【初出】
XIII巻
【解説】
“
紅世の王”。
真名は“淼渺吏”(びょうびょうり)。
炎の色は鉄色。
[
仮装舞踏会]の
布告官にして優れた
自在師。非常に重要な役目を任され、組織の重鎮に対しても臆さぬ態度をとっていた、強大なる“王”。
その外見は、無光沢の鱗(カラー口絵では消炭色に近い)に藻の斑を纏う細長い大魚というもので、その口を大きく開けただけでも、10mほどに達した。通常は地面に鉄色の波紋(縮小の
自在法)を浮かべて顔を出し、この際には地面が水面になったかのようになっていた。
普段はその巨体は現さず、水中のような異空間内に篭り、人間大の円形の中に五芒星、その中央に目という外見の
自在式を外部に出して会話した(式のサイズは可変)。酒に酔うと
自在式がふらつくが、声音はいつもと変わりなかった。
超広域かつ半永久的に通信・見聞・
自在法行使などの入出力機関として機能する、他に類を見ない特殊な
自在法『
プロビデンス』を使用していた。また彼は、この『プロビデンス』を使って『
三柱臣』の巫女
ヘカテーによる『訓令』の補佐も行っていた。
非常に有能だが、その有能さとは裏腹にかなり癖のある“徒”で、周囲からの好悪が極端に分かれていた。無感情かつ合理的でありすぎるため、使命感の強い
オロバスや
リベザルとは戦時平時を問わず摩擦が多かった。しかし、どんな状況でも徹底して客観的かつ合理的に物事を見定めて判断を下す彼の公正な性格は、戦時下においては兵らに好まれるものであり、リベザルや
オロバスたちも本心では彼を篤く信頼していた。
慕われることはなくとも、こと作戦指揮における卓抜した手腕は『将軍』
シュドナイも認め、その不在時に自身の代わりに全軍の指揮を任せても異を唱える者はいない程で、デカラビア当人もその実力を自負していた。
フレイムヘイズ陣営との決戦では、『
プロビデンス』を用いて世界規模の全軍指揮と同時に『
星黎殿』直衛軍の指揮を執り、次々と起こる計算外の要素にも感情を揺らさず、冷徹かつ合理的な対処を行った。
想定外の奇襲を仕掛けてきた
フレイムヘイズ兵団にも、直衛軍を指揮して互角以上に戦い、常にフレイムヘイズたちより優位な戦況を維持するが、『星黎殿』の位置が敵に捕捉されていたことを重大視し、
盟主と『
三柱臣』の帰還まで『
星黎殿』を堅守すべく、東西主力軍を退却させて戦力を集結させることを決定した。
しかし、各戦力が到来するまで防衛線を維持できないという冷徹な判断から、「自身の戦線への投入」を決定。総司令官職を“煬煽”
ハボリムに委譲し、自らは直営軍司令官として、巨大な魚体を戦場に現した。
『
プロビデンス』により己の身体全体にあらゆるものを通す転移の
自在法を施し、防御の
自在法を全軍の一人一人に付与して、無謀ともいえる捨て身の一手で全軍の防御を固めた。
課された職責に従い、『犀渠の護り手』
ザムエル・デマンティウスが築き上げた『星黎殿』まで通じる橋梁を破壊するべく、頭部を現したところを『震威の結い手』
ゾフィー・サバリッシュの落雷蹴りを受け、討滅された。
だが、デカラビアが戦場にあって稼いだ時間によって、彼が討滅された直後に
ハボリム率いる外界宿征討軍西部方面主力軍が到着することが出来たのだった。
【由来・元ネタ】
名前の元ネタは、ソロモン72柱の悪魔 ”五芒星形内の侯爵”デカラビア(Dacarabia)と思われる。
序列69番の悪魔で、召喚円の内に浮かぶ星の姿で現れるが、召喚者が望めば人の姿で現れるとも言う。
召喚の際は、宝石や植物の価値・効能に関する知識を授け、鳥の姿の使い魔を与えると言う。
「淼」も「渺」も果てしなく遥かに広がる水、またはその様を意味し、そして「吏」は役人、直接的に仕事を片付ける者を意味する
真名全体で、「遥か広がる水を操る者」という意味だと思われる。常は水底のような異空間に潜み、全世界を知覚範囲とする“王”には相応しい真名であろう。
擬された役割は「名将」。魚体は表情を表さないための姿。
最終更新:2025年06月16日 08:26