グロノヴェイル包囲戦


概要

 共立公暦1007年夏、ユミル・イドゥアム連合帝国が東部戦線から撤退した後、家族や恋人のいない350名で構成された義勇兵団が、セトルラーム軍に合流し、南部戦線の革命記念都市グロノヴェイル包囲戦に投入された。この義勇兵団は、第12精鋭歩兵軍と第3機械化軍団の精鋭有志からなり、主力戦車ガルム・ヴェルデ2台、長距離プラズマ砲ヴォルザード1門、そして本国で待機していた宙軍の駆逐艦セラーヴァ級2隻(57番艦リヴェルア・ヴィ・レヴールと107番艦ナスカヤ)を装備していた。帝国の世論対策として、義勇兵団はセトルラーム軍に完全に扮し、戦車や艦にはセトルラームの青灰色の塗装と紋章が施され、兵士たちはセトルラーム製の制服とヘルメットを着用。帝国の関与を隠すため、無線通信でもセトルラームの呼称が使われた。彼らはセトルラーム軍主力部隊約5万名と、オクシレイン大衆自由国軍約2万名とともに、コックス軍残党と民兵を含む10万を超える大軍が死守するグロノヴェイルを包囲した。都市はティラスト派の精神的な拠点であり、「革命聖堂」がそびえる象徴的な場所だった。セトルラームの第4世代ゾラテス級事象界域制圧艦が上空を支配し、その巨大な影が焦土に落ちる中、連合軍は大規模な地上戦を準備。義勇兵団は補給線遮断の特殊任務を担い、コックス軍の後方支援を断つ役割を果たした。戦いの背景には、コックス政権の崩壊を加速させたいセトルラームと、ティラスト派の圧政を打破して民衆を解放したいオクシレインの思惑が交錯していた。義勇兵団は戦場で「帝国の亡魂」ではなく「セトルラームの尖兵」として振る舞い、戦後、生き残りは1008年の終戦後に帝国本土へ静かに帰還した。

経緯

 戦いはグロノヴェイル郊外の焼け野原と化した平野で幕を開けた。コックス軍は正規軍3万と民兵7万を超える混成部隊で構成され、鹵獲した帝国製レーザーライフルやヴァルヘラ州のレアメタル製装甲車に加え、簡易バリケードや手製の爆発物を駆使して防衛線を構築していた。聖堂を中心に放射状に広がる陣地は、都市全体を要塞と化し、民兵の士気はティラスト派の狂信的なスローガンで高められていた。連合軍は総勢7万5000名で包囲網を形成し、義勇兵団はセトルラーム軍の右翼に配され、補給線遮断の任務を遂行。ガルム・ヴェルデ2台はセトルラームの塗装で偽装され、60トンの巨体が地響きを立てて進軍。プラズマ砲の青白い閃光が補給基地を直撃し、倉庫が爆発して黒煙が空を覆った。ヴォルザード1門は射程100kmの威力で敵の移動式砲台を次々と破壊し、直径50mのクレーターを残してコックス軍の反撃を封じた。セラーヴァ級駆逐艦2隻はセトルラームの艦隊旗を掲げ、全長200mの艦体から粒子ビームを放ち、補給トラックや燃料庫を炎の海に変えた。オクシレイン軍は左翼に展開し、高機動歩兵1万と軽戦車50両を投入。軽量なレアメタル装甲で時速80kmを誇る戦車がコックス軍の側面を撹乱し、フレイブ・アン・エイランダーン・ヴィン・カクセル(freib an eylandán vin kakser)の指揮の下、民兵に投降を呼びかける拡声器戦術を展開した。初戦は3日続き、義勇兵団は30名、オクシレイン軍は200名、セトルラーム主力は1000名の損失を被ったが、コックス軍の補給網に深刻な打撃を与え、民兵の混乱を誘った。

