その血のさだめ

静かだった。ここには4人もの種族を異にする者達が存在するのに、皆言葉を忘れたかのように、粛々と、黙々と、己が成すべきことに集中していた。
空は明るみ始めているが、鳥の鳴き声一つ聞こえない。聞こえるのはせいぜい、気絶している秦こころの寝息と、穴を掘り続ける音だけだった。
そしてその静寂を終わらせたのは、先程から独鈷を使って穴を掘り続けていた聖白蓮だった。

「このぐらいでよろしいでしょうか……?」

その目線の先には、成人男性が一人入れる程度の大きさの穴があった。

「うん、いいと思うよ。じゃあ入れようか……ほら、リサリサもぼさっとしてないで手伝って」

「……ええ」

洩矢諏訪子に促され、俯き黙ったままだったリサリサも、一人の男の死体に目を向けた。
その男こそ現状の静寂の理由。
男の名はロバート・E・O・スピードワゴン。柱の男エシディシに対し、その命をかけ戦い、そして散った、勇気ある人間だった。
そして白蓮にとっても、リサリサにとっても、大恩あるかけがえのない人間だった。
故に彼女らは戦闘が終わるとすぐ、スピードワゴンを埋葬するため墓を作り始めた。
もちろんエシディシのことを忘れているわけではない。時間的に夜明けが近く、手負いの上太陽を嫌う闇の一族であるエシディシならば、
近隣の建築物に潜伏するであろうと予測し、急がずともまずやるべきことをやった方がいいと判断したからである。

「よーし、じゃあ降ろすよ、せーの」

そうして、二人がかりでスピードワゴンの死体を運び、そっと穴へと入れた。
浮かべている最期の表情は、どことなく満足気だ。

「スピードワゴンさん……さようなら、そしてすみません……私が至らないばかりに、こうなってしまった責任、
 あなたの最期の言葉に応えることで、果たさせて頂きます。どうか何も心配なさらずに、安らかに眠って下さい……」

後悔と覚悟の入り混じった複雑な表情で、白蓮はスピードワゴンに別れの言葉をかける。
リサリサも同様に言葉をかけようとするが、冷静を保てなくなりそうで、声に出すことが出来なかった。

(スピードワゴンさん……あなたには数えきれぬほどお世話になったというのに、何の御恩も返せずこうなってしまい、
 すみません……それでも、あなたがそうしてくれたように、ジョースター家は、ジョセフは、私が必ず守っていきます。
 そして吸血鬼も柱の闇の一族も必ず滅ぼします。だからどうか、安らかに……)

二人はスピードワゴンに別れを済ませ、また無言で土をかけていった。
埋葬が完了すると、白蓮が墓石代わりの大きな石と、近くから積んできた花を供え、簡素だが墓が完成した。
そして完成と共に、諏訪子は二人に声をかける。


「さて、終わったね。まあ、部外者の私が言うのも何だけど、あんた達にこれほど悲しんでもらえた程の男だ、
 ここであんた達がめそめそしていることを是とはしないはずさ、だから――」

「分かっているわ、情報交換、これからの行動指針、考えなければならないことは山ほどある。
 ここで留まる時間はない」

リサリサは諏訪子の言葉を遮り、自分の感情を隠すため、冷静を装った。

「分かっているならいいけど、無理しちゃ駄目だよ?いっそ泣きたいときは泣けばいい、叫びたいときは叫べばいい。
 溜め込むと空気を入れすぎた風船みたいに弾けちゃうよ。こんな状況ならなおさら、ね。
 泣いても聞かなかったことにしてあげるから」

「必要ないわ、それより情報交換を始めましょう」

はぁぁぁ~と諏訪子は深い溜息を吐き、しぶしぶリサリサに従った。

(ほんとにこの娘は……生きづらい娘だねぇ……ここまで頑なだとどうしたもんか)

考えても妙案は浮かばない。それでもどうにかしてこの娘の心を解さなきゃ、厄介なことが起こりそうだなぁと思いながら、
諏訪子は情報交換に意識を戻した。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


