ここに作品タイトル等を記入
更新日:2021/11/07 Sun 01:28:56
今回あらすじを担当するカストルだよーん。前回は、プロウフとプロキオンが“新月”メンバーに接触、アルレシャとレグルスのアホがトゥバンの奴にしてやられたり……やれやれだね。
まぁ、そんなボクは趣味に走って人形を作ったり、赤羽ちゃんに敵討ちのチャンスをあげちゃったりしてんだけど!(笑)
さぁどうなる第20話!!
まぁ、そんなボクは趣味に走って人形を作ったり、赤羽ちゃんに敵討ちのチャンスをあげちゃったりしてんだけど!(笑)
さぁどうなる第20話!!
「彼こそが君のお父さんを倒したシードゥス、ルクバトだよ!」
カストルのその一言に赤羽は目を見開く。カストルの言うことが本当なら今目の前にいる怪物が──父の仇。
話を振られたルクバトは赤羽をジッと見つめて。
「……コイツがあの男の娘か。成る程……道理で“サダルメルクの瞳”を」
ルクバトがそう言いかけた瞬間即座に地面を蹴って一瞬で距離を詰めた赤羽が刀を振るう。
だが、ルクバトは振られた斬撃を右腕の刃で軽々と受け止める。
「ッ!」
「筋は良い……だが、あの男に比べればまだまだ粗い。」
ルクバトの言葉に赤羽目でルクバトを射殺さんとばかりに睨みつける。
「お前が……お前が父さんを語るなぁァァァァ!」
赤羽は一旦切り払うと素早く後ろに跳躍し、そのまま空中で装甲貫徹弾“椿”を放つ。
「この程度!」
だが、ルクバトも刃を一振りして全ての“椿”を叩き落とす。しかし、ルクバトが“椿”を破壊した瞬間プシュ!という音と共に煙が巻き上がる。
「煙幕か!」
煙は瞬く間に広がってルクバトを包み込み、その視界を奪う。そしてその瞬間煙の中から赤羽がルクバトに向かって飛び込んでくる。
「!」
ルクバトは一瞬反応する。そして今にも刀を振り上げ斬りかからんとする赤羽を───無視して後ろに向かって回し蹴りをした。
「がっ……?」
そしてその蹴りは……赤羽を捉えていた。蹴りが当たった場所からミキミキと骨が軋む音がする。
「フッ」
ルクバトはそのまま赤羽の身体を蹴り抜き、湖へと蹴り飛ばす。水飛沫を上げて赤羽が沈む中、目の前の刀を振り上げた赤羽……の幻影は溶けるように霧散する。
「ぐっ……」
「こんな子供騙しに俺が引っ掛かると思ったか?」
煙の中から悠然とルクバトは歩いて、蹴られた箇所を押さえ、息も絶え絶えな赤羽に近づく。
「流石ルクバト。攻撃する瞬間の殺気で本物を見分けるなんて、正直何してんのか分かんないけど。」
ルクバトはヒュウと口笛を吹く。
「このッ……!」
赤羽が両腕のアームから鞭を射出し、しならせながらルクバトに鞭を振るう。
だが、ルクバトはアッサリとそれを右腕の刃の一振りで切断し、無力化する。
「くっ!」
赤羽はまたもや“椿”を投擲する。勿論弾かれるがそれらは爆発し、水飛沫をあげる。
「むっ」
「これならどう!」
そして今度は二人の赤羽が同時に左右からルクバトに斬りかかり、幻影との攻撃を活かした擬似挟み撃ちを赤羽が仕掛ける。
だがルクバトは右腕の刃で左の赤羽の斬撃だけを受け止める。
「なっ」
「……言ったハズだ。俺にはこんな小細工は通用しない。」
「ぐほっ!」
ルクバトが振り下ろした肘打ちが赤羽を捉え、水面に叩きつける。さらに跪いた赤羽をルクバトは容赦なく蹴り飛ばす。
「ぐあっ」
「貴様がいくら幻影を使おうとも殺気を放つ方を攻撃すればいい。その程度見破ることは俺にとって造作もない。」
倒れる赤羽に向けてルクバトは弓を構えると天に向けて放つ。そして放たれた矢は赤羽の頭上で弾け…そして雨の如く赤羽に降り注ぐ。
「“涙雨”」
「うあっ!」
降り注ぐ矢が容赦なく赤羽を切り刻む。そして雨のような一撃が止むと同時にあまりのダメージに赤羽は膝をつく。
「ぐっ……」
「──。」
ルクバトはそんな赤羽を見るとクルリと背を向ける。
「あら?どうしたの?」
「飽きた。」
「なっ──」
ルクバトは完全に赤羽に興味を失ったようでカストルの横を通り過ぎてそのまま闇に消える。
「あらら……。マジで帰っちゃったよアイツ。」
「待てっ!この…!このぉぉぉ!!」
赤羽が吼える。父の仇を逃すまい、と立ちあがる。だが、足は完全に震えて立つのもやっと、と言った有り様だ。
そんな赤羽を見てカストルも溜息をつく。
「はぁ、もうちょっと盛り上げてくれるかと思ったけど、まぁいいや。まだ楽しみはあるし……やっちゃっていいよ。」
「何を─」
カストルがそう言った瞬間ゴッと、赤羽の後頭部に衝撃が走り、視界が暗転する。
(なっ)
意識が闇に沈む寸前、赤羽が視界の端に捉えたのは見知った白いドレスを着た紫の髪の少女だった。
(!?龍……香?)
倒れた赤羽が完全に意識を失ったのを確認すると、その少女は乱暴に赤羽の長い髪の毛を掴んで引き摺りながらカストルの前まで来る。
そして少女はその容貌に似つかわしくない邪悪な笑みを浮かべる。
「カストル様ァ。この女、好きにしちゃってもいいんですよねぇ?」
「あぁ。でも殺してはダメだよ?まだ彼女には楽しんで貰わないといけないからね。」
カストルはそう言って赤羽の頭を掴んで持ち上げる。
「とびっきりのショーに協力して貰う駄賃代わりにそれを間近で観戦させてあげたいからね。きっと、楽しんでくれるよ。フフ……」
カストルのその一言に赤羽は目を見開く。カストルの言うことが本当なら今目の前にいる怪物が──父の仇。
話を振られたルクバトは赤羽をジッと見つめて。
「……コイツがあの男の娘か。成る程……道理で“サダルメルクの瞳”を」
ルクバトがそう言いかけた瞬間即座に地面を蹴って一瞬で距離を詰めた赤羽が刀を振るう。
だが、ルクバトは振られた斬撃を右腕の刃で軽々と受け止める。
「ッ!」
「筋は良い……だが、あの男に比べればまだまだ粗い。」
ルクバトの言葉に赤羽目でルクバトを射殺さんとばかりに睨みつける。
「お前が……お前が父さんを語るなぁァァァァ!」
赤羽は一旦切り払うと素早く後ろに跳躍し、そのまま空中で装甲貫徹弾“椿”を放つ。
「この程度!」
だが、ルクバトも刃を一振りして全ての“椿”を叩き落とす。しかし、ルクバトが“椿”を破壊した瞬間プシュ!という音と共に煙が巻き上がる。
「煙幕か!」
煙は瞬く間に広がってルクバトを包み込み、その視界を奪う。そしてその瞬間煙の中から赤羽がルクバトに向かって飛び込んでくる。
「!」
ルクバトは一瞬反応する。そして今にも刀を振り上げ斬りかからんとする赤羽を───無視して後ろに向かって回し蹴りをした。
「がっ……?」
そしてその蹴りは……赤羽を捉えていた。蹴りが当たった場所からミキミキと骨が軋む音がする。
「フッ」
ルクバトはそのまま赤羽の身体を蹴り抜き、湖へと蹴り飛ばす。水飛沫を上げて赤羽が沈む中、目の前の刀を振り上げた赤羽……の幻影は溶けるように霧散する。
「ぐっ……」
「こんな子供騙しに俺が引っ掛かると思ったか?」
煙の中から悠然とルクバトは歩いて、蹴られた箇所を押さえ、息も絶え絶えな赤羽に近づく。
「流石ルクバト。攻撃する瞬間の殺気で本物を見分けるなんて、正直何してんのか分かんないけど。」
ルクバトはヒュウと口笛を吹く。
「このッ……!」
赤羽が両腕のアームから鞭を射出し、しならせながらルクバトに鞭を振るう。
だが、ルクバトはアッサリとそれを右腕の刃の一振りで切断し、無力化する。
「くっ!」
赤羽はまたもや“椿”を投擲する。勿論弾かれるがそれらは爆発し、水飛沫をあげる。
「むっ」
「これならどう!」
そして今度は二人の赤羽が同時に左右からルクバトに斬りかかり、幻影との攻撃を活かした擬似挟み撃ちを赤羽が仕掛ける。
だがルクバトは右腕の刃で左の赤羽の斬撃だけを受け止める。
「なっ」
「……言ったハズだ。俺にはこんな小細工は通用しない。」
「ぐほっ!」
ルクバトが振り下ろした肘打ちが赤羽を捉え、水面に叩きつける。さらに跪いた赤羽をルクバトは容赦なく蹴り飛ばす。
「ぐあっ」
「貴様がいくら幻影を使おうとも殺気を放つ方を攻撃すればいい。その程度見破ることは俺にとって造作もない。」
倒れる赤羽に向けてルクバトは弓を構えると天に向けて放つ。そして放たれた矢は赤羽の頭上で弾け…そして雨の如く赤羽に降り注ぐ。
「“涙雨”」
「うあっ!」
降り注ぐ矢が容赦なく赤羽を切り刻む。そして雨のような一撃が止むと同時にあまりのダメージに赤羽は膝をつく。
「ぐっ……」
「──。」
ルクバトはそんな赤羽を見るとクルリと背を向ける。
「あら?どうしたの?」
「飽きた。」
「なっ──」
ルクバトは完全に赤羽に興味を失ったようでカストルの横を通り過ぎてそのまま闇に消える。
「あらら……。マジで帰っちゃったよアイツ。」
「待てっ!この…!このぉぉぉ!!」
赤羽が吼える。父の仇を逃すまい、と立ちあがる。だが、足は完全に震えて立つのもやっと、と言った有り様だ。
そんな赤羽を見てカストルも溜息をつく。
「はぁ、もうちょっと盛り上げてくれるかと思ったけど、まぁいいや。まだ楽しみはあるし……やっちゃっていいよ。」
「何を─」
カストルがそう言った瞬間ゴッと、赤羽の後頭部に衝撃が走り、視界が暗転する。
(なっ)
意識が闇に沈む寸前、赤羽が視界の端に捉えたのは見知った白いドレスを着た紫の髪の少女だった。
(!?龍……香?)
