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  • Side Story 継承の翼 後編

創作女児小学生ズ@wiki

Side Story 継承の翼 後編

最終更新:2024年05月24日 21:40

yuchan

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だれでも歓迎! 編集

ここに作品タイトル等を記入

更新日:2024/05/24 Fri 21:40:17

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「……何故、キミが生きているんだ。アリス。」

「また会えて嬉しいわ、イザベラ。」

 二人の間に緊迫した空気が張り詰める。だが、事情をいまいち読み込めない柚紀がイザベラに尋ねる。

「…あの、お二人はお知り合いなんです?」

「…あぁ。かなり、昔にね。」

 イザベラがそう答えると、それを聞いていたアリスが嬉しそうに顔を綻ばせながら。

「知り合いなんてもんじゃないわ。家族よ。私達は家族だった。」

「家族?」

 柚紀の頭に新たな疑問が浮かぶ。

「彼女とは500年前、ボクが西欧を歩いていた頃に知り合った仲だ。アリスはまだ人間社会に馴染めなかったボクにとても良くしてくれた。それこそ、家族のように、だ。」

「そうだったんですね…ん?」

 イザベラの話を聞いた柚紀はそこで話にある違和感を感じる。

「500.年前?」

「あぁ。500年前だ。人間である彼女が生きている訳がない。」

「なら……偽物?」

 柚紀がそう問うと、アリスの瞼がピクリと動く。

「偽物…?いいえ、私は本物よ。文字通り500年生きたのよ!全てはイザベラ!貴女にまた会うため!」

「……」

 疑念の目を向けるイザベラに、アリスはふぅ、と一息ついて肩をすくめる。

「信じて貰えない?なら、貴女にイザベラの名前を私があげる前の貴女の名前を言ってみましょうか。ねぇ、ヘビクイワシ?」

「……!」

「ホントの、名前?」

 柚紀のその反応を見て、アリスが勝ち誇ったように彼に笑みを見せる。

「そう。彼女の名前。貴方の知らない──ね。」

「……キミが、本物のアリス、なのは分かった。けど、なら何故、キミが生きている?人間は500年も長い間生きられない。キミが本物なら、生きているハズが─」

 そこまで言って、彼女は気づく。アリスが纏う、凶悪なオーラと、濃厚な死の臭いに。
 それに気づいたイザベラの表情が険しくなる。

「──禁忌に手を出したのか。」

「そう。貴方への想いが、私に奇跡と、祝福を齎したの。さぁ、イザベラ。私と語らいましょ。貴方と話したいことが山程──」

 次の瞬間、翼を翻し、飛翔したイザベラが急加速でアリスとの距離を詰めていた。
 そしてそのまま無防備な彼女目掛けて、イザベラが手刀を繰り出す。しかし、その一撃は横から割って入ったファルファレロが妨害する。

「おっと。手荒な真似は控えていただきたく。」

「邪魔をするな。お前から殺すぞ。」

 彼女の瞳には殺意が今までにないほど満ち溢れていた。見たこともない彼女の反応に柚紀は困惑する。
 だが、殺意を向けられているアリスはそれでもニコニコと笑みを浮かべている。

「ふふっ。イザベラったら。私に会えて嬉しいのは分かるけど、そんなにはしゃがなくても。」

「外道に落ちたキミは──最早私の友じゃない。キミは、君の命を永らえさせるために何人の人間を殺したんだ!?いくら肉体を永らえさせても、魂は醜く、劣化する!人の魂は、500年の時に耐えられる程、丈夫じゃない!」

「うふふっ!友?やっぱりそう思っていてくれたのね?貴方が私の前から姿を消したのは、貴方を“魔女”と断じた村の人間のせいなのね!許せない!許せなかったわ!だから、私の糧にしたの!貴方に再び会うために!殺した数?そんなの些事、覚えてないわ。」

「アリス、キミは」

 ドス黒い狂気を孕んだ彼女の瞳と変わり果てたその姿にイザベラが絶句し、一瞬動きが止まる。

「お客人。失礼しますよ。」

 ファルファレロが翼をはためかせ、血のように紅い旋風を巻き起こすと、イザベラはたまらず後退する。

「くっ。」

「マスター。ここはワタクシにお任せを。ご客人を“落ち着かせ”ますので、マスターは部屋でごゆるりとお待ちになられては?」

「あら。そう?まぁ、そういうことならお任するわ。」

 アリスはそう言うと踵を返して、奥の部屋へと戻ろうとする。

「待て!アリス!」

 尚も追い縋ろうとする彼女の前に再びファルファレロが立ちはだかる。

「おおっと。そうは行きませんよ?」

「……どけ!」

 立ちはだかるファルファレロにイザベラが拳を繰り出す。しかし、放たれた拳が彼を捉える前に、彼の身体は紅い霧となって立ち消え、拳は虚しく空を切る。

「おおっと。血気盛んな方だ。」

 いつの間にかファルファレロは彼女の背後へと回っており、手の爪を合わせて伸ばし、紅い剣のようにすると、イザベラの背中に向けて突き出す。

「舐めるなッ!」

 しかし、イザベラはそれをかわしつつ、その腕を掴むと思い切り背負い投げをかまして、ファルファレロを投げ飛ばす。

「おおっとぉっ。」

 ファルファレロは腕の翼を拡げて、空中で体勢を立て直すことで、床へと叩きつけられることを回避する。
 しかし、止まった一瞬の隙をつき、ファルファレロの背に飛び込んできたイザベラの蹴りが突き刺さり、床へと叩きつけられる。床にひび割れが拡がり、砂塵が巻き起こる。
 踏みつけられたファルファレロへ追撃を仕掛けようとイザベラが拳を振るうが、またもや彼の姿が霧状になって攻撃は地面に叩きつけられる。

