あっ人間が焦げる!電撃怪人出現 ◆gry038wOvE
仮面ライダースーパー1、沖一也は待った。
青年──ン・ダグバ・ゼバが何らかのアクションを示すことを。
あそこから放たれているのは、確かに「邪気」だっただろう。
しかし、ダグバは現状、何かをしようとはしていない。
ダグバはいま、そこに座しているだけなのである。
座している相手を奇襲することはできない。彼の外見は人間そのものだったし、一切何かをしようという姿がないのである。
明確に敵と断定できる理由や根拠もなければ、悪事を働く様子もない。
そんな相手に、攻撃をしかけることはできないし、変身を解き人間の姿で一度面会してみるのも気が引けた。
(放送まで十分……今、奴と戦えば、放送を聞きながら戦う事になるかもしれない)
それに、彼が周囲に被害を及ぼそうとしないのは、おそらく放送を待っているからだ。
沖も同様である。
確かに、ここでダグバの正体を知り、戦闘に持ち込むのも良いかもしれない。
だが、この残り時間ではたしてそれができるだろうか?
スーパー1は、悩みながら時を待った。
ダグバは、そんな彼の様子を気づいているのか、いないのか。
不気味に笑いながら、名簿と地図を手に、ただ座っていた。
★ ★ ★ ★ ★
『初めまして、参加者の皆さん。私の名前はニードル』
空中に現れたホログラフィの人物は、前回の放送とは違う人物だった。
正反対という言葉を用いると良いだろう。その男は、サラマンダー男爵が漂わせていたどこか高貴な印象とは全く別の風体だった。
ニードル。
沖はまだ知らない人物だった。
BADANなる組織の存在は知っていたが、この人物の放送ではBADANの名前が出てくることはなく、結果的に沖がその名に過敏に反応することはなかった。
『……以上、15名』
沖は心の中で、名前を呼ばれた15名の参加者に黙祷する。
早乙女乱馬、筋殻アクマロ、スバル・ナカジマ、園咲霧彦、月影ゆり、ティアナ・ランスター、東せつな、姫矢准、山吹祈里……知ってる名前はこれだけあった。
そのほとんどに面識はなかった。
警察署にいた人間では、早乙女乱馬という少年の名前を美希から聞いている。おさげ髪のチャイナ服で、妙に目立った風体の人間だった。
彼もまた、あの警察署を離れ、そして、死んでしまった……。
「スバル……っ!!」
スバルの名前も当然、気になった。彼女は、ノーザによる洗脳を受け、殺したくもない仲間をその手で殺させられた。……そして今、こうして死んでしまった。
本当なら、救ってやりたかったのだが、彼女の死によってそれはできなくなってしまった。
殺し合い。
それは、またも悲しい人々を作ってしまった。
アインハルトは、またも気に病んでしまうだろうか。──沖としては、すぐにでもアインハルトのいる「警察署」に向かいたかったが。
「……」
沖一也の中にまく怒りは、とてつもなく強いものだった。
まだ多くの人が、死に続けている。
殺し合いを強要され、誰かがそれに乗って殺し合いを続けている。
そう思うと、怒りと悲しみが同時に襲ってきた。
『13時に【H-9エリア】──』
禁止エリアの放送も始まる。
このH-9というエリアは、おそらく沖のいるエリアの付近──もしかすれば、沖が現在いるエリアそのものかもしれない。
自分の現在地は、おそらくG-9、またはH-9のいずれかだろう。
そして、あと僅か一時間でここを出なければ沖の首輪が爆破される。
