統帥綱領(全文) 戦闘間隊員一般の心得 戦闘間兵一般の心得(歩兵操典) 軍人読法 國土決戰教令

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4、統帥の本旨は、常に戦力を充実し、巧みにこれを敵軍に指向して、その実勢力特に無形的威力を最高度に発揚するにあり。 最近の物質的進歩は著大なるをもって、みだりにその威力を軽視すべからずといえども、勝敗の主因は依然として精神的要素に存すること古来変わることところなし。まして我が国軍にありては、寡少のの兵数、不足の資材をもって、なおよく前期各般の要求を充足せしむべき場合僅少ならざるをもって、特に然り。すなわち戦闘は将兵一致、忠君の至誠、匪躬の節義を致し、その意気高調に達して、ついに敵に敗滅の念慮を与うるにおいて、初めてその目的を達するを得べし。 5、敵軍の意表に出ずるは、戦勝の基をひらき、その成果を偉大ならしむるために特に緊要なり。 すなわち追随を許さざる創意と、旺盛なる企図心とにより、敵を制さざるべからず。しかも、たんに用兵の範囲においてこれを求むるのみならず、科学工芸の領域においてもまたこれに努むるを要す。 戦争間、その経過にともなう幾多の教訓は、諸般事象の改変と相まち、必ずや戦法その他の革新を促すべきをもって、絶えず戦績の攻究に努むると同時に、将来の推移を洞察し、かつ、機会を求めて必要の訓練を加え、常に最善最妙の方策によりて敵軍の機先を制すること緊要なり。 6、巧妙適切なる宣伝謀略は作戦指導に貢献すること少なからず。 宣伝謀略は主として最高統帥の任ずるところなるも、作戦軍もまた一貫せる方針に基づき、敵軍もしくは作戦地住民を対象としてこれを行い、もって敵軍戦力の壊敗等に努むること緊要なり。 特に現代戦においては、軍隊と国民とは物心両面において密接なる関係を有し、互いに交感すること大なるに着意を要す。 敵の行う宣伝謀略に対しては、軍隊の志気を振作し、団結を強固にして、乗ずべき間隙をなからしむるとともに、適時対応の手段を講ずるを要す。 7、統帥の妙は変通きわまりなきにあり。 千変万化の状況、特に彼我の実力、敵軍の特性及び作戦地の特質に応じて、各々適切なる方策を定むべく、みだりに一定の形式に捉われ、活用の妙機を逸するが如きは、厳にこれを戒めざるべからず。 第二 将帥 8、軍隊志気の消長は指揮官の威徳にかかる。 いやしくも将に将たるものは高邁なる品性、公明なる資質および無限の包容力をそなえ、堅確なる意志、卓越せる識見および非凡なる洞察力により、衆望帰向の中枢、全軍仰募の中心たらざるべからず。 かくのごとくにして初めて軍隊の志気を作興し、これをしてよく万難を排し、難苦を凌ぎ、不撓不屈、敵に殺到せしむるを得べし。 9、高級指揮官は大勢を達観し、適時適切なる決心をなさざるべからず。 これがため常に全般の状況に通暁し、事に臨み冷静、熟慮するを要す。然れども、いたずらに判断の正鵠を得ることに腐心して機宣を誤らんよりは、むしろ毅然としてもこれを断ずるに努むるを要す。また、たとい決心に疑惑を生じたる場合といえども、自ら主動の地位に立ち、もって動作の自由を獲得せざるべからず。蓋し一度受動の地位に陥らんか、兵団の大なるに従い、これより脱逸すること、益々困難となるをもってなり。 10、高級指揮官は常にその態度に留意し、ことに難局にあたりては、泰然動かず、沈着機に処するを要す。この際内に自ら信ずるところあれば、森厳なる威容おのずから外に溢れて、部下の嘱望を繋持し、その志気を振作し、もって成功の基を固くするを得べし。 11、高級指揮官は予めよく部下の識能および性格を鑑別して、適材を適所に配置し、たとい能力秀でざるものといえども、必ずこれに任所を得しめ、もってその全能力を発揮せしむること肝要なり。賞罰はもとより厳明なるを要すといえども、みだりに部下の過誤を責めず、適時これに樹功の機会を与え、もってその発刺たる意気を振起せしむるを要す。 12、高級指揮官は用兵一般の方法に通ずるのみならず、我が軍の真価を知悉し、予想する敵国および敵軍ならびに作戦地の事情に詳ならざるべからず。 故に、居常自ら研鑽を重ぬるほか、進んで軍隊及び後進に接し、親しく駿進の機運に触るるとともに、これに己の薀蓄を伝え、かつ世界の大勢とくに隣邦の情勢を明らかにし、もって作戦の指導に関し、既に戦争の初動より遺憾なきを期するを要す。 第三 作戦軍の編組 13、作戦軍は通常数個の軍に区分せられ、作戦方面によりてはこれを方面軍に統一せらる。 14、方面軍は通常数個の軍、騎兵集団、野戦重砲兵部隊、航空部隊、地上防空部隊及び通信部隊ならびに兵站機関等よりなり、なお、これに攻城部隊等を付せらるることあり。 軍は通常数個の師団、独立工兵大隊、航空部隊、地上防空部隊、通信部隊及び架橋材料中隊ならびに兵站部隊等よりなる。なお、これに戦車部隊、騎兵旅団、独立山砲兵連隊、野戦重砲兵部隊、攻城部隊等を付せらるることあり。 15、作戦軍の編組おは、軍隊区分より一時これを変更すること得べしといえども、その必要やむや速やかに旧に復すべきものとす。 第四 作戦指導の要領 16、作戦指導の要は、卓越せる統帥と敏活なる機動とをもって、敵に対し常に主動の地位を占め、最も有利なる条件のもとに決戦を促し、偉大なる戦勝を収めて、速やかに戦局の終結を図るにあり。 これがため、彼我の態勢に鑑み、益々我が軍の利点を発揮するとともに、敵軍の特性を考え、巧みにその弱点に乗ずること緊要なり。 17、作戦軍兵力の増大にともない、戦場の全局もしくは各方面において、しばしば外線及び内線作戦発生す。彼我当初の態勢または状況の推移に応じ、巧みに両種作戦の利点を捕捉し、ことに彼我の実力、敵軍の特性等に従い、適切に作戦指導する者よく勝を制す。 外線作戦は敵に殲滅的打撃を与るうに便なり。 これが指導にあたりては、全般の兵力配分ならびに各方面の策応を適切ならしむるとともに、作戦範囲の拡大にともない、益々後方機関の運用に留意すること肝要なり。 内線作戦もまた状況によりしばしば偉功を奏す。 兵力優勢なるも攻撃精神旺盛ならざる敵軍に対しては特に然り。然れども、この作戦は往々受動の弊に陥りやすく、各個撃破の成果全なからざれば後害を残すをもって、この指導にあたりては、巧みに戦機を看破し、特に勇猛大胆なる決心と敏速活発なる機動とを必要とす。 18、方面軍司令官または独立軍司令官は作戦の発起に先立ち、作戦計画を策定し、その推移にともない、逐次これを具体化して作戦指導に資するとともに、各機関の業務に必要なる準縄を与う。 19、作戦計画は作戦の目的、兵力の大小に従い、多少その要領を異にし、一定の形式による必要なきも、通常先ず作戦方針、ついで作戦指導要領を確定したる後、これが実施上必要なる諸条件(例えば捜索及び長方、集中地到着後における兵団の部署、これらの行動に必要なる諸施設すなわち宿営、給養、交通、兵站等ならびに作戦の補助手段すなわち宣伝謀略等)に及ぶを可とす。 