SCP-752

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&font(#6495ED){登録日}: 2017/09/22 Fri 15:42:57 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 11 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- SCP-752は、シェアード・ワールド[[The SCP Foundation]]に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(The SCP Foundation)]](SCiP)。 [[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(The SCP Foundation)]]はKeter。 #contents() *概要 SCP-752は、とある山脈の北に存在する地下都市である。 人口は10000人ほどと見積もられている。 地下ではあるのだが、地熱発電で電力をまかない、照明装置を使うことで外界と連動した昼夜が人工的に作られている。 地下都市自体は未知の金属で覆われており、既知の信号全てと放射線を遮断する。 財団は金属の調査について、その中にいる10000人の人たちの収容違反を恐れ消極的である。 この10000人の人々なのだが、見た目は人間にそっくりである。 しかし人間やその他の社会的行動を取る哺乳類との行動特性とは類似しておらず、 むしろ昆虫のような社会を形成する。 基本的に利己的な人はおらず、皆社会の大きな利益のために活動している。 彼らの勤勉さにより、地下都市は外界に比べ非常に発展しているが、近年はその速度も落ち着いているようだ。 地下都市で回収された文書によれば、これらの10000人の人々は、 こちら側の人類の科学者や哲学者らによって構成される、”エウダイモン”なるグループによって作られた存在のようだ。 エウダイモンは4つのグループ、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタで構成されていて、各グループで担当した部分が違うようだ。 エウダイモンたちはこの地下都市SCP-752のことを『エウダイモニア』、そしてそこに住んでいる人々を『ホモ・エウダイモニア』と呼称していた。 対比としてエウダイモンたちは自分たちを『ホモ・サピエンス』とよんでいるため、ホモ・エウダイモニアを作った『神(エウダイモン)』は別に どこぞの[[ビックフット>SCP-1000]]ではないようだ。財団が読める言語で書いてあるので、[[ホモ・サピエンス・ディセンサス>SCP-1348/SCP-1427]]でもないと思われる。 *本題に入る前に 本オブジェクトでは、ギリシャ哲学的な幸福論について多少知っておくと理解がしやすくなる。 エウダイモニアとは簡単に言えばギリシャ哲学上の「幸福」のことで、アリストテレスが提唱した。 しかしこの幸福とはいわゆる「いっぱいガチャ引いたらSSR森久保を引いた」とか「コミケでめっちゃ好みの戦利品を手に入れた」みたいな物質的な快楽ではない。 アリストテレスは快楽を否定したわけではないが(この快楽からして現代人とは結構定義が異なるが)、 快楽の上に置いた最高善こそが「幸福(エウダイモニア)」であり、エウダイモニアは人が生きる上での「徳(アレテー)」の追求によって得られるものであるとした。 つまり道徳的に生きようねということなんだけど、その道徳的という考えは共同体への帰属意識からくるものであるといえる。 ちなみにエウダイモニアという言葉自体の原義は「よき守護者(ダイモン)に守られている状態」のこと。 *エウダイモンたちの記述 以下、「アルファ」「ベータ」「ガンマ」「デルタ」とだけある場合はエウダイモン内のグループ、 数字が付記されている場合はグループ内のメンバーであることを注記しておく。 >1日目 >エウダイモン-アルファ-1 >エウダイモニアの人口: 100 > >なんと輝かしい一日の始まりだろう。ホモ・エウダイモニア(Homo eudaimonia)が自らの暦を記す日だ。最後の一連の大規模実験のあと、50人の男性及び50人の女性を最終実験エリアへ導入した。あるのは、彼らと、人工太陽と、寺院と、我々が家畜化のために導入した動物及び植物数種のみ。 > >いまや観察以外にエウダイモンが行うべきことはない。 