Trickster ーゲームの達人ー 後




「さっきから何を戸惑っているの。早くそいつを殺しなさいよ、古明地こいし

私の後方から聞こえてきた、感情の篭らない声。
驚いて振り返ってみるとそこには私と知らぬ仲ではない、あのおてんば妖精『チルノちゃん』が黒い銃を向けて羽をパタパタ動かしながら浮いていた。


「…………え?ち、チルノ…ちゃん?何を、してるの…?」

「……何を?決まってるじゃない。『DIO様』の敵、ジョースターの人間を全て『殺す』。それがどうしたのよ」

ゾッと背筋が凍った。まるで養豚場のブタさんでも見るかのような冷たい目。
『かわいそうだけど明日の朝にはお肉屋さんの店先に並ぶ運命なのね』って感じで彼女はジョセフを冷徹に見下ろしていた。
チルノちゃんとは以前から地上でたまに一緒になって遊んでた間柄。命蓮寺でも彼女がカキ氷を売っていたのを見た事がある。

でも今の彼女は、無邪気に笑って弾幕ごっこをしていた時とはまるで別人のような冷徹な目。
その目を見たとき、私はここでもDIOの纏う狂気のようなものを感じた。

そう、今のチルノちゃんから感じる雰囲気は、あのDIOのような『闇』を身に纏っているような気がした。
後ろでジョセフの逃げだす音が聞こえたけど、今の私には気にする余裕なんて無かった。私はおそるおそるチルノちゃんに話し掛ける。


「チルノちゃん…DIOに、会ったんだ…。…何か言われたり、したの?」

「…だらしないこいしの手を引っ張って行ってやれ…DIO様直々にお願いされたのよ。
それで来てみたら今の状況。我が友達ながら情けないわ。
よりによって敵の言葉に耳を傾け、あまつさえ涙を流しながら武器を下ろすなんてね。
それにアンタ『プッチ』さんと一緒に居たんじゃなかったの?彼はDIO様のご友人って聞いたけど」


チルノちゃんは心底呆れ果てる様な目で私を見た。私の頭の中はさっきからワケのわからない困惑で破裂しそうだ。
これがあのチルノちゃん?私から見ても少し頭の方が弱いかな、って密かに思っていたかつてのチルノちゃんとは全く違う物言い。
その余裕ある佇まいには知性すら感じ取れた。私にはとても信じられない。


「あ…えと、神父様は…その、アイツの支給品で…何処か空の彼方まで飛んで行っちゃって…ここにはもう居ないの」

私はチルノちゃんの迫力に気圧されて、つい正直に答えちゃった…。
それを聞いた彼女の顔は「ハァ…?」とでも言いたげな表情で手を腰に添えて、地面にフワリと降りてきた。

「…それで?こいしはその人を探しにも行かず、何で泣いてんのよ?とっととジョースターを始末して彼を探すべきよ。
どうせおっちょこちょいな貴方の事だからプッチさんの足を引っ張るだけだったんでしょう。笑えないわ」

……なんか、こっちがムカついてきた。いつもはチルノちゃんの方が皆から馬鹿にされるポジションなのに、これじゃあ逆じゃない。
確かに神父様が飛ばされちゃったのは私のせいなんだけど…
それをチルノちゃんに指摘されるのは納得いかない。笑えないのはこっちの台詞だ。


「あなた…いつものチルノちゃんじゃない…!ホントにどうしちゃったの…?」

「……あたいが?いつものあたいじゃないって…?それは違う、こいし。
これが『本当のあたい』。周りから馬鹿にされるだけの惨めだったあたいはもう居ない。
あたいは『自信』がついたのよ。あたいはあたいの『最強への道』を行けって、DIO様が示してくれたわ。
だからあたいはこのゲームを登り詰めてやるの。そして最後にはDIO様の言う『天国』へ到達してみせる。
DIO様はあたいを褒めてくれた。恐怖を取り除いてくれた。道を示してくれた。あの人の力になってあげたい。
今、心の底からそう思ってる。こいし、貴方はそこで怯えながら指を咥えて見てるといい。
……咥えて見てろ。あの男はあたいが倒す」



今日という日は本当に色んな事があったけど、一番信じられない事態は今の現状なのかもしれない。
まさかチルノちゃんにここまで言われるとは、私の人生最大級のショックかも。


チルノちゃんは私から少し離れてジョセフの飛び込んだ民家の方向へと向き直り、全く大した事でもないかのように平然とスペルカードの詠唱を開始した。私に見せ付けるかのように。


「…氷符『アイシクルフォール』」


ボソリと呟くような詠唱を終えた途端、チルノちゃんの周囲の空気の温度がガクッと下がりその水分が一瞬にして凝固した。
それらは一斉にジョセフの逃げ込んだ家に丸ごと襲い掛かる。
激しい発射音と共に一直線に対象の全てを凍らせ、破壊する氷の弾幕に手加減の余地なんか微塵も感じられない。
間違いなくあの人を殺そうという『意思』がビシビシと私の肌を直撃する。

(一体、何がチルノちゃんをここまで動かしているの…?それにこの弾幕の威力…
ここでは私達の弾幕や能力には『制限』が掛けられてるっていうのに…むしろいつもより威力が『上がっている』ような…?)

「『思いの力』は『精神の力』。信じる事がそのままあたいの『強さ』へと変わる…
DIO様があたいに授けてくれた言葉よ。
今のあたいは自分が『最強』だという事を心から信じてる。
だからあたいの氷の能力は『どんどん強くなる』。制限もへったくれもありゃしない」

私の心を読むかのようにチルノちゃんは横目で私の疑問に答えた。弾幕を撃つ手は緩めずに。
サトリ妖怪の私が心を読まれてどうするんだ、と私は心中でムッとした。心を読まれる怖さをちょっぴりだけ理解出来た気がする。



「さて…獲物は出てこないわね」

私がムカムカした感情を渦巻かせている内に、フッと攻撃をやめたチルノちゃんがさらりと口から洩らした。
見れば弾幕の連撃を受けていた民家が凄いことになっていた。入り口も窓も壁も屋根も何から何まで破壊し尽くされ、砕けた外壁の上から厚い氷に包まれている。

うわぁ…中に人が居ればきっとそれだけで致命的なダメージを受けるに違いない。
今度からチルノちゃんを⑨扱いするのは絶対にやめると誓おう。

そしてあの男を家ごと氷の檻に捕らえたっていうのにチルノちゃんはどこか不満そうな顔をしている。
私は今のチルノちゃんを刺激しないよう、そっと聞いてみた。

「…もう中で死んじゃってるんじゃないの…?あの人、出てこないみたいだし…」

「馬鹿。それで倒せるような脆弱な男ならDIO様も苦労してないよ。恐らく家の裏口から逃げたってところね。
こいしも少しは頭使いなさいよ」

ガーン…!チルノちゃんに馬鹿呼ばわりされる日が来るとは思わなかったよ。ムカムカを通り越して感動すら覚えてくる…


「貴方も呑気してないであの胡散臭い男について何か情報渡しなさい。
アイツの支給品とか戦法とかあるじゃない。さっきまで戦ってたんでしょう?」

…何かこれでもう私とチルノちゃんの上下関係が決まってしまった気がする。
チルノちゃんはすっかり『頼れるお姉さま』って感じに振舞っているけど、あくまで私のお姉ちゃんはさとりお姉ちゃんひとりだ。

とは言ってもチルノちゃんの言う事は間違っていないと思う。
私はジョセフの戦いを後ろから覗き見ていたんだから彼の情報を伝えるのはきっと当然の事なんだろうな。ちょっと気に食わないけど。


「…あいつの名前は『ジョセフ・ジョースター』…。あいつは私が見てた限り、三体の『魔法人形』を操って戦ってたよ。
『スタンド使い』かは分からないけど、紙飛行機を飛ばしていつの間にか神父様にくっ付けていたり、そこから空飛ぶ岩を出現させてそのまま打ち上げたり…
絶対に『勝てた』と思った次の瞬間には、もう『逆転されてた』…
何をしてくるか全く読めない奴よ。遠目に戦いを見てたからそれぐらいしか分からないけど…チルノちゃん、勝てるの?」

「『勝つ』よ。あたいは最強なんだから、勝たなくてはいけない。DIO様のお役に立たなければいけない。…貴方もよ、こいし」

「……えっ…えぇ!?わ、私も戦うの…!?さっき『指を咥えて見てろ』って…!」

「ホントに咥えて見てるだけの馬鹿がどこに居る?貴方もDIO様のお眼鏡に適ったのなら少しは働いて欲しい。
あたいの援護をして貰いたいんだけど…出来る?」


完璧に馬鹿にされてる。正直、悔しい。もう一緒に遊んでやるもんか。
言ってる事はまともなだけに余計ハラがたつ。それでも、苛立ちをよそにして私は彼女の事をほんの少し『羨ましい』と思ってしまった。


どうして彼女はこんなに『迷い』が無いの…?どうしてそれほどまでに自分に『自信』を持てるの…?
やっぱりDIOに会ったから?たった一人の人間に(吸血鬼らしいけど)出会っただけで人はここまで変われるものなの?ここまで『強く』なれるの?
私もDIOとお話しして…確かに自分の中の何かが色々変わっていくように感じた。

でも彼との出会いが私にとって『吉』だったのかどうか…?それはまだ分からない。
それでも、少なくとも今のチルノちゃんを見ていると、彼女は『幸せ』にしているように見える…のかもしれない。
顔に出さないから分かりにくいけども。



…私も、『覚悟』を持てば『幸福』になれるのかな?

チルノちゃんのように強くなれば誰かを守れる?

