もるにあ(molina)は、たつきおよびirodoriが開発した遠隔操作機器の通称、およびそれらを用いたサービスアプリ。


概要

2020年4月、日本国内では新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う緊急事態宣言の発出により、外出を自粛する風潮が強まっていた。そうした状況の中で、たつきが在宅しながら外出気分を味わうことを目的として、開発を開始*1した。

なお、遠隔操作機器の正式名称は「モル」、それを用いたサービスおよびブランドを「もるにあ」ないし「モルニア」*2と称するのが適切だが、一般には全て「もるにあ」の名で呼ばれることが多い。オフィシャルサイトでは「もるにあ(仮)」と称されている。

遠隔操作機器「モル」

公式Twitterアカウントでは「謎のいきもの」などと表現されている。
機体は球体をもとに、上部に1対の哺乳類の耳状の突起、下部に5本の足を模した突起、後方下部に尻尾らしき突起が付けられている。機体正面には顔ないし眼孔を模したと思われる円形の窪みがあり、その下に内蔵カメラ用の視界穴が開けられている。*3
本体素材は白色の樹脂製で、削り出した原型を元に3Dプリンターで製造されていると思われる。
機体底面に車輪および駆動輪、尻尾状突起の中に方向転換のための転輪が収められている。
駆動方式はおそらく内蔵モーター。外部に配線がないことから、電源も内蔵式と思われる。
操縦は前進、後退および転輪による左右旋回で行われた。
アルファテスト6からは「5倍早い」がキャッチコピーの改良型が投入された。
機体上部に花を乗せた「花モル」、カメラを機体後部に伸ばした突起に装着した「TPSモル」*4のような派生型も少数存在する。

公表

2020年4月17日、たつきのTwitterアカウントにて、なんらかの企画の存在を仄めかすツイートが投稿された。
たつきの2020年4月17日のツイートより(魚拓)



その後4月20日に「もるにあ」という名称が公表され、24日に公式Twitterアカウントが運用開始になるとともに、翌25日に早くもユーザーが参加しての初のアルファテストが実施された。

たつきの2020年4月20日のツイートより(魚拓)
たつき/irodori @irodori7


内容としては、「モル」をパソコンやスマートフォンで操作し、一人称視点のカメラでリアルタイムの映像を見ることで外出気分を疑似体験できる、といったものだった。
アルファテストは公式Twitterアカウントでの告知ツイートにリプライの形で貼られた貼られたURLからログインし、サービスを受ける形式だった。
アルファテスト内ではもっぱら室内や箱庭内を移動するにとどまっていたが、たつきは屋外や外部の店舗、施設等でも運用することを想定しており、奥多摩にて屋外運用試験が行われていた。

なお、たつきはもるにあについて当初「企業の大規模商業モノではなく個人的趣味の研究みたいなもの」と称しており、『へんたつ』内で言及していた「新作」はもるにあではないと説明していた。

たつきの2020年4月21日のツイートより(魚拓)
たつき/irodori @irodori7


ファンの期待

アニメではないものの、『へんたつ』終了後にたつきが手がけた新規コンテンツであったため、たつきファンは当初もるにあに対し大きな期待を寄せていた。
もるにあが稼働した場所や施設がファンのにとっては「聖地」と化すため、ファンの間ではコロナ禍の営業不振の解決策の一つとして非常に高く評価されていた。

鴉九龍の2020年8月6日のツイートより(魚拓)

活動内容

外部への貸出

2020年9月以降、「アルファテスト7」と称して、4回に渡り外部の施設や店舗に機器の貸出が行われた。
貸出に際してはたつきよりあらかじめ募集のツイートが発せられたが、実際はたつきおよびirodoriが営業をかけていたケースがたつきファンの発言により露見している。

たつきの2020年7月のツイートより(魚拓)
たつき/irodori @irodori7



第1回(9月9日)

都内のある猫カフェにて実施された。店名は公式Twitterアカウントで触れられていないが、映像内での内装の様子や猫の種類などから、たつきファンの間で店舗が特定された。

翌9月10日、たつきファンの鴉九龍が現地に訪問調査した結果たつきが猫カフェの常連客であること、たつき自らが配信のために貸し切っていたことが判明した。なおたつきアンチが懸念していたもるにあの稼働による猫のストレスはなかったとされているが、従業員の発言ではない為真偽は不明。

鴉九龍の2020年9月10日のツイートより(魚拓)
鴉九龍 @kurontya


第2回(9月16日)

熊本県熊本市のレンタルスペース「DADDY'S STUDIO(ダディーズ スタジオ)」にて実施された。同施設はおもにコスプレなどの撮影スタジオとして使用されているが、飲食部門の「ダディーズカレー」も営業している。
公式Twitterアカウントに投稿された写真が「ダディーズカレー」部分を背景としていたため、多くのたつきファンからカレー専門店のみの営業であると誤解されている。

第3回(9月23日)