アルファ-1はアルファの指導者であり、同時にアルファはベータ・ガンマ・デルタへの協力を要請し取り付けた中核のグループであったようだ。 すなわちアルファ-1は実質的なトップである。 彼らがエウダイモニアにホモ・エウダイモニアを導入した時点では彼らは100人しかいなかったようだ。これがどう10000人になったのだろうか? >8年、24日目 >エウダイモン-ガンマ-1 >エウダイモニアの人口: 124 > >我々の幸福論による推測通り、人口増加は平均以上であった。生存競争を行う代わりに、彼らはあらゆる点で協力し合う。提供した全ての動物種は、食料及び労働力として成功裏に家畜化された。まだ農業活動の徴候は見受けられない。技術的発展は、期待された通り寺院に残したデータに基づいて進行している。 エウダイモニアに作られた『寺院』はホモ・エウダイモニアが速やかに技術を獲得するための書物を置いておく場所だったのだろうか。 生存競争を行わず協力的であるということを幸福と位置づけているあたり、もしかしたら共産主義的グループだったのかもしれない。 さて次はデルタ-4の記述だがこれは長いので要約する。 15年目に突入したエウダイモニアでは、ホモ・エウダイモニアが農業を行っていた。 驚異的なことに、ホモ・エウダイモニアは何人でも正常に組織が成立してしまうらしい。 しかし一方で、ホモ・エウダイモニアは死んだ人を食べるという行為に関してタブーとは見なされておらず、 また障害のある個体や衰弱個体は自殺するか殺される。 これはそういった個体は「社会の発展」にとって阻害要因になりうるから、とされるが、 これに関してベータ-1は見るに耐えなかったのか介入をしようとしていたようだ。 しかしアルファ-1はベータ-1にたいして「それはこっちの世界の道徳の話であって向こうには汚染になりうる」と説得したようだ。 エウダイモニアにはそれまでなかった建造物群が建つようになったことはデルタの想像した以上の発展であったようだ。 24年目になると、一気に300人弱まで増加。 しかしこのころになると、ベータ・ガンマ・デルタの望まない方向にホモ・エウダイモニアは進化を遂げていた。 彼らはほぼ「自発的に」自分たちの能力によってカースト制を構築し始めたのである。 ベータ・ガンマ・デルタは平等な社会を希求していたらしく、「なんか違うよなあ?」と不満を持った。 そして基本的に「社会の発展」を第一の目的としているホモ・エウダイモニアは、普通に生きれば150年は生きるとされるらしいのだが、 現状での推定年齢は45歳と短命種となっていた。早い話が過労死である。 こうしてベータ・ガンマ・デルタからは常軌を逸してるとしか思えない生活様式がそこでは繰り広げられていたのだが、 ホモ・エウダイモニアたち自身はそれに何の疑いもないようであり、そして――アルファからはあるがままの姿として捉えられている。 >40年、325日目 >エウダイモン-アルファ-1 >エウダイモニアの人口: ~1000 > >人口は増加し続けている。技術力は指数関数的に向上し続けている。この分だと、公表日のかなり前に我々の水準に達するであろう。 > >ベータ、ガンマ及びデルタには展望がない――私の素晴らしい創造物に対して、彼らはますます嫌悪感を高めている。彼らをこの計画の仲間として迎え入れた覚えはない。開発室を構築するために、その専門知識を必要としただけだ。私は、彼らが決してエウダイモニアの新生児室の中身を嗅ぎつけないよう手段を講じている。反抗を未然に防ぐのに十分だといいのだが。 アルファは明らかに何かを企んでいる。 アルファが元々エウダイモニア及びホモ・エウダイモニアを作ろうとした背景には何かしらの目的があったようだ。 本報告書(SCP-752のページ)だけでは残念ながらそれが商売なのか思想的なものなのか、はたまた軍事的なのかなどはさっぱりわからないが。 ここに来てアルファはベータ・ガンマ・デルタの三者からの反抗を恐れ、何かしらの工作をしていることがわかる。 そしてアルファの想定通り、ベータ・ガンマ・デルタは30年後にアルファに蜂起することになる。 >70年、87日目 >エウダイモン-デルタ-1 >エウダイモニアの人口: ~3000 > >人口増加は減速の徴候を示していない。未知の建築物に加えて、更なる増加を可能とするために、高層型のシェルターが現在構築されている。技術的進歩は、全ての予想を上回り続けている。我々は、寺院に残したものを消費し尽くした時点で成長が止まるのを祈ることしかできない。望ましくない行動は悪化している。ガンマは介入を試みて虐殺された。