朝日が少しづつ顔を見せ始める頃、会場の上空を飛ぶ、未確認飛行物体があった。

「457、461、463、467、479、487、491……クソッいつまでこの忌々しい石は飛び続けるのだッ!
 ッッ!喋ると呼吸がッ!」

神父姿の男が注連縄の巻かれた石に乗り、喚き散らしながら高速飛行している。誰が聞いても下手な冗談にしか聞こえない光景がそこにはあった。
その空飛ぶ不思議な神父の名はエンリコ・プッチ。ジョースター家の異端児、ジョセフ・ジョースターを始末すべく戦いを挑み、
その奇策に嵌ってこうなってしまっていた。
彼は今も、どこに向かうかも知れない要石にしがみつき、素数を数えて落ち着こうとしている。
と言っても、周囲の様子は夜と朝が交わり、薄くなり始めた星の煌めきと日光の煌めきが高速で行き交うので、
目に騒々しくとても落ち着いていられるものではないのだが。

(499、503、509……落ち着け……何も変わりはしない。私がジョースター共を始末することも、DIOと共に天国へ至ることも!
 所詮ジョースターも、私とDIO以外の全ての参加者も、我々を天国へと押し上げる為のただの『発射台』に過ぎんッ!!
 殺す順序が変わっただけのことだ!
 ……石が向かう方角は南西、私が元いたエリアはE-4だから、おそらくA-6、A-5、辺りに向かっているはずだ……
 そこからまた始めればいいだけのこと……)

そうしてプッチの思考がまとまり始めたその時、要石は徐々に失速していき、少しづつ高度を下げていった。

「ようやく終点か……クソ、この石は忌々しいが利用価値はある。持っていっておくか……」

地上に降り立ったプッチは、まず要石を悪態をつきながら回収し、辺りを見渡した。
周りに見えるのは草や木ばかりの平原、地図と照らし合わせてみても、先ほどの推測は間違っていなかったと確信した。

(さて、ここからどこへ向かうか……近隣にある興味を引くものといえばB-4エリアの『DIOの館』
 おそらくエジプトにあった筈の彼の館だろう。となれば彼の部下や利用できるものが集まっているかもしれない、
 行く価値はある。とりあえず周囲を少し探って、放送の後向かってみるか……)

行動指針を決めたプッチは、周囲に気を配りながら北東へと歩き始めた。
しかし先程の戦闘の疲れからか、その足取りは重い。
どんなに大きな精神力を持っていようと、プッチが39歳という衰えを感じ始める年齢であることは事実なのだ。

「クソッ!ジョセフ・ジョースターめッ……!もとよりジョースター家を誰一人として生かす気はないが、
 貴様は空条徐倫や承太郎同様、決定的な敗北を与えた上で始末してやる!
 そうだ、これも試練の一つ、この次の勝利をより強固にするための試練に過ぎない……!」

気分は落ち着いたが、未だ熾火のようにくすぶり続ける怒りを抱え、プッチは歩く。
しばらく歩くと、草が燃えるような匂いが風に乗って香ってきた。
近くで戦闘が行われたのだと推測される。

(戦闘、か……となれば参加者がいるはずだが、接触すべきか。例え殺し合いに乗っている危険人物だろうと、
 利用の仕様はある。行くべきか……)

プッチは行き先を判断するため思考しようとしたが、それと同時に放送が始まる音が聞こえ出したので、
一旦思考を止め、メモの用意をしながら放送に耳を傾けた。

(くっ、よりにもよってDIOの館があるB-4が禁止エリアになるとはな……
 まあいい、順調に18人も死んでくれているのだからな……
 しかもスピードワゴンにウィル・A・ツェペリ。
 邪魔なSPW財団の創設者と、確かジョナサンの波紋の師だったか、も消えてくれたしな。
 DIOの部下と聞いているタルカスブラフォードズィー・ズィーの死もまあ許容範囲内だ、
 最終的に天国に至るのはDIOとこの私だけなのだから……)

思考をまとめたプッチは再び歩き出す。B-4エリアが禁止エリアになった以上、
近くにいる参加者たちに接触する他無いからだ。
プッチは警戒されないよう、風が吹く先へと少しづつ近づいていった。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