倒れた赤羽が完全に意識を失ったのを確認すると、その少女は乱暴に赤羽の長い髪の毛を掴んで引き摺りながらカストルの前まで来る。
そして少女はその容貌に似つかわしくない邪悪な笑みを浮かべる。
「カストル様ァ。この女、好きにしちゃってもいいんですよねぇ?」
「あぁ。でも殺してはダメだよ?まだ彼女には楽しんで貰わないといけないからね。」
カストルはそう言って赤羽の頭を掴んで持ち上げる。
「とびっきりのショーに協力して貰う駄賃代わりにそれを間近で観戦させてあげたいからね。きっと、楽しんでくれるよ。フフ……」
「君と直接話すのは何年振りかなカノープス。」
《さぁな。》
応接室で椅子に座る海原と机の上に乗ったカノープスが対面する。そして少しの他愛のない世間話の後、海原が切り込んだ。
「そうそう、今回話そうと思ってたのは……“龍斗君以外の離反者”だ。」
《何?》
突然の話にカノープスが困惑する中、海原が続ける。
「確かに彼が裏切り者だったのは非常に残念だが……だがどうにも私は納得出来ない点がいくつかある。」
《と、言うと?》
「まず、彼は確かに“新月”に関わっていたとは言え、そこまで深くは関わっていない。彼はあくまで私達を支援してくれるオブザーバーに過ぎない。なのに、敵はまるで内部情報を隅々まで把握していたかのような奇襲を仕掛けてきた。」
《……誰か龍斗の会社側から視察かなんかに来た奴がいたんじゃねぇか?》
カノープスがそう尋ねると海原は首を振る。
「我々も一応龍賢君のくれたリストを確認したが、そう言った面々を基地の最深部にまで入れた覚えはない。徹底的に記録も洗ったが成果無しだ。」
《つまり?》
カノープスの問いに海原は真剣かつ深刻な顔つきで答える。
「裏切り者は今も、この“新月”内の何処かにいるかもしれん。」
《さぁな。》
応接室で椅子に座る海原と机の上に乗ったカノープスが対面する。そして少しの他愛のない世間話の後、海原が切り込んだ。
「そうそう、今回話そうと思ってたのは……“龍斗君以外の離反者”だ。」
《何?》
突然の話にカノープスが困惑する中、海原が続ける。
「確かに彼が裏切り者だったのは非常に残念だが……だがどうにも私は納得出来ない点がいくつかある。」
《と、言うと?》
「まず、彼は確かに“新月”に関わっていたとは言え、そこまで深くは関わっていない。彼はあくまで私達を支援してくれるオブザーバーに過ぎない。なのに、敵はまるで内部情報を隅々まで把握していたかのような奇襲を仕掛けてきた。」
《……誰か龍斗の会社側から視察かなんかに来た奴がいたんじゃねぇか?》
カノープスがそう尋ねると海原は首を振る。
「我々も一応龍賢君のくれたリストを確認したが、そう言った面々を基地の最深部にまで入れた覚えはない。徹底的に記録も洗ったが成果無しだ。」
《つまり?》
カノープスの問いに海原は真剣かつ深刻な顔つきで答える。
「裏切り者は今も、この“新月”内の何処かにいるかもしれん。」
「あれー?」
休憩室で山形と風見、そして林張がくつろいでいると、キョロキョロと何かを探す素振りを見せる火元が入ってくる。
「どうしたんスか?」
「あ、えっとねー、もうこんな時間だし、いつもなら帰ってるハズの赤羽ちゃんが自室にいないからどこ行ったんだろーって。」
「えっ、アカチンまだ帰ってないの?」
「電話はしたのかしら?」
「したけど出ないんですー。」
その言葉にただならぬ何かを予想した三人は椅子から立ち上がる。
「取り敢えず、探すわよ。私は火元と、風見は林張と一緒に探して。見つけたらすぐ連絡して。」
「分かったわ。」
「了解ッス。」
「はい!」
四人はすぐさま着替えると部屋を後にし町中を探し回る。
「赤羽ー!」
「赤羽ちゃーん!?」
「アカチン!」
「赤羽ちゃーん?」
そして四人が街を歩き回る中、山形は湖が見える公園に辿り着く。
「ここは……確か。」
山形は以前嵩原が以前娘と来ていた、と言っていた公園だと思い出す。もしかしたら、という思いから公園の中に入り、赤羽の名を叫びながら探し回る。
「いないですねぇ…。」
「赤羽…。一体どこに…。……?」
山形はふと水辺を見つめる。そして一瞬顔が険しくなった瞬間。
「……何してるの?」
声をかけられる。二人が振り返るとそこにはいつもの仏頂面をした赤羽がいた。
「赤羽ちゃん!」
「赤羽…」
赤羽が反応するより先に火元が赤羽に抱きつく。
「んもう!心配したんだからね!電話にも出ないし!」
「……良いでしょ、別に。私だってもう14歳だし。1人歩きたい夜だって、ある。」
「……まぁ何事もなくて良かったわ。でも散歩するだけならそれくらい言ってもらわないと。」
「別に何事も無かったし、いいじゃない……まぁ、その今度からは気をつけるわ。」
赤羽がぶっきらぼうに答えるのを見て、山形は。
「……にしても、あんた探して歩き回ってお腹空いたし、何か食べに行きましょ。」
「と言ってもこの時間帯やってるお店ありますかねぇ。」
「…牛丼とか?」
何とか無事合流できた三人はどこに食べに行くかを話しながら夜の街へと消えていくのだった。
休憩室で山形と風見、そして林張がくつろいでいると、キョロキョロと何かを探す素振りを見せる火元が入ってくる。
「どうしたんスか?」
「あ、えっとねー、もうこんな時間だし、いつもなら帰ってるハズの赤羽ちゃんが自室にいないからどこ行ったんだろーって。」
「えっ、アカチンまだ帰ってないの?」
「電話はしたのかしら?」
「したけど出ないんですー。」
その言葉にただならぬ何かを予想した三人は椅子から立ち上がる。
「取り敢えず、探すわよ。私は火元と、風見は林張と一緒に探して。見つけたらすぐ連絡して。」
「分かったわ。」
「了解ッス。」
「はい!」
四人はすぐさま着替えると部屋を後にし町中を探し回る。
「赤羽ー!」
「赤羽ちゃーん!?」
「アカチン!」
「赤羽ちゃーん?」
そして四人が街を歩き回る中、山形は湖が見える公園に辿り着く。
「ここは……確か。」
山形は以前嵩原が以前娘と来ていた、と言っていた公園だと思い出す。もしかしたら、という思いから公園の中に入り、赤羽の名を叫びながら探し回る。
「いないですねぇ…。」
「赤羽…。一体どこに…。……?」
山形はふと水辺を見つめる。そして一瞬顔が険しくなった瞬間。
「……何してるの?」
声をかけられる。二人が振り返るとそこにはいつもの仏頂面をした赤羽がいた。
「赤羽ちゃん!」
「赤羽…」
赤羽が反応するより先に火元が赤羽に抱きつく。
「んもう!心配したんだからね!電話にも出ないし!」
「……良いでしょ、別に。私だってもう14歳だし。1人歩きたい夜だって、ある。」
「……まぁ何事もなくて良かったわ。でも散歩するだけならそれくらい言ってもらわないと。」
「別に何事も無かったし、いいじゃない……まぁ、その今度からは気をつけるわ。」
赤羽がぶっきらぼうに答えるのを見て、山形は。
「……にしても、あんた探して歩き回ってお腹空いたし、何か食べに行きましょ。」
「と言ってもこの時間帯やってるお店ありますかねぇ。」
「…牛丼とか?」
何とか無事合流できた三人はどこに食べに行くかを話しながら夜の街へと消えていくのだった。
辺りにガラクタが転がる狭い小屋のような倉庫にあるテレビの前に1人の少女が縛られた状態で椅子に座らせられ、もう1人の少女が目の前に流れる映像を見ながらケタケタ笑う。
「あーあ、あの人達、気づかなかったねぇ。……本物はここにいるのに、かわいそーな赤羽ちゃん。」
「う……」
「ねぇ、どう?自分は何もかも知ってるのになぁんにも出来ないの?悔しい?ねぇ?悔しい?」
「………」
「……悔しいのは分かるけどさぁ。」
無言になる赤羽。それを見た紫の髪の少女は、ニコッと笑った後いきなり赤羽をブン殴る。
「ッ!?」
「無言はやめて欲しいなー。もっと泣き叫んでよ!そしたらお互い楽しめるよー?」
殴られて俯きながら、赤羽は現状を整理する。
(確か、私は……)
ルクバトとの戦いの後、追いかけようとしたら後ろからこの、“紫水龍香”そっくりの少女に攻撃され、意識を失い……気がついたらここに縛られていた。
しかもどうやら敵は自分に化けて山形達に近づいている。
「凄いよねぇ。正直私も全く分かんないし。」
そして何よりも不気味なのが姿形が龍香にそっくりだが、中身がまるで正反対な少女の存在だ。
「……アンタは、何者?」
「あら、気になる?」
フフッと少女は笑うとクルッと舞台演者のように一回転して仰々しく自己紹介をする。
「私は“紫水龍香”。カストル様が読み取ったもう一つの人格から生まれたの。」
「……。」
「つまり、私は普段表に出てないもう一人の龍香って訳。」
龍香、がどんなもんだい、とも言いたげに胸を張る。そんな龍香を見て、赤羽はハッと嘲笑する。
「……結局のところ、アンタはあのツギハギが生み出した紫水龍香の偽物って訳ね。」
「……。」
赤羽がそう言うと、龍香は一瞬笑顔が引き攣る。そして次の瞬間また拳が赤羽に飛ぶ。縛られて動けない赤羽はそのまま床に倒れる。
「ぐっ…!」
「……頭が悪いなぁ。私は偽物じゃないんだよぉ。」
赤羽の髪を掴んで龍香は赤羽を睨みつける。思い切り髪を引っ張られ、顔を顰める赤羽に龍香はまた笑みを浮かべる。
「まぁ、いいや。貴方にはこのショーの結末を最後まで見て貰わないといけないし。貴方に裏切られたあの人達、きっと良い顔をするよ。」
「………悪趣味な奴らね。反吐が出る。」
赤羽が吐き捨てるとンフフ、と龍香は笑みを浮かべる。
「でもぉ、正直なところォ私カストル様あんまり好きじゃないからぁ私の言うこと聞いてくれたら解いてあげてもいいヨォ。」
「……何をさせるつもり?」
赤羽が尋ねると、龍香は靴を脱ぎ、素足を赤羽の前に持ってきて。
「舐めてよ。そしたら解いてあげる。」
意地悪な笑みを浮かべて赤羽を見下ろしながら龍香が言う。そんな龍香に赤羽はフッと一笑すると。
「………結局アンタは偽物だわ。そうやって下賤な趣味を丸出しにしてるのが何よりの証拠よ。」
「………だからァ。」
龍香の雰囲気が変わる。次の瞬間龍香は赤羽の顔を踏みつける。
「うあっ」
「偽物じゃないって言ってるでしょぉ…頭が悪いのかなぁ…」
龍香はそう言って赤羽の顔を踏み躙る。赤羽が苦悶の声をあげるのを心底楽しそうに見た後、ぱっと足を離す。
「うっ……」
「まぁいいや、そこで見てなよ。自分の無力さを。」
「あーあ、あの人達、気づかなかったねぇ。……本物はここにいるのに、かわいそーな赤羽ちゃん。」
「う……」
「ねぇ、どう?自分は何もかも知ってるのになぁんにも出来ないの?悔しい?ねぇ?悔しい?」
「………」
「……悔しいのは分かるけどさぁ。」
無言になる赤羽。それを見た紫の髪の少女は、ニコッと笑った後いきなり赤羽をブン殴る。
「ッ!?」
「無言はやめて欲しいなー。もっと泣き叫んでよ!そしたらお互い楽しめるよー?」
殴られて俯きながら、赤羽は現状を整理する。
(確か、私は……)
ルクバトとの戦いの後、追いかけようとしたら後ろからこの、“紫水龍香”そっくりの少女に攻撃され、意識を失い……気がついたらここに縛られていた。
しかもどうやら敵は自分に化けて山形達に近づいている。
「凄いよねぇ。正直私も全く分かんないし。」
そして何よりも不気味なのが姿形が龍香にそっくりだが、中身がまるで正反対な少女の存在だ。
「……アンタは、何者?」
「あら、気になる?」
フフッと少女は笑うとクルッと舞台演者のように一回転して仰々しく自己紹介をする。
「私は“紫水龍香”。カストル様が読み取ったもう一つの人格から生まれたの。」