我々の残りは、アルファに対するクーデターを試みた。アルファ-3は同調を装い、大部分のベータへ致命的に毒を投与してのけた。 > >にも関わらずクーデターは成功した。我々は、まだそれらの建築物で行われていることを承知していない。しかし、ガンマに起こったことを考慮して、接触はしていない。アルファ-1、-2及び-5は逃亡した。その他は殺害あるいは捕獲されている。我々は解放メカニズムを動作不能とし、可能な限りこの場所を封鎖した。 エウダイモニアの人口は既に4桁にのぼった。「寺院に残したものを消費し尽くした時点で成長が止まるのを祈るしかできない」とあるが、 ここまで発展できるホモ・エウダイモニアがそんな程度で止まるんだろうか。甚だ疑問である。 ガンマはホモ・エウダイモニアの方向性を憂慮して介入しようとしたが、どうやらホモ・エウダイモニアに侵入者として殺されたようだ。 アルファへの不満を察知したアルファ-3は、「俺もアルファの方向性はやばいと思ってたんだよ」と近づきつつ、ベータの大半を毒殺して処分したという。 ここで生き残ったのはデルタと極小数のベータだが、彼らはなんとかアルファへの反逆に成功したようだ。 しかしアルファ-1、-2、-5は逃亡してしまったようであり、トップが生き残っている以上、別の場所で似たようなことをしないとは考えにくい。 一応アルファ-1がホモ・サピエンスである以上は同じことをやろうとしても寿命のほうが先に来るから大丈夫だろうと信じたいところだが。 どうやらエウダイモニアには解放メカニズムというものがあったらしい。 もしかしたら、「人間の行く末に悲観的になった人たちが、理想郷をつくりだしてそれを地球に広めようとした」ということなのかもしれない。 しかし今や出来上がったのは、「ヒトならざるもの」でしかなかった。 脳味噌だけは人間に匹敵するが、人間以上に階層社会を構築し、人間以上に社会に貢献できないものには冷淡で、 そして人間以上に自分たちの社会に疑いを持たない。個々人の理想などはなく、常に共同体の発展にだけ力を注いでいる。 これではディストピアとしか言いようがない。誰もこんな世界望んでない。 だがホモ・エウダイモニアにとってそれは「当たり前」であり、疑う余地はない。 彼らにとってのエウダイモニアはまさしくユートピアであった。 そもそもディストピアもユートピアの対義語として扱われながらも、どちらかといえばユートピアの限界、反転したものというものであり、 「ヒトならざる」ホモ・エウダイモニアにとってはまさしく理想郷であるのかもしれない。 最後にデルタ-1はこのように綴ってしめている。 >エウダイモニア人は、いまだガンマが構築した防御壁の向こうには世界が存在しないと信じている。ああ、願わくは、彼らが別の方法で学ぶことのなからんことを。 *エウダイモニアの今後 財団はエウダイモニアを調査するため、ガンマに起きたことを想定してか無人機で写真を撮っていた。 しかしその無人機がロスト。そして2ヶ月以内に、エウダイモニアでは無人機由来の技術が拡散していたという。 ホモ・サピエンスにとっては競争意識こそが発展の源だが、ホモ・エウダイモニアにとっては共同体意識こそが発展の源である。 としたら、ホモ・サピエンス以上に発展速度が早いのはよく考えれば当然なのかも知れない。 対立しなければやる気を出せないのが競争だが、対立そのものは協力すれば早く進むことを遠回りさせる要因でもあるのだから。 しかしもともとエウダイモニアにないものを2ヶ月以内に実用に持っていく技術力は危惧すべきものであり、 財団はエウダイモニアの調査のためにハイ・テクノロジーを使うことはできるだけ避けることを決めた。 また財団職員自身は立ち入っても無駄死にする可能性が高いため入っていない。 しかしである。 ガンマは入って死んだ。 無人機は解析され、実用化された。 この時点でホモ・エウダイモニアが外界に気付いていないという確証はあるのだろうか? 財団はホモ・エウダイモニアの収容違反に細心の注意を払っている。 外界に進出したホモ・エウダイモニアが外の技術を見れば圧倒的速度でそれを吸収し、 またたく間にホモ・サピエンスを殺害しうることは予想されるからだ。 最後はSK-クラス:支配シフトシナリオをもたらすことは想定できる。 >ホモ・サピエンス及びSCP-752-1間の直接的な生存競争はSK-クラス支配シフトシナリオへ至ると予測されており、いかなる代償を払ってでも、SCP-752-1が彼らの大洞窟より外部の世界について無知なままであるよう保たれなければなりません。 また、アルファがエウダイモニアの新生児室に残したものも気になるところである。 