そして私は、彼の血統を継ぐ、最強の吸血鬼抹殺部隊を手に入れた。新選組という名のな!

発言者:伊東甲子太郎
対象者:沖田総司


二巻肆ノ章、刺客達を退けついに甲府城へ辿り着いた沖田は、同行していた万次郎を江戸へと退かせ……
斃すべき“敵”――伊藤甲子太郎を討つべく、単身城内へと足を踏み入れる。
第一の曲輪内の広場には、伊東が涼しげな笑みを浮かべて待ち受けており、
それを見下ろす第二の曲輪には、近藤土方永倉斎藤原田ら新選組幹部が立ち並び、その全員が吸血種に変貌した証である紅の瞳を光らせていた


幹部達が静かに見守る中、簡潔に“おまえを斬る”と意思表明した沖田はそのまま村正を抜刀し、
対する伊東ももう一振りの葬鬼刀《鉄姫ノ慟哭》を招来し、吸血鬼殺しの剣を持つ両者の決闘が開始される。
剣士としての技巧と剣に備わった異能を互いに激しくぶつけ合う戦いが互角の様相を呈する中、
沖田は伊東に対し、彼が何をしようとしているのか――藤堂が語った“新しい新選組”とは一体何を示すのか……その答えを問う。

それに対し、伊東は突如現れた同族殺し――クリストヴァン・フェレイラを見やり、この地で自分は野望成就の為の切札を得たと高らかに宣言する

――そして、伊東の言葉に秘められた真実を探るべく、新選組に《洗礼》を施した張本人であろう仮面の女の素顔を暴かんとした沖田は……
その素顔が見知った少女のそれと瓜二つである事に、激しく動揺を見せるのだった―――。


本編より

赤と黒の夕闇が落ちた天を背に、一人の男が沖田を見下ろしていた。
沖田は、手に持つ村正に宿る天草四郎の魂と血を通じ、巨人の血族としての力が桁外れに強大であることを知覚した
三百年を生きたベルリッヒンゲンなど、到底比較にならない域にある。比べるならば、獅子と山猫のそれ以上にも及ぶ格差があるように感じられた。

「クリストヴァン・フェレイラか……」

誰に教わるまでもなく、沖田はあの巨人が何者であるのかを理解していた。
笛吹川で見た地獄絵図が脳裏に蘇る。あの狂気じみた大量殺戮を生み出した男が、眼前に屹立する怪物めいた吸血鬼以外であろうはずがないと。


「その通りだとも、沖田君。かの人物こそが、血族世界に血の轍を残した伝説の同族殺戮者。そして、この日の本の窮状を救いうる救世主(・・・)だ」


さも頼もしげに、伊東はフェレイラの巨躯を見上げていた。


「我々は、この国から全ての吸血鬼を駆逐する──そう、目指す目的は同じということだ。そして私は、彼の血統を継ぐ、最強の吸血鬼抹殺部隊を手に入れた。新選組という名のな!」


冷徹な策士めいたこの男には珍しく、童子のような昂揚を隠せぬ様で伊東はうそぶく。




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最終更新:2022年01月10日 22:27