――以上、18名だ。

放送、死亡者の読み上げ、それらが終わった時、情報交換をしていた三人はあまりの衝撃に言葉を失った。
エシディシが居ると思われるB-4エリアが禁止エリアになったことも、深く考えられない。
情報交換のついでに波紋で白蓮とこころの治療をしていたリサリサの手も止まる。
リサリサも白蓮も蒼白な表情で瞬きも息もせず止まり、諏訪子は目を深く閉じ歯ぎしりをする。

白蓮は、ナズーリン二ッ岩マミゾウ幽谷響子、そして自分もよく知る幻想郷の人々やそれ以外合わせて18人の死に。

(救えなかったッ!!ナズーリン、響子、マミゾウ!それに18人もの命をッ!)

リサリサは、シーザ・アントニオ・ツェペリ、愛する弟子の二度目の死に。

(シー……ザー……私は、あなたを……)

諏訪子は、宴会で何度も酒を酌み交わした、幻想郷の死にそうにもない人妖の死に。

(神のくせに、何も出来やしないのか……!こんな場所じゃ早苗も、神奈子も!)

それぞれ慟哭した。
何度目になるかわからない沈黙が、彼女達に訪れる。


そして数分の時が経った。
おもむろに白蓮が立ち上がる。

「……行動しましょう、私達はまだ生きている。託されたんです、思いを!
 目をそらしてはいけない、生きている者が目をそらせば死んでいった者達の死は、思いは、
 そして生きた証は、失われてしまう!私達の命は既に、私達だけの命ではないのです!!」

白蓮は叫ぶ、誰でもなく自分に言い聞かせるため、みんながいてみんなが笑った、二度と戻れぬ楽園への悲しみを吹っ切るために。

そしてその思いに呼応するように、諏訪子は立ち上がる。

「そう、だよね……ごめんね、二人みたいに凄く近しい人が死んだわけでもないのに、神様のくせに動揺しちゃって……
 こういう時は"あきらめたらそこで試合終了だよ"とか言って励ましてあげなきゃいけないのに。
 ありがとう白蓮、あんたのお陰で持ち直せた。」

立ち上がった諏訪子の目にはいつもの不敵さが戻り、前を見据えていた。
そしてリサリサの方へと向き直り、語りかける。

「リサリサ……あんたはどうだい?あんたも声にこそ出さなかったが、きっと墓前で誓っただろう。
 誓いも、後悔も、愛も、前を向くためにある。なのに前を向けなければ、生きている甲斐がないじゃないか……
 悲しくたって悔しくたって、立ち上がり、立ち向かわなきゃ人は生きてて生き損、死んで死に損さ」

諏訪子はゆっくりと含み聞かせるように語った。
そしてリサリサに手を差し出す。
だがリサリサは、

「分かっているッ!私には果たすべき目的がある。そして弟子にもあった。
 きっと弟子も……シーザーも己の使命に殉じて散ったはず。
 だから私が立ち止まる訳にはいかない!」

差し出された手を、振り払った。

「リサリサ……あんた……」

傍から見ても、今のリサリサは不安定だった。使命という名の仮面にヒビが入り、剥げ落ちかけている。
そしてそんな時である。平原の向こうから、一人の男がこちらにゆっくりと歩いてきた。

「皆さん、ここはひとまず落ち着いて、近づいてくる方を見極めましょう。
 お話が出来る方ならいいのですが……」

険悪な雰囲気を断ち切り、白蓮が指示を出す。そうして男――エンリコ・プッチが近づいてきた。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


プッチと白蓮たちの邂逅は、結果から言えば、お互い敵意もなかったので、特に争いが起きることもなく自己紹介が済み、情報交換となった。
プッチは彼女らに近づく際、墓が建ててあるのを確認し、こんな状況で墓を作ることに時間や労力を割いていたところから、
利用できそうなお人好し達と判断したし、白蓮たちもプッチの柔和な表の顔から、一見しただけでは本性を見抜けなかったのだ。
故に話は落ち着いた方向へと向かいつつあった。
リサリサは目を閉じ押し黙ったままだし、こころも気を失っているままだが。

