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第四章『繋がりの世界』その②

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orisuta

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模がアッコと商店街へ行った翌日の放課後、模と五代は紅葉の家に向かっていた。

紅葉は先日のナナとの戦いで体力を消耗し、二日続けて学校を休んでいたのだ。



五代「……だからって見舞いに行くことねえだろ模。」

模「えー、なんでさ。友達じゃないか。」

模は手にリンゴの入ったビニール袋をさげていた。

五代「いや……『仲間』なのはかまわねーが、『友達』にまでなる必要はねえだろ。」

模「冷たい人だなあ、仲間も友達も一緒じゃないか。紅葉だって喜ぶよ?」

五代「……マジにそう思ってんのか?」

模「…………喜ぶよ。(呆れられるかもしれないけど)」

五代「…………チッ。」

模「それに紅葉は今戦えないんだから、もしかしたら襲われちゃうかもしれないじゃないか。

  だから五代くんにも来てもらったんだよ?信頼してるんだからね。」

五代「………まあ、そういうことならしょうがねえが……。」



紅葉の家がある道にさしかかったとき、紅葉の家の前に男が一人立っているのが見えた。

五代「!」

模「誰だろう、あの人………」

五代「あいつは……確か、九堂。」

模「知ってる人?」

五代「……隣のクラスのヤツだ。名前くらいしか知らねえが。」



すると、紅葉の家の前にいた男……九堂はこちらのほうを向いた。

九堂「ここにいれば会えると言われて来たが……ほんとうに会うなんてなあ……五代ッ!!」

九堂は五代に向かって走り出した。



模「ッ!向かってくるよ!!」

五代「模、さがれ!!」

九堂「ッらああああああああ!!」

九堂はスタンドをくりだし、五代に向かって殴りかかった!

五代「何ッ!」

バシィィン!!

ワン・トゥ・ワンのガードが間一髪で間にあった。

五代「てめー……スタンド使いだったのか。」

九堂「そりゃあこっちのセリフだぜッ!おまえが『組織』の人間だったなんてよッ!!」

五代「てめー何言って……」

九堂「だが、そっちから来るのを待ってるつもりはねえッ!俺は、衛藤と一緒に『組織』をブッつぶしてやるんだ!!」

五代「………」

九堂「来な、五代。まずはおまえから倒してやる。」バッ!

九堂は商店街のほうへ走って行った。

五代「…………」プッツーン



五代「上等だぜ……。返り討ちにしてやるよ。」

模「五代くん、まって!その人がホントに敵なのかわからないのに……」

五代「模……てめーは紅葉のそばにいろ。アイツがもし『弓と矢の男』の刺客なら、その仲間が紅葉を狙ってるかもしれねえ。」ダッ

五代は九堂を追っていった。







模「……ッ、離れさせるのが狙いなのかもしれないのに……!」

衛藤「ククっ………カンがいいねェ。」

模「!!」

模が声がしたほうにふりかえると、さっきまでは誰もいなかったのに、そこには男が立っていた。

衛藤「『ジョセフ・ナッシング』!!」

グゥオオッ!!

模「せっ、『セクター9』!!」

バッシィィ!!!

セクター9はジョセフ・ナッシングの攻撃をかろうじてガードした。

衛藤「やっぱり『スタンド使い』だったか……おめえが、紅葉と五代の間を取り持った人間なんだな?」

模(今……急に現れた!いったい何が……)

衛藤「つーよりも、さっきの会話を聞いた感じ、おめえに紅葉と五代がよりつくようになったんかな?まー、どっちでもいいけどよ。」

模「おまえは……『弓と矢の男』の刺客なのか?」

衛藤「ハハッ出た、『弓と矢の男』。おもしれえセンスしてるぜ!…刺客とは違うな、あいつはただのビジネスパートナーだ。」

模「??」

衛藤「あいつの下にいたほうが俺の好きなことを散々できるからなあ!!『ジョセフ・ナッシング』!!」

衛藤はジョセフ・ナッシングの能力を発動させ、姿を消した。

模「な……消えた!?」

キョロキョロ

模「どこだ……!」

衛藤「こっちだ、上だ上。」

模が上を見上げると、衛藤は紅葉の家の一階の屋根に上っていた。

模「…『姿を消す』能力……?」

衛藤「坊っちゃん察しがいいねえ、そのとおりだ。俺の能力は『姿を消す』、最強のスタンドだ!!」

模「何のつもりだ……降りてこい!」

衛藤「ヒヒ……そう叫ぶなよ。紅葉は今、蜂須賀との戦いで体力を消耗してるんだろ?そこを俺が襲ったら……どうなるかなああ?」

模「……!」

衛藤「ふひひ、楽しみだぜ……まずは透明になったまま服をひんむいてやる……泣き叫ぶ暇さえ与えず、腹をブン殴って胃の中全部ブチまかせてやる。

   それを這いつくばらせて舐めさせて……あ゛あ゛あ゛……イイねェ……抵抗しようもんなら指を一本ずつちぎり取って。…………ッッ!」

バシッ!!

模は持っていたリンゴを衛藤に投げた!………が、キャッチされてしまった。

衛藤「グフフ……ずいぶん可愛い攻撃……ギャアァッ!」バチバチバチ!!

模「セクター9、第一の世界……『波紋疾走』。」

模はリンゴに波紋エネルギーを伝えさせて、投げていた。

衛藤「し、痺れッッ……!」ズルッ

ドガドゴォーン!!