「おおっと。危ない危ない。いけませんね。頭に血が昇っても冷静な方だ。」

 空中へと逃れたファルファレロはイザベラから距離を取りつつ、翼を拡げ、その膜にあたる部分から血の針を彼女に向けて発射する。
 イザベラはそれを飛翔して回避しながら彼への接近を試みる。しかし、そうはさせまいと針を発射しながらファルファレロは逃げ回る。

「すばしっこい奴!」

「ふふっ。ワタクシ器用でございますので。」

 そう言うと、ファルファレロの周りに複数本の赤黒い剣が精製され、イザベラに向けて彼が手を翳すと、次々と彼女目掛けて殺到する。

「手品はもう結構だ!」

 しかし、イザベラは殺到するそれらを蹴り壊すとさらに加速し、瞬時にファルファレロとの距離を潰す。
 そこから放たれるは神速の拳。だが、ファルファレロはまたもや霧となって逃げる。

「ちょこまかと…!」

「真正面からやり合って貴方に勝てると思う程、ワタクシ、自信家ではございません。ならばこそ。後ろをご覧ください。」

 イザベラが振り向くと、そこには柚紀の首に右爪の剣を当てる“ファルファレロ”の姿があった。

「なっ」

「ご、ごめんなさい…いきなり、現れて…!」

 柚紀にを人質に取られたイザベラはキッとファルファレロを睨む。

「卑怯な…!」

「フフッ。ワタクシ“惑乱の魔人”なれば。卑怯卑劣卑道、大得意でございます。」

 そう言うと、ファルファレロは翼を拡げ、翼膜に当たる部分から赤黒い血の針を発射する。
 イザベラは翼を全身を覆うように畳み、防御の構えを取る。針は次々と翼に突き刺さり、白と黒の美しい翼は一瞬で針の筵になり、赤黒く染まる。
 さらに防御の構えをしていた彼女の後ろをいつの間にか取っていたファルファレロが右手の爪の剣を振るい、彼女の背を切り裂く。

「ぐっ…!」

 切り裂かれた背中を庇うようにイザベラが振り返る。振り返ったと同時に彼女の腹に彼の蹴りが炸裂する。
 蹴り飛ばされた彼女はワンバウンドすると壁へと叩きつけられる。そして間髪入れずにファルファレロは彼女に接近し、その首を掴む。

「がっ…!」

「この超至近距離まで近づけば、貴方お得意の蹴り技は放てないでしょう?さて。実はワタクシ、貴方のような知り合いを一人存じあげているのですが、常々気になっていたのです。」

 ファルファレロは剣に変えた右手を彼女の脚に押し当てる。

「つま先から頭まで細切りにしても生きていられるのか、とね。まぁ貴方は大切なお客様です。暴れることのないよう、手足を切り落としてコンパクトにするだけにいたしましょうか。」

「うぐっ…!」

 ファルファレロの凶刃がイザベラに迫る。それを見た柚紀はなんとかせねばと思考を巡らせる。

(俺のせいだ!俺が人質に取られているからイザベラさんは動けない…!)

 この状況を解決しようと考えるものの、ファルファレロの分身の力は強く、全く振り解けない。

「おやおや。暴れないで下さい。うっかり殺してしまいますよ?」

 ファルファレロが脅しをかけてくるが、柚紀はそれがブラフであると見抜く。

(……コイツは俺を殺さない、いや、“まだ殺せない”。俺を殺せばイザベラさんの反撃を許してしまう。だから殺せない…!)

 ファルファレロはイザベラが戦える内はまだ柚紀を殺さない。しかし、それも時間の問題である。イザベラが戦闘不能になれば、自分はあの魔人にあっさりと殺されてしまうだろう。

(……どうしたらいい!?何かないか、この状況を逆転出来る手は…!)

 その時。ふと彼の脳裏にある事が思い浮かぶ。

(……いや、ある。この状況をひっくり返せるかもしれない手は。)

 そう判断した彼はすぐさまカバンに手をかける。ファルファレロもその動きに気づく。が。

(無駄な足掻き、ですね。)

 人間風情の攻撃が魔人である自分に効くはずがない。それもただの学生であるこの少年にこの状況をひっくり返す手など打てるハズがない。
 そう、判断した彼はその動きを見逃す。むしろその手が無駄であると絶望感の演出に一役立つかもしれない。
 柚紀は鞄からあるものを引っ張り出す。そしてそれをファルファレロの顔に叩きつける。
 叩きつけたのは──“タオル”。無論そんなものを人間の膂力でぶつけられたところで魔人である彼にとって痛くも痒くもない。せいぜい一瞬の目眩し程度にしかならない。
 そうそれが──“ただのタオル”であるならば、だが。

「む──」

 そしてその違和感はすぐに現れる。上下左右の感覚が無くなり、脱力感と倦怠感が彼を襲う。

「こ、れ、は──?」

「アンタの、お仲間の力だ!」

 柚紀は“毒々娘々”の毒が染み込んだタオルに接触したことで、脱力したファルファレロの拘束を振り解いて、逃げ出す。

「何っ!?」

 まさか見下していた人間に逃げ出されるとは思わなかったファルファレロは驚いて柚紀の方へと視線を向ける。
 その格好の隙をイザベラが逃すハズがない。彼女はファルファレロの腹に指を当てる。

「噴ッ!」

 そしてそれを折り畳むようにして拳を放つ。次の瞬間爆発したかのような衝撃がファルファレロの腹部に炸裂する。

「ゴフッ……!?」

(なんだっ……!?腹が爆発した……!?)

