(悪魔な私、犬なあいつ)
更新日:2020/03/27 Fri 22:33:44
普通に泣くことは許されなかった。
「泣き止みなさいよ!本当うるさい!」
無邪気に笑う事なんか許されなかった。
「なに笑ってんだ気色悪い!酒だ!酒持ってこい!」
生きることすら望まれていないのかもしれない。
「あんたなんか生まなきゃよかった!」
「お前なんかうちの子じゃない!出ていけ」
叩かれて、引っ張られて、突き飛ばされた身体を庇いながら、私は家を出た。
こう言うことはよくある。何度も何度もあった。私は両親の怒りが収まるまで、家の外で待つことにした。二人の声がする。喧嘩の内容は私のことじゃない。あぁ、雨が止んでいてよかった。
「泣き止みなさいよ!本当うるさい!」
無邪気に笑う事なんか許されなかった。
「なに笑ってんだ気色悪い!酒だ!酒持ってこい!」
生きることすら望まれていないのかもしれない。
「あんたなんか生まなきゃよかった!」
「お前なんかうちの子じゃない!出ていけ」
叩かれて、引っ張られて、突き飛ばされた身体を庇いながら、私は家を出た。
こう言うことはよくある。何度も何度もあった。私は両親の怒りが収まるまで、家の外で待つことにした。二人の声がする。喧嘩の内容は私のことじゃない。あぁ、雨が止んでいてよかった。
「酷い顔」
地面に出来た水溜まりに、自分の顔が写ってる。
あの人達に叩かれて出来た腫れ、滲み出た血、浮かんだ涙。
私は乱暴に涙をぬぐい、水溜まりを踏みつけた。泣いたら駄目だ。また叩かれてしまう。
私は弱い自分が嫌いだ。直ぐに間違ったことをしてしまう自分が。
いい子供になりたい。愛されて、友達のいる子供に
地面に出来た水溜まりに、自分の顔が写ってる。
あの人達に叩かれて出来た腫れ、滲み出た血、浮かんだ涙。
私は乱暴に涙をぬぐい、水溜まりを踏みつけた。泣いたら駄目だ。また叩かれてしまう。
私は弱い自分が嫌いだ。直ぐに間違ったことをしてしまう自分が。
いい子供になりたい。愛されて、友達のいる子供に
「あれ、人間さんなんだよ。こんな時間に子供の人間さんがいるなんて珍しいんだよ!」
突然聞こえた声に、私はドキッとして固まった。
こんな傷だらけの私、人に見られたって知られたらまた叩かれる……!
何でもないって言わなきゃ!
私は辺りを見回しながら声の主を探した。
「犬……?」
声の主の飼い犬だろうか?リードが付いていないので、野犬なのかもしれない。
犬は苦手だ。獰猛だし、鳴き声がうるさい。私が思わず後ずさると、犬は一歩近づいてきた。私はまた一歩下がる。犬が一歩近づく。
「な、なによあんた」
私は不気味に思い、そう呟いた。まるで、人間のように考えてるみたい……
その次の瞬間、驚くことが起こった。犬が二本足で立ち上がり、言葉を喋りだしたのだ。
「わたしはだよロリ犬だよ!人間さん、怪我大丈夫?」
「な……」
驚いてそれ以上声も出ない私に、犬はスタスタと近づいてきた。二足歩行で。私の距離が足10個分くらいになると急に立ち止まって……
「じゃーん!」
一瞬目が眩むと、目の前には青いマフラーを着けた女の子が立っていた。
「あ、悪魔…?怪物…?私が悪い子供だから食べに来たの……?」
声が震えてしまった。でも、情けないなんて思えないほど怖い。犬が歩いて喋って、挙げ句の果てには人間になるなんて普通じゃあり得ない。
女の子が微笑んだ。まるで私を安心させようとしているみたい。
「私は…なんだろう、妖怪?人じゃないけど、人間さんの味方だよ!」
突然聞こえた声に、私はドキッとして固まった。
こんな傷だらけの私、人に見られたって知られたらまた叩かれる……!