20、作戦計画は洗練を重ね、推敲を加えて初めてこれを確定し、一たび決するや、みだりにその要綱を変ずるものにあらず。ことに作戦方針の如きは終始これが貫徹を期し、その根本目的は断じてこれを逸すべからず。 21.高級指揮官の発する命令は、部下兵団の大なるに従い、各兵団共通の目的と協同動作に必要なる準縄を明示することを主とし、各兵団に独断専行の余地を与えて、遺憾なくその全能力を発揮せしむるを要す。また、状況の重大なる変転に際しては、全局の考察と兵団の実力とに鑑がみ、必要に応じ、適時命令を下して、直属指揮官の向かうべきところを常に明らかにすること肝要なり。 22.方面軍司令官は、その部署に関し、長時日にわたる命令を発す。軍司令官は、敵軍と遠き時期においては長時日にわたる命令を、敵軍に近付くに従い、日々所要の命令を発するにいたるを通常とす。 23.方面軍司令官は、必要に応じ、その作戦地域を、軍の作戦地域と方面軍直轄管かん区くとにわかつ。軍司令官はその作戦地域を、通常、師団の作戦地域と軍兵站管区とにわかち、概おおむね兵站末地を連つらぬる線をもって、おのずからその境界たらしめ、必要に応じ命令をもって両者の境界を指定す。この境界は成なるべく前方に選せん定ていすべきも、その度どを失しつし、かえって各兵団の地方物資利用を掣せい肘ちゆうすることなきを要す。  各兵団の作戦地域は、多くの場合作戦地ち境きようをもって定め、これにより各兵団の行動範囲、宿営、給養の関係及び捜索、警戒の責務を律りつするものとす。正確なる地図を欠き、ことに広こう漠ばくにして地ち物ぶつの乏とぼしき作戦地における作戦地域の画かく定ていに関しては特に考こう案あん工夫を加え、未然に錯さく誤ごを防止すること肝要なり。 24.戦闘序じよ列れつもしくは軍隊区分による指揮の関係を有せざる諸兵団、期せずして同どう一いつ地ちにおいて行動をともにするにあたりては、その地にある高級先せん任にん者その指揮をとるものとす。 25.捜そう索さくは主として航空部隊および騎き兵へいの任にんずるところとす。両者の捜索に関する能力には互たがいに長ちよう短たんあるをもって、高級指揮官はその特性および状況に応じて、任務の配はい当とうを適切ならしめ、かつ相互の連れん繋けいを緊密ならしむること肝要なり。  これがため、各種捜索目的に対する両者の捜索の難なん易い等を較きよう量りようし、かつ捜索以外の任務をも考慮すること必要なり。 26.諜ちよう報ほうは捜索の結果を確認、補足するほか、しば々しば捜索の端たん緒しよを捕とらえ、捜索の手段をもってはなし得えざる各種の重要なる情報をも収集し得うるものにして、捜索部隊の不足に伴い、益ます々ますその価値を向上す。  諜報勤務は脈みやく絡らく一貫せる組織のもとに実施するを要す。故ゆえに、高級指揮官は部下兵団に対し、諜報に関する指針とくに間かん諜ちようおよび無む線せん諜報機関の配置ならびにその利用に関して所要の事じ項こうを指示し、その統一を図ること必要なり。  作戦軍の行なう諜報勤務はその作戦指導に資しするを本ほん旨しとするも、これにより往おう々おう戦争全般の指導に利用し得うべき貴重なる情報を入手することあるをもって、これに従事する者は眼がん界かいを広くし、着想を大にして、この種しゆ重要資料を看かん過かせざる着ちやく意いを必要とす。 27 騎兵は優勢なる敵に対抗すること多きをもって、勉つとめてその集結を図るとともに濫らん用ようを戒いましめ、作戦の最も緊要ようなる時期において、その最大威力を十分発揮せしむるを要す。  騎兵集団はみだりに後方よりの援助を期待すべからず。然しかれども、方面軍司令官は騎兵集団の任務達成を容易ならしむるため、必要に応じ、その能力向上を図ること肝要なり。  例えば、なし得うればこれに偵察飛行機を付ふし、又また通常これに有力にして軽快なる支し隊たいを属ぞくし、ことにその機動を容易にするために行こう李りし重ちようの掩えん護ごに意を用もちうるほか、なし得る限りこれに軽快なる運うん搬ぱん機関を配属し、かつなるべく遠く補給点を推進す。  軍司令官は状況とくに騎兵の兵力及び一般の地形に鑑かんがみ、師団騎兵を集しゆう成せい使用するを要すること少なからず。軍直属騎兵なき場合において益ます々ます然り。集成騎兵部隊の任務達成を容易ならしむるため着意すべき事項に関しては前項を参さん酌しやくするを要す。 28.砲兵はその数必ずしも豊かならざるに鑑み、重要なる方面においては万難を排して優勢を占しめ、しかも緊要なる各時機において遺い憾かんなく最大の威力を発揮し得る如く諸しよ般はんの部署を定め、あまねくその経済的活用を図はかるを要す。  砲兵威力を有効に発揮するには、必要なる準備時間を与え、特に情報、測そく量りよう及び気き象しよう機関の成果を利用せしむる着意を必要とするも、これがため戦機を逸いつし、迅じん速そくなる作戦の遂すい行こうを阻そ害がいすることなきを要す。高級指揮官は、敵砲兵をして優勢を発揮し得しめざる如く、作戦を指導すること緊要なり。 29.航空部隊は用途広こう汎はんにして、しかもその数必ずしも豊かならざるをもって、勉つとめてこれを統一するとともに、その任務を緊きん縮しゆくして、重要なる時機と方面における使用に遺憾なからしめ、かつ関係各部隊との連れん繋けいを緊密にして、その能力を活用すること肝腎なり。  高級指揮官は状況特に彼ひ我がの航空兵力を考こう量りようし、機会を求め、手段をつくして、敵航空勢力の減殺を図らざるべからず。又また、状況これを許す限り、適宜敵の戦略及び政略上の要点に空中攻撃を加え、もって戦勝の獲得に資しすること必要なり。  高級指揮官は飛行隊の能率を向上し、その運用を適切にするため、飛行場の整備特にその推進に留りゆう意いするとともに、所要の掩えん護ごを与え、かつ常に通信連絡を確保するを要す。 30.地上防空部隊は、その数豊かならざるをもって、勉めて分散をさくべしといえども、その特性上集結にすぎることなきよう、掩護地点の選定を、要度と兵力に適応せしむるを要す。 **31.作戦軍は、戦時報復の手段としてガスを使用することなきを保せず、然れども、その用否は最高統帥これを指定す。 32.ガス用法上最も緊要なるは、各種ガスの特性に従い、その使用ならびにこれが成果の利用よく状況に適合し、ことに敵軍の意い表ひように出いずるにあり。 33.ガス防護の要かなめは、機を失せず敵軍の企図を察知し、至し当とうにガス効果を判断して、事前に対応の処置を講こうずるにあり。  これがため、高級指揮官は敵のガス装備及びガス使用法等を知悉するほか、速やかにガス使用の諸準備ならびに天候、気象及び地形の影響等を明らかにし、我が軍の防毒装備に鑑かんがみ、状況に応ずる敵軍のガス使用の難易ならびにその価値を考察すること、特に肝要なり。  