違和感のはじまり
更新日:2022/09/11 Sun 01:41:41
「ん?ここは……」
アンコは首を降った。
「アンコ、どうしたの?」
声のする方に向く。そこにいたのは、ロリポップ姉妹の次女、フロート・ロリポップだった。
「あ、いえ…」
アンコは辺りを見渡した。いつも通り、普通のちょっとおかしな喫茶店の店内だ。
(寝てたのかな?)
少しの違和感から目を反らしながら、アンコは仕事に戻った。
アンコは首を降った。
「アンコ、どうしたの?」
声のする方に向く。そこにいたのは、ロリポップ姉妹の次女、フロート・ロリポップだった。
「あ、いえ…」
アンコは辺りを見渡した。いつも通り、普通のちょっとおかしな喫茶店の店内だ。
(寝てたのかな?)
少しの違和感から目を反らしながら、アンコは仕事に戻った。
ここは喫茶オウマがトキ。人外女児の集う場所。
アンコはここの厨房を任されているパティシエの一人だ。
厨房の外から声が聞こえる。
「にゃははは~!酒じゃ!酒じゃ!ろくべぇ!もっと酒~!」
この声はこの店の店員、のじゃロリ猫のものだ。
(またやってる……勤務中なのに……)
アンコは磨いていた皿に力を込めた。
(うっせぇな…)
「どうかしたのかい?小鳥ちゃん」
声をかけたのは、同僚のピネ・ブルースだった。
「へ?あ、いや……何でもないです……」
パリンと音がして、慌てて手元を見ると、洗っていた皿が割れていた。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、それよりも君の手は切れてないかい?珍しいね、君がミスするなんて」
ピネの声を聞きながら、アンコはモヤモヤとした感情を抱えていた。
(今、私は何を考えて……?)
アンコはここの厨房を任されているパティシエの一人だ。
厨房の外から声が聞こえる。
「にゃははは~!酒じゃ!酒じゃ!ろくべぇ!もっと酒~!」
この声はこの店の店員、のじゃロリ猫のものだ。
(またやってる……勤務中なのに……)
アンコは磨いていた皿に力を込めた。
(うっせぇな…)
「どうかしたのかい?小鳥ちゃん」
声をかけたのは、同僚のピネ・ブルースだった。
「へ?あ、いや……何でもないです……」
パリンと音がして、慌てて手元を見ると、洗っていた皿が割れていた。
「ご、ごめんなさい!」
「いや、それよりも君の手は切れてないかい?珍しいね、君がミスするなんて」
ピネの声を聞きながら、アンコはモヤモヤとした感情を抱えていた。
(今、私は何を考えて……?)
(最近何かおかしい)
アンコは思い返してみた。
(何故か時々意識が遠くなる)
それは決まって、アンコがストレスを感じている時に起きる。
(気が付くと知らない場所にいる)
遠のいた意識から目を醒ますと、何故かリビング・ラビリンスにいる事がある。
(どうしてここにいるのか分からなくなる事がある)
オウマがトキの店員として、厨房を任せられたのに。
「アンコ……?アンコ!」
ハッとして振り向くと、プラム・ロリポップとその愛犬のマロロンの姿があった。
「どうしたの?フラフラして」
「イヌヌワン!」
「あ、す、すみません……。ご注文のホットケーキ出来上がってます」
アンコはホールへと戻っていくプラムの姿を眺めながら、またモヤモヤを募らせた。
(自分だっていつも仕事サボってフラフラしてる癖に……)
アンコは自分の思った事にビックリして、小麦粉のついた手で口を押さえた。
(っていけない!こんな事考えたら……)
疲れてその場にしゃがみこんだ。幸いな事に、厨房スタッフ達は忙しく、誰も気が付いていない。
(良い子でいなきゃ……良い子でいなきゃ……)
アンコは深呼吸を繰り返し、吐き気を飲み込んで立ち上がった。
(良い子でいなきゃ繝翫ヤ繝。繧ー達が悲しむ!)
アンコは思い返してみた。
(何故か時々意識が遠くなる)
それは決まって、アンコがストレスを感じている時に起きる。
(気が付くと知らない場所にいる)
遠のいた意識から目を醒ますと、何故かリビング・ラビリンスにいる事がある。
(どうしてここにいるのか分からなくなる事がある)
オウマがトキの店員として、厨房を任せられたのに。
「アンコ……?アンコ!」
ハッとして振り向くと、プラム・ロリポップとその愛犬のマロロンの姿があった。
「どうしたの?フラフラして」
「イヌヌワン!」
「あ、す、すみません……。ご注文のホットケーキ出来上がってます」
アンコはホールへと戻っていくプラムの姿を眺めながら、またモヤモヤを募らせた。
(自分だっていつも仕事サボってフラフラしてる癖に……)
アンコは自分の思った事にビックリして、小麦粉のついた手で口を押さえた。
(っていけない!こんな事考えたら……)
疲れてその場にしゃがみこんだ。幸いな事に、厨房スタッフ達は忙しく、誰も気が付いていない。
(良い子でいなきゃ……良い子でいなきゃ……)
アンコは深呼吸を繰り返し、吐き気を飲み込んで立ち上がった。
(良い子でいなきゃ繝翫ヤ繝。繧ー達が悲しむ!)
