街(Vivid Version) ◆7pf62HiyTE
Section 08 不屈の子
何故――彼女、
アインハルト・ストラトスは戦うのであろうか?
覇王流の強さを証明する為と彼女は語っていた――では、それは何故なのだろうか?
覇王家直系の子孫である彼女は初代覇王クラウス・G・S・イングヴァルトの記憶を受け継いでいる。
勿論全てというわけではないが、断片的であってもつなぎ合わせる事でその生涯を自分の記憶として思い出せる。
つまり、彼の思い出はそのまま彼女の思い出なのだ――共に過ごした聖王家王女オリヴィエ・ゼーゲブレヒトとの大切な日々は――
『太陽のように明るくて花のように可憐で何より魔導と武道が強いお方でした』
そのオリヴィエも乱世の最中に命を落とす――ゆりかごの運命通りに――
皮肉な事ではあったが彼女を失った事でクラウスは強くなり一騎当千の力を手に入れた。
だが、それでも本当に望んだものは手に入ることは無く短い生涯を終えた――
それは『本当の強さ』、『守るべきものを守れない悲しみをもう繰り返さない強さ』――
故にアインハルトは彼の作り磨きあげた覇王流の強さを証明する為に戦うのだ――
全管理世界から集いし若い魔導師たちが魔法戦で覇を争うインターミドル・チャンピオンシップに挑戦する事を決めた日の夜、ヴィヴィオ達が眠る側でアインハルトはクラウスの回顧録を手に一人語っていた――
『クラウス――私はそこで戦ってきていいですか?
いつかあなたに追いついて、いつかあなたを追い越して、あの日のオリヴィエ殿下より強くなって、
私たちの悲願を叶えるために――』
そんな彼女の独白をヴィヴィオは聞いていた――
その一方、何故ヴィヴィオは格闘技をやっているのだろうか?
勿論、格闘戦技が好きだから、ノーヴェが教えてくれたシューティングアーツで強くなりたいからというのは確かにある。
だがそれ以上にもっと深く、譲れない理由が存在する。
ヴィヴィオの事について今一度簡単に説明しておこう。
有り体に言えば彼女は普通の人間では無い。
彼女の正体はかつて起こったJS事件において人造魔導師の技術を用い巨大戦艦聖王のゆりかごを起動させる為に生み出されたある人物のコピー(クローン)である。
その人物は約300年前においてゆりかごの所有者であった人物――そう、オリヴィエだ。
つまり、ヴィヴィオはゆりかごを飛ばす為の只の鍵であり、玉座を守る生きている兵器として生み出されたのだ。
それゆえ(彼女が現れた当時)幼女の姿で母親を求めていたのもその感情についても守られることで魔法データを蒐集する為の偽物の作り物でしかなかったのだ。
その事件の折、ヴィヴィオは体内にレリックを埋め込まれゆりかごのキーとなり敵の戦闘機人の1人に支配されていた。
とはいえ先にその戦闘機人を撃破する事で彼女は支配からは解放された――だが、制御していた者がいなくなった事で彼女は自分自身でも止められない暴走状態へと陥った。
その彼女を
高町なのはは助けようとしたがヴィヴィオはそれを拒絶、涙ながらに自身が存在してはいけないと語ったが――
『違うよ……生まれ方は違っても今のヴィヴィオは……そうやって泣いてるヴィヴィオは偽物でも作り物でもない……
甘えん坊ですぐ泣くのも、転んでも1人じゃ起きられないのも、ピーマンが嫌いなのも、私が寂しい時に良い子ってしてくれるのも私の大事なヴィヴィオだよ。
