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  • 真贋バトルロワイヤル
  • この願い、たとえ魔法がなくたって(前編)

真贋バトルロワイヤル

この願い、たとえ魔法がなくたって(前編)

最終更新:2025年02月04日 14:57

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 「上手いね。彼。
 一見全参加者を敵に回すような放送だったけど、考えた上での発言だね。
 たったあれだけの放送と演出で、100を超える参加者の思考を誘導している。」

 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの放送が終わり、マイは満足げな声を上げる。
 マイの発言に、隣で佇む覇世川左虎は「成程」と顎に手を当てた。

 「確かに、彼奴の放送は困惑(パニック)だった一般人(パンピー)達には選択肢となったはず。
 ”ルルーシュの側に就く”か”ルルーシュと対立する”かの二者択一。
 無軌道(バラバラ)に動くはずだった大半の参加者は、そのどちらかを選ぶようになる。それがルルーシュの狙いだと?」
 「アタシはそう思うよ。彼は意図的に参加者に徒党を組ませようとしている。
 バラバラに動いちゃ。羂索の目論見通り殺し合いになる。
 彼はそうなることを嫌ったんだろうねぇ~。
 目の前に分かりやすい目的や択があることは、先の見えない目標よりずっと人の行動に影響を与えるからね。」
 「”信ルルーシュ”と”反ルルーシュ”。どちらだろうと思想の一致する者たちで集えば、殺し合いの場であろうと生存率は格段に上がる。
 ――成程、そう考えるとあの喧嘩腰(イキ)った発言もパフォーマンスとして有効に働く。奇策の類だが、妙手ではあるな。」

 理知的(きれもの)な彼はすぐさまマイの発言の意図を、ひいてはルルーシュの目的の大枠を掴み。彼なりに噛み砕く。
 マイにとって100点に限りなく近い回答であることに。「その通り! c'est exact(シットイグザクト)!」と上機嫌な笑顔を浮かべた。
 この推測が確実である保証はない。
 だが、マイ=ラッセルハートは人間の脳に造詣が深く。並び立つ左虎も超一流(ゴッドハンド)の名医だ。
 人間についての理解も知力も一流の2人が出した推測は、ルルーシュ・ランペルージの目的と大きくは外れていなかった。

 「流石左虎っちは理解が早いね。」
 「これでも聖帝大卒の優等生(エリート)ぞ。
    ・・・・・・・・・・・・・・
 だが、マイ先生に褒められるとなれば、流石の左虎も頬が緩む。」

 左虎が醸し出していた張りつめる空気が、マイを前に大きく萎む。
 普段の左虎であれば絶対にしないであろう油断(フヌケ)た態度。東京忍の長たる神賽惨蔵が居れば激怒していただろう。
 そんな態度が許してしまうほどに、覇世川左虎はマイ=ラッセルハートを信用しているし信頼していた。
 植え付けられた贋(いつわり)の思い出、それがある限り左虎がマイを疑うことはあり得ない。

 (さて、アタシはどう動こうかな。
 繰田孔富は兎も角、邪樹右龍がルルーシュの放送を見て動かないとは考えにくいし……)

 一方のマイは強張った額に皴を寄せていた。
 最初の動きは成功した。覇世川左虎という強力な手駒を手に入れた。
 忍者としての高い身体能力(フィジカル)に技術(テクニック)。おまけに頭もキレるとあっては、手駒として最上(トップレア)ともいえる。

 それゆえに、マイにとって最も恐れるべきことは覇世川左虎の記憶が復元(もど)ることだ。

(削除(デリート)と編集(エディット)は完璧に馴染んでる。
 左虎っち本来の能力はそのままに、アタシへの恩義を疑いもしていないこの状態は最高に近い。
 今の左虎っちは、私が頼めば令呪だろうと切ってくれる。
 ――でもそれも、編集(エディット)の効果が生きている限り。)

 平時であればマイによって編集(エディット)された記憶を戻すには彼女の持つ時計型タイムマシンを破壊する他にない。
 自力で記憶が戻る確率は1000万分の1にも満たない。
 本来ならば気にもとめない確率だが、バトルロワイヤルではその能力が弱体化していることは実証済み。
 記憶を刺激するような外的要因で戻る確率もずっと高いだろう。 

 マイは手元の名簿に視線を落とした。
 邪樹右龍。そして繰田孔富。
 参加者の中にマイが知る名前は(初めに羂索に言いかかった数人と、豊臣秀吉などあまりにも一般的に知られた名前を除くと)いなかったが。
 覇世川左虎にゆかりある人間が二人いることを、左虎の記憶を読んだマイは知っている。
 かたや彼と血を分けた弟。
 かたや彼が最も尊敬した医師にして最後に闘った極道。
 念のため両名の記憶を左虎からは削除(うば)うという形で対策を取ったが。リスクは依然残り続けている。