衛藤は屋根から地面に滑り落ちた。

模「……絶対に紅葉には手を出すな。」

模は衛藤へ近づいていく。

衛藤「いってェー……これは坊っちゃんの能力か?ククク……面白れえぜ。」

スウッ………



模「ま、また姿を隠して………!」キョロキョロ

衛藤「フフ……こっちだこっち。」

模が周囲を見渡してるうちに衛藤は道路に、模と五代が来た道のほうに移動していた。

衛藤「クク……まだ紅葉はヤらねえさ。すでに回復してるかもしんねえし、2対1はマズい。まずは坊っちゃんから相手してやるよ、こっちへ来な。」

模(……まだほかに敵がいるのだとしたら、紅葉を残したままだとマズイけど……)

衛藤「ほ~ら、こっちだこっち。来ないとあのおっきいお友達のほうに行っちゃうゼェ~」スタスタ

模「くっ、くそっ!!」ダッ

模は衛藤を追っていった。



模と五代は分断されてしまい、紅葉の家の前にはだれもいなくなった。







昨夜、草原にて

九堂「『組織』だあ?この杜王町にか?」

衛藤「ああ、『ジョセフ・ナッシング』を使って色々なところを調査していたらよ、

   杜王町を支配しようと企んでいる連中が潜んでることがわかったんだ。」

九堂「なんだってェ~~!それがどうして俺を狙うんだよ。」

衛藤「ヤツらはすでにぶどうヶ丘高校に通うスタンド使いも味方に引き入れている……。

   正義感の強い君だ、『九堂は我々の脅威となる』……と判断されたんだろうよ。」

九堂「ぶどうヶ丘高校に……スタンド使いが!?俺のほかに?」

衛藤は懐から写真をとりだした。

衛藤「『五代衛』……ヤツは『組織』のスタンド使いだ……じきに君を襲ってくるだろう。」




九堂「な……あの『五代』が?……」

衛藤「俺は杜王町を守るために……ヤツらと戦うことを決めた。君が協力してくれるのなら、大いに助かるぜ。」

衛藤(ククク……アホなやつだぜ。その『正義感』……利用させてもらうぜェ。)







商店街に入ったところで九堂は足を止めた。

まだ距離はあったが、九堂が止まったのを見て五代も足を止めた。

五代「……そろそろ、戦う気になったか。」

九堂「五代……おまえには色々と聞きたいことがあんだよ。」

五代「あ?」

九堂「ぶどうヶ丘高校で一番強いってウワサだったおまえがよお、『スタンド使い』だったなんてなあ!」

五代「それがどーした。」

九堂「おめー、スタンド使ってケンカしてたんじゃねーのかあ?道理で強いはずだぜ、こんな卑怯な奴だったとはなあ!」

五代「なんだと……。」

九堂「それに衛藤から聞いたぜッ!おめーが『組織』の一員なんてよ!ますます見損なったぜ!!」

五代「『組織』だあ……?てめーさっきから何言ってるんだ。」

九堂「俺は戦うことに決めたんだ!相手が喧嘩No.1の男だろーが、俺は立ち向かうッ!!」

五代「ずいぶん正義感が強いようだが……敵意を向ける相手が間違ってんじゃねーのか?

   ……まあいい、先手必勝だ。」

ワン・トゥ・ワン「オラァッ!」ブオンッ!!

五代は道中拾った鉄パイプを九堂に向かって投げつけた。

鉄パイプはグルグル回りながら九堂の方向に向かっていく。

九堂「ハハッ、ずいぶん原始的な攻撃じゃねえか。」

九堂は飛んでくる鉄パイプを軽くよけようとした。

五代「そして、『ワン・トゥ・ワン』。」

グィン!!

ワン・トゥ・ワンが鉄パイプの長さを『2倍』にした。

九堂「なっ……パイプが伸びた!?よ、避けきれねえッ!!」

五代「カッコ悪く必死によけてりゃかわせたかもしれねーのにな……

   まさか油断してたんじゃね―だろうな。」ダッ!

五代は九堂に向かって走り、距離を詰めようとする。

五代「鉄パイプが命中した後、すぐにラッシュをたたきこんでやるぜ。」





しかし、五代のなげた鉄パイプは九堂に命中せず、九堂の目の前でピッタリ『停止』していた。

五代「!」

九堂「チックショオォ、こんなアッサリ『スタンド能力』を明かさなきゃいけなくなっちまうなんてよォ……」

九堂は空中に停止している鉄パイプを掴み取った。

九堂「油断だと、五代?それは俺の『アウェーキング・キーパー』の能力を見究めずに突っ込んできたおまえのほうにあるんじゃねえのかぁ!?」

五代「クッ、『ワン・トゥ・ワン』!」

九堂「ガードしても遅いぜェ、うらぁぁああっっ!!」

ガァーーン!!



九堂の振りぬいた鉄パイプは五代に命中せず、地面にたたきつけられていた。

九堂「アレ?手ェいってえ……」ビリビリ

五代「はぁ…はぁ…はぁ…」

五代(とっさに『ワン・トゥ・ワン』の能力を解除しなきゃあヤバかったぜ……)

九堂「五代……何だおまえの能力は……『伸ばす』能力なのか?」

五代(しかしわからねーのがコイツの能力だ。……俺の投げた鉄パイプが、ヤツの目の前でピタリと止まった。

   しかも、そのまま空中に浮いたまま固定されていた……。)



五代と九堂は、互いのスタンド能力の実態を未だつかめずにいた。






【スタンド名】
アウェーキング・キーパー
【本体】
九堂秀吉(クドウ ヒデヨシ)

【タイプ】
近距離型

【特徴】
戦隊モノのレッドみたいな感じの人型

【能力】
『繋げる』能力。
本来繋がらないような物同士も繋げることができるが、固定ではなく繋げるなので、引っ張れば引き離せる。
空間に物を繋げて『クラフト・ワーク』紛いのこともできる。

破壊力-A
スピード-B
射程距離-D

持続力-B
精密動作性-C
成長性-D






互いの『能力』の謎に思考を奪われた二人は、一瞬硬直状態にあった。

しかし、五代はすぐに体勢を立て直し、攻撃に移った。

五代「『ワン・トゥ・ワン』!」

ワン・トゥ・ワン「オラァアアッ!!」

九堂「グッ!『アウェーキング・キーパー』!!」

バシッ!

