SCP-1712-JP

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&font(#6495ED){登録日}:2017/08/01 (火) 11:40:00 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 9 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- SCP-1712-JPは、シェアード・ワールド「[[The SCP Foundation]]」に登場するオブジェクト(SCiP)のひとつである。 [[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(The SCP Foundation)]]は発見後しばらくはAnomalousだったが、現在はNeutralized。 少々特殊なクラス変化であるが、このSCiP自体もかなり特異なパターンで、発見以来財団はこのSCiPからなんの異常性も検出していない。 じゃぁSCiPじゃないんじゃないの、と言いたくなるだろうし、実際財団も「これ自体はもはや異常存在ではない」と考えAnomalousアイテムとして管理していたのだが、 あるインシデントを機に「発見時に既に異常性を喪失していたSCiP」として再分類され、今に至っている。 項目名は「 "21世紀"の地底戦車」。 *概要 ~これが「21世紀」の全貌だ!~ コイツが何かというと、全長約10.5mの概ね流線形をした装軌式車両…わかりやすく商標登録名で言ってしまうが、キャタピラ付き車両である。 重度の放射能汚染を受けているため現在は全機能停止の上で高密度タングステン板で覆われた大型車両格納庫に保管されており、 調査時には重放射線防護服着用の上、標準的な放射能汚染区域活動要綱に従うよう特別収容プロトコルにより指示されている。 Anomalousアイテム分類時の扱いの記録はないが、性質自体に変化はないのでおそらく同様に取り扱っていたのではないだろうか。 で、このSCiPがどのような性質を持っているかというと、以下の通り。 ・主流工学において採用されない、ニッケルチタン合金とテクタイトの複合材(車内表示曰く「アストロチタン合金」)で構成された車体 ・先述の通り概ね流線形ながら、操縦席のキャノピー・パラボラアンテナ・用途不明の小翼など突起物の多い構造 ・車体前部に2基並列された円錐形のドリル型部位 ・おそらく動力源として設置されたのであろう、車体後方の小型核分裂炉 ・ドリル状部位の上方に設置された、マイクロ波照射装置に類似すると思しき破損した構造物(車内表示曰く「熱線砲」) ・同じくドリル状部位の上方に設置された発射管1門(車内表示曰く「地中ミサイル」用の発射管) ・車体外面への、日本語と英語による「世界科学局」なる未確認の組織名、および「2-040」との刻印 ……ピンと来るかどうかがだいぶ世代によって違いそうだが、要はこのSCiP、20世紀半ばに児童向けSF小説で描かれたような ドリルで地中を掘り進む「&font(#994c00){地底戦車}」の形そのまんま……というかおそらくは地底戦車そのものなのである。 おそらくは、というのが曲者でこの地底戦車(仮)、大きく分けて2つの理由によりまともに機能していない。 まず1つに、こいつは各部に至近距離で爆発を受けたような損傷を受けており、これが一部の機能停止を招いている。 なぜそんなことになったかは後述するが、これにより「熱線砲」や操縦・走行機能が動かなくなっているのだ。 そして……2つ目がより重大なのだが、財団日本支部の工学部門による検証の結果、 ・一切の異常性及びその痕跡は存在せず、全体を構成する&font(#0000ff){1950~1960年代に誕生した科学技術相応の機能しか持たない} ・核分裂炉の出力が全体の機能に対し不十分、ついでに放射線遮蔽措置も不十分。毎時10グレイ以上の放射線を外部に放出&footnote(10グレイ=8000ミリシーベルト。全身被曝の致死量は実効線量で1回7000ミリシーベルトとされており、到底生存可能な線量ではない) ・ドリル状部位の形状が掘削に不適当であり、前方投影面積が小さいため車体が通れるだけのトンネルを形成できない(=&font(#ff0000){地中で前進できない}) ・車体後方に排出される残土の処理機能がないため後方が土で埋まってしまう(=&font(#ff0000){地中で後退もできない}) ということが明らかになった。