何でもないって言わなきゃ!
私は辺りを見回しながら声の主を探した。
「犬……?」
声の主の飼い犬だろうか?リードが付いていないので、野犬なのかもしれない。
犬は苦手だ。獰猛だし、鳴き声がうるさい。私が思わず後ずさると、犬は一歩近づいてきた。私はまた一歩下がる。犬が一歩近づく。
「な、なによあんた」
私は不気味に思い、そう呟いた。まるで、人間のように考えてるみたい……
その次の瞬間、驚くことが起こった。犬が二本足で立ち上がり、言葉を喋りだしたのだ。
「わたしはだよロリ犬だよ!人間さん、怪我大丈夫?」
「な……」
驚いてそれ以上声も出ない私に、犬はスタスタと近づいてきた。二足歩行で。私の距離が足10個分くらいになると急に立ち止まって……
「じゃーん!」
一瞬目が眩むと、目の前には青いマフラーを着けた女の子が立っていた。
「あ、悪魔…?怪物…?私が悪い子供だから食べに来たの……?」
声が震えてしまった。でも、情けないなんて思えないほど怖い。犬が歩いて喋って、挙げ句の果てには人間になるなんて普通じゃあり得ない。
女の子が微笑んだ。まるで私を安心させようとしているみたい。
「私は…なんだろう、妖怪?人じゃないけど、人間さんの味方だよ!」
「私の味方……?」
「そうだよ人間さん。……近くに行ってもいいかな?」
私は薄く笑った。そうか、これは夢だ。
「…別に」
「ありがとうなんだよ」
犬はそう言って、私の目の前まで来た。
それで、次はなにするの?その手で私を殴る?鋭い牙で噛みつく?こんな夢慣れっこだ。今まで何度も見てきた。こんな変な人は初めてだけど。
見るのは大抵両親の夢。両親が優しい夢、優しい両親が笑いながら私を殴る夢、いつだって最後は殴られるんだ。
犬は、私の様子を見て顔をしかめる。歪んで腫れ物だらけの醜い私にビックリしたのか?
鼻で笑おうとした瞬間、また信じられない事が起きた。
犬が、私を抱き締めてきたのだ。
「え……」
私は突然の事にビックリした。夢であっても、他人にこんなことされたのは初めてだ。
「大丈夫なんだよ…」
犬が苦しそうに呟いた。
「私は夢でも幻でも無いんだよ。だから、安心するんだよ」
自分を包む温かい腕…夢じゃないみたいだ。
「なによ…あんた」
私は声を絞り出した。気を張らないと、色々な感情で震えてしまいそうだ。
「……変なやつ」
「そうだよ人間さん。……近くに行ってもいいかな?」
私は薄く笑った。そうか、これは夢だ。
「…別に」
「ありがとうなんだよ」
犬はそう言って、私の目の前まで来た。
それで、次はなにするの?その手で私を殴る?鋭い牙で噛みつく?こんな夢慣れっこだ。今まで何度も見てきた。こんな変な人は初めてだけど。
見るのは大抵両親の夢。両親が優しい夢、優しい両親が笑いながら私を殴る夢、いつだって最後は殴られるんだ。
犬は、私の様子を見て顔をしかめる。歪んで腫れ物だらけの醜い私にビックリしたのか?