私はお姉ちゃんに会いたい…。会って、傍で守れるぐらい強くなれたらどんなに良いだろう。

今の私には神父様も、DIOも居ない。チルノちゃんしか、居ないんだ。

……彼女に、ついていってみようかな。そうだ…どっちにしろ私は一度この銃を人に向けて撃っている。もう戻れないんだ。

自分に出来る事をやってみよう。うん、まずはチルノちゃんと一緒に戦っていこう。そしてその後神父様を探しに行こう。



自分の『やるべき事』を腹に決めた時、私はほんの少し『勇気』が湧いてきた。そうだ、ここに来る前に神父様にも教えてもらった事だ。


「『心を落ち着けたい時、素数を数えれば勇気を貰える』って言ってたっけ…そうだよ。『素数』ぐらい私も知ってるんだから!
えっと、1、2、3、5、7、11……」

「『1』は素数じゃないわよ。遊んでないで、あたいを手伝うの?手伝わないの?今ここで決めて。敵は待っちゃくれないんだから」


またまたガーン…!チルノちゃんに算数の間違いを指摘されるなんて、こんな屈辱はないよ。ムカムカ具合が一周して更にムカついてきた。
だから私は半ば逆ギレのように返してやった。


「逆でしょ!!チルノちゃんが私を『手伝う』の!いいよやってやろうじゃない!!あの男は私が倒すんだもん!!チルノちゃんこそ指を咥えて見ててよッ!」


言ってしまった。私の先を歩いていくチルノちゃんが何となく羨ましくなって、悔しくなって、ウジウジ悩むのが馬鹿らしくなって…
ヤケクソみたいに声を張り上げた。
私を馬鹿にしてるチルノちゃんを、ジョセフを倒すことで見返してやる!
もうDIOとか神父様とか関係無いんだ!結局これは私自身の問題なんだから!

「チルノちゃんは私の後について来なさい!逃げたアイツを追うわよ!」

「意気込むのは良いけど、アイツはまだその辺に隠れてるよ。あたいの右前方に一体。左後方に一体。貴方の右後方に一体の人形が隠れてるわ。
ボケッとしてるとあっという間に『詰む』わよ」

前進しようとする私は背中越しに勧告された。
抗議の声を上げようとしたけど、それは三方から聞こえてきた空気を切る音で遮られる。
ジョセフの人形だ!

「来るわよ。身構えなさい」
「分かってるってば!年上ぶらないでよッ!」


私とチルノちゃんは互いの背中を張り付け合い、三方からの攻撃を迎え撃とうとする。どうでも良いけど物凄く冷たいんだけど。


「凍符『パーフェクトフリーズ』」
「冷たァッ!!ほ…本能『イドの解放』ッ!!」

私達二人は互いに迫り来るそれぞれの人形を撃ち落すべく、スペルを発動した。
すぐ後ろでチルノちゃんも氷の技を撃つもんだから私の背中もたまったものじゃない。

互いの発射した弾幕は扇を開くように広く空間を埋めながら人形へと飛び交う。
が、人形は意外にも俊敏な動きで大きく右へ揺れながら逸れ、弾幕のひとつひとつを器用に回避していく。

まるで私達を馬鹿にしてるかのような動きで三体の人形は私達を中心に周りをグルグルと大きく時計回りに回りながら少しずつ近づいてくる。
その動きがなんだか気に障って、私はとにかく攻撃を当てようと弾幕を連射した。下手な鉄砲何とやら…って奴。


「当たれ!当たってよ!この!このこの!!」
「撃てば良いというものではないわ、こいし。そんなんじゃあすぐに霊力が尽きるわよ。
それにあの人形…中々こっちに近づいてこない。何か狙っているのかも…」

もう!さっきから私のお姉ちゃんかっ!そんなの私の勝手でしょっ!
つい汚い感情が湧き上がってくるのを感じながら私は人形達を目で追う。


…と、その時いきなり人形達が私達からバッと離れていった。…諦めて帰っちゃったのかな?


「……ッ!!!こいしッ!!伏せなさいッ!!」
「……え?わぁッ!!!」

後ろにへばり付いていたチルノちゃんが私の首をムンズと掴んで強引に地面に伏せられた。鼻先に地面がぶつかって痛い!
何するのさッ!そう言おうと立ち上がりかけた私の服の袖をチルノちゃんはまたもや思い切り引っ張って、再び私は地面にゴツンと頭をぶつけた。


バ チ ン ッ !


私が頭を下げた瞬間、すぐ頭上でなんだか電気の弾け合うような鋭い音が走った。
なになになに!?今の音、何なのッ!?

帽子を押さえながら見えない攻撃を警戒して地面にへばり付く私。
一方のチルノちゃんは仰向けになりながら何やら察したような不敵な笑みを浮かべていた。なんなの。

「!!……なるほど、これは…『毛糸』ね。恐らくあの男と三体の人形同士が糸で繋がれていたのよ。
あたい達の周りをただグルグル回っているだけのように見せかけて『糸の結界』を張り巡らせ、一気に糸を引っ張りあげる事によって中心上のあたい達を一網打尽にする魂胆ってワケね。
この糸に真っ赤な『血』が微かに垂れていたおかげで見分ける事が出来たわ。
しかもこの糸、『電気』…?みたいな物が流れてるみたい。糸同士が絡まった衝撃で電気がぶつかり合ったんだわ。今の音はそれね」

えぇ!今の一瞬でそこまで分かっちゃったの!?ホントにこの人、あのチルノちゃん?中身違うってわけじゃないよね…?
そんな頭脳派に進化した彼女に内心ちょっとした羨望を抱きつつ私は頭上を見上げる。

なるほど確かに目を凝らせば細い糸が絡まっているのが分かった。
そしてチルノちゃんの言う通り、その糸にポタポタと『血』が僅かだけど垂れている。
多分、私が撃った時の血が付いちゃったんだ…


「つまりッ!この『糸』を辿れば本体の居場所が掴めるはず!!こいし!落とした銃拾ってついて来なさいッ!!」

チルノちゃんが羽を使ってフワリと回転しながら体を起こし、糸を辿るようにして猛ダッシュで本体の位置まで突き走った。
私はオロオロと落とした銃を拾い抱え、チルノちゃんの後を追うように走り出す。
さっきまで意気に燃えて戦おうとしていたというのにこれでは情けなくなってくる。

私の背後ではこんがらがった糸を何とか解こうとして人形達が集まり、てんやわんやしていた。本体を追い詰めるなら、きっと今!


この糸の向かう先は…あるひとつの『廃屋』の様相をした古臭い建物。
人間の里には何度も足を運んだ事はあるけどこんな建物は今までに見た事が無い。

多分外界の建物…?家の周りは石で造られた外塀で包まれていた。
先にチルノちゃんはその塀を綺麗な羽でヒョヒョイと優雅に飛び越えて敷地内に侵入していく。
私は…もちろん羽なんて無いから普通に門から侵入を試みたよ。…一応「お邪魔します」を言って礼儀正しく入ったけど。


「チルノちゃんに先を越されるのも何だか癪かな…。私だって…やれば出来るんだ…。
『勇気』だ…勇気さえあれば、チルノちゃんなんかよりも、もっと強くなれる…!」


私はギュッと銃を握り締め、玄関から入り込む。いつの間にか、体の震えは止まっていた。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
――― <早朝> E-4 人間の里 虹村億泰の家 二階広間 ―――

「うわわッ!!何よアイツら私ン家に許可無く入ってきたわ!ふざけんじゃないわよ信じらんないッ!!」

「だから君の家じゃあ無いだろうに…。
それにしても驚いたな…。あれがあのチルノ?まるで別人だが…」


えっとー、こちらてゐ。こちらてゐ。そして横の男はこーりんこと、森近霖之助
私達二人はさっきから並んで格闘試合の観戦のようにあのマッチョの男と神父の男、そして古明地こいしと最後に乱入して来たチルノ達の戦いをこの部屋から眺めています。
途中、神父服の奴がダイナミック離脱した時は私達二人も「おおっ」とちょっとした歓声を上げたりもしたけど、『あの』生意気妖精チルノが乱入して来た辺りから雲行きが怪しくなったね。

なにしろ隣のこーりんが言ってるように、お馬鹿&間抜けで名が知れたチルノがまるで別人みたいになってあの男を攻撃し始めたんだからさ。
そりゃあ幻想郷に住む奴なら誰だっておったまげるって。私もちょっと信じられないもん。

…おっと!これだけは言っとくけど、いくら腹黒いと有名な私でも流石にこの戦いを観戦する事を『楽しい』だなんて思っちゃいないよ。
勝手にやっててくれとは思うけどね。


「…って、おいおい。どこへ行くんだ?てゐ」

「どこって、決まってるじゃん。荷物まとめてさっさとここからスタコラさ。
だってアイツら、あろうことかこの私の隠れ家に入り込んできたんだよ?
流れ弾に当たって昇天!…なんてマヌケな死に方は絶対嫌だからね。この上の屋根裏部屋から屋上に出られる。
アイツらの戦いの結末が気にならないワケじゃあないけど、好奇心は兎をも殺すんだよ」

「猫だね。…まぁ、確かに僕らがあの戦いに介入できる余地は無いんだろうけど…
どうにもこのまま知らぬ顔、とは行きたくないね、僕は」


はぁ?何言ってんのコイツ。
私はともかく、アンタは戦う力なんて皆無だから今まで黙ってこの戦いを眺めるに徹してたんでしょ。
私はアンタと違って死にたがりじゃないの。どんな手を使っても絶対生き残ってやるんだから、せめて私を巻き込まないで欲しい。

それにコロッセオの『真実の口』とやらに向かうにはそろそろ頃合だ。
ここでアイツらが潰し合ってる内にせいぜい私はのんびり目的を果たすとするわ。
…と、いうわけで私は満面の笑みで皮肉たらしくこーりんを見送る事とした。


「そ。貴方がそう言うんならそうするといいわ。ただし私はここでバイバイさせてもらうよ。じゃ、体には気をつけなさいな。カゼひくなよ」

やれやれよ。命知らずのお馬鹿さんには付き合ってらんないわ。触らぬ神に祟りなし、ってね。
私は荷物をまとめると屋根裏部屋へ行くための扉のノブに手を掛けた。
上っ面だけの軽い思いやりの言葉を彼に投げ掛けながら。




「―――てゐ。君は僕の事を『命知らずの死にたがり』…とか思っているんだろうね。
『どうせ生き残れっこないんだから適当に抗っている』…と、君は僕の事を『そう思っているように思っている』…」

