自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

012 第11話 暖やかな流れ

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第11話 暖やかな流れ

1481年12月8日 午前9時 カレアント公国ルーガレック郊外

カレアント公国ルーガレックを縦断する街道は、南大陸の中では道幅が広く、通りやすいために馬車や人通りが多い。
このような街道沿いの町は、旅人や冒険者といったさまざまな者達の格好の休憩所となり、
それらの者達が落としていく金は馬鹿にならない。
人通りの良かった街道は、今や北から来た人達で満杯であった。
露天商の看板娘や、人のいい店主は、この北から人達に対して、いつもの通りに物を積極的に売ろう、とはしなかった。
むしろ、いずれは自分達もここを捨てていくのか、と思い、憂鬱な気分になった。
この人の大群は、全てが北から来た難民達であった。
家財道具を抱えてきた者達もいれば、着の身着のまま逃げ出してきたのか、明らかに絶食していると思わせる、不健康そうな者も飽くほど見受けられる。
露天商で、野菜を売っていたクグラ・ラックルも、のろのろと歩く集団を見て、自分達の前途に不安を抱いていた。

「この人達はどこの町の奴らだい?」

彼が腕を組んでぼーっとしていると、隣の金物屋の店主が話しかけてきた。

「ホリウングらしいぞ。」
「ホリウングか。20ゼルドしか離れていないな。」
「シホールアンル帝国軍がホリウングに猛攻撃を加えているようだ。昨日は第2防衛戦を突破されて、
ホリウング市内にある連合軍の要塞に迫っているらしい。」
「誰から聞いたんだ?」
「ホリウングに向かっている連合軍の兵から聞いた。野菜を少し分けてやったらべらべらと喋ったよ。」

クグラが微笑んだ。彼の頭の犬耳がひくひく動いた。

ここカレアント公国は、獣人の国である。人口は2400万人で、人口のほとんどは獣人だ。
獣人にも種類はあり、主に犬系と猫系がいる。種類はそこから更に分かれるが、大雑把にこの2種類に分けられている。
比率は犬系が6、猫系が4といった具合だ。
カレアントも南大陸連合軍を編成している国で、軍も半数以上の兵を前線につぎ込んでいる。
しかし、兵力、兵器の差はいかんともしがたく、常に後退続きである。

「俺はさっき、避難してきた奴から聞いたんだが、こっから10ゼルド北の辺りでは、
敵のワイバーンが10騎ほど飛んで来て、避難民を片っ端から焼き払ったようだぞ。」
「本当かおい?10ゼルドといったらすぐそこだぞ。もうそこまで敵のワイバーンが来るようになったのか。」
「本当らしい。」
「クソ!俺たちから税を巻き上げながら、軍は何やってるんだ。何がシホールアンルを叩き出すだ。南大陸から叩き出されてるのは俺達じゃねえか!」
「ごもっともだぜ。」

2人は顔を赤くして憤った。
すぐそこまでワイバーンが来ているという事は、防衛戦の行われているホリウングでは、連合軍の上空でワイバーンが暴れ放題と言う事だ。
このような事は軍人じゃなくても容易に分かる。
「うちのカカアは店を閉めて南に行こうと言ってるけど、俺にはどうしたらいいか分からないよ。
見ず知らずの土地に行っても、やっていけるかどうか分からないし。」
「命は助かるだろう。」
「命はな。だが、ここで築き上げた物はどんどん無くなっていく。」
「留まるのも難。行くのも難・・・・か。」

常に住人の気前がよく、活気に満ちていると言われたルーガレックの町も、近頃南に逃げ出すものが後を絶たない。
シホールアンル帝国の占領地では軍政が敷かれているが、時折占領地の町から、住人が家族ごと消えると言う噂がある。
果たして、どうなったのか?
誰も知らぬ、消え去った家族の行方は、行くところで憶測を呼ぶ。良い憶測ではなく、悪い憶測を。

「命があれば、何とかやっていけると思うがね。」

クグラはそう言うが、もはや言葉すら、いくばくか弱々しいものになっている。
ふと、人より感受性の高い耳が、聞き慣れぬものを捉えた。
うずめていた顔を上げ、クグラは音のする方向を見つめた。

「おい、この音は何だ?」

金物屋の店主も聞こえたのだろう。

「さあ、聞いた事が無いな。」

聞きなれぬ音は、南西の方角、海の方角から聞こえてくる。

「あそこは、10ゼルド先は海のはずだが。」
「海からやってきたのか?」
「ワイバーン・・・・・・いや、ワイバーンは静かだ。ワイバーンでなかったとしたら・・・・この音は一体?」

彼らだけではなく、街道をノロノロと歩いていた難民達も何かの音に気が付き、足を止めた。
しきりに首をきょろきょろとさせるが、誰もが最終的にある方向に向いた。
それは、南西の方角であった。
その日は良く晴れていた空だった。憂鬱な者も、その空を見て少しは気分を浴するような天気だ。
その青空から、小さな点があった。
それらは1つ1つではなく、何十と言う単位だった。
気が付くと、それらは姿がおぼろげながら分かる高度で、ルーガレックの町上空を通り過ぎていった。
ワイバーンでもないその飛行物体群は、整然とした編隊を組んでホリウングに向かっていった。