鼻で笑おうとした瞬間、また信じられない事が起きた。
犬が、私を抱き締めてきたのだ。
「え……」
私は突然の事にビックリした。夢であっても、他人にこんなことされたのは初めてだ。
「大丈夫なんだよ…」
犬が苦しそうに呟いた。
「私は夢でも幻でも無いんだよ。だから、安心するんだよ」
自分を包む温かい腕…夢じゃないみたいだ。
「なによ…あんた」
私は声を絞り出した。気を張らないと、色々な感情で震えてしまいそうだ。
「……変なやつ」
「ムム!」
あぁ、あの人が呼んでる。行かなきゃ。私は犬の腕の中でこう思った。
行きたくない。
「行かないでいいんだよ?」
犬がそう囁いて、でも私は首を降った。
「行くよ、行かなきゃあの人酷いから」
「そう……」
私は初めて、自分から他人を抱き締めた。
「ありがとう、優しい夢」
私は駆け出す。夢は名残惜しげに一声鳴いた。
あぁ、あの人が呼んでる。行かなきゃ。私は犬の腕の中でこう思った。
行きたくない。
「行かないでいいんだよ?」
犬がそう囁いて、でも私は首を降った。
「行くよ、行かなきゃあの人酷いから」
「そう……」
私は初めて、自分から他人を抱き締めた。
「ありがとう、優しい夢」
私は駆け出す。夢は名残惜しげに一声鳴いた。
「あぁムム、ごめんね、頭に血がのぼって」
お母さんが私にガーゼを押し当てる。でも、私の心配をしてる訳じゃない。介抱する自分に酔っているだけだ。私にはわかる。
「ねえお母さん」
ほら、私が少しでも声を出すとあからさまに不機嫌になる。
お母さんが欲しいものは娘なんかじゃない。お母さんに都合のいい人形だ。
「……なに?」
不機嫌になりながらも、話は聞いてくれるようだ。私は、結果は分かっていながらも聞いてしまった。
「犬って、立って歩いて喋って抱き締めたりしないよね?」
一瞬世界が揺れて、気が付いたら地面に叩きつけられてた。
怖い顔したあの人が、私を見下ろす。
「犬が!喋るわけ!ないでしょ!この!大酒飲みの!ろくでなしの!小娘ッ!」
私のお腹を踏みつける。空気が吸えなくなった。まずい。
「うぐ……お、かぁさ…あぁ……」
「この!バカ!アホ!マヌケ!」
いけない事を聞いた私は、お腹の痛みと引き換えに、あれは……あの犬は現実なんだと知ることができた。
お母さんが私にガーゼを押し当てる。でも、私の心配をしてる訳じゃない。介抱する自分に酔っているだけだ。私にはわかる。
「ねえお母さん」
ほら、私が少しでも声を出すとあからさまに不機嫌になる。
お母さんが欲しいものは娘なんかじゃない。お母さんに都合のいい人形だ。
「……なに?」
不機嫌になりながらも、話は聞いてくれるようだ。私は、結果は分かっていながらも聞いてしまった。
「犬って、立って歩いて喋って抱き締めたりしないよね?」
一瞬世界が揺れて、気が付いたら地面に叩きつけられてた。
怖い顔したあの人が、私を見下ろす。
「犬が!喋るわけ!ないでしょ!この!大酒飲みの!ろくでなしの!小娘ッ!」
私のお腹を踏みつける。空気が吸えなくなった。まずい。
「うぐ……お、かぁさ…あぁ……」
「この!バカ!アホ!マヌケ!」
いけない事を聞いた私は、お腹の痛みと引き換えに、あれは……あの犬は現実なんだと知ることができた。
「……なんでいるの?」
次に家から放り出された時も、その次に家から叩き出された時も、その犬は私の目の前にやって来た。
「君が心配だからだよ」
そんな事、初めて言われた
