クレイジー・トレイン

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クレイジー・トレイン ◆UOJEIq.Rys



 深い森の中、響く咆哮を目印に駆ける。

 急がなければ。
 この聞き覚えのある咆哮はおそらくバーサーカーのものだ。
 ハッキリ言って想定外。バーサーカーが相手では真理さんやタケシさんでは相手にならない。
 仮に何かの偶然か奇跡が起きて倒せたとしても、バーサーカーには蘇生能力を持つ宝具がある。
 参加者の武器は回収され、ランダムで支給されているらしい(これはかなり怪しい)が、バーサーカーの宝具は肉体そのものだ。
 それを回収する事は肉体を奪う事と変わりない。
 まず間違いなく、バーサーカーは宝具を備えているだろう。

「……サファイア。バーサーカーに勝てると思う?」
『不可能ですね。クラスカードすらない現状、バーサーカーを倒せるのは一回が精々、よくて二回が限度です。
 それ以上は耐性をつけられて、こちらの攻撃は通りません』
「そして、バーサーカーの蘇生回数はそれ以上」

 正確な残数がどれくらいかは知らないが、五回以上殺さなければならないのは確かだ。
 限度の二回にしたって、防御を度外視した全魔力投入のAランク砲撃とステッキの刃(ブレード)で一回ずつだ。
 そんな事をすれば、次の瞬間には殺されている。ハッキリ言って論外だ。
 つまり、確実を期すなら最低でも四枚のクラスカードがいる。
 この状況下でそれは望むべくもない。

「つまり、選択肢は一つだけ」
『真理様とタケシ様を救出して逃げる、ですね』
 二人を担いでバーサーカーから逃げ切れるかはわからないが、それは言ってもしょうがない。
 今するべき事はまず、バーサーカーに追いつき、真理達の安全を確保することだ。
 その為にもより急ごうと魔力を回し、

「……ん? あれは………」
『美遊様? どうしました?』

 ふと視界に移った物に、足を止めた。


        ◇


 深い森の中、狂った直感を頼りに標的へと駆ける。

 今の狂戦士を止めれる人間など、どこにも存在しない。
 彼を遮るモノは、須らく薙ぎ倒し、踏み砕いていく。
 もはや彼自身さえ思い出せぬ敵を斃すその時まで、彼は止まる事はない。

 その脚が今、僅かばかり止められた。
 狂戦士は何かを探る様に、周囲へと見えぬ目を巡らせ、

「■■■■、■■■■■■■■■―――――!」

 再び咆哮と共に走りだす。

 彼が向かう先に何があるのか、それは彼自身さえわからない。
 もっとも、それが何であれ彼のする事は変わらない。
 狂戦士はただ、全ての“敵”を叩き潰すために暴走するのみだ。


        ◆



 尽く薙ぎ倒された木々の中。美遊・エーデルフェルトは、地面に散らばった何かの残骸を確認していた。

「これは……デイバックの残骸?」
『おそらく、真理様かタケシ様、どちらかの物かと思われます』

 周囲をぐるりと見渡すが、死体も血痕も見当たらない。
 ここで何かがあったのは間違いないが、誰かが死んだという事はなさそうだ。
 なら、まだ希望が持てる。

「サファイア、急ぐよ」
『わかりました』
 魔力を更に身体能力の強化へと回す。
 真理たちが生きているのなら、一刻も早く追いつかなくてはいけない。
 その一心でより強く地面を蹴り、

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!!」

 突如として進行方向に現れた『怪物』に、虚を突かれる形になった。

「え?」

 その姿を、茫然と見つめる。
 目の前の『怪物』はバーサーカーだ。それは間違いない。
 だが、その異様な姿は何だ。

 一体彼に何があったのか。
 全身は黒い泥に浸食され腐敗している。
 赤く光る両目は殺気を放つだけのものとなっている。
 眼前の『怪物』は、少女の知るバーサーカーと同じでありながらあまりにも違っていた。