東京都新宿区西新宿のカフェギャラリー「ギャラリーエルシャダイ」にて実施された。オーナーは、かつてネット上で話題になったゲーム『エルシャダイ』のディレクター兼キャラクターデザイナーである竹安佐和記。店内では同作を中心としたアートが展示され、現在もファン向けのイベントを定期的に開催している。
貸出の終了後、たつきと伊佐佳久の両名は直筆サインと思しき色紙を残していった。


なおたつきアンチからはこの色紙は「いくらなんでも手抜きすぎる。」「壁に飾ったらただの白紙にしか見えない。」と批判と嘲笑の対象になっている。

第4回(9月30日)

沖縄県国頭郡恩納村にあるテーマパーク「琉球村」にて実施された。国の登録有形文化財である「旧島袋家住宅主屋」*5の板の間でモルを走らせるなどしていた。
公式Twitterアカウントでは、これに先立つ29日に飛行機の座席に乗せられているモルのイラストが、10月6日に空港内にてトランクを運搬するモルのイラストが投稿された。

3DCGアプリ「臨時モルニア」

公式Twitterアカウントでは、2020年10月以降ベータテストへの移行がたびたび示唆され、11月1日の「もるにあアルファテスト中庭」の終了後に「仕事合間にベータへ向けて開発したり考えたり」する旨が発表された。ところが、12月30日に「臨時モルニア」の名で出された告知は、実物のモルを使用しない3DCGアプリの公開であった。これらの変化にたつきファンは久々の更新もあってか歓喜したものの、急激な方針転換に困惑するファンも多かった。

舞台はたつきの作品『駅長さん』や『傾福さん』を彷彿とさせる空中上の廃駅であり、三人称視点に固定された画角の中でCGモデルの「モル」を動かすものとなっている。また、『へんたつ』の登場人物である鬼をモチーフとしたモルも画面上に存在した。「臨時モルニア」は年が明けた2021年1月1日にも実施され、箱を振って「おみくじ」を引くモードが実装された。

この「臨時モルニア」を最後に、「もるにあ」に関する一切の更新は行われていない。
なお、たつきのTwitterアカウントでは1月31日に「らくがき」と題して『へんたつ』の鬼と猫を背景としたモルのイラストが投稿されている。

問題点

たつきアンチをはじめとしたもるにあの運用方針に懐疑的な層からは、以下の問題点が指摘されている。

モルの構造上の欠陥

タイヤではなく車輪のため、不整地では走行できない。平坦な地面でも車輪機構が小さく貧弱なため、ちょっとした段差で走行不能に陥ってしまう。また、車高と重心が不釣り合いで、不安定である。
運用条件の物理的ハードルの高さ
機体が小さく運動性能も低いため、屋外などの環境変化が激しい場所や、店舗や施設といった不特定多数の他者からの外的アプローチ(例えば子供やペットがぶつかるなど)が想定される場所では安定した運用ができず、故障を誘発してしまう。また操作する人間は操作は素人かつ現場の状況を把握していないのが大半であるため、映すべきものを把握し、かつ適切な位置までもるにあを操作するというのは至難な技といえる。上記の使用例を見ればわかるがもし想定通りの使用法を行えばそこに映るのは同じもるにあのどアップと定点カメラと何も変わらない映像である。
上記の問題点の解決策として現地の従業員が常時付き添えば解決できるのだが、それならばそのまま従業員がカメラをもってネット配信すればいいのでは?という意見がある、

通信環境の劣悪さ

利用者がログインできない、また円滑に操縦できない原因となる。原因として、運用場所のネット回線の不備や、サーバーの容量不足などが挙げられる。なお、公式の推奨環境はLTEで、固定の光回線やWi-Fiでは繋がりにくい。
ユーザーサポートの不備
上記の点で不利益を被る利用者や、順番待ちで長時間待たされる予約者への配慮に欠けている。また、利用者が増加していると発表しているにもかかわらず、問題への抜本的対策を打ち出せていない。
運営から適切な情報公開がされず、告知や発表があったとしても非常に曖昧な表現を用いる場合が多く、その都度利用者が混乱する。

費用対効果

安定した運用には大規模な資金投入が必要であるため、一介の自主制作アニメーションサークルであるirodoriが運営を行うのは現実的ではない。また、安定した運用のためには、有料でのサービス提供も視野に入れなければならない。
リスク管理の不備
たつきが想定する店舗や施設での運用を省みるに、他者が怪我をする(地面にいるモルに気付かずつまづいて転ぶなど)原因となるおそれや、器物を破損してしまうリスクを考慮していない。

映像に映り込む他者への権利侵害

カメラを通して不特定多数の人間に見られる可能性があることを配慮していない。仮にその映像や画像がネット上に流れた場合、プライバシーと肖像権を侵害することになってしまう。