ところ変わって、ここは喫茶オウマがトキの本屋。
「それでね、その時ノアが……」
友達と仲良く話しているのは、喫茶店と提携しているこの本屋の主、マリネッタだ。
「……」
マリネッタの横にいた全身紫色の少女、ピオーネが、フラりとどこからか出てきた少女に視線を移す。
「あれ?ピオーネちゃんどうしたの?」
様子に気付いた眠たげな少女、淡雪がピオーネの視線を追いながら聞いた。
「コケェ!コケコケ!」
ピオーネの胸に抱かれたペットのコッカドルチェも何かを感じ取ったかのように鳴き出す。
「アンコ……具合……悪そう」
ピオーネは、フラりと出てきた少女、アンコが見えなくなるまで待ってからそう呟いた。
「あら、そう?優しいのねピオーネったら」
マリネッタはふふっと微笑んだ。アンコの事などどうでも良さげだ。
「このままじゃ……大変なことになる……気がする」
ピオーネはその不安を抑えるように、ぎゅっとコッカドルチェを抱きしめた。抱き締められたコッカドルチェは苦しげにまた鳴いた。
「コケェ!コッコッココッコバーン!」
「それでね、その時ノアが……」
友達と仲良く話しているのは、喫茶店と提携しているこの本屋の主、マリネッタだ。
「……」
マリネッタの横にいた全身紫色の少女、ピオーネが、フラりとどこからか出てきた少女に視線を移す。
「あれ?ピオーネちゃんどうしたの?」
様子に気付いた眠たげな少女、淡雪がピオーネの視線を追いながら聞いた。
「コケェ!コケコケ!」
ピオーネの胸に抱かれたペットのコッカドルチェも何かを感じ取ったかのように鳴き出す。
「アンコ……具合……悪そう」
ピオーネは、フラりと出てきた少女、アンコが見えなくなるまで待ってからそう呟いた。
「あら、そう?優しいのねピオーネったら」
マリネッタはふふっと微笑んだ。アンコの事などどうでも良さげだ。
「このままじゃ……大変なことになる……気がする」
ピオーネはその不安を抑えるように、ぎゅっとコッカドルチェを抱きしめた。抱き締められたコッカドルチェは苦しげにまた鳴いた。
「コケェ!コッコッココッコバーン!」
「あれ?」
アンコは首を降った。どうにも頭が重い。
「私、いつの間に厨房に?」
アンコは辺りを見渡す。確か、クロカンブッシュの作り方を確かめに本屋へと向かった筈だが。
「何でだろう?さっきまで書庫にいた筈なんだけど……」
確かに本屋まで足を運んだ事は覚えているが、そこからどうやって帰ったのか見当もつかない。それに、欲しかった本も手に入れていない。
「おう、どうしたのじゃ?」
そんなアンコに降ってきた声。いつの間にか、隣にのじゃロリ猫が立っていた。
「の、のじゃロリ猫先輩?!」
アンコはビックリして数歩後退りして聞いた。
「あなたこそ、どうしてここに?」
「にゃはは!いやぁ酒が切れてしまってな。料理酒を失敬しようと思ったのじゃ。あ~料理酒ってどこじゃったっけ?」
のじゃロリ猫の言葉に呆れながら、アンコは答えるしかなかった。
「料理酒ですね。はい、喜んで……料理酒ならこの棚に……」
まただと思った。この料理酒は店のものなのに。しかし、料理酒を渡さなければのじゃロリ猫にとって"悪い子"になるだろう。アンコは"良い子"でいなくてはならない。
「……時にアンコよ」
料理酒を取り出したアンコに向かって、のじゃロリ猫が唐突に切り出した。
「はい?」
アンコが顔をあげると、いつもの締まらない顔をした先輩はどこにもいなかった。真剣な顔をしている。そんな顔出来たのかと、アンコは内心驚いた。
「お主、何をそんなに暴れておるのじゃ?」
のじゃロリ猫の質問に、アンコは首をかしげた。意味が分からない。
「え?何ですか?」
アンコの顔を見たのじゃロリ猫は、ぼそりと呟いた。
「ふむ、本人に自覚症状は無いか…」
そして直ぐにいつものおちゃらけた雰囲気に戻り、アンコの手から料理酒をくすねるように取る。
「にゃはは!何でもないのじゃ!料理酒貰っていくぞ~!」
「あ、はい!どうぞ……!」
おどけながら出ていくのじゃロリ猫に呆気に取られながら、アンコは思考していた。
(暴れる?私が?どういう意味だろう?)