『美遊様!!』
「っ…………!」
 サファイアの声に我に返る。
 眼前には振り被られた黒い拳。
 咄嗟に身を捩じって躱す。
 だがその拳の風圧だけで軽く五メートルは飛ばされた。

「ッ………! いつの間に……って訳じゃないか」
 単純な話だ。
 今まではバーサーカーを追う際、その咆哮や薙ぎ倒される木々の音を目印にしていた。
 加えてバーサーカーは真理たちを追っている、または戦闘していると思っていたため、既に木々が薙ぎ倒された道を引き返すように戻ってきたバーサーカーに気が付かなかったのだ。

「なんて間抜け……!」

 自分の馬鹿さ加減に嫌気がさす。
 だが幸いな事に、バーサーカーがここにいるという事は、真理たちは逃げ切れた可能性があるという事だ。
 もう一つの可能性に関しては、あえて考えない。

「サファイア、逃げるよ!」
『了解です。ですがどちらに』
「私達が向かおうとしていた方向。そっちには間違いなく、真理さん達はいない」
『わかりました。方位をナビします』

 逃げる方角を決め、即座に走りだす。
 迷っている時間はない。
 バーサーカーを野放しにする事に対する懸念はあるが、今の自分にバーサーカーを倒す術はない。

「■■■■■■■■■■――――!!!」

 いかなる方法でこちらを認識しているのか。
 五感全てがまともに機能していないだろうに、バーサーカーは迷いなくこちらを追跡してくる。

 お互いの距離は二十メートルほど。
 立ち止まればその場で死ぬ、命懸けの鬼ごっこが始まった。


        ◆




 ―――息が詰まる。
 どんなに目を逸らしても無視できない闇が、すぐそこまで追ってくる。

「っ……!」
 森を駆ける。
 背後には黒い巨人が迫る。
 私のように木々をすり抜けられない巨人は、行く手を阻む木々(しょうがい)を吹き飛ばしながら追いかけてくる。

「は―――はあ、はあ、はあ、は………!」

 息が途切れ途切れになる。
 疲労からではない。
 背後から迫る濃密な殺気に、心より先に体が悲鳴を上げている。

「っ………あ―――!」

 挫けそうになる意志に蹴りを入れる。
 走れ。
 今は何も考えずに走れ。
 逃げ切った後ならいくらでも悲鳴を上げて構わない。そんな余分はない。そんな暇がるなら少しでも多く酸素を取り入れろ。
 今は全力で巨人から逃げ切るだけ。
 全身に魔力を回せ。今にも折れそうな足を補強しろ。強化は常に限界、肉体への負荷など考えるな。

「、っは――――、………あ!」

 走れ。走れ。走れ。
 背中に圧し掛かる不安を振り払うように走れ、
 背中に迫った恐怖から目を背けるように走れ、
 つまらない弱音が真っ白になるまで走れ――――!

「■■■■■■■■■■■―――!」

 音源は耳元から。
 魂消るような断末魔が鼓膜どころか脳を揺らす。
 ソレに圧されて一瞬意識が飛んだ。

「っ――――――――!?」

 咆哮と共に振りかぶられる拳。
 そんなモノが直撃すれば、ステッキの全開の物理防壁の上からでもひき肉になってしまう。

「サファイア!! 物理保護……球形(スフィア)!!」

 必殺の勢いで振り下ろされたそれを、物理保護壁を球体形に展開して逸らし、どうにか直撃は避ける。

 イメージしたのはイリヤの防御方法。
 クロノ防げぬはずの矢を逸らした障壁形成を、自分なりに応用して再現する。


 だがそれも気休めに過ぎない。
 もとより護りなど意味を成さない相手。掠っただけでもダメージは避けられない。
 今の接触で僅かばかり距離が開いたが、回復するまでの間にすぐに詰められる。

