(出逢い)
更新日:2020/04/02 Thu 11:48:21
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コヨユメ
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物語は空に星と月が美しく飾られる冬の夜。のちの私の親友、ピオーネ・ロリポップが本屋へ休憩しに来たところから始まる。
「…え」
ピオーネは目を見開いて固まった。誰かいる。暗闇に荒い呼吸音が響く。
ピオーネがいる場所は、喫茶店オウマがトキの本屋であった。
オウマがトキとは、お菓子と本を売る夢のようなお店の事だ。ピオーネの大切な居場所だった。
この店には喫茶スペースと本屋スペースがあって、喫茶スペースではピオーネの大切な"姉"達が働いている。
しかし現在、この本屋スペースには人がいない状態になっている。
人手不足と言うやつだ。お客さんも入れない事になっている…筈だ。
それなのに呼吸の音がする。衣擦れの音や、本を捲る音も。
「誰か…いる…?」
意を決してピオーネが暗がりに問いかけると、今まで聞こえてきた音がピタリと止まる。かわりに少女の声が聞こえてきた。
「あら、家主さんがいたの?気付かずごめんなさいねぇ。直ぐに出てくから」
暗闇から現れた少女は、ボロボロの衣服とボサボサの髪をしたやぼったい子だった。
「あなた…住むところ…無いの?」
「うん。ふと思い立って家出して、かれこれ100年は根なし草よ」
少女はバリバリと頭を掻きながら言う。少女の身体には、鋭いナイフで切り刻まれたような傷跡が無数にあった。
「…泊まってく?」
「あら、いいの?」
ピオーネは自分で言った言葉に自分でも内心驚いていた。
女児の目が見定めるようにピオーネを貫く。
「いい…でも、お姉ちゃん達に言わないといけない…」
ピオーネは少女の前を先導する。行く宛のない少女は、一先ず後を着いていくことにした。
「そういえば…」
ピオーネが振り返えると、少女の黄金に輝く瞳と目があった。
自分の真っ黒の中にある紫色の瞳と、対照的に思った。
「……名前は?」
ピオーネの言葉に、少女は間をおいて答えた。
「……マリィ、マリィ・ゴールド」
「…え」
ピオーネは目を見開いて固まった。誰かいる。暗闇に荒い呼吸音が響く。
ピオーネがいる場所は、喫茶店オウマがトキの本屋であった。
オウマがトキとは、お菓子と本を売る夢のようなお店の事だ。ピオーネの大切な居場所だった。
この店には喫茶スペースと本屋スペースがあって、喫茶スペースではピオーネの大切な"姉"達が働いている。
しかし現在、この本屋スペースには人がいない状態になっている。
人手不足と言うやつだ。お客さんも入れない事になっている…筈だ。
それなのに呼吸の音がする。衣擦れの音や、本を捲る音も。
「誰か…いる…?」
意を決してピオーネが暗がりに問いかけると、今まで聞こえてきた音がピタリと止まる。かわりに少女の声が聞こえてきた。
「あら、家主さんがいたの?気付かずごめんなさいねぇ。直ぐに出てくから」
暗闇から現れた少女は、ボロボロの衣服とボサボサの髪をしたやぼったい子だった。
「あなた…住むところ…無いの?」
「うん。ふと思い立って家出して、かれこれ100年は根なし草よ」
少女はバリバリと頭を掻きながら言う。少女の身体には、鋭いナイフで切り刻まれたような傷跡が無数にあった。
「…泊まってく?」
「あら、いいの?」
ピオーネは自分で言った言葉に自分でも内心驚いていた。
女児の目が見定めるようにピオーネを貫く。
「いい…でも、お姉ちゃん達に言わないといけない…」
ピオーネは少女の前を先導する。行く宛のない少女は、一先ず後を着いていくことにした。
「そういえば…」
ピオーネが振り返えると、少女の黄金に輝く瞳と目があった。
自分の真っ黒の中にある紫色の瞳と、対照的に思った。
「……名前は?」
ピオーネの言葉に、少女は間をおいて答えた。
「……マリィ、マリィ・ゴールド」
マリィは久し振りにシャワーを浴びていた。シャンプーとリンスのいい香りが肺一杯に広がる。
久しく触れてなかった温いお湯に感動し、肌を滑るボディソープの感覚にも感動した。
「マリィさん、バスタオル置いておくわね♪」
「う、うん」
浴室の外の脱衣所から、女の子の声が聞こえた。
外にいるのは、本が一杯あった場所で出会った女の子の姉の一人だ。たしかメローナと言ったか。
「着替えたら呼んでね~♪多分、部屋が出来てると思うから♪」
「あ、うん!」
メローナは上機嫌な様子で、鼻唄を歌いながら出ていく。
マリィは少し違和感を感じた。メローナは部屋に案内するではなく、部屋が出来ていると言った。どう言うことだろう?ただの言葉の綾だろうか?