不透明な運営方針

モルの実機運用をしていくと思いきや急に3DCGアプリになるなど、コンテンツとしてどう展開していきたいのかわからない。

本来の目的の主客転倒

もるにあはコロナで影響化で外出できない中、家でも店や施設を楽しめるアプリとして開発されたものである。消費者から見ればありがたいものであるが店から見れば料金の支払いが無しでサービスを提供している事になる。あくまでも店が使用する目的は「宣伝」であり、もるにあをプレイした客がそれをきっかけとして店に来店してお金を落として初めてもるにあを導入した意味が発生する。
しかしながらもるにあの利用者のほとんどが「たつき監督」の作品を楽しむためという目的で利用していて店は「たつき監督とコラボ」したという見方しかされず、あくまでもたつき監督作品を楽しむ道具としかみなされないのが現状である。もるにあ公式も導入された時に一回だけ店を紹介しただけで、それはどんな店なのか?コロナ終了後はどのように行けばいいのかを告知することはなく、あくまでももるにあを使用した店でしかなく、もるにあのために店側は費用と場所を負担してたつき監督作品の宣伝を行うという主客転倒が起こっている。ファン側でももるにあを導入した場所は「聖地」となるとしていたがもるにあ稼働時でも特にファンイベントを開催されず、最初に導入された時のみにツイッターで言及するのみに留まった。

評価

たつきファンの間では、『へんたつ』(TV版)の放送が終了したこともあり新アニメ作品の制作発表ないし公開が強く望まれていた。アニメ作品ではないもるにあの発表をファンは「たつきおよびirodoriの新たな飛躍」としておおよそ歓迎的に捉えたが、公式Twitterアカウントのフォロワー数やツイートへの反応数は伸び悩んでいるため、ファンの間でのもるにあへの反響は以前のアニメ作品と比べて必ずしも大きかったとは言えない。ことに、新作アニメのみを望んでいるファンからすれば物理的なもるにあは興味の対象外であり、irodoriの現役コンテンツであるにも関わらず、ファンコミュニティの間で話題として扱われる頻度は減っていった。
また、毎度のアルファテストに希望者が殺到することでなかなか利用できない、運良く予約が取れたとしてもログインエラーが起きるなどのトラブルにより、当初は好意的であったがのちに不満を抱えてしまったり、そもそも飽きてしまったファンもいると思われる。

KFPアンチの間では3月末のヤオヨロズ解散を受けて衝撃が走っていたが、もるにあの運用開始をして「現状のけものフレンズコンテンツより優位に立っている」と認識するに至り、もるにあの利用者数を誇ってけものフレンズプロジェクトおよびKFPアンチへの叩き棒としていた。しかし、もるにあの更新が途絶してしまったことにより、現在のKFPアンチ内では叩き棒として使用されることは皆無である。

たつきアンチおよびKFPアンチに対抗するKFP擁護派では、アニメ監督であるはずのたつきが肝心のアニメを作らないことを問題視していた。思わせぶりな発言をしつつももるにあを本格的に運用させないたつきの姿勢を「本懐のアニメ制作をやめて始めたくせにまともに運用する気すらない、ファンを巻き込んだただの道楽」と批判して、もるにあを「ラジコン遊び」*6と皮肉気味に呼んでいる。また、急にこのような企画を始めたことに対して「機材を売り込みたい業者に唆された」「商材詐欺にあった」と心配する者もいる。
そして、もるにあの存在にめっきり触れなくなったたつきファンやKFPアンチに対して「もるにあから逃げるな」と揶揄することもしばしばである。
さらに2021年12月31日にたつき監督が2023年?に劇場版新作を制作中と発表している。これは2020年のへんたつ最終話の新作発表と同一のものとして解釈するのならなおさら「もるにあ」を何故製作したのかが謎になる。
ちなみに、もるにあについてけものフレンズ界隈外で語られる場合は、もるにあの存在は全くと言っていいほど認知されていないか、無関心、もしくはたつきアンチらと同様の視点で揶揄している場合が多い。

以上のように、もるにあをめぐっては騒動に対するスタンスの違いは勿論のこと、個人的解釈においても大きな差異が発生しているのが現状である。そのため相手の立場がなんであれ、もるにあの話題を安易に扱うことは推奨されない。

2025年現在も更新停止中だが、公式の発表は「ベータテストに移行中」であり完結も宣言されていないため、たつき作品の中で続いているコンテンツとなっている。

関連項目

モルモル

2019年8月のコミックマーケット96で頒布された『ケムリクサ IROIROBOOK』の収録資料に描かれていたキャラクターの通称。
白と茶のまだら模様をした獣のような生物で、扁平な体躯に短い四肢と太い尻尾がついている。名称は不明だが、イラストの脇に「モル モル」と擬音が添えられていたため、たつきファンからは「モルモル」と呼ばれている。
たつきファンの間では、もるにあの元となったのはこの「モルモル」ではないかという説が唱えられている。

もるにあと類似したサービス

ラクロ

千葉市動物公園において運用された自動運転ロボット。2020年5月16日、このラクロを用いた「オンライン動物園」イベント*7が開催された。

リモートロマンス

2012年に六本木ヒルズで開催された「荒木飛呂彦原画展 ジョジョ展」で来場できないファンのために荒木氏監修の下で作成された遠隔操作型スタンドを模した自動運転ロボット。ファンはGoogle+の「ハングアウト」を通じて、「リモートロマンス」を遠隔操作して、実際に来場せずとも「ジョジョ展」を鑑賞することができた。
https://news.mynavi.jp/article/20121102-a169/

リンク

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2025年01月01日 01:58