概要
ユピトル学園主権連合体の統治領域は、同国が正式に領有する恒星系と、各星系に属する諸天体の総体である。
星々は開発の段階を異にし、首都星を擁する中心星系から、テラフォーミングを経て居住域に加わった天体まで版図に並ぶ。
領有星系
番号n1からn4は、正式に領有する三つの恒星系のうち連星系を成す恒星に振られ、各恒星を回る天体は「〇番星第〇惑星」の形で示される。
エールミトナ星系
エールミトナは、九つの惑星を従えるG型主系列星の黄色矮星である。この星系は領有域で最も開発の進んだ中心星系にあたり、学園国力の75%を一手に担う。住民を段階的に他の天体へ移す計画は、人口の8割以上が星系内に暮らす偏りを和らげる狙いから本格化した。投資は今もエールミトナに集中している。発達した
テラフォーミング技術は新たな居住域の開拓に道を開いたものの、国内外の防衛に資源を割く事情から、開拓の多くは後回しにされている。外縁を回る三つの巨大ガス惑星は、いずれも水素とヘリウムを主体とする分厚い大気に微量のメタンを含み、外から飛来する天体を引き寄せて内側の惑星を守る防波堤の役目を果たしてきた。遠古代に到達した超新星爆発の余波は、星系内の広い空域に散光星雲を残した。点在する残骸は貴重なエネルギー源として採取され、得られた資源は適合中継システムの稼働に回されるほか、星系内の交通機構を動かす動力にも組み込まれた。
▲第1惑星ユミルレンデル
この岩石惑星は、恒星エールミトナに最も近い軌道を回り、古くから採掘の拠点として掘り進められてきた。坑道は地下の深層にまで達し、掘削の跡は広大な都市区画に転用されて岩盤の内側に広がる。深層の環境は地表から隔たり、隔離の用途にも適していた。多くの政治犯は、
平和権利条約の締結以前、この深層に収容されている。隔離の役目は、
文明共立機構の発足後、より過酷なマルステイナの開発に引き継がれ、惑星は隔離惑星としての地位を失った。地下の都市区画は、役目を終えた収容の区画を含めて大規模に整備され、用途を一から組み直された。主星に最も近い軌道は、恒星の放つエネルギーを最も多く受け止める立地にあたる。惑星は、共立公暦1000年現在、余剰のエネルギーを蓄える発電惑星として稼働しており、備蓄の拠点を地下の深層に構えている。採掘の時代に掘られた坑道は送電の経路に生かされ、地表で得たエネルギーを深層の備蓄層まで運ぶ。
▲第2惑星シェルドテラック
解放されたドロイドは、主星に近い岩石惑星を新天地とし、高温の砂海に覆われた土地で開拓を進めている。テラフォーミングは共立公暦859年に始まり、同885年に第1フェーズを終えた。移民計画は
ユピトルの居住惑星で最も早く進み、惑星は製造を経て新たに公民権を得た2型アンドロイドの受け入れ先に指定されている。第1フェーズは移民の暮らす都市の環境を整え、多くの住民は砂海に囲まれた都市の内側で快適な生活を送る。移り住んだ住民は、惑星の運営を自らの手で担う自治権を確立した。砂海そのものの緑化は、第2フェーズの課題として残された。
リズミカルパネル(
令咏術式パネル)は環境制御を司る装置であり、改良を重ねて緑化の歩みを着実に速めている。緑の根付いた一帯は都市の外縁から砂海の側に少しずつ張り出し、居住に適した土地を押し広げていく。
▲第3惑星ロヴィンエルナ(首都星)
首都星は、始祖来航の聖地として数千年の歴史を刻み、地球によく似た環境を持つ準海洋惑星にあたる。
武装赤軍の