ガス威力は、防護の処置適切ならば恐おそるるに足たらざるも、然しからざる場合にありては、往おう々おう惨さん害がいをもたらすことあり。みだりに恐るると軽視するとは、ともに戒いましめざるべからず。 34.高級指揮官は、通信連絡のために各種機関を活用し、かつこれが防護に努め、もってその確実敏びん速そくを期せざるべからず。ことに広大なる戦場において、互たがいに遠隔せる諸兵団を意の如く運用せんとする場合において、特に然しかり。然れども、過度に通信連絡に依い存そんして戦機を誤あやまることなきを要す。 35.高級指揮官は、作戦指導上必要なる方面において、交通便利、掩えん護ご確実にして、機き密みつ保持に容易なる地点に位置するを要す。又また、一ひとたび定めたる位置は軽々しく変更することなく、その移動は、通信連絡の完かん整せいと相あいまち、逓てい次じにこれを行なうこと必要なり。 36.高級指揮官は、作戦の全期を通ずる運輸機関の要務に鑑かんがみ、常にその運用の円滑敏びん速そくを図り、ことにこれが防護に留りゆう意いするを要す。作戦地及びこれと関連する地方にある運輸機関に対しては、状況これを許す限り機を失せず所要の兵力を先せん遣けんして、速やかに要点を占領し、先まずその保全に努むること肝要なり。鉄道において特に然り。  重要なる鉄道ならびに船せん舶ぱく等の運用は、通常最高統帥これを統とう轄かつし、状況により方面軍司令官以下に委まかせらるることあり。敵の運輸機関に対し大規模の妨害を加くわうるは、その価値極めて大なり。 37.高級指揮官は常に兵へい站たんの状況に通つう暁ぎようし、機を失せず所要の準じゆん縄じようを与あたうるを要す。かくの如くして初めて、兵站をして事前に周しゆう密みつなる準備を整え、複雑多た端たんなる業務を簡かん約やくにし、行動を軽快にして、状況に適合せしめ得うべし。  方面軍司令官は各軍の兵站を統とう轄かつし、必要に応じ特にその補給に統制を加え、かつ方面軍直轄管かん区くの警備行ぎよう政せい等に関し、所要の指針を与う。 軍司令官は兵站に関し、その作戦の遂行に必要なる兵站線ならびに主要兵站施設の位置を概がい定ていし、補給(軍需品の種類及び数量ならびにその補給集しゆう積せきの時期及び地点等)、交通、衛えい生せい、警備、行政等に関し、所要の事項を指定す。  補給は兵站の主体なり。然しかれども兵団の大なるに従い、必ずしも常に斉せい整せい円滑を期きし難がたし。高級指揮官は、状況に応じて諸しよ種しゆの手段をつくし、少なくとも緊要なる時機、重要なる方面における、主要軍需品の補給に遺い憾かんなからしむるとともに、状況の変化にともなう作戦指導に支障を生ぜしめざる如く、諸般の措そ置ちを定むるを要す。  戦地の物資は勉つとめてこれを利用するとともに、なし得る限りこれを保護培ばい養ようし、本国よりの追つい送そうを軽減する着意を必要とす。給きゆう水すい困難なる作戦地にありては、特にこれが補給に留意するを要す。 38.高級指揮官は、我が軍の企き図とを秘ひ匿とくして敵軍の意表に出いずるため、敵の捜そう索さく及び諜ちよう報ほうの手段を防止するほか、計画の立案、命令の作さく為い下か達たつ、軍隊及び各機関の行動等に細心の注意を払うとともに、機き宜ぎに適する陽よう動どう及び宣伝謀略を行なう等、あらゆる手段をつくして遺い漏ろうなきを期せざるべからず。陽動は敵の空中勢力優勢なるに従い益ます々ますその必要を増大するものにして、これを統一的に行なうこと特に緊要なり。 39.高級指揮官は作戦指導にあたりては、身を細さい務むの外におき、策さく案あんならびに大たい局きよくの指導に専念せざるべからず。これがため、幕ばく僚りようを信任してその局きよくに当あたらしめ、幕僚は指揮官と一心同体となりて融ゆう和わ結合し、もってその職務に殉じゆんずべきものとす。 第五 集中 40.作戦軍は通常最高統とう帥すいの命令に従い、その概がい定ていする地域に集中す。敵に先さきんじて優勢なる兵力を集中するは既すでに先せん制せいの第一歩とす。これがため、我が軍の集中を容易ならしむる如ごとく、あらゆる手段を講こうずるとともに、進んで敵軍の集中を妨ぼう害がいすること肝かん要ようなり。  集中地は状況これを許す限り、成なるべく前方に選せん定ていすべきものとす。状況により、集中の完結を待つことなく攻勢をとるべき場合少なからず。 41.国境もしくは戦地付近に位置する軍隊は、最高統帥の命令に従い、本軍の集中及びその後の作戦を容易ならしむるため、速やかに必要なる行動をとる。状況により、この目的のため別に所しよ要ようの兵力を派は遣けんせらるることあり。 42.集中は、方面軍にありては、軍毎ごとに概おおむね逐ちく次じに行なうも、状況によりては各軍ほぼ同時に完結せしむ。集中の掩えん護ごは、方面軍にありては、当初、先せん着ちやくの軍司令官をして先着諸兵団をもってこれに任にんぜしめ、爾じ後ご、状況に応じ引続き上記の要領によるか、もしくは各軍毎にこれに当あたらしむ。独立軍にありてもまたこれに準じゆんず。 43.集中の掩護に任ずる部隊は、集中の安全を図はかるとともに、敵軍の捜そう索さくを妨害し、なお、なし得うれば捜索及び爾じ後ごの作戦のため、緊きん要ようなる地点を占領す。これがため、往おう々おう積極的行動に出いずるを必要とすることあり。  状況により、これらの部隊をして、たんに集中の掩護にとどまらず、さらに我が軍の作戦を容易ならしめ、かつ勉つとめて敵軍の集中を妨害せしむべき場合少なからず。かくの如ごとき場合にありては、〈41〉項に示す先せん進しん部隊を、なし得ればこれに合ごう一いつするを可とす。これらの部隊の行動とくにその必要に応じて占しむべき位置は、作戦の全ぜん局きよくに影響するところ頗すこぶる大なるをもって、方面軍司令官又または軍司令官においてこれを概がい定ていするを要することあり。 44.集中地における兵団の配置は爾じ後ごの作戦指導とくに最初の会戦に適応せしむるを要す。  敵に遠く集中する場合にありては、爾後の行動及び給きゆう養ように支し障しようなき如く配慮し、集中のために長時間を要する時は、状況の変化に対応し得る自由を保留するとともに、我が企図の秘ひ匿とくに努む。集中地の状態とくに宿しゆく営えい能力の関係により、各兵団を広大なる地域に分散するを要することあり。冬季において特に然しかり。 45.方面軍司令官又または独立軍司令官は、未いまだ予定の兵力を集中し得えざる時期においても、いやしくも好機の乗じようずべきものあらば、断だん然ぜん攻勢をとり、あるいは集中地の躍やく進しんを行ない、もって常に主しゆ動どうの地位を占しめざるべからず。これがため、高級指揮官は集中地にある軍隊をして、常に前進準備を怠おこたらしめざるを要す。 