも先に京へ上って、褐姫君をお探し申さねばなるまい」「よし、京へいくときまった!」ち
、血管、本、狗真は頷いて主人に振返り、「それでは申し兼ねるがいそいで食事の馳走にあずかりたい」「よろしゅうござる、仕度はできております」
ぬけで
みのうえ」
ちそう
「きんすなにがし一
まれ
おりがみ
おしいただ
いとま
たちあが
?龍窟秘譚
すぐに食事に運ばせる。之、発真の二人は手早くすませて任度、主人信兵衛はやがて金子若干を取出して、「はばかりながら御旅用に」と、さし出し、別に二刀の銘刀を持ってきて、「いずれも家重代のもの、斬味は古今に稀なりと折紙がござる、御差料に」とすすめた。
でも、辞退すべき場合でない。狗真は二つとも拝頂いて受け、銘刀は二人して腰に着けて、やがて暇を告げて立上った。「さらば御主人」「御武運長久を祈りまする」
主人信兵衛に送られて、脇門からそっと外へ出た二人、闇を伝って栗林の中へ走りこむと、足にまかせて走りだした。への
めざすは鰍沢、そこから市川をぬけ、富士川を下山へわたって蒲原へでる、そこで東海道を一路京へといく順路である。・二刻あまりも走りつづけた狗真、鬼之の両名、とある谷間の破寺をみつけたので、少し足を休めようと、縁先へ廻って中を窺った。久しく廃寺になっていたものとみ
ぼうぼうおいしげ。え、軒は傾き床は落ち、草は茫々と生茂って、狐狸の棲家かと疑われるばかり、も
あるじ
くりばやし
かじかざわ
かんばら」
ふたとき。
やれでら
あれでら
こり、すみカー、?________________
すさま
おちうど
うるお
しゅみだん
臆病一番首
の凄じい有様も、人眼をはばかる落人の身にはかえって幸い。路線は、「ここなら安心であろう」と頷きあって中へはいった。清水をくんで喉を潤し、足をのばして疲れを休めようとする、と―――破れはてた本堂須弥壇のあたりが、ぼう。っと明るくなった。「やっ!」と狗真が驚いて、「あれを見ろ、保科」と指差す刹那、天井のあたりで、この世のものとは思われぬ声で、
山隊「ひひひひ」笑うやつがある。二人は刀を引寄せて身構えたが、なにを思ったか狗真、つと鬼之の耳に口をよせて、「外へ出ろ、これは変化の仕業ではない、察するところ我らの跡を追ってきた奴が、伊賀者か甲賀者で、忍術をもって我らを許そうとするにちがいない」「己もそう思う、変化にしては妖気がない、狐狸の悪戯にしては陰の気がたため、忍術者に相違ない」「そうだ、外へでよう!」
二人は身仕度をととのえると、ぱっと縁先から外へでた。「あっ!」不意をくらって、荒れはてた庭先の叢に隠れていた二名の武士、いずれ
たぶらか
いたずら
くさむら」
ふともも
くらま
このまいず
悪龍窟秘譚
もろはの装束をしたのが、愛して立ち上がった。「白痴者!」狗真が喚きざま抜討ちに斬つけた。横っとびに刀を避けようとした一人、太腿を深く割られたから、二三間横ざまにつっ走って倒れた。「長谷仲林の子狗真、大仏の党の保科鬼之を知らぬか、伊賀甲賀の汚れた忍術ごときで、我らの眼を眩せると思うか」、そ
の「両人とも首を貰った、覚悟せよ!」
鬼之も喚きざま残る一人につめよった。折しも木間を出る月、林中さながら昼のごとく、二勇少傑の面上を照して凄じくも美しい。
必殺の意気鋭くつめ寄る鬼之、伊賀者は飢えたる狼の如く、忍び装束の隙からじっと鬼之の眼をみつめていたが、ふいに、「――!」無言の気合、ひらり身を躍らせるよと見えたが、ぱっと姿をかき消してしまった。
長い間「やっ!」と驚く鬼之、振返るとこはいかに、狗真の姿もそこにはなかった。狗真も消えてしまったのだ。狗真はいずこへ?
(もし質音
おおかみ
さあい
213
2015年05月?________________
おちうど
うるお
しゅみだん
臆病一番首
の凄じい有様も、人眼をはばかる落人の身にはかえって幸い。路線は、「ここなら安心であろう」と頷きあって中へはいった。清水をくんで喉を潤し、足をのばして疲れを休めようとする、と―――破れはてた本堂須弥壇のあたりが、ぼう。っと明るくなった。「やっ!」と狗真が驚いて、「あれを見ろ、保科」と指差す刹那、天井のあたりで、この世のものとは思われぬ声で、
山隊「ひひひひ」笑うやつがある。二人は刀を引寄せて身構えたが、なにを思ったか狗真、つと鬼之の耳に口をよせて、「外へ出ろ、これは変化の仕業ではない、察するところ我らの跡を追ってきた奴が、伊賀者か甲賀者で、忍術をもって我らを許そうとするにちがいない」「己もそう思う、変化にしては妖気がない、狐狸の悪戯にしては陰の気がたため、忍術者に相違ない」「そうだ、外へでよう!」
二人は身仕度をととのえると、ぱっと縁先から外へでた。「あっ!」不意をくらって、荒れはてた庭先の叢に隠れていた二名の武士、いずれ
たぶらか
いたずら
くさむら」
ふともも
くらま
このまいず
悪龍窟秘譚
もろはの装束をしたのが、愛して立ち上がった。「白痴者!」狗真が喚きざま抜討ちに斬つけた。横っとびに刀を避けようとした一人、太腿を深く割られたから、二三間横ざまにつっ走って倒れた。「長谷仲林の子狗真、大仏の党の保科鬼之を知らぬか、伊賀甲賀の汚れた忍術ごときで、我らの眼を眩せると思うか」、そ
の「両人とも首を貰った、覚悟せよ!」
鬼之も喚きざま残る一人につめよった。折しも木間を出る月、林中さながら昼のごとく、二勇少傑の面上を照して凄じくも美しい。
必殺の意気鋭くつめ寄る鬼之、伊賀者は飢えたる狼の如く、忍び装束の隙からじっと鬼之の眼をみつめていたが、ふいに、「――!」無言の気合、ひらり身を躍らせるよと見えたが、ぱっと姿をかき消してしまった。
長い間「やっ!」と驚く鬼之、振返るとこはいかに、狗真の姿もそこにはなかった。狗真も消えてしまったのだ。狗真はいずこへ?