(この首輪はたとえ人間でなくても死亡する特別なものだ……早く解除せねば)
ただでさえ、沖の身体は首が吹っ飛んでも生きていられるような仕様ではない。
この首輪爆弾の威力を考えるに、スーパー1に変身していたとしても爆破されるものだろう。
スーパー1が首に巻くマフラーの下に、確かに首輪の感触が伝わってきた。
ここに彼の命を握る爆弾が収まっている。
そう考えると、たとえ彼が仮面ライダーであっても、恐ろしい気分にさせられた。今もこの首輪が鳴らしてくるニードルの不気味な音声が、彼を震わせる。
『それから、前回のボーナスですが……』
ニードルの放送はまだ続く。
ボーナス。そう、忘れてはいない。特殊な移動装置をそこに設置したという話だ。
ヘリコプターやセスナの類だろうか。いや、下手をすると以前、宇宙で会ったあの機会な魔法陣のようなものだろうか。
どうやら、それはまだ誰にも発見されることはなかったらしい。
(三つのヒントか……)
沖は、その知恵を振り絞り、ニードルの出す問題の答えを解く。
第一問の答え、これはおそらく、○の中に×を書き込むことでできる地図記号のことだろうか。ちょうど、地図上にも該当する場所があった。
警察署。
ここから近く、そして本来なら、孤門たちがいるはずの場所だ。
何故、そこにいたはずの乱馬がいま、こうして死んでしまったのかも気がかりだったが、沖たちのように何らかの目的があってそこを離れた可能性もある。現に、乱馬以外の警察署にいた人物は死亡していない。
そして、第一問のもう一つ答えは、沖の推定では「翠屋」である。これは、一つ前に比べると難易度も低い。色の組み合わせ方について知っているかというよりも、漢字が読めるか否かがカギだろうか。
この二つの場所は、ちょうどマップの両端にあり、配置場所としてはベターである。おそらく、正解で間違いない。
第二問の存在は、問題そのものの内容も、そこで示される意味も気がかりだった。
(隼人、結城……先輩たちの名前だ。それに、孤門という名前は……)
これは間違いなく、一文字隼人と結城丈二、孤門一輝の名前を示していた。
沖一也の名前にも存在するが、これはおそらく「数字」の問題だろう。
五代雄介、孤門一輝、一条薫、一文字隼人、結城丈二。いずれもその名前に数字が入っており、それをニードルに言われたとおりに足せば式が完成する。
答えは2になった。
その移動手段は、二人もの人間の命を手にかけなければ使用できないのである。
(この答えと、みっつめのヒントを組み合わせるんだ……)
沖が放送のヒントから得た事実はシンプルであった。
(そうだ……警察署が危ない……!!)
警察署、または翠屋のいずれかの近くに、変身能力者を含む二人を殺害した人間が二人もいるということだ。
移動手段ボーナスなど意にも介さず、沖はその危険性を疑った。
(警察署と翠屋……おそらく、人が多く集まるのは警察署の方だ!)
警察署には、孤門が保護するたくさんの人間がいる。
ヴィヴィオやアインハルトなど、沖も知る人物がまだ何人も残っているはずなのだ。
そして、それだけ人が集まるのなら、危険な人物も集まる可能性がある。
危険人物たちには何となく警察署という場所が避けられてきたかもしれないが、ここから先は違う。
そこにボーナスがあると知った二人の人間がそこを狙う可能性があるのだ。
(奴も気になるが……今は、警察署が先決だっ!)