「……。」
「つまり、私は普段表に出てないもう一人の龍香って訳。」
龍香、がどんなもんだい、とも言いたげに胸を張る。そんな龍香を見て、赤羽はハッと嘲笑する。
「……結局のところ、アンタはあのツギハギが生み出した紫水龍香の偽物って訳ね。」
「……。」
赤羽がそう言うと、龍香は一瞬笑顔が引き攣る。そして次の瞬間また拳が赤羽に飛ぶ。縛られて動けない赤羽はそのまま床に倒れる。
「ぐっ…!」
「……頭が悪いなぁ。私は偽物じゃないんだよぉ。」
赤羽の髪を掴んで龍香は赤羽を睨みつける。思い切り髪を引っ張られ、顔を顰める赤羽に龍香はまた笑みを浮かべる。
「まぁ、いいや。貴方にはこのショーの結末を最後まで見て貰わないといけないし。貴方に裏切られたあの人達、きっと良い顔をするよ。」
「………悪趣味な奴らね。反吐が出る。」
赤羽が吐き捨てるとンフフ、と龍香は笑みを浮かべる。
「でもぉ、正直なところォ私カストル様あんまり好きじゃないからぁ私の言うこと聞いてくれたら解いてあげてもいいヨォ。」
「……何をさせるつもり?」
赤羽が尋ねると、龍香は靴を脱ぎ、素足を赤羽の前に持ってきて。
「舐めてよ。そしたら解いてあげる。」
意地悪な笑みを浮かべて赤羽を見下ろしながら龍香が言う。そんな龍香に赤羽はフッと一笑すると。
「………結局アンタは偽物だわ。そうやって下賤な趣味を丸出しにしてるのが何よりの証拠よ。」
「………だからァ。」
龍香の雰囲気が変わる。次の瞬間龍香は赤羽の顔を踏みつける。
「うあっ」
「偽物じゃないって言ってるでしょぉ…頭が悪いのかなぁ…」
龍香はそう言って赤羽の顔を踏み躙る。赤羽が苦悶の声をあげるのを心底楽しそうに見た後、ぱっと足を離す。
「うっ……」
「まぁいいや、そこで見てなよ。自分の無力さを。」
プロウフとプロキオンが廊下を歩いていると、向こうからアルレシャとレグルスが歩いてくる。
「おや、二人とも。」
「あっ、アルレシャ!」
「むっ、プロキオンか。」
アルレシャを見たプロキオンは走ってアルレシャに向かうと、思い切り抱きつく。
「お帰り!どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょいと野暮用でな。相変わらず小さいなオマエは。」
「それで、首尾はどうでしたか?」
プロキオンと戯れるアルレシャとレグルスにプロウフが尋ねるとレグルスが跪いて答える。
「ハッ。敵に情報の漏洩は阻止しましたが……肝心の侵入者、トゥバンを仕留めきれず…」
「ほぅ。トゥバンが。……成る程、つまりあの子があそこに…」
「プロウフ様、如何致しましょう?」
レグルスの報告を聞いて、ブツブツと何かを呟くプロウフにレグルスが今後の指令を尋ねる。
「……情報の漏洩の阻止の内容については後で詳細を聞きますが、阻止したのであれば今は特に急ぐことではありません。お疲れ様でした二人とも。休んでいて構いませんよ。」
「はっ。」
「………。」
プロウフがそう言うと、レグルスは立ち上がって踵を返す。アルレシャは少し訝しげな顔をしたが、特に気にすることもなくプロキオンとその場を後にする。
そして一人残ったプロウフがフゥと一息ついて、自室に戻ろうとすると。
「プロウフ。」
声をかけられる。声がした方に振り向くと、そこにはルクバトの姿があった。
「おや、今度はルクバトですか。どうしましたか?」
「……カストルの野郎に釘を刺しといて欲しくてな。」
ゲンナリとした様子のルクバトにプロウフが尋ねる。
「どうかしたのですか?」
「勝手に人を巻き込んで“新月”と戦わせる、あの“カノープスつけた女にソックリな悪趣味過ぎる人形”を作る…付き合わされるこっちの身にもなってくれ。」
「……ほう。」
ルクバトの話にプロウフは相槌を打ち、ふむ、と少し思案した後。
「分かりました。カストルを見かけましたら私の方から注意しておきましょう。」
「頼むぞ。……全く。」
ルクバトは言うだけ言うと、その場から去ってしまう。そんな彼の後ろ姿を眺めながら、プロウフは呟いた。
「……そっくりな“人形”、ですか。」
「おや、二人とも。」
「あっ、アルレシャ!」
「むっ、プロキオンか。」
アルレシャを見たプロキオンは走ってアルレシャに向かうと、思い切り抱きつく。
「お帰り!どこ行ってたの?」
「あぁ、ちょいと野暮用でな。相変わらず小さいなオマエは。」
「それで、首尾はどうでしたか?」
プロキオンと戯れるアルレシャとレグルスにプロウフが尋ねるとレグルスが跪いて答える。
「ハッ。敵に情報の漏洩は阻止しましたが……肝心の侵入者、トゥバンを仕留めきれず…」
「ほぅ。トゥバンが。……成る程、つまりあの子があそこに…」
「プロウフ様、如何致しましょう?」
レグルスの報告を聞いて、ブツブツと何かを呟くプロウフにレグルスが今後の指令を尋ねる。
「……情報の漏洩の阻止の内容については後で詳細を聞きますが、阻止したのであれば今は特に急ぐことではありません。お疲れ様でした二人とも。休んでいて構いませんよ。」
「はっ。」
「………。」
プロウフがそう言うと、レグルスは立ち上がって踵を返す。アルレシャは少し訝しげな顔をしたが、特に気にすることもなくプロキオンとその場を後にする。
そして一人残ったプロウフがフゥと一息ついて、自室に戻ろうとすると。
「プロウフ。」
声をかけられる。声がした方に振り向くと、そこにはルクバトの姿があった。
「おや、今度はルクバトですか。どうしましたか?」
「……カストルの野郎に釘を刺しといて欲しくてな。」
ゲンナリとした様子のルクバトにプロウフが尋ねる。
「どうかしたのですか?」
「勝手に人を巻き込んで“新月”と戦わせる、あの“カノープスつけた女にソックリな悪趣味過ぎる人形”を作る…付き合わされるこっちの身にもなってくれ。」
「……ほう。」
ルクバトの話にプロウフは相槌を打ち、ふむ、と少し思案した後。
「分かりました。カストルを見かけましたら私の方から注意しておきましょう。」
「頼むぞ。……全く。」
ルクバトは言うだけ言うと、その場から去ってしまう。そんな彼の後ろ姿を眺めながら、プロウフは呟いた。
「……そっくりな“人形”、ですか。」
月が静かに地上を照らす、深夜。ムニャムニャと時折口籠もりながら龍香が寝ていると。
《…おい、おい龍香!》
「あまり大きい声を出すな、優しく起こすんだ。」
「なに……?」
カノープスと兄の声がして、龍香は眠気眼を擦りながら起き上がる。
「すまないな、龍香。こんな夜中に起こしてしまって。」
「うん……どうしたの?お兄ちゃん。こんな時間に?」
龍賢に龍香が尋ねるが、まだ眠いようで、ふぁあと大きな欠伸をする。それを見たトゥバンが龍香に言う。
《取り敢えず一回顔洗ったらどうだ?》
「うるさいなぁ……」
《おい、なんか俺だけ対応冷たくねーか?》
《逆にあんだけしといてなんで嫌われてないと思ってるんだお前。》
トゥバンにカノープスがツッコミを入れる中、龍賢はすまなそうにしながら携帯を取り出す。
「俺がさっき帰ってきた直後にこんなメールが来てな…すまないが、龍香とカノープスの力を借りたいんだ。」
「メール?」
龍賢がまだ眠そうな龍香にメールを見せる。そのメールを見た瞬間、龍香の目が見開かれる。
「こ、これって!」
《…おい、おい龍香!》
「あまり大きい声を出すな、優しく起こすんだ。」
「なに……?」
カノープスと兄の声がして、龍香は眠気眼を擦りながら起き上がる。
「すまないな、龍香。こんな夜中に起こしてしまって。」
「うん……どうしたの?お兄ちゃん。こんな時間に?」
龍賢に龍香が尋ねるが、まだ眠いようで、ふぁあと大きな欠伸をする。それを見たトゥバンが龍香に言う。
《取り敢えず一回顔洗ったらどうだ?》
「うるさいなぁ……」
《おい、なんか俺だけ対応冷たくねーか?》
《逆にあんだけしといてなんで嫌われてないと思ってるんだお前。》
トゥバンにカノープスがツッコミを入れる中、龍賢はすまなそうにしながら携帯を取り出す。
「俺がさっき帰ってきた直後にこんなメールが来てな…すまないが、龍香とカノープスの力を借りたいんだ。」
「メール?」
龍賢がまだ眠そうな龍香にメールを見せる。そのメールを見た瞬間、龍香の目が見開かれる。
「こ、これって!」
「お待たせ、赤羽。」
「別に、待ってないわ。」
夜遅くまでやっているファミレスでお手洗いに行くと言って席を外して、戻ってきた山形に赤羽はぶっきらぼうに言う。
「ここも久しぶりね。……貴方と、貴方のお父さんと来たの。何年ぶりかしら。」
「さぁ、覚えてないわ。」
「そんなぶっきらぼうなとこ、変わらないのね。」
「…いいでしょ、別に。」
そんな赤羽に山形は微笑みかける。
「……こうやってゆっくり二人で話すのも、たまには悪くないわね。」
「そうね。」
「待たせて悪かったから、何か注いできてあげましょうか?それともいつも通りでいい?」
「いつも通りでいいわ。」
そう言うと山形は分かったわ、と笑って飲み物を注ぎに行く。
その様子を、“本物の赤羽”は床に倒れ込んでテレビ越しに見させられていた。
「…山形……!」
「無駄無駄、貴方の声は届かないよ。」
呻く赤羽に龍香がニヤニヤしながら、言う。一方の山形は注いできた珈琲を赤羽に渡し、飲み物を飲みながら雑談する。
真実を知っていて、現在進行形で状況を把握しているのに赤羽には何も出来ない。
「悔しいねぇ。見てても、仇を目の前にしても、何も出来ない。」
「……ッ」
「それは貴方が弱いから。弱い奴は何も選べないの。だから、貴方はここで絶望しながら、死んでくのよ。」
赤羽にそう言うと龍香はまた嬉しそうにけたたましく笑う。そんな龍香を見た赤羽の額に青筋が浮かぶ。
「うるさいッ!モドキが耳元で叫ばないで気持ちが悪いのよッ!」
「……学習しないなぁ。そう言ったら、どうなるか……本気で思い知らせてあげようかッ!!」
赤羽の言葉に龍香は笑いながら赤羽のお腹を蹴り上げる。
「ァッ!?」
呻く赤羽をさらに連続で踏みつけ、襟首を掴むと思い切り殴る。グシャッと音がし、龍香の拳が血で濡れる。
さらに龍香が振りかぶって拳を赤羽にお見舞いしようとすると。
「やめろ。」
龍香の腕が掴まれる。止められた龍香は興奮気味に自分の腕を掴んだ人物に振り返る。
そこにいたのは薄紫色の長い髪を、後ろで一つにまとめた痩せギスの、青年だった。
「アンタッ、誰!?」
「……ソイツを殺す気か。」
青年の言葉に龍香がはッとした表情をする。そしてチッと舌打ちをすると赤羽を放り捨てるように離す。
「……で、アンタ、誰よ。」
「……俺は」
青年がそこまで言いかけて、ふとテレビを見つめる。
「……いや、言わないの!?」
「……それ、見てみろ。」
龍香も釣られて、画面を見る。そしてそこには、予想だにしない光景が映し出されていた。
「別に、待ってないわ。」
夜遅くまでやっているファミレスでお手洗いに行くと言って席を外して、戻ってきた山形に赤羽はぶっきらぼうに言う。
「ここも久しぶりね。……貴方と、貴方のお父さんと来たの。何年ぶりかしら。」
「さぁ、覚えてないわ。」
「そんなぶっきらぼうなとこ、変わらないのね。」
「…いいでしょ、別に。」
そんな赤羽に山形は微笑みかける。
「……こうやってゆっくり二人で話すのも、たまには悪くないわね。」
「そうね。」
「待たせて悪かったから、何か注いできてあげましょうか?それともいつも通りでいい?」
「いつも通りでいいわ。」
そう言うと山形は分かったわ、と笑って飲み物を注ぎに行く。
その様子を、“本物の赤羽”は床に倒れ込んでテレビ越しに見させられていた。