ベータ・ガンマ・デルタに隠さなきゃいけないものとはなんだったのか? 報告書では大量の受精前かつ表面上は自発的な[データ削除済]とだけしか書かれておらず不明である。 受精前ということは卵細胞であることが伺えるが、データ削除しなければならないとしたらなにがあったというのだろうか。 #center(){&sizex(7){SCP-752 - &ruby(ヒトならざる者の理想郷){Altruistic Utopia}}} ---- #right(){SCP-752 - Altruistic Utopia by Alias Pseudonym www.scp-wiki.net/scp-752 ja.scp-wiki.net/scp-752 この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。} #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,2) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - …よく考えたら「介入したエウダイモンが殺された」「無人探査機をバラされて解析された」って時点で、自分達の意思とは異なる存在が世界の外に居ることにはとっくに気づいてそうだよね -- 名無しさん (2017-09-22 19:08:03) - 森久保で草 -- 名無しさん (2017-09-22 19:14:06) - こんなのを作り出せる奴らがどこの支部の要注意団体にも登録されてないって言うヤバさ -- 名無しさん (2017-09-22 19:42:15) #comment #areaedit(end) }
&font(#6495ED){登録日}: 2017/09/22 Fri 15:42:57 &font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red) &font(#6495ED){所要時間}:約 11 分で読めます ---- &link_anchor(メニュー){▽}タグ一覧 &tags() ---- SCP-752は、シェアード・ワールド[[SCP Foundation]]に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(SCP Foundation)]](SCiP)。 [[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(SCP Foundation)]]はKeter。 #contents() *概要 SCP-752は、とある山脈の北に存在する地下都市である。 既知の信号全てと放射線を遮断する未知の金属で地下都市自体を覆われ、地熱発電で電力をまかない、照明装置を使うことで外界と連動した昼夜が人工的に作られている。 財団はこの金属の調査について、見た目は人間そっくりな中の人たちの収容違反を恐れて消極的。 で、見積もられている10000ほどの人たちだが、人間その他の社会的行動を取る哺乳類には類似しておらず、むしろ昆虫的な行動を取る。基本的に利己的な人はおらず、皆社会の大きな利益のために活動している。彼らの勤勉さにより、地下都市の発展速度は外界よりも素早く非常に発展しているが、近年はその速度も落ち着いているようだ。 地下都市で回収された文書によれば、科学者や哲学者らによって構成される、”エウダイモン”なるグループによって作られた存在だという。 財団が読める言語で自分たちを『[[ホモ・サピエンス>ヒト(生物)]]』と書いてあるので、[[ビックフット>SCP-1000]]でも、[[ホモ・サピエンス・ディセンサス>SCP-1348/SCP-1427]]でもないと思われる。 この地下都市を『エウダイモニア』と呼ぶエウダイモンたち███年前には中の人たち『ホモ・エウダイモニア』を作り、&font(#f00){アルファ}、&font(#008cff){ベータ}、&font(#ff7800){ガンマ}、&font(#008000){デルタ}に分類している。 **ギリシャ哲学的における『幸福論』 アリストテレス曰く『&ruby(幸福){エウダイモニア}』の原義は「&ruby(ダイモン){よき守護者}に守られている状態」。 道徳的という考えは共同体への帰属意識からくるもの。 物質的な快楽((現代人とは結構定義が異なる))まで否定しないが、生きる上での「&ruby(アレテー){徳}」を追求することにより人が得られる&bold(){最高善}を「&ruby(エウダイモニア){幸福}」であるとした。 