(もし質音
おおかみ
さあい
213
2015年05月?________________
4月下の乱刃
臆病一番
一息に追いつめて斬ろうと、殺気鋭く進んだとき、進退きわまった伊賀者は、ひらり身をおどらすよと見るや、得意の忍術で煙のように体を消した。で、「あ!」といってふり向く鬼之。見ると意外や、先にもう一人の伊賀者を斬った長谷狗真の姿がない、狗真が見えないのだ。首「どうした狗真?」わめく鬼之。
「狗真、どこにいるんだ?」と戻りかかる刹那、空を切って飛びきたる一剣、びゅっ!と耳をかすめる、「頭の悪さ、美「やっ!」身をかがめて外しざま、ここと思うあたりをひっ払ったが、風を切るばかりで手ごたえがない、苛って左右へ眼をくばる、隙!「――!」陰の気合、背後にせまると思うより疾く、びゅっ!びゅっ!と無二無三に斬つけてきたる暗殺剣だ。すでに時貸事貸の事な「うぬ!くそっ!」鬼之必死に避けるが、姿の見えぬ相手だから、次第に足場を失って後へ後へと退る。このままでは斬られる、と思った瞬間、鬼之の頭にちらとひらめいた考えがあった。
いらだ。
はや
さが
じんせい
きっさき」
?龍窟秘譚
「この集は壁きをして行う、光の下では待もきかめに精進あるまい」「よし!と思うとそのままぱっと雑木林の中を横へ、青白く澄きった月光のあふれる草地の方へと身を避けた。伊賀者は追うことに気をとられていた。鬼之の後から草地へでる、見ると月光を浴びてくっきりと浮びでた体。「来い!」と鬼之、隙を見せて誘う。伊賀者はまだ自分の姿が相手に見えぬとおもっていたから、隙に乗って不用意によった。「――!」無言の殺意、刃勢鋭く斬りつける伊賀者の切尖わずかに外して右へ、避けると見せたが、
前日、「えやッ!」肺腑を絞る絶叫、逆にかえした鬼之の剣、意外の奇襲にあわせかねた悪伊賀者の腰を深く斬る。
「む――」いて退こうとする奴を間も与えず、踏込んで鬼之真向へ一刀、骨まで徹れと斬った。「ざ、残念」ぽろり刀を落して、空をつかみながら後へ、よろめきながら倒れると、そのまま、哀れ伊賀者は絶命した。ほっとした鬼之。「長谷!狗真はどこだ」大声に呼びたてながら破寺の方へ戻ってくると、草の中に倒れている者がある、ばっと躓いたから吃驚して、狗真斬られしかと抱起すと、
ふみこ
とお
「やれでら」
つまず
だきおこ?________________
臆病一番
一息に追いつめて斬ろうと、殺気鋭く進んだとき、進退きわまった伊賀者は、ひらり身をおどらすよと見るや、得意の忍術で煙のように体を消した。で、「あ!」といってふり向く鬼之。見ると意外や、先にもう一人の伊賀者を斬った長谷狗真の姿がない、狗真が見えないのだ。首「どうした狗真?」わめく鬼之。
「狗真、どこにいるんだ?」と戻りかかる刹那、空を切って飛びきたる一剣、びゅっ!と耳をかすめる、「頭の悪さ、美「やっ!」身をかがめて外しざま、ここと思うあたりをひっ払ったが、風を切るばかりで手ごたえがない、苛って左右へ眼をくばる、隙!「――!」陰の気合、背後にせまると思うより疾く、びゅっ!びゅっ!と無二無三に斬つけてきたる暗殺剣だ。すでに時貸事貸の事な「うぬ!くそっ!」鬼之必死に避けるが、姿の見えぬ相手だから、次第に足場を失って後へ後へと退る。このままでは斬られる、と思った瞬間、鬼之の頭にちらとひらめいた考えがあった。
いらだ。
はや
さが
じんせい
きっさき」
?龍窟秘譚
「この集は壁きをして行う、光の下では待もきかめに精進あるまい」「よし!と思うとそのままぱっと雑木林の中を横へ、青白く澄きった月光のあふれる草地の方へと身を避けた。伊賀者は追うことに気をとられていた。鬼之の後から草地へでる、見ると月光を浴びてくっきりと浮びでた体。「来い!」と鬼之、隙を見せて誘う。伊賀者はまだ自分の姿が相手に見えぬとおもっていたから、隙に乗って不用意によった。「――!」無言の殺意、刃勢鋭く斬りつける伊賀者の切尖わずかに外して右へ、避けると見せたが、
前日、「えやッ!」肺腑を絞る絶叫、逆にかえした鬼之の剣、意外の奇襲にあわせかねた悪伊賀者の腰を深く斬る。
「む――」いて退こうとする奴を間も与えず、踏込んで鬼之真向へ一刀、骨まで徹れと斬った。「ざ、残念」ぽろり刀を落して、空をつかみながら後へ、よろめきながら倒れると、そのまま、哀れ伊賀者は絶命した。ほっとした鬼之。「長谷!狗真はどこだ」大声に呼びたてながら破寺の方へ戻ってくると、草の中に倒れている者がある、ばっと躓いたから吃驚して、狗真斬られしかと抱起すと、
ふみこ
とお
「やれでら」
つまず
だきおこ?________________
ひとたち
こつ
しょせん
こつ
しょせん
- さきに一刀太腿を割られた伊賀者であった。魚のう(武真で
す「貴様か――」と振捨てて行こうとすると、、、、
、「しばらく、しばらく待たれい」と苦痛を堪えて伊賀者が声をかけた。
間「何か用か?」
「け、健気な働き、感じいった、所詮拙者は助からぬ命、最後の功徳にお教え申す首ことがござる、こ、これへ!」
鬼之がそばへよると、「お身方は、富士川を下って蒲原へ出られる積りであろうが、川添いの宿々には、すでに徳川家の網が張ってござる。府中までの道中は危険、これより川を越して波木井より山に入り、薩陀峠の裏を越して遠州へ出る外にはござらぬ、最期のはなむけ、疑われな!」
いい終ると力つきてか、伊賀者はばったり前へのめって、気息えんえんだ、鬼之は思わずその手をとって、「恭けない、礼を申すぞ!」と頭を垂れた。と――その時どこやら遠くの方でかすかによぶ人の声。
臆病一番首
さったとうげ」
さいご」
「あっ狗真」と立上った鬼之、「どこだ、狗真!」と大声に叫びながら、かすかに聞える声の方へ進んでいった。声は次第に近くなる。「鬼之―」「狗真――」互に呼びあいながら草地を雑木林の方へ進んで行くと、ふいに鬼之は足を踏滑らした。、「あっ!」と茂みに捉まろうとしたが遅し、そのまま鬼之は黒洞々たる箕穴の中へおちていった。
こくどうどう|
おとしあな
?龍窟秘譚
自源斎と家康
ねら一
「ふたたび、時を同じゅうして。
古府の城中、徳川家康の首を狙って、その屋形深く忍びこんだ三好珠助は、家康の首にかえ難き武田家の秘宝、軍書五巻の中「天」の一巻を見るより、これを奪って退れたが、木戸をとざされ門を固められて逃場を失い、あまつさえ徳川家随一の
豪傑本多平八郎忠勝に詰よられて、絶体絶命のどたん場に立っていた。「平叫忠勝は法城寺と号する大太刀を正眼に構えてじりじりと詰寄ったが、月下に小太
にげば
のが
「つめ」?________________
、「しばらく、しばらく待たれい」と苦痛を堪えて伊賀者が声をかけた。
間「何か用か?」
「け、健気な働き、感じいった、所詮拙者は助からぬ命、最後の功徳にお教え申す首ことがござる、こ、これへ!」
鬼之がそばへよると、「お身方は、富士川を下って蒲原へ出られる積りであろうが、川添いの宿々には、すでに徳川家の網が張ってござる。府中までの道中は危険、これより川を越して波木井より山に入り、薩陀峠の裏を越して遠州へ出る外にはござらぬ、最期のはなむけ、疑われな!」
いい終ると力つきてか、伊賀者はばったり前へのめって、気息えんえんだ、鬼之は思わずその手をとって、「恭けない、礼を申すぞ!」と頭を垂れた。と――その時どこやら遠くの方でかすかによぶ人の声。
臆病一番首
さったとうげ」
さいご」