午前9時10分

目的地までもう少しだったが、
後方から襲い掛かる影が、疾走する集団に覆いかぶさり、炎を吐いた。
悲鳴と共に、甲冑やクロスボウを持っていた騎士や歩兵が炎に飲み込まれた。

「連隊長!急いでください!」
「言われなくても、そうしてるよ!!」

リーレイ・レルス大佐はそう叫びながら、必死に走り続けた。
後方でババババ!という音が鳴り、肉を砕く音や悲鳴が聞こえる。
その音の元を振り返ろうともせず、彼女はやっとの事で、地下要塞の入り口に飛び込んだ。
走りながら飛び込んだため、固い床に肩を打ち付け、奥に転がってしまった。
飛び込んだ瞬間、紅蓮の炎が入り口付近を蹂躙し、扉を開いて待っていた兵士2人が悲鳴を上げる間もなく焼死した。
「ワイバーンの奴、やりたい放題だねぇ。」
リーレイは忌々しげにそう吐き捨てると、更に奥に進んで言った。
要塞の内部は薄暗かったが、あちこちに甲冑姿の警備兵がたたずんでいる。
その者達はリーレイが近付くと、直立不動の態勢で敬礼を送る。
適当に答礼しながら、リーレイは司令部に進んで言った。
途中で被っていた頑丈そうな兜を取り、左脇に持った。
赤毛の長髪が垂れ下がり、気の強そうな顔立ちが露になる。
一見すると、気丈そうな美人といった感じだが、戦場で受けた硝煙や泥が付き、台無しになっている。
彼女は角を曲がると、威儀を正して大声で言った。

「リーレイ・レルス第27連隊長、入ります!」

扉を押して開けると、そこにはバルランド軍第42歩兵師団の師団長が机に座って、幕僚と話していた。
どれもこれも厳しい顔つきだ。

「よく来てくれた。さあ、掛けたまえ。」

禿頭の師団長は、くたびれた顔に微笑を浮かべながら、椅子に座るように言うが、

「結構です。」

彼女は断った。彼女は今すぐにでも、前線に出て部隊の指揮を取りたかった。
それ以前に、彼女はこのホリウングで骨を埋めるつもりだった。

「そうか。ところで、戦況はどうかな?」
「最悪です。」

彼女はキッパリと言った。

「シホールアンル軍は、ワイバーンや砲兵、投石器部隊の支援を受けながら進軍を続けています。それに対し、
我が方には満足な支援もありません。ただでさえ、敵のキメラやバフォメット相手に苦戦しているのに、更に
敵の正規軍部隊や航空部隊を相手取るのは、荷が重過ぎます。一刻も早く、援軍をよこして下さい。」

「レルス君、君の言いたい事は分かるよ。だが、制空権を敵に握られているために、部隊を輸送しようにも、
そのままの状態で前線に送り出す事が出来ないのだ。情報も最近は、敵の妨害魔法によって魔法通信がまともにできぬ状況だ。
いまのところ、前線部隊が良く頑張ってくれたお陰で、増援の3個歩兵師団を前線に送ることが出来たが。」
「そのうちの1個師団は、既に戦力の5分の1を失いました。私の連隊の目の前で。それに、ここに来る途中、
4騎のワイバーンに襲われ、随行していた部下がほとんどがやられました。敵のワイバーン部隊や砲兵部隊は優秀です。
これでは、いくら兵力を注ぎ込んでも、損耗するだけです。」

リーレイは哀れむような表情で行った。
元々、南大陸と北大陸の境目で、国境防衛軍に所属していたリーレイは、部下と共にこのホリウングに落ち延びてきた。
これまでの経験からして、南大陸連合軍のワイバーンは敵のワイバーンに同数でかかっては必ず負け、
5割り増しでもよっぽどのことが無い限り、大多数を失って逃げ帰る。

砲兵の支援は、敵の大砲のほうが射程が長いため、砲戦を行うにも射程外のために撃ち合いにすらならない。
唯一、陸上の要たる歩兵などは互角だが、それも敵が持っているキメラやバフォメット等の生物兵器を投入されれば、一気に苦戦に陥る。
何もかもが、不足していた。

「師団長、本国から魔法通信です。」
「ほう、珍しいな。」

リーレイの後ろから、通信兵が紙を持ってきた。
ここ3日ほどは、敵軍の強力な妨害魔法にあって、魔法通信がまともに機能しない。
だが、今日は珍しく魔法通信が届いたようだ。

