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鏡(工事中)

最終更新:2020年01月21日 01:32

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鏡
山本周五郎


【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)外村重太夫《とのむらしげだゆう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)坂|蔵屋敷《くらやしき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定]
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+官」、第3水準1-92-56]


[#5字下げ]一[#「一」は中見出し]


鏡?________________

372
びつちゅうのかみ
すけむね
ならぬ堪忍
老中部屋へはいって来た太田備中守の顔色をみて、忠秋はすぐにいけなかったなと思った。いそいで来たためばかりではないらしく、肥えた資宗の厚い胸は眼につく
あおじろ、あぶらあせほどなみをうっていたし、いつも血色のよい額のあたりが蒼白く、膏汗をにじませてさえいた。|「御あいさつはどうであった」
讃岐守酒井忠勝がそうせきたてるのと共に、永井信濃、堀田加賀、老中ではないが特にこの席へ出ていた松平信綱など、みんな息をのんで備中守の答を待った。
だしゃい」「まことに、申上げようのなき御会釈にて、備中なんとも途方にくれてたち帰りまし
さぬきのかみ
しなの
ほった
た」
おお
「あくまで御承知はならぬと仰せか」「水戸の家名にかけても、との御意にございました」
酒井忠勝はじろりとふり向いた。そして、さっきからじっと眼を伏せたままでいる忠秋にむかい、その責任の在所を強調するように去った。
「豊後殿、お聞きなされたか」
こびと
りんか
鏡
「なにか御所存がおありなさるか」
忠秋はなおも黙っていた。いま大きな、はかり知れない大きな責任が、かれの肩へのしかかっている。一歩を誤れば幕府の威信が地に堕ちるし、また一歩を誤れば天下の騒乱になるかもしれないのだ。
それより半月ほどまえ、江戸城二の丸のやぐら下で、水戸家の家臣と本丸の御小人とが、つまらぬ事のゆきちがいから喧嘩になり、水戸家の家臣が御小人を斬って退いたという出来事があった。城中では閣議をひらいたうえ、老中から使者を立て、下手人の引渡しを求めたがきかれなかった。そこで一歩をゆずって、藩邸において死罪におこなうよう要求した。水戸家はこれをも拒んだのである。
―相手は御直参かも知れぬが水戸家の家臣とても直参同様である、同格の者の喧嘩であるから斬られ損、斬り得でよい。
そういうにべもない返答だった。水戸家がこれほど強硬に出ようとは思わなかったので老中は当惑した。当時、寛永年間において閣老の最も苦心したのは「幕府に絶対Sの威信をつける」ということだった。徳川百年の礎をかためるのは今である、鉄は赤?________________

374
けんせききゅうもん
さゆう
けいかく」
すなわ
Sいうちに鍛えなければならない、そのためには御三家といえども仮借がなかった。現に尾張家や紀伊家などには、一再ならず譴責や礼問が発せられた事実があった。こんどの出来事もおなじ意味で、内容の如何よりも水戸家の頭を抑えることが目的だったといえる。ところが水戸の頼房はまだ三十左右の若さだし、なかなか圭角の多い人だ
しゅんれっったから、はやくも老中の意向をみぬいて峻烈にこれを拒絶したのであった。
問題はその小さな事実から重大な局面へと飛躍した。即ち水戸家の云分を通すとすれば幕府の威信を失墜することになるし、幕府の威信を通すとすれば水戸家と正面衝
突をしなければならぬ。いま三度めの使者、太田備中守がなんの得るところもなく帰らって来たことによって、老中はまさにそのぬきさしならぬ位置にと立ったのである。
老中の責任者は阿部豊後守忠秋だった。酒井忠勝はほとんど礼問者のような態度でかれにつめ寄った。「黙っておられてはわかりません。なにか御思案があれば承わりましょう。中納言さまの御気性はこなたも御承知のとおりじゃ、三度まで使者を立てて成らぬとすると、穏かなことでは相済まぬと思われるが、どうか」「わたくしは、決してさようには思いません」「さように思わぬとは」
ならぬ堪忍
「中納言さまの御気性がどうあらせられましょうとも、老中よりの達はすなわち上様の御上意にございます。理由の如何にかかわらず御違背はかないませぬ」「忠秋の言葉はしずかだったが、そのしずかな調子には確信の響があった。讃岐守忠勝は挑むように笑って、
この「おなじことを何遍申しても大事のさばきはつきませんぞ、水戸さまが御承服なさればよし、万一あくまでならぬと盾をおつきなされたらどうする」「さような事はございません」「ないとはいわさぬ、現に十余日の日数を要し、三度まで上使を立てても御承服なさらぬではないか」「重ねて申上げます」。やはりしずかな声で、けれど決定的に忠秋は云った。、「御三家、いずかたさまに限らず、老中の申し達に御違背はあいなりません、押して我儘を仰せあれば御改易あるのみでございます」
誰かがいわなければならぬ言葉を、阿部忠秋がついに云った。言葉は簡単であるがその内容の重大さははかり知れない。それをいいきったことは老中の決意の固さを示納するのだ。酒井忠勝ははじめてにっと微笑し、黙って坐っている伊豆守信綱をかえり
鏡
わがまま
すわ
ずのかみ?________________