「あっ狗真」と立上った鬼之、「どこだ、狗真!」と大声に叫びながら、かすかに聞える声の方へ進んでいった。声は次第に近くなる。「鬼之―」「狗真――」互に呼びあいながら草地を雑木林の方へ進んで行くと、ふいに鬼之は足を踏滑らした。、「あっ!」と茂みに捉まろうとしたが遅し、そのまま鬼之は黒洞々たる箕穴の中へおちていった。
こくどうどう|
おとしあな
?龍窟秘譚
自源斎と家康
ねら一
「ふたたび、時を同じゅうして。
古府の城中、徳川家康の首を狙って、その屋形深く忍びこんだ三好珠助は、家康の首にかえ難き武田家の秘宝、軍書五巻の中「天」の一巻を見るより、これを奪って退れたが、木戸をとざされ門を固められて逃場を失い、あまつさえ徳川家随一の
豪傑本多平八郎忠勝に詰よられて、絶体絶命のどたん場に立っていた。「平叫忠勝は法城寺と号する大太刀を正眼に構えてじりじりと詰寄ったが、月下に小太
にげば
のが
「つめ」?________________
ささほ
めのまえ
ろうぜきもの
首
番
~「うぬ、曳かれ者の小唄」辰巳之助は怒って、
「それ!」と合図。声に応じて軍卒両名、長柄の槍を持ってつかつかと柱の下へ進み寄った。ときどき光る笹穂の槍をかちり、狗真の眼前で合せるとさっと引いた。「ああ、殺られる」と群衆が思わず息をのんだ刹那。「その仕置させぬ!」と叫んで竹矢来の一部を踏破り、刑場へおどり出した者がある。三好珠助だ!「あっ、狼藉者!」と辰巳之助が立上った時、珠助は隼のように跳んで、すでに槍をとった軍卒二人をその場に斬伏せ、磔柱を背にきっと身構えていた。早業である。
「おお三好」柱の上から狗真が叫ぶ。臆「長谷、もう大丈夫だ」
なのとしてられた長崎「猫ない」言葉をかわす、眼は涙だ。「ええ何をぼんやりいたしている。斬れ、狼藉者共を、斬ってしまえ!」、「辰巳之助が喚く。「それ掛れ!」
で最葉、軍事の合での田楽、「わあっ!」四五十人の軍兵手に手に白刃を振かざして、詰寄った。近寄る者を二三人、草を
めのまえ
ろうぜきもの
首
番
~「うぬ、曳かれ者の小唄」辰巳之助は怒って、
「それ!」と合図。声に応じて軍卒両名、長柄の槍を持ってつかつかと柱の下へ進み寄った。ときどき光る笹穂の槍をかちり、狗真の眼前で合せるとさっと引いた。「ああ、殺られる」と群衆が思わず息をのんだ刹那。「その仕置させぬ!」と叫んで竹矢来の一部を踏破り、刑場へおどり出した者がある。三好珠助だ!「あっ、狼藉者!」と辰巳之助が立上った時、珠助は隼のように跳んで、すでに槍をとった軍卒二人をその場に斬伏せ、磔柱を背にきっと身構えていた。早業である。
「おお三好」柱の上から狗真が叫ぶ。臆「長谷、もう大丈夫だ」
なのとしてられた長崎「猫ない」言葉をかわす、眼は涙だ。「ええ何をぼんやりいたしている。斬れ、狼藉者共を、斬ってしまえ!」、「辰巳之助が喚く。「それ掛れ!」
で最葉、軍事の合での田楽、「わあっ!」四五十人の軍兵手に手に白刃を振かざして、詰寄った。近寄る者を二三人、草を
病
やいば
かけ
蓮くように戦った見方をかえして有真の成んを放っ。きっと柱をとび下りた狗真、「虫けら共逃げるな」
叫びざま、倒れている奴の刃を拾いとると、悪鬼のごとく髪ふり乱して、面もふらず軍兵の中へ斬って行った。
同城県思うその時だ。竹矢来の外でわっわっと騒ぐ人声、何事と見れば馬を駆って駈つけてきた一少年、群衆を押分けて馬のまま、ばりばりばっと竹矢来を踏破りながら、乱闘の刑場へさっと乗入れてきた。「やっ、狗真無事だったか」馬上で叫んだのはいうまでもない、百姓馬を煽って駈つけた保科鬼之だ。「珠助もいるな!」「やあ鬼之か!」と珠助、狗真の二人は勇気百倍。鬼之は馬からとび下りると、小太刀を抜きざま、「助けるぞ!」
と喚いて斬入ってきた。辰巳之助は思わぬ曲者二人まであらわれ、しかも少年な%がら三人が三人腕がたつ、もし罪人を逃しでもしては一大事と声を喰らせて、画
あお
?龍窟秘譚
くせもの?________________
やいば
かけ
蓮くように戦った見方をかえして有真の成んを放っ。きっと柱をとび下りた狗真、「虫けら共逃げるな」
叫びざま、倒れている奴の刃を拾いとると、悪鬼のごとく髪ふり乱して、面もふらず軍兵の中へ斬って行った。
同城県思うその時だ。竹矢来の外でわっわっと騒ぐ人声、何事と見れば馬を駆って駈つけてきた一少年、群衆を押分けて馬のまま、ばりばりばっと竹矢来を踏破りながら、乱闘の刑場へさっと乗入れてきた。「やっ、狗真無事だったか」馬上で叫んだのはいうまでもない、百姓馬を煽って駈つけた保科鬼之だ。「珠助もいるな!」「やあ鬼之か!」と珠助、狗真の二人は勇気百倍。鬼之は馬からとび下りると、小太刀を抜きざま、「助けるぞ!」
と喚いて斬入ってきた。辰巳之助は思わぬ曲者二人まであらわれ、しかも少年な%がら三人が三人腕がたつ、もし罪人を逃しでもしては一大事と声を喰らせて、画
あお
?龍窟秘譚
くせもの?________________
220
しずか
むぞり一
ごうとう
首
番
一
Wっこり立っている。
この人、「や、曲者!」わっと騒ぎたつ旗本の面々。老翁は静に、
この「騒ぐなよ、耳が痛うてならぬ」
の珠助その声に驚いて見上げたが、、
、「あ、お祖父様」「珠助、帰りが手間どるで迎えにきたぞ」自源斎は無反二尺八寸という強刀を提げて自若と珠助をふり返った。
平八頭文、鉄、「血路をひらいて、そろそろ退散といたそうか」刀をとり直す時、「や、そこにいるは三好自源斎」と叫ぶ声がした、見れば屋形の縁先に、近習をしたがえた徳川家康が立っている。自源斎は大きく頷いて答えた。「いかにも入道自源でござる、三河殿には御武運めでたく在すことよな、久しき対面御健勝の態、まずまず祝着申そう」
ので
すが、「相変らず自源斎も味をやるの」本思
IC家康もしずかに頬笑んだ。
以「武田家隠退と聞いた時、さっそく人を遣わして随身をすすめたはずだが、二君にえずとてこべうまく断わられ、家康その折は大いに赤面したが、どうだ、今ここ
きんじゅ
病
臆
おわ、
しゅうちゃ
あだかたき」
しゃり、
「お断りじゃ」自源斎は頭を横に振った。「あの折はまだ家康公は、我らにとって他国の領主というまでであったが、今は旧主の仇敵、身を舎利になすとも徳川家の栗を喰う気はござらぬ!」「健気に云うの、さらば討ってとろうか」。「みごとお討ちなさるか」、
です。「それ!」
家康の声を合図に、ばらばらと現われた二十人あまりの鉄砲組、銃口を揃えて自源斎、珠助の二人を狙った。幻術滅法の印」
めっぽういん
つつぐちそろ
悪龍窟秘譚
ゆんで
自源斎にっこり笑って、「はははこれが公の必勝の法かな、さらば拙者も一法をお見せ申そう」そういって左手を高くあげた。
「それがし武田家を退いて山中に籠ること二十年、仙術自得に専念してようやく近&来遁法を会得仕った、が――由来神仙の術は俗法を忌むもの、一度幻術を行えば
とんぼうえとくつかまっ?________________
しずか
むぞり一
ごうとう
首
番
一
Wっこり立っている。
この人、「や、曲者!」わっと騒ぎたつ旗本の面々。老翁は静に、
この「騒ぐなよ、耳が痛うてならぬ」
の珠助その声に驚いて見上げたが、、
、「あ、お祖父様」「珠助、帰りが手間どるで迎えにきたぞ」自源斎は無反二尺八寸という強刀を提げて自若と珠助をふり返った。