「読んで見ろ。」

師団長は無表情のまま、通信兵に読ませた。読まなくてもどうせ、いいニュースではない。
そう確信しているかのようだった。

「援軍が9時頃に、空から一時的に、以上です。」
「なんだ・・・・たったそれだけか?」

突然終わった報告に、師団長は苦々しげな表情を浮かべる。

「途中で、魔法通信が切れたのか?」

リーレイは通信兵に聞いてみた。

「ええ。受信中に突然術式が乱れてしまい、慌てて受信を止めたのです。」
「空から一時的にとは、一体なんなのでしょうか?」

リーレイは師団長に聞いたが、

「さっぱり分からんね。しかし、空からだと、援軍のワイバーン部隊でも来たのかな。」

師団長はそう言い放った。師団長は期待していないようだ。

「とにかく、レルス君。君をここに呼んだのは、ある重大な任務を頼みたいからなのだが。」
「重大な任務、ですか?」
「そうだ。」

師団長は大きく頷き、一旦言葉を止めた。
そして、深く呼吸してから言葉を続けた。

「君に、後退の殿軍を勤めてもらいたい。もはや、ホリウングも各防衛戦を突破され、あとは市街地と、
中の要塞しかいない。今、シホールアンルの2個師団が、大砲と投石器で市街地の外壁を攻撃している。
外壁が崩れるのも時間の問題だろう。」
「殿軍・・・・ですか。」

追撃の激しい事で知られるシホールアンル軍では、急ごしらえに作られた殿軍などたやすく飲み込まれてしまう。

「君は、シホールアンル軍と一番多く戦っている。その戦った経験を、殿軍として役立ててもらいたいのだが」

その時、

「師団長!南東の方角から、未確認の飛行物が来ます!」

伝令が駆け込んできた。

「未確認の飛行物体?」
「はい!見張り台に来てください!」

師団長とリーレイ、それに幕僚達は伝令の言葉が良く理解できなかった。しばらくは誰もが首を捻ったが、

「とりあえず、見てみない事にはわからん。」
師団長は立ち上がって、見張り台にへと向かう。リーレイも自然に後を追っていた。

見張り台、とは言っても、瓦礫に上手く偽装されたちょっとした高台だ。
上空のワイバーンからは、倒壊した建物の影に隠れて見えづらいが、南大陸連合軍の将兵は、ホリウングの町に
幾つもの似たような見張り台を立てて、そこから上空のワイバーン等を盗み見している。
ホリウング市街の地下は、縦横に巡られた地下要塞になっているため、守備軍の兵は、地下要塞に関しては自由気ままに行き来できた。
師団長とリーレイは、その見張り台の天辺に案内された。

「あれを見て下さい。」

伝令が南西の方角を指し、望遠鏡を渡した。
しかし、伝令が見せたいものは、既に肉眼でも見えるような距離まで迫っていた。

空には、羽虫にしてはやたらに重々しい変わった音が木霊している。
唐突に、どこから沸いてきたのか、30騎余りのワイバーンが上空を飛んでいった。

「隠れてください!」

伝令と師団長、リーレイは慌てて中に押し戻された。
幸い、ワイバーンは彼らに気付くことなく飛び去って言った。
少しばかりの時間が経って、グオーンという、小さいながらも何かが吼えるような音が聞こえた。
(まるで、敵に挑みかかっているような音みたい)
リーレイは思わずそう呟いた。

「もう大丈夫です。」

先に上に上がり、安全を確認した伝令が手招きして2人を呼び寄せた。

「ワイバーンは、あそこの方角に飛んで行きまし・・・・た・・・・」

伝令は、ある一転の方角を見つめたまま、言葉を詰まらせた。
外の世界は、何かの音が甲高くなったり、連続で何かが撃たれる様な音に満たされ始めた。
2人は何事かと、見張り台の天辺によじ登った。
そこには、信じがたい光景が写っていた。
なんと、先ほど見かけた、見慣れぬ飛行物体の一群と、シホールアンル軍のワイバーンが空中戦を行っているのだ。
リーレイは、自前の望遠鏡を使って、空中戦の行われている空域を眺めた。
唐突に、見慣れぬごつい小型機が移った。
その後ろには、見慣れた憎き敵、大型の敵ワイバーンがいた。

「くそ、やられる!」

後方に付かれたら最後、ブレスか、光弾を浴びせられておしまいだ。
しかし、リーレイは目を疑った。

ごつい小型機は、なんと急降下しながらワイバーンをぐんぐん抜き放っていた!

ワイバーンは懸命に追おうとするが、差は縮まるどころか、みるみる開いていく。
その次の瞬間、ワイバーンの前面に横合いから4本の変わった光弾が差し出された。
ワイバーンは、顔面から光弾らしきものを受けてしまい、何かの破片が飛び散った。
そのワイバーンは、そのまま墜落していった。
その上空を、別のごつい小型機が通り過ぎていった。

