概要

ル・ヴァラヴァ・ザードの戦いとは、蜉蝣時代の戦乱の中で、アルファ697年2月、ベルザフィリス国軍とアル国軍の間に起きた戦いである。
アル国の最後の戦いであり、ルーディア包囲網が事実上崩壊する戦いでもある。


戦闘に至るまでの背景


▲696年10月における勢力図

ロッド国への電撃的侵攻を続けていたロードレア国を、レイディックの弟アイルに反逆させる(ルバークの乱)という手で撤退させるべく手を打っていたベルザフィリス国。
そのベルザフィリス国自身も、大掛かりな出陣の準備にとりかかっていた。
バルド国が滅びてからルーディア包囲網連合軍は、急速に互いの連携行動を欠きはじめた。
別にバルド国が連合の楔として重要な役割を働いていたわけではなく、連合参加の一国が滅びた事から「共にルーディアに当たる」から「ルーディアと対峙する危険は他国に押し付ける」という思考に傾き始めた為である。

こうして、それまで防戦一方だったベルザフィリス国が、ついに反撃に出る時がきた。
開闢以来最大規模の兵力を動員し、五舞将と軍師ディルセアを引きつれて、独眼竜ルーディアは宿敵アル国との決戦に挑み、カウスタの戦いメルス城の戦いに代表されるアル国との数度の戦いに悉く勝利し、領土深くまで侵入したベルザフィリス国軍であった。

だが、組織とは人が増えれば増えるほど綻びやすい。
徹底した実力主義により人材を集めたベルザフィリス国においてもそれは例外ではなかった。
この時点ではまだ芽が出たに過ぎないが、この頃からベルザフィリス国の中核を担う「五舞将」に多少の派閥ができつつあった。
ガイヴェルドヴィルガスの「ベルザフィリス国」に忠誠を誓う者と、デイロードシレンの「独眼竜ルーディア個人」に忠誠を誓う者の間に多少の考え方のずれが生じていたのである。
だが、ラゴベザスがその両者と親交を持ち、五舞将が分裂しない中和の役割を務めていたこと、そして何よりも勝っている時はその様な問題が形として見えないことからこの時点では誰も気に留めていなかった。
事実、五舞将にしても、決して不仲というわけではなく、時には酒宴を重ねながらこの遠征でも共に協力してアル国との連戦に勝利をし続けていた。

1月24日、ついにアル国は、国主ザグルス自らが軍勢を率い、ベルザフィリス国との決着をつけるべく出陣した。
相手を領土深くまで誘い込んで退路を断ち撃破するの作戦は、遠征軍に対しての常套手段であったが、アル国においては、計算しての行動という訳ではなく、本当に領土深くまで一方的な侵攻を許しているだけであった。
そこまで一方的な進軍を許したのは、国主ザグルスの暴政に苦しんでいたアル国領民にとって、ベルザフィリス国軍は「解放軍」に見えた為、彼らを歓呼の声で出迎え、各地の守備隊はもはや戦わずしてベルザフィリス国に降伏していた為である。
忠臣を遠ざけ、自分を煽てる奸臣のみを周囲に置いていたザグルスにこの様な事実を伝える者がいなかった為、ザグルスはこの時はじめて前線の実情を知り、怒りくるって全軍に出陣を命じた。
こうして全軍は最大にして最後の決戦、ル・ヴァラヴァ・ザードの戦いへと赴く。


両軍の戦力

攻撃側 守備側

ベルザフィリス国軍
軍勢
アル国軍
総兵力124000 兵力 総兵力105000
ルーディア 総指揮 ザグルス
ディルセア 軍師
主要参戦者

ルーディア

ディルセア

レニィラ

ガイヴェルド

ラゴベザス

ザグルス

レディナス

フィッツ

メリア

ライバード

デイロード

ヴィルガス

シレン

レガード

ルーザ

バドン


戦闘経緯


アル国は各地の軍勢を集結させた事もあり、数こそ大差はなかったが、既に軍勢としての機能は失われていた。
兵の士気も低く、ここにきてもフィッツ達優将の意見を聞き入れないザグルス
すでにベルザフィリス国と内通していたルーザ将軍が、これらの内情をすべてベルザフィリス国に伝え、決戦がはじまったら反乱を起こす約束まで交わすが、事前に発覚して処刑される事件が起きる。