平八頭文、鉄、「血路をひらいて、そろそろ退散といたそうか」刀をとり直す時、「や、そこにいるは三好自源斎」と叫ぶ声がした、見れば屋形の縁先に、近習をしたがえた徳川家康が立っている。自源斎は大きく頷いて答えた。「いかにも入道自源でござる、三河殿には御武運めでたく在すことよな、久しき対面御健勝の態、まずまず祝着申そう」
ので
すが、「相変らず自源斎も味をやるの」本思
IC家康もしずかに頬笑んだ。
以「武田家隠退と聞いた時、さっそく人を遣わして随身をすすめたはずだが、二君にえずとてこべうまく断わられ、家康その折は大いに赤面したが、どうだ、今ここ
きんじゅ
病
臆
おわ、
しゅうちゃ
あだかたき」
しゃり、
「お断りじゃ」自源斎は頭を横に振った。「あの折はまだ家康公は、我らにとって他国の領主というまでであったが、今は旧主の仇敵、身を舎利になすとも徳川家の栗を喰う気はござらぬ!」「健気に云うの、さらば討ってとろうか」。「みごとお討ちなさるか」、
です。「それ!」
家康の声を合図に、ばらばらと現われた二十人あまりの鉄砲組、銃口を揃えて自源斎、珠助の二人を狙った。幻術滅法の印」
めっぽういん
つつぐちそろ
悪龍窟秘譚
ゆんで
自源斎にっこり笑って、「はははこれが公の必勝の法かな、さらば拙者も一法をお見せ申そう」そういって左手を高くあげた。
「それがし武田家を退いて山中に籠ること二十年、仙術自得に専念してようやく近&来遁法を会得仕った、が――由来神仙の術は俗法を忌むもの、一度幻術を行えば
とんぼうえとくつかまっ?________________
くだ
&仙界より堕するを戒律とする。自源今日より俗界に降って、武田家再興の事にした
がうつもりなれば、戒律を破って、遁法の幻術をお見せ申そう。いざ!二十口の鉄砲一斉に撃たれい!」喝破し去って悠々と印をむすんだ。「珠助、よれ」
らいの間音で
は、今でのという刹那、、「撃て!」と叫ぶ命、同時に夜の闇をゆるがして二十挺の鉄砲、一斉にだだだあ
Urerut
にょぜめっぽうのいん
つんざ
もうもう一
病一番首
いきまよ
「如是滅法印!」自源斎の声が空を劈いた。とみる!湊々と立こめる煙硝の中に、自源斎と珠助の二人は忽として姿を消した。仰天した面々。「やっ!消えたぞ!」「それ木戸へ!門へ!」狼狽その極に達して、右往左往に行迷う人びと、だが二人はすでに城外遠く遁れ去っていたのである。
半刻の後――。自源斎と珠助は白根へぬけ、駒岳の宿を南へはずして、裏道伝いに信州高遠へと急いでいた。
国、地主ので
、日夜半若神子を越え不帰の峠にかかる、ちょうど中天に昇った月の光で、道は一筋、ヨ々と着を帯びて西へつづく。森林をうけた下道を右にうねり左に登りつってきた
たかとお
わかみこ
かえらず、
みたけ
つつじじょう」
えんえん
かがりび、
たむろ」
じんがまえ」
「少し休むかの」「はー」「月下の眺望も一興であろう」自源斎は、峠道のはずれにさし出ている見晴し台の方へと足をまげた。(0)「おお古府あたりまで見えます」珠助は東を指した。大、京海日キッ「うむ、御嶽の山を北にして、躑躅城はあのあたりかな」「?々とつらなる篝火は?」「濠外に屯する徳川家の陣構にそういない」。自源斎は次第に熱する口調だ。「御宗祖武田冠者義清公以来甲斐の頭梁として連綿五百有余年、陸奥守信虎君に至って甲斐を平定し、更に信玄公によって信濃、駿河までも領有した武田家の偉業も、ついに今日の悲運を見る。さぞや先霊怒らせ給うに相違ない、されど――」-自源斎の頬に涙が光った。「かく申す三好自源斎生きてあらんかぎりは、御偉業復興を計りますれば、何とぞ
黄泉より御冥助を垂れて、褐姫君の御安泰を護らせ給え、南無!」合掌するさまを幽見るより球助は思わず啜りあげて泣伏した。ので
、娘画あり
?龍窟秘譚
むっのかみ)
たま
こうせん
「みょうじょ
なむ」
すす
なきふ?________________
&仙界より堕するを戒律とする。自源今日より俗界に降って、武田家再興の事にした
がうつもりなれば、戒律を破って、遁法の幻術をお見せ申そう。いざ!二十口の鉄砲一斉に撃たれい!」喝破し去って悠々と印をむすんだ。「珠助、よれ」
らいの間音で
は、今でのという刹那、、「撃て!」と叫ぶ命、同時に夜の闇をゆるがして二十挺の鉄砲、一斉にだだだあ
Urerut
にょぜめっぽうのいん
つんざ
もうもう一
病一番首
いきまよ
「如是滅法印!」自源斎の声が空を劈いた。とみる!湊々と立こめる煙硝の中に、自源斎と珠助の二人は忽として姿を消した。仰天した面々。「やっ!消えたぞ!」「それ木戸へ!門へ!」狼狽その極に達して、右往左往に行迷う人びと、だが二人はすでに城外遠く遁れ去っていたのである。
半刻の後――。自源斎と珠助は白根へぬけ、駒岳の宿を南へはずして、裏道伝いに信州高遠へと急いでいた。
国、地主ので
、日夜半若神子を越え不帰の峠にかかる、ちょうど中天に昇った月の光で、道は一筋、ヨ々と着を帯びて西へつづく。森林をうけた下道を右にうねり左に登りつってきた
たかとお
わかみこ
かえらず、
みたけ
つつじじょう」
えんえん
かがりび、
たむろ」
じんがまえ」
「少し休むかの」「はー」「月下の眺望も一興であろう」自源斎は、峠道のはずれにさし出ている見晴し台の方へと足をまげた。(0)「おお古府あたりまで見えます」珠助は東を指した。大、京海日キッ「うむ、御嶽の山を北にして、躑躅城はあのあたりかな」「?々とつらなる篝火は?」「濠外に屯する徳川家の陣構にそういない」。自源斎は次第に熱する口調だ。「御宗祖武田冠者義清公以来甲斐の頭梁として連綿五百有余年、陸奥守信虎君に至って甲斐を平定し、更に信玄公によって信濃、駿河までも領有した武田家の偉業も、ついに今日の悲運を見る。さぞや先霊怒らせ給うに相違ない、されど――」-自源斎の頬に涙が光った。「かく申す三好自源斎生きてあらんかぎりは、御偉業復興を計りますれば、何とぞ
黄泉より御冥助を垂れて、褐姫君の御安泰を護らせ給え、南無!」合掌するさまを幽見るより球助は思わず啜りあげて泣伏した。ので
、娘画あり
?龍窟秘譚
むっのかみ)
たま
こうせん
「みょうじょ
なむ」
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なきふ?________________
_くみあわ
みまも一
凶「泣くな救助!武田家再興の旗をあぐるまでは、生きながらの鬼神となって、天地八荒に暴れ廻るのだ。起て!」、だから
、無言の「はっ!」珠助、声に応じてすっくと立った。質身信いたし、同「お祖父様」「珠助!」二人は互いの眼をもとめて、すっと剣を抜くより、月光にかざしてかっちり組合せた。今年高
1「武田家再興のために!」祖父と孫の体に、脈々と熱血が躍った。ああこの血、こ首の魂!燃えたつ勇猛心を高く、中天の月は、慈光を雨の如く降らしながら見戌っ
ていた。
「さ、行こう、京へ!」「京へ!」刃をおさめた二人が、峠路へ戻ろうと足をかえ臆すとたん、左右の叢からふいに、
「わあっ!」と現われ出た一群の野武士があった。先に立った熊のごとき男が、「それ!野詰めにして捕れ!」と命令するや、三十人余りの荒武者、手に手に野太刀を抜きつれて、ばらばらと二人の周囲をおっとり巻いた。とその時球助は何をみつけたか、魚な
ら
、最3「あっ!土佐魚房ではないか」と絶叫した。
目の不g峠のはいかに!魚房の現は意外の友蘭を生む、少葉の京都入込は?