「ワイバーンが落ちた!」
「あっ、ワイバーンが光弾を受けた・・・・・・信じられん。あんな多数の光弾を放てるとは。」

3人は、自分の目を疑った。
見慣れぬ小型機は、遠くから見るとどこか鈍重そうで、頼り無さそう見えた。
だが、その姿に似合わず、シホールアンル軍のワイバーンを翻弄している。
ワイバーンが後ろに付けばすぐに急降下で逃げ、光弾をかわすといきなり上昇して雲に逃げ込む。
どこにいるのかワイバーンが探しながら飛行すると、突然あらぬ方向からごつい小型機が現れ、瞬時に多数の光弾を叩き込んで、
あっという間に叩き落す。
ごつい小型機も何機か落ちていったが、数えてみたら、小型機は3つほどが落ち、ワイバーンは10ほどが叩き落されていた。
数はごつい小型機のほうが多い気がしたが、この状況ならば、ほとんどの場合はシホールアンル側が勝った。
だが、見慣れぬごつい小型機はワイバーンを遠距離射撃や、一撃離脱戦法でばたばたと叩き落した。
ごつい小型機は傘にかかってワイバーンに挑みかかり、さらにいくつものワイバーンが力なく墜落していく。

小型機のほうも無事では済まず、2機が墜落していく。
だが、いつの間にかワイバーンは半数以下の数になっており、それらは慌てふためいたように北の方角に逃走していった。
その時間は、わずかに20分足らず・・・・・・
あまりの出来事に、3人。
いや、他の見張り台や地上で眺めていた将兵達は、誰もが呆然としていた。
呆然としている間に、いつの間にか戦闘は外壁の外に移っていた。
気が付いたのは、聞き慣れぬ甲高い音が耳に入ったからだ。
遠いながらも、心臓を締め付けるよう音は、外壁から少し通い市街の中心部でもハッキリと聞き取れた。
大砲や、投石器の猛威に晒されていた、外壁の守備兵達はまるで夢を見ているかのようだった。
草原の向こうに配備された大群の奥に、見慣れぬ飛行物体が1機、また1機とつるべ落としのように降下して行き、
まるで墜落しているだろうと思わせるような急角度で、真っ直ぐ降下していく。
高射砲が応戦しているが、全く当たらない。
何か黒いものを落とした飛行物体は、聞き慣れぬ呻き声を上げつつも、低空で水平に飛行に移っていく。
突然、敵軍の群れの向こうで爆発が起こった。それを境に、横一列に爆炎、黒煙が吹き上がった。
黒煙が吹き上がったのは最初4箇所だったが、別の飛行物体が、またもや急角度で降下して行き、腹から何かを投下して低空で水平に移る。
最終的に36の爆発が起こった。その直後、一際巨大な大爆発起こり、何かの破片が舞い上がった。

「砲列が・・・・・・シホールアンル軍の砲列が吹っ飛んでいる!」

誰かが驚きと、歓喜が混じった声で叫んだ。
彼らは知らなかったが、この時、ドーントレス艦爆隊は、全機が歩兵の後ろで砲弾や、巨大な石を放っている砲列を急降下爆撃した。
1000ポンド爆弾は、大砲に直撃すれば要員ごとこれを粉々に叩き潰し、投石器の至近に着弾したものは爆風で、
ただでさえトップヘビー気味の投石器を叩き倒した。
とある1弾は、砲弾、装薬、投石用の石が置いてある集積所に命中し、周囲の大砲や投石器と
操作要員をひとまとめに吹き飛ばしてしまった。
外れた1弾は、ホリウング市内に突入しようと、待機していた最後尾の歩兵の一群に落下して、数十人単位で敵兵を爆砕する。

ドーントレス群はこの歩兵部隊を狙っていなかったが、すぐ後方の砲兵部隊の惨劇を目の当たりにした彼らは、
自分達もああなると確信してパニックを起こした。
最後の仕上げに、デヴァステーター隊が上空に覆いかぶさり、高度2000メートルで500ポンド爆弾を投げ落とした。
今度は、混乱して崩れかけていた敵兵の集団の中に多数の爆発が沸き起こった。
水平爆撃が終わったのを見計らったかのように、F4Fが低空に舞い降りて、シホールアンル軍の先頭部隊に機銃掃射を仕掛けた。
これらの追い打ちが、突撃軍の混乱に拍車をかけた。
先頭部隊は、ゴーレムやキメラ、バフォメットといった生物兵器、あるいは頑丈な兵器で占められていたが、
ワイルドキャットは、そんなものは関係ないとばかりに、目に見えるモンスターや馬車、ゴーレム、敵兵などに片っ端から12.7ミリ弾を浴びせた。
とあるキメラが、後ろにいた魔術師を庇ったが、機銃弾はキメラに容赦なく突き刺さり、頑丈なはずの皮膚が
何十発と襲い掛かる高速弾にたちまち貫かれ、臓腑を抉り、頭を吹き飛ばした。
機銃弾のシャワーは、結果的に後方の魔術師にも幾つか命中して絶命させ、キメラの努力が無為に帰す。

とあるバフォメットが珍しく、恐怖の雄叫びを上げて後方に逃げていく。
モンスターの巨体が、後方に待機していた重装騎兵を弾き飛ばし、踏み潰してしまう。
そこにF4Fが猛然と突っかかって12.7ミリ機銃を背後から叩き込んだ。
あっという間に幾発もの機銃弾を叩き込まれ、バフォメットの狂気の暴走が強引に終了させられた。