「ワン•インチ•パンチだ…!ボクがあらゆる状況に対応出来るよう対策してないと思ったか…!」

 あまりの衝撃にファルファレロはイザベラから手を離し、吹き飛ばされて距離を空けてしまう。そう、それ即ち。
“ファルファレロはイザベラの必殺の間合いへと追いやられた事を意味する──”

「しまっ──」

「“煌星一条”!!」

 イザベラの繰り出した蹴りの一撃は寸分の違いもなく、ファルファレロの胸を蹴り抜く。

「なっ、はっ─わ、た、しが……!?」

 その一撃は確実にファルファレロの命を刈り取る。彼の口から多量の出血が漏れ、墜落する。
 そしてイザベラは踵を返して、毒でもがくファルファレロの分身へと急接近する。

「“煌星一条”!」

 急加速の勢いそのままに、再び放たれた蹴りの一撃はファルファレロの分身に炸裂し、粉砕する。
 イザベラはそのまま着地する。そして、柚紀の方へ振り返る。

「キミ!大丈夫か!?」

「あっ、イザベラさん。良かった。勝ったんです──」

 そこまで言いかけて、柚紀が倒れる。

「キミ!」

 イザベラが慌てて駆け寄る。イザベラが彼の身体を抱き起こすが、その顔は青ざめ、口から赤い一筋の血が漏れる。見れば、その背中には赤い剣が深々も突き刺さっている。

「……その、少年は助からない。」

 後ろから瀕死のファルファレロが地面に仰向けに倒れて多量の血を流しながら嘲るように言葉を紡ぐ。

「その傷の深さ、確実に死ぬ。貴方はその少年を守ることなんて出来ないんだ──」

「黙っていろ!!」

 イザベラはファルファレロの呪詛のような言葉をかき消すようにそう叫ぶと、何とか彼を救おうと思考を巡らせる。

「あぁっ、キミは、キミはなんでこんな、無茶を─」

「……俺の、せいで。」

 柚紀の口からか細い声が漏れる。

「……イザベラ、さんが……傷つく…のは、……嫌、だったから。」

 柚紀が力無く微笑みかける。イザベラはその言葉を聞くと酷くショックを受ける。

「──私は不死身と言ったハズだ。例え、あの場で切り裂かれようとも、復活する──」

「でも……痛いハズです。誰かが傷つくのは……無視、出来ない。」

「……キミと言う男は……!」

 そんなイザベラに、柚紀は力無く、微笑みながら。

「イザベラ、さん。貴方は……生きて……」

 そう言うと、彼の身体から力が抜け、目を閉じる。

「…!キミ!ダメだ!死んじゃダメだ!」

 イザベラが身体揺らす。しかし、彼が反応を返す事はない。彼女は急速に熱を失う彼の身体を抱き締めながら、言葉を漏らす。

「……バカだな。キミは。ボクは不死身なんだ。あの程度の攻撃、すぐに復活出来た。なのに、彼は私を救おうと命をかけるなんて。……それが、キミの、人間の強さなのかい?ボクが持ち得ることのない……強さなのか。」

 イザベラの視界が滲む。目を擦ると手の甲に温い液体に触れた感覚がして、そして気づく。自分が泣いていることに。

「……ボクが、泣いているのか?」

 イザベラは涙に濡れた手と、彼を交互に見やる。そして決意を込めた瞳で彼を見る。

「…死なせない。キミはこんなところで死ぬべきじゃない。」

 イザベラは彼の胸に手を当てる。

「キミはボクが助ける。例え──ボクが“ボク”を失っても、だ。」












 黒く、冷たい海の底へ、柚紀の意識が沈んでいく。

(…俺、死ぬのか。)

 彼の脳裏にぼんやりと、まるで人ごとのようにそんな事が思い浮かぶ。そんなことを思いながらも、意識はどんどん沈んでいく。

(……あぁ。最後に、彼女とか、作ってみたかったな。)

 そんなことを思いながら、彼が目を閉じようとした瞬間。ガシッと。誰かに腕を掴まれる感覚がして、そのまま力強く引っ張られる。そしてそのままとうとう黒い海を抜け、視界が白く染まる。

「……はっ。」

 目を開ける。そこは激闘の後が随所に残る塔の天井。柚紀はぼやける頭を押さえながら、身体を起こす。
 見れば倒れているファルファレロの前にイザベラが立っていた。

「……ふ、ふふっ。理解、出来ませんねぇ。愚か、全く持って愚かな選択……」

「もう、喋るな。耳が腐る。」

 次の瞬間イザベラはファルファレロの顔を踏み潰した。鮮血が辺りに飛び散る。
 彼の死を見届けたイザベラは柚紀の方へと振り返り、彼が起きている事に気づくと、走って駆け寄る。

「起きたか、キミ!」

「え、えぇ。何とか。……でも、なんで?」

 イマイチ自分の状況を理解出来ていない、柚紀が困惑気味にそう答える。
 今の自分の体調は、先程刺されたにもかかわらず、前よりも随分と力強く、活気が溢れてくる。

「立てるかい?」

 イザベラが手を差し出す。柚紀はその手を取って、立ち上がる。

「…あ、その。ありがとうございます。」

「うん。大丈夫そうだね。……あと、もうボクの名前はイザベラじゃなくて……ヘビクイワシと、呼んでくれ。」

「ヘビクイワシ…?」

「うん。それがボクの本当の名前だ。ボクもキミのことは柚紀、と呼ぼう。ついてきてくれ、柚紀。必ずキミをここから出す。」

「えっ、あっ、ありがとうございます…?」

 彼女はそう言うと、踵を返して、奥の部屋へと続く扉へと向かう。柚紀はなんか妙に優しいイザベラもとい、ヘビクイワシを変だな、と思いつつも着いていくのだった。





 二人が塔の内部を進み、最奥の扉を開ける。そこは巨大なステンドグラスが立ち並び、赤いカーペットが敷かれた大きく広い部屋だった。
 そして、さらに進むための扉の前に一人の少女がいた。
 長い銀髪に、軟体類の脚を角の様に生やし、紫のドレスに身を包んだ少女は二人の姿を認めるとパチパチも拍手をする。