%みて云った。
「これを聞けば心配はない、帰って鎧櫃でもとり出して置きますかな」
よろいびっ
だいけんもつ
ならぬ堪忍
ていさつ
ささ
水戸藩に伝わっている書物にも、このときの騒ぎがなみなみならぬものとして記してある。幕府の決意が固いとみるや、水戸家では一戦のかくごで準備をはじめたし、懇親の大名たちも援助の使者を送った。『なかにも岡崎のあばれもの大監物水野忠善は我こそ先陣をつかまつらんとてはせつけまいりけり』というように書いてある。しかし監物忠善はしんそこ幕府に忠誠の人で、五万石の大名の身でいてみずから尾張城の偵察をしたほど、身も心も徳川宗家に捧げきっていたのだから、水戸家について江戸城へ弓をひくとは考えられない。これは誤伝でないとすれば水戸家の様子をさぐりに行ったものだと思う。とにかく水戸家ではかように騒然としていたが、幕府ではすぐにはなんとも動くようすがなかった。そして、間もなく礼日の登城日が来た。
忠秋は太田資宗をまねいた。剛気不屈の頼房はおそらく登城するにちがいない、この確執のなかで堂々と登城されては幕府の敗北である。「いかなる方法でもよい、必ず水戸さまの御登城をおとどめ申してまいるよう」
はばか
資宗は忠秋のいう意味を了解し、すぐに馬をとばして行った。太田資宗の妻は水戸家から来た。つまり頼房の妹である。そういう関係から特に忠秋はかれを選んだのであった。資宗がはせつけてゆくと、頼房の行列はもう水道橋を渡っていた。かれは馬を下り、頼房の乗物のそばへ近づいて云った。「備中守申上げます、憚りながら今日の御登城は御無用にねがいます」。
頼房は乗物の戸をあけた。「それは誰人の申しつけだ」「老中よりの申し達にございます」
濃い眉をきっとあげて、頼房は突き放すように去った。「老中どもの指図はうけぬ、駕籠やれ」、「しばらく」資宗は差添に手をかけていた。「「押して御登城とあらばやむを得ません、備中この場に腹をつかまつります。備中の屍を踏み越えておいであそばせ、御免」。
城を出るときから覚悟はきめていたのである。資宗は手早く衿をくつろげ差添を抜3いた。おどしと本心では気ぐみが違う、頼房はさすがに眼をつむれなかった。
鏡
まゆ
かご
さしぞえ一
しかばね」?________________

378
ぼうぜん
がんきよう
ならぬ堪忍
<「待て備中」本
資宗は顔をあげた。必死の眼だった。「よい、そのほうに免じて今日の登城はやめにする、乗物もどせ」音あらく閉まる乗物の戸を、資宗はなかば呆然と見まもっていた。資宗の報告をきいたとき、忠秋はひとこと御苦労と云ったきりだった。しかし心のうちでは勝利を叫んでいた。理由はどうあろうとも、頼房はその頑強な城の一角をゆ忍ずったのである。ひた押しに押して来た力にひと息のゆるみがあらわれたのだ。
|よし、ここで中納言どのと一騎討だ。忠秋はその日あかるい眉つきで屋敷に帰った。老中の職についてからほとんど表だけの生活をして来た忠秋は、その日めずらしく奥で夕食をとった。夫人朝子はみずから厨におり、心をこめた料理の品々で良人をもてなした。朝子は良人より七歳したの二十四歳で、すでに徳千代という世子、大和という女子の二人の子の母であった。
給仕の者は遠ざけてあった。僅な量の酒を、味わいながらしずかに飲むのが忠秋のこのみだった。激務の疲れが、そういうときに最も快く癒やされる、朝子はそれをよく知っていた。それでそういうときにはいつも給仕の者をしりぞけ、夫妻だけでくつ
おっと
やまと
わずか
とき
いそほ
ろいだ刻をすごすようにした。「このあいだじゅうは珍しい本が手にいりまして、おかしいことをいろいろと読みました。伊曾保物語と申すのですが、ご存じでございますか」「伊曾保物語とは聞かぬな」「異国の賢者のことを書きましたもので、鳥獣虫魚のことに托世態人情の善悪表裏をまことに巧に記してございます」。
伊曾保物語とはいうまでもなく「イソップ物語」である。ずいぶんはやく、すでに文禄年間に飜訳されていたし、ついで慶長本、元和には活字本まで出ていた。朝子はそれを読んだのであろう。「およろしければひとつふたつお話し申上げましょうか」そう云って、その寓話のなかから興ありげなものをひろって良人に話して聞かせた。
ほん文く
ぶんろく
鏡なし
ぐうわ」
きち
「奇智に富んだその話は忠秋をよろこばせた。朝子は求められるままにしばらく話を
続けていたが、やがてふと思出したように、A「これはお笑草でございますけれど、わたくしもさきごろ伊曾保の故智にならったこ?________________