「…山形……!」
「無駄無駄、貴方の声は届かないよ。」
呻く赤羽に龍香がニヤニヤしながら、言う。一方の山形は注いできた珈琲を赤羽に渡し、飲み物を飲みながら雑談する。
真実を知っていて、現在進行形で状況を把握しているのに赤羽には何も出来ない。
「悔しいねぇ。見てても、仇を目の前にしても、何も出来ない。」
「……ッ」
「それは貴方が弱いから。弱い奴は何も選べないの。だから、貴方はここで絶望しながら、死んでくのよ。」
赤羽にそう言うと龍香はまた嬉しそうにけたたましく笑う。そんな龍香を見た赤羽の額に青筋が浮かぶ。
「うるさいッ!モドキが耳元で叫ばないで気持ちが悪いのよッ!」
「……学習しないなぁ。そう言ったら、どうなるか……本気で思い知らせてあげようかッ!!」
赤羽の言葉に龍香は笑いながら赤羽のお腹を蹴り上げる。
「ァッ!?」
呻く赤羽をさらに連続で踏みつけ、襟首を掴むと思い切り殴る。グシャッと音がし、龍香の拳が血で濡れる。
さらに龍香が振りかぶって拳を赤羽にお見舞いしようとすると。
「やめろ。」
龍香の腕が掴まれる。止められた龍香は興奮気味に自分の腕を掴んだ人物に振り返る。
そこにいたのは薄紫色の長い髪を、後ろで一つにまとめた痩せギスの、青年だった。
「アンタッ、誰!?」
「……ソイツを殺す気か。」
青年の言葉に龍香がはッとした表情をする。そしてチッと舌打ちをすると赤羽を放り捨てるように離す。
「……で、アンタ、誰よ。」
「……俺は」
青年がそこまで言いかけて、ふとテレビを見つめる。
「……いや、言わないの!?」
「……それ、見てみろ。」
龍香も釣られて、画面を見る。そしてそこには、予想だにしない光景が映し出されていた。
赤羽と山形は帰り道を二人で歩いていた。
「…星が綺麗ね。」
「……えぇ。街から離れるとこんなに綺麗に見えるとは思わなかったわ。」
「……そう。そうね。」
山形は赤羽の発言を聞くと、ソッと時計に山形は指を沿わせる。
「…赤羽、ちょっといい?」
「何?」
「後ろ、何かいないかしら。」
「?」
山形の言葉に赤羽は後ろを振り返る。だが、赤羽の視界にはそんなものは見えない。
「……何よ、山形。何も見えな」
赤羽が山形の方に振り向いた瞬間。パァンと乾いた音が山に響く。そして赤羽の額を山形が右手に構える銃から発射された弾が貫いていた。
「───ぁ?」
「…………」
ドサッと倒れる赤羽に山形はさらに銃弾を撃ち込んでいく。着弾する度に人形のように赤羽の身体が跳ねる。
そしてついにマガジンの弾全てを撃ち切った山形はマガジンを変えながら、“赤羽だったもの”に言う。
「ねぇ、いつまでそんな茶番を続けるつもり?」
「………へぇ、気づいてたんだ。」
銃弾で撃ち抜かれた箇所から赤黒い液体を垂れ流しながら“赤羽だったもの”が立ち上がる。
「いつから、気づいてた?」
「公園で、ほんの僅かな戦闘痕を見つけた時からよ。」
公園に辿り着いた時、山形は水辺に残る微かな爆発の痕を見つけていたのだ。
「その後に出て来た貴方に何事もなかったら尋ねたら、何事もなかったって言うし。……でも、私の勘違いかもしれないから色々と試させて貰ったわ。……まず、あの子は珈琲飲めないわ。あと、貴方達の一件で彼女は星を見るのは嫌いなのよ。それに、何より決定的だったのは貴方の雰囲気。」
山形は正面にいる“赤羽だったもの”を睨みつける。
「…赤羽は根は素直で優しい子よ。アンタみたいに素で捻くれてないのよ。」
「……ふ、ふふふ。成る程、成る程ね。」
そう、笑うと赤羽の身体が崩れて、その醜悪な正体、ツギハギだらけの怪物、カストルへと変貌する。
「確かに、まんまとしてやられたよ。…二年前は上手くいったから自信あったんだけどね。」
「……。」
カストルは笑いながらヨーヨーを構える。
「けど、シードゥスの力もない君がボクに何が出来るって言うんだい?」
カストルがヨーヨーを山形に投げつけようとした瞬間、横から凄じいエネルギーの奔流がカストルを襲う。
「何!?」
咄嗟にヨーヨーを盾がわりにして防ごうとするが、完全には防げず、吹っ飛ばされて大きく体勢を崩す。
飛んできた先を見れば、“デイブレイク•ネメシス”を装備した雪花が荷電粒子砲“へオース”を構えていた。
「ぐっ、く。」
「私が何の準備も対策もせず貴方に近づいたとでも思った?…だとすれば、それは間違いよ。」
「オマエ…ッ!」
カストルが山形に狙いを定めようとした瞬間、上空から回転しながら迫る漆黒の弾丸と化した黒鳥がカストルを襲う。
「うおぅ!?」
カストルは突然襲いかかってきた黒鳥に跳ね飛ばされ、樹に叩きつけられる。
「お怪我は?」
「ないわ。ありがとう黒鳥。」
「はいはい、山形は下がってて。後ろに風見達が車を停めてるわ。」
「分かったわ。あとは、よろしくね。すぐに“赤羽”達も来ると思うから。」
黒鳥と雪花に山形がそう言うと、カストルはそれを聞いて笑い始める。
「……何がおかしい訳?」
「ククッ…あの子は来ないよ。だってさ、君たちは知らないけど彼女、仇に手も足も出ずに負けたんだよ?すぐ立ち直れる訳ないさ。」
「いや、来るさ。」
カストルに黒鳥が真っ直ぐ見据えて言う。
「アイツがどんだけ頑固か知ってるか?一回二回負けた程度で折れるような奴じゃない。」
「そーそー。あとアイツ結構根に持つタイプだから。存外やる気満々かもよ?」
黒鳥と雪花がそう言う。その目は一ミリも赤羽への不信も何もない、確かな信頼を感じ取れる。
「……でも、やる気があったって彼女がどこに居るか分かんないんじゃあね。」
カストルの言葉に山形がニヤリと笑って返す。
「それはもう対策済みよ。」
「何?……!」
カストルは今この場にいないある人物をすぐさま、勘繰り空を見上げた。
「まさか!」
「…星が綺麗ね。」
「……えぇ。街から離れるとこんなに綺麗に見えるとは思わなかったわ。」
「……そう。そうね。」
山形は赤羽の発言を聞くと、ソッと時計に山形は指を沿わせる。
「…赤羽、ちょっといい?」
「何?」
「後ろ、何かいないかしら。」
「?」
山形の言葉に赤羽は後ろを振り返る。だが、赤羽の視界にはそんなものは見えない。
「……何よ、山形。何も見えな」
赤羽が山形の方に振り向いた瞬間。パァンと乾いた音が山に響く。そして赤羽の額を山形が右手に構える銃から発射された弾が貫いていた。
「───ぁ?」
「…………」
ドサッと倒れる赤羽に山形はさらに銃弾を撃ち込んでいく。着弾する度に人形のように赤羽の身体が跳ねる。
そしてついにマガジンの弾全てを撃ち切った山形はマガジンを変えながら、“赤羽だったもの”に言う。
「ねぇ、いつまでそんな茶番を続けるつもり?」
「………へぇ、気づいてたんだ。」
銃弾で撃ち抜かれた箇所から赤黒い液体を垂れ流しながら“赤羽だったもの”が立ち上がる。
「いつから、気づいてた?」
「公園で、ほんの僅かな戦闘痕を見つけた時からよ。」
公園に辿り着いた時、山形は水辺に残る微かな爆発の痕を見つけていたのだ。
「その後に出て来た貴方に何事もなかったら尋ねたら、何事もなかったって言うし。……でも、私の勘違いかもしれないから色々と試させて貰ったわ。……まず、あの子は珈琲飲めないわ。あと、貴方達の一件で彼女は星を見るのは嫌いなのよ。それに、何より決定的だったのは貴方の雰囲気。」
山形は正面にいる“赤羽だったもの”を睨みつける。
「…赤羽は根は素直で優しい子よ。アンタみたいに素で捻くれてないのよ。」
「……ふ、ふふふ。成る程、成る程ね。」
そう、笑うと赤羽の身体が崩れて、その醜悪な正体、ツギハギだらけの怪物、カストルへと変貌する。
「確かに、まんまとしてやられたよ。…二年前は上手くいったから自信あったんだけどね。」
「……。」
カストルは笑いながらヨーヨーを構える。
「けど、シードゥスの力もない君がボクに何が出来るって言うんだい?」
カストルがヨーヨーを山形に投げつけようとした瞬間、横から凄じいエネルギーの奔流がカストルを襲う。
「何!?」
咄嗟にヨーヨーを盾がわりにして防ごうとするが、完全には防げず、吹っ飛ばされて大きく体勢を崩す。
飛んできた先を見れば、“デイブレイク•ネメシス”を装備した雪花が荷電粒子砲“へオース”を構えていた。
「ぐっ、く。」
「私が何の準備も対策もせず貴方に近づいたとでも思った?…だとすれば、それは間違いよ。」
「オマエ…ッ!」
カストルが山形に狙いを定めようとした瞬間、上空から回転しながら迫る漆黒の弾丸と化した黒鳥がカストルを襲う。
「うおぅ!?」
カストルは突然襲いかかってきた黒鳥に跳ね飛ばされ、樹に叩きつけられる。
「お怪我は?」
「ないわ。ありがとう黒鳥。」
「はいはい、山形は下がってて。後ろに風見達が車を停めてるわ。」
「分かったわ。あとは、よろしくね。すぐに“赤羽”達も来ると思うから。」
黒鳥と雪花に山形がそう言うと、カストルはそれを聞いて笑い始める。
「……何がおかしい訳?」
「ククッ…あの子は来ないよ。だってさ、君たちは知らないけど彼女、仇に手も足も出ずに負けたんだよ?すぐ立ち直れる訳ないさ。」
「いや、来るさ。」
カストルに黒鳥が真っ直ぐ見据えて言う。
「アイツがどんだけ頑固か知ってるか?一回二回負けた程度で折れるような奴じゃない。」
「そーそー。あとアイツ結構根に持つタイプだから。存外やる気満々かもよ?」
黒鳥と雪花がそう言う。その目は一ミリも赤羽への不信も何もない、確かな信頼を感じ取れる。
「……でも、やる気があったって彼女がどこに居るか分かんないんじゃあね。」
カストルの言葉に山形がニヤリと笑って返す。
「それはもう対策済みよ。」
「何?……!」
カストルは今この場にいないある人物をすぐさま、勘繰り空を見上げた。
「まさか!」
「はぁ…?何よ、これ?なんなのこの茶番!」
テレビ越しに状況が一変していく様子を見た龍香はじたんだを踏んで激昂する。
「はっ…。どうしたの?随分とイライラしてるみたいだけど。」
赤羽がそう煽ると龍香のこめかみに青筋が浮かぶ。
「オマエ……ッ!」
激昂した龍香が赤羽の胸ぐらを掴んで殴りかかろうとした瞬間。
ドォンという音と共に青いドレスに掘削機型武器“ホーンパーフォレイター”を装備したトリケラカラーに変身した“龍香”がドアをぶち破って部屋の中に入る。
「チッ」
それを見た龍香……、いやカストルが作り出した“白龍香”は赤羽から手を離して、後退する。
「赤羽さん!大丈夫ゥアォ!?」
龍香は赤羽に声をかけるが、どうやらまだ“ホーンパーフォレイター”を完璧にコントロール出来ている訳ではないらしく壁に激突する。
「……何やってんの。」
「……すまないな…。怪我は大丈夫か?」
「別に…これくらいなら問題ない。」
赤羽が呆れながら龍香を見ていると、後から来た変身した龍賢が赤羽を縛っていた縄を切って拘束を解除する。
「いてて…。」
《おかしいなぁ、“タイラントブレイド”扱えるんだからもう平気だと思ったんだが…》
「カノープス割と無責任なとこあるよ…ね…。」
壁から抜け出した龍香は目の前にいる白龍香を見て固まる。そして一拍置いて指を指して叫ぶ。
「えっ!わ、私がいる!?」
《えっ、何コレどういうことだ!?》
「お、お兄ちゃん!私、双子だったの!?」
「い、いや違う、龍香は双子ではない…いやしかしこれはいったい…!?」
気が動転しているのか訳の分からないことを言い出す龍香と龍賢に赤羽が真実を伝える。
「いやアレはツギハギシードゥスが龍香の事をコピーした人形よ。ニセ龍香よ。」
「だから……!ニセモノじゃねぇって言ってんだろ!」