46.方面軍司令官又または独立軍司令官は、敵軍の集中を妨害し、かつ我が軍の作戦を容易ならしむるため、別動隊、挺てい進しん隊等とうをもって巧みに敵軍の後方を攪かく乱らんせしむるとともに、機き宜ぎに適する宣伝謀ぼう略りやくを行なうこと肝かん要ようなり。 47.方面軍司令官は集中間、騎兵集団をもって、主として我が軍の集中を容易ならしめ、かねて敵軍の集中を妨害し、かつ所要の捜索を行なわしむ。軍司令官は集中間、その直ちよつ轄かつの騎兵をもって、通常、主として警戒及び捜索に任ぜしむ。 48.方面軍司令官又または独立軍司令官は、集中間、航空部隊をもって主として遠距離捜索ならびに集中輸送その他要点の掩護に任ぜしめ、又、作戦の劈頭より、機会を求めて敵の重要目標に対し空中攻撃を行なわしむ。  これがため、方面軍司令官にありては、方面軍飛行隊兵力の大小ならびにその性能等に鑑かんがみ、偵察飛行隊の一部もしくは大部ならびに戦闘及び爆撃飛行隊の大部もしくは全部を直轄し、爾余は軍をしてこれを使用せしむるも、その捜索を統一す。  軍司令官にありては、軍内飛行隊の全部もしくは大部を直轄するを通常とす。空中捜索を統一するためには、通常、捜索の目的、状況により捜索の範囲もしくはこの両者を指定す。  航空部隊の活躍はもとより望むところなるも、航空兵力は消しよう耗もうしやすきをもって、会戦の重要時期に兵力不足に陥おちいることなきよう戒いましめざるべからず。 49.方面軍司令官及び軍司令官は、集中間、地上防空部隊の兵力、通信機関の能力等に応じ、地上防空部隊を必要の兵団等に分ぶん属ぞくし、あるいは統一して、要点もしくは重要なる部隊を掩護せしむ。 50.作戦軍の集中輸送は通常最高統帥の企画にもとづき実施す。これが計画通り行なわれざるときは各方面に甚大なる影響を及ぼすをもって、作戦軍は忠実にこれを実行し、特異の場合のほかみだりに変更すべからず。 51.方面軍司令官とくに軍司令官は、集中間爾後の作戦とくに最初の会戦を考慮し、補給に関する万般の準備を全とうするものとす。これがため、なるべく多くの軍需品を勉つとめて前方に集積せしむるとともに、交通の施設を完備し、かつ所要の輸送機関を整備せしむるを要す。 第六 会戦 一 通則 52、会戦の目的は敵を圧倒殲滅し、もって優勝の地位を確保するにあり。 攻勢は会戦の目的を達する唯一の要道たり。たとい敵のため一時機先を制せられたる場合といえども、なお、適切かつ猛烈果敢なる攻勢により、よく戦機を挽回し、進んでこれを勝利に導かざるべからず。 53、会戦指導の要は、常に不利なる決戦を敵に強うる如く、極度に機動力を発揮し、使用し得る限りの兵力をつくして、所望の時機、所望の方面において優勢を占むるとともに、敵軍の意表に出で、かくの如くにして益々主動の地位を確保すると同時に、いよいよ各兵団の戦力を更張し、もって至短の期日に甚大の戦果を収むるにあり。 この際、主力を指向せざる方面にありては、最小の兵力をもって忍び、巧妙適切なる作戦の指導により、主力の決戦を容易ならしめざるべからず。 戦局の推移をして、ついに堅固なる陣地の力攻にいたらしめざる如く、会戦を指導すること特に緊要なり。 第七 特異の作戦 第八 陸海軍協同作戦 第九 連合軍の作戦 統帥参考 統帥権 統帥権の本質は力にして、其の作用は超法規的なり (統帥権は)輔弼(ほひつ)の範囲外に独立す 統帥権の行使及び其の結果に関しては、議会に於いて責任を負わず。議会は軍の統帥・指揮並びに之が結果に関し、質問を提起し、弁明を求め、又は之を批評し、論難するの権利を有せず 参謀総長・海軍軍令部長等は、幕僚にして憲法上の責任を有するものにあらざるが故に~ 兵権を行使する機関は、軍事上必要なる限度に於いて直接に国民を統治することを得 前日本军 军事秘密 作战书
他の文献  諜報宣伝勤務指針 https://www65.atwiki.jp/internetkyogakusys/pages/51.html 特別高等警察執務心得 https://www65.atwiki.jp/internetkyogakusys/pages/50.html 統帥綱領 https://www65.atwiki.jp/internetkyogakusys/pages/53.html 国土決戦教令 https://www65.atwiki.jp/internetkyogakusys/pages/79.html ---- 統帥綱領全文掲載(予定)しています。 #amazon(4767985013,left)#amazon(4569761402,left) 軍事機密 統帥綱領 本綱領は主として高級指揮官に対し、方面軍及び軍統帥に関する要綱を示すものとす。 昭和三年三月二十日 参謀総長 陸軍大将 鈴木 荘六 第一 統帥の要義 1、現代の戦争は、ややもすれば、国力の全幅を傾倒して、なおかつ勝敗を決し能わざるにいたる。 故に我が国はその国情に鑑み、勉めて初動の威力を強大にし、速やかに戦争の目的を貫徹すること特に緊要なり。政戦両略の指導はことごとくこの趣旨に合致せざるべからず。 2、政略指導の主とするところは、戦争全般の遂行を容易ならしむるにあり。 故に、作戦はこれと緊密なる協調を保ち、殊に赫々たる戦勝により、政略の指導に威力ある支掌を得しむること肝要なり。 然れども、作戦は元来戦争遂行のため最も重要なる手段たるをもって、政略上の利便に随従することなきはもちろん、其の実施に当たりては、全然独立し、拘束されることなきを要す。 政略と作戦の関係は最高統帥の律するところにして、その直属の高級指揮官は、よくその方針を体して事に従うべく、爾他の指揮官にありては、専念、作戦の遂行に努力すべきものとす。 3、作戦指導の本旨は、攻勢をもって、速やかに敵軍の戦力を撃滅するにあり。 これがため迅速なる集中、発指たる機動および果敢なる殲滅線は特にとうとぶところとす。 状況により、作戦上の要求もしくは政略上の考慮にもとずき、速やかに必要の地域を占領するために作戦を指導すべき場合あり。 4、統帥の本旨は、常に戦力を充実し、巧みにこれを敵軍に指向して、その実勢力特に無形的威力を最高度に発揚するにあり。 最近の物質的進歩は著大なるをもって、みだりにその威力を軽視すべからずといえども、勝敗の主因は依然として精神的要素に存すること古来変わることところなし。まして我が国軍にありては、寡少のの兵数、不足の資材をもって、なおよく前期各般の要求を充足せしむべき場合僅少ならざるをもって、特に然り。すなわち戦闘は将兵一致、忠君の至誠、匪躬の節義を致し、その意気高調に達して、ついに敵に敗滅の念慮を与うるにおいて、初めてその目的を達するを得べし。 5、敵軍の意表に出ずるは、戦勝の基をひらき、その成果を偉大ならしむるために特に緊要なり。 