さぎり
ならぬ堪忍
cmとがございます」
そう云って良人を見た。「ほう、それは聞きたいな」
はい「狭霧と申すはしたを御存じでいらっしゃいますか、お黒お黒とよくおからかいあそばしました……」「知っておる」「あのとおり色も黒く、武張ったことばかり好みまして、いつまでも男のようにたあいのないものでございましたが、ついさきごろから急にたちいのようすが変ってまいりました」
武家の妻がはしたのことなどを良人に話すためしはない。まして朝子の気質にはめずらしいことなので忠秋は興を唆られながら聴いていた。「肩肱を張ったあるきぶりにむすめらしい柔かみがつき、言葉のはしはしにもどことなし艶がみえてきました。やはり春の時はたがえぬものとおかしく存じておりましたが、そのうちに紅白粉さえつけはじめたのでございます」「それはさぞ面白い色になったであろう」語は「日頃からけかいなどは貶して見向きもいたしませんでしたから、まるで化粧のいた
てかたひじ
つや
ベにおしろい
まうま
わい
しかたも知らず、肌理のあらい、黒い顔へただ見まねでいたしますので、それはもう申上げようのない顔つきでございました。朋輩の者たちはよい慰みにいたしまして、ことさらおかしくなるように教え、かげでは手をうって笑っているようでございました。それがあまり可哀そうなので気をつけて遣わそうと存じましたが、あの気性でございますから、さてうちつけに申すのも気の毒と、わたくし少々思案いたしました」
朝子はつつましやかに微笑し、ちらと良人を見あげながら、しずかに続けた。「身に欠けたところのある者へ、あからさまにこうと申しましたら、申されたことがいかに忠言でも、その者の心にはなかなかすなおには受け入れられぬものでございます、わたくし伊曾保の故智をいろいろ考えまして、狭霧に鏡を一面つかわしました」「……」
忠秋は盃を置いた。妻の云おうとすることがただはしたの話だけでないことに気づいたのである。「狭霧はわたくしの遣わしました鏡で自分をよく見なおしたのでございましょうか、それとも遣わしたわたくしの心に気付いたのでございましょうか、それからはしぜん
と白粉の刷きかたも程よく、紅のつけかたもおかしくないようになってまいりまして、郷この頃ではどうやらむすめむすめしてきたようでございます」
さかずき?________________