シホールアンルの前衛部隊は、何十機と言う米艦載機の編隊にたかられていた。
最先頭のモンスター部隊が数機の小型飛空挺に暴れ込まれている。
ひとたび突入してくれば、強靭な防御力と、巨体で味方の前線を引っ掻き回したモンスター達が、上空の新たな天敵によって蹴散らされていた。
不意に、一頭のモンスターが岩を投げるが、全く届かなかった。逆に火箭をしこたまふるわれて、原形を留めぬまでに叩きのめされた。
今や、整然と隊列を組み、砲兵の支援の下に突入しようとしていた敵の突撃軍は、見るも無残に隊形を崩され、四分五裂となっていた。
ワイバーンを蹴散らしたごつい小型飛空挺は、最後まで戦場に留まって他の機を後退させた後、全機が引き上げていった。
引き上げる際、飛空挺のうちの数機がこちら側に気が付いたのか、華麗なアクロバット飛行を披露してくれた。
その時、南大陸連合軍の将兵達は、この思わぬ援軍を前に盛大な歓声を上げた。
その時間、わずか30分足らず。
その30分足らずの間に、シホールアンル軍は突撃軍に夥しい死傷者を出してしまった。

「こうもあっさりと、敵のワイバーンを撃退し、地上軍を混乱させるとは。」

師団長は沸き立つ歓声の中、目の前の光景が信じられなかった。
リーレイは、何度も目を擦って、眼前の光景が夢でない事を確かめる。
遠目ながら、敵突撃軍の隊形は大幅に崩れており、隊形を立て直すには最低でも2時間は下らぬだろう。

「師団長、もしかして、先の魔法通信の援軍とは、あの未知の飛空挺の事ではないでしょうか。」
「いや、恐らく、あれはアメリカという国の飛空挺だろう。」
「アメ・・・リカ?」

リーレイが初めて聞く言葉だ。
アメリカと言う国?そんなものがあったのだろうか・・・・

「そうだ。東のレーフェイルと、この北大陸、南大陸の間にある国らしい。私はそれだけしか聞いていないが、
もしかしたら、そのアメリカと言う国の軍が南大陸に援軍をよこしてきたのだろう。」
「あのような援軍がいれば、我々も敵と互角に戦い合うことが出来ますね。」

リーレイは興奮したような口調で言った。
飛空挺、彼らが後に知る事になる、アメリカ軍航空機との出会いは、このホリウングから始まった。
この日以来、シホールアンル側のワイバーン無敵神話は次第に影を潜めていった。

1481年12月14日 午後7時 シホールアンル帝国首都ウェルバンル

寝室のドアが開かれると、オールフェスはさっさと入り、苛立ち紛れに閉めた。
着替える事も無く、そのままベッドに仰向けに倒れた。

「・・・・・・・・クソ!」

やりきれぬ怒りに、彼は震えていた。
怒りの原因は、ここ数日の南大陸の戦闘であった。
今にして思えば、1週間前の12月7日から全てが変わり始めた。
12月7日、レースベルン公国砲撃に向かっていた第6艦隊が、レアルタ島沖で突如アメリカ軍機に襲撃された。
2波200機以上の攻撃隊を繰り出したアメリカ軍は戦艦ジュンレーザとヴェサリウス、駆逐艦2隻を撃沈してしまった。
艦隊司令官のポンクレル中将は戦死し、残った艦隊は北に撤退していった。
この報告が届けられたのは、首都を散歩していた時だった。報告を聞いた瞬間、オールフェスは我が耳を疑った。
なぜなら、南大陸にアメリカ軍が進駐したと言う報告は全く入っていなかったからだ。
なのに、突然アメリカ軍機の大群が沸いて出てきたのだ。
首を捻った彼だが、疑問はすぐに氷解した。
後に送られてきた第6艦隊の戦闘詳報には、敵飛空挺群は南南東の方角から来たと伝えられていた。
南南東には陸地は全く無い。
そう、アメリカ軍は空母機動部隊を投入してきたのだ。
東海岸にいる空母ではなく、別の場所にいた空母を、わざわざ南大陸にまで派遣してきたのだ。
とすると、第6艦隊を嬲り者にした空母は、攻撃機の数からして2隻ないし3隻いることになる!