移民船が来航した時点で、既に人の住める環境を備えていた。肥沃な島々は中経度に広がる大海(中央洋、または内海)に点在し、古来、大陸間を結ぶ貿易の要所(神バイオーム)として栄えてきた。少し離れて広がる南北の大陸は鉱物資源の産地にあたり、採れた鉱石は宇宙船の強化装甲に加工されるほか、用途に応じて各種の素材に姿を変える。不毛の黒原地帯は西側の四大陸に広がり、東のナハルドーラ大陸は縦に長く伸びて、獰猛な肉食森林に覆われた。多数の地下都市は古代文明の名残であり、互いに連結して複雑な交通網を形づくっている。巨大生物は、外縁のガス惑星に守られて隕石による破滅的な絶滅を免れ、今も地上に数多く生き残る。
害獣の被害は続いており、地上軍が度々掃討に乗り出している。
▲衛星ユピトリー
直径約3500kmの小さな衛星は首都星の周りを公転し、旧暦時代の遺跡を改装した施設群を今も稼働させている。遺跡の構造を土台に用いる改装は、基礎を一から築く手間を省き、施設の拡張を早めてきた。公共の巨大造船所は衛星に建設され、多くの軍事コンビナートが周囲を取り巻く。重力の弱い小さな天体は、建造した船体を軌道に送り出す負担が軽く、造船に向いた環境を備える。衛星は、造船と軍需の拠点を一つの天体に集める配置から、
ユピトルの生産体制を担う重要拠点の一つに数えられる。
平和維持軍の部隊は、生産の要を守るために多数駐留し、造船所の周辺空域に目を配っている。複数の都市区域は地下に広がり、居住の空間は長い年月をかけて掘り広げられ、地表の工業施設と層を分けて人々の暮らしを収める。遺跡の改装で生まれた空間の一部も、地下の都市区域に組み込まれた。
▲第4惑星ツォルマール
この主要惑星は、首都星に次ぐ人口を抱え、星系の重要拠点の多くを地表に集める。外惑星系の人類は、旧暦時代に
移民船が入植したことを機に、数多く根を下ろした。入植者は長い時をかけて惑星環境の改造を重ね、地表は人に害を及ぼす動植物の姿を消して、移り住む人々にとって新たな楽園となった。ツォルマールは、
新秩序世界大戦の激動期に焦土と化した時期もある。地表は再び人の手で整えられ、今日では首都星と並んで星系の産業を支える柱に育った。水の分布は改造とともに広がり、湿りが内陸の乾いた土地にも行き渡ると、居住に適した土地は陸の奥に向かって伸びた。改造の歩みは海の規模にも及び、海洋の面積比率は共立公暦の半ばに50%を突破した。準海洋惑星の区分に加えられ、海と陸が地表を分け合う姿に落ち着いた。入植の波は穏やかな環境に惹かれており、旧暦の後にも繰り返し押し寄せている。
▲第5惑星セトルティラト
灰色の砂粒は岩石惑星の地表を一面に覆い、異様なまでに平らな光景を地平の果てまで広げる。飛来物の多くを外縁の大型惑星が引き受けてきたことから、衝突に乱される機会も少なく、高低差のほぼ消えた姿を保ってきた。
セラズロイ鉱石と豊富な天然ガスハイドレートは地中に眠り、資源を掘り出す採掘基地の建設を促した。氷の結晶にガスを閉じ込めた形をとり、採掘基地は掘り出した結晶から必要な物質を取り出す工程を備える。
ユピトルの学園系列企業は、エネルギー問題の解決から久しい今日、テラフォーミングを手掛けており、灰色の地表は僅かながら緑を帯び始めた。平坦な地形は部隊の展開にも都合がよく、多くの学生部隊が駐留する。
平和維持軍も、ここで演習を盛んに行っている。採掘と軍事の拠点を兼ねて厳重な警戒区域に指定され、一般国民の入域には特別な許可が求められる。
▲第6惑星トールシルス
幾層にも重なる巨大な輪が、周囲を巡る。第8惑星に次ぐ規模のガス状天体である。輪の素材は、