ワン・トゥ・ワン「オラァ!」

アウェーキング・キーパー「ハッ、ハアッ!」

バシッ、ドガッ!!

五代「てめーがどんな能力かなんて今の時点じゃ知りようがねえ。

   ……ならば、力でねじ伏せるのみだ。」

ワン・トゥ・ワン「オラァーーーッ!!」

バチッ

九堂「ア、『アウェーキング・キーパー』のガードが!!」

五代「てめーのスタンドはどうやら『近距離パワー型』…パワーも相当なものを持ってるみて―だが、『ワン・トゥ・ワン』より弱いぜ。」

ワン・トゥ・ワン「オラァーーッ!!!」

五代のスタンド、ワン・トゥ・ワンのパンチはガラ空きになったアウェーキング・キーパーのボディに命中した!…………しかし、



ビタッ!!

五代「………!」

五代(ワン・トゥ・ワンのパンチがヤツのスタンドに触れた瞬間『止まった』!?)

九堂「………フフ、確かに『アウェーキング・キーパー』のパワーはおめーのスタンドより弱いかもなぁ。

   だが、俺のスタンド能力は近距離の戦いには非常に有効なんだぜ。」

アウェーキング・キーパー「セリャァアッ!!」

ドゴォン!!

五代「ぐふッ!!」

ズダァン!

アウェーキング・キーパーの蹴りが命中し、五代の体は飛ばされた。

五代「く、くそ……何が起きやがった。」







五代の前で九堂と九堂のスタンド、『アウェーキング・キーパー』は威風堂々と立っていた。

九堂「『アウェーキング・キーパー』の能力で、おめーのスタンドの拳と、俺のスタンドの体を『繋げた』んだ。

   『繋げる』ってのがどういうことかわかるか?『繋げる』の定義はビスで止めたりホッチキスでバチンととめることじゃあねー。

   『触れさせる』んだ。それこそが、『繋げる』ことの大前提の定義だ。

   美しい女の頬に手をそっと当てることと、振りかぶって勢いよく当てることは全く違うだろ?

   『アウェーキング・キーパー』の能力でモノとモノを『繋げた』時、『運動エネルギー』は瞬間にゼロになる。

   それによって、おめーのスタンドの攻撃は威力を失ったんだ。」

五代(ヤツの体の皮一枚のところで威力が消されちまったわけだ……。)



九堂「何で俺が自分の能力をベラベラと語ると思う……?知ったところで対処する方法がないからだよ。」

アウェーキング・キーパー「セリャアッ!!」

ボゴォン!

アウェーキング・キーパーは足元のアスファルトを殴った。アスファルトが砕かれ、ガレキが宙に舞う。

九堂「そして『アウェーキング・キーパー』!!」

ビタァッ!!

宙に舞った多くのアスファルトのガレキが空中に『繋がれ』た。

九堂「『アウェーキング・キーパー』はモノを空中に繋げることもできる。

   『運動エネルギー』がゼロになり、すべて『位置エネルギー』に変換されたモノは、

   ふつう、支えがなければ全て下へ落ちる運動エネルギーに再変換される。

   ……ただし、『アウェーキング・キーパー』の能力が発動しているうちは『運動エネルギー』はゼロのままなので、空中に『繋がれた』ままってことだ。」

五代「丁寧な解説……ご苦労なことだ。」

九堂「そして空中に『繋がれた』モノは、『外力を与えられない限り』落ちることはない。『アウェーキング・キーパー』!!」

五代「!『ワン・トゥ・ワン』、ガードしろ!!」

アウェーキング・キーパー「シャァアアアアアアアアッ!!!」

ドガガガガガガガガガ!!!

アウェーキング・キーパーは宙に舞ったガレキを殴り、五代のほうに飛ばした!!

五代「うオオオオオオオオオッ!!!」ドガドゴドゴガコドゴ!!

アウェーキング・キーパーの放ったガレキの散弾銃を五代は全てガードしきれず、いくつかのガレキは頭や腹に命中した。

九堂「ッしゃああああああああ!!!」



五代「ぐ……たしかに、少し見くびってたかもな。……だが、お返しだッ!」

ドシュウ――――――z__________ッ!!

五代のワン・トゥ・ワンは飛ばされたガレキのうちひとつを手に取り、九堂のほうへ投げた。

九堂「ハハッ、馬鹿の一つ覚えみてーにまた投げてきやがってよ!!」

五代「………クッ。」

九堂「もはや『アウェーキング・キーパー』の能力を使うまでもねえ!『アウェーキング・キーパー』、弾き飛ばせ!!」

アウェーキング・キーパー「セリャアッ!!!」



ブオンッ!


しかし、ワン・トゥ・ワンの投げた瓦礫は『アウェーキング・キーパー』のパンチの軌道から下に落ち、拳に当たらなかった。

九堂「なッ!」

五代「『ワン・トゥ・ワン』の能力でガレキの重さを『2倍』にした……そう、変化した重みを利用した『フォークボール』だ。」

ズガァン!!

九堂「グゥおおッ!!脚がッ、脚がいてえええええええ!!!!」



五代は立ちあがり、体の土ぼこりを払い落した。

五代(しかし、おかしいぜ。今のは防がれて当然の『ダメでもともと』の攻撃だった………

   なぜ、ヤツはスタンド能力を発動させなかった?)

五代は九堂が自分のスタンド能力をわざわざ説明したことを思い出した。



五代(もしかして……そこにヤツの弱点があるんじゃないのか?)







