『今から過去の話をしよう』
更新日:2020/07/16 Thu 23:11:55
7月!青空小学校は夏休期間に突入していた!
「はあ~暑い……」
愛歩は思う。夏休みなんて無くなればいい。
何せ、愛歩は泳げないし火も無理なのだ。
折角のクラスメイトからのプールやキャンプへの誘いも、全て断ってしまった。
「……」
今はただ、無心で自転車を漕ぐ。
目的地の前で、見知ったポニーテールが二つ見えた。
「はあ~暑い……」
愛歩は思う。夏休みなんて無くなればいい。
何せ、愛歩は泳げないし火も無理なのだ。
折角のクラスメイトからのプールやキャンプへの誘いも、全て断ってしまった。
「……」
今はただ、無心で自転車を漕ぐ。
目的地の前で、見知ったポニーテールが二つ見えた。
みくもやのおばあちゃんは、古ぼけたアルバムを引っ張り出してきた。
「ほら、これが才花。こっちがわたし、これがのじゃロリ猫だよ」
「へえ」
シロクロ写真の中で、二人の女性と女の子一人がが笑っている。女性二人の服装からして、夏祭りの時に撮られた写真のようだ。
「のじゃロリ猫さんって本当に妖怪なんだ…」
紫色の髪をポニーテールにした龍香が言う。
「のじゃちゃんって色んな所にいるんだね…」
この発言は柔らかい茶髪をポニーテールにした玲亜だ。
「この人が、私のおばあちゃん…」
不気味なほど顔が似ていて、まるで鏡に写したようだ。
「私の本当の母は、無表情な人だった。でもこの人は違うんだね」
愛歩の言葉に、みくもやのおばあちゃんは、表情を固くした。
「この時はまだ明るくてわたしと馬があってた。でもある日から突然、人が変わったようになってしまったよ」
「突然?」
その言葉に引っ掛かったのか、龍香が聞き返す。
「そう、あれは朱夏ちゃんが生まれて五年ぐらいたってからの事だったかな。ある日才花から手紙がきてね。脳の病で母を亡くしたから今までのように会えないって」
「と言うことは、お母さんの死が原因?」
玲亜はおばあちゃんに言う。
「かもしれない、違うかもしれない。次にあった時、あの子は別人のように無情な人になっていたよ」
「この人は今……」
愛歩が緊張で乾いた口を必死に動かした。
「死んだよ。あいつが四十の時だったかな。脳の病気で」
愛歩は落胆した。心のどこかでは分かっていたけど。
愛歩はふと思った。のじゃロリ猫が祖母と知り合いなら、母の事も知っていたのでは無いだろうか?
「のじゃロリ猫は、母を知っていたのかな」
その言葉に、みくもやのおばあちゃんは一瞬間を開けて言った。
「ああ、二人は仲がよかった。しょっちゅう一緒にいたよ。と言っても朱夏ちゃんが一方的に懐いていたのかもしれないね」
愛歩は暫く写真から目を離さなかった。
「ほら、これが才花。こっちがわたし、これがのじゃロリ猫だよ」
「へえ」

シロクロ写真の中で、二人の女性と女の子一人がが笑っている。女性二人の服装からして、夏祭りの時に撮られた写真のようだ。
「のじゃロリ猫さんって本当に妖怪なんだ…」
紫色の髪をポニーテールにした龍香が言う。
「のじゃちゃんって色んな所にいるんだね…」
この発言は柔らかい茶髪をポニーテールにした玲亜だ。
「この人が、私のおばあちゃん…」
不気味なほど顔が似ていて、まるで鏡に写したようだ。
「私の本当の母は、無表情な人だった。でもこの人は違うんだね」
愛歩の言葉に、みくもやのおばあちゃんは、表情を固くした。
「この時はまだ明るくてわたしと馬があってた。でもある日から突然、人が変わったようになってしまったよ」
「突然?」
その言葉に引っ掛かったのか、龍香が聞き返す。
「そう、あれは朱夏ちゃんが生まれて五年ぐらいたってからの事だったかな。ある日才花から手紙がきてね。脳の病で母を亡くしたから今までのように会えないって」
「と言うことは、お母さんの死が原因?」
玲亜はおばあちゃんに言う。
「かもしれない、違うかもしれない。次にあった時、あの子は別人のように無情な人になっていたよ」
「この人は今……」
愛歩が緊張で乾いた口を必死に動かした。
「死んだよ。あいつが四十の時だったかな。脳の病気で」
愛歩は落胆した。心のどこかでは分かっていたけど。
愛歩はふと思った。のじゃロリ猫が祖母と知り合いなら、母の事も知っていたのでは無いだろうか?