「そうか、君が聖白蓮か、こいし――古明地こいしから話は聞いているよ、人間と人外の融和を説く素晴らしい人間だと」

プッチは聖の名前を聞き、こいしから聞いていた情報を思い出したので、それを元に会話する。

「古明地……こいし……ああ、最近私の寺にお話を聞きに来てくれていた覚り妖怪の娘ですね。
 彼女と会ったのですか?」

プッチはこいしから聞いていた情報と若干の齟齬を感じたが、これも主催者が時間に干渉しているのだと判断した。

「ああ、彼女はこの会場で初めて出会った参加者だ。しばらく行動を共にしていたのだが、
 厄介なトラブルに巻き込まれ、離れ離れになってしまった。
 出来るならば早く再合流して保護してあげたいのだが……」

プッチは真実と嘘とを混ぜ、より相手から信頼を得られるように話した。
もちろんこいしの優先順位は低い。せいぜい自分とDIOの敵を減らしてくれていればいいな、程度のものだ。

「そうですか、確かに彼女は無意識を操る程度の能力を持っていましたが、どことなく危うげな雰囲気もありました。
 彼女もあなたのような方がいなければ辛いはず、一刻も早く合流しましょう!」

「ああ、だがその前に、ここで何があったのか、聞かせてもらえないだろうか。
 墓がある以上戦闘があったはずだから、危険人物の情報などは共有したほうがいいしな。
 もし話し辛い内容なら、掻い摘んだ話でもいい」

「……はい」

そこで諏訪子が話に割って入ってきた。

「ちょっと待った、その話は当事者である白蓮が話すのは辛いだろうから、私が話すよ。
 大体の顛末は聞いているから」

そう言うと、諏訪子はプッチに先程の戦闘の話を始めた。
エシディシとの戦いの顛末、そして墓に眠る死者はスピードワゴンであることを。


「成る程、そんな戦いがあったとは……白蓮、君には酷なことを聞いた、許してくれ」

「いえ、これもひとえに私の修行不足故……」

表向き白蓮を気遣うような事を言うプッチであったが、内心、全く別の思考をめぐらしていた。


(そうか……柱の男。吸血鬼をも上回るパワーというのは本当の話のようだな……
 まあ世界を支配する能力『ザ・ワールド』を持つDIOの前には敵ではないだろう。
 それとスピードワゴンはここで死んでいたのか、どうでもいいことだが……)

そして思考の最中、今度は白蓮の方からプッチに質問が飛んできた。

「そう言えば、先程プッチさんもトラブルに巻き込まれたと仰っていましたが、
 やはり、戦いに乗ってしまった方に襲われてしまったのですか?」

「ん、ああ……」

プッチは質問の答えをどうすべきか一瞬考えた。
まさか真実である、自分がジョセフ・ジョースターを襲った結果こうなったなどとはとても言えないので、
答えを熟考した結果、先に彼女たちがジョセフ・ジョースターを知っているか聞くことにした。
知っていれば、彼と出会い偶然開かれた彼の支給品でこうなってしまったなどどうとでも言えるし、
知らなければ、ジョセフの悪評をばら撒き間接的に追い詰められると思ったからだ。

「君達は、ジョセフ・ジョースターという男を知っているかい?」

そうプッチが言った時、リサリサから何の話も聞かされていない白蓮と諏訪子は、
首を傾げたり、いえ、ジョナサン・ジョースターという方なら聞いているのですが、などと反応したが、
リサリサだけは閉じていた目をカッと開き、プッチを睨んだ。
だが、プッチはリサリサを視界に入れていなかったので、その反応を確認することが出来なかった。
それが、プッチの不運だった。
全員ジョセフのことを知らないと勘違いしたプッチは、ジョセフに関するありもしない話を始めてしまった。


