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裕美「愛ってなんだろう」

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orisuta

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  『恋文日和 その⑦』 からの続き  





ある朝、店の仕入れを行っていたらある届き物があった。
こんな日に届け物…先日注文した花の種か?もしくは苗木か?
何がともあれ、結構待ちに待った品物だ。おっと、ソレは売れないね……ソレは俺の趣味の為に取り寄せたんだ、余程予想外な事がなければ手放す事もないだろう!

だが、来たのは「予想外」の箱のサイズ。
そして中身は……あの「白鷺かふら」とデブの男の抱き合っている等身大チョコであった。


……なんぞコレ。


既に配達員は何処かへと消えていった。あの身のこなしの早さは白鷺かふら直属の者だろうか?
最早そんな余計な事も考えられないほど、俺の頭の中はめちゃくちゃだった。
 
 
 


 
 
そりゃそうだ。こんな物騒なモノを持ってくる────もしかしたら此処に来る可能性があるだろう。
住所はもう知られている……ヤバい。何されるかたまったもんじゃない!

俺は急いで身支度を済ませ、この街から離れようとしたその時、携帯が鳴った。
知らないアドレス。だが俺は直感的に悟ってしまったのだ。

「こんな」タイミングで来るということは…このアドレスは……ッ!
一度は拒否しようと電源ボタンを押そうとしたが、あのドス黒い愛が止まらないことは知っていたし、止める術も無いことは当然の事であった為、仕方なく出る事にした。

頼む…どっかの電話会社でもネット会社でも繋がっていてくれ!

という俺の悲痛な叫びは直ぐに掻き消えた。


かふら「もし…葉月 裕美様でありますか?」


「ヒエッ…」

俺の返答一言目は何とも情けない悲鳴であった。
 
 
 


 
 
かふら「…あら? そんな声を出して大丈夫なのでしょうか?」
「私、今朝貴方の元へチョコをお渡ししたのですが…どうやら事故があったようで………」


なんと。アレは事故であったのか…あのデブと付き合っていたわけじゃないのか…
漸く婿争いから解き放たれたと思っていたのに悉く潰しやがる……クソ、ついてねえ!


かふら「なので、お詫びをしようと貴方の元へ向かっているのです」


その瞬間、俺は携帯を切って鞄を背負って駆け出した。
アイツの事だ、この電話をするということはもうここから近い!


「う、うおおおおおおお………っ!」
「あ、アイリッシュ・オクトーバー! あのビルまで蔦を伸ばせ!」


挙句の果てにはスタンドまで出す始末。どれだけビビってんだ俺。
と言われようとも、奴の底知れぬ愛から逃げ出すしかこういう方法でしか……!


「フゥ……ここまで来れば、奴も見つかr」


かふら「やはり、貴方なら此処に来ると思ってましたわ!」


「ファ!?」


ビルのてっぺんに着いた先にはあのデブのいない本来(?)のチョコを真横に置いた白鷺かふらがそこにいた。


かふら「私が愛している殿方様が何処に行くのか把握出来ないワケがないでしょう?」
「大丈夫ですわ。私、貴方への愛は何時でもボルテージマックスですわ!」


最早ぐうの音も出ない。蛙が蛇に睨まれた時とはこんな気持ちなのだろうか?
何時の間にか、周りにはありがちな黒服共が囲んでいて、抜け出せることもできない……俺は諦めた。
 
 
 


 
 
「………で、チョコだな?」
「あのチョコと交換するだけで何も俺にはしないよな?」


かふら「はい……とは言いたいのですが、折角此処まで出向いたんですから…」
「貴方様がコーディネートして下さった花を頂けたら嬉しいのですが……」


こ、このアマ! 何て事抜かしやがる…!
花、花か!? ンなモン、白鷺の家に沢山あるだろうが…!
………と言おうとしたが、流石に暴走させてしまったら明日俺が生きてるかどうか分かりやしない。
さて、どうしたものか…。……思いついた!あの「花」をあげてみようか!