互いにダメージを受けた二人だが、戦いの炎はおさまりをみせなかった。

スタンド能力を駆使して牽制し合っていた戦いはいつしかスタンドによる肉弾戦に展開していた。

五代「オラアアアアアアアア!」

九堂「ッシャアアアアアアアアア!」

五代がジャンプする瞬間、『2倍』に伸ばした脚で跳躍力を増加させ、3メートルの高さからのカカト落としを繰り出す。

それに対し九堂は『アウェーキング・キーパー』の能力で五代の足と九堂の腕を『繋げて』威力を殺しガードする。

そのまま九堂が『アウェーキング・キーパー』の拳で五代の腹部を殴ろうと振りかぶるが、

五代は伸ばした脚で九堂をけり飛ばし、九堂から距離をとる。

九堂は足元のアスファルトを砕いてガレキを空中に『繋げ』、ガレキの散弾銃の体勢を整えた。

攻撃を見究めていた五代は転がっているガレキを『繋げられた』ガレキに当てて、崩させる。

九堂「……ッチ、『外力が加われば』、『アウェーキング・キーパー』の能力は解除される……

   この攻撃の対処法を見抜かれちまった!」

五代(押してきてはいるものの……有効な攻撃を与えることができねえ…。)

九堂「だが……やるじゃねえか五代。」

五代(九堂は、足を負傷している。……とにかく距離をつめて、スタンドのパンチをたたきこむしかねえ。)

ダッ!



しかし、距離をつめようと九堂のほうへ駆け寄った五代は、自分の目の前に何かが浮いているのが見えた。

おそらく、『アウェーキング・キーパー』の能力で固定されていたであろうもの……タバコほどの大きさの棒で、ヒモが出ている……

九堂「バクチクだ!!」

パァン!!

五代「グッ!」

爆竹の破裂に驚いた五代は足を止めてしまった。

九堂「俺の能力を使った『ねこだまし』だ!!そして、『アウェーキング・キーパー』!!!!」

アウェーキング・キーパー「ハアッ!!」ドゴン!

アウェーキング・キーパーはまたアスファルトを砕き、ガレキの散弾銃の用意をする。

爆竹でひるんだ五代は『一手』遅れてしまい、散弾銃の体勢を崩させる手段をとれなかった。

九堂「これで終わりだ、五代ィーーーー!!!2メートル距離からの散弾を喰らえェーーーーッ!!」







しかし、五代のとった行動は、防御の体勢をとることではなく、攻撃する構えをすることだった。

五代「……そう、2メートルの距離で十分だ。俺の攻撃を当てるにはな。」

九堂「『アウェーキング・キィーーーーーパーーーーー』!!!」

五代「『ワン・トゥ・ワン』、『ズームパンチラッシュ』!!」

ドガガガガガガガガガガガガガ!!!!

ドゴドガドゴゴカドガドゴドドドゴドガ!!!!

『アウェーキング・キーパー』のガレキの散弾銃はほとんどが『ワン・トゥ・ワン』のラッシュに弾かれた!

五代はガレキの散弾銃のいくつかを喰らいながらも、攻撃をやめなかった。

ワン・トゥ・ワン「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

ドゴドガドゴドゴドガゴドカドゴドカドゴ!!!!!!!



九堂「グハァーーーーーーーーーーッ!!!!」

ドゴォーーン!!

ワン・トゥ・ワンのラッシュを喰らった九堂は吹き飛ばされゴミ捨て場に突っ込んだ。

五代「てめーのスタンド……複数のモノはいくつでも『同時に』繋げることはできるが、
  
   『連続して』はできねーみたいだな。……はじめからラッシュしておけばよかったぜ。」







五代は九堂が突っ込んだゴミ捨て場に近づいた。

九堂は意識はあったものの、すでに戦意は失っていた。

九堂「ちくしょう……、ちくしょう……!俺の『正義の心』は……こんなところで負けちまうほどのモンだったのかよ……。」

五代「……………」

九堂「……やれよ、五代。トドメをさせよ。……『組織』の連中に屈するのは悔しいが、俺は本気で戦った……。」



五代「いや……トドメはささねーよ。」

九堂「!!」





九堂「何故だ……情けをかけるつもりなのか?この俺にッ!!」

五代「何を勘違いしてるかしらねーが、俺は『組織』なんかに属する人間じゃない。今や俺が心から信頼する人間は……だれもいない。」

九堂「な………!?」

五代「てめーが敵だったら、『弓と矢の男』の刺客である可能性があったら……情けをかける気なんかなかっただろうよ。」

九堂「……………」

五代「てめーの拳には『敵意』こそあれど『悪意』は感じなかった…………それだけだ。」

九堂「!」



五代「ッチ、模のいるところからずいぶん離れちまったぜ。………襲われてなきゃいいが。」

紅葉の家に向かって五代は走り出した。



五代にとって、自分が信頼する人間は四宮ただひとりだった。

しかし、自分を信頼してくれている人間はいる。





<模「それに紅葉は今戦えないんだから、もしかしたら襲われちゃうかもしれないじゃないか。

   だから五代くんにも来てもらったんだよ?信頼してるんだからね。」>

五代は、その一人のために走った。







取り残された九堂は、その場から動くことができなかった。

体を震わせ、泣いていたのだ。







家々が立ち並ぶ住宅地。模は衛藤の攻撃に備えて塀を背にして立っていた。

砕かれたアスファルト、ヒビの入った塀……周辺の損壊は、数分前からすでに戦いは始まっていたことを表していた。

模「ハアッ……ハアッ……ハアッ……」

模は拳を構えたまま右を見た。街路樹が立ち並び、消火栓近くに立てかけられた看板には『飛び出しキケン!』と書かれていた。

左を向くと、道路の穴ボコや塀のガレキが目立ち、遠くの国道で車が行き交っているのが見えた。

模は再び正面を向く。模は小さいころからの波紋の修行のおかげで、高い集中力を保っていた。

模(どこからだ……今度はどこから攻撃してくる……?)