私はヴィヴィオの本当のママじゃないけど、これから本当のママになっていける様に努力する……
だからいちゃいけない子だなんて言わないで。本当の気持ち、ママに教えて……』
なのはの心からの言葉に――
『私は……私はなのはママの事が大好き……ママとずっと一緒にいたい。ママ……助けて……』
そしてなのはは文字通り全力全開の力で一撃を撃ち込みヴィヴィオを暴走させ続けていたレリックを粉砕し彼女を解放――
だが、それで度重なる激闘によるダメージもありなのはの身体は限界、それでも何とか爆心地にいるヴィヴィオの元へと駆けつけようとするがヴィヴィオはそれを拒絶――しかしそれは先ほどとは違う理由――
『1人で……立てるよ……強くなるって約束したから……』
そして1人で立ち上がり母の元へと――
この瞬間、ヴィヴィオは不屈の心を持つ高町なのはの娘、
高町ヴィヴィオとなれたのだ――
『大好きで大切で守りたい人がいる。
小さなわたしに強さと勇気を教えてくれた、世界中の誰より幸せにしてくれた、
強くなるって約束した、強くなるんだ、どこまでだって!!』
さて、今なお傷つき眠り続けるヴィヴィオの受けたダメージは決して小さくは無い。
だがそれ以上に彼女の使用したガイアメモリによる精神汚染の可能性を心配する方も多いだろう。
しかし結論だけを先に述べておこう。今後も使用を続ければ危険性は高いが現状ではその被害は無いと言って良い。
その理由は2つ、1つは彼女がメモリを使用していた時間はごくごく短時間、ドーパントに変身してしかけたもののすぐにダグバの攻撃で返り討ちに遭い気絶。
気絶した段階でメモリは排出された為、不幸中の幸いかメモリの毒素に曝される時間を短時間に抑える事が出来たのだ。
もう1つはヴィヴィオの特殊な生まれが関係している。前述の通り彼女は人造魔導師の技術で生み出された存在だ。適合率が決して高くないレリックと適合できる成功例と言える。
その彼女だからこそガイアメモリの毒素による汚染を何とか受けずに済んだのだ。勿論、長時間であれば話は違うだろうが今回は幸運にもその被害を受けずに済んだ。
とはいえ状況は決して良くは無い。勿論受けたダメージもそうだが実の所そちらはヴィヴィオにとっては大した問題では無い。
自分が弱い所為で他の人を守ることが出来ず、逆に守られ助けられ迷惑をかけてしまった事の方が非常に辛かったのだ。
あの瞬間、薄れゆく意識の中でヴィヴィオは思う――
今のままじゃ誰も守ることも出来ないと――
当然、ヴィヴィオだってすぐにでもなのは達の所へ向かいたい、会いたいと思う。
だが、管理局のエース・オブ・エースであるなのは達はこの殺し合いを打破する為に動いている筈なのだ。
まだまだママ達に甘えたい感情はある。それでもなのは達に迷惑をかけるわけにはいかない。
約束したではないか、1人で立てると、強くなると――
むしろ逆に大好きななのは達を守りたい――
確かに今の弱い自分では誰も守れないし助ける事も出来ない、ただただ迷惑をかけるだけだろう。
だが、同じ状況になのはが陥った場合このまま挫けるだろうか?
否、断じて否!
なのはならばどんな困難に陥っても決して挫けたりはしない、必ず立ち上がりその困難を乗り越えるであろう。
ここにいるのは誰だ? 古代ベルカにおける最後のベルカの聖王オリヴィエのクローン? 否!
ここにいるのは管理局が誇る不屈のエースオブエース高町なのはの娘、高町ヴィヴィオではないか!
その心を受け継いだ不屈の子ではなかろうか!?