この時のザグルスの怒りは凄まじく、本国に伝令を送りルーザの家族を全員処刑させ、ルーザ本人は生きたまま両目をくりぬき、ベルザフィリス国陣へ向けて歩かせたが、途中で力尽きて絶命すると、その五体を切り裂いて裏切り者の末路として諸将に見せしめのため晒した。


2月16日、既にアル国の末路を悟っていた元アル国四天王レディナス、そしてフィッツの、せめて国に殉じるという悲壮な決意と共に決戦の火蓋はきっておとされた。

ヴィルガスが猛攻撃を仕掛けるが、これをフィッツが三度撃退しその武勇を存分に知らしめるが、やがてレガード部隊を壊滅させたラゴベザス部隊もフィッツ攻撃に加わり、勇戦虚しくフィッツは生け捕られる。

かつてシレンに反乱の疑いをかけ、アル国から追い出した将ライバードは、皮肉にもベルザフィリス国の五舞将となったシレンによって討たれ、メリアデイロードの突撃の前に壊滅する。
暴君ザグルスが唯一心を許した、四天王時代から苦楽を共にしたレディナスも、国に殉じて散った。


戦いは最終局面へと向かい、自分たちが追い詰められていることを最後まで認めなかったバドンも討たれる。
そして、レディナス戦死の報告を聞いたとき、ザグルスは全ての終わりをようやく覚悟し、ルーディアを道連れにするべく、ベルザフィリス国本陣に向かって壮絶な特攻を仕掛ける。
しかし、その刃が独眼竜に届くわけもなく、全身に矢を受け、アル国を牛耳った暴君も最期を遂げた。

この戦いでアル国の将は、主だった者で25名が戦死、13名が捕虜となり、そのうちレガードを含む9名は説得に応じてベルザフィリス国に帰順、4名は説得に耳を傾けず処刑を望んだ。
その4名の中にフィッツの姿があった。
ルーディアは、彼の才を惜しんで自ら説得に赴いたが、フィッツはこれを拒絶、自分の策がとりあげられていたら立場は逆だったと語るフィッツに対して、ルーディアはそれがどの様な策だったか興味を持ち、フィッツから聞こうとする。

彼が語った策はこうであった。
ザグルスレディナスの主力部隊をもってル・ヴァラヴァ・ザードはひたすら防戦に徹して時間を稼ぎ、その間にシャリアル国にザグルスの娘ルーファを嫁がせ援軍を呼び、ベルザフィリス国首都ベルス城を急襲させる。
撤退をはじめるベルザフィリス国軍をザイドーン平原にて待ち伏せ、更にラヌール川に伏兵を置き止めをさす。
その話を聞き終えた時、ルーディアフィッツには希望通り処刑を命じ、その後諸将の前で「ザグルスが彼の策を用いていれば、今頃この地に独眼竜五舞将の墓が並んでいただろう」と洩らした。


戦いの結末

戦いの終決から数日後、国主ザグルスの長男ルバス、長女ルーファルーディアの元に降伏する為に訪れた。
暴君の子ではあったが、父と違い、良識と見識を持つこの兄妹の言葉をルーディアは信じ、ここにアル国もベルザフィリス国に吸収されることとなる。
バルド国、アル国を平定し、ルーディア包囲網は、ここに終焉を迎えた。


ロッド国の南下

アル国がもはや防波堤として機能しないことを悟ったロッド国は、ギザイアが早い段階で動きだし、シャリアル国と不戦条約を結ぶと、一気に軍勢を南下させベルザフィリス国に降伏して混乱状態となっていたアル国に進軍し、リッドゾーン盆地一帯をかすめ取った。

ルバスルーファと今後の統治について打ち合わせをしていたベルザフィリス国にとっては、まさに電撃的な進軍を受けたこととなる。
ただし、ロッド国が手に入れた領土の多くが無人地帯ということもあり、ベルザフィリス国はまずは手に入れたアル国の統治と人事の再編を優先し、すぐに奪還作戦を立てることはなかった。




最終更新:2024年07月17日 20:09