受難は更に続いた。

翌8日。ホリウング攻撃中の第62軍団が、突然アメリカ軍機の攻撃を受けたのだ。
アメリカ軍機はやはり、第6艦隊を襲った空母のものであり、敵飛空挺部隊はワイバーンの迎撃を、
信じられぬ事にこれを蹴散らし、陸軍部隊相手に爆弾を見舞った。
米艦載機の攻撃は執拗に繰り返され、4波もの米攻撃隊が第62軍団に襲い掛かり、
所属していた各師団は片っ端から爆弾や機銃弾を浴びせられた。

そして、9日から13日までに、米機動部隊は占領したばかりのカレアント第2の都、ポーラインや、
輸送船の泊地であったクルグ、交通の要衝ネルジェレ、ヴェリンス共和国の片田舎でありながら、物資集積所のあるセルンポレに、
まるで挨拶回りを行うかのように次々と攻撃した。
被害はいずれも馬鹿にならぬもので、暫定的に戦死者8700名、負傷者2万、そして前線部隊に届くはずの各種物資が2割ほど焼かれてしまった。
わずか1週間足らずで、米機動部隊は南大陸の北東沿岸を荒らし回ったのだ。
その機動力、攻撃力が、シホールアンルの持つ竜母と同様、侮れない事をシホールアンル側は思い知らされた。
アメリカ艦隊の予想よりも早い登場により、シホールアンル軍の侵攻スピードは急激に落ちてしまった。
まるで、濁流のど真ん中に突如放り投げられた巨大な障害物に、流れを制限された小川のように。

「激流を、暖流に変えるとは・・・・・・とんでもねえぜ。」

オールフェスの脳裏には、早々としゃしゃり出てきたアメリカ軍に対応するための策が練られ始めていた。
しかし、いつもはすぐに浮かんできた案が、この日に限っては、全くといっていいほど出てこなかった。
ただひたすら、無為に休憩時間を過ごすのみであった。
彼のみならず、シホールアンル帝国の首脳部は、誰一人として不安を隠せなかった。
詳細な情報を知り、少なからぬショックを受けた首脳部に対して、詳細な情報を知らされていない
シホールアンル国民は、呑気な日々を送っている。

1481年12月17日 午後3時 バルランド王国ヴィルフレイング

シホールアンル軍は、暴れ回る米機動部隊を捕捉しようと、盛んに偵察ワイバーンを洋上に飛ばしたが、
米機動部隊は13日の空襲以来、忽然と姿を消した。
それ以降、南大陸に展開したシホールアンル陸海軍は、どこから来るか分からぬアメリカ艦隊に備えて、常に警戒態勢についていた。
このため、ホリウング攻略は当初の予定を遅れ、15日にやっと占領できた。
占領できた事は喜ぶべきであろうが、それよりも重要な任務、要塞内に立てこもる南大陸軍の包囲殲滅は完全に失敗した。
態勢を立て直した部隊が、やっと外壁の近くに来た時には、市内や地下要塞にはただの1人も残っていなかった。

ホリウングは落ちた。
だが、アメリカ空母部隊の突然の襲撃の影響で、ホリウング攻略はシホールアンル帝国にとって非常に不本意な結果に終わった。

第8、第10、第12任務部隊の各艦は、バルランド側が用意した港に近付きつつあった。

「司令官、ヴィルフレイングまでもう間もなくです。」

参謀長のマイルズ・ブローニング大佐は、司令官席に座るウィリアム・ハルゼー中将に語りかけた。

「マイルズ。ホリウングは結局、シホット共に渡ってしまったか。」
「ええ。ですが、現状では致し方ないことだと思います。」
「俺もそう思うよ。せめて、もう少し北上してシホットの奴らに挨拶したかったが、まあ兵は引き際が肝心と言う言葉もある。」

ハルゼー中将はやや笑みを浮かべながらそう言った。

「それに、敵に与えたショックも大きいだろう。」
「ええ。それに、こちら側の艦載機は思ったよりも損耗が少なく済みました。
出港時と比べると、やや見劣りしますが、それでも作戦行動は可能です。」

第8、第10、第12任務部隊は、レアルタ島沖のシホールアンル艦隊を撃退させた後も北上を続け、
翌8日にホリウングのシホールアンル地上軍を痛撃した。
4波合計300機の攻撃隊のうち、F4F7機とSBD、TBD各2機を失ったが、敵のワイバーン26騎を撃墜し、
突撃直前だった敵地上軍に爆弾の雨を降らせ、機銃弾のスコールをお見舞いした。
その後、カレアント公国内や、その北のヴェリンス共和国のシホールアンル軍に“挨拶回り”を行った後、南に反転した。
そして南大陸東岸の南部にあるヴィルフレイングに向かったのである。
レアルタ島沖海戦からTF8、10、12はF4F18機、SBD24機、TBD27機を失ったが、
結果的にホリウングの連合軍の撤退成功や、シホールアンル軍の侵攻スピードの低下など、得られた物は大きかった。

「作戦行動が可能とは言っても、少なくない航空機を失っているからなあ。
依然200機以上の航空兵力を有しているとはいえ、これ以上の連戦は避けたいものだ。
太平洋艦隊主力は2日前に出港したそうだが、今頃はサンディエゴから900マイル沖を航行している頃か。」
「恐らくそうでしょう。アラスカ防衛に戦艦2隻を抜かれていますが、低速とは言え戦艦7隻を主力とする本隊の来援は頼もしい限りですな。」
「今は今日のように、積極的に打って出られないから、しばらくはヴィルフレイングに居候する事になるだろうが、
東海岸に関する限り、シホット共もこれからは好き勝手に暴れ回れないだろう。」