「そう……」
犬は私に近づいて、傷口を舐めた。
「ちょ、ちょっと」
「こうすると、傷の治りが早くなるんだよ」
犬はそう言って、私の腕や足を舐める。
「そ、そうは言っても……くすぐった…」
二の腕や脹ら脛に走る湿った肉の感触に、私はムズムズし、堪えきれず、生理的な笑い声をあげてしまった。
私の声に気をよくしたのか、犬は何度も舐めてきた。
「もういい!もういいって!」
私は恥ずかしくて顔を真っ赤にし、犬の顔を押し退けた。
「えへへ、ごめんなさいだよ」
だよロリ犬は何故か嬉しそうに笑い、私の横にぴったりくっついた。
「ねえ、のじゃロリ犬」
「……?どうしたんだよ?」
「一応、ありがと」
犬は嬉しそうな笑顔で頷いた。
「うん!」
こいつの介抱は、変な感じだけど、母親のするそれとは何か違った気がした。
次に家から放り出された時も、その次に家から叩き出された時も、その犬は私の目の前にやって来た。
「君が心配だからだよ」
そんな事、初めて言われた
「そう……」
犬は私に近づいて、傷口を舐めた。
「ちょ、ちょっと」
「こうすると、傷の治りが早くなるんだよ」
犬はそう言って、私の腕や足を舐める。
「そ、そうは言っても……くすぐった…」
二の腕や脹ら脛に走る湿った肉の感触に、私はムズムズし、堪えきれず、生理的な笑い声をあげてしまった。
私の声に気をよくしたのか、犬は何度も舐めてきた。
「もういい!もういいって!」
私は恥ずかしくて顔を真っ赤にし、犬の顔を押し退けた。
「えへへ、ごめんなさいだよ」
だよロリ犬は何故か嬉しそうに笑い、私の横にぴったりくっついた。
「ねえ、のじゃロリ犬」
「……?どうしたんだよ?」
「一応、ありがと」
犬は嬉しそうな笑顔で頷いた。
「うん!」
こいつの介抱は、変な感じだけど、母親のするそれとは何か違った気がした。
だよロリ犬と出会って数ヶ月。
私は、だんだん、家の外に出されるのも悪くないと思えてきた。
傷が酷ければ舐めてくれるし、雪が降ってれば抱き締めて暖めてくれる。
だよロリ犬がいると……結構……安心できた。
私がお礼をいうたびに、嬉しそうな顔をするあいつを見て、気が付くと自然に笑っていた。
私は、だんだん、家の外に出されるのも悪くないと思えてきた。
傷が酷ければ舐めてくれるし、雪が降ってれば抱き締めて暖めてくれる。
だよロリ犬がいると……結構……安心できた。
私がお礼をいうたびに、嬉しそうな顔をするあいつを見て、気が付くと自然に笑っていた。
終わりは唐突に訪れた。
「明日引っ越すぞ」
父親の声に、初めて意見してしまった。ついうっかり、物の弾みだ。
「なんで…?」
「あ…?」
「なんで引っ越すの?お仕事は…?お金は?家だってどうするの?」
直ぐに鉄拳が飛んでくる。
「がッ!」
拳が顔にもろに当たって、身体が壁に打ち付けられた。
「うるせぇ…お前は黙って従ってればいいんだよ!」
父さんの無駄に大きな手が、私のボサボサの髪を掴んで持ち上げる。
「分かったか?くそ売女のくそ娘」
「明日引っ越すぞ」
父親の声に、初めて意見してしまった。ついうっかり、物の弾みだ。
「なんで…?」
「あ…?」
「なんで引っ越すの?お仕事は…?お金は?家だってどうするの?」
直ぐに鉄拳が飛んでくる。
「がッ!」
拳が顔にもろに当たって、身体が壁に打ち付けられた。
「うるせぇ…お前は黙って従ってればいいんだよ!」
父さんの無駄に大きな手が、私のボサボサの髪を掴んで持ち上げる。