 左虎が述べたように、そしておそらくルルーシュ・ランペルージが望んでいるように。思想や目的が一致する者たちが集えば生存率は大きく上がる。
 だが逆に言えば、編集(エディット)が切れマイと左虎の思想が一致しなければ。左虎はマイの敵でしかない。
 自分を洗脳した相手など生かしておく理由は欠片もない。少なくともマイが左虎なら即座に殺す。
 覇世川左虎ならばバグスターウイルスの弱体を考慮に入れてもマイを殺すのに数秒とかからないだろう。

 覇世川左虎の記憶が戻ることは、そのままマイ=ラッセルハートの敗北を意味していた。
 そのためにも、トリガーになりうる邪樹右龍(にんじゃ)と繰田孔富(ごくどう)には出会わないこと。それがマイ=ラッセルハートの攻略未来(クリアルート)。
 同時に左虎を利用して他の参加者を殺していき、あわよくば他にも何人か編集(エディット)と消去(デリート)を用いて手駒にする。
 そのためには、右龍や孔富の行きそうな場所――ルルーシュのいるテレビ局くらいしかあては無いが――には近づくべきではないだろう。

 「それじゃぁアタシたちは……」

 テレビ局からは離れよう。
 そう告げようとしたマイの耳に、稲妻が落ちるような音が轟いた。
 隣で佇む左虎の耳にも届いたようで、揃って背後を振り返る。

「「何!?」」

 背後にある森林から、轟音と共に固い何かがぶつかり合うような戦闘音が不快な音を立て続ける。
 日は昇り始めているが、それでも森の中はまだまだ暗い。
 その中を一瞬迸った黄色い稲妻は、マイの見間違いではないだろう。

「マイ先生はここで待機(ま)て。
 左虎が様子を見よう。もし戻らなければ渡している支給品(アイテム)にて撤退(に)げよ。」

 マイが何か言う前に勢いよく左虎は駆けだした。
 獅子の仮面をつけた何者かが、電を纏った刀を振り回している姿。
 そして、仮面の剣士から逃げ続けるフリフリの服装をした少女と、さらに後ろでおぼつかない足取りで逃げる小さな翼を持った少女が左虎には見えていた。

 「ちょっと待って!!」

 本能のままに動く忍者を、マイは追いかける。
 覇世川左虎が心配だから――ではない。
 覇世川左虎から離れる自分の事が心配だから――それはある。
 だが、そんなことよりもっと重大な理由が、マイ=ラッセルハートの足を動かした。

(雷はまずい!!!雷を出せる参加者なんてそう何人もいるとは思えない!!
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 あの先にいるのが邪樹右龍だったら、アタシの攻略(ルート)は瓦解する! )

 覇世川左虎の弟『邪樹右龍』。超人的な骨密度が生み出す圧電により、電気を用いて戦う忍者。
 森の中で戦っている仮面の姿をマイの目は捉えていない。
 そのため稲妻の正体が邪樹右龍である可能性を、彼女は捨てきれない。

 右龍と出会うことで覇世川左虎の記憶が戻るかもしれない。
 兄弟揃い危険人物たるマイをブッ殺すかもしれない。そうなっては攻略不能(ゲームオーバー)だ。

(絶対に嫌だ!!アタシはアタシの目的のために!!
 タイムマシンが、巻戻士が生み出す不平等な世界を変えなきゃいけないんだ!)

 歯を食いしばりマイは走り出す。
 すぐそこにある戦場に、マイは生きるために飛び込んだ。

◆◇◆◇◆

 森の中、マジアアズールは獅子の仮面をした怪物に追われていた。

 雷を纏って振り下ろされる七支刀を躱すたび、アズールの柔肌のすぐそばを鋭い熱と痛みが体を掠める。
 直撃していないにも関わらず神経に障る痛み。
 マジアベーゼの折檻をアズールの体は思い出し、未だ残るあの時の恐怖に肌が怖気立つ。

「よそ見すんなぁ!」
「っ!!」

 いつの間に距離を詰められたのか、頭上に振り下ろされた刃をステッキに氷の刀を生成し直前で抑え込む。
 背丈では遥かに上回られるドゴルドに上から鍔迫り合いで押し込まれ、バチバチと音を立てる稲妻がアズールの目前で火花をたてた。

「腹立たしいぜ!ようやく出てこれたと思ったら最初の相手がこんな小娘とは!」
「甘く……見ないでっ!!」

 歯を食いしばり、アズールは両腕で刃を押し込んだ。
 刀ごとドゴルドを弾き飛ばし、反動を利用して体を数メートル後ろに飛ばす。
 対するドゴルドも想定外の反撃にバランスを崩しよろけて片膝をつく。
 仮面の中で表情は見えないが、「ほう。」と感心したような声はわずかに楽しげだ。