つまり&ruby(幸福){エウダイモニア}とは「ガチャ引いたらSSR森久保を引いた」とか「コミケでめっちゃ好みの戦利品を手に入れた」等ではなく、&bold(){道徳的に生きようね。組織に貢献することが一番の幸福だよ。}と言うことである。 *エウダイモンたちの記述 以下、「&font(#f00){アルファ}」「&font(#008cff){ベータ}」「&font(#ff7800){ガンマ}」「&font(#008000){デルタ}」とだけある場合はエウダイモン内のグループ、 数字が付記されている場合はグループ内のメンバーであることを注記しておく。 >1日目 >&font(#f00){エウダイモン-アルファ-1} >エウダイモニアの人口: 100 > >なんと輝かしい一日の始まりだろう。ホモ・エウダイモニア(Homo eudaimonia)が自らの暦を記す日だ。最後の一連の大規模実験のあと、50人の男性及び50人の女性を最終実験エリアへ導入した。あるのは、彼らと、人工太陽と、寺院と、我々が家畜化のために導入した動物及び植物数種のみ。 > >いまや観察以外にエウダイモンが行うべきことはない。 &font(#f00){アルファ}はベータ・ガンマ・デルタへの協力を要請し取り付けた中核のグループであったようだ。 すなわちアルファ、強いては&u(){&font(#f00){アルファ-1}が実質的なトップ}。 エウダイモニアにホモ・エウダイモニアを導入した時点では100人しかいなかったようだが、どう10000人にまで増加したのだろうか? >8年、24日目 >&font(#ff7800){エウダイモン-ガンマ-1} >エウダイモニアの人口: 124 > >我々の幸福論による推測通り、人口増加は平均以上であった。生存競争を行う代わりに、彼らはあらゆる点で協力し合う。提供した全ての動物種は、食料及び労働力として成功裏に家畜化された。まだ農業活動の徴候は見受けられない。技術的発展は、期待された通り寺院に残したデータに基づいて進行している。 &s(){&bold(){生存競争を行わず協力的である}ことを幸福と位置づけているあたり、もしかしたら共産主義だったのかもしれない。} エウダイモニアの『寺院』はホモ・エウダイモニアが速やかに技術を獲得するために当時の技術を情報化して保管した場所だったのだろうか。 >15年、212日目 >&font(#080){エウダイモン-デルタ-4} >エウダイモニアの人口: 170 &font(#080){デルタ-4}は長いので要約する。 ホモ・エウダイモニアが農業を行っていた。さらにそれまでなかった建造物群が建つようになったことはデルタの想像した以上の発展であったようだ。 驚異的なことに15年目のエウダイモニアでは何人でも正常に組織が成立してしまうらしい。 一方で、&u(){&bold(){『社会の阻害要因』になりうる}}障害のある個体や衰弱個体を自殺させるか殺すホモ・エウダイモニアは[[死んだ人を食べる行為>カニバリズム]]をタブーと見なさない。 見るに耐えなかった&font(#008cff){ベータ-1}は介入をしようとしていたが、&font(#f00){アルファ-1}は「それはこっちの世界の道徳の話であって向こうには汚染になりうる」と説得したようだ。 >24年、4日目 >&font(#008cff){エウダイモン-ベータ-4} >エウダイモニアの人口: ~300 24年目で300人弱まで増加したホモ・エウダイモニアは、自分たちの能力によって「自発的に」カースト制を構築し始める。 「社会の発展」を目的に150年は生きるはずのホモ・エウダイモニアの推定寿命は45歳。&bold(){早い話が&font(#f00){過労死}である。} 常軌を逸してるとしか思えない生活様式に平等な社会を希求したベータ・ガンマ・デルタが「なんか違うよなあ?」と不満を持つなか、&font(#f00){アルファ}はこれがホモ・エウダイモニアの本来のあるがままの姿として捉えている。 >40年、325日目 >エウダイモン-&font(#f00){アルファ-1} >エウダイモニアの人口: ~1000 > >人口は増加し続けている。技術力は指数関数的に向上し続けている。この分だと、公表日のかなり前に我々の水準に達するであろう。 > >ベータ、ガンマ及びデルタには展望がない――私の素晴らしい創造物に対して、彼らはますます嫌悪感を高めている。彼らをこの計画の仲間として迎え入れた覚えはない。