すなわち追随を許さざる創意と、旺盛なる企図心とにより、敵を制さざるべからず。しかも、たんに用兵の範囲においてこれを求むるのみならず、科学工芸の領域においてもまたこれに努むるを要す。 戦争間、その経過にともなう幾多の教訓は、諸般事象の改変と相まち、必ずや戦法その他の革新を促すべきをもって、絶えず戦績の攻究に努むると同時に、将来の推移を洞察し、かつ、機会を求めて必要の訓練を加え、常に最善最妙の方策によりて敵軍の機先を制すること緊要なり。 6、巧妙適切なる宣伝謀略は作戦指導に貢献すること少なからず。 宣伝謀略は主として最高統帥の任ずるところなるも、作戦軍もまた一貫せる方針に基づき、敵軍もしくは作戦地住民を対象としてこれを行い、もって敵軍戦力の壊敗等に努むること緊要なり。 特に現代戦においては、軍隊と国民とは物心両面において密接なる関係を有し、互いに交感すること大なるに着意を要す。 敵の行う宣伝謀略に対しては、軍隊の志気を振作し、団結を強固にして、乗ずべき間隙をなからしむるとともに、適時対応の手段を講ずるを要す。 7、統帥の妙は変通きわまりなきにあり。 千変万化の状況、特に彼我の実力、敵軍の特性及び作戦地の特質に応じて、各々適切なる方策を定むべく、みだりに一定の形式に捉われ、活用の妙機を逸するが如きは、厳にこれを戒めざるべからず。 第二 将帥 8、軍隊志気の消長は指揮官の威徳にかかる。 いやしくも将に将たるものは高邁なる品性、公明なる資質および無限の包容力をそなえ、堅確なる意志、卓越せる識見および非凡なる洞察力により、衆望帰向の中枢、全軍仰募の中心たらざるべからず。 かくのごとくにして初めて軍隊の志気を作興し、これをしてよく万難を排し、難苦を凌ぎ、不撓不屈、敵に殺到せしむるを得べし。 9、高級指揮官は大勢を達観し、適時適切なる決心をなさざるべからず。 これがため常に全般の状況に通暁し、事に臨み冷静、熟慮するを要す。然れども、いたずらに判断の正鵠を得ることに腐心して機宣を誤らんよりは、むしろ毅然としてもこれを断ずるに努むるを要す。また、たとい決心に疑惑を生じたる場合といえども、自ら主動の地位に立ち、もって動作の自由を獲得せざるべからず。蓋し一度受動の地位に陥らんか、兵団の大なるに従い、これより脱逸すること、益々困難となるをもってなり。 10、高級指揮官は常にその態度に留意し、ことに難局にあたりては、泰然動かず、沈着機に処するを要す。この際内に自ら信ずるところあれば、森厳なる威容おのずから外に溢れて、部下の嘱望を繋持し、その志気を振作し、もって成功の基を固くするを得べし。 11、高級指揮官は予めよく部下の識能および性格を鑑別して、適材を適所に配置し、たとい能力秀でざるものといえども、必ずこれに任所を得しめ、もってその全能力を発揮せしむること肝要なり。賞罰はもとより厳明なるを要すといえども、みだりに部下の過誤を責めず、適時これに樹功の機会を与え、もってその発刺たる意気を振起せしむるを要す。 12、高級指揮官は用兵一般の方法に通ずるのみならず、我が軍の真価を知悉し、予想する敵国および敵軍ならびに作戦地の事情に詳ならざるべからず。 故に、居常自ら研鑽を重ぬるほか、進んで軍隊及び後進に接し、親しく駿進の機運に触るるとともに、これに己の薀蓄を伝え、かつ世界の大勢とくに隣邦の情勢を明らかにし、もって作戦の指導に関し、既に戦争の初動より遺憾なきを期するを要す。 第三 作戦軍の編組 13、作戦軍は通常数個の軍に区分せられ、作戦方面によりてはこれを方面軍に統一せらる。 14、方面軍は通常数個の軍、騎兵集団、野戦重砲兵部隊、航空部隊、地上防空部隊及び通信部隊ならびに兵站機関等よりなり、なお、これに攻城部隊等を付せらるることあり。 軍は通常数個の師団、独立工兵大隊、航空部隊、地上防空部隊、通信部隊及び架橋材料中隊ならびに兵站部隊等よりなる。なお、これに戦車部隊、騎兵旅団、独立山砲兵連隊、野戦重砲兵部隊、攻城部隊等を付せらるることあり。 15、作戦軍の編組おは、軍隊区分より一時これを変更すること得べしといえども、その必要やむや速やかに旧に復すべきものとす。 第四 作戦指導の要領 16、作戦指導の要は、卓越せる統帥と敏活なる機動とをもって、敵に対し常に主動の地位を占め、最も有利なる条件のもとに決戦を促し、偉大なる戦勝を収めて、速やかに戦局の終結を図るにあり。 これがため、彼我の態勢に鑑み、益々我が軍の利点を発揮するとともに、敵軍の特性を考え、巧みにその弱点に乗ずること緊要なり。 17、作戦軍兵力の増大にともない、戦場の全局もしくは各方面において、しばしば外線及び内線作戦発生す。彼我当初の態勢または状況の推移に応じ、巧みに両種作戦の利点を捕捉し、ことに彼我の実力、敵軍の特性等に従い、適切に作戦指導する者よく勝を制す。 外線作戦は敵に殲滅的打撃を与るうに便なり。 これが指導にあたりては、全般の兵力配分ならびに各方面の策応を適切ならしむるとともに、作戦範囲の拡大にともない、益々後方機関の運用に留意すること肝要なり。 内線作戦もまた状況によりしばしば偉功を奏す。 兵力優勢なるも攻撃精神旺盛ならざる敵軍に対しては特に然り。然れども、この作戦は往々受動の弊に陥りやすく、各個撃破の成果全なからざれば後害を残すをもって、この指導にあたりては、巧みに戦機を看破し、特に勇猛大胆なる決心と敏速活発なる機動とを必要とす。 18、方面軍司令官または独立軍司令官は作戦の発起に先立ち、作戦計画を策定し、その推移にともない、逐次これを具体化して作戦指導に資するとともに、各機関の業務に必要なる準縄を与う。 19、作戦計画は作戦の目的、兵力の大小に従い、多少その要領を異にし、一定の形式による必要なきも、通常先ず作戦方針、ついで作戦指導要領を確定したる後、これが実施上必要なる諸条件(例えば捜索及び長方、集中地到着後における兵団の部署、これらの行動に必要なる諸施設すなわち宿営、給養、交通、兵站等ならびに作戦の補助手段すなわち宣伝謀略等)に及ぶを可とす。 20、作戦計画は洗練を重ね、推敲を加えて初めてこれを確定し、一たび決するや、みだりにその要綱を変ずるものにあらず。ことに作戦方針の如きは終始これが貫徹を期し、その根本目的は断じてこれを逸すべからず。 21.高級指揮官の発する命令は、部下兵団の大なるに従い、各兵団共通の目的と協同動作に必要なる準縄を明示することを主とし、各兵団に独断専行の余地を与えて、遺憾なくその全能力を発揮せしむるを要す。また、状況の重大なる変転に際しては、全局の考察と兵団の実力とに鑑がみ、必要に応じ、適時命令を下して、直属指揮官の向かうべきところを常に明らかにすること肝要なり。 22.方面軍司令官は、その部署に関し、長時日にわたる命令を発す。軍司令官は、敵軍と遠き時期においては長時日にわたる命令を、敵軍に近付くに従い、日々所要の命令を発するにいたるを通常とす。 