ならばどうする? 必ず立ち上がり強くなるしかないだろう。
それは決して平坦な道では無い、それでも決して諦めたりはしない――
なのはから受け継いだのはヴィヴィオ自身の中にあるのだから――
そうしてゆっくりと意識を覚醒させていく――
風は空に――
星は天に――
輝く光はこの腕に――
不屈の心はこの胸に――
Section 07 フォーチュン・セレクションL
「なるほどな……まさか祈里がプリキュアに変身していたとはな……」
戦闘を終えた2人とクリスは場所をヴィヴィオの眠る保健室に移し互いにこれまでの情報交換をしていた。なお、祈里は既に変身を解除している。
その中でプリキュアに関する大まかな説明も聞いたがらんまにとってはダークプリキュアについての疑問が残る。
「さぁ……私も乱馬君に言われて初めて気づいたから……」
「ていうかよ、名簿にしっかりと書かれていたんだから最初に気づけよ……」
今更ながらにらんまの言うとおりだ。何しろ最初から名簿にダークプリキュアとはっきりと書かれていた。
どうやらあまりにも突然の出来事に見落としてしまったらしい。
「あ、でももしかしたら……」
「なんだ? 何か思い出したのかよ?」
祈里はスウィーツ王国に伝わる伝説の戦士プリキュア以外にもプリキュアが存在する事を話す。
光の里に伝わる伝説の戦士でドツクゾーンと戦った2人(後にもう1人が加わり3人)のプリキュア、
パルミエ王国の伝説に伝わる戦士でナイトメアやエターナルと戦った5人(エターナルとの戦いの時もう1人が加わり6人)のプリキュア、
そして泉の郷に伝わる伝説の戦士でダークフォールと戦った2人のプリキュア、
祈里達は(
東せつなが加わる前に)邪悪な者フュージョンと戦った時に彼女と共に戦った事がある事を話す。
「……で、その話とダークプリキュアの話が何の関係があるんだ?」
「聞いた程度だから詳しくは知らないけど、のぞみちゃん達が前にダークプリキュア5と戦った事があるって聞いた様な」
パルミエ王国に伝わる5人のプリキュア達はある時、鏡の国にて自分達に似たダークプリキュアと戦った事がある。
「……つまり、自分達とは違うプリキュアの偽物がここにいるかも知れねぇって事だな」
「もしかしたら私達が出会った以外にもプリキュアがいるかも知れないわ……ところで乱馬君、黒い服来た女の子見かけたって本当?」
そんな中、話題を最初に祈里が遭遇した黒服の少女に切り替える。
「ああ、気が付いたらいなくなってその代わりに妙にキラキラした鎧着た奴が現れやがった……何か知らねぇか?」
「そっちの方は見てないわ」
「ま、見てないなら別にいいけどな」
「……ねぇ、女の子なのにそんな乱暴な言葉使い……」
「だから俺は本当は男だって説明しただろが! 俺の説明どう聞いてたんだ!?」
「ごめんごめん……」
「で、あかねや良牙達にも会ってねぇんだな?」
「うん、私が出会ったのは乱馬君で4人目、乱馬君の方は他に志葉さんにしか会っていないのね」
「ああ、あの野郎に厄介な事頼まれてんだよな……霧彦にも祈里やヴィヴィオの事頼まれるしよ……」
プリキュアの強さを体感し内心守る必要無いだろうと思わないでもないが、流石にそこまでは口にしない。
「ところで乱馬君、さっきも聞いたけどそのスカーフは……」
「ああ、必ず戻るからそれまで預かってくれって頼まれたんだ。全く妹に貰ったものなんてかえって受け取れるわけもねぇだろが……」
その事を聞いて祈里は少し考える仕草を見せ、
「その妹さんの名前って聞いてないの?」
「ああ……そういや霧彦の奴言っていたな……雪絵が婚約祝いにどうとかって……それがどうかしたのか?」
「ううん、なんでもないの、ちょっと気になったから聞いてみただけ……あ、婚約と言えば……乱馬君もあかねさんと婚約しているって言っていたわよね」
「婚約っつーか親同士が勝手に決めた許嫁だな……ってコレもさっき説明した筈だよな」