「分かったか?くそ売女のくそ娘」
生まれてから何度も閉め出されてたけど、自分から外に飛び出すのは初めてだった。
「ムム…?どうしたんだよ?」
直ぐにだよロリ犬がやって来た。
私は何も言わず、だよロリ犬を抱き締めた。
「ど、どうしたんだよ?!」
だよロリ犬は心配そうに、でも嬉しそうに言う。
「引っ越し…」
「え?」
「引っ越しするんだって」
私は顔をだよロリ犬の胸に擦り付けながら言った。
「だから、これも今日でおしまい」
私は、自分の頬に涙が伝っている事に気が付いた。
でも気にしなかった。だよロリ犬なら、私が泣いても笑っても気にしないって、そう……思ったから。
だよロリ犬は私が落ち着くまでぎゅっとハグしてくれていた。
「引っ越し…する?」
「うん、だからもう会えない」
「なんだ!それなら大丈夫だよ!」
だよロリ犬は誇らしげに胸を叩いた。
「私は犬だよ?だから、遠く離れたってムムの匂いは分かるんだよ!」
「……遠くにいくんだよ?」
「約束する。絶対見つけ出すんだよ!だからお願い」
だよロリ犬は小指を差し出した。
「絶対生きてて」
私はビックリしたけど、表情に出さないようにして、その小指に自分の小指を絡ませた。
「分かった。ありがとう」
「ムム…?どうしたんだよ?」
直ぐにだよロリ犬がやって来た。
私は何も言わず、だよロリ犬を抱き締めた。
「ど、どうしたんだよ?!」
だよロリ犬は心配そうに、でも嬉しそうに言う。
「引っ越し…」
「え?」
「引っ越しするんだって」
私は顔をだよロリ犬の胸に擦り付けながら言った。
「だから、これも今日でおしまい」
私は、自分の頬に涙が伝っている事に気が付いた。
でも気にしなかった。だよロリ犬なら、私が泣いても笑っても気にしないって、そう……思ったから。
だよロリ犬は私が落ち着くまでぎゅっとハグしてくれていた。
「引っ越し…する?」
「うん、だからもう会えない」
「なんだ!それなら大丈夫だよ!」
だよロリ犬は誇らしげに胸を叩いた。
「私は犬だよ?だから、遠く離れたってムムの匂いは分かるんだよ!」
「……遠くにいくんだよ?」
「約束する。絶対見つけ出すんだよ!だからお願い」
だよロリ犬は小指を差し出した。
「絶対生きてて」
私はビックリしたけど、表情に出さないようにして、その小指に自分の小指を絡ませた。
「分かった。ありがとう」
次の日、私達は青空市と言う場所に移り住んだ。
家に入ってから、お父さんがこれで借金取りから……みたいな事をボソボソ言っていたが、お母さんが舌打ちして喧嘩になったから、ちゃんと聞けなかった。
そこでの暮らしは……まあいつもみたいな感じだ。暴力を振るう両親。傷だらけ包帯まみれの私。同級生からの好奇の目。
でも私が逃げ出さなかったのは……線路に飛び込まなかったのは、だよロリ犬がいたからなんだ。
家に入ってから、お父さんがこれで借金取りから……みたいな事をボソボソ言っていたが、お母さんが舌打ちして喧嘩になったから、ちゃんと聞けなかった。
そこでの暮らしは……まあいつもみたいな感じだ。暴力を振るう両親。傷だらけ包帯まみれの私。同級生からの好奇の目。
でも私が逃げ出さなかったのは……線路に飛び込まなかったのは、だよロリ犬がいたからなんだ。
そんなある日の事、奇妙な事が起こった。
「私、寝ていたはずじゃ……」
確かに布団で寝たと思ったのに、いつの間にか違う場所にいたのだ。
目の前には立派な家。いや、店?