くま
はらん
いりこみ
西へ西へ
おちい
あな
あな
?龍窟秘譚
狗真を探して走りまわるうち、足を踏はずして落入った穽の中、、、、「あっ!」と叫んで鬼之が身を起すと、闇の中から、戦した
の。「保科か?」といいながら探りよる声、りる時に外れといて「長谷か」のGUC
97J真の部《ま譚「うん」といって傍へきたのは狗真だった。画
「さっき伊賀者を一人斬った時、足場を誤ってこの錯の中へ落込んでしまったのだ、残った奴はどうした」
の
間の「斬って棄てた」外
国人、真すらついた鬼之はそこで、瀕死の伊賀者から注意されたことを手短かに話した。り「街道筋はすでに徳川方の手配厳重ということ、薩陀峠の裏を越して遠州へぬけるより外はあるまい」と素人異婚できる。今度、無い。「よし、そうしよう!」頷いた狗真、
、
、「だがこの穽をどうして出ようか」見上げれば高く月明の空が見える、弁のふちまでは少く見積っても二丈はありそ
ひんし」
ほか
あな
つきあかり
225?________________
みまも一
凶「泣くな救助!武田家再興の旗をあぐるまでは、生きながらの鬼神となって、天地八荒に暴れ廻るのだ。起て!」、だから
、無言の「はっ!」珠助、声に応じてすっくと立った。質身信いたし、同「お祖父様」「珠助!」二人は互いの眼をもとめて、すっと剣を抜くより、月光にかざしてかっちり組合せた。今年高
1「武田家再興のために!」祖父と孫の体に、脈々と熱血が躍った。ああこの血、こ首の魂!燃えたつ勇猛心を高く、中天の月は、慈光を雨の如く降らしながら見戌っ
ていた。
「さ、行こう、京へ!」「京へ!」刃をおさめた二人が、峠路へ戻ろうと足をかえ臆すとたん、左右の叢からふいに、
「わあっ!」と現われ出た一群の野武士があった。先に立った熊のごとき男が、「それ!野詰めにして捕れ!」と命令するや、三十人余りの荒武者、手に手に野太刀を抜きつれて、ばらばらと二人の周囲をおっとり巻いた。とその時球助は何をみつけたか、魚な
ら
、最3「あっ!土佐魚房ではないか」と絶叫した。
目の不g峠のはいかに!魚房の現は意外の友蘭を生む、少葉の京都入込は?
くま
はらん
いりこみ
西へ西へ
おちい
あな
あな
?龍窟秘譚
狗真を探して走りまわるうち、足を踏はずして落入った穽の中、、、、「あっ!」と叫んで鬼之が身を起すと、闇の中から、戦した
の。「保科か?」といいながら探りよる声、りる時に外れといて「長谷か」のGUC
97J真の部《ま譚「うん」といって傍へきたのは狗真だった。画
「さっき伊賀者を一人斬った時、足場を誤ってこの錯の中へ落込んでしまったのだ、残った奴はどうした」
の
間の「斬って棄てた」外
国人、真すらついた鬼之はそこで、瀕死の伊賀者から注意されたことを手短かに話した。り「街道筋はすでに徳川方の手配厳重ということ、薩陀峠の裏を越して遠州へぬけるより外はあるまい」と素人異婚できる。今度、無い。「よし、そうしよう!」頷いた狗真、
、
、「だがこの穽をどうして出ようか」見上げれば高く月明の空が見える、弁のふちまでは少く見積っても二丈はありそ
ひんし」
ほか
あな
つきあかり
225?________________
うだ。高の原「とびつくには高いな」呟くとたん、「あっ危い!」と叫んで鬼之が、いきなり狗真を突とばした。よろめいて穽の壁へ倒れかかる、同時にさっと黒い異様な獣が、空をきって横に飛んだ。「うぬ!」呻いた狗真、抜討ちに斬つける、ひらりと身をおどらせた獣、闇の中にきらきらと両眼を光らせながら、意。「うるるる、うるるる」と喉を鳴らせた。それを聞くより狗真はさっと刀を控えて、「八郎ではないか!」と叫んだ。
「うるるる」獣はもう一度喉を鳴らしたと思うと、しばらく闇をすかしていたが、癒やがて狗真が分ったらしく、真いい。
「きききき、うるるるる」とさもなつかしそうに喉を鳴らしながら、狗真の傍へ走りよってきた。ママ
のの「なんだ?」鬼之が審しげに訊く。この中でさ。「八郎だ、扇返しの戦いに、七釜谷の大崩壊の時、行衛知れずになった己の大猿だ」-「あ、大猿の八郎か
「うるるる」獣はもう一度喉を鳴らしたと思うと、しばらく闇をすかしていたが、癒やがて狗真が分ったらしく、真いい。
「きききき、うるるるる」とさもなつかしそうに喉を鳴らしながら、狗真の傍へ走りよってきた。ママ
のの「なんだ?」鬼之が審しげに訊く。この中でさ。「八郎だ、扇返しの戦いに、七釜谷の大崩壊の時、行衛知れずになった己の大猿だ」-「あ、大猿の八郎か
- 番
病
ななたに
ゆくえ
ななたに
はやぶさ」
ななたに
のり
?、龍窟秘譚
「そうだ」といて有真は、すりよってきた大震の人間をひしときしめた。・これぞ長谷狗真を乳児のころより養い育て、山谷の間に鍛えあげてくれた大猿である。七谿谷で河の魔神と乱闘した時、隼の五郎とよく戦って、四少年を救い、その後扇返しの瞼に織田方の勇将堀尾山城守の軍勢と奮戦した時、悪龍窟の妖姫の秘法で七絵谷の大崩壊に遭い、四少年ちりぢりになると同時に、行衛知れずとなっていたものである。譚「これは素的な味方だ!」と鬼之は勇躍して叫んだ。
「これから京へ乗こむにしても、この八郎がいれば千人力だぞ!」「そうだ、すこし面白くなってきたぞ」狗真もにっこりと頬笑みながら、八郎の頭を撫でさすってやった。す「うるる、うるるる」と大猿もしばらくは嬉しそうに、体をこすりつけたり、双手で狗真を抱いたりしていたが、やがて身を起すと、狗真の手をとって、ぐいぐいと引きはじめた。「なんだ?」と訊くと、何やら手真似をしながら、舜の片限へ引張ってゆく。例の
「行ってみろ」と鬼之もついて行くと、やがて大猿は身をて指示をする、覗く。☆と穴だ!