「勝手に……って言う割にはそんな嫌そうには見えないんだけど……」
「そ、そんな事はねぇよ……俺は許嫁としてだだだだなぁ……」
そう動揺するらんまを余所に祈里は立ち上がり、
「ん、何処行くんだ?」
「ちょっと外の様子を見に行ってくるわ、それまでヴィヴィオちゃんの事お願いできる」
「外の様子見に行くんだったら俺が……」
「乱馬君、さっきまでの戦いで疲れているでしょ、もう少し休んでていいから」
「その原因の半分ぐらいは祈里なんだけどよぉ……」
と口にするらんまに構うこと無く祈里が保健室から出て行く。
「全く……ん?」
そんな中、保健室の机の上に1枚の絵が置かれているのを見つけた。
「なんだこりゃ、ガキが描いた絵か……きりひこ……ゆきえ……霧彦の事か……?」
そこには幼い少年と少女が手を繋いでいるのが描かれており、一緒に『きりひこ』、『ゆきえ』という名前も書かれている。
特に少女――『ゆきえ』はとても良い笑顔で『きりひこ』の手を握っている。
「まさかあいつら兄妹の絵か? けどどうしてこんな所にあるんだ?」
ふと懐からキーホルダーを出す。
「……そういやコイツも霧彦がデザインしたって言っていたな……まさかこの絵も霧彦が…?」
その時。
「う……ううん……」
ずっとベッドで眠り続けていたヴィヴィオが意識を取り戻した。
「あれ……ここは……?」
ヴィヴィオの覚醒に気が付いたクリスはすぐさま全速力でヴィヴィオの側に駆け寄り、
「(こくんこくん)」
「クリス……」
ヴィヴィオはとても嬉しそうにクリスを抱きしめる。と、
「お、気が付いたみてぇだな」
「お姉さん……誰?」
「お姉さん……俺は乱馬だ、
早乙女乱馬」
「あれ……霧彦さんは?」
「ああ、霧彦の野郎はちょっと森の様子を見に行ってるぜ。そうだ、祈里ー! ヴィヴィオの意識が戻ったぜー!」
そう言って祈里を呼びつつ、保健室のドアを開ける。と、
「ん?」
目の前に1枚の紙切れが置かれているのを見つけた。
「何だぁ……」
『乱馬君へ、
やっぱり霧彦さんが心配なので森まで行ってきます。
それまでヴィヴィオちゃんの事を見ていてください。
祈里』
「………………!」
「乱馬……さん?」
思い出して欲しい、何故ほむらは祈里から拳銃と水と食料しか奪取しなかったのであろうか?
他にも支給されたものがあった筈であろう。
まず1つ、能力の限界時間の関係上、識別が手間であるが故に選んでいる時間が無く確実に使える水と食料、そして拳銃を奪取した事、
そしてもう1つ、識別するまでもなく明らかにハズレの道具であったから。
そう、先ほど登場した絵――幼い霧彦達兄妹が描かれていた絵は祈里の支給品の1つなのだ。
そんな子供が描いた絵なんぞほむらにとっては無用の長物、それ故に奪取する事無く捨て置いたのだ。
さて、祈里としてもほむらが去った後に確認はしたもののこの時点ではそれが何かがわからずそのままデイパックにしまい込んだ。
その後、霧彦と合流し彼が一度去った後、絵に描かれていた名前を思い出し再度取り出し机の上に置いていたのだ。
この時点でその絵が霧彦のものである事はわかった、そこに描かれていた『ゆきえ』の存在もあり霧彦の事がとても心配に感じていた。とはいえこの時点ではまだ具体的な事はわからなかった。
が、らんまからスカーフの話を聞いた瞬間、祈里は絵に描かれているのが霧彦達兄妹である事を察したのだ。
そこに描かれている霧彦の手を繋ぐ雪絵の顔はとても笑っていた、そして婚約祝いに兄にスカーフを送るのだ、きっと今も兄である霧彦の事がとても大好きなのだろう。
らんまの話では霧彦は必ず戻る約束をするために敢えてスカーフを渡したとの事だった。
だが祈里にはそうは思えなかった。自分やらんまから聞いた霧彦の状態、そして森で起こった火災の規模を考えれば戻ってこれる可能性は高いとは言えない。
そしてそのまま死んでしまうならスカーフもそのまま置き去りになってしまう。霧彦はそれを避けるために乱馬へと預けたのではなかろうか?
