その身体を乗っ取って
更新日:2022/09/11 Sun 01:48:59
また場所は変わって河川の下の方、少女二人が何かを探していた。
「どこ行ったんだろう?」
太陽の髪飾りを着けた少女、暁星旭ことライジングが、誰に言うでもなく呟いた。
「ごめんね旭。手伝ってもらっちゃって」
申し訳なさそうにするのは初と言う少女だった。
「大丈夫だよ~!早く見つかるといいね、ちゃばちゃん」
「うん、本当に……でもなんでだろう。いつもはこんな事無いのに」
初は愛猫のちゃばを思い出して項垂れた。いつもは勝手に家から飛び出すなんて事なかったのだが……。
「怜亜や猫丸ちゃんにも手伝ってもらって、ちゃばの行きそうな場所を見て貰ってるけど……」
初が考えていると、どこからか変な音が聞こえた。バサバサっと何かが羽ばたく音だ。
ドサッと音がして、二人の前に翼の生えた化け物が現れる。
「な、なんだこの人?!」
旭は驚いて、その人物を見る。
その化け物は獣のような唸り声をあげた。
「翼に爪……妖怪?」
初は知り合いの黒猫を思い出しながら呟く。ライジングの脳裏にも、のじゃのじゃ言う二又の黒猫が浮かぶ。
「取り合えず、襲ってくるつもりなら、相手になるよ!」
ライジングが元気よく宣言したのと同時だった。
「グルワァァァァァァ!!!」
「危ない!」
初がスライディングしてライジングを突き飛ばす。
「きゃ!」
飢えた獣の腕が膨張し、先程までライジングが立っていた地面を深く抉っている。
「た、助かった……初ちゃんありがとう!」
抉られた地面にゾッとしつつ、ライジングは言った。
「今度はこっちの番なんだから!《《女児符号!暁天!》》」
ライジングの手足に光と熱のエネルギーが集まっていく。
「《《加速符号!暁天・胎動!》》」
ライジングが目にも止まらない早さで動いた。飢えた獣はギリギリのところで飛んで避け、威嚇音を出した。
「まだまだ!」
ライジングは地面を蹴って跳躍し、飛翔している飢えた獣の眼前へと迫った。飢えた獣が咄嗟に片手を振り上げるが、間に合わせない。渾身の一撃をその顔面にぶちかまし、そのまま連撃を御見舞いしていく。
「キシャァァァァァ!!!」
「これでおしまい!」
ズドォォォォォンと物凄い音を立て、獣が地面へと墜落した。
「ふぅ、勝った!」
着地したライジングのお腹がぐるるとなる。ライジングの女児符号、暁天は、凄まじい威力だが燃費が悪く、少し動いただけでも、直ぐにお腹が空くのだ。
「なんとかなって良かったけど、ちゃばちゃんは……」
「旭!まだ!」
獣に背を向けたライジングに、初は警告した。慌てて振り返ると、獣が血とヨダレを垂らしながら立っていた。
「う、うそぉ!まだ立つの?!」
ライジングの言葉に焦りが混じった。出せる分の力は出しきっていたので、もう一度戦って、さっきのように怪我一つなく勝てる保証がない。
初はそんなライジングを横目に現れた敵を分析した。
「あの妖怪、なにかおかしい……怒り、飢え、苦しみ……空腹から正気を失っている?それならば……」
初は上着のポケットからマイクを取り出した。初はそのマイクに言葉を吹き込む。放たれたのは初の加速符号だ。
「《《妖怪よ!正気に戻れ!》》」
「ヴッッッ?!」
獣は初の言葉に苦しんだ。頭をかきむしり、かきむしった頭から血が滝のように溢れ出す。爪が何本も割れた。腕からも血があふれでた。
「………」
獣は、アンコは全て思い出した。
「ハハ……」
自らの罪を。忘れていた友達の事も。
アンコは血を飛び散らせ、羽を撒き散らせながら飛んだ。
「あははは!」