「くっ………!」

 痛む体を押して走り出す。
 休んでる余裕はない。
 今は少しでも遠くへ、
 逃げなければ。

「■■■■■■■■■■■―――!」

 咆哮が響く。
 目も耳も機能していないはずなのに、黒い巨人の追跡に迷いはない。
 いかなる手段でこちらの居場所を察知しているのか、それを把握せぬ限り、決して逃げきれない。

「一体、どうやって………」

 逃げ切れたはずの真理たちと(希望的観測)、未だに逃げきれない私との違い(能力再確認)。
 私と真理たちの関係と(情報再確認)、私とバーサーカーの関係(共通項目)。
 その答えは、つまり――――



『美遊様、あれを!』
「あれは、美国邸―――!?」

 高速で視界を過ぎ去る木々の隙間。
 そこから見えるものは間違いなく美国邸で、ならばその近くには川がある。

「よし、それならば―――!」

 より一層足を速める。
 川を越えれば町に出る。
 如何にバーサーカーと言えど、家々を破壊して追跡し続けるのは難しいはずだ。

 しかし、空中に跳躍する事は出来ない。
 『術式』による制限からか、足場の形成が難しくなっているのだ。
 そんな不安定な足場を全力で踏めば、その魔力は簡単に霧散してしまう。

 かと言って悠長に橋を越えている余裕はない。
 川をそのまま越えるにしても、水に浸かればその分速度が落ちる。
 そんな事をしていたら、バーサーカーに追いつかれる。

 故に取れる手段は一つだけ。
 美国邸の屋根を足場に、より高くジャンプして川を超える。
 距離的にはギリギリだが、他に方法はない。

「、はっ――――!」

 目前に迫った美国邸へと、一歩で加速し、二歩目で跳躍。美国邸の屋根の高さまで跳び、


「――――え?」

 屋根へと到達する前に、身体の上昇は急停止した。

 右脚に違和感。
 まるで誰かに掴まれているよう。
 その正体を確認するために視線を下げれば、

「■■■■………」

 そこには、自分の右脚を掴む黒い『怪物』の姿が――――


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――――――――!!!!!」


 そのまま空中で一回転。
 黒い巨人の渾身の力を以って美国邸へと叩きつけられる。

「、ッァ――――――――ッッッ!!!!!!」

 屋根から基礎の土台まで一気にぶち抜かれた。
 呼吸がままならない。全身が激痛を訴える。
 舞い上がる土煙りの中、僅かに見えた空からは、
 黒い狂戦士がその両腕に渾身の力を籠めて落下してくる。

「ッ――――――!!!」

 その光景に、最後の抵抗を試み――――


「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」


 美国邸に、ミサイルが落ちたかのような爆音が響き渡った。


        ◇




 瓦礫の中から、のそりと、黒い巨人が這い出てくる。
 地面には深いクレーターが形成され、家と呼べるものはもうどこにもなかった。

 巨人の足元には、ピクリとも動かない人型。
 狂戦士の一撃を受けて形が残っているのは驚きだが、それはもはや誰が見ても生き物ではなかった。
 巨人もそれを認識したのか、その人型に一瞥もくれる事なく周囲を見渡し、

「■■■■■■■■――――!」

 咆哮と共に新たな戦場へと暴走を再開した。


【D-8/橋の前/一日目 黎明】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り9
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています


        ◇


 それから少しして。
 ガラリ、と瓦礫を崩して新たに一人の少女が這い出てきた。
 少女はよろめきながらもクレーターの中央へと歩み寄り、自分と同じ顔をした人型の前で膝をついた。

「サファイア……無事?」
『……はい、辛うじて。現状、何の機能障害も起きていません』

 ぼむんっ、と気の抜けた音を立てて人型は消え、替わりに一本の杖と一枚のカードが現れる。
 杖は言うまでもなくサファイア。カードには髑髏のような顔の人物と『Assassin』の文字が描かれていた。