ドアノブを回す手がピタリと止まる。
なんだコイツ…?いきなり何言い出しちゃってるの。

私は何でもない事のように後ろを振り返り、軽く投げ返した。

「…あら、違うの?貴方の目が『半分』死んでるように見えたから、私はてっきり貴方が諦めてるのかと」

「…確かに、『半分』は諦めてるのかもね。だが…もう『半分』は諦めちゃあいないさ。あの主催者には僕も結構腹を立てている。
僕の『何気無く』やったちっぽけな抵抗が、巡り廻ってこの残酷なゲームの幕引きを少しでも担えれば良い…
主催者達の喉元へ届き得る『牙』となってくれれば、それだけで僕は笑いながら死ねるさ。
何より、奴らが『魔理沙』と『霊夢』を巻き込んだ事が僕にとって一番許せない事なんだよ」


自嘲気味に笑うこーりんの目が、それまでよりもどこか『漲る』ように動いた。

私と…コイツは、根本から違ってた。
私は兎に角、自分が助かるなら何でも良い。異変が解決するのをどこか安全な場所で胡坐をかきながら待ってるつもりだった。

でもコイツは生意気にもあの主催者に『ささやかな抵抗』を試みているらしい。自分から動こうとしている。
力は無いクセにそこだけは私と決定的に違う所だった。


「だから、何…?ここに残って何が出来るの?立派なこと言ってあっさり殺されたんじゃあ、あの世に持ち込む笑い話にもならないわ」


私はなんだか負けた気がして、自分に言える精一杯の皮肉を口にして出す。
言うだけならそりゃあ簡単さ。でも、敵は強大なんだ。アンタ如きがどこまで出来るってのさ…?


「…そうだね。僕に何が出来るか…それはまだ見当も付かない。
分からないから…抗う価値もあるというものさ」


私はいつの間にか完全にこーりんへと向き直っていた。多分、顔も少しキツくなってるのかもしれない。
最早私は言葉も失っていた。ここで「あっそ。頑張ってね~」と返せればどれだけ楽だろう。
でも何故か、顔を逸らしちゃいけない気がしてきたんだ。


ほんっと~に面倒くさい奴だ、コイツは。私はどうすれば良い…?
例えばあのブチャラティなら、ここで階下の戦いを自慢のスタンドとやらで完璧に収めてくれるだろう。

でも、私達には所詮無理なんだよ。諦めなって。現実見ようよ。



ねぇ…。お願いだからそんな眼で私を見ないでよ…。

やめてよ……私は……アンタ達みたいな人種とは違うんだからさ…………


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

虹村家の一階、広間にてジョセフ・ジョースターは胸を押さえながら息を切らしていた。
こいしから受けた胸への銃撃は、波紋の治療によってある程度の処置は施していたとはいえ完治にはまだまだ至らない。
その上に予想外の新手との戦いが続いているとなると、中々息を整える事も出来ないのだ。

(ハァ…ハァ…!くそ、何じゃあの妖精!機銃に加えて氷の能力かよ!ちと火力では押し負けるぜ(氷だけど)…
広い場所では駄目だ…!屋内で戦わねーと…)

広間の端、横に倒したテーブルの陰で傷の治癒を続けながら辺りを警戒するジョセフ。
彼の手には水の入ったペットボトル―『波紋レーダー』がその水面を揺らしていた。
そのレーダーに反応している生物は現在ジョセフを除く『3人』。これを見てジョセフは驚く。


「ゲッ!あの青髪チビの他にもこの家に『2人』居るだとォーッ!?
オーマイガー!味方なら良いが、もし敵ならこれ以上対処出来ねーぞッ!」

ジョセフの持つ波紋レーダーには2人の人間がこの家の『上方向』、上階に潜んでいる事を示していた。
このレーダーの索敵距離はそう長くない。確実に上階の人間はジョセフ達の侵入に気が付いているだろう。
ジョセフからすればこれ以上の新手の介入は御免であった。

しかも先程のこいしの様子からすると、こいしは既にジョセフに対して牙を剥いたのだ。
チルノが何か唆したのかもしれないとジョセフは推測する。

だとすれば彼女は何故か気配を全く感じさせず、ジョセフの波紋レーダーに引っ掛からないという厄介な能力を所持している。
敵になれば事態は更に危うくなるのだ。それだけは避けたい。







「ねぇ?隠れてないで出てきなさいよ、ジョセフ・ジョースター。弾薬も霊力も有限なんだから手間を掛けさせないで欲しいわね」



骨の芯まで凍り付きそうな冷酷な響きを含む声が入り口の方から聞こえてきた。
やれやれだぜ…と溜め息と共に小さく呟き、両手を挙げながらその場から立ち上がる。

チルノが入り口で、銃の弾薬を込めながら小さく飛行していた。


「貴方、あたいの友達のこいしをよくも誘惑してくれたじゃない?狡い男。
彼女はあたいと違って繊細なんだからナンパならよそでやって欲しいわね」

「誘惑ゥ?それはこっちの台詞だぜ氷のお嬢ちゃん。
あんなに可憐な子に銃を持たせて人殺しさせようなんざ、正気の沙汰じゃねーだろ。
こいしは泣いていたぜ。泣かしたのはお前か?あのクソ神父か?……それとも、DIOか」

「貴方には何も分からないのだわ。あの子の『恐怖』が…
DIO様はあたいに任せてくださったの。こいしを導いて欲しい…って。
だからあたいはこの身を挺してあの子に教えてあげるのよ。
『覚悟』が『絶望』を吹き飛ばすという、この世の真理をね」

「『覚悟』が『絶望』をねぇー…ヘヘッ、笑っちまうよな。
あんなガキんちょが似合わねー銃抱きかかえてビクビクしながら銃口を向けてんだからよぉ」

「ええ、爆笑。
でも、だからこそあたいにはこいしの気持ちがよく分かるわ。あたいもついさっきまでは彼女と同じ心境だったんだもの。
誰だって最初は恐ろしいものね。…でも、DIO様があたいに『強さ』と『勇気』を教えてくれた。
あの人が居なかったらあたいは今頃こころを失っていたわ。
だから今度はあたいがこいしの『道しるべ』になる番。そのために貴方は、とても邪魔。
だから『殺す』のよ」

「……テメェらがこいしに人殺しをさせようってんなら、俺は許さねえ…ッ
人を殺しちまったら、そいつはもう元には戻れねえんだよ…ッ!
俺はあの子の事をよく知らねえが、そんな『外道』は見逃せねえッ!!許せるわけがねえッ!!!」

「今のこいしやあたいにあるのは、『覚悟』か…それが出来なければ『死』だけよ」




―――ジョセフは、怒りで身が震えた。


チルノに対してではない。チルノやこいしのバックで下衆の笑みを浮かべているだろう…DIOというまだ見ぬ男に対してだ。

こいしにしてもこのチルノにしても、ジョセフにはどうしても彼女達が『悪』には見えなかった。
まるでDIOがチルノという傀儡を通してジョセフに直接伝え聞かせているかの如く、チルノ本人が言っているようには全く聞こえなかったのだ。
チルノですらDIOの手にかかった『被害者』だとジョセフは確信する。

その昔スピードワゴンはDIOに対して『生まれついての悪』と評したらしいが、ジョセフにはその意味が今、心で理解出来た。
DIOはッ!決してこの世にあってはならない存在ッ!
かつての宿敵カーズと同じ、真底心から憎い『悪』だと!ジョセフの精神は煮え滾るッ!



「ッ!!DIOオオォォォォーーーーーーーーーーッ!!テメェはッ!!!テメェだけは許さねえッ!!!」


「あたいは『チルノ』よ。今から貴方を紙クズの様に始末する、『最強の氷精チルノ』…覚えなくても結構よ」


哀しき激突は免れることは無かった。ジョセフの『炎』のような怒りの視線とチルノの『氷』のような冷酷な視線が互いにぶつかり合う。
チルノはこれからジョセフを躊躇わずに殺しにかかるだろうが、ジョセフはそうもいかない。真の敵はチルノではなくDIOなのだ。

だがジョセフの武器は『殺し』の道具ではない。
波紋とは誰かを傷付けるための技術ではなく、『生命』の為のエネルギー!相手を傷付けずに戦うには最良の武器なのだ。


「蜂の巣にした後には氷漬けのオブジェにしてあげるわ、ジョセフ・ジョースター」


燃え上がるようなジョセフの迫力に怯む事無く、チルノはあくまでも無感情に殺意を向ける。
彼女の構えた機銃はまるで悪魔の咆哮の様に、ジョセフに閃光と轟音を放った。
その一瞬前に、ジョセフは先刻の戦闘と同じく『波紋入りの綿』をバリアー代わりにばら撒く。

初動は先のシーンの焼き増しのように同じ展開となって幕を開けた。
チルノの撃ち続ける弾丸は音を弾かせながら波紋シールドによって次々と防がれてゆく。

その攻撃の最中にもチルノは思考を止める事は無い。
以前までの彼女では考えられない、『頭脳を働かせながら』の戦闘だ。


(この男の繰り出す『妙なワザ』…!糸から電気の様に流したり、綿に流して盾に使ったりと、応用力あって凄く『変則的』ね…
でも…『規模』が違えばその『防御』も意味を成さないんじゃないかしらッ!)


銃を乱射しながらチルノは周囲の気温を一気に落とす。こんなオモチャでの攻撃は敵の動きを封じる為の『仕掛け網』ッ!
獲物を網の中から逃さない為の陽動!真に敵を『殺る』ための攻撃は次で完了するッ!


「貴方のそのチンケな『ビリビリ』はこの『デッカイ攻撃』も防げるのかしら?盾ごと凍らせてやるッ!
―――氷塊『グレートクラッシャー』ッ!!」


チルノが左手を大きく上げ、その先端に絶対零度のエネルギーが集中していく。
それは見る見るうちに巨大な『氷の塊』を創りあげ、彼女の頭上に大きな氷山が出来上がったッ!