「おーおー。よくここまで来れたじゃき。ここまで来れたのはお前らが初……だけどまぁ、“ヘビクイワシ”がいたんじゃ、それも当然、じゃき?」


「クラーケン…!」

 その少女、クラーケンを見たヘビクイワシの表情が険しくなる。

「…お知り合いなんです?」

「……腐れ縁だ。」

 柚紀の問いにヘビクイワシが吐き捨てる様に答える。それを見たクラーケンは肩をすくめるながら。

「ひどいじゃきなぁ。ワシらある意味姉妹みたいなモンじゃきに。」

「黙れ。ボクはお前らと一緒にされる事が何よりも屈辱的だ。」

「はぁ、やれやれ。ならばまぁ、ちゃちゃっと決着を着けるとさせてもらうじゃき。」

 そう言って彼女は手を翳し、魔法陣を数個出現させる。その魔法陣からヌルリと悪臭を放つ青い粘液を纏った軟体動物のような怪物達から不愉快な奇声を上げながら現れる。

「あの怪物を生み出していたのはあの子だったのか!」

「さぁ。やるじゃき。」

 クラーケンの号令と共に海魔がヘビクイワシに向けて殺到する。そして触手を彼女へと向けて伸ばした次の瞬間。
 地面を強烈に踏み込み、爆発的な加速と共に触手をすり抜け、懐に飛び込んだヘビクイワシは必殺の蹴りを海魔に浴びせる。
 肉が潰れる嫌な音がする。一瞬にして海魔の命を刈り取るとすぐ様他の数体に肉薄し、瞬く間に残る数体も蹴り殺す。

「おいおい。ひどい事をするじゃき。」

 さらにクラーケンが海魔を呼び出そうと、手を翳そうとしたその時。海魔を呼び出す一瞬の隙をついて、ヘビクイワシが凄まじい速度でクラーケンに肉薄する。

「──あ?」

「隙だらけだぞ。お前。」

 クラーケンが反応するより先にヘビクイワシの拳が彼女にめり込む。そして怒涛のラッシュがクラーケンを襲う。

「ちょっ、おまっ、まっ」

 クラーケンが言葉を紡ごうとするが、ヘビクイワシは一切無視して殴り続け、そして最後に思い切り蹴り飛ばす。
 蹴り飛ばされた彼女は壁に叩きつけられ、壁に亀裂が走り、砂塵が巻き起こる。

「す、すご……」

 もうもうと砂塵が巻き上がる中、ヘビクイワシがぐらりと揺れて、膝をつく。

「い……ヘビクイワシさん!?」

 柚紀が膝をつくヘビクイワシを見て、叫ぶ。見れば彼女の脇腹から赤黒い液体が流れ出ている。

「ってぇ……やってくれたじゃき……!」

 ボコボコに殴られて腫れ上がった顔面を押さえながらクラーケンが砂塵を掻き分け、姿を現す。見れば彼女の腰から四本の薄い触手が生えており、その内の一本が剃刀のように鋭く尖り、真っ赤に濡れている。

「お前、マジ容赦ないじゃき。あー、まだ目がぼんやりとする。」

 そう言いながらゴキゴキと嫌な音を立てて、ボロボだったクラーケンの顔が元通りに治っていく。
 一方のヘビクイワシは脇腹を片手で押さえながら、よろよろと立ち上がる。
 それを見たクラーケンは訝しげに彼女を見つめる。

「……ん?そんなに深く斬ったっけ?」

「……うるさい。次はその顔面を砕いてやる。」

 ヘビクイワシは呼吸を整え、クラーケンに向き直る。

「はっ、ならこっちはまた切り刻んでやるじゃき!」 

 クラーケンはまたもや魔法陣を精製しようとする。しかし、そうはさせまいとヘビクイワシは海魔の死骸の脚を掴むと、思い切り彼女に向けてぶん投げる。

「おおぅ!?」

 まさかの一手に驚いたクラーケンの手が止まる。そして投げた海魔に続くようにヘビクイワシが突進する。
 投げつけられた海魔をクラーケンは腰の四本足を振り回し、細切れにする。
 ヘビクイワシはその隙に懐へと潜り込む。

「振り終わりは隙だらけだぞ。」 

「チィッ!」

 クラーケンが防御の構えを取る。しかし、ヘビクイワシが繰り出した鋭い一撃は彼女が防御に回した両腕を蹴り砕く。

「グゥッ……!!?」

「再生頼りだからこの程度の攻撃が防げない!」

「お前も同類じゃき!」

 クラーケンの腰の触手が畝り、ヘビクイワシへ迫る。しかし、彼女は迫る触手を両手を使って受け流し、まるで踊るようにして触手の攻撃を回避する。

「なんだその動き…!」

「中国拳法の内一つ、詠春拳だ。」

 静と動を使い分ける鉄壁の防御が触手の怒涛の攻撃をいなす。さらには繰り出されたカウンターの掌底がクラーケンの身体を揺らす。

「こっ、の……!離れるじゃき鳥野郎…!」

 触手を振るい、何とか引き剥がそうとするが、ヘビクイワシは逃すまいと至近距離を維持し続ける。
 だがその時、クラーケンの頬が膨らむ。

「プッ!!」

 次の瞬間クラーケンは口から黒い粘液を吐き出す。それはベチャリとヘビクイワシの顔の左半分に直撃し、その視界を潰す。

「ぐっ…!」

「これは見えねぇじゃきねぇ!」

 次の瞬間視界が潰れているヘビクイワシの左側面から触手の攻撃が炸裂する。
 ヘビクイワシの身体が、まるで木の葉のように吹き飛んで何度もバウンドしながら地面を転がる。
 倒れた彼女は血に塗れ、震えながらも、何とかよろよろ立ちあがろうとする。

「ヘビクイワシさん!大丈夫です!?」

「……ゴフッ、大丈夫…この位、なんて事ない…」

「いや、血まみれじゃないですか…!」

 慌てて柚紀が彼女に、駆け寄る。血に塗れて、息も絶え絶えな彼女をクラーケンは訝しげな目で見ていたが、何かに気づいたようで、ポンっと手を叩くと、いやらしい笑みを浮かべる。