「そうか、知らないか……なら教えておこう、彼は……いや奴は危険人物だ。
 街中で突如襲われて戦いになったが、卑怯な搦手ばかり使ってきて、私も間一髪だった。
 なんとか動きを止めたところで戦闘不能にしようとしたのだが、奴の支給品によってグォバッッ!!」

プッツン。白蓮と諏訪子は、何かが切れる音を聞いた。
そしてその音を聞くと同時に、プッチはリサリサに殴り飛ばされていた。
白蓮と諏訪子は呆気にとられる。
しかし一発では終わらない、リサリサは一瞬にしてプッチへの距離を詰め、波紋疾走の連打を始めた。
止まらない、連打は止まらない。
だがリサリサは終始無言のままだ。
内心に渦巻く感情の暴走が、波紋にも伝わり凶暴に暴れる。

(コイツは今なんて言った?ジョセフがそんなことをするわけがない!それに戦闘不能だと?
 私は何もかも奪われた。国も、名前も、家族も、愛する弟子も二度ッ!!
 この男はそんな私から最愛の息子を奪おうとしたのか?
 何の役にも立たない神の言葉を借りただけの一介の神父風情が?一体何の権限で?
 あの子は決してそのような仕打ちにあっていい子ではない!!
 この男は嘘をついている。許せない、許せない!!)

目の前で恩人の死を目の当たりにした。弟子の二度目の死も死に目に合うことすら出来なかった。
そんな時間差のない相次ぐ悲しみにより、プッチの嘘を引き金としてついにリサリサの感情は爆発した。
その手のつけようのない激しい怒りは、まるで髪型をバカにされた東方仗助のようであったが、
それもそのはず、血縁上リサリサは仗助の祖母に当たるのだから。
それにかつてジョージ・ジョースターⅡ世が吸血鬼により殺された際、
リサリサは単身軍に乗り込みその吸血鬼を始末するという早まった行動をしたことがある。
リサリサは決して冷血なわけでもなく常に冷静なわけでもないのだ。
本当は、重すぎる使命の為、自分を殺してそうであろうとしているだけの、愛情深い女なのだ。


だが突如理由も分からず殴られたプッチは溜まったものではない。

(ガバッ!これは『波紋』!こ……この女……ジョセフの知り合いか!?しかもジョセフよりも波紋が強いッ!!
 くそ体が動かせん……!素数……11、13、じゅ……クソッ!素数も数えられなくなっ……
 やっ、やめろ……やめろォオオオオ!ここで私が死ぬわけにはいかないのだーーーーッ!
 DIOッ!天国ッ!ぐあああ!薄っぺらい感情で動く女如きにィイイイイ!!)

そこでプッチは気を失った。
それでもリサリサの拳は止まらない。
呆気にとられていた二人もようやく事態の重さに気づき、急いで二人がかりでリサリサを止めにかかった。
線の細い見た目をしているというのに、二人は全力で止めなければリサリサを抑えられなかった。

「当て身!」

そして何とか白蓮がリサリサの気を失わせることに成功し、事態はようやく収拾した。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


しばらく白蓮と諏訪子は呆然としていたが、こうしている場合ではないと思い、
二人でこれからのことを話し始めた。

「とにかく、なんでリサリサがこんなことをしたのか分からないけど、
 その神父さんと相性が悪いのは確かなようだ。
 一緒に居たらマズイから、二手に分かれるしか無いね……」

「そう、ですね……組み分けはどうしましょう?少なくともリサリサさんとプッチさんは別々でしょうが」

「そうだね、最初にリサリサに会ったのは私だし、これも何かの縁。私がリサリサの面倒を見るよ。
 白蓮にはその神父さんと妖怪のお嬢ちゃんを任せちゃってもいいかい?」

「はい、お引き受けさせていただきます」

「ありがとね。じゃあ私達は、B-4が禁止エリアになっちゃったし、その付近にある『紅魔館』を目指してみるよ。
 守矢神社に行きたいところだけど、リサリサが目を覚ましたらあのエシディシとか言う男を放っておけないって言うだろうしね」