祈里はそれを容認する事ができなかった。このまま霧彦が死んでしまえば元の世界で待つ雪絵はきっと悲しい想いをする。
状況的に霧彦を助けられるのは自分だけ、祈里はそう考え、森に向かう選択を取ったのだ。
ヴィヴィオの保護についての問題があったがらんまが来てくれたお陰でそれはクリア出来た。
勿論、後ろ髪が引かれないではないが、すぐに戻ってこれれば大丈夫、だからこそ急いで学校を出て森へと向かったのである。
祈里の選択自体はわからないわけではない。確かに霧彦の事が心配なのはらんまにだって理解できる。
だが、結果としてヴィヴィオの事を押しつけられた状況である事に違いは無い。
勿論、無碍に扱う気は無い。だが――らんまにだって早く知り合いと合流したいという都合がある。それ故に――
「祈里のあほー!!」
こう叫ぶ事も仕方ないだろう。
Seciton 09 早乙女らんまのHeartful Station
祈里の突然の行動にいつまでも叫んでいても仕方は無く、らんまはヴィヴィオにこれまでのいきさつや情報交換を行った。
「というわけで俺は本当は男なんだ」
そう言いつつ、ポットから1杯のお湯を出しそれをかぶり元の乱馬に戻る。
「あ、本当だお兄さんになった」
「まぁこんなふざけた体質だけどよ、それなりに楽しくやって……」
と、上かクリスがら突然水(ヴィヴィオの火傷を冷やすのに利用した)をぶっかけられ再びらんまになった。
「何しやがるこのぬいぐるみ野郎!!」
「(こくこくこくこくこくこくこく)」
「クリスは水を被ったら本当に女の子になるのか試したかっただけなんです、あんまり怒らないでください乱馬さん」
「ていうかなんでコイツの言うことわかるんだよ!?」
「え?」
「(こくん?)」
「いや、これじゃわからない俺の方がおかしいみたいじゃねぇか……」
そんなヴィヴィオとクリスにあきれつつ話を進めていく。
ちなみに再びお湯をかけて元に戻ろうかとも考えたが貴重なお湯を無駄遣いするのもどうかと思い暫くはこのままでいることにした。
「(それにしても加頭の野郎……このポットの水とお湯は何の冗談だ……)へー、お前らも格闘やるのかー」
当然その過程で互いの知り合いについても話し合うわけだが、らんまにとって興味を引いたのは格闘技をするヴィヴィオ、アインハルト(加えて
スバル・ナカジマ)の存在である。
「乱馬さん達もそうなんですか? アインハルトさん、とっても強いですよ」
「へっ、俺の方が強いぜ、なんったって格闘と名がつきゃ負けたことなんて一度もねぇんだからな」
「本当ですか?」
「ああ、格闘新体操に格闘スケート、格闘茶道に格闘ディナーなんてのもあったな、全部勝ってるぜ」
「………………それ本当にあるんですか? 格闘って上についただけじゃ……」
時計が3時50分を差す中、クリスがヴィヴィオに何かを伝えようとする。
「(こくこく)」
「え? あ、うん」
「それで会話が成立するのかよ……」
「乱馬さん、お願いがあるんです」
「お願いだぁ……ってまたこのパターンかよ……ここに来て何人目だ?」
「その……私を……」
「あー先に言っておくがママに会わせてって頼んでもダメだからな。霧彦達に頼まれた手前、暫くはここにいるが俺だって行かなきゃならねぇ所があるからな」
「違うんです、私を特訓して欲しいんです!」
ヴィヴィオはらんまに特訓を頼んだのだ。
「は? 何言ってんだ?」
「私が……私が弱いせいで霧彦さんやみんなに心配をかけてしまって……それが申し訳なくて……だから今度は強くなって私がみんなを守りたいんです」
そのまっすぐなまなざしに対し、
「ちょっと待てよ……そりゃわからなくはねぇが……まだ怪我も治っていないのに無茶だろ……それにおめぇのママだって心配するんじゃねぇか?」
「はい……だけどママとも約束したんです、1人で立てるって……強くなるって……だから……」
その真剣なお願いに対し、
「(ママと約束……か)」
なのはへの想いを強く語るヴィヴィオの様子を見てらんまは自身の母親であるのどかの事を思い返していた。
物心つく前から玄馬と2人で旅をしていた乱馬はのどかの事を全く覚えていなかった。
だが、幸運にも彼女が天道家を訪れる事で再会する機会が訪れたのだ。
しかし――玄馬が乱馬と旅をする前にのどかとした約束が問題だった。それは乱馬を男の中の男に育てられなければ父子共々潔く切腹すると――