「のじゃロリ猫は、母を知っていたのかな」
その言葉に、みくもやのおばあちゃんは一瞬間を開けて言った。
「ああ、二人は仲がよかった。しょっちゅう一緒にいたよ。と言っても朱夏ちゃんが一方的に懐いていたのかもしれないね」
愛歩は暫く写真から目を離さなかった。
愛歩がようやく写真から目を離したのは、玲亜に肩を叩かれたからだ。
ハッとし、ここに来た本当の理由を思い出した。
「えっと、おばあちゃん」
おばあちゃんが忘れていませんようにと祈りながら、愛歩はその名を口に出した。
「比護みどりって名前の子、知ってませんか?」
ハッとし、ここに来た本当の理由を思い出した。
「えっと、おばあちゃん」
おばあちゃんが忘れていませんようにと祈りながら、愛歩はその名を口に出した。
「比護みどりって名前の子、知ってませんか?」
~~~~~
「なんで忘れてたのかな。大石早生って二年前に起こった『連続女児行方不明事件』の被害者よ」
六月下旬。五年生の教室があるフロアの廊下で、玲亜はちょっとムッとしながら言う。
「そういえば、そんな事件あったような……」
龍香が呟くと、玲亜がアリアという子から借りたと言う当時のゴシップ記事を読み上げた。
「指定暴力団「比護組」組長の娘、比護みどりが行方不明になってはや数週間、またも比護のクラスメイト、大石早生が行方不明。連続行方不明事件、これで六人に。「比護組」関与を否定……」
「暴力団…?暴力団が関係しているのかな」
愛歩は困った。暴力団なんて関わった事は無かったが、あまり近付きたくはない。
「その…みどりって子、どこで行方不明になったんだっけ?」
龍香の質問に、玲亜はまた記事を読んだ。
「正午過ぎ、町内の駄菓子屋、みくもやへ行くと組員に告げてから行方が分からなくなった。該当の組員は、関与を否定……」
「みくもやって、天号ちゃんの……」
愛歩は、動物園に行く前の事を思い出した。
「そういえば、いつでもおいでっておばあちゃんに言われてた!」
今度会いに行ってみよう。
そういう話で纏まったのだった。
「なんで忘れてたのかな。大石早生って二年前に起こった『連続女児行方不明事件』の被害者よ」
六月下旬。五年生の教室があるフロアの廊下で、玲亜はちょっとムッとしながら言う。
「そういえば、そんな事件あったような……」
龍香が呟くと、玲亜がアリアという子から借りたと言う当時のゴシップ記事を読み上げた。
「指定暴力団「比護組」組長の娘、比護みどりが行方不明になってはや数週間、またも比護のクラスメイト、大石早生が行方不明。連続行方不明事件、これで六人に。「比護組」関与を否定……」
「暴力団…?暴力団が関係しているのかな」
愛歩は困った。暴力団なんて関わった事は無かったが、あまり近付きたくはない。
「その…みどりって子、どこで行方不明になったんだっけ?」
龍香の質問に、玲亜はまた記事を読んだ。
「正午過ぎ、町内の駄菓子屋、みくもやへ行くと組員に告げてから行方が分からなくなった。該当の組員は、関与を否定……」
「みくもやって、天号ちゃんの……」
愛歩は、動物園に行く前の事を思い出した。
「そういえば、いつでもおいでっておばあちゃんに言われてた!」
今度会いに行ってみよう。
そういう話で纏まったのだった。
~~~~~
「比護みどりちゃん……ああ、あの子だね」
いたたと腰をさすりながら立ち上がると、おばあちゃんは一冊のアルバムを持ってきた。
人差し指をなめてページを捲る。
「えっと確かここに…ああ、あった。これだ」
渡された写真には、五人の女の子が写っていた。
ぼさぼさの髪の女の子に、眼鏡をかけた女の子、浅黒い子に地味な子。そして大石早生。
「これは……」
「四年か三年前、クラスメイトと来てたんだよ。礼儀正しくていい子でね」
おばあちゃんは続ける。