新秩序世界大戦に由来する工業船が自己修復を繰り返す過程で撒き散らした、大量のガラス片にあたる。残骸には時を経て更なる反応が加わり、惑星の雲は今日見られる暗い赤茶色に染まった。毒性の風は大気の上層にまで吹き荒れ、開発の着手を長く後回しにさせてきた。複数のサルベージプラントが軌道上を周回しており、駐在する一部の職員が輪に散らばる残骸の回収に当たる。プラントの軌道は毒性の風を避けた高さに取られ、職員の作業もプラントの内側で完結する。回収された残骸は素材ごとに選り分けられ、再利用の道を探られる。惑星そのものに手を入れる計画は、過酷な環境ゆえに、具体化の目処を待つ段階にある。
▲第7惑星グロノスーラ
白に近い黄色を帯び、メタンと、ほぼ同程度の硫化水素を含む。過酷な環境を他のガス惑星と同じく抱える一方、大気の上層から低軌道にかけての空域は比較的安全な航行を許す。硫化水素の混じる大気は金属を蝕む性質を帯びており、周回する施設は、大気の層から距離を取った高さに置かれてきた。穏やかな空域を生かして中継ステーションが周回し、外縁と内側の惑星を行き来する船に補給を施す。複数の防衛要塞も軌道を巡り、外からの飛来物を受け止める位置に立つことから、安全保障上の重要な防衛目標に数えられた。グロノスーラの軍事化は、航行の安全な空域が要塞の配置を可能にし、守りの役目が新たな施設を呼び込む循環によって、一段と進んでいる。要塞の砲列は、外縁から内側に向かう航路を見下ろす位置に据えられ、通過する船の動きを常に追っている。
▲第8惑星ゲフレイバール
エールミトナにおいて、中心星に次ぐ質量を持つ。アルコールの醸造拠点としても名高い、巨大ガス惑星である。ワインレッドに染まった色合いが特徴で、水とエタノールも、ほぼ同程度に含まれる。アンモニアとフェノールフタレインは表層に漂い、両者の作用が独特の色を生んだ。分離システムを備えた複数の自動工場が周回し、今日でもエタノールを取り出すために稼働している。施設内の機械は大気を汲み上げて成分ごとに選り分け、醸造の原料となるエタノールの精製を、人の常駐を最小限に抑えて回す。精製を経た原料は、取引の現場に向けて内側の惑星まで運ばれる。原料の供給が安定したことで
ユピトルの産業の一角に育ち、醸造史の歩みに大きな影響を及ぼした。外縁に構える巨体は空域の戦略上も要地にあたり、
平和維持軍の拠点として重視されてきた。惑星で最大の質量は、外から飛来する天体を最も強く引き寄せる力にも直結する。
分厚い氷に全域を閉ざされた、巨大監獄惑星である。旧暦時代には、
セトルラームの政策のもとで多くの犯罪者が送り込まれた。主星から最も遠い軌道で凍て付いた地表は、収容者の逃亡を阻む壁となる。人の制御を振り切るキメラ生物も、凍土の一角に設けられた実験場で隔離されている。外縁の低温のもとで氷は一年を通じて厚みを保ち、広大な氷原そのものが、収容者とキメラ生物を囲う外壁の役目を兼ねる。上空には7基の空中要塞が浮かび、氷原の動きを上から見張る。周辺の空域を押さえるのは、星系の防衛に充てられた
ユピトル航空宇宙軍の打撃群と、
平和維持軍の艦隊であり、脱出は実質的に不可能とされた。監守長と主任受刑者は収容の現場で協力して秩序を保ち、一種のディストピアを形づくっている。時代が下ると、系列企業による開発の手も氷の惑星に伸びた。
ネルトヴィンリル星系
F型主系列星n1(ネルトヴィンリル1)を主星に、二つの赤色矮星(n2、n3)とK型主系列星(n4)が連なる四連星系である。天体は、四つの恒星が絡み合う重力のもとで複雑な軌道を描く。人の居住に厳しい環境を押して、宇宙新暦1500年代には