スーパー1は、ダグバの方を一度は向きながらも、もっと明らかに危険な命たちのために駆け出した。
そちらにいる人間の保護を最優先する。
それが遅れたならば、きっと沖一也は後悔するだろう。
「ははははははっ!!」
その時、不意に聞こえた笑い声に、スーパー1は振り向く。
笑い声の主は、ダグバであった。スーパー1から、数メートルの距離で、ダグバは立っていた。
何故笑っているのかはわからなかったが、突然笑いだした彼を見て、スーパー1は動きを止めた。
「君も、僕を笑顔にしてくれるかな?」
ダグバは、物陰に隠れたスーパー1の存在に気が付いていた。
ただ、放送を聞いて禁止エリアの場所を聞くために待っていた。
そして、全ての放送が終わった今、そこにいるスーパー1の迎撃に向かうことにしたのである。
白服の彼の姿は、剛健で不気味な怪物の姿へと変化していた。
★ ★ ★ ★ ★
ン・ダグバ・ゼバは、最強でありながら、知らないことが多すぎた。
五代雄介。その死を、ダグバはクウガの死と直接的に結び付けなかったのである。
クウガの正体など知る由もないし、ダグバ自身はそう簡単にクウガが死ぬとは思っていなかった。
ダグバに隙があるとすれば、こうした放送から手に入れられる情報が少ないことだろうか。
ボーナスを使う条件を持つ者でありながら、そのボーナスの存在についてよく知らなかった。
グロンギである彼は、そもそも地図記号や三原色などにあまり詳しくはない。
文学を嗜む者や音楽を嗜む者もいるグロンギだったが、ダグバはただ適当にふらふらと放浪するだけだった。リントの言葉は漢字や英語まで覚えているが、その細かい知識までは知らない。
だから、地図記号などというものは知らないし、緑色の作り方も知らない。
更に、たとえ漢字が読めて、ニードルの計算式が人の名前を示していると知っても、リントとは全く違う計算式を用い、引算の存在すら無いグロンギには、あんななぞなぞが解けるはずがなかったのである。
数学に関しては、グロンギとリントで、解き方や数え方に大きな開きがあった。
それを、咄嗟に名前に含まれた漢数字と照らし合わせて考え、解き方や数え方を理解するなどできなかった。
彼が理解したのは、ある一定の人間を殺していれば、その移動手段が手に入るということだけである。
しかし、それも特に強い興味はなかった。
彼はただ、付近にいる敵と戦うことだけを考えていた。
そう、放送前からダグバには気がかりだった。
其処にいる、銀色の戦士──仮面ライダースーパー1のことが。
★ ★ ★ ★ ★
「笑顔……? 笑顔、だと……?」
スーパー1は、ダグバが言った言葉を反芻した。
何故、ここで笑顔が出てくるのか。
その意味がわからなかった。
笑顔──それは、楽しい時に生まれる表情だ。
戦いの中で、彼は笑うというのか。──スーパー1は、人々の死を前に、怒り、悲しんでいるというのに。
「君は、クウガと会ったかな?」
「クウガ? それは一体……」
スーパー1の様子を見て、ダグバは、彼がクウガと出会ってないことを理解した。
「……そっか」
スーパー1の頭上に、不意に雷が降った。
建物の影に隠れ、周囲からは観測できないであろう、小さな雷だったが、それほど器用に彼は天候を覆した。
あたりの空は晴れているのに、スーパー1の頭上にだけ降る雷。それは、どう考えても異常であり、スーパー1に対する攻撃的な意思を感じるものだった。
スーパー1の触覚に、顔に、身体に、順に電撃が流れていく。
「ぐあああああああああああああっ……!!」
全身に火花が散り、身体中の機械的な部分は軒並み、一時的なショートを起こす。
雷がやんだ瞬間、スーパー1は立つ力を失い、膝をついて右の拳を地面につくことで体重を支えた。
ダグバの手が、上空に掲げられている。
その様子から、薄々、彼が今の雷鳴を轟かせた張本人なのだと感じた。
「くっ……! チェンジ! 冷熱ハンド!」
スーパー1も、負けじとファイブハンドを緑色の冷熱ハンドに変え、立ち上がってダグバにその指先を向ける。
「冷凍ガス発射!」
次の瞬間、ダグバの身体を真っ白なガスが包む。
ダグバが自然の姿を操作して天候に異常を起こすのならば、スーパー1は科学の力を用いて天候を操作する。
この冷凍ガスのほかにも、電撃、火炎なども発射できる。ある意味では、ダグバ以上に優れた能力をスーパー1は有していた。
ただ、本来それは戦うために作られた力ではなかったが。
「ハァッ!!」
冷凍ガスを噴射してダグバが怯んだ隙に、スーパー1は彼の懐まで飛び込み、赤心少林拳梅花の型を叩き込んだ。
ダグバの身体は、ほとんどその威圧によって吹き飛ぶ。
スーパー1の拳が命中したかしないかの寸前のところで、まるでスーパー1の周囲を半円のオーラが包み込んだかのように、ダグバの全身が浮き上がったのだ。
浮き上がったダグバは、そのまま空中でひらりと身をひるがえして地上に難なく降り立った。
「チェンジ! エレキハンド!」
スーパー1の腕は、青色のエレキハンドへと変わる。
「エレキ光線!」
その指先から放たれたのは、3億ボルトの電流であった。
先ほどの仕返しとばかりに、ダグバにその電流を浴びせる。
そして、その威力は、通常のエレキ光線の比ではない。
(そう……先ほどの冷凍ガスによって凍った奴の身体にエレキ光線を送り込めば、体中に渡った水滴を通して強烈な電撃が起こる!)