「丈夫なんだね。流石は彼のゼルレッチが作った魔術礼装。
 けどごめんね、バーサーカーの攻撃を代わりに受けてもらって」
『いえ。アサシンの役割は元より囮。美遊様が気に病む事はありません』

 あの瞬間。
 バーサーカーが美国邸ごと美遊を叩き潰そうとした直前。
 美遊はアサシンのクラスカードを限定展開(インクルード)し、美遊と同じ姿になったサファイアを囮に身を隠したのだ。
 そのおかげで多元転身(プリズムトランス)は解け全身が激しく痛むが、それでも死なずに生き延びる事が出来たのだ。
 美国邸の崩壊で潰されなかったのは、純粋に幸運からだ。

 このカードを見つけたのは、【C-7】の森の中だった。
 そこにデイバックごとこのカードが放置されていたのだ。
 中にあった支給品はカードだけだったが、それでもこのカードを置き去りにしてくれた誰かに感謝する。


『それよりも美遊様。早急に多元転身(プリズムトランス)をし、怪我の治癒を行ってください』
「それはダメ」
『何故ですか!?』
「バーサーカーに気付かれる」
『それは、どういう……』
「やっと気付いた。バーサーカーは、私達の魔力を目印に追って来ていたの」
『……!』



 そう。それこそが真理たちが逃げ切れ、美遊がここまで追い詰められた原因だった。

 バーサーカーはもうは目も耳も機能していない。
 ならば何を以って獲物を探すかと言えば、気配しかないのだ。

 そして魔力を持たない真理たちと、膨大な魔力の塊と言ってもいい美遊たち。
 魔力を感知できる者にとって、そのどちらが見つけやすいかなど考えるまでもない。


「だから暫くは、このまま待機。安全だと確信出来たら、それから転身して治癒をする」
『………わかりました。では、周囲への警戒は任せてください。それくらいならバーサーカーに気付かれる事はないでしょう』
「お願い。私はちょっと休む」

 そう言うと美優は、瓦礫の中から身を隠せるだけの隙間を見つけ出し、そこで体を横たえた。
 そのまま眠る様に目蓋を閉じる。

(真理さん、タケシさん―――イリヤ。
 みんな、無事でいて)

 そう、心から願いながら。


【D-7/美国邸跡地/一日目 黎明】

【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:ダメージ(中)、
[装備]:カレイドステッキサファイア@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(二時間使用不可能)、支給品0~1(確認済み)、タケシの弁当
[思考・状況]
基本:イリヤを探す
1:今は休む
2:園田真理、タケシの安否を確認したい
3:凛を始め、知り合いを探す
4:真理の知り合いと出会えたら、真理のことを伝える
5:『オルフェノク』には気をつける
6:町村にある『衛宮邸』が気になる。行けるなら行って確認してみたい
[備考]
※参戦時期はツヴァイ!の特別編以降
※真理から『パラダイス・ロスト』の世界とカイザギア、オルフェノクについての簡単な説明を受けました
※真理から『乾巧』、『長田結花』、『海堂直也』、『菊池啓太郎』、『木場勇治』の名前を教えてもらいましたが、誰がオルフェノクかまでは教えてもらっていません
※カレイドステッキサファイアはマスター登録orゲスト登録した相手と10m以上離れられません


【クラスカード(アサシン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
バーサーカーに支給。
アサシンのサーヴァントの姿が描かれたカード。
限定展開する事で、カレイドステッキがマスターの写し身に一時的に変化する。
が、その代わりマスターの多元転身(プリズムトランス)は解除される。
一度使用すると、二時間使用不可能。


[全体の備考]
※【D-7】の美国邸は全壊しました。跡地中央部にはクレーターが形成されています。


033:命の長さ 投下順に読む 035:「No Name」
032:探し物はなんですか? 時系列順に読む 036:The Third
030:ばーさーかーとのそうぐう 美遊・エーデルフェルト 046:「ナナリー・ランぺルージって奴の仕業なんだ」
バーサーカー 073:最強の敵


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