これ自体は物騒ではあっても格闘家としてはなくはない話と言えるだろうし、この話自体はそこまで問題では無い。
そう、乱馬が呪泉郷に落ちて女にさえならなければ――
誰がどうみてもこれでは男の中の男とは言えない。再会すればいやがおうにも変身体質はバレる、それ故切腹は確定的だ。
その経緯もあり、玄馬は乱馬とのどかとの再会を全力で阻止したのだ(その為、のどかと会う時は基本的にらんま(のどかには乱子と名乗っている)としてである)。
だが、その事実を知らないのどかは乱馬に会いたいと強く願っていた。
そんなのどかの姿を見てあかねは何としてでも乱馬とのどかを会わせようとし、乱馬もあかねの後押しを受け会おうとしたがやはり玄馬の妨害に遭い(乱馬自身切腹を恐れていた事もあり)失敗に終わった。
その後も度々のどかと会う機会があり時に大きな騒動もあったが乱馬として再会することは長らく無かった。だが――
早乙女家の家宝を巡り玄馬と争った際に――ついに乱馬として再会する事が出来たのだ。同時に変身体質もバレたがそれでものどかは乱馬は十分男らしいと認めてくれたのであった。
ちなみにその後、一旦は乱馬と玄馬はのどかに引き取られ天道家を出たが、のどかからあかねに指輪(実は指輪では無く薬箱)を渡して欲しいと頼まれた一件の際に、
シャンプー達に家を破壊された事により今度はのどかを含めた3人共々天道家の居候に戻ったのだった。
何にせよ、母親に関する話を聞いて思う所がないわけでもないらんまは、
「(ま、どうせ暫くはここにいるわけだしな、それまでなら付き合ってやっても良いか)」
ヴィヴィオの申し出を受けることもやぶさかでは無いと思っていた。
そんな中、ヴィヴィオが自身のデイパックを探り何かを探していた。
「おい、何探してんだ?」
「確かここに……あった」
ヴィヴィオが霧彦と出会った時を思い出して欲しい。その時丁度ガイアメモリを出したタイミングだった。
つまり支給品の確認をしていたという事だが実はガイアメモリを確認する前にもう1つ確認していた。
「これ、乱馬さんのですよね?」
「あ゛!!」
そう言ってヴィヴィオが取り出したもの――それは子供の字で『らんま』、そして『バカおやぢ』と玄馬の絵が描かれた巻物だった。
「ちょっと待て……なんでコイツがこんな所にあるんだ……」
「え? どういうこと?」
それは間違いなく乱馬に関わりのあるものだ。
ある時、のどかの前に乱馬と名乗る謎の男が現れた。先ほどの巻物――無差別格闘早乙女流山千拳の秘伝書はその男が所持していたものだ。
その男――公紋竜が乱馬と偽りのどかに近づいた理由――それは山千拳によって文字通り潰れてしまった公紋道場を再興する為に海千拳の秘伝書を手に入れる為だった。
乱馬自身竜を追い出す為、乱馬は2つの技を編み出した玄馬から海千拳を教えて貰おうとした。しかし玄馬によればその2つの技は封印すべき邪拳、それ故に最初はそれを拒んだ。
だが紆余曲折を経て玄馬は乱馬に海千拳を教え、
図らずも海千拳の秘伝書もまたのどかから乱子に送られた封筒という形で乱馬の手に渡った(玄馬に処分しろと頼まれた巻物を封筒としてリサイクルしただけだが)。
そして海千拳の全てを会得した乱馬は山千拳を繰り出す竜を破り秘伝書は無事に封印する事が出来たのだ。
にもかかわらず、何故かその秘伝書が今目の前にあるのだ。
「加頭の野郎……まさかコイツの封印まで手を出すとは……けどなんであの野郎があの技を知っているんだ?」
あまりにも衝撃的な事実に加頭のいる主催の強大さを改めて実感したらんまであった。
いや、主催だけではない、霧彦の言葉が確かならば参加者の中にはナスカ・ドーパントを超える強さを持つドーパントが数多くいる。
更にプリキュアの実力から考えてもダークプリキュアは想像を絶する程の強敵だろう。
ヴィヴィオ達を襲った白い怪物の存在も踏まえると主催の所にたどり着くことすら困難かも知れない。
「上等じゃねぇか……ぜってぇにテメェの所まで行ってその面に一発ぶち込んでやるぜ……」
それでもらんまは逃げるつもりは無い、必ず加頭を打倒する決意を強め――
「(あかね、良牙、シャンプー……それに
パンスト太郎……こんな馬鹿な戦いで死ぬんじゃねぇぞ……)」
知人達の無事を強く願う――
Section EX 街
――見えないものに向かう時、人は誰も孤独――
実の所、祈里――いや、既に変身してキュアパインとなっているが――彼女は自分の選択に絶対の自信を持っているわけではない。