「ゲゲェッ!?おい…まさか『ソイツ』を俺にブチ落とすんじゃあねーだろうな…ッ!
や、やめとけって…この家を南極にする気かよ…!」

「いいえ、『ブチ落とし』たりはしないわ。『ブチ砕く』のよ。貴方の脳天をね」

「おい…やめとけよ…!きっと失敗するぜ…!話せば分かる!俺はお前を殺す気なんか…ッ」



「―――アイスローラーだッ!」


有無を言わさず無情にもチルノの腕はジョセフに向かって振り下ろされた。
ジョセフの説得にも聞く耳など持たず、ただ冷徹に、機械のように彼女は自分の使命を全うするだけであった。

見上げるジョセフの顔に大きな影がかかる。氷塊はその天井をブチ破るほどの勢いで成長し、勢いよく音を立てながら降下していくッ!




「―――なぁ~んてなッ!『今だ』ッ!!『アラン』!『ペペ』!チルノの腕を捕らえろッ!」

「………ッ!?」


一転、ニヤつく笑い顔でジョセフが何事か叫ぶと共に、チルノの傍の物陰から現われたのは『二体』の魔法人形ッ!
突如現われた不測の事態に、チルノは驚きのあまり対応が遅れてしまうッ!
隙だらけの彼女の左腕目がけて左右から一直線に飛び込んでくる人形を撃ち落すことはできなかったッ!

そして当然、その二体の人形にもジョセフの波紋伝導の糸が繋がれているッ!
二体の人形の挟み撃ちに成す術なく、チルノの左腕には波紋の糸が巻き付かれ、ほどなくチルノの全身へと波紋の衝撃が迸ったッ!


「――――――ッ!!?ウ…グァッ……!!??」

「作戦大成功ォーーッ!!俺の操る人形が『三体』だけだといつから錯覚していたーッ!?
この部屋には最初から残りの『二体』が潜んでいたんだぜェーーーッ!!」


そう。ジョセフの支給品『アリスの魔法人形』は五体でひとつのセットとして支給されていたのだ。
彼が最初から人形を『三体』だけ操っていたのは、襲い掛かる敵に『自分の操る人形は三体だけ』という印象を与える為であった。
そして案の定チルノはジョセフの持つ人形を三体だと思い込んで無思慮に彼を追い込み、そして追い詰めた『つもり』になっていた。


「どーだ参ったかこのヤローッ!!この俺様が無計画に狭い屋内へ逃げ込むワケねーでしょうがこのバカチンーッ!!
そしていいのかい、そんなとこでうずくまって!
上を見なッ!お前の頭を文字通り『冷やして』やるぜーーーーッ!!」

「……ッ!!!」


ジョセフの言う通りに上を見上げたチルノの目の前に巨大な影が迫ってくる。
さきほど発動しかけた氷の塊が波紋の攻撃によりコントロールを失い、チルノの頭上に落下してきたのだッ!

体の自由が利かないチルノにその広範囲の落下を避わす事はよもや叶わず、凄まじい轟音が部屋内に鳴り響き、氷塊は床下までチルノの体ごと突き抜ける。

埃と冷気が混ざり合ってゴウゴウと白い煙が氷のオブジェから流れ続ける。
その光景を見てジョセフは多少やり過ぎかとも思ったが、これぐらいやらなければ自分の命の方が危うかった。


人形達が自分の元へ戻ってきた事を確認し、ジョセフはもう一度息を整えて後方のドアへと振り返り声を掛ける。



「…おい!見てたんだろ…?流石にそう何度も背中から撃たれはしねーぜ。…出てきな、こいし」

「…………!」


立て付けの良くない、古い木製のドアがギギギ…と音をたてて開かれた。
外に立っていたのは…予想通りの人物。

古明地こいしが再び銃を握ってジョセフの心臓を狙って構えていた。さっきの時よりは幾分か冷静になっているようではある。
彼女は一歩前へ踏み出し、銃口をジョセフに狙いをつけたまま広間の部屋へと入ってきた。
その目に多少の怯えの色は残っているが、どこか怒っているかのような、ほんの少しの『決意』めいたものが渦巻いているように見えた。



「…ジョセフ・ジョースター。神父様だけじゃなく、チルノちゃんにまで酷い事を…!」

「こいし。誰も教えてくれないなら…俺が教えてやる。
DIOも、神父も…『黒』なんだ。それはもうドス黒い『悪』だぜ、アイツらは。
頼る相手が居ないってんなら俺を頼りゃいいじゃねーか。
お前の友達のチルノだって俺が救ってやる。お前らまで『黒』になる必要は無い」

「…私が、『黒』になる…?そんなの……わたしの、私の『分岐点』は!私が決めるよッ!
貴方じゃないッ!!貴方なんかに私のこころは理解出来ないッ!!
どっちにしろ私はもう戻れない!このまま貴方を…こ…殺してッ!チルノちゃんと一緒に神父様とお姉ちゃん達を探しに行くッ!
邪魔しないでよッ!」

「クソガキが知った風な口利いてんじゃねえッ!!
お前はまだ『戻れる』じゃねーかッ!!俺一人殺せねーで何が出来るってんだッ!!」

「殺せるよッ!!私は妖怪だもんッ!!人間一人ぐらい、ワケないんだからッ!!」

「おーやってみろッ!!言っとくがなッ!銃の引き金ってのはそんな軽くはねーぞッ!!
シカを撃つのと一緒にするんじゃねえぜッ!!」


引き金に掛けるこいしの指の力が強まる。

彼女は、これまでに重なってきた幾重もの現実によって既に『タガ』が外れかけていた。
神父プッチとの出会い、DIOの誘惑、そしてそのDIOの悪の魅力にとりつかれたチルノとの共闘…更にこいしは一度はジョセフを撃っているのだ。

そのひとつひとつがこいしの『判断力』を蝕んでいた。
特に心中では自分より『下』だと思っていたチルノがDIOによって大きく変貌を遂げていた事は、彼女にとっても大きな変革の『キッカケ』となっているだろう。

『肉の芽』によってDIOの操り人形と化したチルノの変貌を、こいしは彼女の『勇気の賜物』だと勘違いしてしまった。
それが偽りの『勇気』だと知らずに。
こいしもチルノも、全ては…DIOの思い描いた脚本通りの『役』を演じるだけの人形となりつつあった…


そしてジョセフはそんなDIOの支配が何より許せない。怒り、猛ってでも彼女達を救う事を考える。


「ほらどうしたッ!撃ってみろよッ!怖気づいたかッ!?」





「…さっきから喧しいサルね。こいしの心をこれ以上揺さぶらないで欲しいんだけど。
まだまだ甘ちゃんだけど、これでも同志なんだから」


背後からの声に驚き振り向けば、チルノが何食わぬ顔で突き抜けた床下から埃を払いながら這い出てきていた。
腕に絡み付けた毛糸も氷塊の落下の衝撃で千切れ落ちたようだ。見れば殆どダメージなど負ってない様に見える。


(…成る程。氷を自在に操れるわけだから落下の直前、器用に頭上の氷の部分だけを『解除』して解かし直撃を免れた…ってワケね。
このおチビちゃん、中々やるじゃない…。やっぱりまずはこいつから波紋で強引に黙らせないとダメか)

部屋内の気温の低下と共に冷や汗をかき始めるジョセフ。やはりこの氷精、一筋縄ではいかないようだ。
人形も自分の傍へと戻し、チルノとこいしから距離をとるようにジリジリと後ずさりするジョセフ。

しかし、その時こいしの引き金の指にかかる力が一層強くなった。


―――撃たれる…!


直感的にそう思ったジョセフは彼女が指を引くより早く、ポケットに入れていた水の入ったペットボトルを取り出して思い切り波紋を流し込んだッ!
水の中を駆け巡る青白き波紋の輝きはその衝撃でペットボトルの蓋を高速回転させながら吹き飛ばし、こいしの腕目がけて直撃するッ!

銃口が逸らされて撃たれた弾丸はそのままジョセフの頭上を駆け抜けて背後の壁へと着弾し、壁の時計が破壊される。


「きゃ……ッ!」

蓋が激突した勢いでこいしは短い悲鳴を上げながら尻餅をついた。
波紋を手加減していたおかげで彼女の腕には怪我は無い。
そしてチルノはこいしが生み出したその隙を見逃さすまいと、弾幕での攻撃を開始しようとする。



―――が、それすらも予測していたジョセフが先手を打った。



「させるかよッ!飛び込め『アラン』ッ!!」

チルノが指先に霊力を込めるより早く、ジョセフの人形『アラン』がチルノの懐に潜り込もうと空を駆けた。
そうはいくかとチルノは弾幕で撃ち抜く対象をジョセフから人形へと変更し、自分に迫り来る人形の眉間に指先で焦点を合わせる。


しかしそこにジョセフの声が遮ってきた。


「おっと待ちなッ!波紋の糸が解かれて自由に動ける様になったみたいだが、そのまま人形を攻撃すれば大変な事になるぜ!
何しろこの人形達の内部には『爆弾』が詰め込まれてるんだからなぁッ!」


それを聞いた瞬間指の動きをピタリと止めるチルノ。それとは対照的に相変わらずジョセフはニタリと顔を下品な笑みに変える。

…が、チルノが動きを止めたのはほんの一瞬。

すぐに指先に力を込め直し、目前に迫ってきた爆弾人形の眉間を氷弾で撃ち抜いて凍てつかせた。
人形は爆発を起こす事も無く、その機能を停止させて床にゴトリと墜落するだけである。


(ゲゲッ!何で『ハッタリ』だと分かったんだッ!?
さ、さっきからこの青髪嬢ちゃん…ひょっとしてかなり強かな奴なんじゃないのか…!?)