模が息を整えたまま周囲に注意を払っていると、首筋に冷たいものがピチャッと落ちてきた。

模「!!!」

模が驚いて振りかえり上を向くと、塀の上に衛藤が立っていた。

衛藤「フヒヒ……こっちだよ坊っちゃんッ!」ブオンッ!!

模の頭上から『ジョセフ・ナッシング』の拳が振り下ろされる!!!

模「セ、『セクター9』!!」

バシィ!!

頭上からの攻撃をセクター9が腕でガードした。模は勢いに押されて後ろにステップした。



模「………ツバかッ!汚い……ッ。」

衛藤「驚いたぜェ坊っちゃん。見た目よりもずいぶん戦い慣れてる感じじゃねェか。」

そうはいったものの、衛藤の表情は余裕に満ちていた。







衛藤「まァ~~俺は坊っちゃんの集中が切れるまで何度でも『隠れる』ぜェ……」スゥ……

模「ま……また姿を消した…」



波紋法の基本である『呼吸』は、それを体得するまでにかなりの集中力を要する。

スタンド能力で波紋を習得した模は、厳密には自身が波紋法をマスターしたわけではなかったが、

この『呼吸』の修行のおかげで集中力はかなり鍛えられていた。

しかし、『見えない相手の攻撃に対応する』ということにはさすがの模にもかなりの集中力を必要とした。



模「フゥ―――………」

模(ここまでの中で一つわかったことがある……ヤツが攻撃するときは必ず『姿を現す』ということだ。

  もしこれが確実なら、ヤツが攻撃するときこそ最大のチャンスとなる……。)



模は身構えて再び周囲に注意を払う。

模(右か……左か……また後ろか……)







コツ……

模「左!」

模は音のした方向に体を向けた。しかし、そこに衛藤の姿はなく小石が転がっていた。

模「……くそっ、ありがちなひっかけか……。」



衛藤「フヒヒ……ビビってる。ビビッてるぜえ……」

模「!!」

模は声のした右方向に体を向ける。しかし、そこに衛藤の姿はない。



衛藤「キョロキョロしちゃって……坊っちゃんカワイイねェ……」

模「くそ……姿を現せッ!!」

衛藤の声は模の四方八方から聞こえてきた。

衛藤は模の周りを透明になったまま移動し、模に語りかけていた。

衛藤「坊っちゃんがこれまでどんなスタンド使いと戦ったか知らねえけどよォ……

   俺を、ヤツ(弓と矢の男)が作った『インスタント』のスタンド使いと一緒にするんじゃねえぜェ……」

模「くっ……!」

模は構えたまま体を向き直す。

衛藤「俺は戦いを生業とした人間なんだぜェ……?力まかせで戦うようなことはしねェのよ……。

   じっくりと……いたぶるように、神経を削らせて……弱り切ったところで一気に喰う。」

模「……ハアッ……ハアッ……」

衛藤「坊っちゃんよく見りゃカワイ~イ顔してんなあ……

   そっちのシュミはないつもりだったが、こりゃあ殺っちまった後でヤっちまうのもいいかもなあ……ヒヒヒ。」

模「………………」

衛藤「変態だと思うかい?……ヘヘッ、当然だ。俺みたいな戦うことを生きがいとした人間は頭のネジが外れてるんよ。

   戦いに適応した脳ミソとも言えるがな。………なァ坊っちゃんよ、戦うことにおいて最も重要なことは何だと思う?」

模(………集中を切らすなッ、ヤツが現れた瞬間に波紋パンチをたたきこむ……!)



衛藤「『ジョセフ・ナッシング』!!!」

模「!!」

衛藤が現れたのは模の正面だった。死角からの攻撃に備えていた模は、正面からの対処に遅れてしまった。

衛藤「坊っちゃん、鳩が豆鉄砲食らったような顔してるぜェーーッ!!!」

模(まだ間に合うッ!)

模「『セク――――」

ドガアッ!!!

セクター9がカウンターで攻撃を入れようとする前にジョセフ・ナッシングのパンチは腹をとらえ、模はすっとばされてしまった。

模「がはぁっ!!!」

ドザァーッ!







衛藤「ククク……いてえか、坊っちゃん。戦うことにおいて最も重要なこと……それは純粋な『パワー』さ。

   姿を消す能力があろうが、相手をシビれさせる能力があろうが、純粋なパワーで強くなけりゃあそんなモンなんの意味も持ちはしないんだよ!!」

模「ぐっ………」

ジョセフ・ナッシングのパンチをモロに喰らった模だったが、苦しみながらも立ちあがることができた。



模(『波紋の世界』を使っていなければ……波紋で生命力を強化していなければやられていた……。

  しかし、どうやってあいつを倒す………?純粋なパワーでは波紋で強化しても勝てない……。)

衛藤は姿を現したまま、余裕を見せた表情で佇んでいた。

模(能力……僕が勝つには、僕の『能力』で対抗するしかない……!)





衛藤「さあ、もう一発いくぜえ……」スゥ……

衛藤は再び姿を消した。

模(唯一あいつに対して強みがあるのが、僕の能力をまだ知られていないこと……)

衛藤「さあ、次は右かな?左かな?後ろかな?また……正面かな?」

模「…………」

模は再び攻撃に備え集中した。今度はどの方向から来ても対処できる自信があった。

衛藤「クク……またカウンター決めようってのかい?パワーもスピードも俺のスタンドのほうが上なんだぜ?」



模「フゥ――……」

模は息を整えた。

模の周辺は静寂に包まれた。

衛藤は、次の攻撃をトドメにするつもりでいた。





数秒間の硬直の後………

衛藤「また正面だッ!!くらえ、『ジョセフ・ナ――――」

模「『セクター9』ッ!!」

バギィッ!!!