赤羽に白龍香はどこから取り出したのか斧を振って斬撃を放つ。だがその斬撃は龍賢が槍で弾く。
「なんだか知らないが……龍香、この子を連れて皆と合流しろ。奴は私が押さえる。」
「えっ、で、でも。」
チラッと自身と瓜二つのコピー人形を見て龍香は逡巡するが。
「この中で機動力に優れているのはお前だけだ。頼んだぞ。」
「……うん、行くよ赤羽さん。」
「頼んだわ。」
龍香はカノープスに触れて黄色の翼を生やしたプテラカラーに変身すると赤羽を抱えてその場を飛び去る。
「さて……少々心苦しいが、お前の相手は私だ。」
「ハッ、お兄様私を傷つけられるの?」
目の前にいる白龍香は顔を歪めて笑う。無言のまま槍を構える龍賢にトゥバンが尋ねる。
《おいおい大丈夫か?俺が変わってボコボコにしてやっても良いんだぜ?》
「……それは色々思い出すから遠慮させて貰う!」
龍賢がそう言って白龍香に仕掛けようとした瞬間。横から水の弾丸が飛んでくる。
「何!」
何とか龍賢は横っ飛びに跳躍してその攻撃をかわす。攻撃が飛んできた方を見ると、そこには魚のような怪物、アルレシャがいた。
《こんな時にあの魚野郎かよ!?》
「くっ!面倒な!」
トゥバンが槍を構える。二対一になることを龍賢が懸念する中、アルレシャは白龍香に向かって。
「行け。オマエは龍香を追撃しろ。」
「は。指図しないでくれる?」
アルレシャの指示に、白龍香が反発するが一瞬一瞥したの後アルレシャはこう続ける。
「オマエは“本物”なんだから、“偽物”は倒さなくちゃだろう?」
「………そうね。」
その言葉に白龍香は一瞬目を丸くし、少し不服そうな、それでいて何処か嬉しそうな声で返事をすると同じように白い翼を生やして龍香を追撃せんと空中を舞う。
「させるか!」
龍賢が妨害しようとするが、地面を蹴り、一瞬で距離を詰めたアルレシャが槍を突き出す。
「チッ!」
アルレシャの繰り出した一撃を龍賢は受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
「貴様邪魔を…!」
「邪魔をしない程俺達は仲良しな関係ではないだろ?」
《今度はまぁ随分と雰囲気がかわったなァ!?》
目の前のアルレシャから感じるのは先日のギラギラした殺意とは打って変わって底冷えするようなネットリとした殺意だ。
トゥバンの言う通りまるで人が変わったような雰囲気を醸し出すアルレシャに龍賢達は困惑するが。
《構いやしねぇ、龍賢!》
「…あぁ!奴を倒す!」
龍賢は槍を握る拳にさらに力を入れた。
テレビ越しに状況が一変していく様子を見た龍香はじたんだを踏んで激昂する。
「はっ…。どうしたの?随分とイライラしてるみたいだけど。」
赤羽がそう煽ると龍香のこめかみに青筋が浮かぶ。
「オマエ……ッ!」
激昂した龍香が赤羽の胸ぐらを掴んで殴りかかろうとした瞬間。
ドォンという音と共に青いドレスに掘削機型武器“ホーンパーフォレイター”を装備したトリケラカラーに変身した“龍香”がドアをぶち破って部屋の中に入る。
「チッ」
それを見た龍香……、いやカストルが作り出した“白龍香”は赤羽から手を離して、後退する。
「赤羽さん!大丈夫ゥアォ!?」
龍香は赤羽に声をかけるが、どうやらまだ“ホーンパーフォレイター”を完璧にコントロール出来ている訳ではないらしく壁に激突する。
「……何やってんの。」
「……すまないな…。怪我は大丈夫か?」
「別に…これくらいなら問題ない。」
赤羽が呆れながら龍香を見ていると、後から来た変身した龍賢が赤羽を縛っていた縄を切って拘束を解除する。
「いてて…。」
《おかしいなぁ、“タイラントブレイド”扱えるんだからもう平気だと思ったんだが…》
「カノープス割と無責任なとこあるよ…ね…。」
壁から抜け出した龍香は目の前にいる白龍香を見て固まる。そして一拍置いて指を指して叫ぶ。
「えっ!わ、私がいる!?」
《えっ、何コレどういうことだ!?》
「お、お兄ちゃん!私、双子だったの!?」
「い、いや違う、龍香は双子ではない…いやしかしこれはいったい…!?」
気が動転しているのか訳の分からないことを言い出す龍香と龍賢に赤羽が真実を伝える。
「いやアレはツギハギシードゥスが龍香の事をコピーした人形よ。ニセ龍香よ。」
「だから……!ニセモノじゃねぇって言ってんだろ!」
赤羽に白龍香はどこから取り出したのか斧を振って斬撃を放つ。だがその斬撃は龍賢が槍で弾く。
「なんだか知らないが……龍香、この子を連れて皆と合流しろ。奴は私が押さえる。」
「えっ、で、でも。」
チラッと自身と瓜二つのコピー人形を見て龍香は逡巡するが。
「この中で機動力に優れているのはお前だけだ。頼んだぞ。」
「……うん、行くよ赤羽さん。」
「頼んだわ。」
龍香はカノープスに触れて黄色の翼を生やしたプテラカラーに変身すると赤羽を抱えてその場を飛び去る。
「さて……少々心苦しいが、お前の相手は私だ。」
「ハッ、お兄様私を傷つけられるの?」
目の前にいる白龍香は顔を歪めて笑う。無言のまま槍を構える龍賢にトゥバンが尋ねる。
《おいおい大丈夫か?俺が変わってボコボコにしてやっても良いんだぜ?》
「……それは色々思い出すから遠慮させて貰う!」
龍賢がそう言って白龍香に仕掛けようとした瞬間。横から水の弾丸が飛んでくる。
「何!」
何とか龍賢は横っ飛びに跳躍してその攻撃をかわす。攻撃が飛んできた方を見ると、そこには魚のような怪物、アルレシャがいた。
《こんな時にあの魚野郎かよ!?》
「くっ!面倒な!」
トゥバンが槍を構える。二対一になることを龍賢が懸念する中、アルレシャは白龍香に向かって。
「行け。オマエは龍香を追撃しろ。」
「は。指図しないでくれる?」
アルレシャの指示に、白龍香が反発するが一瞬一瞥したの後アルレシャはこう続ける。
「オマエは“本物”なんだから、“偽物”は倒さなくちゃだろう?」
「………そうね。」
その言葉に白龍香は一瞬目を丸くし、少し不服そうな、それでいて何処か嬉しそうな声で返事をすると同じように白い翼を生やして龍香を追撃せんと空中を舞う。
「させるか!」
龍賢が妨害しようとするが、地面を蹴り、一瞬で距離を詰めたアルレシャが槍を突き出す。
「チッ!」
アルレシャの繰り出した一撃を龍賢は受け止め、鍔迫り合いに持ち込む。
「貴様邪魔を…!」
「邪魔をしない程俺達は仲良しな関係ではないだろ?」
《今度はまぁ随分と雰囲気がかわったなァ!?》
目の前のアルレシャから感じるのは先日のギラギラした殺意とは打って変わって底冷えするようなネットリとした殺意だ。
トゥバンの言う通りまるで人が変わったような雰囲気を醸し出すアルレシャに龍賢達は困惑するが。
《構いやしねぇ、龍賢!》
「…あぁ!奴を倒す!」
龍賢は槍を握る拳にさらに力を入れた。
「赤羽さん、今雪花ちゃんと黒鳥さんがシードゥスと戦ってます!このままそこに行きますけど、顔の怪我とか大丈夫ですか?アレだったら一旦“新月”の基地に下ろしましょうか?」
「いいわ、気にしないで。」
赤羽が右目に指を這わせ、鎧を纏うと傷や目の腫れが多少は治る。
「……あのクソガキ。よくもやってくれたわね…。今度会ったらタダじゃおかないわ…。」
「は、はは…。」
白龍香に対して殺意を燃やす赤羽に龍香は苦笑いをする。だが同時に赤羽の脳裏に白龍香の言葉が過ぎる。
『カストル様から読み取ったもう一つの人格から生まれたの。』
その言葉と、龍香の普段の態度。赤羽は少し目を閉じて黙考すると口を開く。
「……龍香。」
「あ、はい?」
「アンタってさ。他人のために怒れるけど、自分のために怒ったことある?」
「えっ……何ですか唐突に?」
「いいから。」
赤羽の問いに龍香はうーんと唸って頭を悩ませる。
《まぁ、俺が見てきた中ではお前が自分のことで怒るのをあまり見た事はないな。》
「そうかなぁ?……そうかも?」
「……結構溜めるタイプね。だから、爆発するととんでもないことをする。」
赤羽の指摘に、龍香はトゥバンと戦った時の暴走形態を思い出して、うっ、と唸る。
「たまには自分のことで怒りなさいよ。別に悪い事じゃないんだから。」
赤羽の言葉に龍香が怪訝な顔をした瞬間。
《龍香!右だ!》
カノープスの指示が飛ぶ。カノープスの言う通り右へと旋回すると、さっきまで龍香がいた場所を矢が駆け抜ける。
「うわっ!?」
攻撃が飛んできた方を見ると、そこには白い翼を翻し、こちらへと迫り来る白龍香がいた。
「嘘ッ、もうちょっとなのに!」
《くっ!突破されたか!?》
「ヒャッハハハハハ!!墜ちろ墜ちろォォッ!!」
白龍香の執拗な攻撃に龍香は避けるのが精一杯だ。しかも赤羽を抱えているのだから余計に機動力に落ちている。
「…チッ、アンタ私を下ろしなさい。走って行くわ。」
「わ、分かりました。」
龍香が赤羽を下ろそうと地上へと向かおうとする。だが、そうはさせじと白龍香は龍香に向けて矢を放つ。
「そうはさせるかァ!」
《ぐっ、これでは赤羽を下ろせない!》
「ええい、こうなったら私を投げ飛ばしなさい!」
「ええっ!?危ないですよ!?」
赤羽の提案に龍香が警告するが、赤羽は龍香に言う。
「このままチンタラするよりマシよ!」
「そ、そうですけど……っ、」
襲いかかる矢に龍香は回避を続けるが、それも限界が近くなる。
「ッ、気をつけてッ!!」
龍香はそう言うと思い切り赤羽を目的地に向けてぶん投げる。
それと同時に弓矢武器、“フェザーバリスタ”を構えると白龍香に向けて放つ。
だが、白龍香は華麗な旋回で攻撃を回避する。
「自分とのそっくりさんと戦うのは気が引けるケド…!」
龍香も翼をはためかせ、白龍香へと向かって行った。
「いいわ、気にしないで。」
赤羽が右目に指を這わせ、鎧を纏うと傷や目の腫れが多少は治る。
「……あのクソガキ。よくもやってくれたわね…。今度会ったらタダじゃおかないわ…。」
「は、はは…。」
白龍香に対して殺意を燃やす赤羽に龍香は苦笑いをする。だが同時に赤羽の脳裏に白龍香の言葉が過ぎる。
『カストル様から読み取ったもう一つの人格から生まれたの。』
その言葉と、龍香の普段の態度。赤羽は少し目を閉じて黙考すると口を開く。
「……龍香。」
「あ、はい?」
「アンタってさ。他人のために怒れるけど、自分のために怒ったことある?」
「えっ……何ですか唐突に?」
「いいから。」
赤羽の問いに龍香はうーんと唸って頭を悩ませる。
《まぁ、俺が見てきた中ではお前が自分のことで怒るのをあまり見た事はないな。》
「そうかなぁ?……そうかも?」
「……結構溜めるタイプね。だから、爆発するととんでもないことをする。」
赤羽の指摘に、龍香はトゥバンと戦った時の暴走形態を思い出して、うっ、と唸る。
「たまには自分のことで怒りなさいよ。別に悪い事じゃないんだから。」
赤羽の言葉に龍香が怪訝な顔をした瞬間。
《龍香!右だ!》
カノープスの指示が飛ぶ。カノープスの言う通り右へと旋回すると、さっきまで龍香がいた場所を矢が駆け抜ける。
「うわっ!?」
攻撃が飛んできた方を見ると、そこには白い翼を翻し、こちらへと迫り来る白龍香がいた。
「嘘ッ、もうちょっとなのに!」
《くっ!突破されたか!?》
「ヒャッハハハハハ!!墜ちろ墜ちろォォッ!!」
白龍香の執拗な攻撃に龍香は避けるのが精一杯だ。しかも赤羽を抱えているのだから余計に機動力に落ちている。
「…チッ、アンタ私を下ろしなさい。走って行くわ。」
「わ、分かりました。」
龍香が赤羽を下ろそうと地上へと向かおうとする。だが、そうはさせじと白龍香は龍香に向けて矢を放つ。
「そうはさせるかァ!」