もう既に霧彦が命を落としている可能性もある、学校に襲撃者が現れヴィヴィオとらんまが惨殺される可能性もあるだろう。
それどころか既にラブ達の命すらも――そんな選択を誤り最悪の結末を導いてしまうのではと考えなくは無い――
それでも――
祈里はプリキュアになる前、自分に自信が持てず肝心な時に消極的になってしまう事についてカオルちゃんに言われたことがある、
『どっかしら自分に自信が無いんじゃないの? でもさ、それも全部ひっくるめて自分……誰かが代わってくれるわけじゃない、
だから結局最後は自分を信じて結果出すしか無いんじゃない?』
まさしくその言葉通りなのだ。今の状況を変えられる者は自分しかいない。
「私がやらなくちゃ……自分を信じて……私を信じて!」
だからこそキュアパインは往く――例え自信がなくても他の誰も助けて来られない、代わってくれる者もいないのだ。
このままでは誰も助けられないのならば自分を信じて――
結果がどうなるのかはわからな――いや、きっと助けられると――
「私……信じてる!」
そう口にするキュアパインは市街地を抜け平野へと入る――
【1日目/黎明】
【G-8/平原】
【山吹祈里@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、キュアパインに変身中
[装備]:リンクルン
[道具]:支給品一式(食料と水を除く)、ランダム支給品0~1
[思考]
基本:みんなでゲームを脱出する。人間と殺し合いはしない。
1:森に向かい霧彦やそこにいる人達を助けに向かう。その後中学校に戻る。
2:
桃園ラブ、
蒼乃美希、東せつなとの合流。
3:一緒に行動する仲間を集める。
[備考]
※参戦時期は36話(
ノーザ出現)後から45話(ラビリンス突入)前。なお、DX1の出来事を体験済です。
※「魔法少女」や「キュゥべえ」の話を聞きましたが、詳しくは理解していません。
※ほむらの名前を知りませんが、声を聞けば思い出す可能性はあります。
――泣き出しそうな空、うつむけばこぼれそうな程――
それはまさしく祈里の推測通りだった。霧彦は自身の死、あるいはそう長い命では無い事を確信していた。
そして幸か不幸か身体の調子が妙に良い。
「いつもよりも身体が軽い気がする……まさかさっきの攻撃でドライバーに何かあったのかな?」
勿論、それは只の推測でしかなく霧彦視点で見ればただの気のせいかもしれない。
「だが、今はありがたい……」
それでも、ナスカ・ドーパントの表情からは読み取る事は出来ないが霧彦は笑っていた――
何故、霧彦は乱馬にスカーフを託す事が出来たのだろうか?
あの戦いの時、ナスカ・ドーパントは飛竜昇天破の直撃を受けた――ナスカ・ドーパントが本気では無かったが故に威力はそこまで強烈なものではなかったのは既に触れた通り。
しかし――確かにあの瞬間強烈な竜巻が巻き起こったのは確かなのだ。そう――
乱馬は強い風を生みナスカ・ドーパントこと霧彦にそれをぶつける事が出来たのだ――
その風は、この地に来てから感じていた心地悪い風では無く、清々しさを感じるとても良い風――
それを1人の少年が放ったという事なのだ――
それ故に霧彦はスカーフを託す事が出来たという事だ。
「乱馬君……君の起こした風はとても心地よいものだったよ……それだけで僕は救われた気がする……だから、君が無事にあかねちゃんと共に脱出できる事を願うよ……」
改めて思ったのだ、ヴィヴィオに祈里、そして乱馬。彼らの様な若い命をこんな巫山戯た殺し合いで傷ついてしまう事など決して許されない。
彼らは十分に強くガイアメモリなんて必要無い。そんな彼らは必ず守り救わなければならない――
「そうだ……僕が守りたかったのは……彼らの笑顔だ……!!」
そんな中、今一度遠い風都にいる雪絵の事を思い返す。
「それでも雪絵の笑顔を曇らせる事にはなるか……本当にすまない……雪絵……」
ナスカ・ドーパントは森の中を進みG-7へと突入する――
自らが高速で動くことで結果として立ち塞がる風は向かい風となりナスカ・ドーパントへと吹きつけてくる。
「ああ……良い風だ……!」
――なくせないものを、この街で見つけたよ――
【G-7/森】
【
園咲霧彦@仮面ライダーW】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中)、内臓にダメージ(小)(手当て済)、ナスカ・ドーパントに変身中