つぶや
ならぬ堪忍
そう云って朝子はそっと微笑した。忠秋はその妻の眼をしばらくじっと見まもっていたが、やがて盃を手にとりながら、、、「かがみ……か」
と呟くように去った。忠秋が水戸家との紛議で心を労していることを朝子は知っていたのだ。そして、それとはいわずはしたのことに托して良人になにごとかを調したのである。忠秋は口のうちでなんども「鏡」とつぶやいてみた。妻はなにかを調している、鏡という言葉はべつのなにかをいい表しているのだ。
寝所へはいってからも、忠秋はそのことを考えつづけた。明日こそは水戸家へ行って頼房を説得しよう、名分を正して肯かれずば最後の手段に出るまで、そう心をきめていたのである。しかし妻の話はふかくかれを動かした。人の欠点をおもてから指摘せず、おのれみずから悟るようにしてやる、はしたにおける鏡のように、頼房にもそういう方法でのぞむのが万全だ、ではなにをもって鏡に代えるか。……忠秋は褥のなかでしずかに想いめぐらした。そしてずいぶん経ってから、ようやく是だと思うものを考えつき、かれは独りにっと微笑しながら頷いた。
翌日の午後、忠秋は下城してから平服のままで水戸屋敷へおとずれた。水戸家は殺気だっていた。殊に忠秋のおとずれを老中からの強硬な最後通牒の使とみたものか、
うなず
しとね」
うなず
さいごつうちよう
ふうかん
いつかつ一
家士たちはあからさまに敵意を示し、こわ高に一戦の意気を誇示する者さえもあった。||不用意に来たらそれまでだった。
にバー忠秋はいまさらのごとく妻の諷諫をきいたことをよろこんだ。
頼房ははじめから一喝をくれるつもりだった。備中守のために登城を中止したことが、あとから思えば無念でならなかった。最後には老中の責任者である阿部忠秋が来るにちがいない、そのときこそは水戸が副将軍であることの意味を知らせてやろう、そう思って、心中すでに刃を隠して引見したのであった。忠秋にはそれがすぐにわかった。しかしかれは素知らぬ顔で、「御用にとりまぎれ、ひさしく御機嫌を伺いませんので、こんにちは老中の役目をぬぎ、豊後忠秋としてお目通りをつかまつりました」そう云ってしずかに座へついた。
やいば
一言でもそれについていいだしたらと、頼房はするどく忠秋のようすを見やっていたが、かれはしずかな調子で世間ばなしを続けたのち、伊曾保物語のことをもちだし?________________

ぬた。頼房はすでに読んで知っていたけれど、どこからどう話を持って来るかと、黙って不機嫌に聞いていた。
忠秋はさも興味ありげに、その寓話をゆっくりと話していた。そしてそれが終ると、そのまま辞去するようにみえたが、ふと思出したように、「先年台徳院さま(秀忠)御他界のみぎり、御三家へとくに御遺言の御墨付があったと承わりましたが、御当家さまには江戸お屋敷にお納めでございますか」「なにげない調子でたずねた。「いかにも、台徳院さま御遺言のお墨付は当屋敷に納めてある」
「恐れながら拝見を願えましょうや」な「なんの要あってか知らぬが、望みとあらばくるしからぬことだ」
「お墨付の御条目ちゅう、豊後ふと覚え違いをつかまつったくだりがございますようで、とかく心もとなく存じておりました。恐れながらお読み聞け下さいまするなれば、覚え誤りを正して置きたいと存じます」
頼房は近習番に申しつけ、宝庫の中から二代秀忠の遺言状をとりださせた。これは秀忠が臨終のおり、紀、尾、水三家を呼んで遺言として渡したものである。「豊後お直の拝見は恐れおおうございます、なにとぞお館さまよりお読み聞けたまわ
ならぬ堪忍
きんじゅばん|
じき
やかた
けんか
  • ざま
りまするよう」
前将軍の遺言状だから側近の者に読ませるわけにはいかない。頼房はみずから手にとって読みあげた。三家が協力して徳川宗家をもりたてるよう、それにはかくかくの事を守り、かくかくの心得をもって励めという意味のことが、いくつかの条目にわけて書いてある。頼房はつぎつぎに読んでいったが、やがて喧嘩両成敗のことという条目へきたとき、眼をとじてじっと傾聴していた忠秋が、「恐れながら、その御条目いまいちどお読み聞けを願います」
と云った。頼房はそこだけ繰返した。それは三家親藩、譜代外様にかかわらず、「喧嘩はかたく両成敗たること」と強調したものであった。「恐れ入りました、それにて得心がまいりました」
なおも頼房が読み続けようとするのを、忠秋は鄭重に謝辞しながら云った。「わたくしその御条目を覚えたがえたものと存じ、なんとも心おちつきませんでしたが、ただいまお読み聞けいただきまして、記憶ちがいでなかったことがよくわかり安堵をつかまつりました。篤く御礼を申上げます」そう云ってじっと見上げる忠秋の眼を、頼房は蒼ずんだ顔で見返えしていた。――本丸御小人を斬った家臣には切腹を申付け候。
ていちよう
あっ
あお
おこびとき
そうろう
385?________________

ととけいの
386
水戸家から老中へ、そういう届出があったのはその翌日のことであった。
(「放送」昭和十七年九月号)



底本:「ならぬ堪忍」新潮文庫、新潮社
   1996(平成8)年4月1日発行
   2005(平成17)年10月10日二十一刷改版
底本の親本:「放送」
   1942(昭和17)年9月号
初出:「放送」
   1942(昭和17)年9月号
入力:特定非営利活動法人はるかぜ

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山本周五郎
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