サンディエゴから出港した第1、第2任務部隊は、空母部隊に用意された同じ港、ヴィルフレイングに向かっている。
ちなみに、ヴィルフレイングはバルランドが唯一所有する南大陸東海岸の港で、町の人口は1000人とそれほど大きくない。
最初の話しでは、西海岸側に回ってからバルランド王国の持つ港に停泊しようとした。
しかし、距離の問題や、敵シホールアンル軍の抑止となるには、前線から未だに遠くて、かつ、設備は整っていないものの、
泊地能力の高い港が良いと、米側は要求した。
このヴィルフレイングは、小さな町で、港湾施設は小さいながらも、その入江は大きく、その気になれば300隻の大型船は余裕では入れる大きさがあった。
最初、このような辺鄙な港にアメリカ艦隊を入れるのは大変失礼であると、バルランド側は慌てて西海岸の
設備の整った港を用意しようとしたが、米側は拒んでヴィルフレイングに入港する事にした。
現在、空母部隊には、途中で合流した補給船団20隻もおり、合計で60隻近い大艦隊がヴィルフレイングに入港しようとしている。
その入港も、すぐ先の事であった。
第8任務部隊が、先頭を切ってヴィルフレイングの入江に入って来た。
陸地には、木造の村や小ぢんまりとした集落などが散見される。
港には、少数の帆船が停泊しており、船員が突如現れた見慣れぬ艦群に目を丸くしていた。

「寂しいところだな。」

とある水兵は思わずそう呟いた。
泊地能力としてはいいが、それに反比例して住んでいる住人は思いの他少なく、陸地側には建物が1、森林が9という具合だった。
空き地は、港の付近にかなり残っているようだが、それがかえって寂しさを強調していた。

「ラウス君、どうもここは少し物足りない場所だな。」
「ここは過疎地ですからねぇ。旅人や冒険者がたまに来るぐらいです。
自分も子供の頃、1年ほどここに住んでましたけど、若い働き手はほとんど町に移っています。」

エンタープライズの艦橋で、寂れた大地を見つめていたラウスとハルゼーは無表情で話し合っていた。

「なんでこんなに人が少ないんだね?港町なら、そこそこ賑わっていそうだが。」
「ここは、元々曰くつきの土地なんです。」
「曰くつき?魔法がらみかね?」

ハルゼーはただ言っただけだが、ラウスは少しばかり驚いていた。

「えっ?分かるんすか!?」
「な、何をだね?」
「提督の言うとおりですよ。ここは昔、魔法の暴走によって大勢の命が失われた土地なんですよ。」

ラウスの思いがけない言葉に、ハルゼーは内心仰天した。

「そうなのか。」
「はい。とは言っても、事件がおきたのは70年以上前なんすけどね。
ここの土地は別に呪いとかの類は無いんですけど、人はあまり寄り付こうとしないんです。」
「魔法の暴走とは・・・・・一体どれぐらいの人が亡くなったのだ?」
「ざっと1万人です。一夜にね。」

思わず、ハルゼーは息を呑んだ。

「もっと話を聞きます?」
「いや、どうも話を聞く気が失せたね。
なるほど、バルランド側がやたらにここを使わせたくないのも、納得が行くな。確かに縁起が悪いな。」

彼は思わず身震いした。
これから、敵との真剣勝負を行うと言う時に、用意された寝床といっても言い場所が、
突然の大事故で大惨事を起こした曰く付きの土地なのだ。
この世界の人間は、現地の人間以外は大抵、そう言う場所には近寄りたくないようだ。

「だが、泊地としてはなかなかいい所だ。俺達が来れば、シホット共を叩き潰した起源として、別の意味で語られるだろうよ。」
「別の意味っすか。」
「そうだよ。まあ、そう気に病む事でもない。」

そう言って、ハルゼーは微笑んだ。
唐突に、こちらをじっと眺めていた帆船の乗員達が、第8任務部隊の艦艇に向けて手を振ってきた。
第8任務部隊の艦艇も、乗員達がそれに答えて、手や帽子を力一杯振った。
それが合図だったかのように、それまで閑散としていた港に人が集まって、入港してきた米艦隊に手を振ってきた。
誰もが満面に笑みを浮かべて、入港してくる艨艟に力一杯手を振り、英雄達を歓迎していた。

「おい!シホールアンルに煮え湯を飲ました異世界の軍艦がやって来たぞ!港に行って歓迎してしようぜ!」

未だ家にいた住人は、港に向かう途中の住人に声をかけられると、慌しく家を飛び出して港に出て行った。
無人となった家には、それぞれ共通する紙面がテーブルや床に置かれていた。
それは、バルランド王国が定期的に発行する大衆紙で、ニューヨークタイムスやワシントンポストといった、
アメリカの新聞に比べるとどこか見劣りする。
その見出しには、アメリカ軍、侵攻するシホールアンル軍を撃破!という文字が載っていた。