「お前はなかなか悪くねえ。空蝉丸の前の肩慣らし程度にはなりそうだ!」

 キョウリュウジャーでもない小娘にしては随分戦えるものだと、ドゴルドは高揚する。
 剣技という意味では空蝉丸に遠く及ばないが、魔法少女である彼女の戦闘力は並の少女とは一線を画す。
 マジアアズールの実力は警戒に値すると、彼は認識を改めた。
 ――あくまで、マジアアズールに対しては。

 「だが腹立たしいのはテメェだドラゴン娘!!
 テメエも参加者なら戦いやがれ!!」

 獅子の視線が背後に向けられ、アズールは焦りと共に振り返る。
 アズールの後方20mほど。
 木陰から見える水晶のような羽を標的にして、ドゴルドの剣先から稲妻が迸る。

 文字通り雷を浴びた木は爆ぜるように裂け、急激に熱せられた水分が煙を上げた。
 そのすぐ後ろ。アズールから離れていたシェフィは傷こそなかったが、目の前の爆発に頭は真っ白になってしまう。

「びえぇぇぇぇん!!!!」
「なんだ?ガキみたいに泣きやがってよ!!」
「シェフィちゃん!!」

 シェフィは記憶を失い、情緒は赤ん坊と変わらない。
 足がすくみ動けないシェフィは、ドゴルドにとって敵でさえない。
 ただただイラつかせるだけのクソガキに、怒りの戦騎は容赦をしない。

「いや……いやっ!!!!」

 荒々しく刀を振り回し、稲妻を撒き散らしながらシェフィに突撃していく。
 その様はさながら子供に近づくなまはげのようだが、殺意を込めて迫る相手はそんな優しい存在ではない。
 無機質な仮面から溢れ出る憤怒と殺意がシェフィの恐怖をかきたてていく。

「させない!」
「チィッ!!」

 動けないシェフィに振り上げられた獅子の刃が、ガチンと何かに当たり抑え込まれる。
 刃が届くほどに距離を詰めた2人。
 その間に割って入った魔法少女が、氷の太刀をドゴルドに振り下ろしていた。
 その刃は先ほどよりさらに長く鋭い。
 腕で受けるにはただでは済まない鋭い一閃に、喧嘩上刀を横向きに構えドゴルドは防ぐ。
 くしくも先ほどとは攻守が逆転し、必死に歯を食いしばるアズールの刃がじりじりとドゴルドを押し込んでいた。

「あじゅーる!!」

 目の前に現れた魔法少女に、泣き出しそうな顔の少女は希望に満ちた笑顔を向ける。
 ヒーローを応援する子供さながらに、その眼差しはキラキラと輝いていた。
 少女の声援を背に、魔法少女は戦騎に立ち向かう。

「お前はやってくると思ったぜ。お優しい魔法少女ちゃんよぉ!!」
「私は、そんな立派な人間じゃない!!」

 どこか懺悔にも似た、血反吐を吐くような叫びだった。
 一度は負けそうになった。グシャグシャに割れた心に呑み込まれて。取り返しのつかない過ちを犯した。
 優しい魔法少女。以前はまだしも今の私には余りある称号だ。
 マジアアズールは自嘲気味に吐き捨てながらも、相対するドゴルドへの闘志は揺らいでいない。

「でも!」

 マジアアズールは一度は折れかけた。正義とは程通い堕落した魔女になり果てかけた。
 マジアベーゼに完膚なきまでに凌辱され、ヒロインとしての矜持を見失っていた。
 それを思い出させてくれたのは、平和の象徴たる最高のヒーロー。そしてその魂を教えられた竜の少女。
 2人のヒーローに報いるため。取り戻した種火を絶やさぬために。

「だからせめて、あの子だけは……。シェフィちゃんだけは守らなきゃいけないの!!
 私はマジアアズール!!正義のヒロイン!!
 その誇りだけは、もう二度と失わない!!」
「いいねぇ。武人の誇りってやつか!!
 因縁深い面を思い出させるじゃねえか!!気に入ったぜマジアアズール!!!」

 誇りを失う強さ。それを取り戻す難しさ。その先に至る輝かしさ。
 ドゴルドはその全てを知っている。
 怨みの戦騎エンドルフの従僕に下り、己の強さに対する自信さえ失った頃。
 それを取り戻したのは他でもない、最大の宿敵にして今の彼の目的である空蝉丸だった。

 目の前の少女の姿が黄金の侍に重なり。腹立たしいと同時に面白くて仕方がない。
 無数の世界から茅場とクルーゼがチョイスした参加者たち。
 彼らの実力をドゴルドは考慮していなかった。考えさえしなかったと言ったほうが正確だろう。
 見知った戦士はキョウリュウゴールドとキョウリュウグリーンだけ。
 それ以外は十把一絡げな雑魚だと考えていた甘さが、さっきまでのドゴルドにはあった。
 今はもうない。
 眼前の魔法少女は、紛れもなくブレイブを秘めた戦士だ。
 腹立たしいが、認めてやる。