開発室を構築するために、その専門知識を必要としただけだ。私は、彼らが決してエウダイモニアの新生児室の中身を嗅ぎつけないよう手段を講じている。反抗を未然に防ぐのに十分だといいのだが。 商売なのか思想なものなのか、はたまた軍事なのか、エウダイモン及びホモ・エウダイモニアには何かしらの目的があったようだ。 本報告書だけでは残念ながらそれがはさっぱりわからないが、ここに来てアルファは思考の違いからそれにベータ・ガンマ・デルタの三者からの反抗とそれに伴う計画の失敗を恐れ、何かしらの工作をしていることがわかる。 >70年、87日目 >&font(#008000){エウダイモン-デルタ-1} >エウダイモニアの人口: ~3000 > >人口増加は減速の徴候を示していない。未知の建築物に加えて、更なる増加を可能とするために、高層型のシェルターが現在構築されている。技術的進歩は、全ての予想を上回り続けている。我々は、寺院に残したものを消費し尽くした時点で成長が止まるのを祈ることしかできない。望ましくない行動は悪化している。ガンマは介入を試みて虐殺された。我々の残りは、アルファに対するクーデターを試みた。アルファ-3は同調を装い、大部分のベータへ致命的に毒を投与してのけた。 > >にも関わらずクーデターは成功した。我々は、まだそれらの建築物で行われていることを承知していない。しかし、ガンマに起こったことを考慮して、接触はしていない。アルファ-1、-2及び-5は逃亡した。その他は殺害あるいは捕獲されている。我々は解放メカニズムを動作不能とし、可能な限りこの場所を封鎖した。 そしてベータ・ガンマ・デルタが前回のログから30年後に蜂起した。 憂慮して侵入しようとしたガンマはホモ・エウダイモニアに殺され、「俺もやばいと思ってたんだよ」とアルファ-3が言いながらベータを毒殺。 それでも生き残った極少数のベータとデルタはアルファへの反逆に成功したようだ。 しかし数名が生き残り、特に&font(#f00){アルファ-1}は逃亡してしまった。 ただ、トップの寿命が先と信じたいが&ruby(ホモ・サピエンス){&font(#f00){アルファ-1}}が似たようなことをしないとは考えにくい。 既に人口は4桁まで発展し、解放メカニズムがあったエウダイモニアも「寺院に残したものを消費し尽くした時点で成長が止まるのを祈るしかできない」が、そんな程度で止まるだろうか。 もしかしたら、「人間に悲観的になった人たち」は「エウダイモニアがつくりだした理想郷を広めようとしていた」のかもしれない。 しかし出来上がったのは、ホモ・サピエンスに匹敵しても人間以上に階層社会にだけ力を注ぐ&bold(){「ヒトならざるもの」}。 &font(b){&font(red){社会に疑いを持たない}}エウダイモニアに個々人の理想はなく、貢献できないものに冷淡………。 エウダイモンが望んでない[[ディストピア]]も、「ヒトならざる」ホモ・エウダイモニアにとっては「当たり前」であり、まさしくユートピアであるのかもしれない。 最後にデルタ-1はこのように綴ってしめている。 >エウダイモニア人は、いまだガンマが構築した防御壁の向こうには世界が存在しないと信じている。 >&font(#00f,b){ああ、願わくは、彼らが別の方法で学ぶことのなからんことを。} *エウダイモニアの今後 アルファがエウダイモニアの新生児室に残した大量の受精前かつ[データ削除済]とだけしか書かれていない報告書も気になる。 受精前ということは卵細胞と伺えるが、ベータ・ガンマ・デルタに隠し、[データ削除済]しなければならないなにかがあったのだろうか。 &color(whitesmoke){性的な意味で削除された可能性も否定できないが。} また、財団はガンマの事案を想定すると職員が無駄死にする可能性が高いので、エウダイモニアを無人機で調査していたが、その無人機をロストした。 ロストしたその2ヶ月以内に無人機由来の技術がエウダイモニアで拡散していたという。 ホモ・サピエンスにとって&bold(){競争意識}が発展の源だが、ホモ・エウダイモニアは&bold(){共同体意識}である。 ホモ・サピエンス以上の発展速度が早いのは、対立しなければやる気の出ないのが競争だが、対立が早く進むことを遠回りさせる要因だとしたら当然なのかも知れない。 >ホモ・サピエンス及びSCP-752-1間の直接的な生存競争はSK-クラス支配シフトシナリオへ至ると予測されており、いかなる代償を払ってでも、SCP-752-1が彼らの大洞窟より外部の世界について無知なままであるよう保たれなければなりません。 