"ナニカ"がアンコの声を借りて嗤った。
「どこ行ったんだろう?」
太陽の髪飾りを着けた少女、暁星旭ことライジングが、誰に言うでもなく呟いた。
「ごめんね旭。手伝ってもらっちゃって」
申し訳なさそうにするのは初と言う少女だった。
「大丈夫だよ~!早く見つかるといいね、ちゃばちゃん」
「うん、本当に……でもなんでだろう。いつもはこんな事無いのに」
初は愛猫のちゃばを思い出して項垂れた。いつもは勝手に家から飛び出すなんて事なかったのだが……。
「怜亜や猫丸ちゃんにも手伝ってもらって、ちゃばの行きそうな場所を見て貰ってるけど……」
初が考えていると、どこからか変な音が聞こえた。バサバサっと何かが羽ばたく音だ。
ドサッと音がして、二人の前に翼の生えた化け物が現れる。
「な、なんだこの人?!」
旭は驚いて、その人物を見る。
その化け物は獣のような唸り声をあげた。
「翼に爪……妖怪?」
初は知り合いの黒猫を思い出しながら呟く。ライジングの脳裏にも、のじゃのじゃ言う二又の黒猫が浮かぶ。
「取り合えず、襲ってくるつもりなら、相手になるよ!」
ライジングが元気よく宣言したのと同時だった。
「グルワァァァァァァ!!!」
「危ない!」
初がスライディングしてライジングを突き飛ばす。
「きゃ!」
飢えた獣の腕が膨張し、先程までライジングが立っていた地面を深く抉っている。
「た、助かった……初ちゃんありがとう!」
抉られた地面にゾッとしつつ、ライジングは言った。
「今度はこっちの番なんだから!《《女児符号!暁天!》》」
ライジングの手足に光と熱のエネルギーが集まっていく。
「《《加速符号!暁天・胎動!》》」
ライジングが目にも止まらない早さで動いた。飢えた獣はギリギリのところで飛んで避け、威嚇音を出した。
「まだまだ!」
ライジングは地面を蹴って跳躍し、飛翔している飢えた獣の眼前へと迫った。飢えた獣が咄嗟に片手を振り上げるが、間に合わせない。渾身の一撃をその顔面にぶちかまし、そのまま連撃を御見舞いしていく。
「キシャァァァァァ!!!」
「これでおしまい!」
ズドォォォォォンと物凄い音を立て、獣が地面へと墜落した。
「ふぅ、勝った!」
着地したライジングのお腹がぐるるとなる。ライジングの女児符号、暁天は、凄まじい威力だが燃費が悪く、少し動いただけでも、直ぐにお腹が空くのだ。
「なんとかなって良かったけど、ちゃばちゃんは……」
「旭!まだ!」
獣に背を向けたライジングに、初は警告した。慌てて振り返ると、獣が血とヨダレを垂らしながら立っていた。
「う、うそぉ!まだ立つの?!」
ライジングの言葉に焦りが混じった。出せる分の力は出しきっていたので、もう一度戦って、さっきのように怪我一つなく勝てる保証がない。
初はそんなライジングを横目に現れた敵を分析した。
「あの妖怪、なにかおかしい……怒り、飢え、苦しみ……空腹から正気を失っている?それならば……」
初は上着のポケットからマイクを取り出した。初はそのマイクに言葉を吹き込む。放たれたのは初の加速符号だ。
「《《妖怪よ!正気に戻れ!》》」
「ヴッッッ?!」
獣は初の言葉に苦しんだ。頭をかきむしり、かきむしった頭から血が滝のように溢れ出す。爪が何本も割れた。腕からも血があふれでた。
「………」
獣は、アンコは全て思い出した。
「ハハ……」
自らの罪を。忘れていた友達の事も。
アンコは血を飛び散らせ、羽を撒き散らせながら飛んだ。
「あははは!」
"ナニカ"がアンコの声を借りて嗤った。
場所はまた変わり、オウマがトキのホール。珍しくのじゃロリ猫が皆を集めたのだ。