「だが、足りねえ!!」
「っ!!」

 瞬間。アズールの腹に雷が落ちた。
 腹部の衣装が破け、爆弾が爆発したようにお腹が熱く痛い。
 嵐に巻き込まれたかのようにアズールの全身が浮きあがる。
 弾ける痛みが内臓にまで響き、ぐるぐると脳を揺らす回転もあって意識が飛びそうだ。
 喉を逆流する酸と鉄を飲み干しながら。揺れる意識の中アズールはドゴルドを見下ろした。

 先ほどまで刀に添えていたはずのドゴルドの右手が、バチバチと音を立てながら強く握りしめられていた。
 刀に意識が向いた隙をつかれ、アッパーカットの要領でボディーブローを叩きこまれたのだと。
 理解するとともに視界がぐらつき、握りしめていたステッキがポトリと落ちた。

 水神小夜は背が高く、腕も足もすらりと長い抜群のスタイルを誇る。
 ただしそれも14歳の少女基準ではの話だ。
 ドゴルドは2mを超えた体躯と180㎏を超えた重量を誇る剛者(タフガイ)。
 中身が女性だろうと関係ない。腕のリーチも一撃に込められた膂力もマジアアズールとは質が異なる。
 少女とは比較にならない基礎ステータスに加え、参加者であるアズールにだけバグスターウイルスの弱体(デバフ)が重ねられる。
 両者の明暗を分けた理由は、酷く単純で覆しようのない事実でしかなかった。

「惜しかったな!
 令呪を使ってりゃあまだ勝負は分からなかったが、今のテメエじゃ足りねえ!」

 口調こそ荒々しいが、ある種の賞賛とも取れる言葉。
 もしバグスターウイルスによる弱体がなければ。 マジアアズールが未来で掴んだ力をこの場で手にしていたら。
 勝負は分からなかった。目の前の少女は怒りの戦騎にとっても掛け値なしの勇者であった。

「あばよ魔法少女!!」

 ――だからこそ、ここで殺す。
 その思考がNPCモンスターとしての義務感からくるものか、1人の戦士が持つ闘志からくるものなのかは分からない。
 考えるだけ無駄だろうし。どちらにせよ羂索らの目論見通り動いているだろう。
 それが途方もなく腹立たしいが、振るう刃を止める気にはどうしてもならなかった。

 アズールは大きくバランスを崩し、風を失った凧のように力なく落下していく。
 彼女を喧嘩上刀で真っ二つに切り裂き、ついでにびゃんびゃん泣いてるドラゴン娘を叩きのめす。
 冥黒の五道化としての最初の仕事を、哀れな参加者の殺戮という形でドゴルドは成し遂げ――




「危機的(ギリギリ)のところだったが……間に合ったな。」

 ――てはいなかった。


 マジアアズールとの間に割って入る形で、和装の青年がドゴルドの前に立ちふさがる。
 アズールの首を狙った刀は無数の糸で絡めとられ。少女の肉を傷つけることさえ叶わない。

 「なにぃ!!」
 思わず錯乱したようなドゴルドの目の前では、落下するアズールの体を颯爽と現れた青年が優しく抱え込んでいた。

「大丈夫か?」

 透き通るような男の声に、マジアアズールの揺れた脳が感覚を取り戻す。
 目に飛び込んだのは自分より一回り上の美青年(ハンサム)。
 そんな相手に両腕を肩と膝裏から持ち上げられている。いわゆるお姫様抱っこの状態だ。

「はっ、はいっ。らいじょうぶれす!!!」
「呂律は怪しいが、左虎が診(み)る限り無事のようだな。
 彼奴の打撃(ハラパン)も軽くはないはず。見目(ビジュアル)に反してなかなか剛毅(タフ)な少女よ。」

 真っ赤になった顔のままアズールを下ろし。覇世川左虎は眼前の敵に向き直る。
 稲妻を纏った七支刀。獅子の仮面に巨躯。
 この相手が八極道に匹敵する危険人物であることを忍者の感覚(カン)が告げていた。

「貴様何者だ?令呪やレジスターは見えないようだが。」
「当然だ。俺はお前たちのような哀れな参加者じゃねえからなぁ!
 俺様はドゴルド!
 冥黒の五道化が一人、激怒戦騎のドゴルド!!
 クルーゼの奴が言ってた最強のNPCモンスターってやつよ!」
「何?」
「なっ……参加者じゃないですって!?」

 マジアアズールにとって、その情報はまさに青天の霹靂だ。
 マジアベーゼの影響で心が折れていたアズールは、このバトルロワイヤルのルールの多くを知らないままだ。
 令呪やレジスターについても十分な知識を持っておらず、NPCモンスターの存在をどこまではっきり知覚しているかアズール自身にも定かではない。
 目の前の相手が殺し合いの参加者ではないなど考えてもいなかった。