1841年12月18日 ワシントンDC 午前8時

「・・・・・・なるほど。パナマの制限がなくなった以上、33メートルの幅に固執する必要も無いからな。」

海軍作戦部長のアーネスト・キング大将は、渡された紙を見ながらそう呟いた。
現在、海軍省の会議室には彼の他に、8人の高官が会議に参加していた。
この日、会議の開始の際に渡された、次期主力艦艇の設計変更案の最終案が渡されていた。
まず、設計変更の1番の項目に載っていたのは、アイオワ級戦艦であった。
設計変更前の、この戦艦の性能は、まず全長が270メートル、幅が33メートル。
基準排水量が45000トン、速力は33ノット、50口径16インチ砲3連装3基、5インチ連装両用砲10基、
40ミリ4連装機銃20基、20ミリ機銃49丁というものである。
このアイオワ級戦艦は、れっきとした戦艦ではあるが、全体的に見れば巡洋戦艦をさらに大型化した印象が強い。
これは、長年の悩みのタネであった、パナマ運河の制限幅に原因があった。
しかし、パナマ運河の制限は無くなった事から、設計が見直された。
改訂案の性能は、次の通りである。

全長270メートル、幅36メートル。基準排水量50000トン、速力32ノット。
50口径16インチ砲3連装3基、5インチ連装両用砲10基、40ミリ4連装機銃20基、20ミリ機銃49丁。
性能面から見れば、幅と重さが変わったように感じられるが、前案では高速性能を求めるために、
艦体が異様に細長くなり、やや安定性を欠いた設計となっていた。
しかし、パナマ運河の制限が解消された事から、新案のアイオワ級は、前案の一見ほっそりとした体系から、
どっしりと構えるような体系に変わり、危惧されていた安定性の問題もある程度解消できると考えられている。
次の項目には、大型巡洋艦アラスカ級に関する事が書いてあった。
元々、アラスカ級は、日本海軍の超甲巡や、ドイツ海軍のシャルンホルスト級に対抗するべく、設計を進められていた。
これまでの案では、大型巡洋艦という艦種での性能であったが、新案では、アラスカ級は巡洋戦艦という項目である。
これまでの案での性能は、全長246メートル、幅27.7メートル、速力31・5ノット、基準排水量27000トン。
50口径12インチ3連装砲3基、5インチ連装両用砲6基、40ミリ4連装機銃18基、20ミリ機中34丁であった。

新案では、前案とは大きく変わっていた。

全長246メートル、幅32.5メートル、基準排水量31500トン、速力32・5ノット。
55口径14インチ砲3連装3基、5インチ連装両用砲6基、40ミリ4連装機銃18基、20ミリ機中34丁。
アイオワ級は、一見ちょちょいと変えてみました、という感じの設計変更である。
だが、アラスカ級ではまさに大手術といっても過言ではないほどの設計変更だ。
この新案には誰もが度肝を抜かれたが、前案でのいくつかあった問題点が、この新案では解消される事が見込まれていた。
例えば操舵性、凌波性の問題。
元々、アラスカ級は巡洋艦の船体を伸ばし、そこに戦艦並みの主砲を搭載したような艦になる予定だった。
ところが、このような方法で建造すれば、高速航行時の急回頭や荒天時の凌波性に大きな問題を起こすと指摘があがった。
用兵側からも、一部の者からは艦隊行動時に隊形を乱す原因になるのではという声もあがっていた。
だが、新案では細かった幅を大幅に太くし、元々狭そうな船体であったのが、全体的にゆとりを持たせたような設計になっている。
これによって、問題視されていた安定性や凌波性が、用兵側に求めていた物に近くなった。
それに、これから開発される55口径14インチ砲はアラスカ級を特徴付ける武器であり、
従来の14インチ砲よりは、初速や威力、発射速度において上になるものと見込まれている。
元の50口径12インチ砲にこだわる者も多かったが、バルランドから派遣されてきた特使からの情報では、
シホールアンル海軍の戦艦は、最低でも32センチ口径(単位がネルリであったが、特使側の説明で1ネルリ約2.57センチ
と分かった)の主砲を採用している情報から、新案の14インチ砲案が取られた。

「なかなか、思い切った案だな。」

キング大将は内心、この新案どおりに作られた2種類の軍艦を見てみたいと思った。

「アイオワ級戦艦、アラスカ級巡洋戦艦か・・・・・問題点は色々ありそうだが、検討してみる価値はありそうだ。
さて諸君、この2つの新案を取るか、又は再びお蔵入りさせるか、検討してみよう。」

キングは周囲を睨みつけるように見回すと、会議を始めた。

機動部隊の守り神と謳われたアイオワ級戦艦と、アラスカ級巡洋戦艦の生涯は、ここから始まった。

1481年12月25日に決定された主力艦、中型艦艇建造予定計画

サウスダコタ級戦艦4
アイオワ級戦艦7
アラスカ級巡洋戦艦4
エセックス級正規空母20
ミッドウェイ級正規空母3
護衛空母67
ボルチモア級重巡洋艦10
クリーブランド級軽巡洋艦32

駆逐艦、潜水艦等の建造計画は現在討議中
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