《ぐっ、これでは赤羽を下ろせない!》
「ええい、こうなったら私を投げ飛ばしなさい!」
「ええっ!?危ないですよ!?」
赤羽の提案に龍香が警告するが、赤羽は龍香に言う。
「このままチンタラするよりマシよ!」
「そ、そうですけど……っ、」
襲いかかる矢に龍香は回避を続けるが、それも限界が近くなる。
「ッ、気をつけてッ!!」
龍香はそう言うと思い切り赤羽を目的地に向けてぶん投げる。
それと同時に弓矢武器、“フェザーバリスタ”を構えると白龍香に向けて放つ。
だが、白龍香は華麗な旋回で攻撃を回避する。
「自分とのそっくりさんと戦うのは気が引けるケド…!」
龍香も翼をはためかせ、白龍香へと向かって行った。
今は使われていない採石場へとカストル、雪花、黒鳥は戦いの場を移していた。
黒鳥が黒翼から羽根を、雪花はライフルを構えてそれぞれカストルに向けて発砲する。
「フフッ中々やるね!」
だが、カストルはそれらをヨーヨーで弾いたり、身を捻って回避する。
さらにお返しとばかりに投げ返したヨーヨーが二人に襲いかかる。二人はそれらを回避しようとすると、次の瞬間ヨーヨーが目の前で爆発する。
「何ッ!?」
「きゃっ!?」
目の前で起こった爆発に二人は大きく吹き飛ばされて地面を転がる。
「フフッ、どうだい?今日はちょっと本気を出そうと思ってね……。ま、前戦った時よりは遥かに強いと思うよ?」
カストルはさらにヨーヨーを構えてククと余裕綽々と言った具合に笑う。
「クッ、やってくれる…!」
「って言うか、こっちもまだ本気出してないだけだし…!」
二人は立ち上がり、カストルを睨みつける。そして黒鳥が唸ると怪物形態に、雪花の顔を仮面が覆い、センサーアイが赤い光を鈍く放つ。
「へぇ…こりゃ楽しめそうだ……」
カストルが楽しげにヨーヨーを構えた瞬間。何処からともなく針がカストルに向けて飛んでくる。
「おっと。」
カストルはヨーヨーを使って針型爆弾を弾いて爆発させる。
その攻撃には全員が感づく。
「あの攻撃…!」
「へぇ……、成る程。そうだった。バカな奴程諦めが悪いんだっけ……。」
全員の視線の先には、全身擦り傷だらけ服も所々破れた、それでいてその目にはギラギラとした戦闘の意思を感じる赤羽がいた。
「……戻って来たわよ。クソ野郎。」
「赤羽!!スゴイ傷……!」
「奴等に相当やられたのね…。服も、ボロボロだし…」
二人の言葉に赤羽は一瞬一瞥し、何故か目を逸らした後。
「……そうね。まぁ、そんなところよ。」
実は龍香にぶん投げられた後、アンカーを使って上手いこと着地しようとしたしたがルクバトに切断されていたのを失念していたため上手いこと着地出来ず、藪に突っ込んでボロボロになったのだが赤羽は墓までこの事を持ってくことにした。
(まぁ、実際に殴られたし嘘は言ってないわ…。)
「まぁ何にせよ主役は揃ったって訳ね。」
赤羽を交え、黒鳥、雪花の三人がカストルと対峙する。
「ンフフ……三対一、まぁいいハンデかな。」
カストルはそう言うと、三人に攻撃を仕掛ける。指を器用に動かすと六枚に増えたヨーヨーが孤を描いて三人に襲いかかる。
「気をつけて!あれ、爆発するわ!」
「私が何とかする!」
黒鳥はそう言うと大きくなった翼を拡げ、はためかせるともはや竜巻のごとき突風が発生し、ヨーヨーを全て吹き飛ばす。
「うげげっ、それアリ?」
カストルが驚くが、その間に赤羽と雪花が間を詰めていた。そしてカストルに刀とチェーンソー“マタンII”が襲いかかる。カストルはそれをヨーヨーを使って防ぐ。
「ハッ、ボクに接近戦を挑むとは!」
カストルはヨーヨーを扱いつつ、二人を捌きつつ反撃をしようと腕を振るが。
赤羽と雪花は前戦った時とは違いその反撃を避け、さらに攻め立てる。
「あら?あらあら?もしかして…強くなってる?」
「そう、よ!」
二人が大きく攻め立てる。カストルが少し余裕なさげになってきた瞬間。
「二人とも、離れろ!」
黒鳥は飛び上がって翼を使って回転しながら、あの父との戦いの中電撃を受けたことで帯電する体質となった身体に電気を纏わせて嘴を鋭く尖らせカストルに突っ込む。
「トロンバダリア•フルミーネ!!」
「ハハッ!八重の巣掻き!!」
もはや電気を纏った一つの弾丸と化した黒鳥をカストルは両手のヨーヨーをさらに増やし、八枚のヨーヨーが刃を立て黒鳥を迎撃する。
強烈な爆発が起き、黒鳥は吹っ飛びカストルも大きく後ずさる。
「ぐうっ」
「ハハッ……!スゴイねぇ君…!流石は自分のお父さんを殺して得た力だネ…!!」
吹き飛ばされても憎まれ口を絶やさないカストルに赤羽が突っ込む。刀を構え、突っ込む赤羽にカストルは迎撃のためにヨーヨーを持った手を振るう。その瞬間。
「今よ!」
カストルの攻撃は赤羽を振り抜いた。いや、厳密にはすり抜けたのだ。
「これは、サダルメルクの…!?」
カストルが気づくと身を捻らせる。しかし、雪花の斬撃が身体を薄く斬る。
「チッ。」
「おおっ。危ない!今のは危なかったよ!」
カストルはそう言って地面を大きく蹴ると両手のヨーヨーを合わせると、巨大なヨーヨーになり三人に襲いかかる。
「潰れちゃいなぁ!一重の鶴瓶落とし!」
「何のぉ!!」
雪花は“マタンII”の柄を引っ張り、刃に青い光を纏わせると巨大なヨーヨーを受け止める。
「うおおおおおおおおお!!」
雪花が吼える。火花が散り、しばらくの間拮抗していたがヨーヨーをチェーンソーが火花と轟音を上げながら切り裂いた。
「ウッソ!?」
「ッハァっ……!!」
どうやら相当自信のあった必殺技だったらしく、雪花に破られたのはショックだったようだ。しかし、その一撃は雪花にとってもタダで迎撃出来た訳ではないようで、雪花は体力を消耗し切ってしまったのか膝をつく。
「赤羽!」
赤羽は刀を抜くとカストルに迫る。
「これでトドメ!」
赤羽が刀を突き出した瞬間。カストルの目が鈍く輝く。
「そうは……いかないよ!」
次の瞬間。カストルは腰に手をやり、ヨーヨーを取り出すと、ヨーヨーを自分の周りを漂わせる。そして、それは段々と数を増やしていき……そしてそれは無数の刃となり三人に襲いかかる。
「褒めてやるよ!このボクの最大技を出させたんだからな!幾数重•乱桜!!」
無数の刃が地面に炸裂し、爆発を起こす。まさしく嵐のような攻撃が三人に炸裂する。
「うおおおおお!!?」
「きゃっ!?」
「何ッ!?」
あまりの爆発の凄まじさに三人は離れ、爆炎が辺りを包む。
しばらく爆発が続いた後、もうもうと煙が巻き上がる。そしてその煙が晴れると、そこには雪花の装甲の一部と、黒鳥のコートの一部。そして元よりボロボロの赤羽がそこにいた。
「へぇ…君は生き残ったんだ。他二人は死体すら残らずしんじゃったかな。」
カストルが軽口を叩くが、肩で息をしておりかなり体力を消耗しているようだ。
「……当然よ。私は父の仇を取る。そのための力、そのために私は戦ってきたの。」
「君が?ルクバトに手も足も出なかったのに?」
カストルは煽るように言う。しかし、赤羽の目は一切の気後れも怯みもせず真っ正面からカストルを見据えて、言った。
「……だから何?今負けても、次に私は勝つわ。私はまだ生きている!生きている限り勝つ機会がある!生きている限り、私は負けてない!」
赤羽のその言葉に、カストルはふむ。と唸ると。
「なら、君は今日負けるよ。君は今から……ボクに殺されるんだからね!」
カストルがそう叫ぶとヨーヨーを赤羽に投げつける。赤羽は痛む身体に鞭を打って避ける。そして反撃のために太腿のホルダーから“椿”を取り出そうとして、気づく。
(くっ、弾切れ…!?)
「ハハッ、あの爆発する針は弾切れかい!?それに、君の幻は既にタネが割れているんだよ!」
赤羽はカストルのヨーヨーを避けるだけに精一杯だ。
「君の幻は幻覚や、出現位置を絞るものじゃない!君自身から幻を射出するタイプだ!つまり、ボクの視界を塞ぐ方法がない限り君の幻は意味をなさない!幻の出るところを見られちゃ、意味ないからね!」
ただでさえ白龍香に痛めつけられた身体に、先程のカストルの攻撃も無事とは済まないダメージ。
足がふらつき、赤羽も自分の身体の限界を感じる。
「ハハッ!君を殺したら、次はカノープスとトゥバンだ!安心して先に逝ったお父さんの所に会いに行きなよ!」
「オマエが父を語るな…!」
赤羽はカストルを睨みつける。彼らによってどれ程の人間が傷つき、そして父がどれだけ無念だったか…。それは父の遺品の日記を読んで、痛い程分かった。
その日記の中には昔の知人との約束、力を充分に発揮出来ず自分の子供よりも年下の子供に頼らざるを得ない自分の無力さ、責任、娘との約束を反故にしてしまうこと、その苦悩を自分の子や仲間に押し付けてしまうことへの後悔が綴られていた。
その事を思えば、赤羽の闘志は益々燃え盛る。
「お前なんかに…!父さん…!私に力を!」
赤羽がそう叫ぶ。そして次の瞬間、赤羽の右目にある三つ目の眼帯の二つ目、青い瞳が光を放つ。
「何?」
あまりの眩しさにカストルが一瞬目を手で覆う。そしてカストルがすぐに手をどけると、そこには信じられない光景が拡がっていた。
「なんだと…!?」
そうカストルの目の前に広がっていたのは、数え切れない程大量の赤羽だった。
数百人の赤羽は刀を抜き取り、カストルへ迫る。
「クッ、だがそんな技でボクが倒せると思うなよ!」
カストルは叫ぶと、またもや腰に手をやり無数のヨーヨーを自身の周りに漂わせ、それが無数の刃の竜巻となって赤羽達を切り裂いていく。
そしてその刃の竜巻が静まると、アレだけ無数にいた赤羽の分身が消え、そこにはカストル一人だけが立っていた。
「ハァ……ゼェ……手こずらせてくれる……」
だが連続で大技を使ったことで、カストルも目に見えて体力を酷く消耗している。彼が一息つこうと肩の力を落としたその瞬間。横から赤羽が飛び出し、刀をカストルに突き出す。
「──読んでたよ。」
ニヤリ、とカストルは嗤い身を捻って反撃のヨーヨーを振る。わざと力を抜いて赤羽が仕掛けやすいタイミングを作ったと言う訳だ。
そして赤羽の身体を切り裂く。哀れ、赤羽の身体は真っ二つになり、そして──空中で溶けるように消えた。
「何ッ!?」
「でやァァァァァァァ!!」
何処からともなく気合いの雄叫びが聞こえ、素早くカストルは辺りを見回すが、赤羽の姿はどこにも見えない。
だが次の瞬間“見えない何か”がカストルの身体を袈裟斬りにする。それと同時に空気から滲み出るように赤羽が姿を現す。
「んなっ透明化…!?」
「はァァァァァァァ!」
驚きながらもカストルは反撃しようと右手の爪を赤羽に振るう。しかしそれよりも先に赤羽は振り下ろした刀を返す刀で振り上げカストルの右腕を切断する。
「うぉおぉぉぉォォッ!!?」
「これで!トドメ……ッ!」
赤羽が隙だらけのカストルの胸に刀を突き出そうとした瞬間。ガクッと赤羽と膝から力が抜ける。
今までの蓄積したダメージが限界を超えたせいだった。カストルは右腕を切断されながらも、その隙を見逃さず左腕の爪で赤羽の腕を弾いて、赤羽が堪らず倒れた拍子に離した刀を掴むと彼女に向ける。
「しまっ……!!」
「ハハッ!残念だったね!ホントに惜しかったケド、これで!終わりだよォォッ!」
カストルが嗤い、無防備に倒れる赤羽に刀を振り下ろそうとした瞬間。
何処からともなく飛んできた弾丸と羽根がカストルを貫いた。
「な…に…?」
カストルは信じられない、と言った顔で辺りを見回す。見れば瓦礫に隠れてボロボロの雪花と黒鳥がいた。
「い、生きていたのか…」
「…アタシ達をナメ過ぎよ。アンタ。」
「まぁ、無傷じゃすまなかったけどね…。」