「ということは、貴様はマイ先生の敵か。」

 目を丸くしたアズールとは対照的に、変わらぬ鉄面皮で左虎は構える。
 左虎にとっても衝撃の事実であることに変わりはないが、さして重要な事項でもない。
 ”今の左虎”にとって、眼前の相手が敵か味方か。量る質問は1つでいい。

「あ?誰だか知らねえが、参加者だというのならそういうことになるな。」
「作用か。」

 答えを聞くや否や、左虎の足が大地を蹴り上げドゴルドとの距離を一気に詰める。
 マイ先生の敵である以上、左虎はドゴルドをブッ殺さねばならない。
 高速で動かす毛髪をにて周囲を凍らせ切り裂く、覇世川左虎の暗刃『凍剣執刀』。
 ドゴルドに近づくと同時に舞い踊る刃が、彼の全身をわずかに切り裂いていく。

「痛てえじゃねえか!!」
「その装甲!てっきり木製だと思ったが……。」

 ドゴルドは闖入者が扱う無数の糸の切れ味に。
 覇世川左虎はドゴルド”そのもの”というべき装甲の硬さにそれぞれ驚愕の色を染めた。
 それでも、両雄の手は止まらない。
 無数の髪がドゴルドを斬りつけ、ドゴルドはそれらを喧嘩上刀で跳ね除けながら、左虎を斬らんと暴れ続ける。

「わたしだってまだ……戦える!!」

 その光景をひとり見ていた水神小夜はステッキを拾い上げると、己を鼓舞するようにそう力強く言い放つ。
 戦騎と忍者が起こす嵐のような戦いの渦。
 水神小夜も――魔法少女マジアアズールも、その渦に身を投じる。
 二度と、正義を失わないように。
 守るべき人を、守るために。

◆◇◆◇◆

 息を切らせて左虎を追いかけたマイ=ラッセルハートは、目の前で繰り広げられる戦いに目を奪われた。

 超人的な強さを誇る覇世川左虎の髪と手刀を織り交ぜた攻撃に、稲妻の主であった獅子の仮面は見事に渡り合っていた。
 首や関節といった致命的な箇所への攻撃を獅子の仮面は回避し、腕や体の鎧を傷つけながら電撃を帯びた七支刀を振るう。
 その刃は木々を一撃で斬り飛ばす。
 強靭な肉体を誇る左虎でさえ本気の防御を要する攻撃だ、一般人に当たれば即死級の代物であることに間違いはない。

 同じく戦場を駆ける、フリフリの服を着た少女もまた手練れ。
 獅子の仮面が隙を見せれば氷の刃を突き付け、その体を切り落とさんと迫りくる。
 か細い髪が作り出す僅かな冷気。光の屈折からそのありかを見極めた少女は、攻撃の合間を縫うように氷の刃を生み出しミサイルのように獅子の仮面に叩きつける。
 マイより一回り年下だろうに、あの戦いについてこれるとは大した少女だ。

「マジか……、ここまでの戦いになるんだね。」

 電撃の主が左虎の弟ではなく、消した記憶の引き金になる可能性が低いことに一先ずマイは胸をなでおろす。
 その上で異世界の超人たちの戦いを前に、早々に干渉することを諦めた。
 マジアアズールがドゴルドと左虎の戦いについてこれるのは、ひとえに彼女が経験ある実力者ゆえの事。
 専用武器の『究極腕(アルティメットアーム)』があれば兎も角、ほとんど生身のマイでは参戦どころか声をかけることさえ難しかった。

 (それにあの獅子仮面……ドゴルドって言ったっけ?
 NPCモンスターってのが本当に厄介だなぁ。)

 NPCモンスター……ドゴルドは確かに自分の事をそう言った。
 その言葉が真実ならば、ドゴルドを殺したところでマイ=ラッセルハートの勝利にはつながらない。
 その打算が、マイ=ラッセルハートの思考を狭める。

 マイが見る限り、目の前の戦況は五分だ。
 戦況は拮抗している。だが逆に言えばドゴルドを押し切るには今の2人では一手足りない。
 マイ=ラッセルハートには、その一手を与える力がある。
 今の覇世川左虎はマイの言うことには従順だ。
『令呪を使え。』そう言えばすぐにでも覇世川左虎は令呪を使い、ドゴルドを撃退するだろう。

(本当に良いの?こんな序盤、それも参加者でもない相手に貴重な令呪を使っちゃって。)

 マイ=ラッセルハートは殺し合いを忌避する参加者ではない。
 むしろ積極的にゲームの勝利を狙いたい人間だ。
 参加者を狙うドゴルドを、コストを払いリスクを冒してまで倒す理由(メリット)は無い。
 ここでドゴルドを倒すこと自体は、マイに対する脅威が1つ減る結果を生む。
 だが、そのために貴重な令呪を支払うことは採算が合わない。
   ・・・・・・・・・・
 ――左虎の令呪は使えない。
 撃退するにしろ逃走するにしろ。マイ=ラッセルハートの思考にその一点は揺るがない。

(このまま倒せるのならそれでよし。
 もし無理なら左虎っちから預かった支給品で無理にでも逃げる!
 あの魔法少女ちゃんも回収して編集(エディット)できれば御の字だけど……それは高望みかな?)