もろて
てまね
ゆびさし?________________
ななたに
ゆくえ
ななたに
はやぶさ」
ななたに
のり
?、龍窟秘譚
「そうだ」といて有真は、すりよってきた大震の人間をひしときしめた。・これぞ長谷狗真を乳児のころより養い育て、山谷の間に鍛えあげてくれた大猿である。七谿谷で河の魔神と乱闘した時、隼の五郎とよく戦って、四少年を救い、その後扇返しの瞼に織田方の勇将堀尾山城守の軍勢と奮戦した時、悪龍窟の妖姫の秘法で七絵谷の大崩壊に遭い、四少年ちりぢりになると同時に、行衛知れずとなっていたものである。譚「これは素的な味方だ!」と鬼之は勇躍して叫んだ。
「これから京へ乗こむにしても、この八郎がいれば千人力だぞ!」「そうだ、すこし面白くなってきたぞ」狗真もにっこりと頬笑みながら、八郎の頭を撫でさすってやった。す「うるる、うるるる」と大猿もしばらくは嬉しそうに、体をこすりつけたり、双手で狗真を抱いたりしていたが、やがて身を起すと、狗真の手をとって、ぐいぐいと引きはじめた。「なんだ?」と訊くと、何やら手真似をしながら、舜の片限へ引張ってゆく。例の
「行ってみろ」と鬼之もついて行くと、やがて大猿は身をて指示をする、覗く。☆と穴だ!
もろて
てまね
ゆびさし?________________
うな
↓「や、抜穴がある」
「うるるるる」呻ると共に、八郎は先になって抜穴の中へ入った。後について二人が、ほとんど這うようにして進んでゆくと、二曲り三曲り、抜穴はしばらく迷路のようにつづいていたが、やがて月の光がぼんやりと見えてきた。「しめた、出たぞ」叫んで鬼之、狗真の両名、勇みたって抜穴を出た。月はすでに傾きかかっている。が、コンです
。「よし、行こう!」とらすのはとて「京へ!」と二人は草鞋の紐をしめ直した。30歳の人の場
西へ、西へ!八郎をつれた二少傑は、道を波木井へとり、薩陀峠の裏をめざして、一路西へと急ぐのであった。たー。
わらじ
臆病一番首
「野武士加党」
かえらず、
たいまっ
ふりかざ
K文ろ
こちらは甲信の境、不帰の峠だ。山無し、
軍
事
、峠頂上の見晴し台でふいに現われ出た野武士の一団、松火を振翳しながらどっとおめいて、三好自源斎と球助の二人をおっ取巻いた。
間
人気「珠助、ぬかるな」と自源斎が刀の柄に手をかけた時、
おれ
ななたに
おれ。
?龍窟秘譚
「土佐魚房ではないか」と聞くより、野武士の一団を指揮していた水干姿の一少年が、「や、そういう声は」といいながら走り寄ってきた。
見る「三好珠助か」と答えたのは、まぎれもない土佐魚房だ。「これはどうした訳だ」に
組山参線)
の意「これは己の配下だ、わけを話そう」と魚房は振返った。「七辨谷の崩壊で、己は西に難を避けたが、道を誤って山中に踏迷ううち、ここにいる野武士達に会ったのだ、そこで悪龍窟の話、武田家再興のため、褐姫君を擁して旗をあげる企てなどを話すと、この野武士の一党も武田家の扶持を喰んだことのある者達で、一議に及ばず我らの企てに加担するといいだしたのだ」いう傍から野武士の頭株らしいのが、博士課ので「拙者は久良岐豪太郎と申す、よろしく」と挨拶をした。(1)重美理「うむ!」始終を聞おわった自源斎は頷いて、のの
、「旧恩を忘れず、武田家のために働こうという志、あっぱれであるぞ!」四「はっ」久良岐は頭をさげて、
ある年下の上典
いさつ
くらぎ
0242
きき?________________
↓「や、抜穴がある」
「うるるるる」呻ると共に、八郎は先になって抜穴の中へ入った。後について二人が、ほとんど這うようにして進んでゆくと、二曲り三曲り、抜穴はしばらく迷路のようにつづいていたが、やがて月の光がぼんやりと見えてきた。「しめた、出たぞ」叫んで鬼之、狗真の両名、勇みたって抜穴を出た。月はすでに傾きかかっている。が、コンです
。「よし、行こう!」とらすのはとて「京へ!」と二人は草鞋の紐をしめ直した。30歳の人の場
西へ、西へ!八郎をつれた二少傑は、道を波木井へとり、薩陀峠の裏をめざして、一路西へと急ぐのであった。たー。
わらじ
臆病一番首
「野武士加党」
かえらず、
たいまっ
ふりかざ
K文ろ
こちらは甲信の境、不帰の峠だ。山無し、
軍
事
、峠頂上の見晴し台でふいに現われ出た野武士の一団、松火を振翳しながらどっとおめいて、三好自源斎と球助の二人をおっ取巻いた。
間
人気「珠助、ぬかるな」と自源斎が刀の柄に手をかけた時、
おれ
ななたに
おれ。
?龍窟秘譚
「土佐魚房ではないか」と聞くより、野武士の一団を指揮していた水干姿の一少年が、「や、そういう声は」といいながら走り寄ってきた。
見る「三好珠助か」と答えたのは、まぎれもない土佐魚房だ。「これはどうした訳だ」に
組山参線)
の意「これは己の配下だ、わけを話そう」と魚房は振返った。「七辨谷の崩壊で、己は西に難を避けたが、道を誤って山中に踏迷ううち、ここにいる野武士達に会ったのだ、そこで悪龍窟の話、武田家再興のため、褐姫君を擁して旗をあげる企てなどを話すと、この野武士の一党も武田家の扶持を喰んだことのある者達で、一議に及ばず我らの企てに加担するといいだしたのだ」いう傍から野武士の頭株らしいのが、博士課ので「拙者は久良岐豪太郎と申す、よろしく」と挨拶をした。(1)重美理「うむ!」始終を聞おわった自源斎は頷いて、のの
、「旧恩を忘れず、武田家のために働こうという志、あっぱれであるぞ!」四「はっ」久良岐は頭をさげて、
ある年下の上典
いさつ
くらぎ
0242
きき?________________
230
よびあって
よしみ
病一番首
「拙者これより腹心の者を四方に放ち、再興の旗挙げまでには二千三千の野武士共を呼集め、華々しくひと合戦仕りましょう」「頼むぞ」自源斎がいった。「我らはこれより道を急いで京へのぼり、御遺孫褐姫君をお探し申し、将軍義輝公と誼を通じて、旗挙げの策をたてるつもりだ、野武士を狩集めたら、すぐに後より京へおいついてまいれ」
(2
)JK「委細承知いたしました」
種類、海国茶の為、山上の盟は成った。(「野武士久良岐の一党は別れて信州路へ、自源斎、珠助、魚房の三名は夜明けの光を踏んで西へ、高遠を南へぬけると、天龍川に添って飯田へと出た。
それから裏道を伝い伝って、三日めには木曾川を越し、美濃に入って一日、五日めには鈴鹿峠の裏越にさしかかっていた。1点。
三名が美濃へ入ると間もなく、二三人の旅装の武士が、見え隠れに後を跟けはじめたが、鈴鹿へかかるすこし前に、いつかどこかへ見えなくなってしまった。「珠助」自源斎は振返っていった。
コンポー「我らの後を最けていた奴め、今ごろは手配をして追いつくころに違いないぞ」
みの一
すずかとうば
きりじに」
ざさ
?龍窟秘譚
「まず峠の七八合目、その辺りで襲いかかるであろう」「道を変えましては?」と魚房が訊く、自源斎笑って、「怖いか?」O脚の人票は今
気に質。「いいえ、戦いは望むところです」
の
