【初出】
X巻(
真名はI巻、
ラミーとしてならばII巻)
【解説】
真名は“
螺旋の風琴”(らせんのふうきん)、
炎の色は深い緑色。
顕現した姿は、紫の短髪のはかなげな少女の姿。手足は細く、薄い衣を纏う。
現在の性格は思慮深く老練としているが、本来の性格は無邪気にして無垢、奔放で放埓な性格で、己が欲するままに遊び、そのために人間を喰らうことに何の疑いも持たず自由に世界を遊び巡っていた。その途中で絵師を目指す人間の男性
ドナートと出会い、愛し合うようになるが、リャナンシーが人を喰らって存在する者であることを知ったドナートの悲しみと怒りに触れたことで呆然自失し衝動的にドナートの元を飛び出し、無気力状態で彷徨っていたところをその特異な自在法への性質を狙った、ある“
王”によって捕らえられ、“徒”を支配する事が可能な鳥籠に閉じこめられ、それとセットで、『
小夜啼鳥』という
宝具として扱われるようになった。
やがて時を経て『小夜啼鳥』は“
棺の織手”
アシズの手に落ち、中世の『大戦』の最中、
ドナートが死の間際に残した自分への伝言を耳にして気力を取り戻し、自らの意志で籠を出た。そして彼が自分を描いた絵を見るために彼に逢いに行くが、既に彼の命も彼の絵もこの世から失われた後だった。その後、彼女は失われた絵を復元するための自在法を編み出し、それの発動に必要な莫大な量の“
存在の力”を集めるために、本来の真名と存在を隠し“屍拾い”ラミーとして、長い時間をかけて消えかけの
トーチから“存在の力”を集めていくこととなった。
後に、旧知の間柄である教授の非合理的な式を昇華させて
封絶の自在法を生み出し、その名声を一段と高めた。
最終巻で新世界『
無何有鏡』完成後にリャナンシー本来の姿に戻り、長年の望みであった復元したドナートの板絵を抱きながら、新世界へ旅立った。
【由来・元ネタ】
元ネタは、ヨーロッパ民話に登場する「妖精の恋人」リャナンシー(leanan-sidhe)だと思われる。魅入られた者は素晴らしい芸術的な才能を与えられるが、生命力を吸い取られ薄命になるという。
また“小夜啼鳥”とはナイチンゲールを指している。
「螺旋」とはそのまま渦を巻いている螺旋構造のことだが、これは運動性や生命力の象徴とされ、また状態が進みブレーキが掛からない状態(無限)ことを表現することもある。
また「風琴」とはオルガンのことである。オルガンとは風を送って音を出す楽器である。
これをリャナンシーに当てはめてみると、無限であり、ブレーキが掛からないものとは彼女の運動性、自在法の影響力だと考えられる。そしてオルガンは音楽を奏でるのだが、この音楽は自在法に置き換えることができるだろう。
オルガンで奏でる音楽は数え切れないほどあり、そして音は何によって出ているかといえば風という自然の力であり、その力は微々たるものであるはずなのにそれさえあれば素晴らしい音楽を奏でてしまう。
これは彼女の自在法による“存在の力”の消費効率の異常な優秀さを表すものだと解釈できる。
これらのことを総合して真名全体の意味を考えると、少し長いが「微小な力で無限の影響力を持つ数多の自在法を奏でる楽師」という意味だと思われる。
説明するまでもなく“
紅世”最高の自在師リャナンシーの力そのものを表した真名だろう。
最終更新:2025年04月19日 07:24