 一歩引いた視線で周囲を見やる。
 その時マイは初めて気づく。この場にはもう一人参加者がいた。
 最強のNPC。手駒となった忍者。勇敢な魔法少女。
 その遥か後ろ。へし折れた巨木の影で悔しそうに歯を食いしばる少女には、水晶のような角と羽が生えていた。
 いそいそと少女に近づいたが、マイには気づく様子もなく。
 焼け焦げへし折れた木をぎゅっと握りしめ、マジアアズールの戦いを見つめている。
 ヒーローを見つめる目。というよりは、ヒーローを助けられないことを歯痒く思うような、純粋なまなざしを向けていた。

 「大丈夫?」
 「びゃぁっ!?」

 後ろから声をかけたマイに、羽を生やした少女は虫でも見たように声を上げた。
 年はあの魔法少女と同じくらいだろうか?
 その割には挙動が幼いようにマイには見えた。
 木陰に隠れプルプル震える姿は、小学生どころか幼稚園児のようだ。

 「……だれ?」
 「ああ、ごめんごめん。アタシはマイ。あのお兄さんの仲間だよ。」

 『お兄さんの仲間』という言葉が効いたのだろう。
 少女がマイに向ける目は、疑ぐり深いものからキラキラしたものに変わる。

「じゃあおねえさんもアズールをたすけてくれるの?」
「アズールって、あの戦っている女の子のこと?」

 マイが乱戦の渦中を指さすと、少女はこくりと頷いた。
 左虎が彼女と共闘したことから、左虎の仲間だと名乗ったマイもそうだと思ったのだろう。

「ごめんね、アタシはアズールやあのお兄さんほど強くないんだ。
 あそこに割り込んでアズールを助けるのは……」
「……そっか。」 
「でも、アタシたちにだってできることはあるよ!」

 マイの言葉に肩を落とした少女は、「なに?」と、期待を込めてマイを見た。
 相手を疑うことを知らず、コロコロと表情が変わる。
 たどたどしい言葉も相まって見た目よりずいぶん幼く感じるが、利用するつもりのマイには都合がいいため気に留めなかった。

「あの3人の戦いは今拮抗している。
 逆に言えば一瞬でもドゴルドの動きを止めたら、きっとアズールたちは勝てる。」

 マイは令呪を使わない。
 だが、拮抗した戦況を変える方法は何も令呪だけではない。
 羂索らがバランス調整のために与えた支給品やソードスキルだってある。
 生憎今のマイが取れる手立ては、リスクが高い物しかなかったが。
 戦況を左虎とアズールに傾けるための何かを、この少女が持っている可能性は低くない。

「何かリュックに入ってなかった?
 あの怖い仮面の注意を向けたり、動きを止めたりする道具とかさ。」
「んー?」

 シェフィは首をかしげ、僅かにうなる。
 行動も幼いが、もしかしたら理解力も幼いのだろうか。
 心当たりがないというより、何を言っているか分からないという反応だった。

 もう少し具体的に尋ねられないか?そう考えたマイの目に、きらりと光る何かが映る。
 シェフィの手元、ドゴルドによってへし折られた木の幹が、僅かに凍っていた。

 「例えば、あいつを凍らせたりって。できないかな?」

 シェフィと視線が合うように腰を落とし、ドゴルドを指さしてマイは尋ねる。
 うんうんと難しそうな顔をしていたシェフィだったが、マイの質問ににこにこと自慢話をする子供のように顔を緩ませた。

 「できるよ!」

 竜の少女の明るい返事に、マイは小さくガッツポーズをとった。

 ◆◇◆◇◆

 覇世川左虎の手刀を喧嘩上刀でドゴルドはいなす。
 当然、意識は右腕の防御に傾く。
 その隙をついて無数の髪と氷の刃がドゴルドを襲う。
 急速に熱を奪い鋭利な刃物のように切れる髪。
 負傷も厭わず左腕で握り、向かってくる氷の刃に向けて鞭のように震わせる。
 マジアアズールの生み出した刃が左虎の髪に両断されるが、その推進力は死んでいない。
 質量が半減した刃が肩と左腕に刺さり、左虎の髪を握ったことで左の掌が切れた。

「左虎の髪を掴むか。
 随分その堅牢(ガチガチ)な鎧に自信があるようだな。」
「うるせえ!」

 体を流れる稲妻の熱で刺さった氷を溶かしながら、ドゴルドは苛立ちを示すように地団駄を踏む。
 マジアアズールのダメージや両参加者の弱体化を加味しても、戦局は五分だ。
 NPCモンスターという有利な地位に居ながらも、ドゴルドは勝ちきれないでいた。

  (どうなってんだ!ヒースクリフの話と違うじゃねえか!!)