の「峠の上下はいずれへぬけるにも新関が邪魔だ、多少の危険を冒しても、この道の外に行くところはない、斬死の覚悟でまいろう!」「はっ!」二少年はきっと唇をひき結んで、風に鳴る小笹の音にも心を許さず、月の出に近き峠道を急ぎにいそいだ。「待て!」人気の、人「ふいに自源斎が二人を止めた。峠の七合目あたり、松並木が鬱蒼と茂っているところだ。岡になる。自歳魚の資)自分の
思い。「二人とも仕度せい」国の首学中てる「はっ」珠助と魚房、手早く袖ひきからげ、草鞋の紐を緊め直し、刀のめくぎへしめりをくれて用意をした。(
識減ら、思い出。外「もう間もなく出るぞ、二人とも優を離れるな、隙があったら峠の頂上へ走れ!」
うっそう
わらじ?________________
よびあって
よしみ
病一番首
「拙者これより腹心の者を四方に放ち、再興の旗挙げまでには二千三千の野武士共を呼集め、華々しくひと合戦仕りましょう」「頼むぞ」自源斎がいった。「我らはこれより道を急いで京へのぼり、御遺孫褐姫君をお探し申し、将軍義輝公と誼を通じて、旗挙げの策をたてるつもりだ、野武士を狩集めたら、すぐに後より京へおいついてまいれ」
(2
)JK「委細承知いたしました」
種類、海国茶の為、山上の盟は成った。(「野武士久良岐の一党は別れて信州路へ、自源斎、珠助、魚房の三名は夜明けの光を踏んで西へ、高遠を南へぬけると、天龍川に添って飯田へと出た。
それから裏道を伝い伝って、三日めには木曾川を越し、美濃に入って一日、五日めには鈴鹿峠の裏越にさしかかっていた。1点。
三名が美濃へ入ると間もなく、二三人の旅装の武士が、見え隠れに後を跟けはじめたが、鈴鹿へかかるすこし前に、いつかどこかへ見えなくなってしまった。「珠助」自源斎は振返っていった。
コンポー「我らの後を最けていた奴め、今ごろは手配をして追いつくころに違いないぞ」
みの一
すずかとうば
きりじに」
ざさ
?龍窟秘譚
「まず峠の七八合目、その辺りで襲いかかるであろう」「道を変えましては?」と魚房が訊く、自源斎笑って、「怖いか?」O脚の人票は今
気に質。「いいえ、戦いは望むところです」
の
の「峠の上下はいずれへぬけるにも新関が邪魔だ、多少の危険を冒しても、この道の外に行くところはない、斬死の覚悟でまいろう!」「はっ!」二少年はきっと唇をひき結んで、風に鳴る小笹の音にも心を許さず、月の出に近き峠道を急ぎにいそいだ。「待て!」人気の、人「ふいに自源斎が二人を止めた。峠の七合目あたり、松並木が鬱蒼と茂っているところだ。岡になる。自歳魚の資)自分の
思い。「二人とも仕度せい」国の首学中てる「はっ」珠助と魚房、手早く袖ひきからげ、草鞋の紐を緊め直し、刀のめくぎへしめりをくれて用意をした。(
識減ら、思い出。外「もう間もなく出るぞ、二人とも優を離れるな、隙があったら峠の頂上へ走れ!」
うっそう
わらじ?________________
とき」
おおすみ
もうしう
型自源斎の声の終らぬうち、人
の
国のハー「わあっ!」鬨の声をあげながら二三十人の荒武者が、道の左右から現われ出た。
するがのくに「それへまいられるは甲斐ノ党の落武者、三好自源斎と存ずる、これは駿河国の住人岡部大隅、家康公の命により御身の首を申受ける、覚悟あれ」ー「笑止なり岡部とやら、自源斎ほどの者を、百にも足らぬ手兵にて討てると思うか、こい!死骸の山を築いてくれるぞ!」日
重本のう)「うぬ吐ざいたり、それかかれ者共」わっとあがる鬨の声、、、、。「球助、魚房もぬかるな」なる名演新感番号を送信参の武叫んで自源斎は抜いた。
01C血闘鈴鹿峠
臆病一番首
ラインACE
しぐれざわ-
はる。
その時、峠を登ってくる三個の人影があった。これぞ保科鬼之、長谷狗真、並びに大猿の八郎である。時雨沢というのへかかると、遥かに遠く、わあーっという関の声だ。「長、軍兵うぶする一
たいまつ
こっち」
?龍窟秘譚
「道を変えるか」「これより外に鈴鹿を越える道はない、行ってみよう」
(日高郡大『足を早めて登る。
次第に近づく騒音、やがて松火の光に照されて争闘の様がはっきり見える場所までやってきた。」「此方へこい、様子を見よう」と鬼之が先に立って傍の山腹へ登っていった。しかし、長く見るまでもなく、あっと狗真が叫び声をあげた。「あ!見ろ、珠助だ、三好だ!」「「おお土佐魚房もいるぞ」「行け!」喚きかわすと同時に、二人は抜きつれて山腹を駈け下り、争闘の場へ斬込んだ。「リ
バー「三好、助勢するぞ」)のは
家具の中の人なら「魚房もぬかるな」最年
長さ、奥宮、日声を聞いて珠助、魚房、はっと振返ったがそれと見るより、「やっ、鬼之に狗真か」
が
233?________________
おおすみ
もうしう
型自源斎の声の終らぬうち、人
の
国のハー「わあっ!」鬨の声をあげながら二三十人の荒武者が、道の左右から現われ出た。
するがのくに「それへまいられるは甲斐ノ党の落武者、三好自源斎と存ずる、これは駿河国の住人岡部大隅、家康公の命により御身の首を申受ける、覚悟あれ」ー「笑止なり岡部とやら、自源斎ほどの者を、百にも足らぬ手兵にて討てると思うか、こい!死骸の山を築いてくれるぞ!」日
重本のう)「うぬ吐ざいたり、それかかれ者共」わっとあがる鬨の声、、、、。「球助、魚房もぬかるな」なる名演新感番号を送信参の武叫んで自源斎は抜いた。
01C血闘鈴鹿峠
臆病一番首
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はる。
その時、峠を登ってくる三個の人影があった。これぞ保科鬼之、長谷狗真、並びに大猿の八郎である。時雨沢というのへかかると、遥かに遠く、わあーっという関の声だ。「長、軍兵うぶする一
たいまつ
こっち」
?龍窟秘譚
「道を変えるか」「これより外に鈴鹿を越える道はない、行ってみよう」
(日高郡大『足を早めて登る。
次第に近づく騒音、やがて松火の光に照されて争闘の様がはっきり見える場所までやってきた。」「此方へこい、様子を見よう」と鬼之が先に立って傍の山腹へ登っていった。しかし、長く見るまでもなく、あっと狗真が叫び声をあげた。「あ!見ろ、珠助だ、三好だ!」「「おお土佐魚房もいるぞ」「行け!」喚きかわすと同時に、二人は抜きつれて山腹を駈け下り、争闘の場へ斬込んだ。「リ
バー「三好、助勢するぞ」)のは
家具の中の人なら「魚房もぬかるな」最年
長さ、奥宮、日声を聞いて珠助、魚房、はっと振返ったがそれと見るより、「やっ、鬼之に狗真か」
が
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あわひえくら
「むらが一
かみな
グ「おお、大猿八郎もいるな、しめた!」と叫んで勇躍、
「こっちへ来い!」と四少年傑士が一団となった。娘の無かった「四人揃った上は千人力だ、粟稗喰って育った駿河のへろへろ武者、百にも足らぬ奴ばら一人も余さず斬棄てる、こい!」と叫んで、群る軍兵の中へ斬って入る。「八郎、掛れ!」と命ぜられて大猿八郎、「うるるる」喉を鳴らしながら、これも久し振りの大暴れ、さも嬉しそうに、双腕をあげ、歯を噛鳴らしながら、敵の中へ躍りこんだ。