……そう、この地底戦車(仮)、&bold(){地中活動能力を事実上持っていない}のである。 こうした結論が出たために財団はコイツの修復を放棄し、Anomalousアイテムに分類した。 *発見 ~「21世紀」との遭遇~ コイツが発見されたのは2001年2月。某県の自然公園地下から起源不明の高線量放射線検出、との報を受け 即応調査を行った機動部隊て‐23("アマノウズメ")が地下から稼働中の地底戦車(仮)を発掘する。 ……稼働中であるので先に示した通りの高線量放射線を放出しまくるわけだが、そこは収容のエキスパートたる財団の本領発揮。 予めわかっている放射線対策などお手の物、数時間後には機能停止状態で回収された。 無論カバーストーリーの適用と現地の除染処理が行われたことは言うまでもない。 特筆事項として、発見時の地底戦車(仮)には1名のモンゴロイド男性と思しき損壊の激しい遺体が存在していた。 SCP-1712-JP-Aに指定された乗員と思しき人物の検死・解剖調査の結果、 死亡時期は2001年1月初頭、死因は重度の熱中症および急性放射線症と判明。 ……いかにも「夢の21世紀」な地底戦車(仮)の乗員は、21世紀の到来まもなくこの欠陥戦車に殺された、ということが分かったわけである。 また、操縦席のオープンリール式レコーダー(テープレコーダーの一種で、リールが剥き出しなもの)の音声記録もこの推測を裏付けた。 回収後に周辺調査を行った結果、回収地点から後方数十kmにわたり土砂の攪拌や岩盤の破砕の痕跡が連続して確認される。 音声記録と擦り合わせた結果、財団はかつてこの地底戦車(仮)が地中活動能力を発揮可能であった、と推測。 現物の性能調査結果と合わせて、「SCP-1712-JPの地中活動能力は外部世界に依拠する事象である」という仮説が支持されている。 結論として、この地底戦車は地中をドリルで掘り進める異世界から突如基底世界に転移し、 その結果基底世界の科学原理に基づいて地中で立ち往生した、と財団は判断したわけである。 異世界の製品だけどSCiPじゃなくてAnomalousアイテム扱いというのに違和感を感じるかもしれないが、基底世界への転移自体は[[割とよくあること>SCP-014-JP-EX]]。 一過性の異世界転移自体は、財団の力をもってすれば「特別でない収容プロトコルで対応可能」ということなのだ。 *音声記録 ~「21世紀」の幕切れ~ では実際のところこの地底戦車(仮)に何があったのか。音声記録を要約すると、以下のようになる。 #openclose(show=地底探検戦車040号の定時報告記録){ ・1回目記録 本部との交信途絶のため録音装置に定時報告を入力する旨の宣言から始まる。 時刻は0時0分ジャスト。世界科学局・日本科学センター所属地底探検戦車040号はメーンドリルの能力喪失を報告。 ドリルは駆動するもドリルより後方の車体が地中を通過できないことに関して、まったく原因不明、と主張している。 ・2回目記録 前回から1時間経過。地上への再上昇を試みるも、後方の障害物のために失敗し、進退窮まった旨の報告。 車体の異常蓄熱について言及し、周囲が狭いため降車調査はできないと報告。水・食料・空気は十二分の貯蔵があるらしい。 役に立たない核分裂炉が牙を剥き始めているが、降車調査……本来この戦車はどんなサイズのトンネルが掘れたのか気になるものである。 ・3回目記録 前回から1時間経過。車体蓄熱の悪化に伴う生命の危機の恐れを報告。 どうやらSCP-1712-JP-Aはこの原因は自分が閉じ込められた空間に原因があると判断したようで、 「熱線砲」と「地中ミサイル」による前方障害物の溶断・爆砕で進路確保を目指すことを報告している。 ・4回目記録 前回から1時間経過。進路確保の失敗、その絶望的な結末が記録されている。 「熱線砲」、財団が理解するところマイクロ波照射装置……つまるところそれは、電子レンジの機能の延長線上でしかない。 岩盤を破壊する威力など出しようもなく、虚しく岩を温めるのみ。 「地中ミサイル」は残弾が発見できなかったため詳細な機構は不明だが、おそらくは地底探検戦車040号と根本的な移動方法が同一なのだろう、 先端のドリル部分より先が潜行せずに爆発、この余波で履帯と操縦装置を破壊してしまったことが報告されている。 到底耐えようのない車体蓄熱の高まりの中、一切の移動方法を喪失し、生還が絶望的である旨が記録される。 ・5回目記録 前回から5時間強経過。 21世紀科学文明を構築する法則そのものが瓦解してしまったような異常事態、と状況を形容。 いかなる見地を経たものか、陥った状況の理解には至ったようだが、打つ手は何もない。 車体の蓄熱とは別に40度強の高熱を発症したが、電算機が病原体を特定できない、と報告。 いよいよ急性放射線症の症状が出てきたらしい。 ・6回目記録 前回から28時間経過。 皮膚に斑点が生じ、毛髪は抜け落ちる。医療具による措置は効を奏さず、病状の原因一切不明。 放射線症の急速な悪化が顕著に確認できる。どうやら、夢のエネルギー原子力がもたらすものは彼らにとって全くの未知であるようだ。 ・7回目記録 前回から46時間経過。記録されている最後の音声であり、死期を悟ったSCP-1712-JP-Aの遺言となっている。ここだけは引用しておこう。 #center(){ &font(#008cff){もはや……水すら喉を通らず……声を出すのにも……多大な苦痛を要する状態です。} &font(#008cff){自分の命は……風前の灯火でありましょう。} &font(#008cff){(約2分の間隔をおいて)} &font(#008cff){こちら地底探検戦車040号、さようなら} &font(#008cff){……21世紀よ、さようなら。} } } *インシデント記録 ~「21世紀」再び~ かくのごとく[[科学の壁>空想科学読本]]の前に散った地底探検戦車040号を財団は回収したわけだが、 2003年4月7日、なんの因果か[[鉄腕アトム]]の誕生日に事態が変化し、一過性の世界転移とか言っていられなくなった。 事の始まりは防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)が回収現場付近で「震源が移動する震度1未満の地震」を観測したこと。 即急の情報封鎖の上で調査を行った結果、以前の調査で存在しなかった新しい地中の攪拌・破砕痕の他、 回収地点に地底探検戦車040号の車体と同材質……アストロチタン合金で作成されたカプセルが発見される。 カプセルの内容物は防腐処理された花束と、以下の内容を日本語・英語の両方で記したプレート。 #center(){ &font(b,#ff0000){在り得るべきでない21世紀の犠牲となった、勇敢なる地底探検戦車040号とその乗組員を記念して。} &font(b,#ff0000){21世紀防衛隊極東支部} } この発見の結果、財団は地底探検戦車040号と「21世紀防衛隊」の背景事象への研究優先度は高い、と判断。 再分類が行われ、NeutralizedクラスオブジェクトとしてSCP-1712-JPが設定されるとともに、 機動部隊み-4("新夢想家")による調査を進めている。 21世紀が夢から現実になって久しいが、「夢の21世紀」の訪れは、到底「輝かしき未来」とは言えそうもない。 **大本の世界では ディスカッションによれば、この地底戦車が開発された世界では物理法則が基底現実とは根本的に違っているらしい。 要約すれば、それこそまさに空想の世界がそのまま適用されたような法則によって成り立つ世界のようだ。 基底現実≒我々の常識では機能するはずのない各種装備は、恐らく元の世界では想定通りの能力を発揮していたのだろう。 しかし、何かの事故で基底現実の地中に出てしまったためにこちら側の物理法則の支配下にはいり、すべての機能が停止。 結果がこのありさま、というわけである。 元記事の筆者によれば、「21世紀という『夢想』のパロディであると同時に、20世紀から見た21世紀と違い、今の我々が生きるこの時代は不可能ばかり増えている、という悲嘆」を記事にしたものであるらしい。 追記・修正は新世紀への憧れに想いを馳せながらお願いします。 ---- #right(){ SCP-1712-JP - "21世紀"の地底戦車 by Ikkeby-V ja.scp-wiki.net/scp-1712-jp この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,4) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 21世紀防衛隊は今後シリーズ化を予定している模様。次は2足歩行ロボットかエアカーか。 -- 名無しさん (2017-08-01 12:47:22) - なんか物悲しいな… -- 名無しさん (2017-08-01 14:24:27) - 『♪想像していたよりもずっと未来は現実的だね 車もしばらく空を走る予定はなさそうだ』ってことか -- 名無しさん (2017-08-01 17:26:40) - 2日で死んだから関係なかったんだろうけど、食糧や酸素の保存システムも元の世界から離れて役に立たなくなってそう。 -- 名無しさん (2017-08-01 17:37:02) - 空想科学読本というか空想科学大戦というか -- 名無しさん (2017-08-01 19:02:05) - 夢も浪漫も明日も無い財団世界に来てしまった事故の原因はなんだろうな -- 名無しさん (2017-08-01 19:13:02) - あっちの世界にはドラえもんも鉄腕アトムもウルトラマンも居たんだろうな。…おそらく怪獣も居ただろうからこっちより平和ではなさそうだが -- 名無しさん (2017-08-01 19:23:43) - 「見ろ 何たる無知!奴の脳ミソは鏡のようにツルツルじゃ―――っ」…いやこの台詞の元ネタの方では大笑いしちゃったけど、何つーかこんな視点で見ると虚しいものがあるな…。 -- 名無しさん (2017-08-01 21:29:23) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}:2017/08/01 (火) 11:40:00 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 9 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- SCP-1712-JPは、シェアード・ワールド「[[SCP Foundation]]」に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(SCP Foundation)]] (SCiP) のひとつである。 [[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]は発見後しばらくは[[Anomalous>Anomalousアイテム(SCP Foundation)]]だったが、現在はNeutralized。 少々特殊なクラス変化であるが、このSCiP自体もかなり特異なパターンで、発見以来財団はこのSCiPからなんの異常性も検出していない。 じゃぁSCiPじゃないんじゃないの、と言いたくなるだろうし、実際財団も「これ自体はもはや異常存在ではない」と考えAnomalousアイテムとして管理していたのだが、 あるインシデントを機に「発見時に既に異常性を喪失していたSCiP」として再分類され、今に至っている。 項目名は「 "21世紀"の地底戦車」。 *概要 ~これが「21世紀」の全貌だ!~ コイツが何かというと、全長約10.5mの概ね流線形をした装軌式車両…わかりやすく商標登録名で言ってしまうが、キャタピラ付き車両である。 重度の放射能汚染を受けているため現在は全機能停止の上で高密度タングステン板で覆われた大型車両格納庫に保管されており、 調査時には重放射線防護服着用の上、標準的な放射能汚染区域活動要綱に従うよう特別収容プロトコルにより指示されている。 Anomalousアイテム分類時の扱いの記録はないが、性質自体に変化はないのでおそらく同様に取り扱っていたのではないだろうか。 で、このSCiPがどのような性質を持っているかというと、以下の通り。 ・主流工学において採用されない、ニッケルチタン合金とテクタイトの複合材(車内表示曰く「アストロチタン合金」)で構成された車体 ・先述の通り概ね流線形ながら、操縦席のキャノピー・パラボラアンテナ・用途不明の小翼など突起物の多い構造 ・車体前部に2基並列された円錐形のドリル型部位 ・おそらく動力源として設置されたのであろう、車体後方の小型核分裂炉 ・ドリル状部位の上方に設置された、マイクロ波照射装置に類似すると思しき破損した構造物(車内表示曰く「熱線砲」) ・同じくドリル状部位の上方に設置された発射管1門(車内表示曰く「地中ミサイル」用の発射管) ・車体外面への、日本語と英語による「世界科学局」なる未確認の組織名、および「2-040」との刻印 ……ピンと来るかどうかがだいぶ世代によって違いそうだが、要はこのSCiP、20世紀半ばに児童向けSF小説で描かれたような ドリルで地中を掘り進む「&font(#994c00){地底戦車}」の形そのまんま……というかおそらくは地底戦車そのものなのである。 