 覇世川左虎の実力がマジアアズールと並ぶ、むしろ単純なフィジカルではアズールを遥かに上回るであろうことは理解できる。
 事実として支給品やソードスキルを考慮しない戦闘能力で言えば、この2人は間違いなく上位に位置する参加者。
 だとしても、今のドゴルドが優位にさえ立てない事実には全く納得がいっていない。

 ヒースクリフは言った。ドゴルドに与えた体は彼の真価を引き出すものだと。
 クルーゼは言った。彼は最強のNPCモンスターなのだと。
 それが令呪も使っていない、万全とは程遠い参加者2人に勝利どころか拮抗するのが精いっぱいなど、名前負けもいいところではないか。

「まだ終わってないわ!!」
「てめえもしつけえなマジアアズール!!」

 腹部にダメージを受けただけでなく、その純白の衣装はドゴルドの稲妻でところどころ焼け焦げ破れている。
 それでも、マジアアズールの闘志を宿した目は変わらない。
 その事実もまた、ドゴルドを苛立たせる。

「雷電残光!!!」

 右腕で喧嘩上刀を振り回し、溜まりに溜まった稲妻を一閃として打ち出す剛剣の奥義。
 かつて体に取り込んだ因縁の剣士が扱う剣技も、ヒースクリフの手でブレイブを付与された彼なら使用できる。
 直線上に向かうアズールに向かって、殺意と怒りを乗せてドゴルドは打ち出す。
 それでも、魔法少女と忍者の心は折れない。

「そんな焦(テンパ)った一撃ごとき!!」
「何も怖くないわよ!!!」

 黄金色に光る斬撃を前に戦士たちは冷静に構える。
 アズールの周囲に無数の氷が刃として浮かび、
 カバーに入る左虎も、網状に伸ばした髪を動かし周囲に無数の氷柱を生成していた。

「左虎さん!合わせますよ!!」
「凍剣執刀・異型 雹穿雨脚!!」

 氷点下の刃と氷柱が、雷電残光に向けて散弾のように打ち出される。
 勢いは目に見えて減衰していくが、起こる現象はそれだけではない。
 金属の刃が生み出した3万度にも達する雷撃に、固体となった水が果てしない量打ち付けられ急速に熱せられる。
 その結果生み出されるのは、水蒸気の膨張。
 ドゴルドの必殺剣のエネルギーの大部分を奪い、急速に膨らんだ水蒸気が小規模な爆発を起こし。
 生み出された雲と突風が、3人を大きく吹き飛ばした。

 周囲の木々を吹き飛ばし後方にもいたシェフィとマイにも風は及ぶ。
 閉じた目を見開くと、左虎とアズールは片膝をつきつつも大したダメージを受けてはいないようだった。
 対してドゴルドも、必殺剣を使った影響か体の力がかすかに抜け、心なしか息遣いも荒い。
 ずっと近接戦闘を続けていた両者の距離は、雷電残光と爆発で大きく放されている。

 その隙を、小さな竜は狙っていた。




「今だよ!!」
「うん!」

 ドゴルドと2人が距離を取る瞬間、それがシェフィに与えられたソードスキルの使用タイミングだとマイは定めていた。
 ちょうど今この時が、ドンピシャの千載一遇。
 マイの合図に合わせ、シェフィは両腕から無数の氷を吐き出し、空気が一瞬にして寒空のように冷え切った。
 状況を理解する前に、ドゴルドの全身を氷の波が飲み込んだ。

 「なんだこいつは!?」

 両腕を動かし少しでも氷を振り払おうともがくが、既に左虎とアズールにより浅くない傷を負った体に残った髪が動きを阻む。
 気が付くとドゴルドの腰より下は完全に氷に覆われ、鋭く伸びた氷塊が手にした武器ごと右腕を封じていた。

「あんのドラゴン娘!!!!」

 範囲が広かったからか、直接的なダメージは薄い。
 だが、氷凝呪法と呼ばれるそのソードスキルが生み出すものは呪力を込めた特殊な氷だ。
 マジアアズールや覇世川左虎が生み出したものより、頑丈さでいえば上回る。
 木陰に隠れていたはずのドラゴン娘の仕業だとドゴルドが気づいたときには遅かった。
 視線を向けた先にシェフィはもういない、白衣の女がドラゴン娘を抱えとっくに距離を取っていた。