カストルはポロリ、と刀を地面に落とす。
「ハァァッ!!」
赤羽は好機と言わんばかりに思い切り足を伸ばしてキックするように足裏をカストルに密着させる。
そして踵部分がカチリ、と音を立てた瞬間。踵の装甲からバァンという弾ける音と共に単発式のパイルバンカー“蛍火”が発射され、カストルを貫いた。
排出された空薬莢が地面に落ちる。それと同時にカストルは呻きながら、数歩下がる。
「くっ、フフッ、ふふふふふ。やるね。ボクを倒すなんて。褒めてあげるよ。」
「………。」
「でも、自分で言うのもアレだけど、ボクはツォディアの方でも弱い部類だからね……。残っている連中はボクより強い。今より確実に君達の勝算は薄くなる。……それでも、戦うのかい?」
カストルの問いに赤羽は起き上がって、カストルを見据えて答える。
「……戦うわ。どんなに勝算が少なくても。この命ある限り、戦う。」
「……いいね。キミ。多分もしボクが人間だったら惚れちゃってたかも……」
カストルは赤羽の答えに満足したのか、腕を広げて、仰々しく倒れる。
「君達の行く末を向こうで観戦させて貰うよ。せいぜい頑張って足掻きな。」
カストルは倒れると同時に爆発する。もうもうと天へと昇る煙を見ながら赤羽は呟いた。
「……満足そうにくたばるんじゃないわよ、シードゥスの癖に。」
黒鳥が黒翼から羽根を、雪花はライフルを構えてそれぞれカストルに向けて発砲する。
「フフッ中々やるね!」
だが、カストルはそれらをヨーヨーで弾いたり、身を捻って回避する。
さらにお返しとばかりに投げ返したヨーヨーが二人に襲いかかる。二人はそれらを回避しようとすると、次の瞬間ヨーヨーが目の前で爆発する。
「何ッ!?」
「きゃっ!?」
目の前で起こった爆発に二人は大きく吹き飛ばされて地面を転がる。
「フフッ、どうだい?今日はちょっと本気を出そうと思ってね……。ま、前戦った時よりは遥かに強いと思うよ?」
カストルはさらにヨーヨーを構えてククと余裕綽々と言った具合に笑う。
「クッ、やってくれる…!」
「って言うか、こっちもまだ本気出してないだけだし…!」
二人は立ち上がり、カストルを睨みつける。そして黒鳥が唸ると怪物形態に、雪花の顔を仮面が覆い、センサーアイが赤い光を鈍く放つ。
「へぇ…こりゃ楽しめそうだ……」
カストルが楽しげにヨーヨーを構えた瞬間。何処からともなく針がカストルに向けて飛んでくる。
「おっと。」
カストルはヨーヨーを使って針型爆弾を弾いて爆発させる。
その攻撃には全員が感づく。
「あの攻撃…!」
「へぇ……、成る程。そうだった。バカな奴程諦めが悪いんだっけ……。」
全員の視線の先には、全身擦り傷だらけ服も所々破れた、それでいてその目にはギラギラとした戦闘の意思を感じる赤羽がいた。
「……戻って来たわよ。クソ野郎。」
「赤羽!!スゴイ傷……!」
「奴等に相当やられたのね…。服も、ボロボロだし…」
二人の言葉に赤羽は一瞬一瞥し、何故か目を逸らした後。
「……そうね。まぁ、そんなところよ。」
実は龍香にぶん投げられた後、アンカーを使って上手いこと着地しようとしたしたがルクバトに切断されていたのを失念していたため上手いこと着地出来ず、藪に突っ込んでボロボロになったのだが赤羽は墓までこの事を持ってくことにした。
(まぁ、実際に殴られたし嘘は言ってないわ…。)
「まぁ何にせよ主役は揃ったって訳ね。」
赤羽を交え、黒鳥、雪花の三人がカストルと対峙する。
「ンフフ……三対一、まぁいいハンデかな。」
カストルはそう言うと、三人に攻撃を仕掛ける。指を器用に動かすと六枚に増えたヨーヨーが孤を描いて三人に襲いかかる。
「気をつけて!あれ、爆発するわ!」
「私が何とかする!」
黒鳥はそう言うと大きくなった翼を拡げ、はためかせるともはや竜巻のごとき突風が発生し、ヨーヨーを全て吹き飛ばす。
「うげげっ、それアリ?」
カストルが驚くが、その間に赤羽と雪花が間を詰めていた。そしてカストルに刀とチェーンソー“マタンII”が襲いかかる。カストルはそれをヨーヨーを使って防ぐ。
「ハッ、ボクに接近戦を挑むとは!」
カストルはヨーヨーを扱いつつ、二人を捌きつつ反撃をしようと腕を振るが。
赤羽と雪花は前戦った時とは違いその反撃を避け、さらに攻め立てる。
「あら?あらあら?もしかして…強くなってる?」
「そう、よ!」
二人が大きく攻め立てる。カストルが少し余裕なさげになってきた瞬間。
「二人とも、離れろ!」
黒鳥は飛び上がって翼を使って回転しながら、あの父との戦いの中電撃を受けたことで帯電する体質となった身体に電気を纏わせて嘴を鋭く尖らせカストルに突っ込む。
「トロンバダリア•フルミーネ!!」
「ハハッ!八重の巣掻き!!」
もはや電気を纏った一つの弾丸と化した黒鳥をカストルは両手のヨーヨーをさらに増やし、八枚のヨーヨーが刃を立て黒鳥を迎撃する。
強烈な爆発が起き、黒鳥は吹っ飛びカストルも大きく後ずさる。
「ぐうっ」
「ハハッ……!スゴイねぇ君…!流石は自分のお父さんを殺して得た力だネ…!!」
吹き飛ばされても憎まれ口を絶やさないカストルに赤羽が突っ込む。刀を構え、突っ込む赤羽にカストルは迎撃のためにヨーヨーを持った手を振るう。その瞬間。
「今よ!」
カストルの攻撃は赤羽を振り抜いた。いや、厳密にはすり抜けたのだ。
「これは、サダルメルクの…!?」
カストルが気づくと身を捻らせる。しかし、雪花の斬撃が身体を薄く斬る。
「チッ。」
「おおっ。危ない!今のは危なかったよ!」
カストルはそう言って地面を大きく蹴ると両手のヨーヨーを合わせると、巨大なヨーヨーになり三人に襲いかかる。
「潰れちゃいなぁ!一重の鶴瓶落とし!」
「何のぉ!!」
雪花は“マタンII”の柄を引っ張り、刃に青い光を纏わせると巨大なヨーヨーを受け止める。
「うおおおおおおおおお!!」
雪花が吼える。火花が散り、しばらくの間拮抗していたがヨーヨーをチェーンソーが火花と轟音を上げながら切り裂いた。
「ウッソ!?」
「ッハァっ……!!」
どうやら相当自信のあった必殺技だったらしく、雪花に破られたのはショックだったようだ。しかし、その一撃は雪花にとってもタダで迎撃出来た訳ではないようで、雪花は体力を消耗し切ってしまったのか膝をつく。
「赤羽!」
赤羽は刀を抜くとカストルに迫る。
「これでトドメ!」
赤羽が刀を突き出した瞬間。カストルの目が鈍く輝く。
「そうは……いかないよ!」
次の瞬間。カストルは腰に手をやり、ヨーヨーを取り出すと、ヨーヨーを自分の周りを漂わせる。そして、それは段々と数を増やしていき……そしてそれは無数の刃となり三人に襲いかかる。
「褒めてやるよ!このボクの最大技を出させたんだからな!幾数重•乱桜!!」
無数の刃が地面に炸裂し、爆発を起こす。まさしく嵐のような攻撃が三人に炸裂する。
「うおおおおお!!?」
「きゃっ!?」
「何ッ!?」
あまりの爆発の凄まじさに三人は離れ、爆炎が辺りを包む。
しばらく爆発が続いた後、もうもうと煙が巻き上がる。そしてその煙が晴れると、そこには雪花の装甲の一部と、黒鳥のコートの一部。そして元よりボロボロの赤羽がそこにいた。
「へぇ…君は生き残ったんだ。他二人は死体すら残らずしんじゃったかな。」
カストルが軽口を叩くが、肩で息をしておりかなり体力を消耗しているようだ。
「……当然よ。私は父の仇を取る。そのための力、そのために私は戦ってきたの。」
「君が?ルクバトに手も足も出なかったのに?」
カストルは煽るように言う。しかし、赤羽の目は一切の気後れも怯みもせず真っ正面からカストルを見据えて、言った。
「……だから何?今負けても、次に私は勝つわ。私はまだ生きている!生きている限り勝つ機会がある!生きている限り、私は負けてない!」
赤羽のその言葉に、カストルはふむ。と唸ると。
「なら、君は今日負けるよ。君は今から……ボクに殺されるんだからね!」
カストルがそう叫ぶとヨーヨーを赤羽に投げつける。赤羽は痛む身体に鞭を打って避ける。そして反撃のために太腿のホルダーから“椿”を取り出そうとして、気づく。
(くっ、弾切れ…!?)
「ハハッ、あの爆発する針は弾切れかい!?それに、君の幻は既にタネが割れているんだよ!」
赤羽はカストルのヨーヨーを避けるだけに精一杯だ。
「君の幻は幻覚や、出現位置を絞るものじゃない!君自身から幻を射出するタイプだ!つまり、ボクの視界を塞ぐ方法がない限り君の幻は意味をなさない!幻の出るところを見られちゃ、意味ないからね!」
ただでさえ白龍香に痛めつけられた身体に、先程のカストルの攻撃も無事とは済まないダメージ。
足がふらつき、赤羽も自分の身体の限界を感じる。
「ハハッ!君を殺したら、次はカノープスとトゥバンだ!安心して先に逝ったお父さんの所に会いに行きなよ!」
「オマエが父を語るな…!」
赤羽はカストルを睨みつける。彼らによってどれ程の人間が傷つき、そして父がどれだけ無念だったか…。それは父の遺品の日記を読んで、痛い程分かった。
その日記の中には昔の知人との約束、力を充分に発揮出来ず自分の子供よりも年下の子供に頼らざるを得ない自分の無力さ、責任、娘との約束を反故にしてしまうこと、その苦悩を自分の子や仲間に押し付けてしまうことへの後悔が綴られていた。
その事を思えば、赤羽の闘志は益々燃え盛る。
「お前なんかに…!父さん…!私に力を!」
赤羽がそう叫ぶ。そして次の瞬間、赤羽の右目にある三つ目の眼帯の二つ目、青い瞳が光を放つ。
「何?」
あまりの眩しさにカストルが一瞬目を手で覆う。そしてカストルがすぐに手をどけると、そこには信じられない光景が拡がっていた。
「なんだと…!?」
そうカストルの目の前に広がっていたのは、数え切れない程大量の赤羽だった。
数百人の赤羽は刀を抜き取り、カストルへ迫る。
「クッ、だがそんな技でボクが倒せると思うなよ!」
カストルは叫ぶと、またもや腰に手をやり無数のヨーヨーを自身の周りに漂わせ、それが無数の刃の竜巻となって赤羽達を切り裂いていく。
そしてその刃の竜巻が静まると、アレだけ無数にいた赤羽の分身が消え、そこにはカストル一人だけが立っていた。
「ハァ……ゼェ……手こずらせてくれる……」
だが連続で大技を使ったことで、カストルも目に見えて体力を酷く消耗している。彼が一息つこうと肩の力を落としたその瞬間。横から赤羽が飛び出し、刀をカストルに突き出す。
「──読んでたよ。」
ニヤリ、とカストルは嗤い身を捻って反撃のヨーヨーを振る。わざと力を抜いて赤羽が仕掛けやすいタイミングを作ったと言う訳だ。
そして赤羽の身体を切り裂く。哀れ、赤羽の身体は真っ二つになり、そして──空中で溶けるように消えた。
「何ッ!?」
「でやァァァァァァァ!!」
何処からともなく気合いの雄叫びが聞こえ、素早くカストルは辺りを見回すが、赤羽の姿はどこにも見えない。
だが次の瞬間“見えない何か”がカストルの身体を袈裟斬りにする。それと同時に空気から滲み出るように赤羽が姿を現す。
「んなっ透明化…!?」
「はァァァァァァァ!」
驚きながらもカストルは反撃しようと右手の爪を赤羽に振るう。しかしそれよりも先に赤羽は振り下ろした刀を返す刀で振り上げカストルの右腕を切断する。
「うぉおぉぉぉォォッ!!?」
「これで!トドメ……ッ!」
赤羽が隙だらけのカストルの胸に刀を突き出そうとした瞬間。ガクッと赤羽と膝から力が抜ける。
今までの蓄積したダメージが限界を超えたせいだった。カストルは右腕を切断されながらも、その隙を見逃さず左腕の爪で赤羽の腕を弾いて、赤羽が堪らず倒れた拍子に離した刀を掴むと彼女に向ける。