冷熱ハンドからエレキハンドに切り替えた際の利点である。
戦闘面では、こうした活用方法もあるのだ。
エレキ光線は、有無を言わさずにダグバに向かって放射される。光のような速度で到達するエレキ光線を、彼が避けられるはずはなかった。
「あああああああああっ……!!!」
流石のダグバも、抵抗できずにエレキ光線を浴び続け、かなりのダメージを受けている。ダグバの口からは人のような悲鳴が出てきて、身体全体に電撃がいきわたっているようだった。
このまま畳み掛け、怯んだ所にトドメを刺したいところだが……。
(くっ……! こんな時に……)
エレキ光線の威力が、だんだんと弱まっていく。
3億ボルトの強烈な電圧が、やがて弱弱しく光り始め、ところどころで光が途切れ始めた。
まるで、電池が切れかけたような、点滅を始めているような……そんな状態である。彼の中で、何かが消え始めていた。
そして、やがて、電池が完全に切れたように、エレキハンドから注がれる電撃が切れる。
ダグバは、ようやく苦しみから解放されたように身体の力を抜いた。電撃によって、彼の身体は固定されたように動かなかったのだ。
そんなダグバの様子を見ながら、スーパー1は心の中で舌打ちする。
(……もう殺し合いが始まって12時間は経つ。いや、厳密にはここに連れてこられる前の拉致されていた期間もそうだ)
その時間のうち、沖一也は四回も仮面ライダースーパー1に変身していた。
(そして、その間中……俺はチェックマシンによるメンテナンスを受けていない……!)
そう、ゼクロスがまだ現れていない時系列の仮面ライダーではスペック上、最強を誇るスーパー1の最大の弱点が現れ始めたのである。
スーパー1は、確かにスペック上では、最強クラスの仮面ライダーだったかもしれない。
だが、その一見完璧に見えるスペックを保つために、定期的なメンテナンスと調整・修復を受けなければならないのである。それを怠れば、エネルギーが落ち、最悪の場合、変身不能に陥る。
長期戦を避け、こうして早々に畳み掛ける作戦を取ったのも、スーパー1の中に焦りが生じ始めていたからだった。しばらくは行けると思っていたが、どうやらあらゆる機能が鈍り始めているようだった。
ファイブハンドの能力が失われたのも、これが原因だった。
(だが、ここで戦いをやめるわけにはいかない……!)