 市街戦に突入すると、グロノヴェイルの廃墟と化した街路で戦闘が激化した。コックス軍の民兵は訓練不足ながら圧倒的な数で押し寄せ、聖堂周辺に積み上げられた瓦礫や焼け残ったビルを盾に抵抗。義勇兵団はセトルラームの制服の下にアイギス・ヴェールを隠し、エネルギーシールドで敵の銃撃や手製爆弾を防ぎつつ、補給路を攻撃。ガルム・ヴェルデ1台が民兵のロケット弾の集中攻撃で大破し、操縦士が炎の中で絶叫しながら脱出を試みたが間に合わず戦死。残った1台はプラズマ砲でバリケードを溶かし、連合軍の進軍を支えた。セトルラーム主力は5万の兵力を正面に投入し、ゾラテス級の長距離砲撃と連携して敵陣を分断。戦闘機と無人ドローンが空を埋め尽くし、焼夷弾が市街を赤く染めた。オクシレイン軍は後方から援護し、高機動歩兵が民間施設を解放しながら進攻。カクセルは民兵に「自由を選べ」と呼びかけ、数千人が武器を捨てて降伏した。この段階で戦いは1週間続き、義勇兵団は70名、オクシレイン軍は1000名、セトルラーム主力は5000名の損失を出し、コックス軍は2万が戦死または降伏。セラーヴァ級は聖堂上空で補給庫を集中攻撃し、爆発で聖堂の外壁が崩れ落ち、連合軍の包囲網が完成した。

 最終局面では、ゾラテス級がグロノヴェイル全域に壊滅的なミサイル攻撃を加え、聖堂周辺が瓦礫と灰の海と化した。義勇兵団はセトルラームの命令で聖堂周辺の補給拠点に突入し、残り250名で白兵戦を展開。狭い路地や崩れた建物内でコックス軍の正規兵と民兵の混成部隊と激突し、血と汗にまみれながら敵を制圧。セトルラームの偽装制服が泥と血で汚れても、彼らは任務を貫き、指揮官を捕縛した。オクシレイン軍は聖堂裏手の防衛線を突破し、高機動歩兵が民兵を掃討しながら市民を避難させた。カクセルは自ら前線に立ち、民兵の降伏を促しつつ、聖堂裏の倉庫を占拠。セトルラーム主力は総攻撃で残存勢力を壊滅させ、ゾラテス級の無人戦闘機が最後の抵抗者を焼き払った。戦闘は10日目に終結し、コックス軍は8万以上が死傷または降伏。連合軍は義勇兵団100名、オクシレイン軍3000名、セトルラーム主力1万5000名の損失を記録し、グロノヴェイルは陥落した。

影響

 グロノヴェイル包囲戦は、コックス軍の10万を超える戦力を打ち破り、ティラスト派政権の崩壊を決定づけた。義勇兵団の補給線遮断は連合軍の勝利に欠かせない一撃となり、セトルラームから「我が軍の楔」、オクシレインから「影の自由戦士」と称賛されたが、セトルラーム軍に扮していたため、その功績は帝国ではなくセトルラームに帰された。戦後、義勇兵団の生き残り250名は1008年の終戦後にセトルラーム軍から離れ、帝国本土へ帰還。家族のない彼らは、故郷の工業都市の灰色の空の下で静かに暮らし、戦場の記憶を胸に秘めた。帰還兵の中には、セラーヴァ級の操縦士として戦った若者がおり、彼は戦後、帝国の宙軍訓練学校で後進を指導する道を選んだ。オクシレイン軍は市民解放の功績でロフィルナ民衆の支持を得たが、セトルラームとの戦術的対立が表面化し、戦後の星域勢力図に緊張をもたらした。センジュ・アン・アクセルン・ヴィン・アンニオは戦後、ロフィルナの新興国家との連携を模索し、民主主義の旗を掲げ続けた。

コックス軍の壊滅はロフィルナの分裂を加速し、グロノヴェイルは焦土と化して復興の望みを失った。聖堂の焼け跡には民兵の遺体が散乱し、かつての繁栄は灰と瓦礫に埋もれた。義勇兵団の装備の一部、例えば大破したガルム・ヴェルデの残骸や鹵獲されたレーザーライフルは、第三勢力であるステラム・シュラスト州軍政府に流れ込み、彼らの軍事力を強化。戦後の混沌の中で、これらの装備が新たな火種となり、星域全体に不安定な空気を漂わせた。セトルラームは勝利を誇ったが、1万5000名の損失とオクシレインとの軋轢により、国内で厭戦感情が広がり、ヴァンス・フリートン大統領への批判が高まった。義勇兵団の帰還は帝国国内で静かに受け入れられたが、彼らの物語は公式記録に残らず、戦場での犠牲と勇気は忘れ去られた。一方で、グロノヴェイルの陥落はロフィルナ民衆にティラスト派の終焉を印象づけ、新たな国家誕生への希望と混乱を同時に生み出した。

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歴史
最終更新:2025年03月30日 16:07