内心で焦りまくるジョセフ。爆弾なんて持っていない彼は当然、ハッタリでチルノの隙を生み出そうとしたのだがものの見事に失敗してしまった。

一方のチルノはジョセフとは違い、勝ち誇る事も無く安堵することも無く、ただただ平然な無表情で撃ち落とした人形を踏み躙りながら淡々とした敵意をジョセフに向ける。


「こんな子供だましのハッタリに騙される⑨がどこに居るのよ。そのふざけた余裕がどこまで持つかしら」

「ぐっ…この生意気なガキんちょめっ!俺はなぁ!おちょくるのは好きだがおちょくられるのは大っ嫌いなんだぜッ!
しかもそれが子供となるとなおさらだぜーーッ!!」


天性の煽りの才能を持つジョセフもここまで冷めた態度を取られ続けると頭に血が上ってくる。
元々チルノも天真爛漫で無鉄砲なおてんば妖精だったが、DIOによる支配が彼女の心を蝕んでいった。
普段だった頃の面影は霧消し、今では目的に向けて突き進むだけの悲しき『兵』でしかないのだ。


血が上りつつもどうにかして彼女達を救いたいジョセフは決して諦めない。
彼が諦めれば誰も彼女達を救える者は居なくなってしまうからだ。


兎にも角にも二人を捕らえなければ話にならない。
それならばまずは力の弱い者から、という論にジョセフは自分で嫌気が差しながらもひとまず御しやすいこいしを行動不能にしようと策を練る。

今、ジョセフの傍に居る人形は『ペペ』と名付けた一体のみ。
外に残してきた三体の人形は何してるんだと多少の焦慮の気持ちもあるが、この手元の一体で事を済ますしかない。


ジョセフは人形のターゲットをこいしに変更、彼女を捕らえようと空中を突っ走らせた。


「こいし!ワリーがちょっと眠っててもらうぜッ!行け!特製爆弾人形ッ!」

「今度は私ッ!?でももう『ハッタリ』は効かないよ!そいつも弾幕で撃ち落させてもらうわッ!」


人形の突進が到達するよりも早く、こいしの掌から数発の弾幕が発射されて人形へと向かい、直撃した。


その瞬間ッ!



ボ フ ォ ン ッ !!



―――大きな破裂音が辺りを巻き込む。


こいしの周辺は白い煙に巻かれ、そして彼女の顔面は白い『粉』で覆われていた。

撃った本人であるこいしは何が起こったのか分からないといった表情で(隠れているが)、口からポフッと煙を吐き出し、目をパチクリとさせる。(隠れているが)
ジョセフは指で耳栓をして床に伏せながら「してやったり!」と言わん表情でガッツポーズを繰り出し、チルノは呆れたように顔を手で覆うポーズ。


「引っ掛かりやがったなこいしちゃぁ~ん!『爆弾』ってのはウソだが人形の中に入れていたのは『小麦粉』だぜーッ!
可愛らしい表情が見えなくなったのは残念だが、ちと大人しくしててもらうぜッ!」

「…………ッ!!!」

ここでもジョセフのおふざけハッタリ戦法が決まってしまった。
あらかじめ人形内部に詰め込んでいたたっぷりの小麦粉が、弾幕を受けた衝撃で中から破裂。目の前に居たこいしの顔面に白化粧を塗りたくる結果となる。

こいしの信頼を得ることが目的のひとつでもあるジョセフだが、これでは完全に逆効果。
こいしは『遊ばれている』と思い、肩をぶるぶると震わせてカッと熱くなる。


最早どちらが子供なのか分からないが、ジョセフは間髪入れずに床から飛び起きて次なる攻撃に移る。
彼がデイパックから取り出した物は…


「へっへっへー!嬢ちゃんたち、『野球』ってやった事ある?『ベースボール』。
幻想郷にも野球あんの?俺はこう見えて結構好きよん、野球。知らないなら今から教えてやるぜ。
と、言っても基本のルールは簡単。『打つ』『捕る』『走る』だ。これならお嬢ちゃんたちでも出来るだろうよ」


今度は突然野球のルールを解説し始めるジョセフにこいしは怒りを通り過ぎて困惑するが、チルノだけはジョセフの奇行に嫌な予感を覚える。
何故ならジョセフがデイパックから取り出した物は『金属バット』と『毛糸玉』。

まさか本当にこの場で遊び始めるのではあるまい。
となればジョセフの行動が示すところは一つしかない。


「四番バッター、ジョセフ・ジョースター選手~…ボックスに立ち、なんとホームラン予告をしました!
…そしてぇ~…今、ピッチャーがボールを投げて~……!」

一人で解説を続けるジョセフの姿はどこか滑稽で、完璧にふざけているとしか思えなかった。
しかし、彼の目だけは真剣にこいしたちを見据えている。
遊びではない。これはジョセフ流の、最後の攻撃なのである。


右手で握ったバットを肩に掛け、左手には掌サイズの毛糸玉が握られている。
素振りを一回、気合を入れてスウィングする。
そして波紋の呼吸も最後に大きく一回。ジョセフの全身にバチバチと光り輝く波紋が流れ見えた。

彼の向く先には粉に塗れたこいしが立つ。



―――油を染み込ませた毛糸玉に鋭い波紋を流す。宙に上げたそれを、ジョセフのフルスウィングしたバットの中心が打ち抜いた。



「―――こいしッ!!!波紋のボールが飛んでくるわッ!避けてッ!!!」


チルノがこいしに向けて走りながら咆える。
ジョセフの打った毛糸玉のボールは「バチィ!」と辺りに波紋を散らし、こいしまで豪速の一直線を刻みながら飛んでいくッ!


「え!?えぇッ!?でも私、粉が被って前がよく見えないッ!!」

「…………ッ!!」

チルノはまたしてもジョセフに対して一手遅れた。小麦粉の攻撃はこいしの視界を奪うものだったッ!
ここでこいしが倒れればチルノにとって数の利は無くなる。
正直言って、チルノ一人ではこの生粋の詐欺師に敵う要素は少ないのだ。


「見えないなら目を擦ればいいでしょッ!避けなさいッ!!」

「分かってるもう擦ってるよッ!………って、チルノちゃん、前ェ!!!」


「………え?」


こいしの方へと全力疾走していたチルノに向けて、視界が復活したこいしがまた叫ぶ。
こいしの方ばかり見ていたチルノは『自分に迫る危険』を察知しきれなかった。

チルノが振り向くと、そこにはジョセフがスウィングしてそのまま投げ放った『波紋を纏った金属バット』が回転しながら突っ込んできていたッ!


(しまっ………!!アイツの狙いはこいしではなく、『あたい』だった!!
本命はボールじゃなく、こっちの『バット』……ッ!)


視界の端に映るジョセフが白い歯を見せてイヤらしく笑う。

こいしの一声で一瞬早くバットに気付く事が出来たチルノは、持てる瞬発力を出し尽くして体を大きく横にずらす。
こいしも目前まで飛んでくるボールを何とかギリギリで避わせた。


「きゃ……ッ!」
「クッ……ッ!」

回転しながら突っ込んできたボールとバットが体を掠り、「バチッ!」と一瞬の波紋が流れる。

二人は寸でのところでジョセフのボールとバットの同時投擲をギリギリ回避する事が出来た。




…が、攻撃を回避したはずの二人の目が驚愕に見開かれる。


「な…ッ!」
「え…?」


チルノが避け際に目撃した、バットのある『一点』。そのバットの『グリップ』の先。

こいしが避け際に目撃した毛糸玉のある『一点』。毛糸の『糸』の部分が解れて、その糸は『ある方向』へ伸びていた。


毛糸玉から伸びる糸は、チルノの方向へ飛ばされたバットのグリップ部分に『繋がって』いたッ!

ジョセフはただボールとバットを投げるだけの攻撃を行ったわけではないッ!
毛糸の先をバットに結び付けてから、『そのまま』打球したのだッ!

それはつまり、バットとボールを繋ぐ『波紋入りの糸』がピンと張られたまま彼女達を襲う事を意味しているッ!

ギリギリでバットとボールを回避出来たチルノとこいしも、それらに繋がった『糸』までも避けきる余裕は無かった。
まるでギロチンのように飛び掛ってくるその波紋入りの糸は、飛び去っていくバットの勢いに引っ張られるままにチルノの体に食い込んでいくッ!
そして彼女の体に糸が引っ掛かった衝撃でバットは勢いを殺され、方向を変えて滅茶苦茶に飛んでしまう。

その動きがそのままチルノに絡みつく糸を更に雁字搦めにしたッ!

こいしの方も同じく、毛糸玉が体に引っ掛かった糸に引っ張られた勢いで、彼女の体を何重にもグルグルと巻き付けたッ!
波紋が流れるその糸に絡まれた衝撃から、二人は雷にでも打たれた様な波紋の伝導をその身に受けて意識を失う。


意識を失いかける中、チルノは脳裏で完全に敗北を悟る…


(ぐ……ッ!やられた…ジョセフの『本命』はボールでもバットでもなかった……ッ!
事前に互いを結び付けていたこの『糸』の方だった……
こいつ……ッ!『強い』………!二人でも、勝てない…………)


最後の最後、こんな子供騙しの様な策でチルノはジョセフに『完敗』の念を感じつつ……彼の最後の呟きを耳に入れて、昏睡した。




―――手荒な真似して悪かったな、チルノ、こいし…………。お前達は、俺が必ず救ってやる。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

気絶したチルノとこいしの二人を改めて波紋の糸でグルグル巻きに縛り付けたジョセフは、大きく息を吐き出すとその場にクタンとしゃがみ込む。

プッチからの連戦に続き、連続しての波紋使用。
胸に受けたダメージも軽くは無い。満身創痍といっても良い状態であった。

ゼェゼェと肩で息をするように力なく膝を床につけるジョセフは、昏睡した二人を眺める。
波紋は手加減しての攻撃だったが故に、彼女達に殆ど外傷は無く、またそう長い間眠る事も無いだろう。



ジョセフは戦いの勝利に浸ることは無かった。いつもの様に負かした相手をヘラヘラと馬鹿にはしない。

彼の心を占めているものは『悔しさ』。

結局ジョセフはこいしの心を救い出すことは出来なかった。説得できなかった。
どんな形であれ、こいしはゲームに『乗ってしまった』のだ。
その責任の一端は自分にもある。その思いでジョセフはやりようの無い自分への怒りが湧いてくるばかり。


こいしだけではない。チルノもそうだ。
ジョセフは戦っている間中、ずっと彼女に対して『違和感』を感じていた。
チルノの語る言葉のひとつひとつに含まれる違和感。

どうもジョセフには彼女の言葉が『本音』から来るものではないように感じていたのだ。

彼女の『本来の姿』はもっと別な所にあるんじゃないか…?