「……OK、OK」
「最近仕入れた花があるんだ、そいつで良ければ…」


かふら「まあ!本当に下さるなんて、裕美様、流石私の婿候補ですわ!」


何とも言い難いプレッシャー。おい、そんな哀れみの視線を此方に向けるなよ黒服共!

…そして俺は、連行という形で自分の家に戻ったのだった。
 
 
 


 
 
「────さて」


幾ら相手が天敵とはいえ、花をコーディネートしないのは俺の職人魂が黙っちゃいない。
奴ならどんな花でも変な風に捉えてまたややこしくなりそうだが……(というか花言葉も知っているんじゃあないのか?)


「そうか、そういえばあの花があったな…」


以前遭遇したスタンドから得た「花」があったな…あのようなスタンド花なら花言葉も無いし、奴の気持ちを落ち着かせるに充分すぎる。これならばまだマシだと…思うが…。


「────ハイよ、これで良いかい?」



かふら「ありがとうございますわ、裕美様のコーディネート…ふわぁ」
「嗚呼、良い匂い…くふ、くふふふふふ!」

コイツ、いきなり花に顔を突っ込んでやがる!?
貰って感謝の言葉を述べてとっとと立ち去ってくれ……これじゃあ俺の胃が持たん!
 
 
 


 
 
「そ、そうか…喜んでくれてありがたいがな…」
「そろそろ他の男の方に行った方が良いんじゃないか?」
「俺ももう店じまいしたいし…どうなんだよ?」


ええい、早く行ってくれないだろうか…もう俺の腹がキリキリ鳴っているんだ!
そう色々な感情が頭の中で過っていたら、満足したのか白鷺かふらが顔を此方に向けていた。それも恍惚な表情で。


かふら「私、貴方の為に花言葉を勉強してきた筈ですが…裕美様は敢えて私の知らない花をコーディネートすることで、試しているのですね!」
「いいですわ! その積極的な態度、私の婿として相応しい…もし婿になれなくても直属の庭師になってもらいたいくらいですわね」

マズイ…ッ!明らかに逆方向になってやがる!


かふら「私が受けのスタイルもなかなか…」


何だか嫌な予感しかしない。不穏な言葉を何とか聞き流して早く追い出さなければ!


「お、お取り込み中悪いッスけどねー…もうそろ店じまいなんでね、早く行きな!」


かふら「あら、もう追い出すのですか? ……裕美様のいけずです、クフフ…」
 
 
 


 
 
かふら「本当は一泊したい気分で仕方ないのですが、そんな事は後でも出来ますし…仕方ありませんわね……」


凄く残念そうな目でこちらを見るんじゃない。俺はもう泣きたい気分だ…!
そしたら私の代わりに、と自分自身と等身大のフィギュアを奴は俺の隣に置いた。


かふら「フフフ、それは私の等身大フィギュア」
「服も着せ替え出来ますし、髪、黒子、爪の長さ、ちょっと恥ずかしい部分…「全て」においてトレースしてありますのよ!」
「では私はこれにて…他の殿方にも差し上げなければ!」



そう言って黒服達と一緒に店から消えた…まるで嵐のような奴等だった。
因みにフィギュアについて、少し調べてみたが(決して容姿とかに唆られたわけでは無い事を信じて欲しい)、皮膚や髪の毛も…ほぼ人間と同じ素材だった。
強いて言うなら「魂」が入っているかいないかくらいのクオリティで作られていた。


「愛」って何だろうな……もう考えたくも無いので、ここで日記を辞めて寝ることにする。
夢にも出て来そうなので、後5日間は寝不足を強いられる結末となった。
 
 
 
 
──終──


出演トーナメントキャラ


No.6728
【スタンド名】 アイリッシュ・オクトーバー
【本体】 葉月 裕美(ハヅキ ヒロミ)
【能力】 触れた場所から植物を生やす

No.6754
【スタンド名】 ティン・エンジェル
【本体】 白鷺 かふら(シラサギ カフラ)
【能力】 接触する二つのモノを徐々に癒着させる









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