おそらくは、というのが曲者でこの地底戦車(仮)、大きく分けて2つの理由によりまともに機能していない。 まず1つに、こいつは各部に至近距離で爆発を受けたような損傷を受けており、これが一部の機能停止を招いている。 なぜそんなことになったかは後述するが、これにより「熱線砲」や操縦・走行機能が動かなくなっているのだ。 そして……2つ目がより重大なのだが、財団日本支部の工学部門による検証の結果、 ・一切の異常性及びその痕跡は存在せず、全体を構成する&font(#0000ff){1950~1960年代に誕生した科学技術相応の機能しか持たない} ・核分裂炉の出力が全体の機能に対し不十分、ついでに放射線遮蔽措置も不十分。毎時10グレイ以上の放射線を外部に放出&footnote(10グレイ=8000ミリシーベルト。全身被曝の致死量は実効線量で1回7000ミリシーベルトとされており、到底生存可能な線量ではない) ・ドリル状部位の形状が掘削に不適当であり、前方投影面積が小さいため車体が通れるだけのトンネルを形成できない(=&font(#ff0000){地中で前進できない}) ・車体後方に排出される残土の処理機能がないため後方が土で埋まってしまう(=&font(#ff0000){地中で後退もできない}) ということが明らかになった。……そう、この地底戦車(仮)、&bold(){地中活動能力を事実上持っていない}のである。 こうした結論が出たために財団はコイツの修復を放棄し、Anomalousアイテムに分類した。 *発見 ~「21世紀」との遭遇~ コイツが発見されたのは2001年2月。某県の自然公園地下から起源不明の高線量放射線検出、との報を受け 即応調査を行った機動部隊て‐23("アマノウズメ")が地下から稼働中の地底戦車(仮)を発掘する。 ……稼働中であるので先に示した通りの高線量放射線を放出しまくるわけだが、そこは収容のエキスパートたる財団の本領発揮。 予めわかっている放射線対策などお手の物、数時間後には機能停止状態で回収された。 無論カバーストーリーの適用と現地の除染処理が行われたことは言うまでもない。 特筆事項として、発見時の地底戦車(仮)には1名のモンゴロイド男性と思しき損壊の激しい遺体が存在していた。 SCP-1712-JP-Aに指定された乗員と思しき人物の検死・解剖調査の結果、 死亡時期は2001年1月初頭、死因は重度の熱中症および急性放射線症と判明。 ……いかにも「夢の21世紀」な地底戦車(仮)の乗員は、21世紀の到来まもなくこの欠陥戦車に殺された、ということが分かったわけである。 また、操縦席のオープンリール式レコーダー(テープレコーダーの一種で、リールが剥き出しなもの)の音声記録もこの推測を裏付けた。 回収後に周辺調査を行った結果、回収地点から後方数十kmにわたり土砂の攪拌や岩盤の破砕の痕跡が連続して確認される。 音声記録と擦り合わせた結果、財団はかつてこの地底戦車(仮)が地中活動能力を発揮可能であった、と推測。 現物の性能調査結果と合わせて、「SCP-1712-JPの地中活動能力は外部世界に依拠する事象である」という仮説が支持されている。 結論として、この地底戦車は地中をドリルで掘り進める異世界から突如基底世界に転移し、 その結果基底世界の科学原理に基づいて地中で立ち往生した、と財団は判断したわけである。 異世界の製品だけどSCiPじゃなくてAnomalousアイテム扱いというのに違和感を感じるかもしれないが、基底世界への転移自体は[[割とよくあること>SCP-014-JP-EX]]。 一過性の異世界転移自体は、財団の力をもってすれば「特別でない収容プロトコルで対応可能」ということなのだ。 *音声記録 ~「21世紀」の幕切れ~ では実際のところこの地底戦車(仮)に何があったのか。音声記録を要約すると、以下のようになる。 #openclose(show=地底探検戦車040号の定時報告記録){ ・1回目記録 本部との交信途絶のため録音装置に定時報告を入力する旨の宣言から始まる。 時刻は0時0分ジャスト。世界科学局・日本科学センター所属地底探検戦車040号はメーンドリルの能力喪失を報告。 ドリルは駆動するもドリルより後方の車体が地中を通過できないことに関して、まったく原因不明、と主張している。 ・2回目記録 前回から1時間経過。