衛藤「ぐふっ!!」

ズダァーーン!



衛藤の攻撃が模をとらえるより先に、セクター9の拳が衛藤に命中した。

衛藤「な……なぜだ…。てめえのスタンドが俺よりも早く攻撃できるわけが……」

すっ飛ばされた衛藤の前に、模とセクター9が立っていた。



模「セクター9、第三の世界……倍返しの世界『ワン・トゥ・ワン』。

  『2倍』にする能力に入門し、腕を『ちょっとだけ』伸ばした。」


ドドドドドドドドド………







模(あらかじめ五代くんに学ばせてもらった能力だけど……役に立ってよかった。)

模「これで大丈……!!」



模の攻撃を初めてくらってしまった衛藤だったが、あわてる素振りすらみせず、悠然と立ち上がった。

衛藤「ククク……少しだけ見なおしたよ坊っちゃん。ずいぶんバリエーションに富んだ能力だな。」

衛藤「まァまだ実体は掴めてねえが、今のは俺が油断しただけだ。次はそうは行かねェ。」



模「…………」

衛藤「透明になる能力は最強だッ!!!」スゥ……

衛藤は再び姿を消した。

……しかし、模の表情には先ほどよりも余裕が多く見えていた。



模「『透明になる能力』……か。『セクター9』、もう十分だよね?」

模は先ほどと同じく攻撃に備え身構えた。



衛藤は透明のまま語りかけた。

衛藤「どのみち気づこうがどうされようが、正面からなら対処できるのが当然だ。ヤマが当たってよかったなあ……坊っちゃんよ。

   だが……坊っちゃんの死角約260°からの攻撃なら、ヤマがあたってもスグ振り向いて対処できるか?」

模の表情には変化はなかった。

衛藤「真後ろだァッ!!今度はどうだァッ!!………!」



衛藤が姿を現した時、目の前に模の姿はなかった。

衛藤「な………どこ行きやがった!?」キョロキョロ



すると、衛藤の背後から模の声がした。

模「こっちだよ、おじさん。」

衛藤「!!!」クルッ

セクター9「ウリャアァーーーーーーーッ!!」

ドゴォン!!

衛藤「グハァーーーッ!!!!」

衛藤は模からの二度目の攻撃を喰らった。

模「今度は、オジサンの能力……マネさせてもらったよ。第四の世界……『透明の世界』。

  この能力で1秒間だけ、『透明』になることができた。」







さすがの衛藤にも焦りの表情が浮かんでいた。

衛藤「な……なぜ俺が現れるタイミングがわかったんだッ?音さえも消していたハズだ!」



模は相手が敵ながらも申し訳なさそうな顔を見せた。

模「………言いにくいんだけど、オジさん臭いんだよ。現れた瞬間に臭いがするから、すぐわかっちゃったよ。」

衛藤「な……んだとォっ!」ブチッ



衛藤は一瞬キレかけたが、未知数だった模の能力について考えることで冷静になった。

衛藤(だが、こいつはヤベぇっ……チンケな能力なんかじゃねえ、圧倒的なパワーさえも凌駕する……
  
   超圧倒的なスタンド能力が、こいつにはある……!)

衛藤「理解したぜ……てめえは、『学習する』スタンド……ってわけだな。」






【スタンド名】
サウンド・ドライブ・セクター9
【本体】
杖谷模(ツエタニ バク)

【タイプ】
近距離型

【特徴】
顔に時計、両手の拳に★のついた人型。

【能力】
相手と同じ「世界」に「入門」する能力。

第一の世界:
「波紋の世界」
スタンドが波紋の呼吸をすることで本体及びスタンドが「波紋」を使える。
スタンドが波紋の呼吸をしているとき、スタンドのパワーはAクラスになる。
第二の世界:
「衝撃の世界(ブラック・スペード)」
衝撃を操作する能力。現時点では衝撃を短時間留めておくことくらいしかできない。
第三の世界:
「倍返しの世界(ワン・トゥ・ワン)」
ものの長さや重さなど、本体が認識できるものを『ちょっとだけ』増やす。現時点では約1.1倍。
第四の世界:
「透明の世界(ジョセフ・ナッシング)」
透明になる能力。現時点では『1秒間』透明になれる。


破壊力-B
スピード-B
射程距離-E

持続力-A
精密動作性-B
成長性-A






模のスタンド能力の実態を知り、思わず焦りの表情を見せてしまった衛藤であったが、

すぐに余裕を含ませた表情に戻った。

衛藤「ヒャアーーーーーーーッはっはっはっはっはっはァーーーー!!!!」

模「!」

衛藤「スゲー能力だなァ坊っちゃん!……だが、根本的な解決にはなってねェーぜえ!!『ジョセフ・ナッシング』!!」スウゥ……

衛藤はまたも姿を消した。

衛藤「俺が透明になっているうちは俺の居場所を特定することは未だ出来ていねえッ!そうだろ坊っちゃんよ!!」

模「…………」

衛藤「今度はどうする!?また透明になってみるか?坊っちゃんはちょっとだけしか『透明』になれねェんだろ?それでどうするんだ?

   現れたところで俺が坊っちゃんのキレイな顔をフッ飛ばしてやるだけだぜェーーーーッ!!!」



模「……残念だけど、策はあるよ!」ダッ!

模はあるモノに向かって走り出した。塀を背にした時、周りを見渡していたら見つけたモノ………

模「疑問があったんだけど……オジさんの『姿を消す』能力って、厳密に言えば『見えなくする』能力なんだよね。つまり『実体は存在する』。

  透明の世界に『入門』して、確信をもったよ。……『セクター9』!!」

セクター9「ウオァリャア!!」ドゴン!!