そう思いながらジョセフはチルノをも救おうとしていた。


全ては祖父の代から続く『因縁の相手』…DIOが裏で糸を操っているに違いないだろう。


こいしとチルノの心の奥に潜む悪意の根は、DIOという男が絡んでいる…そう確信したジョセフは、このゲームで打倒DIOを決心する。
祖父が命と引き換えに倒した敵が何故この会場に居るのかは分からないが、奴さえ倒せば少なくともこいしとチルノは救えるはずだと予測したからだ。

とはいえ、気絶した二人をこのまま放置しておくべきだろうか…?
連れて回すのも危険が伴う。しかしここに放置していればいずれ二人は復活して他の参加者を襲いだすのかもしれない。


方針を決めあぐね、ジョセフが悩んでいる時であった。
外に置いて来た三体の魔法人形が(今更)ジョセフの元に戻ってきたのだ。
戦いの中で少々愛着が湧いてきた彼らにジョセフは労いの言葉を掛ける。


「おー!戻ってきたかお前ら!えっと名前はー……『シャルル』に『ピエール』に、えぇっと『フランソワ』だ!
よしよし体には特に傷は無いな。だが…ワリーな、お前らの仲間の『ペペ』と『アラン』は…助けられなかった」


表情に影を落としながらジョセフは床に倒れる二体の魔法人形を指差して、彼らに謝った。

チルノの攻撃を受けて凍り付いた『アラン』も、こいしの弾幕を受けて中から小麦粉ごと破裂した『ペペ』も、動く事はもう無い。
短い間だったが共に戦ってくれた彼らに『敬礼』のポーズを取り、その魂を弔う。





「さて…と。あらかた呼吸も整ってきたし、取りあえずは……」





ズ タ タ タ タ タ タ ッ !




――――――………………っ!!??





―――ジョセフの背後で、悪魔は再び咆哮した―――






崩れ落ちるジョセフ。先ほど、こいしに背後から撃たれた光景がフラッシュバックする。
背中から受けた銃弾の嵐。飛び散る紅。反転する視界。


―――何が、起きた。


―――俺は、撃たれたのか……?


―――誰に……?こいし達は、目の前で縛られている…



ジョセフが最後に振り向いて見えた光景は――




―――彼の相棒、『橙』が…涙を流しながら機関銃を構えている姿であった………


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

―――『だからお願い。ジョセフお兄さん…………どうか、ここで死んでください』

―――そう祈り続けた私のお願いは、結果から言えば見事に『裏切られた』。

―――ジョセフお兄さんは、私が思っていたよりもずっと、魔法使いみたいな人だった。そして、『強い』人だった。

―――帽子を被った女の子に後ろから撃たれた時も、神父さんの操る『おっきなお人形』みたいなものに攻撃された時も。

―――何度と無く『死ぬチャンス』があった。…でも、何度と無く立ち上がって来て、悪い状況をひっくり返してきた。

―――まるで『ユメ』でも見ているみたい。それぐらい、お兄さんは魔法のように戦っていた。

―――神父さんをお空の彼方に吹き飛ばした後も、いきなり現われて別人みたいになっちゃったチルノちゃんと戦う時も、彼はどんどん逆転してきながら敵を追い詰めていった。

―――『それじゃあ、駄目なんだ』。せめて一人でも死んでくれないと、私が…私が藍様に殺されちゃう。

―――それだけは絶対にイヤだ。私はもう、痛いのはイヤなんだ…

―――いずれ、お兄さん達は別のおうちの中に入っていった。私は少し迷った後、三人をこっそり追ってみることにした。

―――そして私が見た光景…お兄さんが相手を縛り上げて、考え事をしていた。

―――床に落ちていたのは、チルノちゃんが使っていた『弾が飛び出る黒い武器』。

―――外界の武器の事については全然詳しくないけど、チルノちゃんが使っていたようにあの『引き金』を引けば、きっと弾が出る。

―――そして目の前には、隙だらけの『三人』。丁度…『三人』いる。

―――私に考える時間は無かった。何としても、六時までに三つの首が必要だったから。無ければ、きっと殺されちゃうから。

―――『銃』と呼ばれていたその武器にこっそり近づき、拾い上げる。

―――肩を震わせながら、涙を流しながら、私は………私は…………





―――本当に、ゴメンなさい………ジョセフお兄さん。………ゴメンなさい。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

「――――――ち……橙…………っ?」


「ご、ご…め……な……っ!ご め゛ん な ざ あ゛あ゛い …………ッ!!ジョセ……ッお…にぃ………さ、ぁん……ッ!」


死力を振り絞り、背後からの襲撃者を見極めんとしたジョセフが目撃した『敵』の姿に、彼はとても信じられない気持ちが湧いてくる。
嗚咽を洩らしながら号泣し、銃の煙を噴かせる彼女は…ジョセフの可愛らしいパートナー、橙であった。


何故、家に残してきた彼女が自分を……?

何故、彼女は泣いている……?

何が彼女を『そうさせた』……?


薄くなる意識の底で様々な疑問が彼を困惑させる。
ついさっきまで、彼女とは笑い合いながら食事をしてたはずだ…。自分の料理を心の底から『美味しい』と言ってくれた少女のはずだ…

何故……なぜ……?



「でもッ!!ごうじな゛きゃ…ッ!!あ゛だ しが『藍さま゛』 に゛……ッ!殺ざ れちゃうがらあ゛ッ!!ごめ…っな゛…ぃ……ッ!!
うあ゛あ゛あ゛ぁぁぁあ゛あぁぁぁああ゛……ッ!!!ヒッ…グ……!ヒッ………グ……!!」


橙には、この方法しか生きる道は無かった。
自分に優しくしてくれた彼を、この手で殺すチャンスは今しか無かった。

床に落ちていた銃を見つけた時、頭の中の悪魔は彼女に囁き続けた。


『彼を殺さなければ自分が藍様に殺される』『だから殺せ』
『今なら楽に殺せる』『三人の首が一度に取れる』『だから殺せ』
『悪いのは自分ではない』『邪悪はあの主催者だ』
『だから殺せ』
『殺せ』
『殺せ』
『殺せ!』


止みならぬその声を振り払うように、橙は頭をブンブンと振る。それでも声は鳴り止まず、涙と震えは止まらず。
彼女の人生で、こんなに悲しい事は初めてだった。
それは、主である八雲藍に恐ろしい虐遇を受けた時よりもずっと心をしめつけられるような気持ち。


苦しみ悶える彼の姿は見たくない。
その思いで橙はジョセフに『トドメ』を刺すべく、倒れて動かない彼の心臓に銃口を当てる。
せめて苦しませることが無いように、一瞬で息の根を止めるために。


「ゴメンなさい…!お兄さん…ゴメンなさい…!ゴメンなさい……っ!」


最後の最後まで謝罪の言葉を掛け続ける橙。
彼女の指が引き金を引こうとする、その時。


ジョセフの腕が橙の腕を掴み、射抜くような目で彼女を睨みつけた。


(え…!?ま、まだ意識が残って…っ!?こ、殺され…)


ジョセフの反撃を覚悟した橙は思わず目を瞑って身をすくませる。
…だが、次にジョセフが放った言葉は橙への非難でも怨恨でもなかった。



「ちぇ…ん……ッ!どうし、た……?ハァ…ハァ…ッ!
だれ…が…お前を泣かせて、いる……?言えよ…!ハァ……ッ…ハァ……!
主の『藍様』が…お前を…泣かせているのか…?俺を、『殺せ』と…命令して…きたのか……?」


「―――ッ!!」



なんとジョセフは自分が殺されそうになってまでも、なお橙への心配の言葉を掛けてきたのだ。
泣きじゃくりながら自分に銃を突きつけてきた橙の腕を、血に塗れたその太い腕で優しく撫でてきたのだ。
まるで子供をあやす母親のような慈愛を持ちながら。


「言えよ…!お前の、主が…命令してきたんだな…ッ!
まだ小さなお前に…『人を殺せ』と、命令してきやがったん…だなッ!」


思えば橙の様子は初めからどこかおかしかった。
彼女は本来絶対の信服を置くべきはずである主の藍の事を話す時、何故か一層暗い顔になっていたのだから。

何故自分はもっと早くそれに気付いてやれなかったのか。その事がジョセフ自身をも苦しめる。
そして、苦しんでいるのはジョセフだけではない。橙だって理性と背徳、生存本能の狭間で戦い続けているのだ。



(この人を殺せば…!藍様は私をきっと助けてくれる…!褒めてくれる…!
だから『仕方の無いこと』なんだ…!私は…『悪くない』もん…!)

「橙…ッ!お前の、『本心』を言え!!
俺が…助けてやるッ!!誰も…お前を見捨てやしない…ぜ…ッ!!」

「…………ッ!!…あ……っ!
し……喋らないでッ!もう、きぎだくな゛い よ…っ!
お願いだがらぁ……このまま…死ん――」

「言えェッッ!!!」






この数時間。

ほんの数時間の間だったが、橙は少しだけ…楽しかった。

彼――ジョセフはいつも自分の事を気にかけてくれた。優しくしてくれた。

絶望の底に沈んでいた自分に手を差し伸べ、一緒に居てくれた。

彼は自分と会話をしている中にも時折軽い冗談を交えながら常に笑わせてくれた。

彼の作ってくれた『なぽりたん』は、涙が出るぐらい美味しかった。

「家の中で待っていろ」と言って彼が外に出て行った時、実を言うとすごく寂しい気持ちになった。

ジョセフの『死』を望んでいたはずの橙は、同時に『彼ともっと一緒に居たい』という矛盾した気持ちが芽生え始めた。

だんだんと自覚し始めたその気持ちを無理にでも払拭するために、ジョセフは『今』『ここで』殺さなければいけない。

そうすれば全て丸く収まる。藍様も褒めてくれる。



(だから…!ジョセフお兄さんは…私が、殺さなくちゃいけないんだ……!)