セトルラームの手で開発が進められた。その後は
新秩序世界大戦のさなか、
帝国艦隊との戦いで疲弊し、長く荒廃が続いた。同4500年代初頭にセトルラーム艦隊が帰還すると、航路の中継拠点としての価値を見出され、復興の道を歩み出す。抵抗軍は同4525年に始まる独立戦争の中で宙域を奪い返し、中継拠点として整えられた施設を防衛の拠点に転じた。複雑な軌道を描く天体の配置も、外から侵入する艦隊にとって針路の見極めを難しくし、守りの側に利をもたらした。共立公暦1000年現在、要塞化を経た星系の全域を
平和維持軍が守っている。
▲4番星第1惑星ブラムスティ
n4を回る唯一の天体であり、星系で最も開発の進んだ岩石惑星にあたる。ハビタブルゾーンの外縁すれすれを公転し、地表の全域を氷が覆う。険しい山脈が凍結した地表に連なる一方、地熱の集まるホットスポットは赤道域に点在する。開発の拠点は、熱を得られる僅かな土地に寄り集まった。主星の熱を補う地下の熱源が地表の温度を左右し、地熱の分布が人の活動の及ぶ範囲を描き出している。開発の歩みも、氷原を縫って熱源の間を結ぶ経路の確保に懸かってきた。
新秩序世界大戦の時代には、他の星系と同じく
帝国遠征軍の脅威に度々晒され、星系で最も深刻な被害を受けた。主戦場となった氷原には旧文明の廃墟が半ば埋もれたまま残り、惑星は長らく停滞の時代を過ごした。氷に閉ざされた地表は大戦の痕跡を風化から守り、廃墟は戦いの当時の姿を今に留めている。
ジェクステルナ星系
K型主系列星の橙色矮星ジェクステルナが、五つの惑星を従える。第2惑星を除く全ての天体は不毛なガス惑星にあたり、人の営みは長らく軌道上のスペースコロニーの中で続けられてきた。地上に居住域を持つ天体を欠いた時代、コロニーは星系の暮らしを収める唯一の器であった。転機をもたらしたのは、独立戦争終結後の研究協定に基づく計画であり、第2惑星の緑化を加速させて居住の場を地上に広げた。同惑星の地表が住める土地に変わると、コロニーで暮らしてきた住民の一部が地上に移り、系内人口の重心は惑星の地表に寄った。共立公暦888年には系外企業が生化学拠点を設け、開設に伴う働き口が移住を呼び込んだ。以後は人口を勢いよく増やし、エールミトナに次ぐ規模の主要星系に育った。同1000年現在は、全域に
平和維持軍の部隊が駐留している。
▲第2惑星アルソレイム
ハビタブルゾーンから僅かに内側の軌道を回る、岩石惑星で、ガス状と見紛うほどの分厚い大気を持つ。大気の層が熱を閉じ込めて地表を高温に晒し、長きにわたって手付かずのまま放置された。共立公暦797年に
文明共立機構の支援が本格化すると、先の協定を機に進んだ技術革新がテラフォーミング計画を後押しした。第1フェーズにあたる部分緑化は、高度成長期(エールミトナの奇跡)の最中の同831年に完了している。植生は、足掛かりの築かれた土地から惑星の各地に広がっていった。続く第2フェーズでは、大気中に大量の
リズミカルミサイル(生物凍化律動弾)を爆散させ、光合成の促進が図られた。同888年には緑化が全土に及び、テラフォーミングの全工程を終えた。今日では、ツォルマールに次ぐ規模の産業惑星となり、多数の自動コンビナートが集中する生産拠点として栄える。
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最終更新:2025年03月03日 17:32