[装備]:ナスカメモリ@仮面ライダーW、ガイアドライバー(フィルター機能破損)@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、T2ヒートメモリ@仮面ライダーW
[思考]
基本:この殺し合いを止める。
1:火災現場へ向かう。
2:冴子は可能なら説得したい。
3:
本郷猛、
一文字隼人に興味。
4:ガイアメモリは支給された人次第で回収する。
[備考]
※参戦時期は18話終了時、死亡後からです。
※主催者にはミュージアムが関わってると推測しています。
ゆえにこの殺し合いも何かの実験ではないかと考えています。
但し、ミュージアム以上の存在がいる可能性も考えています。
※ガイアドライバーのフィルター機能が故障しています。これにより実質直挿しと同じ状態になります。
「まさか水を被るわけじゃ無く魔法で動物に変身する奴がいるなんてなぁ」
「うん、ユーノさん小さい頃、フェレットになってなのはママとジュエルシード封印していました」
「……なぁ、まさかとは思うがそのユーノってやつと一緒に風呂に入ったとか寝床に入ったとかって話は……」
「そういえば温泉に入ったとか一緒に寝たって話を聞きました」
「Pちゃんみたいな奴が他にもいるとはなぁ……」
「Pちゃんって誰?」
【G-8/中学校】
【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、女性化
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~2、水とお湯の入ったポット1つずつ(お湯変身1回分消費)、ショドウフォン@侍戦隊シンケンジャー、丈瑠のメモ、
ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW、霧彦のスカーフ@仮面ライダーW、須藤兄妹の絵@仮面ライダーW
[思考]
基本:殺し合いからの脱出。
1:中学校で霧彦&祈里をヴィヴィオと共に待つ。ヴィヴィオにもそれまでは付き合う。
2:市街地で知り合いを探す。
3:2の後、呪泉郷へ向かう。
4:
池波流ノ介か
梅盛源太に出会ったらショドウフォンとメモを渡す。
[備考]
※参戦時期は原作36巻で一度天道家を出て再びのどかと共に天道家の居候に戻った時以降です。
※風都タワーの展望室からほむらとシャンゼリオン(暁)の外見を確認しています。
【高町ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
[状態]:上半身火傷、左腕骨折(手当て済)
[装備]:セイクリッド・ハート@魔法少女リリカルなのはシリーズ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0~1、山千拳の秘伝書@らんま1/2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない
1:中学校で霧彦&祈里をらんまと共に待つ。
2:強くなりたい。その為にらんまに特訓して欲しい。
3:みんなを探す。
[備考]
※参戦時期はvivid、アインハルトと仲良くなって以降のどこか(少なくてもMemory;17以降)です
【支給品解説】
ふうとくんキーホルダー@仮面ライダーW
早乙女乱馬に支給、
霧彦が小学生の時にデザインした風都のマスコットふうとくんのキーホルダー、
限定50個生産の超激レアもの。
霧彦のスカーフ@仮面ライダーW
厳密には支給品ではなく霧彦の没収漏れアイテム
霧彦の妹須藤雪絵が霧彦の婚約祝いにプレゼントしたもの。
霧彦の死後、風に舞ったスカーフは偶然にも彼女の元へと飛んでいった。
須藤兄妹の絵@仮面ライダーW
山吹祈里に支給、
霧彦、雪絵の兄妹が育った施設にて霧彦が幼少時代に描いた絵。
雪絵が笑顔で霧彦の手を握っているのが描かれている。
山千拳の秘伝書@らんま1/2
高町ヴィヴィオに支給、
玄馬が編み出した山千拳について記された巻物、
あまりの荒々しさに玄馬自身封印するつもりだったが公紋竜の父に譲渡、
公紋道場が潰れた後、竜が道場再興の為所持していたが海千拳を会得した乱馬に破れ封印される。
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最終更新:2013年03月14日 22:36