張り裂けそうな心で、橙は決断しなければいけない。
ジョセフは死に体の様子でありながら、強い瞳で橙を睨んでいる。
橙の『答え』を待っているのだ。


そして橙は、歪ませた顔で――答える。






「お兄…さん…………たすけて……!
わたじ…殺されたぐな゛いよぉ……っ…!ひっ…ぐ…ぅ…ぁあ……」





橙の心にわだかまった全ての感情は、もう限界だった。
突きつけていた銃も床に落とし、洪水のように溢れ出す涙をその小さな手で押さえる。


―――彼女には、ジョセフを殺すことはどうしても出来なかった。




「…八雲藍が…お前に『命令』したのか」

嗚咽を洩らしながらコクリと頷く橙。

「…奴はどこだ」

「ひっく…ぅ…『六時』に…『香霖堂』…待ち合わ……っ」


(六時…もうあまり、時間が無え……ッ!クソッ!
どいつもこいつも…ガキを何だと思っていやがるッ!!)


ジョセフは床に臥したまま、生涯最高の怒りで煮え滾っていた。

こいしやチルノ、そして橙。彼女達は皆、『利用』されただけだ。
無邪気なだけだった彼女らをッ!奴らは自分だけの都合で利用しただけだッ!!

リサリサとの決闘を侮辱し、卑劣な本性を現したあのカーズを前にした時よりもッ!ジョセフの心は燃え狂っていたッ!
そして橙の本心に気付く事が出来なかった『自分』の不甲斐なさすら許せなかったッ!

こいしも、チルノも、橙も、誰一人救えてない自分の力の無さが許せなかったッ!


「橙…安心し、ろ…!お前の藍様は…俺が必ず、ブッ飛ばし……て…や、る……!
だか、ら………泣く、ん…じゃ………………」

「……お、兄さん………?」


とうとうジョセフは、それ以上声を絞り出すことは出来ずに瞼を閉じた。
泣きすする橙との誓いを捧げたまま、彼の意識は遠のき暗闇の中へと沈み果てる。
血を流し過ぎた。今すぐに手当てを施さないと危険な状態である。


「あ…あぁ……!おにぃ……さん…!どう、どうしよう…っ?」

完全に意識を失ったジョセフの腕を掴み、とにかくどこか治療できる場所へと連れて行こうとする橙。
最早、橙にはこのジョセフしか頼れる相手が居ないのだ。
当初は彼の首を狙うしかなかった橙も、今ではどうにかして彼を救いたい気持ちで一杯になる。


「お願い…死なないでぇ……!お願い…!お願いだからぁ……っ!」


ズル…ズル…と、数センチ。また数センチ。
橙の小柄な体格ではジョセフの体重を引っ張ることなんてとても出来なかった。
それでも彼女は泣きながら力を振り絞る。

自分にとっての『ヒーロー』を、このまま死なせるわけにはいかなかったから。



―――橙の予想外の出来事が起こったのは、その瞬間の事。



ド ン ッ !!


「っ!?」


部屋の中から突如空気を振動させるような大きな音が響いた。
橙が驚いてその方向を見れば、さっきまで気絶して縛られていたはずのチルノ達がひっくり返って壁にまで叩きつけられていた。
波紋の束縛糸も千切られている。


「イタタ………!!か、かなり強引な方法だったけど、何とか自由になれたわね…って、なにこの状況」

お尻を擦りながらヨロヨロと立ち上がったチルノは部屋の様子をグルリと見渡し、数秒の沈黙を置いて納得する。

(ははん…まさか橙もこの場に居たなんてね…
でも、何か『トラブル』があったみたいね。ジョセフの奴が倒れてるのはラッキーといったところかしら)

気絶していたはずの彼女が一体どうやって束縛から抜け出せたのだろうか?
橙は予期せぬ敵の復活に困惑しながらも、意識の無いジョセフの盾になるように前へ進み出た。


「チ…チルノちゃん…!?気絶していたはずなのに…っ」

「ん…?…あぁ、してたけど。
まぁ、そこで寝てる男を見習ってちょっとした『保険』をかけておいたの。勿論それを言うわけが無いけど」


わざわざ敵に手の内を明かすのは余程の⑨か自信家のやる事だが、今のチルノは冷静でいられた。
すなわちチルノがかけた保険とは、彼女があらかじめ腹に貼っておいた支給品『霊撃札』の存在である。

ジョセフを追ってこの家に侵入する前に、チルノは敵の『波紋の糸』を警戒し束縛から脱出できるように、この衝撃を生む札を服の中に隠しておいた。
そして意識を失う寸前、ほんの微弱な霊力を札に注入しておき時限式のように札の効果を発動させたのである。
その強烈な衝撃は彼女らを縛る波紋糸ごと千切って吹き飛ばし、同時にチルノを昏睡から目覚めさせる手段と成り得た。



「さて…お取り込み中悪いけども、貴方もそこの男と一緒に死んでもらう。
目が覚めたらこの思わぬ幸運、逃すわけにもいかないわ」


表情ひとつ変えずに橙の落とした機関銃を物柔らかに拾い上げ、弾薬を取り出して込める。
そして彼女は淡々粛々と橙たちに銃を向け、己に命じられた責務をこなす。


ジョースターの抹殺。黒猫の駆除はそのついでだ。


「それじゃあね」

「や、やめてチルノちゃん…ッ!」





「その辺でお引取り願えないか、おてんば妖精さん」



突如現われた新たなる乱入者の声に驚き、橙とチルノがその方向を振り返ると…
森近霖之助がチルノに慣れぬ睨みを利かせながら立っていた。



「…あら、貴方はあのボロ商店の主じゃない。貴方なんかがよく生きてられてるわね」

誰かと思えば争いも出来ないただの人妖。
恐れるに足らないとばかりに、チルノは鼻で笑う。



「それはコッチの台詞よ。アンタみたいなヒョロっちい妖精が銃持って、何様のつもりさ?」



霖之助の後ろから次に現われたのは悪戯好きの妖怪兎、因幡てゐ
彼女はいつもの調子で意地の悪そうな笑みを浮かばせながら霖之助の横に並ぶ。


「その武器…随分強そうだけどさ。私達にだって面白い支給品はあるんだよ。
『スタンド』って、何か知ってる?チルノ」

「……!」


スタンドの名前を聞いた瞬間、チルノの表情の色が僅かに変化する。
その変化を見逃さなかったてゐは、どんどんと『ゆさぶり』をかけていく。

「アンタに何があったか知らないけどさ~…
この人数相手に一人で挑む気ィ?そっちの眠り姫は未だにひっくり返ったまんまだし」

チルノはちらりと気絶したままのこいしを一瞥して、思案する。
確かに戦闘能力でいえば、橙も霖之助もてゐも大した事はない。
だが彼らの『支給品』によっては、話も全然変わってくる。

おまけに彼らは『スタンド』を知っていた。何か『奥の手』を持っているかもしれない。
更に言えば、チルノは先ほど支給品の『霊撃札』を使用していた。
大きな衝撃波を生み出すその札は、消費すれば使用者の『防御力』を著しく低下させてしまうというデメリットも存在しているのだ。
迂闊に戦闘に入れば、負傷は必須。確実に『不利』な状況である。





「…………チッ」


不機嫌な顔で軽く舌打ちをする。
冷静であるからこそ、今は『退く』べき状況だというのをチルノは理解できる。

(ジョースターの人間を倒し、DIO様の負担を減らせる絶好のチャンスだというのに…
でも、ここで返り討ちにあったらそれこそ笑い話。『最強』のあたいが…こんな序盤で倒れるわけにもいかない。
…退かざるを得ないか)


銃を三人に向けたまま後ずさりし、眠るこいしを(かなり苦戦しながら)担ぎ上げて出口へ向かう。
そのままチルノとこいしの姿は見えなくなり、いずれ空気が抜けたように三人はその場にへたり込む。


「…ふぅ~、何とか上手くいったようだね。
ナイスな『ハッタリ』だったよ、てゐ。流石と言うべきかな」

「なにが流石よッ!これでも心臓バックバクだったんだからね!
さっさとこんな場所からオサラバすりゃいいのに、アンタって男は「様子を見てくる」とか言っちゃって…
結局私までついて来るハメになっちゃったんじゃない!もう二度とやらないよっ!」

「ははは…いや、恐れ入ったよ。助かった。
君ならそこの男と良い『詐欺友達』になれるかもしれないね」


夫婦漫才さながら、ギャーギャー言うてゐを軽く受け流す霖之助。
しかし、彼らもあまり遊んでいる場合ではない。すぐそこに負傷した戦士が倒れているのだから。

すぐに真面目な顔に戻った霖之助は、幼き黒猫に向き直る。
彼女は再びジョセフの腕を引っ張りながら、苦痛に歪めた表情で霖之助とてゐに助けを求めてきた。


「お兄さん達…ジョセフお兄さんを、助けて……お願い…!お願いします…!」

「……すぐにベッドへ運ぼう。てゐも手伝って」

「…………………はぁ~い(なぁーんで私が…ブツブツ…)」




こうして、ジョセフ・ジョースターと悪の帝王の振り撒いた『3つの悪意』との壮絶なる戦いは閉じた。

しかし、それはまだまだ絶望の序幕に過ぎない。

こいしとチルノ。彼女らを救うことは出来なかったジョセフ。

だが、彼のすぐ傍には泣きながら助けを求めてきたか弱き子猫が、まだいる。

彼女の心だけは、何としても守ってやらねばならない。

次なる敵もまた、強大。

休息の暇無く、傷ついた波紋の戦士は新たなる戦場へと向かうだろう。

その場所には最強の妖獣『九尾』が、大気を震わせるほどの凶気を放ちながら静かに待ち伏せている。

橙と八雲藍が交わした誓いの時刻は、午前六時。

残る時間は、あと僅か。



戦士は立ち上がり、再び戦いの渦中に身を投じる…

―――『黄金の精神』は、砕けない―――


【E-4 人間の里 虹村億泰の家/早朝】

【ジョセフ・ジョースター@第2部 戦闘潮流】
[状態]:体力消費(大)、疲労(大)、胸部に銃弾貫通(ある程度は波紋で治療済み)
背中へ数発被弾、DIOとプッチと八雲藍に激しい怒り、気絶中
[装備]:アリスの魔法人形@東方妖々夢、金属バット@現実
[道具]:基本支給品 、毛糸玉@現地調達、綿@現地調達、植物油@現地調達
果物ナイフ@現地調達(人形に装備)、小麦粉@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
1:待ち合わせ場所『香霖堂』に乗り込んで八雲藍をブッ飛ばすッ!
2:こいし、チルノの心を救い出したい。そのためにDIOとプッチもブッ飛ばすッ!
3:気絶中…
[備考]
※参戦時期はカーズをヴェルガノ火山の火口にたたき落とした直後です。
※東方家から毛糸玉、綿、植物油、果物ナイフなど、様々な日用品を調達しました。
 この他にもまだ色々くすねているかもしれません。
※虹村家の一階は戦闘破壊の痕があります。また凍り付いて破壊された『アラン』の人形が落ちています。