それを見た自源斎、にっこり笑うと大太刀を取直して、敵の大将岡部大隅へとつめ寄っていった。
同窓間で、「岡部とやら、まいろう!」
日間(くう「望むところだ」「自源の剣法は荒いぞ、駒ケ岳にて神人を相手に鍛えた自流、地獄への土産によく見て置け!」「?法無用、来い!」さっと繰出す槍、おう!とひっ払って寄る自源斎、大隅はとび退って、さっ、さっと稲妻のように突きたてる、十二三合もあわせたかと思う
臆病一番首
くりだ」
と、
だいおんじょう|
たたかい
おきざ
龍窟秘譚
刀に手をかける刹那、自源斎が踏込んで上段から斬下した。頭蓋骨を充分に割る、返す剣でぱっと喉笛を横ざまに斬裂いた。「がっ!」異様に呻いて倒れる岡部大隅、自源斎は刀に血ぶるいをくれて大音声、「聞け者共、岡部大隅を自源斎が討取ったぞ、命惜しき奴は逃げよ!」と名乗りをあげた。
聞くより駿河兵共、大将を討たれてなんの戦ぞ、逃げろ!と叫びかわしながらさっと退くとみる間に、手負も死者も置去りにして、ばらばらと逃散ってしまった。「見苦しい奴ばら、笑ってやれ!」自源斎の声に、四少年は血刀を振りながら声を揃えて、わっはっはと笑った。後出し,手刀士、
良
い「さ、急げ!追手がかかっては面倒だ」、新東大学1
日「はっ!」といずれも、自源斎について、血刀を提げたまま峠を上へ上へと登っていった。途中伏勢も出ず、峠の頂上へ登りつめるころには夜も白々と明けかかっていた。自源斎は頂上の足溜までくると、血刀をあげて西を指した。(でいい「見ろ、あすこに京の市がある!」青い四少年は、ほっと太息をつきながら、眼をあげた。もう
あしだまり
まち
いき?________________
「むらが一
かみな
グ「おお、大猿八郎もいるな、しめた!」と叫んで勇躍、
「こっちへ来い!」と四少年傑士が一団となった。娘の無かった「四人揃った上は千人力だ、粟稗喰って育った駿河のへろへろ武者、百にも足らぬ奴ばら一人も余さず斬棄てる、こい!」と叫んで、群る軍兵の中へ斬って入る。「八郎、掛れ!」と命ぜられて大猿八郎、「うるるる」喉を鳴らしながら、これも久し振りの大暴れ、さも嬉しそうに、双腕をあげ、歯を噛鳴らしながら、敵の中へ躍りこんだ。
それを見た自源斎、にっこり笑うと大太刀を取直して、敵の大将岡部大隅へとつめ寄っていった。
同窓間で、「岡部とやら、まいろう!」
日間(くう「望むところだ」「自源の剣法は荒いぞ、駒ケ岳にて神人を相手に鍛えた自流、地獄への土産によく見て置け!」「?法無用、来い!」さっと繰出す槍、おう!とひっ払って寄る自源斎、大隅はとび退って、さっ、さっと稲妻のように突きたてる、十二三合もあわせたかと思う
臆病一番首
くりだ」
と、
だいおんじょう|
たたかい
おきざ
龍窟秘譚
刀に手をかける刹那、自源斎が踏込んで上段から斬下した。頭蓋骨を充分に割る、返す剣でぱっと喉笛を横ざまに斬裂いた。「がっ!」異様に呻いて倒れる岡部大隅、自源斎は刀に血ぶるいをくれて大音声、「聞け者共、岡部大隅を自源斎が討取ったぞ、命惜しき奴は逃げよ!」と名乗りをあげた。
聞くより駿河兵共、大将を討たれてなんの戦ぞ、逃げろ!と叫びかわしながらさっと退くとみる間に、手負も死者も置去りにして、ばらばらと逃散ってしまった。「見苦しい奴ばら、笑ってやれ!」自源斎の声に、四少年は血刀を振りながら声を揃えて、わっはっはと笑った。後出し,手刀士、
良
い「さ、急げ!追手がかかっては面倒だ」、新東大学1
日「はっ!」といずれも、自源斎について、血刀を提げたまま峠を上へ上へと登っていった。途中伏勢も出ず、峠の頂上へ登りつめるころには夜も白々と明けかかっていた。自源斎は頂上の足溜までくると、血刀をあげて西を指した。(でいい「見ろ、あすこに京の市がある!」青い四少年は、ほっと太息をつきながら、眼をあげた。もう
あしだまり
まち
いき?________________
おわ
おわ
うしお一
「褐姫君の在す都、我らが武田家再興の旗をあげる京はあすこにある!」
四少年は思わず「わあっ!」と歓声をあげた。『悪龍窟の苦闘以来、幾転戦、ここにはじめて褐姫君在す京へ入らんとするのだ、潮のように湧きたつ胸中、
(
青
)「武田家再興のために!」襲
い
ますーー((四小傑は血刀をがっきと組んで叫んだ。その時東天を割って、赫々たる日輪は昇天した。あたかも武田家の未来を祝する如く、四少年傑士の勇を鼓舞するがごとく
かくか
臆病一番首
「行こうぞ!」自源斎は血刀を拭った。四人も仕度を直した。そして、輝かしい朝日の光を踏みながら、勇気りんりんと京へ向って峠を下って行った。し
たん
悪龍窟秘譚はこれで第一部をおわります。四少傑が京に入っての活躍、褐姫君をいただいて武田家再興の策動についてはこれを第二部として、近くまた、読者諸君の御愛読を乞うこととなりましょう。
おわ
うしお一
「褐姫君の在す都、我らが武田家再興の旗をあげる京はあすこにある!」
四少年は思わず「わあっ!」と歓声をあげた。『悪龍窟の苦闘以来、幾転戦、ここにはじめて褐姫君在す京へ入らんとするのだ、潮のように湧きたつ胸中、
(
青
)「武田家再興のために!」襲
い
ますーー((四小傑は血刀をがっきと組んで叫んだ。その時東天を割って、赫々たる日輪は昇天した。あたかも武田家の未来を祝する如く、四少年傑士の勇を鼓舞するがごとく
かくか
臆病一番首
「行こうぞ!」自源斎は血刀を拭った。四人も仕度を直した。そして、輝かしい朝日の光を踏みながら、勇気りんりんと京へ向って峠を下って行った。し
たん
悪龍窟秘譚はこれで第一部をおわります。四少傑が京に入っての活躍、褐姫君をいただいて武田家再興の策動についてはこれを第二部として、近くまた、読者諸君の御愛読を乞うこととなりましょう。
底本:「周五郎少年文庫 臆病一番首 時代小説集」新潮文庫、新潮社
2019(令和1)年10月1日発行
底本の親本:「少年少女譚海」
1932(昭和7)年6月号~1933(昭和8)年2月号
初出:「少年少女譚海」
1932(昭和7)年6月号~1933(昭和8)年2月号
※表題は底本では、「悪龍窟《あくりゅうくつ》秘譚《ひたん》」となっています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ
2019(令和1)年10月1日発行
底本の親本:「少年少女譚海」
1932(昭和7)年6月号~1933(昭和8)年2月号
初出:「少年少女譚海」
1932(昭和7)年6月号~1933(昭和8)年2月号
※表題は底本では、「悪龍窟《あくりゅうくつ》秘譚《ひたん》」となっています。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5-86)を、大振りにつくっています。
入力:特定非営利活動法人はるかぜ