「しまっ……!!」
「ハハッ!残念だったね!ホントに惜しかったケド、これで!終わりだよォォッ!」
カストルが嗤い、無防備に倒れる赤羽に刀を振り下ろそうとした瞬間。
何処からともなく飛んできた弾丸と羽根がカストルを貫いた。
「な…に…?」
カストルは信じられない、と言った顔で辺りを見回す。見れば瓦礫に隠れてボロボロの雪花と黒鳥がいた。
「い、生きていたのか…」
「…アタシ達をナメ過ぎよ。アンタ。」
「まぁ、無傷じゃすまなかったけどね…。」
カストルはポロリ、と刀を地面に落とす。
「ハァァッ!!」
赤羽は好機と言わんばかりに思い切り足を伸ばしてキックするように足裏をカストルに密着させる。
そして踵部分がカチリ、と音を立てた瞬間。踵の装甲からバァンという弾ける音と共に単発式のパイルバンカー“蛍火”が発射され、カストルを貫いた。
排出された空薬莢が地面に落ちる。それと同時にカストルは呻きながら、数歩下がる。
「くっ、フフッ、ふふふふふ。やるね。ボクを倒すなんて。褒めてあげるよ。」
「………。」
「でも、自分で言うのもアレだけど、ボクはツォディアの方でも弱い部類だからね……。残っている連中はボクより強い。今より確実に君達の勝算は薄くなる。……それでも、戦うのかい?」
カストルの問いに赤羽は起き上がって、カストルを見据えて答える。
「……戦うわ。どんなに勝算が少なくても。この命ある限り、戦う。」
「……いいね。キミ。多分もしボクが人間だったら惚れちゃってたかも……」
カストルは赤羽の答えに満足したのか、腕を広げて、仰々しく倒れる。
「君達の行く末を向こうで観戦させて貰うよ。せいぜい頑張って足掻きな。」
カストルは倒れると同時に爆発する。もうもうと天へと昇る煙を見ながら赤羽は呟いた。
「……満足そうにくたばるんじゃないわよ、シードゥスの癖に。」
「くっ、」
「ヒャァハッ、アハハハハッハハッ!!」
一方黄の翼と白の翼をはためかせ、龍香と白龍香は矢を撃ち合っていた。
白龍香の苛烈な攻撃に龍香は徐々に追い詰められる。
《龍香!》
「くっ……しょうがないけど!」
龍香は矢を構えると、ビュンビュンと縦横無尽に飛び回る白龍香に狙いを定める。
「ハァァァァァァァァ!!」
白龍香の放った矢が龍香の頬を掠める。だが、龍香は微動だにせず、逆に白龍香に照準を絞った。
「アンガー…アンカー!!」
気合いの叫びと共に放たれたその一撃は空を駆け、見事白龍香へと直撃する。
「ウグゥ!!?」
「やった!」
《よしっ、アイツらと合流しに行くぞ!》
「うん!」
必殺技が直撃し、白龍香が墜落するのを見た龍香はすぐさま踵を返して赤羽達と合流すべく飛翔する。
一方の墜落した白龍香は膝をついて頭を振って持ち直すと何処かへと飛んでいく龍香を睨む。
「このっ、誰が逃すかっての……ッ!?」
飛び立つ龍香を追いかけようとした白龍香の全身から力が抜け、地面に倒れる。何事かと白龍香が自身の身体を見ると指がひび割れ、徐々に身体が崩壊していく。それを見た白龍香は青ざめ、悪態をつく。
「クソッ、あのバカシードゥス!!もうやられたの!?」
白龍香は何とかして身体の崩壊を食い止めようと、もがくが非情にも身体の崩壊は依然として止まらない。
「うそ、ウソ、嘘ッ!嘘でしょう!?私はまだ何もしてないなのにッ……!?」
絶望し、喚く。怨嗟の言葉を喚きながら、白龍香の存在が誰に知られることもなく消えようとしていた。
白龍香も半ば諦めかけたその瞬間。一瞬底冷えするような感覚がしたと同時にピタッと。身体の崩壊が止まった。
「へ……?」
「ほう。随分と精巧に作られていますね。」
白龍香が顔を上げると、そこには白い鎧、紫の仮面をした怪物、プロウフがいた。
「あ、アンタは…?」
「私の名はプロウフ。貴方にはまだ役立って貰う必要がありますので……身体の崩壊を“凍結”させて頂きました。」
プロウフはそう言うと屈み込んで白龍香に手を差し出す。
「これから、貴方は私の命令に従って貰います。拒否しても構いませんが、勿論その場合は凍結を解除するのでお忘れなく。」
「……それじゃあ選択肢は一つしかないじゃない。」
白龍香は笑うとプロウフの手を取る。
「いいわ。アイツを倒すためなら、あんたの命令でもなんでも従ってやるわ。」
「契約成立、ですね。」
二人は手を取りながら立ち上がる。お互いの目的のため、目の前の相手を利用するために。
「ヒャァハッ、アハハハハッハハッ!!」
一方黄の翼と白の翼をはためかせ、龍香と白龍香は矢を撃ち合っていた。
白龍香の苛烈な攻撃に龍香は徐々に追い詰められる。
《龍香!》
「くっ……しょうがないけど!」
龍香は矢を構えると、ビュンビュンと縦横無尽に飛び回る白龍香に狙いを定める。
「ハァァァァァァァァ!!」
白龍香の放った矢が龍香の頬を掠める。だが、龍香は微動だにせず、逆に白龍香に照準を絞った。
「アンガー…アンカー!!」
気合いの叫びと共に放たれたその一撃は空を駆け、見事白龍香へと直撃する。
「ウグゥ!!?」
「やった!」
《よしっ、アイツらと合流しに行くぞ!》
「うん!」
必殺技が直撃し、白龍香が墜落するのを見た龍香はすぐさま踵を返して赤羽達と合流すべく飛翔する。
一方の墜落した白龍香は膝をついて頭を振って持ち直すと何処かへと飛んでいく龍香を睨む。
「このっ、誰が逃すかっての……ッ!?」
飛び立つ龍香を追いかけようとした白龍香の全身から力が抜け、地面に倒れる。何事かと白龍香が自身の身体を見ると指がひび割れ、徐々に身体が崩壊していく。それを見た白龍香は青ざめ、悪態をつく。
「クソッ、あのバカシードゥス!!もうやられたの!?」
白龍香は何とかして身体の崩壊を食い止めようと、もがくが非情にも身体の崩壊は依然として止まらない。
「うそ、ウソ、嘘ッ!嘘でしょう!?私はまだ何もしてないなのにッ……!?」
絶望し、喚く。怨嗟の言葉を喚きながら、白龍香の存在が誰に知られることもなく消えようとしていた。
白龍香も半ば諦めかけたその瞬間。一瞬底冷えするような感覚がしたと同時にピタッと。身体の崩壊が止まった。
「へ……?」
「ほう。随分と精巧に作られていますね。」
白龍香が顔を上げると、そこには白い鎧、紫の仮面をした怪物、プロウフがいた。
「あ、アンタは…?」
「私の名はプロウフ。貴方にはまだ役立って貰う必要がありますので……身体の崩壊を“凍結”させて頂きました。」
プロウフはそう言うと屈み込んで白龍香に手を差し出す。
「これから、貴方は私の命令に従って貰います。拒否しても構いませんが、勿論その場合は凍結を解除するのでお忘れなく。」
「……それじゃあ選択肢は一つしかないじゃない。」
白龍香は笑うとプロウフの手を取る。
「いいわ。アイツを倒すためなら、あんたの命令でもなんでも従ってやるわ。」
「契約成立、ですね。」
二人は手を取りながら立ち上がる。お互いの目的のため、目の前の相手を利用するために。
「クッ!」
「……はっ!」
龍賢とアルレシャが槍を打ち合う。互いが槍を振るう度に火花が散り、剣戟の音が鳴る。
「くっ…!」
そんな中、龍賢の表情が曇る。打ち合う度に龍賢の繰り出す技を読んでいるかのように、徐々にアルレシャの反撃が龍賢の身体を傷つける。
打ち始めた当初は互角だった戦いも、徐々に追い込まれていくのを龍賢は感じていた。今も龍賢が繰り出した槍を受け流すと、アルレシャが腕を振るい、腕の刃のような切れ味のヒレが龍賢の薄皮を削ぐ。
《おいおい何やってんだ!アイツのペースに持ち込まれてんぞ!》
「分かってはいるが…!」
焦る龍賢。そしてまたもや鍔迫り合いになった瞬間、ボソッとアルレシャが呟く。
「お前の動きは昔から見てきた。──二年前、お前が“彼女”を守れなかったあの時から、な。」
「ッ!?」
アルレシャの言葉に龍賢は目を見開くと、思い切りの力を込めて槍を振り払う。
アルレシャもそれを合図に後ろへと後退する。そんなアルレシャに龍賢は問いかける。
「貴様ッ!アルレシャじゃないな!?誰だ!?」
「流石に気づくか。気づくよな。」
アルレシャ?がそう言うと、彼の身体が水のように揺らいで崩れたかと思うと、中から薄紫色の長い髪を一つに纏めた青年が現れる。
その青年を見た龍賢の目が驚愕のあまり、さらに見開かられる。
「お、お前は……」
「地獄の底から、戻ってきたぞ…。龍賢。」
そう、そこには龍賢の従兄弟、龍斗の姿があった。龍賢が困惑している中、龍斗の中のアルレシャが龍斗に声をかける。
《龍斗、カストルの野郎がやられやがった!口惜しいがここは一度退くぞ。》
「……そう言う訳だ。まぁ今日は顔見せのつもりだったからいいんだが。」
龍斗はそう言って指をパチンと弾くと、彼の身体が地面から噴き出た水に包まれる。そしてその姿完全に見えなくなる寸前、彼は龍賢に言う。
「次会う時を楽しみにしていろ、龍賢。」
「なっ……待てっ龍斗!」
そして龍賢が駆け寄るも先に水の勢いが無くなり全て地面に落ちると、そこには誰もいなかった。
《成る程……あの野郎アイツと融合してやがったのか。だから姿が変わって……》
「龍斗……。」
龍賢はジッと、龍斗が消えた場所の地面の染みを見つめるしかなかったのだった。
「……はっ!」
龍賢とアルレシャが槍を打ち合う。互いが槍を振るう度に火花が散り、剣戟の音が鳴る。
「くっ…!」
そんな中、龍賢の表情が曇る。打ち合う度に龍賢の繰り出す技を読んでいるかのように、徐々にアルレシャの反撃が龍賢の身体を傷つける。
打ち始めた当初は互角だった戦いも、徐々に追い込まれていくのを龍賢は感じていた。今も龍賢が繰り出した槍を受け流すと、アルレシャが腕を振るい、腕の刃のような切れ味のヒレが龍賢の薄皮を削ぐ。
《おいおい何やってんだ!アイツのペースに持ち込まれてんぞ!》
「分かってはいるが…!」
焦る龍賢。そしてまたもや鍔迫り合いになった瞬間、ボソッとアルレシャが呟く。
「お前の動きは昔から見てきた。──二年前、お前が“彼女”を守れなかったあの時から、な。」
「ッ!?」
アルレシャの言葉に龍賢は目を見開くと、思い切りの力を込めて槍を振り払う。
アルレシャもそれを合図に後ろへと後退する。そんなアルレシャに龍賢は問いかける。
「貴様ッ!アルレシャじゃないな!?誰だ!?」
「流石に気づくか。気づくよな。」
アルレシャ?がそう言うと、彼の身体が水のように揺らいで崩れたかと思うと、中から薄紫色の長い髪を一つに纏めた青年が現れる。
その青年を見た龍賢の目が驚愕のあまり、さらに見開かられる。
「お、お前は……」
「地獄の底から、戻ってきたぞ…。龍賢。」
そう、そこには龍賢の従兄弟、龍斗の姿があった。龍賢が困惑している中、龍斗の中のアルレシャが龍斗に声をかける。
《龍斗、カストルの野郎がやられやがった!口惜しいがここは一度退くぞ。》
「……そう言う訳だ。まぁ今日は顔見せのつもりだったからいいんだが。」
龍斗はそう言って指をパチンと弾くと、彼の身体が地面から噴き出た水に包まれる。そしてその姿完全に見えなくなる寸前、彼は龍賢に言う。
「次会う時を楽しみにしていろ、龍賢。」
「なっ……待てっ龍斗!」
そして龍賢が駆け寄るも先に水の勢いが無くなり全て地面に落ちると、そこには誰もいなかった。
《成る程……あの野郎アイツと融合してやがったのか。だから姿が変わって……》
「龍斗……。」
龍賢はジッと、龍斗が消えた場所の地面の染みを見つめるしかなかったのだった。
To be continued……
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