ホモ・エウダイモニアが外界を見れば圧倒的速度で技術を吸収し、またたく間に[[SK-クラス:支配シフトシナリオ>K-クラスシナリオ(SCP Foundation)]]をもたらすことは容易に想定できる。 調査のためのハイ・テクノロジーをできるだけ避けることを決めた財団は収容違反に細心の注意を払っている。 しかし、ガンマは中に入って死んだ。 財団の無人機は解析され、実用化された。 &bold(){それでもホモ・エウダイモニアが外界に気付いていないという確証はあるのだろうか?} #center(){&sizex(7){SCP-752 - &ruby(ヒトならざる者の理想郷){Altruistic Utopia}}} ---- #right(){CC BY-SA 3.0に基づく表示 SCP-752 - Altruistic Utopia by Alias Pseudonym http://www.scp-wiki.net/scp-752 http://ja.scp-wiki.net/scp-752 この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。 } #include(テンプレ2) #right(){この項目が面白かったなら……\ポチッと/ #vote3(time=600,31) } #include(テンプレ3) #openclose(show=▷ コメント欄){ #areaedit() - …よく考えたら「介入したエウダイモンが殺された」「無人探査機をバラされて解析された」って時点で、自分達の意思とは異なる存在が世界の外に居ることにはとっくに気づいてそうだよね -- 名無しさん (2017-09-22 19:08:03) - 森久保で草 -- 名無しさん (2017-09-22 19:14:06) - こんなのを作り出せる奴らがどこの支部の要注意団体にも登録されてないって言うヤバさ -- 名無しさん (2017-09-22 19:42:15) - おそらく建築物が増加のキー・外の世界の技術を吸収ということから、アリの世界のようになっていると思われる。そしてその建物の中の新生児室には女王アリポジションが幽閉され出産を強制(おそらくエウダイモニア人は卵生に改造されていると思われている)。オスアリポジションはさしずめ上位カーストだろう。アルファー1は基礎のエウダイモンだから亡命しても150まで生きられて再起を図ろうとしている可能性あり。こんな軍隊アリが世界に漏れ出したら一瞬で人類は滅亡するだろう。 -- 名無しさん (2017-09-24 12:39:42) - 実は外界どころか自分たちを作った存在って知ってて自分たちをいつでも殺せる絶対神的な存在と認識してそう -- 名無しさん (2017-11-17 13:02:32) - 執筆者森久保Pかよw 机の下のさんくちゅありぃとはえらい違いだな…… -- 名無しさん (2017-11-20 21:39:46) - そもそも外界の物を自分達と違う人間が作ったものと言う考えに行き着かないような、好奇心や興味がわきにくい思考回路だからセーフな気もする、まぁ、外界に漏れたら間違いなく家畜か実験資料に変えられるだろうが -- 名無しさん (2018-04-18 00:17:05) - でぇじょうぶだ、クソトカゲでなんとかなる -- 名無しさん (2018-11-06 11:30:26) - 製作者達エウダイモニア創るだけ創って想定外のことで殺されたり逃亡したりして放置か…後始末できないなら創るなって感じやね -- 名無しさん (2019-02-01 14:43:11) - ↑逆でしょ。後始末しようと思ってた人達は放置静観するのを徹底しようとした奴らに殺された -- 名無しさん (2019-02-01 21:23:39) - ガンマや無人機が入ったということは、出入口があるんだよな…? -- 名無しさん (2019-02-01 21:27:05) - 「受精」は日本語版SCP-wikiの誤訳だと思われる。原文のconceptionは普通に妊娠と訳せる。英語版のdiscussionも参考に見てきたが、削除済の部分は性行為の類の言葉が入るであろうことはまず間違いない。若干発想は飛躍するが、文脈からは「乱交」辺りでもおかしくはない。 -- 名無しさん (2019-02-15 12:14:50) - 新生児の乱交パーティーとか恐ろしいやん -- 名無しさん (2019-06-06 19:27:28) - このヒトならざる者の理想郷ってフレーズ、誰が考えたんだろ?