23.方面軍司令官は、必要に応じ、その作戦地域を、軍の作戦地域と方面軍直轄管かん区くとにわかつ。軍司令官はその作戦地域を、通常、師団の作戦地域と軍兵站管区とにわかち、概おおむね兵站末地を連つらぬる線をもって、おのずからその境界たらしめ、必要に応じ命令をもって両者の境界を指定す。この境界は成なるべく前方に選せん定ていすべきも、その度どを失しつし、かえって各兵団の地方物資利用を掣せい肘ちゆうすることなきを要す。  各兵団の作戦地域は、多くの場合作戦地ち境きようをもって定め、これにより各兵団の行動範囲、宿営、給養の関係及び捜索、警戒の責務を律りつするものとす。正確なる地図を欠き、ことに広こう漠ばくにして地ち物ぶつの乏とぼしき作戦地における作戦地域の画かく定ていに関しては特に考こう案あん工夫を加え、未然に錯さく誤ごを防止すること肝要なり。 24.戦闘序じよ列れつもしくは軍隊区分による指揮の関係を有せざる諸兵団、期せずして同どう一いつ地ちにおいて行動をともにするにあたりては、その地にある高級先せん任にん者その指揮をとるものとす。 25.捜そう索さくは主として航空部隊および騎き兵へいの任にんずるところとす。両者の捜索に関する能力には互たがいに長ちよう短たんあるをもって、高級指揮官はその特性および状況に応じて、任務の配はい当とうを適切ならしめ、かつ相互の連れん繋けいを緊密ならしむること肝要なり。  これがため、各種捜索目的に対する両者の捜索の難なん易い等を較きよう量りようし、かつ捜索以外の任務をも考慮すること必要なり。 26.諜ちよう報ほうは捜索の結果を確認、補足するほか、しば々しば捜索の端たん緒しよを捕とらえ、捜索の手段をもってはなし得えざる各種の重要なる情報をも収集し得うるものにして、捜索部隊の不足に伴い、益ます々ますその価値を向上す。  諜報勤務は脈みやく絡らく一貫せる組織のもとに実施するを要す。故ゆえに、高級指揮官は部下兵団に対し、諜報に関する指針とくに間かん諜ちようおよび無む線せん諜報機関の配置ならびにその利用に関して所要の事じ項こうを指示し、その統一を図ること必要なり。  作戦軍の行なう諜報勤務はその作戦指導に資しするを本ほん旨しとするも、これにより往おう々おう戦争全般の指導に利用し得うべき貴重なる情報を入手することあるをもって、これに従事する者は眼がん界かいを広くし、着想を大にして、この種しゆ重要資料を看かん過かせざる着ちやく意いを必要とす。 27 騎兵は優勢なる敵に対抗すること多きをもって、勉つとめてその集結を図るとともに濫らん用ようを戒いましめ、作戦の最も緊要ようなる時期において、その最大威力を十分発揮せしむるを要す。  騎兵集団はみだりに後方よりの援助を期待すべからず。然しかれども、方面軍司令官は騎兵集団の任務達成を容易ならしむるため、必要に応じ、その能力向上を図ること肝要なり。  例えば、なし得うればこれに偵察飛行機を付ふし、又また通常これに有力にして軽快なる支し隊たいを属ぞくし、ことにその機動を容易にするために行こう李りし重ちようの掩えん護ごに意を用もちうるほか、なし得る限りこれに軽快なる運うん搬ぱん機関を配属し、かつなるべく遠く補給点を推進す。  軍司令官は状況とくに騎兵の兵力及び一般の地形に鑑かんがみ、師団騎兵を集しゆう成せい使用するを要すること少なからず。軍直属騎兵なき場合において益ます々ます然り。集成騎兵部隊の任務達成を容易ならしむるため着意すべき事項に関しては前項を参さん酌しやくするを要す。 28.砲兵はその数必ずしも豊かならざるに鑑み、重要なる方面においては万難を排して優勢を占しめ、しかも緊要なる各時機において遺い憾かんなく最大の威力を発揮し得る如く諸しよ般はんの部署を定め、あまねくその経済的活用を図はかるを要す。  砲兵威力を有効に発揮するには、必要なる準備時間を与え、特に情報、測そく量りよう及び気き象しよう機関の成果を利用せしむる着意を必要とするも、これがため戦機を逸いつし、迅じん速そくなる作戦の遂すい行こうを阻そ害がいすることなきを要す。高級指揮官は、敵砲兵をして優勢を発揮し得しめざる如く、作戦を指導すること緊要なり。 29.航空部隊は用途広こう汎はんにして、しかもその数必ずしも豊かならざるをもって、勉つとめてこれを統一するとともに、その任務を緊きん縮しゆくして、重要なる時機と方面における使用に遺憾なからしめ、かつ関係各部隊との連れん繋けいを緊密にして、その能力を活用すること肝腎なり。  高級指揮官は状況特に彼ひ我がの航空兵力を考こう量りようし、機会を求め、手段をつくして、敵航空勢力の減殺を図らざるべからず。又また、状況これを許す限り、適宜敵の戦略及び政略上の要点に空中攻撃を加え、もって戦勝の獲得に資しすること必要なり。  高級指揮官は飛行隊の能率を向上し、その運用を適切にするため、飛行場の整備特にその推進に留りゆう意いするとともに、所要の掩えん護ごを与え、かつ常に通信連絡を確保するを要す。 30.地上防空部隊は、その数豊かならざるをもって、勉めて分散をさくべしといえども、その特性上集結にすぎることなきよう、掩護地点の選定を、要度と兵力に適応せしむるを要す。 **31.作戦軍は、戦時報復の手段としてガスを使用することなきを保せず、然れども、その用否は最高統帥これを指定す。 32.ガス用法上最も緊要なるは、各種ガスの特性に従い、その使用ならびにこれが成果の利用よく状況に適合し、ことに敵軍の意い表ひように出いずるにあり。 33.ガス防護の要かなめは、機を失せず敵軍の企図を察知し、至し当とうにガス効果を判断して、事前に対応の処置を講こうずるにあり。  これがため、高級指揮官は敵のガス装備及びガス使用法等を知悉するほか、速やかにガス使用の諸準備ならびに天候、気象及び地形の影響等を明らかにし、我が軍の防毒装備に鑑かんがみ、状況に応ずる敵軍のガス使用の難易ならびにその価値を考察すること、特に肝要なり。  ガス威力は、防護の処置適切ならば恐おそるるに足たらざるも、然しからざる場合にありては、往おう々おう惨さん害がいをもたらすことあり。みだりに恐るると軽視するとは、ともに戒いましめざるべからず。 34.高級指揮官は、通信連絡のために各種機関を活用し、かつこれが防護に努め、もってその確実敏びん速そくを期せざるべからず。ことに広大なる戦場において、互たがいに遠隔せる諸兵団を意の如く運用せんとする場合において、特に然しかり。然れども、過度に通信連絡に依い存そんして戦機を誤あやまることなきを要す。 35.高級指揮官は、作戦指導上必要なる方面において、交通便利、掩えん護ご確実にして、機き密みつ保持に容易なる地点に位置するを要す。又また、一ひとたび定めたる位置は軽々しく変更することなく、その移動は、通信連絡の完かん整せいと相あいまち、逓てい次じにこれを行なうこと必要なり。 