「と言うわけで、アンコが出ていってしまったのじゃ」
「…………」
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ???!!!!!」
一拍置いて、皆が大声をあげた。
「アンコが?!なんで?!」
そう聞いたのはフルーチェだった。
「だからなんかぁ人食いの話したら出てっちゃっテ~」
くゆりがもう一度事の顛末を説明する。
「人食いかぁ……苦手な人もいるだろうしなぁ」
ジュジィがぼそりと呟く。
「…………」
メローナはこめかみを押さえた。元人間として、思うところがあるらしい。
「アンコ……」
フロートが、悲しげに呟く。どこからか、ガシャリと音がした。
「と言うわけで、アンコが出ていってしまったのじゃ」
「…………」
「ええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ???!!!!!」
一拍置いて、皆が大声をあげた。
「アンコが?!なんで?!」
そう聞いたのはフルーチェだった。
「だからなんかぁ人食いの話したら出てっちゃっテ~」
くゆりがもう一度事の顛末を説明する。
「人食いかぁ……苦手な人もいるだろうしなぁ」
ジュジィがぼそりと呟く。
「…………」
メローナはこめかみを押さえた。元人間として、思うところがあるらしい。
「アンコ……」
フロートが、悲しげに呟く。どこからか、ガシャリと音がした。
アンコは懐かしい野山を歩いていた。小さな頃、友達と一緒に歩いた道だ。
「私は……」
アンコは立ち止まる。頭と胸が強く痛み、歩く事と考える事を拒絶している。
「…シャ~!」
遠くから、懐かしい声が聞こえた。今度は誰の声なのか、直ぐに分かった。
「ナーシャ!」
「ナツメグ……」
子供の頃、何度も一緒に遊んだ、大好きだった友達。その子が、生きた姿、まさにその姿でアンコの目の前に立っていた。
「どうして泣いてるの?皆待ってるよ?早く行こうよ!」
ナツメグがアンコに向かって手を差し出した。
「ナツメグ……私は……っ!」
アンコは駆け出した。
振り返ること等なかった。出来なかった。
そんな光景を遠くから見ていた影が一つあった。
影が手招きすると、ナツメグだったものが、黒く長い、蛇のようなものに変わった。
「アタシの可愛いプレデター……」
すり寄ってくるそれの顎を、影は撫で、囁く。
「喜んで?アタシがあの子と入れ代われる。もう好きなだけ外に出て、好きなだけ食べてもいいのよ」
プレデターと影が、クックと喉を鳴らし、不気味に嗤った。
「私は……」
アンコは立ち止まる。頭と胸が強く痛み、歩く事と考える事を拒絶している。
「…シャ~!」
遠くから、懐かしい声が聞こえた。今度は誰の声なのか、直ぐに分かった。
「ナーシャ!」
「ナツメグ……」
子供の頃、何度も一緒に遊んだ、大好きだった友達。その子が、生きた姿、まさにその姿でアンコの目の前に立っていた。
「どうして泣いてるの?皆待ってるよ?早く行こうよ!」
ナツメグがアンコに向かって手を差し出した。
「ナツメグ……私は……っ!」
アンコは駆け出した。
振り返ること等なかった。出来なかった。
そんな光景を遠くから見ていた影が一つあった。
影が手招きすると、ナツメグだったものが、黒く長い、蛇のようなものに変わった。
「アタシの可愛いプレデター……」
すり寄ってくるそれの顎を、影は撫で、囁く。
「喜んで?アタシがあの子と入れ代われる。もう好きなだけ外に出て、好きなだけ食べてもいいのよ」
プレデターと影が、クックと喉を鳴らし、不気味に嗤った。