「……ははーん?成る程成る程……ぷっ。」

 何かを察したクラーケンが吹き出す。そして目尻に涙を浮かべてゲラゲラと笑いながら傷だらけのヘビクイワシを指差す。

「お前、“不死身”を捨てたんじゃきな!大方バカな人間の命を救うため…とかバカな理由じゃき!ぷっ、ぷぷぷぷ!前代未聞のバカじゃき!アナザーの中でもそんな選択をするのはお前くらいじゃき!」

「不死身を……捨てた?」

「………」

 クラーケンの指摘を聞いた柚紀なヘビクイワシに視線を移す。視線を受けた彼女は黙り込む。

「はははっ!お前そう言えば言っとったじゃきのぉ。人間が好きだのなんだの!けどのぉ、ヘビクイワシ。人間はお前のような怪物を毛嫌いする生き物じゃき!気味悪い故にな!」

「何を……!」

「お前もそれを知っとるからわざわざ偽名を使ったんじゃき!情けない奴じゃき。たかが人間に嫌われるのを、怖がるなんぞ──」

「笑うなぁっ!」

 次の瞬間、柚紀が叫び、クラーケンの言葉を遮る。遮られた彼女だけでなく、ヘビクイワシも彼へ視線を向ける。

「何が可笑しいんだ!嫌われるのが怖くて何が悪いんだ!俺だって、嫌われるのは怖い!それでも、ヘビクイワシさんは見ず知らずの俺に手を差し向けてくれた!命を助けてくれたんだ!」

「はっ。ちょっと助けられただけで友達気取りじゃきか?烏滸がましいじゃき人間。ソイツはワシと同じ怪物じゃき。」

「同じじゃない!無闇やたらに人の命を弄ぶお前と、命を思いやれる、守れる優しさを持ったヘビクイワシさんは違う!」

 クラーケンの言葉に柚紀は力強く言い返す。

「……柚紀…。」

「……あーあ、お前、なんか目障りじゃきなぁ。」

 クラーケンが触手の鎌首をもたげさせる。

「これ以上は時間の無駄じゃき。死ね。」

 次の瞬間唸りをあげてクラーケンの触手が柚紀へと伸びる。

「…!!」

 迫り来る触手に柚紀が防御しようとしたその瞬間。立ち上がったヘビクイワシがその攻撃を受け止める。

「ヘビクイワシさんっ!?」

 放たれた触手は彼女の身体を貫くも、柚紀には届かない。

「…ちっ、邪魔を……って、あっ?」

(引き、抜けない…?)

 クラーケンがどんなに力を込めても、ヘビクイワシの身体から触手を引き抜けない。

「……ありがとう。柚紀。キミの言葉。しかとこの胸に響いた。」

 次の瞬間ヘビクイワシの両腕の筋肉が隆起する。そして万力の如き力を込めてその触手を掴むと思い切り引き千切る。

「ふんっ!」

「なっ、あ、あぁっ…!?ワシの触手を…!」

 引き千切られた触手を体から引き抜くと、ポイと投げ捨てる。

「さて、クラーケン。そろそろ決着をつけよう。」

 ギロリと凄まじい眼力でヘビクイワシはクラーケンを睨みつける。
 その瞳にクラーケンはビクリ、と半歩下がる。

(い、いや。落ち着くじゃき。奴は不死身を捨てて満身創痍。あの出血量じゃそう永くはない。それに、いくら攻撃を受けてもワシは再生出来る。どう転んだって負けはない。しかしまぁ、念には念を込めて…)

 クラーケンは地面に手を当てる。次の瞬間彼女を中心に巨大な魔法陣が広がり、そこから無数の触手が彼女に絡み、包み込んで巨大なイカの怪物が現出する。

《くっ、はっはっはっ!どうじゃきヘビクイワシ!これならお前の必殺の蹴りも届かない!ゆっくり時間をかけて、そこのガキと一緒に辱めて、汚し尽くしてから殺してやるじゃき!》

 巨大な海魔と化したクラーケンが巨体を揺らして、二人に迫る。
 だが、ヘビクイワシの目は少しも光を失わない。それどころか勝ちを確信したように笑う。

「クラーケン。一つ言っておくが。もう既にボクは勝っている。」

 ヘビクイワシは腰を落とし、右脚を後ろへと回す。

《ははははははは!!負け惜しみも程々にしておくじゃき!蹴りも届かないのにどうやってワシに勝つというんじゃき!!》

「……既に楔は打ち込まれている。我が一撃は光を超え、時を逆巻く!因果遡行•凶星一蹴!」

 ヘビクイワシが蹴りを放つ。本来ならクラーケンに直撃するハズのない一撃。だがそれは海魔の身体をすり抜け、クラーケンの身体に直撃し、全身が粉々になるような痛みが走る。

「ごっ……!?はっ、えっ……?」

 クラーケンの頭で痛みよりも困惑が勝つ中、海魔の身体が崩れ、クラーケンが地面に吐き出されるように崩れ落ちる。

「あっ、がっ……!?」

「因果遡行の一撃。最初にお前を殴った時に既に楔を打ち込んでいた。」

 倒れるクラーケンの前にヘビクイワシが立つ。

(因果遡行……!そうか、ワシに攻撃が当たった結果を今の攻撃に適用した概念攻撃か…!?くっくく、じゃが、甘いじゃき。そこまで近寄れば、ワシの触手で…!)

 クラーケンが目の前にヘビクイワシに攻撃しようとして、気づく。

(“身体が、動かない…!?”)