しかし、たとえ、チェックマシンによるメンテナンスがなくとも、スーパー1には赤心少林拳がある。
戦う術がある限りは、その身が粉になろうとも戦い続けるのが仮面ライダーの意志であった。
赤心少林拳の構えをするとともに、基本形である銀色のパワーハンドに切り替えたスーパー1は、ダグバの方を睨んだ。
彼はエレキ光線の停止とともに、スーパー1に向かって駆け出していた。全身の解放と同時に、攻撃を行おうというのだ。
「ははははははははっ!! ……面白いね、もっと僕を笑顔にしてよ!」
ダグバの拳がスーパー1に向かって送り込まれる。
が、スーパー1はそれを見切り、両腕を使ってその右腕を挟み込んだ。
そして、左足を高く上げて、ダグバの顔にハイキックを叩き込む。
美しいアーチを描いてから放たれるキックは、誰の目から見てもはっきりとダグバの顔に決め込まれていた。
スーパー1にとっても、改心の蹴りだったはずだ。
「はははははははははっ!!!」
しかし、ダグバは、それを意にも介さず、左の拳をスーパー1の顔面に叩き込んだ。
想定外に強いダメージに、スーパー1の身体の力が抜け、両腕はダグバの右腕を離してしまった。
その右拳が、今度はスーパー1の胸部を叩き割った。
スーパー1の身体が後方によろよろと退いて行った。
どうやら、スーパー1の機能の低下が著しくなっているようだ。
しかし、それだけではないようだった。それを計算に入れても、これだけの威力を持つのは、スーパー1にとって違和感を感じざるを得ないものであった。
(な、なんだ……こいつの強さは)
スーパー1は彼の圧倒的な能力に疑問を持つ。
先ほど、スーパー1が今よりも充実したコンディションだった時とはまるで違う。
メンテナンス不足による性能の低下を抜きにしても、戦力差が拡大しているように見えたのだ。
先ほど、スーパー1がダグバの身体を吹き飛ばした時と、手ごたえがまるで違う。
まるで、生身で鋼鉄を蹴っているかのような状態だった。ダグバが怯んだ様子も、ましてや微かにでも動いた様子がなかった。
どうも、スーパー1の拳がダグバには効いていないようなのだ。
「……あれ? なんだか、さっきよりもっと強くなった気がするよ」
ダグバ自身も、はっきりとはその力の意味に気づいていなかった。
ただ、スーパー1のエレキ光線を受けた直後に、自分の身体から不思議な力が起こったので、ダグバ自身もなんとなく悟り始めていた。
何故、スーパー1の一撃はダグバに全く効かなかったのだろうか。
充分なヒントを持ち合わせているダグバは、少し考察を始める。
現代ではなぜか金色のラインが入っていたクウガ。そのクウガの力は、小さな雷──電撃を起こすものだった。
また、ガドルも何らかの効果でそのクウガに太刀打ちする力を得たというのも知った。
ダグバの胸部は、うっすらと金色の輝きを見せていた。
その全ての情報とともに、ダグバは全て理解した。
「……そうか、僕たちはこの力で強くなるんだね」
ダグバは、何が自分を強くしたのかを知り、スーパー1に対して、「強くなるための儀式」を行って見せた。
スーパー1の上空に、またも電気の柱が落ちる。
ダグバの電撃が、スーパー1の身体を飲み込む。
そう、これだ。
電気、電撃、雷だ。
「ぐぁぁぁぁぁっ……!!」
スーパー1は雄叫びが響く。
スーパー1自身も、ダグバの様子から、自分の失策に気が付いた。
この力──というのが、電撃のことならば、エレキハンドが当人たちの予想に反して、ダグバの強化に繋がってしまったということなのである。
────電気によって、強くなる。
それは、彼らのように「アマダム」を埋め込まれた者の性質の一つだった。
リントの戦士・クウガが電気ショックで強くなったこと、また、ゴ・ガドル・バがそれをヒントに力を得て電撃身体に進化することができたこと。それらが、その証明だった。
超古代には、雷以外に電気などという存在はないので、知られていなかった力であった。身近に電気が作られることはないし、当然電気ショックなどを受けることは不可能である。
雷を起こす能力を有するダグバでさえも、その力を知ってはいなかった。
