スティグマ・ヴェイル・インターセプト


概要

 「スティグマ・ヴェイル・インターセプト」は、共立公暦1008年に展開された。第三次ロフィルナ革命における緊急軍事作戦の一つである。西部戦線(グロノヴェイル周辺)が舞台となった。コックス政権下の精鋭部隊「国家戦略軍」は、極秘裏に化学兵器「Tバイオロジカル・スフィア」の改良型(通称、K2トライデント)を準備していた。この兵器を使用し、各戦線を壊滅させることで革命の戦局を打開しよとする計画であった。本作戦は、この企てを阻止するために立案された。実行にはオクシレイン大衆自由国共立機構国際平和維持軍セトルラーム共立連邦という歴史上類を見ない三勢力の連携が不可欠とされた。王国の大宰相レルナルト・ヴィ・コックスはK2トライデントの使用を示唆しながらも、実態としては政権内部において強く反対していた。しかし、国家戦略軍の司令官ゼヴァン・クルードが独断で計画を推進していたことが発覚した。国際社会(連合軍)の主目的は、戦争の長期化による人道危機の悪化を阻止することにあった。オクシレインは、最先端の航空宇宙技術と精密な情報分析を提供した。平和維持軍は迅速な地上展開に加えて、人道支援のノウハウを担った。セトルラームは重武装艦艇による圧倒的な火力を供給した。三勢力が、それぞれの強みを活かした共同作戦へと踏み切ったのである。熾烈な戦闘の末に連合軍は成功を収めた。国家戦略軍の野望を打ち砕き、戦線の崩壊を食い止め、ティラスト派政権の終焉を早める決定的な一撃となった。この結末は、ロフィルナ国土の分裂を加速させ、イドゥニアの勢力図に変動をもたらした。その影響は、ロフィルナのみならず「周辺国家の運命にも波及した」と記録されている。

背景

東西戦線の危機

 長きにわたって続く革命戦争の終盤、ロフィルナ社会は一つの節目を迎えた。レルナルト・ヴィ・コックス率いるティラスト派政権は、各方面(連合軍、王党派、共和派、その他の反動軍閥)からの攻撃に耐えきれなくなっていた。西部戦線の要衝、革命記念都市グロノヴェイルは、先の包囲戦によって事実上陥落した。ゾラテス級が繰り出す連続爆撃は、ティラストの防衛線を粉々に打ち砕いた。街は変異キメラが徘徊する不毛の廃墟と化し、各地の補給路は完全に遮断された。ヴァルヘラ州軍政府からの支援物資も細る一方だった。コックス軍の兵士達は飢餓と疲弊に苦しんだ。脱走者が続出し、戦線の維持すら困難になっていた。北部戦線では、王党派の各部隊が必死の抵抗を続けていた。しかし、連合軍の圧倒的な武力に圧され、沿岸部の支配を次々と失っていった。この状況に至り、ティラスト派の軍事的優位は消滅して久しかった。コックス軍内部においては、政府の指導力に対する不信感が渦巻いた。一部の将校は公然と非難するほどだった。絶望的な状況下で、国家戦略軍の司令官ゼヴァン・クルードは極端な手段に打って出た。ティラスト内部においても長らく禁忌とされた、K2トライデントの使用を決断したのである。この兵器は、致死性の神経ガスを広範囲に散布する恐るべきものだった。改良型では、拡散速度の向上に加え、既存の解毒剤を無効化する特性が追加されていた。ゼヴァンの計画は、王国各地を侵食しつつある全ての敵勢力に「相応の結末」を与えることだった。戦線の再掌握に躍起となり、如何なる犠牲を払ってでもティラスト国家の尊厳を貫く構えであった。彼は一人の戦士として、ロフィルナの独立を守るためなら極端な手段も辞さない信念を掲げていた。しかし、この計画はコックスの明確な承認を得ていなかった。中道派の抵抗もあったが、ゼヴァンはそれを一蹴し、秘密基地での準備を加速させた。

三勢力の連携と危機意識

 連合の偵察艦隊が、K2トライデントの機動準備を察知したのは、共立公暦1008年9月下旬だった。衛星画像には、旧式爆撃機に不気味な緑色のキャニスターが積み込まれる様子が鮮明に映し出されていた。分析官は即座にその危険性を認識し、情報は共立機構の上層部にも伝えられた。オクシレインの情報分析チームは深刻な警告を発した。化学兵器が使用されれば東部戦線のみならず、イドゥニア全域が壊滅しかねない―――ガスが他のセクターにも拡散して長期的な環境汚染を引き起こすという内容だった。報告を受けたセンジュ大統領は緊急閣議を招集した。大総統府にも危機を共有して支持を結集させた。一方のセ連大統領ヴァンス・フリートンは激昂した。王国政府による明確なデッドラインの踏破(=過去技術の悪用)に直面したからである。彼は国内外の反対を押し切り、更なる増派に踏み切った。メレザ・レクネール常任最高議長は、人道主義の立場から「全てに憂慮している」旨の声明を出した。