「九ちゃん。きゅーばんちゃんがね、カメラを持ってみくもやに来てて、撮らせてってお願いしてたよ。それでも、その子達がいなくなったから、渡せなくなっちゃったけどね」
愛歩は目をぱちくりさせる。きゅーばんちゃんが知っていたなんて!とんだ遠回りをしてしまった気がする。
「ありがとう」
愛歩は頭を下げた。とても貴重な物を見せてもらった気がするのだった。
「おばあちゃん!私のゲーム……あ、愛歩ちゃん!」
「天号ちゃん、お邪魔してるよ」
天号が部屋に入ってきたので、愛歩は写真から目を離した。
「そっか、ゆっくりしていってね」
おばあちゃんは孫の余所余所しさに気付いた。普段なら何見てるの!と駆け寄ってくるだろう。
だがその事に言及することは無かった。ここのところ、何か悩んでいるようだったからだ。
「じゃあ、ちょっと用事あるから……!」
そう言っても去ろうとする天号に、おばあちゃんは声をかけた。
「これ!宿題はいつやるんだい!」
「明日やるよ!」
号姫の返事に、おばあちゃんは溜め息をつくのだった。
「明日っていつの明日なんだい……」
「比護みどりちゃん……ああ、あの子だね」
いたたと腰をさすりながら立ち上がると、おばあちゃんは一冊のアルバムを持ってきた。
人差し指をなめてページを捲る。
「えっと確かここに…ああ、あった。これだ」

渡された写真には、五人の女の子が写っていた。
ぼさぼさの髪の女の子に、眼鏡をかけた女の子、浅黒い子に地味な子。そして大石早生。
「これは……」
「四年か三年前、クラスメイトと来てたんだよ。礼儀正しくていい子でね」
おばあちゃんは続ける。
「九ちゃん。きゅーばんちゃんがね、カメラを持ってみくもやに来てて、撮らせてってお願いしてたよ。それでも、その子達がいなくなったから、渡せなくなっちゃったけどね」
愛歩は目をぱちくりさせる。きゅーばんちゃんが知っていたなんて!とんだ遠回りをしてしまった気がする。
「ありがとう」
愛歩は頭を下げた。とても貴重な物を見せてもらった気がするのだった。
「おばあちゃん!私のゲーム……あ、愛歩ちゃん!」
「天号ちゃん、お邪魔してるよ」
天号が部屋に入ってきたので、愛歩は写真から目を離した。
「そっか、ゆっくりしていってね」
おばあちゃんは孫の余所余所しさに気付いた。普段なら何見てるの!と駆け寄ってくるだろう。
だがその事に言及することは無かった。ここのところ、何か悩んでいるようだったからだ。
「じゃあ、ちょっと用事あるから……!」
そう言っても去ろうとする天号に、おばあちゃんは声をかけた。
「これ!宿題はいつやるんだい!」
「明日やるよ!」
号姫の返事に、おばあちゃんは溜め息をつくのだった。
「明日っていつの明日なんだい……」
「今日はありがとう」
すっかり日が暮れて、辺りがオレンジに染まっていた。
愛歩は自転車を押して袋小路まで来ていた。
「こちらこそだよ。だんだん事件が見えてきたね」
オレンジの光を浴びながら玲亜は言う。
「指定暴力団か。……いざとなったらこの力を使うのは駄目かな。カノープス」
龍香は何かを呟くが、後半の言葉は小さすぎて愛歩と玲亜には聞こえなかった。
「じゃあ、私はこっちだから。またね!」
「うん、気を付けてね」
「ばいばい」
自転車に乗って家に帰宅する愛歩。
その背を何者かが見つめていた。
「ごめんでち。協力しないとアタチが殺されちゃうでち……」
鼠色のスクール水着とマフラーをした少女が、愛歩を追って駆け出す。
足を踏み込む度に小さくなっていき、やがて小さな鼠の姿に変わった。
「きゃ!」
少女は愛歩の自転車の車輪に噛みつき、パンクさせる。
パァンと音がして、愛歩の自転車が走りづらくなった。
「もう、何か踏んだのかな?」
自転車に絡み付いた鼠に、愛歩は気付いていない。
自転車を降りて確認しようとする。
ガァァァァァァン!!!
直後、愛歩の後頭部に電撃のような痛みが走った。
(…え?)