そう言いながら、諏訪子は地面に蓮の葉を生み出し、それにリサリサを載せた。

「あんた達は動けないのが二人もいるから、そいつらが目を覚ましてから動けばいい。
 どこか行く宛はあるのかい?」

「ええ……とりあえず『命蓮寺』を目指してみます。
 まだ生きている弟子も集まっているかもしれませんし……」

「そっか……じゃあ私達は行くね。……そう言えば最後に一つだけ。
 あんたのその甘さが嫌いじゃないから教えておくけど、その神父さんは絶対に信用しちゃ駄目だよ……
 私は見た、リサリサに殴られ、気を失う瞬間のそいつの憎悪と憤怒に塗れた顔を……
 そいつは表向き聖職者を装っているみたいだけど、内側にドス黒い何かを抱えている……
 気をつけな……」

諏訪子は深刻そうな暗い表情をして、白蓮に教える。

「……はい、心得ました」

「うん。あとこれあげる、ほいっ」

そして表情を一転、今度は軽い人懐っこそうな笑みを浮かべ、白蓮に何かを投げ渡した。

「っと、これは……」

諏訪子から白蓮に投げ渡されたものは、紐のような道具だった。

「それはフェムトなんちゃらとか言う注連縄みたいな特別な組紐らしい。
 もの凄く丈夫なものみたいだし、そいつで縛れば殺生の嫌いなあんたでも危険なやつを行動不能にできる。
 私に支給されてたものだけど、あげるよ」

「……ありがとうございますっ!」

そう言い白蓮はまるでお手本のようなお辞儀をピシっと決めた。
された側の諏訪子も驚くような勢いを乗せて。

「おおっ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。欲を言うなら、今ので私を信仰してくれてもいいんだよ。
 なに、別に宗派を変えろってんじゃない、こいつとなら一緒に酒が飲めるって程度の信頼も、信仰の一つさ。
 しっかしあんたほんとこういう場所には向かないやつだねぇ……」

「はい、私は仏も信じていますが、諏訪子さんのことも信じています。どうかお達者で……」

「それじゃ、またね」

こうして、諏訪子はリサリサを連れ、白蓮たちの元から離れていった。
ちなみにリサリサは蓮の葉の上に載せたまま、地面を泥のように軟化させて、蓮の葉を流すようにして移動させていた。


これで、第一回放送後の白蓮たちの騒動は、ひとまず幕を閉じた。
しかし、殺し合いは終わらない。
未だ目を覚まさないこころ、プッチを抱え、聖白蓮のバトルロワイヤルは、まだ続く。


【A-4 草原(A-5との境目付近)/朝】

【聖白蓮@東方星蓮船】
[状態]:疲労(小)、体力消耗(小)、魔力消費(小)、両手及び胴体複数箇所に火傷(波紋により回復中)、右足に火傷(波紋により回復中)
[装備]:独鈷(11/12)@東方 その他(東方心綺楼)
[道具]:基本支給品、不明支給品0~1個@現実、フェムトファイバーの組紐(2/2)@東方儚月抄、
     『宝塔(スピードワゴンの近くに落ちていたものを回収)』
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを止める。
1:プッチとこころが目を覚ましたら、命蓮寺へ。
2:プッチを警戒。
3:殺し合いには乗らない。乗っているものがいたら力づくでも止め、乗っていない弱者なら種族を問わず保護する。
4:弟子たちを探す。ナズーリン……響子……マミゾウ……!!
5:今はこころを信用する。
[備考]
※参戦時期は東方心綺楼秦こころストーリー「ファタモルガーナの悲劇」で、霊夢と神子と協力して秦こころを退治しようとした辺りです。
※魔神経巻がないので技の詠唱に時間がかかります。
簡単な魔法(一時的な加速、独鈷から光の剣を出す等)程度ならすぐに出来ます。その他能力制限は、後の書き手さんにお任せします。
※DIO、エシディシを危険人物と認識しました。
※リサリサ、洩矢諏訪子、プッチと情報交換をしました。プッチが話した情報は、事実以外の可能性もあります。