 「シェフィちゃん!?」
 「有効打(ファインプレー)ぞ。竜の少女!!」

 シェフィの力に驚いたのはアズールと左虎も同じ。
 だがそれ以上に難敵ドゴルドが無力化されたチャンスを、黙って見ている両雄ではない。
 握りしめた氷の刃を鋭く構え刺突を狙うマジアアズールが突っ込んでくる。
 左虎の動きはそれよりなお早い、髪よりもよほど鋭い手刀を首に叩き込むつもりだろう。

 ドゴルドの敗北は目前だった。
 油断のない強者2人が、ドゴルドを砕かんと迫りくる。
 腰より下と右腕は氷の波に封じられ、動くことさえままならない。
 このまま敗れては、空蝉丸とは再戦どころか対峙することさえ叶わない。

 「ふざけんじゃねえ!!!!」

 氷に閉ざされながらも、獅子は吠えた。
 こんな腹立たしいことはない。
 何のために蘇ったのか。羂索らの口車にのったのか、これでは分からないではないか。

 敗北を目の前に突き付けられ、ドゴルドが怒れば怒るほど、腹の底から何ががドロドロと溶岩が如く溢れ出す。
 溢れ出す何かは全身を巡り、ドゴルドの力を今まで以上に高めていく。
 喧嘩上刀を握る右腕が、今まで以上の握力を生み出し。
 流れる電流も先ほどより高い熱を帯びていた。

「こんなチャチな氷で……このドゴルド様の怒りが冷えるかよ!!!!」

 腹の底から湧き上がる力――呪力を宿した刃を振るい、強引に氷の呪縛から抜け出した。
 その代償は決して少なくない。何せ封じた氷もまた呪力を帯びているのだ。
 氷の破片が全身に刺さり、左虎とアズールの戦いで受けた四肢の傷が凍傷になったように焼けていた。
 だが、今更多少の傷などどうでもいい。
 己が傷つくことも厭わず武器を振るう。バチバチと弾ける刃が接近していた左虎を射程に収めた。

「砕いたか!だが!!!」

 完全に抑えたと思った一瞬。砕き脱出することも左虎の想定にはあった。
 力任せに振るわれた喧嘩上刀による一閃を、覇世川左虎は強靭な毛髪(かみ)で防ぐ。
 これまで何度も行われた攻防。髪で絡めとり抑え込めばこちらの攻撃(ターン)に持ち込める。
 既に近接攻撃の射程内、手にする暗刃で首を飛ばせば左虎の勝利。
 そう確信していた。

 ドゴルドの刃を受ける、その瞬間までは。



 ――この時点では誰も知りえなかったことであるが。この場にいるNPCモンスター。激怒戦騎のドゴルドは万全の状態ではなかった。
 稀代の天才茅場晶彦による調整は完璧と言う他ない。
 だがいかに調整が万全だろうと、使用者がそのスペックを十全に発揮するには多少の時間がかかるものだ。
 今までのドゴルドはまさしくその状態だった。
 新たに与えられた力を使わず、怒りの戦騎と変わらぬ戦闘法を取っていた理由がその証拠である。

 きっかけとなったのはシェフィが放った氷凝呪法。
 シェフィがわずかに秘めた純粋な憤慨や敵意を元に放たれたソードスキルは、運営の1人である羂索と同じ世界に蔓延る呪いの産物だ。
 呪力を持つドゴルド相手にも有効に働く力であり、事実として彼は無視できないダメージを追うことになる。
 そのダメージが僅かなきっかけとなり、ドゴルドの中に眠っていた新しい力を引き出した。
 名を、『呪力』とする異世界の力。
 その力を茅場や羂索からの『情報』ではなく『自身の力』としてドゴルドが認識したのは、今この時が初めてだった。

 覇世川左虎の背に氷を差し込まれたような怖気が走る。
 ドゴルドの刃には、今までになかった何かが流れている。
 左虎は見た。
 迫る七支刀から溢れる稲妻が。

 ――見慣れた黄色から、何かに塗り替えらたように黒く染まった。





 それは、怒りの戦騎が扱う電撃とは全く異なる能力。
 激怒戦騎となり与えられた、負の感情を母体とする呪いの力。
 怒りを扱う彼とその力は極めて相性がいい。
 莫大な経験も相まって彼は早々にその力の核心に触れたが、その事実にはまだ気づいていない。






 ――その現象に『黒閃』という名があることさえ。この場に知る者はいなかった。

009:魔法少女ラブリーチカの災難 ―闇檻の胎動―(後編) 投下順 010:この願い、たとえ魔法がなくたって(後編)
時系列順
候補作092:0005b:オリジン 水神小夜
シェフィ
候補作110:こんなにも残酷な夜だから マイ=ラッセルハート
覇世川左虎
000:掴め!最高のガッチャ! 激怒戦騎のドゴルド

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