久しく触れてなかった温いお湯に感動し、肌を滑るボディソープの感覚にも感動した。
「マリィさん、バスタオル置いておくわね♪」
「う、うん」
浴室の外の脱衣所から、女の子の声が聞こえた。
外にいるのは、本が一杯あった場所で出会った女の子の姉の一人だ。たしかメローナと言ったか。
「着替えたら呼んでね~♪多分、部屋が出来てると思うから♪」
「あ、うん!」
メローナは上機嫌な様子で、鼻唄を歌いながら出ていく。
マリィは少し違和感を感じた。メローナは部屋に案内するではなく、部屋が出来ていると言った。どう言うことだろう?ただの言葉の綾だろうか?
紫色のネグリジェを着たマリィは、フロートと言う女の子に連れられて部屋に行くことになった。
「どう?出来た?」
「うん…簡単な物なら」
フロートが徐に声をあげると、壁の向こうから声がした。
マリィが驚いて見ていると、なんと、壁の向こうから扉が現れ、中から紫色の少女・・・ピオーネが出てきた。
「さあ、入って」
フロートがあまりにもあっさり言うので、マリィは戸惑いつつ従う事にしたのだった。
突然現れた部屋は、綺麗なベッドとドレッサーが置かれ、丸い窓から月明かりが覗く素敵な寝室だった。
「今はこれだけ…望むなら他にも書く」
「書く?」
「そう、ピオーネの女児符号。クレヨンで書いたもの……実体化できる。この部屋も家具も作った」
ピオーネは手に持ったクレヨンを見せながら言った。
「所で、貴方、マリィさん。明日からどうするつもり?」
フロートの質問に、マリィは答えた。
「そうね、明日は西に行ってみるつもりよ。深い森があるみたいだし」
ピオーネは首をかしげ、フロートは眉を潜めた。
「深い森って…樹海じゃない?貴方が望むならここにいてもいいのよ?」
「え、本当?!本当にいいの?!」
「勿論よ。まぁ、こちらとしては働いて欲しいけど。働かざる者食うべからずよ」
「ピオーネも…いてくれると嬉しい」
マリィはまたピオーネと目があった。紫色の怪しくも美しい瞳が、こちらをじっと見つめている。
「ありがとう…これからよろしく」
マリィはフロートと握手しながらそう言った。こうしてマリィは働くことになったのだった。
「どう?出来た?」
「うん…簡単な物なら」
フロートが徐に声をあげると、壁の向こうから声がした。
マリィが驚いて見ていると、なんと、壁の向こうから扉が現れ、中から紫色の少女・・・ピオーネが出てきた。
「さあ、入って」
フロートがあまりにもあっさり言うので、マリィは戸惑いつつ従う事にしたのだった。
突然現れた部屋は、綺麗なベッドとドレッサーが置かれ、丸い窓から月明かりが覗く素敵な寝室だった。
「今はこれだけ…望むなら他にも書く」
「書く?」
「そう、ピオーネの女児符号。クレヨンで書いたもの……実体化できる。この部屋も家具も作った」
ピオーネは手に持ったクレヨンを見せながら言った。
「所で、貴方、マリィさん。明日からどうするつもり?」
フロートの質問に、マリィは答えた。
「そうね、明日は西に行ってみるつもりよ。深い森があるみたいだし」
ピオーネは首をかしげ、フロートは眉を潜めた。
「深い森って…樹海じゃない?貴方が望むならここにいてもいいのよ?」
「え、本当?!本当にいいの?!」
「勿論よ。まぁ、こちらとしては働いて欲しいけど。働かざる者食うべからずよ」
「ピオーネも…いてくれると嬉しい」
マリィはまたピオーネと目があった。紫色の怪しくも美しい瞳が、こちらをじっと見つめている。
「ありがとう…これからよろしく」
マリィはフロートと握手しながらそう言った。こうしてマリィは働くことになったのだった。
それからマリィは、ピオーネの女児符号でカレンダーと時計と筆記用具を作ってもらい、二人と別れてベッドに倒れこんだ。
(今日は色んな事があったな…)
人間に追われ、不思議な家に迷い込み、不思議な女の子に囲まれ、突然暮らすことになって…
これからのこと、人間のこと、考えるべきことが沢山あったのに、久し振りのベッドの寝心地に、睡魔が直ぐに襲ってきた。マリィは襲ってきた睡魔に勝てず、そのまま夢の世界に旅たつのだった。
(今日は色んな事があったな…)
人間に追われ、不思議な家に迷い込み、不思議な女の子に囲まれ、突然暮らすことになって…
これからのこと、人間のこと、考えるべきことが沢山あったのに、久し振りのベッドの寝心地に、睡魔が直ぐに襲ってきた。マリィは襲ってきた睡魔に勝てず、そのまま夢の世界に旅たつのだった。