 身体が思い通りに動かない。もぞもぞと芋虫のように蠢く事しか出来ない。“外傷は何一つないハズなのに”。

「……動けない、な。傷はないのに。」

「がぁ……うぅ…」

 クラーケン何かを言おうとするが舌もまともに動かず、唸る事しか出来ない。

「ボクが、アナザー対策に産み出した技だ。身体の内部を破壊し、再生させる技。ただし、神経や筋肉をぐちゃぐちゃに繋げて、ね。」

(そうか…!コイツ、歪な状態で私の肉体を再生させて、再生能力を無効化したのか…!?もう肉体は再生されているから、私の再生が発動しない…!?)

「勿論、再び肉体が傷付けば元通りに再生するかも、ね。だから、もうボクはキミに何もしない。」

 彼女は踵を返し、クラーケンを放置して先へ進む。

「キミはそこで永遠にもがいてろ。」

「…!…いっ!」

 クラーケンが何かを言おうとするが、舌がうまく動かず、言葉を発することが出来ない。
 ヘビクイワシはそのまま、柚紀を連れて扉を開ける。
 最後に何かを訴えかけるようなクラーケンをヘビクイワシは一瞥し。

「さよなら。もう二度と会う事もないだろうけど。」

 クラーケンの目の前でバタン、と扉が閉じた。





「……あと、もうちょっと、だ。柚紀。もう少しでキミは、帰れる。」

 そう言った瞬間、ヘビクイワシの身体が揺れる。

「ヘビクイワシさんっ!」

 瞬間、慌てて柚紀が彼女の身体を支える。彼女の身体を支えて、柚紀は気づく。彼女の身体は小刻みに震え、顔は青ざめており、もう、永くはないだろうということが、彼女の身体を支えた彼の腕を濡らす血の量が否応なしに伝えてくる。

「なんでっ……!俺のために不死身の能力を…!」

「……なんで、だろうね…?それが、ボクにも…分からないんだ。あの時、何故か…分からないけど、キミを失うことが…とても、怖くなったんだ。」

 彼女は彼の顔を見つめながら、言う。

「もしかしたら、キミのことが好きに…なったのかも。」

「だったら……!生きてくださいよ…!俺、ヘビクイワシさんに何も返せてませんよ…!」

「いや……ボクはもう、キミから沢山のものを、貰ったよ。それに、ボクは死なない。」

 彼女は彼の頬に手を添える。

「ボクはキミの中で生き続ける。キミがボクを忘れない限り……ボクは不死身だ。」

「ヘビクイワシさん…!」

 彼女はそのまま彼の顔を自分に近づけ、そして二人の唇と唇が触れる。一瞬にして、永遠とも思える時が二人の間に流れる。そして、どちらともなく離れると、彼女は微笑む。

「…最後に、キミに頼みたいことがある。」

「……なんでも、言ってください。俺に出来る事なら、なんでもやります…!」

「キミの、その素直なところ。ホントに好きだよ…だったら、遠慮なく、頼もうかな……」

 ヘビクイワシは彼の顔を見て、言葉を紡ぐ。その言葉を聞いた彼は、一瞬驚いた顔をするが、すぐに決意を込めた顔になると、彼女の手を握る。

「任せてください。俺が、必ずやり遂げます。」

「……任せた…よ。」

 その言葉を聞いた彼女は瞳を閉じ、破顔する。

「ふふっ……永い間生きてきたけど……最後の方は中々、悪くない、綺麗な終わりだったな……」

 そう言うと、彼女の身体から力が抜ける。彼女の身体はズタボロで、見るも無惨な有り様だったが、それでもその表情は何処か満足げだった。
 完全に脱力し、熱を失いつつある彼女の身体を、柚紀はそっと地面に下ろす。

「……待ってて下さいヘビクイワシさん。すぐに戻って来ますから。」

 柚紀は立ち上がると目の前に立ちはだかる扉の前に向かう。そして、音を立てて扉を開けるのだった。






 柚紀が扉を開けて、中に入ると、そこは荘厳な柱と煌びやかな星空の絵が描かれた壁、そして幾何学模様が刻まれた絨毯が敷かれている大部屋に出る。

「あら。あなたはお呼びじゃないんだけど。」

 部屋の中央にある椅子に座っている少女、アリスが彼の顔を見ると露骨に嫌そうな顔をする。

「さっさとイザベラに代わってくれる?そしたら一瞬で殺してあげるけど。」

「……ヘビクイワシさんは亡くなった。」

 彼がそう言った次の瞬間、彼のすぐ横を紫色の光弾が通り過ぎ、後ろで爆発が起こる。

「……つまらないジョークね?次はないわよ、イザベラ。あなた、このガキを死なせたく無かったら──」

「彼女は亡くなった!もういない!」

 次の瞬間、放たれた紫の光弾が彼に直撃し、爆発する。もうもうと爆煙が立ち込める中、彼女はふんっ、と鼻を鳴らして頬杖をつく。

「……まったく。くだらない。彼女は不死身なのよ。死ぬなんてありえないわ。」

 彼女の言葉に応えるように、爆煙を切り裂いて黒と白の翼が現れる。

「ふん、ほら。イザベラは生きて──」

 だがその翼がはためいて煙を吹き飛ばすと、そこには髪の毛に白が混じり、背中から片翼を生やした柚紀がいた。

「───は?」

 こちらを見つめる青色と“ヘビクイワシ”と同じ赤色の瞳を見たアリスは思わず立ち上がる。

「彼女は死ぬ前に俺に力と、伝言を渡してくれた。」

 柚紀が構える。

「キミを、救って欲しいという約束を今、果たす。」

「ふ、ざけるなぁっ!」

 激昂したアリスが手を翳すと、背後に無数の魔法陣が出現し、次々と紫色の光弾が発射される。
 放たれた光弾に向かって、柚紀も走り出す。

「認めない認めないっ!アンタみたいな、舞台にも上がれない端役が、イザベラの力を受け継ぐなんて!」

 光弾の密度は凄まじく、柚紀は何度も穿たれ、吹き飛ばされて、床を転がる。だが、それでも肉体はすぐさま再生し、彼は何度でも立ち上がって駆け出す。

「無様っ!圧倒的無様だっ!ろくに使いこなせもせず、吹き飛ばされて地面を転がるだけ!立ち上がるだけ、痛い目を見るだけなのに!」

 今も放たれた一撃が彼の身体を捉えて、大きく後方へ吹き飛ばす。再生するとは言え、痛覚はある。並の人間に耐えられる痛みではないハズなのに。
 ──それでも、彼は立ち上がってみせた。そしてアリスに向かって駆け出す。