経緯

作戦の開始・三勢力の展開

 共立公暦1008年10月1日、オクシレイン軍第27特殊作戦連隊を中核とする連合軍が本作戦の火蓋を切った。空軍は航空戦闘母艦を中心に展開され、重巡航艦、巡航駆逐艦、スペクトルフリゲートで構成された。主力戦闘機を偵察と迎撃任務に投入し、ゾラテス級を含む多国籍戦力の連携を実現した。フレイブ中将は、作戦会議で自ら危険な任務を引き受け、長きにわたるティラストの恐怖に終止符を打つことを誓った。彼の指揮下で、オクシレイン空軍は精密な攻撃計画を立案した。膨大なB.N.S.データを活用し、敵の動きを予見したという。平和維持軍・中央総隊(FT2)の介入も想定される中、レクネール議長はTB国際戦力を主力とする大規模な地上部隊を動員した。セトルラーム軍は、T4戦闘爆撃機、L3武装ヘリ、セトライナーからなる重航空支援を担った。

造反部隊の終焉

 11月初旬、国家戦略軍はグロノヴェイル近郊の隠された飛行場から出撃を試みた。K2トライデントを搭載した旧式爆撃機と護衛戦闘機を発進させようとした。オクシレインの偵察機がこの動きを事前に捕捉した。三勢力にリアルタイム情報が共有され、ステルス性能を誇るT4戦闘機が敵機に接近した。最新のMQGMが護衛機を破壊し、オクシレイン軍機が爆撃機を離陸前に破壊した。爆発音が山岳地帯に響き、炎と黒煙が空を覆う中、特殊部隊が飛行場に突入した。隊員たちは識別機能付きのガスマスクを装着し、敵と激しい銃撃戦を繰り広げ、化学兵器貯蔵庫の制圧へと至った。TB国際部隊は、市街地の攻略にあたった。セトルラーム空軍の追撃で国家戦略軍は夥しい数の護衛機を失い、残る爆撃機も全て撃墜された。ゼヴァン・クルードは、先の空戦と平行して本命の射出機構による大規模な面火力投射を加えた。しかし、最終的にはオクシレインのエースパイロットに妨害され、秘密基地ごと吹き飛ばされる結末を迎えた。爆発で施設と兵器の大半が焼失し、地下は瓦礫の墓場と化した。残るロフィルナ兵は戦闘中に死傷、または投降するなどして連合軍に拘束された。一方の市街地では、武装市民による抵抗が根強く、本作戦は12月まで延長された。これをもって、K2トライデントの使用を完全に封じることとなった。

影響

 本作戦の成功は、東部戦線の早期終結を促し、コックス政権の崩壊を決定的なものとした。化学兵器の使用が防がれたことで、世界的な報復攻撃のエスカレーションは回避された。これにより、更なる決着への道筋が立てられると、戦局は王党派主導の全国的な抵抗路線にシフトし、諸外国の利害が衝突する流れを辿った。センジュ大統領は、この勝利を「技術と団結の結晶」と称え、イドゥニア星内における影響力を一層強化した。フレイブ中将の指導力は国際社会で高く評価された。オクシレインの国民からも英雄として称賛され、この功績は、戦後秩序の成立を促す大きな転換点の一つとなった。一方、セトルラーム国内では戦時負担に対する不満が高まりつつあり、フリートン大統領の政権運営に暗雲が立ち込めた。コックス政権内では、国家戦略軍の独断行動がティラスト派の統制崩壊を露呈した。平和維持軍による捕虜への尋問で、コックスが計画を把握していなかったことが知れ渡ると、「新たな黒幕説」が浮上し、彼の指導力への疑問が深まった。本作戦を含む一連の衝突により、多くの防壁が失われた結果、ユリーベル島全域に変異キメラが侵食する大惨事を招いた。統治の主体となる公国政府からは、連合軍(特にセトルラーム)に対する抗議の声が上がった。一部の歴史家は、この作戦が「ロフィルナの運命を分けた瞬間」であり、「星域全体の未来に新たな課題を投げかけた」と評している。

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歴史
最終更新:2025年10月29日 00:19