自分に何が起こったか分からない愛歩は、直ぐに意識を手放す事になる。
最後に見た光景は、茶色の翼と黄色く光る邪悪な瞳だった。
すっかり日が暮れて、辺りがオレンジに染まっていた。
愛歩は自転車を押して袋小路まで来ていた。
「こちらこそだよ。だんだん事件が見えてきたね」
オレンジの光を浴びながら玲亜は言う。
「指定暴力団か。……いざとなったらこの力を使うのは駄目かな。カノープス」
龍香は何かを呟くが、後半の言葉は小さすぎて愛歩と玲亜には聞こえなかった。
「じゃあ、私はこっちだから。またね!」
「うん、気を付けてね」
「ばいばい」
自転車に乗って家に帰宅する愛歩。
その背を何者かが見つめていた。
「ごめんでち。協力しないとアタチが殺されちゃうでち……」
鼠色のスクール水着とマフラーをした少女が、愛歩を追って駆け出す。
足を踏み込む度に小さくなっていき、やがて小さな鼠の姿に変わった。
「きゃ!」
少女は愛歩の自転車の車輪に噛みつき、パンクさせる。
パァンと音がして、愛歩の自転車が走りづらくなった。
「もう、何か踏んだのかな?」
自転車に絡み付いた鼠に、愛歩は気付いていない。
自転車を降りて確認しようとする。
ガァァァァァァン!!!
直後、愛歩の後頭部に電撃のような痛みが走った。
(…え?)
自分に何が起こったか分からない愛歩は、直ぐに意識を手放す事になる。
最後に見た光景は、茶色の翼と黄色く光る邪悪な瞳だった。
「でちロリ鼠。よくやったよ。でも一番はこのホー。だもんロリ梟だもんね」
気絶した愛歩を足で掴み、だもんロリ梟は言った。
「そ、そうでちか……よかったでちね、あ、アタチもう帰って……」
「駄目に決まってるでしょ、これからこの子の心臓を生きたまま取り出さなきゃ行けないんだもん。手伝ってくれるよね?」
だもんロリ梟に顔を覗き込まれ、スク水少女の声が裏返った。
「え……あ、はい……」
でちロリ鼠と呼ばれた少女は自分よりも圧倒的に体格の良いだもんロリ梟に怯えている。
「それじゃ、解体しやすそうな場所を見つけて。早くしなきゃ君を先に食べるよ?」
「ヒィ……ハイでち……」
でちロリ鼠の瞳が光る。何かを一生懸命考えているように表情が険しくなっていく。
「え、えっと……」
数分が経過し、遂にでちロリ鼠が口を開いた。
「星空劇場……トワイライトシアターがいいと思うでち……」
「どこだっけそれ?」
だもんロリ梟は首を回す。梟の名を冠している通り、かなり後ろまで回っていてとても不気味だ。
「あ、青空駅から直ぐの所にあるでち……」
「そっかぁ、ありがとう。でちロリ梟。さあ、ホーに捕まって」
だもんロリ梟は愛歩を足で鷲掴みにし、でちロリ鼠の腰を抱えて、空をバサバサと飛んでいった。
気絶した愛歩を足で掴み、だもんロリ梟は言った。
「そ、そうでちか……よかったでちね、あ、アタチもう帰って……」
「駄目に決まってるでしょ、これからこの子の心臓を生きたまま取り出さなきゃ行けないんだもん。手伝ってくれるよね?」
だもんロリ梟に顔を覗き込まれ、スク水少女の声が裏返った。
「え……あ、はい……」
でちロリ鼠と呼ばれた少女は自分よりも圧倒的に体格の良いだもんロリ梟に怯えている。
「それじゃ、解体しやすそうな場所を見つけて。早くしなきゃ君を先に食べるよ?」
「ヒィ……ハイでち……」
でちロリ鼠の瞳が光る。何かを一生懸命考えているように表情が険しくなっていく。
「え、えっと……」
数分が経過し、遂にでちロリ鼠が口を開いた。
「星空劇場……トワイライトシアターがいいと思うでち……」
「どこだっけそれ?」
だもんロリ梟は首を回す。梟の名を冠している通り、かなり後ろまで回っていてとても不気味だ。
「あ、青空駅から直ぐの所にあるでち……」
「そっかぁ、ありがとう。でちロリ梟。さあ、ホーに捕まって」
だもんロリ梟は愛歩を足で鷲掴みにし、でちロリ鼠の腰を抱えて、空をバサバサと飛んでいった。
「どうしよう……」
その光景を偶然見ていた子が一人。
「……助けなくちゃ……でも怖い」
その子の前に、だもんロリ梟の羽がヒラリと舞い落ちる。
持ってみると、羽の一部が赤く濡れていた。血だ。
「愛歩ちゃん……」
血に濡れた羽を握りしめ、天降号姫は空を見上げた。
その光景を偶然見ていた子が一人。
「……助けなくちゃ……でも怖い」
その子の前に、だもんロリ梟の羽がヒラリと舞い落ちる。
持ってみると、羽の一部が赤く濡れていた。血だ。
「愛歩ちゃん……」
血に濡れた羽を握りしめ、天降号姫は空を見上げた。