36.高級指揮官は、作戦の全期を通ずる運輸機関の要務に鑑かんがみ、常にその運用の円滑敏びん速そくを図り、ことにこれが防護に留りゆう意いするを要す。作戦地及びこれと関連する地方にある運輸機関に対しては、状況これを許す限り機を失せず所要の兵力を先せん遣けんして、速やかに要点を占領し、先まずその保全に努むること肝要なり。鉄道において特に然り。  重要なる鉄道ならびに船せん舶ぱく等の運用は、通常最高統帥これを統とう轄かつし、状況により方面軍司令官以下に委まかせらるることあり。敵の運輸機関に対し大規模の妨害を加くわうるは、その価値極めて大なり。 37.高級指揮官は常に兵へい站たんの状況に通つう暁ぎようし、機を失せず所要の準じゆん縄じようを与あたうるを要す。かくの如くして初めて、兵站をして事前に周しゆう密みつなる準備を整え、複雑多た端たんなる業務を簡かん約やくにし、行動を軽快にして、状況に適合せしめ得うべし。  方面軍司令官は各軍の兵站を統とう轄かつし、必要に応じ特にその補給に統制を加え、かつ方面軍直轄管かん区くの警備行ぎよう政せい等に関し、所要の指針を与う。 軍司令官は兵站に関し、その作戦の遂行に必要なる兵站線ならびに主要兵站施設の位置を概がい定ていし、補給(軍需品の種類及び数量ならびにその補給集しゆう積せきの時期及び地点等)、交通、衛えい生せい、警備、行政等に関し、所要の事項を指定す。  補給は兵站の主体なり。然しかれども兵団の大なるに従い、必ずしも常に斉せい整せい円滑を期きし難がたし。高級指揮官は、状況に応じて諸しよ種しゆの手段をつくし、少なくとも緊要なる時機、重要なる方面における、主要軍需品の補給に遺い憾かんなからしむるとともに、状況の変化にともなう作戦指導に支障を生ぜしめざる如く、諸般の措そ置ちを定むるを要す。  戦地の物資は勉つとめてこれを利用するとともに、なし得る限りこれを保護培ばい養ようし、本国よりの追つい送そうを軽減する着意を必要とす。給きゆう水すい困難なる作戦地にありては、特にこれが補給に留意するを要す。 38.高級指揮官は、我が軍の企き図とを秘ひ匿とくして敵軍の意表に出いずるため、敵の捜そう索さく及び諜ちよう報ほうの手段を防止するほか、計画の立案、命令の作さく為い下か達たつ、軍隊及び各機関の行動等に細心の注意を払うとともに、機き宜ぎに適する陽よう動どう及び宣伝謀略を行なう等、あらゆる手段をつくして遺い漏ろうなきを期せざるべからず。陽動は敵の空中勢力優勢なるに従い益ます々ますその必要を増大するものにして、これを統一的に行なうこと特に緊要なり。 39.高級指揮官は作戦指導にあたりては、身を細さい務むの外におき、策さく案あんならびに大たい局きよくの指導に専念せざるべからず。これがため、幕ばく僚りようを信任してその局きよくに当あたらしめ、幕僚は指揮官と一心同体となりて融ゆう和わ結合し、もってその職務に殉じゆんずべきものとす。 第五 集中 40.作戦軍は通常最高統とう帥すいの命令に従い、その概がい定ていする地域に集中す。敵に先さきんじて優勢なる兵力を集中するは既すでに先せん制せいの第一歩とす。これがため、我が軍の集中を容易ならしむる如ごとく、あらゆる手段を講こうずるとともに、進んで敵軍の集中を妨ぼう害がいすること肝かん要ようなり。  集中地は状況これを許す限り、成なるべく前方に選せん定ていすべきものとす。状況により、集中の完結を待つことなく攻勢をとるべき場合少なからず。 41.国境もしくは戦地付近に位置する軍隊は、最高統帥の命令に従い、本軍の集中及びその後の作戦を容易ならしむるため、速やかに必要なる行動をとる。状況により、この目的のため別に所しよ要ようの兵力を派は遣けんせらるることあり。 42.集中は、方面軍にありては、軍毎ごとに概おおむね逐ちく次じに行なうも、状況によりては各軍ほぼ同時に完結せしむ。集中の掩えん護ごは、方面軍にありては、当初、先せん着ちやくの軍司令官をして先着諸兵団をもってこれに任にんぜしめ、爾じ後ご、状況に応じ引続き上記の要領によるか、もしくは各軍毎にこれに当あたらしむ。独立軍にありてもまたこれに準じゆんず。 43.集中の掩護に任ずる部隊は、集中の安全を図はかるとともに、敵軍の捜そう索さくを妨害し、なお、なし得うれば捜索及び爾じ後ごの作戦のため、緊きん要ようなる地点を占領す。これがため、往おう々おう積極的行動に出いずるを必要とすることあり。  状況により、これらの部隊をして、たんに集中の掩護にとどまらず、さらに我が軍の作戦を容易ならしめ、かつ勉つとめて敵軍の集中を妨害せしむべき場合少なからず。かくの如ごとき場合にありては、〈41〉項に示す先せん進しん部隊を、なし得ればこれに合ごう一いつするを可とす。これらの部隊の行動とくにその必要に応じて占しむべき位置は、作戦の全ぜん局きよくに影響するところ頗すこぶる大なるをもって、方面軍司令官又または軍司令官においてこれを概がい定ていするを要することあり。 44.集中地における兵団の配置は爾じ後ごの作戦指導とくに最初の会戦に適応せしむるを要す。  敵に遠く集中する場合にありては、爾後の行動及び給きゆう養ように支し障しようなき如く配慮し、集中のために長時間を要する時は、状況の変化に対応し得る自由を保留するとともに、我が企図の秘ひ匿とくに努む。集中地の状態とくに宿しゆく営えい能力の関係により、各兵団を広大なる地域に分散するを要することあり。冬季において特に然しかり。 45.方面軍司令官又または独立軍司令官は、未いまだ予定の兵力を集中し得えざる時期においても、いやしくも好機の乗じようずべきものあらば、断だん然ぜん攻勢をとり、あるいは集中地の躍やく進しんを行ない、もって常に主しゆ動どうの地位を占しめざるべからず。これがため、高級指揮官は集中地にある軍隊をして、常に前進準備を怠おこたらしめざるを要す。 46.方面軍司令官又または独立軍司令官は、敵軍の集中を妨害し、かつ我が軍の作戦を容易ならしむるため、別動隊、挺てい進しん隊等とうをもって巧みに敵軍の後方を攪かく乱らんせしむるとともに、機き宜ぎに適する宣伝謀ぼう略りやくを行なうこと肝かん要ようなり。 47.方面軍司令官は集中間、騎兵集団をもって、主として我が軍の集中を容易ならしめ、かねて敵軍の集中を妨害し、かつ所要の捜索を行なわしむ。軍司令官は集中間、その直ちよつ轄かつの騎兵をもって、通常、主として警戒及び捜索に任ぜしむ。 48.方面軍司令官又または独立軍司令官は、集中間、航空部隊をもって主として遠距離捜索ならびに集中輸送その他要点の掩護に任ぜしめ、又、作戦の劈頭より、機会を求めて敵の重要目標に対し空中攻撃を行なわしむ。  これがため、方面軍司令官にありては、方面軍飛行隊兵力の大小ならびにその性能等に鑑かんがみ、偵察飛行隊の一部もしくは大部ならびに戦闘及び爆撃飛行隊の大部もしくは全部を直轄し、爾余は軍をしてこれを使用せしむるも、その捜索を統一す。  