「なんで立ち上がれるのォッ!?」

「俺を信じて、託してくれた彼女のためだ!」

 アリスが光弾を放つ。放たれた攻撃はまたもや彼の身体を吹き飛ばす──ハズだった。
 攻撃が当たる直前、彼の目が見開かれたこと思ったその時。彼は身を捻ってその攻撃を回避する。

「なっ。」

 アリスは驚きながらも、次々と光弾を発射するが、彼はその攻撃に対応し、全てかわしてみせる。

「何度も喰らえば、軌道は覚えられる!」

 柚紀は光弾をかわしながら、どんどん近づき、とうとうもう少しで射程圏内というところまで近づく。

「ッ!寄るな!」

 苦虫を噛み潰したような表情で、彼女が地面を強く踏みつけると、その足元から黒い球体が出現し、まるでウニのように数多の棘が飛び出し、迎撃するように彼の身体を貫き、切りつける。

「ぐっ!」

「アンタ如きが私に触れようなんて、烏滸がましいのよ!」

「…!この、程度…!」

 一瞬仰反るが、柚紀は踏みとどまる。

「彼女の痛みに比べたら、大したことはない!」

 そして地面を蹴って、強引にアリスに接近する。まさか強引に来ると思っていなかったアリスの反応が一瞬遅れる。
 その隙を突くように柚紀は手を伸ばす。そして彼女が反応するよりも早く、襟首を掴むと思い切り頭突きを彼女の額に叩き込む。

「ぐぅっ…!?」

「おおっ!」

 そこから柚紀の繰り出した掌底が彼女の身体を捉える。その一撃を受けた彼女の身体は軋み、口に血が滲む。
 しかし、彼女もタダでは転ばず、かざした彼女の指から放たれた細い数本の光線が彼の身体を切り刻む。

「よっ、くも、私に触れたな!」

「彼女とあなたの間で何があったのかは、知らないけど…!」

 血まみれになりながらも、柚紀は退かない。ここで下がれば負けてしまうと本能が告げている。

「あなたが、彼女の家族と言うなら…!」 

 柚紀が拳を振りかぶる。それに合わせてアリスも手を翳し、迎撃体勢を取る。

(せいぜい10年ぽっちしか生きてないガキが、イザベラの力を得た程度で私に勝とうなんて甘いのよ!)

「なんで、彼女が貴方のために悲しんでいたことに気づかないんだ!」

 彼が拳を繰り出す……瞬間すぐさま彼はそれを引っ込める。

「──は?」

 まさかのフェイントで迎撃をスカされたアリスが間の抜けた声を出した瞬間。彼の脚が跳ね上がる。
 そしてそのまま繰り出された蹴りが彼女に炸裂する。

「ごっ」

「彼女は最後まで貴方を想っていた!貴方も彼女のことを思っているなら!こんなことをすべきじゃなかった!」

 柚紀が再び掌底を彼女に叩き込む。掌底を受けた彼女がよろめく。しかし、その直後に彼女の目がカッと見開かれる。

「何も、知らないクセにぃ……!偉そうに、ペラペラ喋るなァッ!」

 次の瞬間再び彼女の背後に魔法陣が出現し、そこから光弾が次々と放たれ、柚紀を吹き飛ばす。

「ぐっ……!」

「アイツらが悪いのよっ!イザベラと私はただ平穏に過ごしていただけなのにっ!ただ彼女の見た目が他の人と違うからって!魔女扱いして!彼女を追いやった!」

 アリスの怒りに呼応するように攻撃が激化する。魔法陣から出現した龍の首が大口を開けて、柚紀に噛み付く。

「私は何も悪くないっ!イザベラと私を引き裂いたアイツらが悪い!許せない許せないっ!」

「…確かに俺は、貴方の事情は分からない。けど、貴方が彼女の事を想っているのは分かった。」

 アリスの怒りの攻撃でボロボロになりながらも、柚紀は立ち上がって言う。

「けど、今貴方がやっているのは彼女のためじゃない!自分の怨みを晴らすための、自分のためだけにやっている、悲しいことだ!」

「子供が偉そうに言うなぁっ!」

 アリスは魔法陣から剣を引き抜くと、柚紀に向かって駆け出す。さらに後ろの魔法陣から光弾が放たれる。
 だが、彼は静かに腰を落として構え、足を半歩下げ、極限まで集中力を高める。

「死ねぇっ!!」

 剣と一緒に光弾が迫る。死が迫る中、彼は冷静に状況を分析する。

(光弾は俺の回避を封じる為の攻撃!このままいれば当たらない!なら!)