彼の起こす雷を受ける者は軒並み死亡していたし、ダグバ自身が自分の身体に雷を落とすことなどなかったからだ。
ガドルも、「クウガから新たな力のヒントを得た」と言っただけで、身体の強化がどのようにして起こったのかは教えなかったし、よもするとダグバにとって、謎のまま終わったかもしれない。
ダグバは、全てを悟り、ニヤリと笑いながら、電撃の威力を強める。
「ぐああああああああああああああああああああっっっ!!」
スーパー1の叫びのボリュームは強くなる。
しかし、それとは裏腹に、ダグバは静かに言った。
「君も、もっと強くなって、僕を笑顔にしてよ」
ダグバは、その電撃に攻撃的な意思も込めていたが、同時に、電撃を浴びせることによって、スーパー1の強化を図ろうとしていた。
彼は、クウガやグロンギのようにベルトを有し、まるで人間以外の生物のような姿をしている彼も、同じように電撃で進化すると思ったのだろう。
もっと強い相手と戦い、笑顔になりたいというダグバの身勝手から出た攻撃でもあり、同時に、スーパー1にもっと強くなってほしい……と願う攻撃でもあった。
しかし、そんなダグバの思いとは裏腹に、浴びれば浴びるほどにスーパー1の力は失われていく。
「ははははははははははっ!!!」
ダグバは、電撃を止ませた。まあ、結局のところスーパー1は電撃によって強化されなかった。ただ、はっきり言えば、それならそれで構わない。
そのまま、ふらふらになったスーパー1の首を掴み、その身体を強引に起き上がらせる。
スーパー1の姿は、到底生きているようには見えなかったが、外傷らしきものを見せずに生き延び、ダグバを見据えていた。
人間ならば、一瞬で黒焦げの姿になっていただろう。
「……何故……お前、は……戦いながら、笑う……?」
ボロボロの身体で、スーパー1はダグバに問うた。
戦いながらも、ずっと疑問だったことである。
その問いに、ダグバはあまりにもあっさりと答える。
「楽しいからだよ」
「楽しい……?」
「強い戦士と戦って、強い戦士を倒す。それが楽しいんだよ」
スーパー1は、そのボロボロの身体をなんとか動かして、ダグバの胸部を突いた。手を広げたまま、真っ直ぐに包丁を突き刺すようにその胸を突き、ダグバの身体は抉られて血を流す。
スーパー1は、その答えに何ともいえぬ怒りを感じ始めていた。
ドグマ、ジンドグマ……彼らのように組織で動く人間や、メガール将軍のように何らかの憎しみや人間らしい感情を抱えた人間ならば、その行動が許されなくとも、どこか理解できるところがあったかもしれない。
だが、「楽しい」という理由で人の命を奪い、人を傷つけ、それを笑う者──ダグバはそんな愉快犯だった。
ダグバには、情や人間味というものが感じられなかったのだ。
「……君も、強いね」
ダグバは、スーパー1の腕を身体から引き抜き、その身体を自分の身体から突き放した。
スーパー1の身体は、崩れ落ちるように地面に落ちた。
「もっと強くなって、もっと僕を笑顔にしてよ……」
ダグバの姿が、スーパー1の視界から消えていく。
ダグバは、スーパー1が先ほど向かおうとしていたところへと歩いて行ったのだ。
そう、警察署だ。
放送の意味を考えるか考えないかは別として、ダグバはそちらに向かうことにしていた。
スーパー1が、先ほどダグバを見つけながらも、ダグバを無視してそちらに向かっていった。……それが気がかりだったのだろう。
そうまでして、そちらに向かおうとしたということは、警察署の方に何かがあるということ。
それを確かめるために、ダグバはスーパー1にトドメを刺さずにそちらに向かったのである。
また、ダグバ自身も、スーパー1が明らかに戦闘中に弱体化したことを見抜いていた。
あの変化する腕を途中から一切使わず、ほとんど攻撃を受け続けるだけに終わったのは、何らかの弱体化が原因だと思えてならなかったのだ。
ダグバの強化だけでなく、スーパー1にも弱体化が起こっているように見えた。
そんな相手と戦うのは、つまらない。
もっと、万全な戦士と戦う方が、ダグバにとっては面白いのだ。
(……行かせない……あんな奴を行かせるわけにはいかない! 奴より先回りして、俺がみんなを守らなければ……!)