地上への再上昇を試みるも、後方の障害物のために失敗し、進退窮まった旨の報告。 車体の異常蓄熱について言及し、周囲が狭いため降車調査はできないと報告。水・食料・空気は十二分の貯蔵があるらしい。 役に立たない核分裂炉が牙を剥き始めているが、降車調査……本来この戦車はどんなサイズのトンネルが掘れたのか気になるものである。 ・3回目記録 前回から1時間経過。車体蓄熱の悪化に伴う生命の危機の恐れを報告。 どうやらSCP-1712-JP-Aはこの原因は自分が閉じ込められた空間に原因があると判断したようで、 「熱線砲」と「地中ミサイル」による前方障害物の溶断・爆砕で進路確保を目指すことを報告している。 ・4回目記録 前回から1時間経過。進路確保の失敗、その絶望的な結末が記録されている。 「熱線砲」、財団が理解するところマイクロ波照射装置……つまるところそれは、電子レンジの機能の延長線上でしかない。 岩盤を破壊する威力など出しようもなく、虚しく岩を温めるのみ。 「地中ミサイル」は残弾が発見できなかったため詳細な機構は不明だが、おそらくは地底探検戦車040号と根本的な移動方法が同一なのだろう、 先端のドリル部分より先が潜行せずに爆発、この余波で履帯と操縦装置を破壊してしまったことが報告されている。 到底耐えようのない車体蓄熱の高まりの中、一切の移動方法を喪失し、生還が絶望的である旨が記録される。 ・5回目記録 前回から5時間強経過。 21世紀科学文明を構築する法則そのものが瓦解してしまったような異常事態、と状況を形容。 いかなる見地を経たものか、陥った状況の理解には至ったようだが、打つ手は何もない。 車体の蓄熱とは別に40度強の高熱を発症したが、電算機が病原体を特定できない、と報告。 いよいよ急性放射線症の症状が出てきたらしい。 ・6回目記録 前回から28時間経過。 皮膚に斑点が生じ、毛髪は抜け落ちる。医療具による措置は効を奏さず、病状の原因一切不明。 放射線症の急速な悪化が顕著に確認できる。どうやら、夢のエネルギー原子力がもたらすものは彼らにとって全くの未知であるようだ。 ・7回目記録 前回から46時間経過。記録されている最後の音声であり、死期を悟ったSCP-1712-JP-Aの遺言となっている。ここだけは引用しておこう。 #center(){ &font(#008cff){もはや……水すら喉を通らず……声を出すのにも……多大な苦痛を要する状態です。} &font(#008cff){自分の命は……風前の灯火でありましょう。} &font(#008cff){(約2分の間隔をおいて)} &font(#008cff){こちら地底探検戦車040号、さようなら} &font(#008cff){……21世紀よ、さようなら。} } } *インシデント記録 ~「21世紀」再び~ かくのごとく[[科学の壁>空想科学読本]]の前に散った地底探検戦車040号を財団は回収したわけだが、 2003年4月7日、なんの因果か[[鉄腕アトム]]の誕生日に事態が変化し、一過性の世界転移とか言っていられなくなった。 事の始まりは防災科学技術研究所の高感度地震観測網(Hi-net)が回収現場付近で「震源が移動する震度1未満の地震」を観測したこと。 即急の情報封鎖の上で調査を行った結果、以前の調査で存在しなかった新しい地中の攪拌・破砕痕の他、 回収地点に地底探検戦車040号の車体と同材質……アストロチタン合金で作成されたカプセルが発見される。 カプセルの内容物は防腐処理された花束と、以下の内容を日本語・英語の両方で記したプレート。 #center(){ &font(b,#ff0000){在り得るべきでない21世紀の犠牲となった、勇敢なる地底探検戦車040号とその乗組員を記念して。} &font(b,#ff0000){21世紀防衛隊極東支部} } この発見の結果、財団は地底探検戦車040号と「21世紀防衛隊」の背景事象への研究優先度は高い、と判断。 再分類が行われ、NeutralizedクラスオブジェクトとしてSCP-1712-JPが設定されるとともに、 機動部隊み-4("新夢想家")による調査を進めている。 21世紀が夢から現実になって久しいが、「夢の21世紀」の訪れは、到底「輝かしき未来」とは言えそうもない。 **大本の世界では ディスカッションによれば、この地底戦車が開発された世界では物理法則が基底現実とは根本的に違っているらしい。 要約すれば、それこそまさに空想の世界がそのまま適用されたような法則によって成り立つ世界のようだ。 