【橙@東方妖々夢】
[状態]:精神疲労(大)、藍への恐怖と少しの反抗心、ジョセフへの依存心と罪悪感
[装備]:焼夷手榴弾×3@現実
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョセフを信頼してついていく
1:ジョセフお兄さん…助けて…
2:藍様を元の優しい主に戻したい。
[備考]
参戦時期は後続の書き手の方に任せます。
八雲藍に絶対的な恐怖を覚えていますが、何とかして優しかった頃の八雲藍に戻したいとも考えています。
第一回放送時に香霖堂で八雲藍と待ち合わせをしています。
ジョセフの波紋を魔法か妖術か何かと思っています。
ジョセフに対して信頼の心が芽生え始めています。



【チルノ@東方紅魔郷】
[状態]:胸部に裂傷、疲労(中)、霊力消費(中)、波紋攻撃による痺れ、防御力低下、肉の芽の支配
[装備]:霊撃札×1@東方心綺楼、9mm機関けん銃(残弾0)@現実
[道具]:基本支給品、予備弾倉(25発)×6
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様の敵を抹殺する。
1:あたいは最強。
2:ジョースターの血族は滅ぼす。
3:こいしと共に行動する。彼女はあたいが引っ張っていく。
[備考]
※参戦時期は未定です。
※肉の芽の支配により、冷酷さと知性を持っています。
※こいしに対してお姉さんのように振る舞っています。
 また、彼女の事はDIOの同じ部下としての『同志』だと認識しています。


【古明地こいし@東方地霊殿】
[状態]:肉体疲労(小)、精神疲労(中)、気絶中、DIOへの恐怖と僅かな興味、チルノへの競争意識
[装備]:三八式騎兵銃(2/5)@現実、ナランチャのナイフ@ジョジョ第5部(懐に隠し持っている)
[道具]:基本支給品、予備弾薬×25
[思考・状況]
基本行動方針:とりあえずチルノについていく。
1:少し嫌な感じになったチルノについていく。
2:飛んでいった神父様を探したい。
3:殺人に対する『タガ』が少しずつ外れていく。
4:地霊殿や命蓮寺のみんな、特にお姉ちゃんや聖に会いたい。
5:『天国』へ行けば、みんな幸せになれる…?
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降、命蓮寺の在家信者となった後です。
※チルノの煽りを受けて半ばヤケクソのようにジョセフと戦いましたが、彼の言葉には揺れています。
※チルノに対しては『負けたくない』という気持ちがあります。
※無意識を操る程度の能力は制限され弱体化しています。
気配を消すことは出来ますが、相手との距離が近付けば近付くほど勘付かれやすくなります。
また、あくまで「気配を消す」のみです。こいしの姿を視認することは可能です。



エンリコ・プッチ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:肉体疲労(中)、波紋攻撃による痺れ、ジョセフへの怒り
[装備]:射命丸文の葉団扇@東方風神録
[道具]:不明支給品(0~1確認済)、基本支給品、要石@東方緋想天(2/3)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に『天国』へ到達する。
1:ジョースターの血統とその仲間を必ず始末する。特にジョセフは許さない。
2:保身を優先するが、DIOの為ならば危険な橋を渡ることも厭わない。
3:古明地こいしを利用。今はDIOの意思を尊重し、可能な限り生かしておく。
4:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。
※主催者が時間に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。
※ジョセフの策により、E-4を飛び立って空の彼方へ吹き飛ばされてしまいました。
彼がどこまで飛んでいくかは後の書き手さんにお任せします。


【因幡てゐ@東方永夜抄】
[状態]:お腹いっぱゐ、自分の行動方針に不安
[装備]:閃光手榴弾×1@現実
[道具]:ジャンクスタンドDISCセット1、基本支給品、他(コンビニで手に入る物品少量)
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくない。どんな手を使ってでも生き残る。
1:保身を最優先。…だがこーりんの言葉が気に入らない。
2:とりあえずこーりんの言う通りにしてやるか。
3:早朝になったらコロッセオの真実の口の仕掛けを調べに行く。
4:鈴仙やお師匠様に姫様は…まぁ、これからどうするか考えよう。
[備考]
※参戦時期は少なくとも永夜抄終了後、制限の度合いは後の書き手さんにお任せします。
※霖之助の言葉に少しだけ心揺さぶる物を感じましたが、わりと不満を持っています。


【森近霖之助@東方香霖堂】
[状態]:健康、不安 、主催者へのほんの少しの反抗心
[装備]:なし
[道具]:スタンドDISC「サバイバー」@ジョジョ第6部、賽子×3@現実、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:自分が生き残れるとは思えないが、それでもやれることはやってみる。
1:自分に出来る事はなんだ…?
2:今は彼(ジョセフ)を助けたい。
3:てゐとは上手く協力関係を築きたい。
4:魔理沙、霊夢を捜す。
5:殺人をするつもりは無い。
[備考]
※参戦時期は後の書き手さんにお任せします。
※ジョセフの戦いを見て、彼に少しの『希望』を感じました。


<アリスの魔法人形(3/5)@東方妖々夢>
ジョセフ・ジョースターに支給。
ブロンドのロングヘアーと頭のリボンが特徴の、西洋の侍女のような全長20センチの西洋人形。
主の命令に従って魔法の力で空を飛び奉仕する、五体セットでの支給。
攻撃能力は持たないが、使い勝手がよく可愛げもある。
なおジョセフはこれらに『シャルル』『ピエール』『フランソワ』『アラン』『ペペ』と名付けているが
これは彼の好きな俳優の昔の役名からとっている。
現在は『シャルル』『ピエール』『フランソワ』だけが機能している。

<要石(2/3)@東方緋想天>
橙に支給。
元は比那名居天子の所有物であるしめ縄付きの岩。
本来は地震を抑え付けたり起こしたりする機能を持つが、本ロワでは制限されている。
この岩に飛び乗ると会場内のエリアにランダムで高速飛行するが、禁止エリアに向かうこともある。
使用回数は3回まで。

<焼夷手榴弾3/3@現実>
橙に支給。
赤く塗られたスプレー缶を模したような小型の投擲用兵器3つセット。
安全ピンを抜いて取り外し、対象に投げ付ける事でテルミット反応を用いて激しい燃焼を起こす。
衝撃を与えないよう、紙に入れて携帯すると良い。


<射命丸文の葉団扇@東方風神録>
エンリコ・プッチに支給。
鴉天狗の射命丸文が所持する扇。振ると風を起こす事が出来る。
現実の伝承では、天狗の中でも大天狗または力の強い天狗が持つとされる団扇大天狗の持ち物とされているらしい
扇が起こす風は、物を吹き飛ばすどころか物理的な衝撃波を生み出すほどである。
これを射命丸が操れば風力は更に上がるものと思われる。

<毛糸玉@現地調達>
ジョセフが東方家から調達してきた日用品シリーズ。
どこのご家庭でもお母さんの強い味方である裁縫道具。
手のひらサイズで結構重く、カラーは緑色。
これに油を染み込ませて波紋を流せば、波紋使いの武器にもなる。

<綿@現地調達>
ジョセフが東方家から調達してきた日用品シリーズ。
どこのご家庭にもあるような布団の中をほりだして大量に集めた物である。
ふわふわフカフカでウール100%。真冬の友。
そのせいかどうかは定かではないが、波紋伝導率は高い。水を含ませるとなお良し。

<植物油@現地調達>
ジョセフが東方家から調達してきた日用品シリーズ。
どこのご家庭にもあるような料理するうえで欠かせないもの。
これを撒いたり染み込ませたりする事で、波紋を流れやすく出来る。
カロリーを気にする女性にも優しいが、波紋使いにも優しい。

<果物ナイフ@現地調達>
ジョセフが東方家から調達してきた日用品シリーズ。
どこのご家庭にもあるような台所道具。
リンゴや桃、パイナップルもこれ一本で安心。
金属製なので波紋もよく通す。

<小麦粉@現地調達>
ジョセフが東方家から調達してきた日用品シリーズ。
どこのご家庭にもあるような料理するうえで欠かせないもの。
おかずに使用したり、お菓子作りに使用したり、用途は様々。
粉塵爆発に使うには量が全然足りない。

071:ハルトマンの幸福理論 投下順 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ
071:ハルトマンの幸福理論 時系列順 073:戦車おとこにひそむめ、境界むすめのみるゆめ
041:迷い猫オーバードライブ! ジョセフ・ジョースター 093:鳥獣人物戯文
041:迷い猫オーバードライブ! 093:鳥獣人物戯文
071:ハルトマンの幸福理論 エンリコ・プッチ 089:その血のさだめ
071:ハルトマンの幸福理論 古明地こいし 097:進むべき道
071:ハルトマンの幸福理論 ディオ・ブランドー 082:OOO-オーズ-
054:狐狸大戦争、そして チルノ 097:進むべき道
048:お宇佐さまの素い足 因幡てゐ 093:鳥獣人物戯文
042:森近霖之助の憂鬱 森近霖之助 093:鳥獣人物戯文

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2014年08月09日 15:06