アルトゥルーイスティック・ユートピアって直訳すれば利他的な理想郷となるよね -- 名無しさん (2019-06-21 07:03:46) - きらいきらい星と同じように翻訳者の意訳センスですな -- 名無しさん (2019-08-15 08:29:37) - 「エウダイモニアはもはやヒトではない」という解釈は翻訳者の私見(ヒトの解釈次第だし文中でそのように断定されてる記述もないはず)だからあまり褒められた意訳ではない……と感じるな -- 名無しさん (2019-12-17 22:52:31) - 倫理観がずれたディストピアで怖い -- 名無しさん (2020-05-25 11:40:48) - 所でエウダイモン達は本当に人間なのかな。新人類100人とその居住空間(寺院、新生児室付き)なんて10代20代の若造が一朝一夕で用意できるものでもないだろうから、1日目の時点で結構な歳だった筈。そこから70年後も生きてるどころかクーデターを企んだり逃げたりする元気まである。代替わりをしているのか、それとも… -- 名無しさん (2020-07-21 18:50:03) - 彼らにとっては最高の楽園なんだなぁ -- 名無しさん (2020-07-21 18:56:52) - 『素晴らしい新世界』に通じるものを感じますね… -- 名無しさん (2020-07-21 19:39:18) - 完全な利他主義(というか先天的にそうだというべきか)の人々による、争いも不祥事も怠け者も無い、急速に発展していく社会。でもそんな世界、生きてて楽しいだろうか? ...楽しいとかいう考えも彼らは無いのかもしれない。娯楽とかも一切無さそうだし -- 名無しさん (2020-08-01 07:33:30) - 人の頭と体は持ってるけど人の心は持ってない蟻 -- 名無しさん (2020-08-10 23:32:52) - エウダイモニアにクソトカゲを放てっ -- 名無しさん (2020-09-04 01:23:09) - 我々は彼らを虫のような社会と言うが向こうからにしては我々こそ人の心がない畜生の社会だと思ってるかもしれない -- 名無しさん (2020-10-07 21:59:55) - クソトカゲがホモ・エウダイモニアを人間と見なさなかったらどうするんだ。絶対都市の封鎖を破ってこいつらを外に出すわ -- 名無しさん (2021-01-22 22:50:42) - ↑5「それを楽しいと思う人」だけが生きてるんだよ、きっと -- 名無しさん (2021-05-07 02:05:56) - ……芥子の花と阿片の生成方でも投げ込めば社会全体がバグって消えて無くなるかもしれない 現時点では個人で完結する快楽の存在しない、ある意味純粋な状態だし -- 名無しさん (2021-08-06 12:40:40) - 随分と拗らせたシムシティだな -- 名無しさん (2021-11-12 14:02:30) - 外界には興味なくてガンマは「労働に適さない」から処分されただけかもしれない -- 名無しさん (2021-12-05 19:29:16) - ↑3 「異常行動個体を発見。処分後解析とする」な感じになってそうなのが…… -- 名無しさん (2021-12-05 19:33:19) - 最後のは妊娠前の女性個体群が自発的に乱交してるってことかね -- 名無しさん (2021-12-12 14:19:28) - どちらかというと輪姦(にしか外部からは見えない)+多産型への人体改造って感じじゃないかな。人間ベースなら少なくとも10代前半までは一人前の労働力足りえないし、設立15年くらいの人口増加率は被扶養者層が多すぎる。出産も育児も新生児室に集約したうえで、「協力」して「分業」すべきって結論に、彼らならなるだろう。 -- 名無しさん (2021-12-12 16:49:26) - 全体が同じ方向むいてるから一つの要因であっさり壊滅しそう -- 名無しさん (2022-06-26 12:06:30) - 単なる乱交ならベータ~ガンマに隠す必要はない。そういう社会もあるし動物なら珍しくないから、専門家集団の彼らは気にしないだろう。それこそ人間牧場というか繁殖工場みたいな感じで、完全に子供を産む道具として使われる階層がいるんだろう。 -- 名無しさん (2022-06-26 12:25:10) #comment #areaedit(end) }

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