看板が出ている。
『お菓子と本の店オウマがトキにようこそ!』
これは夢なのだろうか?私は恐る恐る、その扉を開けてみた。
「いらっしゃい……ませ」
店員らしき人に声をかけられ、私はビックリして固まった。
まるで全身が紫のスライムで覆われたような女の子だ。
「あ、うん」
虚をつかれた私の耳に飛び込んで来た声は、確かにあの子の声だった。
「だからぁ人探しに協力しろって言ってるんだよ!」
「はぁぁぁ?そんな言い方で誰が協力するって言うんじゃ?!このアホ犬!」
「なんだと!このバカ猫!」
「うるへー!おたんこなす!すっとこどっこい!」
私は店員の制止を降りきって駆け出した。声のする方へ。
「妖気が弱まったお主なぞ怖くもなんとも無いわ!人っ子一人見つけられんとかまじ草」
「うるさいんだよ~!黙れ!黙れ!」
バン!と扉を開けると、そこは厨房だった。
不機嫌そうなオレンジ色の女の子と、居たたまれない様子の白黒の翼を持った女の子が、うつ向いて何か作業してる。
喧嘩してた声の主は、部屋の隅にいた。赤いマフラーの女の子と……それに……
「……だよロリ犬」
私の声に、だよロリ犬は尻尾をピンと立てた。
「ムム……!」
だよロリ犬は私だと確かめるように鼻をくんくんさせた。
「ムム!」
私だと分かると、だよロリ犬は目を輝かせながら、近づいて、力一杯ハグしてくれた。
久し振りの抱擁の感覚に、私は幸福感と言うものを初めて感じたのだった。
「私、寝ていたはずじゃ……」
確かに布団で寝たと思ったのに、いつの間にか違う場所にいたのだ。
目の前には立派な家。いや、店?
看板が出ている。
『お菓子と本の店オウマがトキにようこそ!』
これは夢なのだろうか?私は恐る恐る、その扉を開けてみた。
「いらっしゃい……ませ」
店員らしき人に声をかけられ、私はビックリして固まった。
まるで全身が紫のスライムで覆われたような女の子だ。
「あ、うん」
虚をつかれた私の耳に飛び込んで来た声は、確かにあの子の声だった。
「だからぁ人探しに協力しろって言ってるんだよ!」
「はぁぁぁ?そんな言い方で誰が協力するって言うんじゃ?!このアホ犬!」
「なんだと!このバカ猫!」
「うるへー!おたんこなす!すっとこどっこい!」
私は店員の制止を降りきって駆け出した。声のする方へ。
「妖気が弱まったお主なぞ怖くもなんとも無いわ!人っ子一人見つけられんとかまじ草」
「うるさいんだよ~!黙れ!黙れ!」
バン!と扉を開けると、そこは厨房だった。
不機嫌そうなオレンジ色の女の子と、居たたまれない様子の白黒の翼を持った女の子が、うつ向いて何か作業してる。
喧嘩してた声の主は、部屋の隅にいた。赤いマフラーの女の子と……それに……
「……だよロリ犬」
私の声に、だよロリ犬は尻尾をピンと立てた。
「ムム……!」
だよロリ犬は私だと確かめるように鼻をくんくんさせた。
「ムム!」
私だと分かると、だよロリ犬は目を輝かせながら、近づいて、力一杯ハグしてくれた。
久し振りの抱擁の感覚に、私は幸福感と言うものを初めて感じたのだった。
「あの子をここに招き入れたのって、のじゃロリ猫先輩ですよね?」
女の子とだよロリ犬さんが抱き締めあっているのを尻目に、私は先輩に耳打ちした。
「ふん、ただの偶然じゃろ。アンコ、お主わしの事誤解しとりゃせんか?」
「そうでしょうか?確かに先輩は自由人だし、すぐサボるし、押しが強い所ありますし、正直言ってフリーダムすぎですけど」
のじゃロリ先輩はうぐ…世知辛いのじゃ…なんて呟くのを横目に、出かけた言葉を飲み込んだ。
(そういうところ、羨ましいけど好きですよ)
女の子とだよロリ犬さんが抱き締めあっているのを尻目に、私は先輩に耳打ちした。
「ふん、ただの偶然じゃろ。アンコ、お主わしの事誤解しとりゃせんか?」
「そうでしょうか?確かに先輩は自由人だし、すぐサボるし、押しが強い所ありますし、正直言ってフリーダムすぎですけど」
のじゃロリ先輩はうぐ…世知辛いのじゃ…なんて呟くのを横目に、出かけた言葉を飲み込んだ。
(そういうところ、羨ましいけど好きですよ)