基底現実≒我々の常識では機能するはずのない各種装備は、恐らく元の世界では想定通りの能力を発揮していたのだろう。 ドリルは大穴を穿ち、熱線砲は岩盤を溶かし、核分裂炉は100%安全なエネルギー源だったのだろう。 しかし、何かの事故で基底現実の地中に出てしまったためにこちら側の物理法則の支配下にはいり、すべての機能が停止。 結果がこのありさま、というわけである。 元記事の筆者によれば、「21世紀という『夢想』のパロディであると同時に、20世紀から見た21世紀と違い、今の我々が生きるこの時代は不可能ばかり増えている、という悲嘆」を記事にしたものであるらしい。 *類似する(かも知れない)オブジェクト -[[SCP-2040]](通称:鋼鉄のメッセンジャー) 本部が収容しているオブジェクト。SCP-2000コンテスト出品作の一つ。 宇宙の様々な星を旅してきたと自称するロボット。 エネルギー源は原子力(自称)、古式な内部回路にもとどまらず現代の水準を遥かに上回る機能を有すると、古典的なSFに登場するロボットのようなスタイル。 人類に対ししつこく「プライマリ・メッセージ」に対する返答を求める。 …だがこのプライマリ・メッセージの内容を読む限り、この世界に「夢の21世紀の技術」が存在できない理由について、彼(或いは彼を創り上げた存在)はどうやらこの世界の物理法則が原因であるということを察知しているようだ。 その上で人類に対し、「無用な物理法則をなんとかするために力を貸してくれ」と迫っている。 追記・修正は新世紀への憧れに想いを馳せながらお願いします。 ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-1712-JP - "21世紀"の地底戦車 by Ikkeby-V http://ja.scp-wiki.net/scp-1712-jp この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,22) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - 21世紀防衛隊は今後シリーズ化を予定している模様。次は2足歩行ロボットかエアカーか。 -- 名無しさん (2017-08-01 12:47:22) - なんか物悲しいな… -- 名無しさん (2017-08-01 14:24:27) - 『♪想像していたよりもずっと未来は現実的だね 車もしばらく空を走る予定はなさそうだ』ってことか -- 名無しさん (2017-08-01 17:26:40) - 2日で死んだから関係なかったんだろうけど、食糧や酸素の保存システムも元の世界から離れて役に立たなくなってそう。 -- 名無しさん (2017-08-01 17:37:02) - 空想科学読本というか空想科学大戦というか -- 名無しさん (2017-08-01 19:02:05) - 夢も浪漫も明日も無い財団世界に来てしまった事故の原因はなんだろうな -- 名無しさん (2017-08-01 19:13:02) - あっちの世界にはドラえもんも鉄腕アトムもウルトラマンも居たんだろうな。…おそらく怪獣も居ただろうからこっちより平和ではなさそうだが -- 名無しさん (2017-08-01 19:23:43) - 「見ろ 何たる無知!奴の脳ミソは鏡のようにツルツルじゃ―――っ」…いやこの台詞の元ネタの方では大笑いしちゃったけど、何つーかこんな視点で見ると虚しいものがあるな…。 -- 名無しさん (2017-08-01 21:29:23) - もし財団世界の連中が似たようなもの作ったら、モゲラとMOGERAくらいの別物作ったりするのかな -- 名無しさん (2017-08-01 23:12:37) - これがシリーズ化……無力化案件のオンパレードか、未完の年代記みたいなガチでヤバイ案件のどちらかかな? -- 名無しさん (2017-08-01 23:15:57) - レトロフューチャーってやつか -- 名無しさん (2017-08-01 23:29:43) - 恐らく向こうの世界のクレヨンしんちゃんでは、イェスタデイワンスモアが勝利したのだろう。 -- 名無しさん (2017-08-02 00:27:11) - よりによって人類に逃げ場なし、な財団世界に迷い込むとは。んで、向こう側は財団世界との行き来方法を確立した(しちゃった)のか。 -- 名無しさん (2017-08-02 01:34:30) - ナイル帝国からコア・アースへ抜けてきてリンク切断しちゃったみたいな?(判らない例え) -- 名無しさん (2017-08-02 12:51:55) - 暫くすると「西ドイツ」「ソ連」「EC」の調査隊が… -- 名無しさん (2017-08-03 15:28:52) - 今度は空中に音速の巨人が現れて瞬時に衝撃波でバラバラになるんですね、もしくは巨大なトカゲが現れて瞬時に自重で潰れるとか -- 名無しさん (2017-08-03 16:00:55) - ↑5勝利どころかあるいは勝負すらしてないのでは? -- 名無しさん (2017-08-03 20:59:04) - 財団世界は比較的可能性に満ちた世界だと思うけどな。特に人類滅亡の可能性がw -- 名無しさん (2017-08-04 14:47:08) - ↑5 トーグとか誰がわかるんだ!? -- 名無しさん (2017-08-04 15:05:35) - >2017-08-01 23:15:57 或いは21世紀防衛隊「…つまりこっちの世界の物理法則が通じない世界だからあんな事故になったんだな」 -- 名無しさん (2017-08-28 16:50:21) - ↑訂正 >2017-08-01 23:15:57 或いは21世紀防衛隊「…つまりこっちの世界の物理法則が通じない世界だからあんな事故になったんだな」→「こっちの世界の物理法則を持ち込む秘密兵器の開発に成功したぞ!」→SCP世界に21世紀防衛隊の世界の物理法則を「押し付けてくる」という割と洒落にならないシナリオの可能性も…なんとかしてくれGOC。 -- 名無しさん (2017-08-28 16:52:04) - 関係ないけど、オープンリール式テープレコーダー……うちの学校にもあったなぁ。ウン十年も前の話だけど。懐かしい。 -- 名無しさん (2017-08-28 17:07:34) - ↑5 そんな可能性ほしくないわっ!!(悲鳴 -- 名無しさん (2017-08-28 17:07:56) - 高度成長期の日本の未来のイメージ通りの世界ってことは、日本が世界をけん引している世の中なんだろうな -- 名無しさん (2017-10-06 17:22:05) - イルカが攻めてきたりしたんだろうか -- 名無しさん (2017-11-29 05:08:17) - インシデント本家で読んだけど口調や言葉選びがいかにも昭和の防衛隊っぽくて凝ってた -- 名無しさん (2018-09-21 12:33:59) - 向こうに財団があったらプロトコルGATTAIとかゴリゴリに実用してるんだろうな… -- 名無しさん (2019-02-14 10:47:47) - 時間停止能力者が窒息や凍死するとか -- 名無しさん (2019-07-03 06:10:58) - 向こうの世界ならクソトカゲが収容違反起こしてもガンダムやマジンガーZみたいな夢のロボットがボッコボコにして即再収容とか出来たんだろうな -- 名無しさん (2019-07-21 10:37:29) - わ -- 名無しさん (2019-11-08 19:51:45) - 特撮好きとしては、なんか虚しくなるSCP -- 名無しさん (2020-08-29 20:24:50) - 2−040って鋼鉄のメッセンジャーに似たナンバーなあたり意識してそう -- 名無しさん (2020-08-29 20:49:17) - ディスカッションの作者コメントなんかを見ると作者は意識してなかったっぽいけど、レトロフューチャー……というか60年代辺りに夢想されて実現しなかった未来への郷愁を、逆に60年代当時は想像すら出来なかったであろう創作形式をもって21世紀に成り立ったSCPで綴ったという、凄まじく皮肉な作品 -- 名無しさん (2020-10-26 10:52:30) - 防衛隊ってことは、何者かからの攻撃に対抗する組織だったのかな。もしかして、この戦車は、地底からの侵略に対抗する任務で潜っていた? それとも、訓練か、試作戦車のテストか…… -- 名無しさん (2020-10-26 15:27:22) - ↑6逆に古代の超文明が何個も発見されて財団の明日はどっちだ案件かもよ -- 名無しさん (2021-06-10 16:49:20) #comment #areaedit(end) }

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