軍司令官にありては、軍内飛行隊の全部もしくは大部を直轄するを通常とす。空中捜索を統一するためには、通常、捜索の目的、状況により捜索の範囲もしくはこの両者を指定す。  航空部隊の活躍はもとより望むところなるも、航空兵力は消しよう耗もうしやすきをもって、会戦の重要時期に兵力不足に陥おちいることなきよう戒いましめざるべからず。 49.方面軍司令官及び軍司令官は、集中間、地上防空部隊の兵力、通信機関の能力等に応じ、地上防空部隊を必要の兵団等に分ぶん属ぞくし、あるいは統一して、要点もしくは重要なる部隊を掩護せしむ。 50.作戦軍の集中輸送は通常最高統帥の企画にもとづき実施す。これが計画通り行なわれざるときは各方面に甚大なる影響を及ぼすをもって、作戦軍は忠実にこれを実行し、特異の場合のほかみだりに変更すべからず。 51.方面軍司令官とくに軍司令官は、集中間爾後の作戦とくに最初の会戦を考慮し、補給に関する万般の準備を全とうするものとす。これがため、なるべく多くの軍需品を勉つとめて前方に集積せしむるとともに、交通の施設を完備し、かつ所要の輸送機関を整備せしむるを要す。 第六 会戦 一 通則 52、会戦の目的は敵を圧倒殲滅し、もって優勝の地位を確保するにあり。 攻勢は会戦の目的を達する唯一の要道たり。たとい敵のため一時機先を制せられたる場合といえども、なお、適切かつ猛烈果敢なる攻勢により、よく戦機を挽回し、進んでこれを勝利に導かざるべからず。 53、会戦指導の要は、常に不利なる決戦を敵に強うる如く、極度に機動力を発揮し、使用し得る限りの兵力をつくして、所望の時機、所望の方面において優勢を占むるとともに、敵軍の意表に出で、かくの如くにして益々主動の地位を確保すると同時に、いよいよ各兵団の戦力を更張し、もって至短の期日に甚大の戦果を収むるにあり。 この際、主力を指向せざる方面にありては、最小の兵力をもって忍び、巧妙適切なる作戦の指導により、主力の決戦を容易ならしめざるべからず。 戦局の推移をして、ついに堅固なる陣地の力攻にいたらしめざる如く、会戦を指導すること特に緊要なり。 第七 特異の作戦 第八 陸海軍協同作戦 第九 連合軍の作戦 統帥参考 統帥権 統帥権の本質は力にして、其の作用は超法規的なり (統帥権は)輔弼(ほひつ)の範囲外に独立す 統帥権の行使及び其の結果に関しては、議会に於いて責任を負わず。議会は軍の統帥・指揮並びに之が結果に関し、質問を提起し、弁明を求め、又は之を批評し、論難するの権利を有せず 参謀総長・海軍軍令部長等は、幕僚にして憲法上の責任を有するものにあらざるが故に~ 兵権を行使する機関は、軍事上必要なる限度に於いて直接に国民を統治することを得 前日本军 军事秘密 作战书 ---- 統帥参考 統帥権独立ノ必要 政治ハ法ニ拠リ,統帥ハ意志ニ拠ル。一般国務上ノ大権作用ハ,一般ノ国民ヲ対象トシ,其生命,財産,自由ノ確保ヲ目的トシ,其行使ハ『法』ニ準拠スルヲ要スト雖,統帥権ハ,『陸海軍』ト云フ特定ノ国民ヲ対象トシ,最高唯一ノ意志ニ依リテ直接ニ人間ノ自由ヲ拘束シ,且,其最後ノモノタル生命ヲ要求スルノミナラズ,国家非常ノ場合ニ於テハ主権ヲ擁護確立スルモノナリ。 之ヲ以テ,統帥権ノ本質ハ力ニシテ,其ノ作用ハ超法的ナリ。即チ爾他ノ大権ト其本質ニ於テ大ニ趣ヲ異ニスルモノト言ハザルベカラズ。而モ軍隊ハ最高唯一ノ意志ニ基キテ教育訓練セラレ一糸紊レザル統一ト団結トヲ保持シ,一旦緩急アルニ際シテハ完全ナル自由ト秘密トヲ保持シテ神速機敏ノ行動ニ出デザルベカラザルガ故ニ,統帥権ノ輔翼及執行ノ機関ハ政治機関ヨリ分離シ,軍令ハ政令ヨリ独立セザルベカラズ。 陸海軍ニ対スル統治ハ,即チ統帥ニシテ,一般国務上ノ大権ガ国務大臣ノ輔弼スル所ナルニ反シ,統帥権ハ其輔弼ノ範囲外ニ独立ス。従テ統帥権ノ行使及其結果ニ関シテハ,議会ニ於テ責任ヲ負ハズ。議会ハ軍ノ統帥・指揮並之ガ結果ニ関シ,質問ヲ提起シ,弁明ヲ求メ,又ハ之ヲ批評シ,論難スルノ権利ヲ有セズ。 我帝国ニ於テハ立憲政治ノ反面ノ弊竇ヲ認メ,其害ヲ局限スルガ為,統帥,祭祀,栄典授与等ニ関スル大権ノ行使ハ,国務大臣輔弼ノ範囲外ニ置キタリ。之帝国憲法ノ精神ナリト雖,統帥権ノ独立ハ,憲法ノ成文上ニ於テ明白ナラザルガ故ニ屡々問題ト為レリ。然レドモ,憲法制定ノ前後ヲ通ズル慣行ト事実並憲法以外ノ附属法ハ叙上ノ憲法ノ精神ヲ明徴シ,統帥権独立ノ法的根拠ハ実ニ茲ニ存ス。憲法義解ニモ『兵馬ノ統一ハ至尊ノ大権ニシテ専ラ帷幄ノ大令ニ属ス』ト述ベ,事実ニ於テ参謀本部,軍事参議院等ノ軍令機関ハ既ニ憲法制定以前ニ於テ政治機関ト相対立シテ存在シ,憲法ハ其第76条(法律,規則,命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヒタルニ拘ラス此憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス)ニ於テ之ヲ承認シタルモノナリ。 国務大臣ハ憲法上ノ輔弼ノ責ニ任ズル者ナルヲ以テ,主権者ガ大臣ノ意見ニ反シテ決裁セラレタルトキハ,憲法上ノ責任ヲ採リテ辞職セザルベカラズ。然レドモ,参謀総長,海軍軍令部長等ハ幕僚ニシテ憲法上ノ責任ヲ有スルモノニアラザルガ故ニ,其進退ハ国務大臣ト大ニ趣ヲ異ニス。之『法』ニ拠ル政治ト『意志』ニ拠ル統帥トノ本質的差異ヨリ生ズル自然ノ帰結タラズンバアラズ。 兵・政ハ原則トシテ相分離スト雖,戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テハ,兵権ヲ行使スル機関ハ,軍事上必要ナル限度ニ於テ,直接ニ国民ヲ統治スルコトヲ得ルハ憲法第31条ノ認ムル所ナリ。而シテ此軍権ノ行使スル政務ニ関シテハ議会ニ於テ責任ヲ負ハズ。 大本営ハ,国軍直接統帥ノ外,国軍ノ動員,新設,補充・補給ヲ規画シ,且,国内警備ヲ統轄シ,戒厳ノ布告ナキ場合ニ於テモ,要スレバ憲法第31条非常大権ノ発動ニ基キ,軍事行動ニ直接必要ナル限度ニ於テ,直接一般国民ヲ拘束スベキ命令ヲ発スルコトヲ得ルモノナリ(美濃部博士著『憲法提要』参照)。」 1918年3月,独逸軍ハ仏国「ビカルヂー」地方ニ於ケル聯合軍ノ戦線ヲ突破シ「アミアン」附近ニ迫レル時,議会ハ責任将軍ノ処刑ヲ要求スルヤ,首相「クレマンソー」ハ答ヘテ曰ク。『国軍ニ対スル信用ハ,之ガ為毫モ変化ナシ。然ルニ吾人狼狽シ,或ハ最善ナリシヤモ知レザル指揮官ニ迄早々手ヲ触レ,以テ軍中ニ不安ノ念ヲ投ズルガ如キハ罪悪ニシテ,予ハ断ジテ此罪悪ヲ犯スモノニアラズ云々』ト。 http://donttreadonme.blog.jp/archives/1000685083.html

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