スーパー1は、メンテナンス不足に加えて、電撃によるダメージを受けた体を起こして、警察署側に向かって走り出した。
走れるくらいの力は残っている。
どれくらい戦えるかはわからないが、ともかく、孤門やあそこにいる子供たちを逃がさなければならない。
なぞなぞの意味に気づいて逃げてくれれば、それでいい。
ただ、早々に合流した方が良いのは確かだ。
(しかし……いずれチェックマシンによるメンテナンスを修復を受けなければ……。このままじゃマズい……どこかにチェックマシンがあるのか……?)
スーパー1は、走りながら、そんなことも考えていた。
このまま長期戦が予想されれば、変身が解け、この場での変身が不可能になる可能性も高い。
とにかく、ファイブハンドや変身機構に支障が出始めた点だけは、何とかしなければならないようであった。
【1日目/日中】
【G-9/街】
【ン・ダグバ・ゼバ@仮面ライダークウガ】
[状態]:全身に極大のダメージ、胸部に刺傷(回復中)、ベルトの装飾品を破壊(それにより、完全体に変身不可) 、強い電気を浴びたことによる身体強化
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×4(食料と水は3人分、祈里:食料と水を除く、霧彦)、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、スタンガン、ランダム支給品(ほむら1~2(武器ではない)、祈里0~1)
[思考]
基本:この状況を楽しむ。
0:完全体に変身できなくなったことへの苛立ち。
1:このまま警察署側に向かう
2:市街地を適当に歩いて、リント達を探す。
3:強い変身能力者たちに期待
[備考]
※参戦時期はクウガアルティメットフォームとの戦闘前です
※発火能力の威力は下がっています。少なくとも一撃で人間を焼き尽くすほどの威力はありません。空中から電撃を落とす能力も同様です。
※ベルトのバックル部を破壊されたため、中間体にしか変身できなくなりました。
※スーパー1のエレキ光線によって、パワーが強化されました。完全体にはなれませんが、電撃体には変身可能です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを全く理解していません(地図記号について知らず、グロンギの算法もリントと異なるため)。
【沖一也@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、強い決意、仮面ライダースーパー1に変身中、メンテナンス不足により機能低下
[装備]:不明
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3、首輪(祈里)
[思考]
基本:殺し合いを防ぎ、加頭を倒す
0:ダグバより先に警察署に向かい、そこにいる人たちを助ける。また、チェックマシンをマップ内から探す
1:本郷猛の遺志を継いで、仮面ライダーとして人類を護る。
2:後で孤門やアインハルトと警察署で落ち合い、情報交換会議をする。また首輪の解析も行う。
3:この命に代えてもいつきとアインハルトを守る。
4:先輩ライダーを捜す
5:鎧の男(バラゴ)は許さない。だが生存しているのか…?
6:仮面ライダーZXか…
7:ダークプリキュアについてはいつきに任せる。
[備考]
※参戦時期は第1部最終話(3巻終了後)終了直後です。
※一文字からBADANや村雨についての説明を簡単に聞きました
※参加者の時間軸が異なる可能性があることに気付きました
※18時に市街地で一文字と合流する話になっています。
※ノーザが死んだ理由は本郷猛と相打ちになったかアクマロが裏切ったか、そのどちらかの可能性を推測しています。
※チェックマシンによるメンテナンスを長期間受けなかったため、ファイブハンド等の機能が使用不能になりました(付け替えること自体は可能ですが、各能力が全く使えません)
また、変身自体は続いていますが、一度変身を解除すれば、再変身ができなくなる可能性もあります。
チェックマシンがこの殺し合いの会場にあるかは今のところ不明です。
※第二回放送のニードルのなぞなぞを解きました。そのため、警察署が危険であることを理解しています。
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最終更新:2013年05月17日 21:14