【秦こころ@東方 その他(東方心綺楼)】
[状態]疲労(中)、体力消耗(中)、霊力消費(中)、内臓損傷(波紋により回復中)
[装備]様々な仮面、石仮面@ジョジョ第一部
[道具]基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない
1:気絶中
[備考]
※少なくとも東方心綺楼本編終了後から
※周りに浮かんでいる仮面は支給品ではありません
※石仮面を研究したことでその力をある程度引き出すことが出来るようになりました。
力を引き出すことで身体能力及び霊力が普段より上昇しますが、同時に凶暴性が増し体力の消耗も早まります。


【エンリコ・プッチ@第6部 ストーンオーシャン】
[状態]:肉体疲労(中)、波紋攻撃による痺れ(大)、全身打撲、ジョセフへの怒り、リサリサへの怒り
[装備]:射命丸文の葉団扇@東方風神録
[道具]:不明支給品(0~1確認済)、基本支給品、要石@東方緋想天(2/3)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に『天国』へ到達する。
1:気絶中。
2:薄っぺらい感情で動く女如きにィイイイイ!
3:ジョースターの血統とその仲間を必ず始末する。特にジョセフは許さない。
4:保身を優先するが、DIOの為ならば危険な橋を渡ることも厭わない。
5:古明地こいしを利用。今はDIOの意思を尊重し、可能な限り生かしておく。
6:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴及び地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。
※主催者が時間に干渉する能力を持っている可能性があると推測しています。

【A-4 草原(A-3との境目付近)/朝】

【リサリサ@ジョジョの奇妙な冒険 第2部「戦闘潮流」】
[状態]:健康、動揺、混乱、怒り、気絶中
[装備]:タバコ、アメリカンクラッカー@ジョジョ第2部
[道具]:不明支給品(現実)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と主催者を打倒する。
1:気絶中
2:スピードワゴンさん、シーザー!
3:ジョセフ……
[備考]
※参戦時期はサンモリッツ廃ホテルの突入後、瓦礫の下から流れるシーザーの血を確認する直前です。
※煙草は支給品ではなく、元から衣服に入っていたためにそのまま持ち込まれたものです。
※目の前で死んだ男性が『ロバート・E・O・スピードワゴン』本人であると確信しています。
 彼が若返っていること、エシディシが蘇っていることに疑問を抱いています。
※聖白蓮、プッチと情報交換をしました。プッチが話した情報は、事実以外の可能性もあります。

【洩矢諏訪子@東方風神録】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品×1(確認済み、@現実)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:荒木と太田に祟りを。
1:リサリサを連れて、紅魔館を目指す。
2:リサリサが起きたら、詳しい事情をちゃんと話させる。
3:守矢神社へ向かいたいが、今は保留とする。
4:神奈子、早苗をはじめとした知り合いとの合流。この状況ならいくらあの二人でも危ないかもしれない……。
5:信仰と戦力集めのついでに、リサリサのことは気にかけてやる。
6:プッチを警戒。
[備考]
※参戦時期は少なくとも非想天則以降。
※制限についてはお任せしますが、少なくとも長時間の間地中に隠れ潜むようなことはできないようです
※聖白蓮、プッチと情報交換をしました。プッチが話した情報は、事実以外の可能性もあります。


◯支給品説明

『フェムトファイバーの組紐』
洩矢諏訪子に支給。
月の超科学によって作り出された、太古の昔から神を縛るためにも使われてきたもの。
細かい理論なども存在するが、要するにとても丈夫な組紐。
人一人縛れる程度の長さのものが、二つ支給されている。

088:Dirty Deeds Done by Dirty Hands 投下順 090:金色乱れし修羅となりて
088:Dirty Deeds Done by Dirty Hands 時系列順 090:金色乱れし修羅となりて
057:黒い夜に紅く ~Battle Tendency 洩矢諏訪子 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
057:黒い夜に紅く ~Battle Tendency リサリサ 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
057:黒い夜に紅く ~Battle Tendency 聖白蓮 129:人界の悲
057:黒い夜に紅く ~Battle Tendency 秦こころ 129:人界の悲
072:Trickster ーゲームの達人ー エンリコ・プッチ 129:人界の悲

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最終更新:2016年01月05日 05:03