セクター9が殴ったモノ……それは『消火栓』だった。

模「もし……雨が降っているときにその能力を使ったらどうなるかな?……『雨が降っていない空間』がポッカリできちゃうんじゃないかな?人型のさ。」

衛藤は姿を隠したまま話した。

衛藤「さすが、察しがいいねぇ坊っちゃん。確かに、俺の能力は『雨に弱い』……だが、消火栓を殴ってどうするつもりだったのかねェ?」

模「…………」

セクター9の殴った消火栓はピクリとも動いていなかった。

衛藤「坊っちゃん知らなかったのかい?地上にある消火栓は道路に設置されるために、自動車が追突しても水が噴き出さないようになってるんだぜェ?」



衛藤「さぁて、坊っちゃんのカッコ悪い姿を見たところでトドメと行こうかねェ……ハァーッハッハッハッハァ!!」

衛藤の笑い声が響き渡った。……しかし、模の表情に変わりはない。凛とした、正義の炎を感じさせる表情だ。

模「知らなかったのはオジさんのほうさ……僕のまだ見せていない能力……『衝撃の世界』を。」



ボゴッ!

衛藤「?」

ボゴッ!ボゴッ!ブシャァアアーーーーーッ!!!

消火栓が根元からフッ飛び、勢いよく水があふれ出した!

衛藤「な、なんだとォッ!?」

模「セクター9、第二の世界『衝撃の世界』。消火栓に与えた衝撃を少し下に移動させて解放した。地中の衝撃に耐える設計まではしていないからね。」

ザアアアアアァァァ………



消火栓から噴き出た水は、雨のように周辺に降り続けていた。そして模から2メートルの場所に、『雨が避けて落ちる空間』があった。

衛藤(ま、マズイ!!姿を消しているうちはスタンドの防御ができないッ!!)

模「紅葉から学んだ『衝撃の世界』……少し移動させられるまでには成長した。……おかげで丸見えだよオジさん。」

衛藤「『ジョセフ・ナッシング』!解除しろォッ!!」

模「『セクター9』!!」

セクター9「ウアリャァーーーーーーッ!!」

ドグァーーン!!

衛藤「グヘェーーーーーーッ!!!」

衛藤は三度目の攻撃を喰らった。

消火栓からあふれ出した水は止まり、道全体に大きな水たまりを作っていた。



模と衛藤、どちらが圧倒しているかは……もはや言うまでも無い。







そう……思われたが。

衛藤はフッ飛ばされ、頭から血を流していてもなお笑っていた。

衛藤「うん……うん……察しがいいどころじゃねェ。ずいぶん機転のきく、かしこいお坊ちゃんだ。だがよォ………」

衛藤は満身創痍の体にもかかわらず立ちあがった。沸きあがったある事実が、彼を立ちあがらせた。

衛藤「伸ばした腕……学習するスタンド……消火栓……まァ見事にここまで俺を出し抜いたよ。

   だが……やはり一番重要なのは『純粋なパワー』だなァ。」

模「………ッ!」

衛藤「坊っちゃん……『セクター9』っつったかあ?そのスタンド……パワーは俺の『ジョセフ・ナッシング』よりも落ちるだろォ?

   微々たる違いじゃねェ。おそらくBクラスってところだ。」

模は話し続ける衛藤に近づくことができないでいた。模にも、ジョセフ・ナッシングのパンチをくらったダメージがあった。

そして、波紋の呼吸でパワーアップさせたセクター9でも、ジョセフ・ナッシングとの突き合いで勝てる確信はなかった。

衛藤「さっきも言ったろォ?俺は『戦いを生業とした人間』だ。体の鍛え方も、精神力の強さも違う。

   Bクラスのスタンドのパンチを数発喰らっただけで倒されるような人間じゃねえんだよ。」

模の額に汗がにじんだ。

衛藤「坊っちゃんの懸命な努力で、相当ダメージは与えられたがよォ……もう『万策尽きた』んじゃねえか?

   もう、てめえのまわりに、俺を倒しうる策はあるのかァ?」

模「………それは、どうかな。」

衛藤「ハハッ、可愛い可愛い。声に力が入ってねェぜ。もう決着はついたんだよ。次に、俺が姿を現すときは坊っちゃんが死ぬ時だ。」

衛藤「『ジョセフ・ナッシング』!!」バシャァアン!!

模「!!」

衛藤は足元に広がった水たまりをけり上げ、模に向けてドロをかけた。

模が目をこすって前を向いた時には、すでに衛藤の姿はなかった。

衛藤「ハハッ、さあ今度はどうする?俺もダメージが深いからよォ、少し休んでから攻撃しても遅くはねェんだよ。

   その間、坊っちゃんは俺を見つけることが出来んのかよ!?」



模「フゥ――……」

模は目をつむり、息を整えた。



模「…………『セクター9』。」


模はスタンドを発現させて、はじめと同じように身構えた。




衛藤(クク……無駄なあがきだ。さっきとは状況が違う。ダメージを負ったままで集中をどれだけ保つことができる?)

模は身構えたまま動かなかった。

衛藤(精神を集中させているうちはダメージの回復は見込めねェ。ヤツが見当違いのほうを向いたとき、すぐさま腹をブチ抜いてやる。)

衛藤がけり上げて波打っていた水たまりは静かに、なだらかになっていった。







模「…………」

衛藤「…………」

しばらく経った後、先に動き出したのは模だった。



水たまりの上に立っていた模は、ゆっくりと方向を変えて歩きだした。

ピチャ……ピチャ……

方向は確実に衛藤のいるほうに向いていた。

衛藤(なッ……!ありえねえ!きっと気のせいだ、偶然だ………。)



歩みを進めていた模は、衛藤のいる場所から0.5メートルのところで立ち止った。

衛藤(たっ、立ち止った!!バカなッ!俺は水たまりの上にも立っていない。俺は居場所を特定される形跡は残していないはずだッ!!)