 剣が迫る。だがそれが振り下ろされるよりも速く、彼は地面を蹴って距離を詰める。

「なっ──」

「“煌星一条!!”」

 次の瞬間、剣が振り下ろされるより速く、柚紀から必殺の蹴りが放たれ、それは彼女の胸を砕く。

「ごっ…!?」

 アリスが激しく吐血する。そして彼女は大きく蹴り飛ばされ、扉を破壊して、廊下を激しく転がる。

「ごふっ……!?かひゅ……ひゅ……!」

 地面に倒れて、荒い息を吐きながら這いつくばる彼女に向かって彼が歩を進める。

「…ふざけるな……!こんなっ、子供にぃっ……」

「…決着はついた。もう、こんなことはやめるんだ。」

「くぅう……!」

 アリスは唸ると、左手から黒い霧のようなものを噴射する。それは瞬く間に柚紀を包み込み、その視界を真っ黒に染める。

「何を…!」

 柚紀が腕で防御の構えを取りながら、霧から離脱しようとしたその時。

「柚紀。」

 声がする。声がした方を彼が向くと、そこには黒と白のコントラストの少女、ヘビクイワシがいた。

「ヘビクイワシさん…?」

 その姿を認めた彼は構えを解く。少女はゆっくりとこちらへ近づいてくる。

「……すまない。いきなりのことで混乱するだろうが、彼女を許してやってくれないか?」

「……。」

「これだけ君に痛めつけられたんだ。彼女も充分反省しただろう。」

「……そうですか。」

 とうとう、彼女が目の前まで迫ろうとした、その時。柚紀が口を開く。

「ヘビクイワシさん。合言葉を覚えていますか?」

「勿論だ。翼、だろう?」

 柚紀の問いに彼女は淀みなく答える。それを聞いた彼は微笑む。

「ありがとうございます。これで、分かりました。」

 柚紀もヘビクイワシへと歩み寄る。彼女が目の前まで迫る。そして彼女が手を上げようとした瞬間。

「“貴方は、ヘビクイワシさんじゃない。”」

 次の瞬間、柚紀の繰り出した拳が彼女の身体にめり込む。

「──な」

 拳を叩き込まれたヘビクイワシの身体が凪のように揺らぐ。
 揺らぎが収まると、そこにいたのはナイフを持ったアリスだった。

「な、ぜ?分かっ──」

「ヘビクイワシさんは監視の目があるかも、と俺に掌を見せてくれた。そこに書いてあったホントの合言葉は“人”だ。」

「なっ」

「……これで、終わりだ。」

 柚紀は驚く彼女の胸にめり込んだ拳にさらに力を込める。放たれた崩拳は彼女を大きく吹き飛ばす。

「ぐおぉっ……!?」

 吹き飛ばされた彼女は地面に倒れ込む。うつ伏せに倒れた彼女に最早立ち上がる力もなく、もぞもぞと身体を震わせるだけだ。

「わ、たしが…!この、よくも……?」

 アリスが痛み、震える身体でなんとか顔を上げた彼女の視界にあるものが飛び込む。そこにあったのは手を組み、目を閉じて横たわるヘビクイワシの姿だった。

「あ、あぁ……!」

 その姿を見た彼女は這いずってヘビクイワシへと近づく。それを柚紀は黙って見つめる。
 最早彼女にどうこうする力は残されていない。そしてそれは柚紀も同様で、膝をつく。
 彼女はヘビクイワシの手を取る。

「あぁ、イザベラ…!イザベラ…!私は…ようやく……」

 ヘビクイワシの手を取った彼女の目からボロボロと涙が溢れる。

「私は……大好きな貴方にもう一度、会えればそれで良かったのに……。」

 彼女はそのままヘビクイワシの胸に顔を埋め、そのまま動かなくなる。
 それを見た柚紀は複雑そうな顔をして、それを見つめる。

「……ごめん。」

 柚紀は一言そう呟くと、二人に近づこうとする。二人へと近づこうとした瞬間。

「おやおや。500年かけた割にはまぁまぁ面白い終わりでしたね。」

 声がする。声がした方に振り向くと、そこには赤と白の魔人、ファルファレロがいた。

「お前…!なんで、確かにヘビクイワシさんに…!」

「ふふっ、成る程。アナタが力を継承したのですね。」

 ヘビクイワシに倒されたハズのファルファレロが生きて、この場にいることに柚紀が驚くが、当のファルファレロはどこか飄々とした様子で二人を見やる。

「それにしても……ちょっと興が乗りすぎましたね。まさか契約成立に500年もかかってしまうとは。」

「……契約?」

 ファルファレロの言葉に柚紀が反応する。

「まさか、あの子が500年も生きたのは……」

「あぁ。それ、ワタクシが教えたんですよ。そういう契約なので。」

「……!!」

 それを聞いた柚紀の目が怒りで吊り上がる。

「お前が…!」

「いやぁ、しかし、貴方が来てくれて良かったですよ。まさかあのアナザーを二人も倒せるなんて暁光暁光。ワタクシの名がさらに売れると言うものです。」

 ヘラヘラと嘲笑ってのけるファルファレロに柚紀は怒りを顕にして立ち上がる。

「お前のせいで、ヘビクイワシさんは…!」

「ワタクシが憎いですか?それは良い!人間の憎しみはワタクシにとって非常に心地よい感情ですからね。」

 柚紀の怒りすらもそう笑い飛ばすと、ファルファレロは腕を翼に変え、仰々しくお辞儀をする。

「まぁ、ですが、今回は初めて生き残った貴方の功績を讃え、ここは退くとしましょう。──どうせここもすぐに崩壊しますし。」

 ファルファレロがそう言うと同時に空間にヒビが入り、崩れ始める。

「そうか、空間を作成していたあの子が死んだから─」

「それでは勇敢なる生還者よ、また会う日まで。」

 ファルファレロはそう言うと、背後に作り出した玉虫色の空間が広がる穴に飛び込んで消える。

「待てっ!」

 柚紀はファルファレロを追いかけようとして、ふと後ろを振り返る。そこには目を閉じて、動かないヘビクイワシとまるで親に縋り付く子供のように彼女の身体に顔を沈めるアリスが目に入る。

「……ごめんなさい、ヘビクイワシさん。俺、行きます。」

 柚紀は振り返ると閉じつつある穴に向けて走り出す。

「アイツを倒さないと、彼女は救われない──俺は必ず、貴方との約束を果たす!」

 そして、柚紀は穴の中に飛び込む。そして彼の視界一面を玉虫色の光が覆ったのだった。




To be continued…

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