考えても分からず、アンコはため息をついた。
「料理酒、渡しちゃったなぁ」
『腹立つ』
「ッ!誰?!」
確か、厨房には自分しかいなかった。それなのに聞こえた耳慣れない声に、アンコは鳥肌が立った。
厨房の隅の暗がりに誰か立っている。のじゃロリ猫にも気付かれず、そこに立っていたのだろうか?
「出てきてください!ここは厨房です!お客様が入っていい所では……え?」
『ムカつかない?あいつ』
暗がりから出てきたそれは、アンコと同じ姿をしていた。同じ顔、同じ声、同じ翼……違うのは表情だろうか、アンコよりも目付きが鋭く、大人っぽく見える。
「あなたは……誰?どうして私と同じ格好をしているの?」
謎の少女は軽く笑った。
『フフ。あたしはあんた、あんたはあたし。ねぇ、今なにかしたいことある?』
「え、したいことって?」
予想外の少女の回答に、アンコは困惑し、顔をしかめた。この少女を見つめていると、頭が痛い。
「また……意識が……」
最後に見たのは、うっすらと笑う少女の、気味の悪い顔だった。
アンコは首を降った。どうにも頭が重い。
「私、いつの間に厨房に?」
アンコは辺りを見渡す。確か、クロカンブッシュの作り方を確かめに本屋へと向かった筈だが。
「何でだろう?さっきまで書庫にいた筈なんだけど……」
確かに本屋まで足を運んだ事は覚えているが、そこからどうやって帰ったのか見当もつかない。それに、欲しかった本も手に入れていない。
「おう、どうしたのじゃ?」
そんなアンコに降ってきた声。いつの間にか、隣にのじゃロリ猫が立っていた。
「の、のじゃロリ猫先輩?!」
アンコはビックリして数歩後退りして聞いた。
「あなたこそ、どうしてここに?」
「にゃはは!いやぁ酒が切れてしまってな。料理酒を失敬しようと思ったのじゃ。あ~料理酒ってどこじゃったっけ?」
のじゃロリ猫の言葉に呆れながら、アンコは答えるしかなかった。
「料理酒ですね。はい、喜んで……料理酒ならこの棚に……」
まただと思った。この料理酒は店のものなのに。しかし、料理酒を渡さなければのじゃロリ猫にとって"悪い子"になるだろう。アンコは"良い子"でいなくてはならない。
「……時にアンコよ」
料理酒を取り出したアンコに向かって、のじゃロリ猫が唐突に切り出した。
「はい?」
アンコが顔をあげると、いつもの締まらない顔をした先輩はどこにもいなかった。真剣な顔をしている。そんな顔出来たのかと、アンコは内心驚いた。
「お主、何をそんなに暴れておるのじゃ?」
のじゃロリ猫の質問に、アンコは首をかしげた。意味が分からない。
「え?何ですか?」
アンコの顔を見たのじゃロリ猫は、ぼそりと呟いた。
「ふむ、本人に自覚症状は無いか…」
そして直ぐにいつものおちゃらけた雰囲気に戻り、アンコの手から料理酒をくすねるように取る。
「にゃはは!何でもないのじゃ!料理酒貰っていくぞ~!」
「あ、はい!どうぞ……!」
おどけながら出ていくのじゃロリ猫に呆気に取られながら、アンコは思考していた。
(暴れる?私が?どういう意味だろう?)
考えても分からず、アンコはため息をついた。
「料理酒、渡しちゃったなぁ」
『腹立つ』
「ッ!誰?!」
確か、厨房には自分しかいなかった。それなのに聞こえた耳慣れない声に、アンコは鳥肌が立った。
厨房の隅の暗がりに誰か立っている。のじゃロリ猫にも気付かれず、そこに立っていたのだろうか?
「出てきてください!ここは厨房です!お客様が入っていい所では……え?」
『ムカつかない?あいつ』
暗がりから出てきたそれは、アンコと同じ姿をしていた。同じ顔、同じ声、同じ翼……違うのは表情だろうか、アンコよりも目付きが鋭く、大人っぽく見える。
「あなたは……誰?どうして私と同じ格好をしているの?」
謎の少女は軽く笑った。
『フフ。あたしはあんた、あんたはあたし。ねぇ、今なにかしたいことある?』
「え、したいことって?」
予想外の少女の回答に、アンコは困惑し、顔をしかめた。この少女を見つめていると、頭が痛い。
「また……意識が……」
最後に見たのは、うっすらと笑う少女の、気味の悪い顔だった。