模「……『そこにいるんだね』、オジさん。」

衛藤(ハッタリだ!反応を待っているだけなんだ、反応しなければ場所を変えて同じことをするに違いない……そうに決まってる!)

姿を消しているとはいえ、衛藤の体からは大量の脂汗が流れ出ていた。



模「セクター9、第一の世界『波紋の世界』……波紋の呼吸でパワーを上げる。」

衛藤(まだだ……まだだ……逃げるな……ハッタリだ……特定できているはずがない!)



セクター9「フゥオオオオオオオ…………」

衛藤(気づいている?違う、ハッタリだ!違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違―――)

セクター9「ウオアリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャリャ!!!!!!!」

ドゴドガドゴドゴバキグシャドカドゴグシャバゴドゴドガバキバキドガドグォゴガドカドゴバキドゴ!!!!!!



衛藤「ぶシェーーーーーーーーッ!!!!!!!」

ドグァーーーーーーン!!!!!!




セクター9の波紋ラッシュをまともに喰らった衛藤は塀にたたきつけられ、目を閉じたまま動かなくなった。




衛藤が透明になり動きを止めていた時、模は水たまりの中央で、足から波紋を流していた。

水たまりに広がった波紋は、水たまりの端から地面に伝わり、衛藤の立っている足元まで広がった。

池に落とした石の波紋が岸ではね返るように、衛藤の足からはね返った波紋は水たまりに返っていった。

その方向と広がり方を観察した模は、衛藤の正確な位置を特定したのだ。

模は幼いころに習ったワイングラスで敵の位置を知る方法を応用したのだ。


しかし、そんな方法で位置を特定したことを衛藤は知ることはなかった。

模「波紋の力って……やっぱりスゴいんだなぁ……」


バァ――――――――ン!







模は塀にたたきつけられた衛藤に近づいた。

衛藤「……………」

見る限りでは、衛藤は目を閉じたまま気絶していた。

するとその時……



五代「模!!」

道の向こうから五代が戻ってきていた。

模「五代くん!大丈夫だった!?」

五代「模……そいつは敵か?」

模「あ、うん。でも大丈夫、もう倒したから……。」

五代「油断するな、まだそいつは意識があるかもしれない。」

模「え………?」

五代「……念のためだ。模、お前の波紋で意識を確実に失わせろ。」

模「だ、だいじょうぶだよ。見ての通りノビてるよ……何もそこまでしなくても……。」



五代「何ふざけたことぬかしてんだ!」

衛藤「………全くだよ坊っちゃん。」

模「!」

五代「!」

衛藤「『ジョセフ・ナッシング』!!」

グオンッ!!

ジョセフ・ナッシングの拳が模の顔面めがけて放たれた。



模は、完全に油断し、防御の体勢をとっていなかった。

五代「模ッ!」

模「―――――ッ!!」













模「………………!」







恐怖で閉じた目を開けると、ジョセフ・ナッシングの拳は鼻先でピタリと止まっていた。

模は腰を抜かし、その場にペタリと座り込んだ。

衛藤「………何が起きた?」




五代が後ろを振り返ると、先ほどまで五代と戦っていた九堂秀吉が立っていた。

九堂「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………『アウェーキング・キーパー』で……衛藤のスタンドの拳を止めた。」

五代「く……九堂。」

九堂「さっきの借り、これで返したぜ。……ケンカの負けは、いつか必ず取り返す。」

衛藤「九堂……糞野郎がァ!!」



五代「『ワン・トゥ・ワン』!」

ワン・トゥ・ワン「オラアッ!!」

バシィッ!

衛藤「っとっとっと………」

衛藤はワン・トゥ・ワンのズームパンチをガードした。

衛藤「………ヘッ、さすがにこれ以上相手にはできねぇか。もうちょっとだったんだけどな。」スウッ……

衛藤は姿を消した。衛藤のスタンド能力を初めて見た五代は攻撃することができなかった。

衛藤は姿を消したまま話しだした。

衛藤「クックック……とんだアマちゃんだぜ坊っちゃんよ。てめえ、これからもそんな調子で俺たちと戦う気なのかよ。

   言っただろ?俺たちは戦いを生業とした人間だって。……喧嘩ごっこのつもりで戦ってたら、すぐに死ぬことになるぜ。

   まあ、近いうちに俺が殺しにいってやるよ。ハァーッハッハァーーー!!」







五代は座りこんだ模の正面に立った。模の顔は青ざめていて、まさに放心状態だった。

バキィッ!

五代が模の頬を殴った。

模「………ご……だ…い……くん…?」

グイッ

五代は座りこむ模の胸ぐらをつかみ、引っ張って立たせた。



五代「てめえ……ふざけるんじゃねえぞ。トドメも刺さねえで何ウジウジやってるんだよ。」

模「……だって、必要以上に痛めつけるのなんて………」

五代「こっちは、一人殺されてるんだよ!てめえ……まさか、自分が殺されるはずがないと思ってるんじゃねえだろうな。

   やらなきゃ、テメエがやられるんだよ。生半可な気持ちで戦うんじゃねえ!!」

模「!」ビクッ

五代「……ッチ。」ドサッ

五代は模の胸ぐらを離し、去って行った。九堂の姿も、もうすでになかった。






模は、すぐに立ち上がることができなかった。

自分は、紅葉や五代よりも戦いに対する意志がはっきりしていないことを思い知らされた。



模は、自分が『弓と矢の男』と戦う理由について、考え直さなければならなかった。









模がぼんやり見つめる先には多くの車が行き交い、

近くでは風が木の葉をこすらせてガサガサと音をたてていた。

しかし、それらの音も模の耳には一切入ってこなかった。




模「僕は……なぜ、戦っているんだろう……。」




to be continued...



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